説明

燃料電池装置

【課題】利便性の向上した燃料電池装置を提供する。
【解決手段】本発明の燃料電池装置は、セルスタック5の複数個を並置し、セルスタック5の同じ側に配置された端部集電部材9の電流引き出し部12同士を導電性の連結部材11により連結し、1つのセルスタック5の電流引き出し部12と連結部材11とを電気的に接続している際に、セルスタック5の電圧が所定の電圧値よりも低くなった場合に、他の1つのセルスタック5の電流引き出し部12と連結部材11とを電気的に接続するように切り替える制御を行なうことから、メンテナンスや運転停止の回数を減らすことができ、利便性を向上することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の燃料電池セルを立設して構成されるセルスタックを有してなる燃料電池装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、次世代エネルギーとして、水素含有ガスと空気(酸素含有ガス)とを用いて電力を得ることができる燃料電池セルを複数並設し電気的に直列に接続してなるセルスタックを、燃料電池セルにガスを供給するマニホールドに固定し、収納容器内に収納してなる燃料電池モジュール、さらには燃料電池モジュールを収納してなる燃料電池装置が種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2007−59377号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このようなセルスタックを複数個接続してなる燃料電池装置において、セルスタックが電気的に直列に接続されている場合においては、セルスタックの1つに故障や異常を生じた場合に、所定の電圧を得ることができなくなる場合がある。
【0004】
このような場合、他のセルスタックは正常に発電可能であるにもかかわらず、燃料電池装置を停止してメンテナンスを行なう必要が生じ、メンテナンスの頻度が増えるほか、燃料電池装置を停止する頻度が増え、利便性が悪くなるおそれがある。
【0005】
それゆえ、本発明の燃料電池装置においては、複数個のセルスタックを有する燃料電池装置において、セルスタックに異常を生じた場合であっても、継続して稼動することができる燃料電池装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の燃料電池装置は、内部にガス流路を有する燃料電池セルの複数個を電気的に直列に接続してなるとともに、前記燃料電池セルの配列方向における両端部側から複数個の前記燃料電池セルを挟み込むように配置され、かつ前記燃料電池セルの発電により生じる電流を引き出すための電流引き出し部を有する端部集電部材を備えてなるセルスタックの複数個を並置し、前記セルスタックの同じ側における前記電流引き出し部同士を導電性の連結部材により連結してなるとともに、前記セルスタックの前記電流引き出し部と、前記連結部材との電気的接続を切り替える制御装置を具備する燃料電池装置であって、前記制御装置は、1つの前記セルスタックの前記電流引き出し部と前記連結部材とを電気的に接続している際に、1つの前記セルスタックの電圧が所定の電圧値よりも低くなった場合に、他の1つの前記セルスタックの前記電流引き出し部と前記連結部材とを電気的に接続するように切り替える制御を行なうことを特徴とする。
【0007】
このような燃料電池装置においては、制御装置が、1つのセルスタックを電気的に接続している際に、そのセルスタックの電圧が所定の電圧値よりも低くなった場合に、他の1つのセルスタックの電流引き出し部と連結部材とを電気的に接続するように切り替える(すなわち、他の1つのセルスタックを電気的に接続する)ように切り替える制御を行なうことから、電気的に接続された1つのセルスタックの電圧が所定の電圧値よりも低くなった場合に、他の1つのセルスタックを電気的に接続することにより、燃料電池装置を停止することなく、継続して稼動することができる。
【0008】
それにより、燃料電池装置を停止させる回数を減らせるほか、燃料電池装置のメンテナンスの回数を減らすことができ、利便性が向上した燃料電池装置とすることができる。
【0009】
また、本発明の燃料電池装置は、前記制御装置は、1つの前記セルスタックの電圧が所定の電圧値よりも低い状態が所定時間継続した場合に、他の1つの前記セルスタックを電気的に接続するように切り替える制御を行なうことが好ましい。
【0010】
このような燃料電池装置においては、制御装置が、1つのセルスタックの電圧が所定の電圧値よりも低い状態が所定時間継続した場合に、他の1つのセルスタックを電気的に接続するように切り替える制御を行なうことから、燃料電池装置の起動時や要求負荷電力が低い場合などにセルスタックの電気的接続が切り替わることを避けることができる。
【0011】
本発明の燃料電池装置は、内部にガス流路を有する燃料電池セルの複数個を電気的に直列に接続してなるとともに、前記燃料電池セルの配列方向における両端部側から複数個の前記燃料電池セル挟み込むように配置され、かつ前記燃料電池セルの発電により生じる電流を引き出すための電流引き出し部を有する端部集電部材を備えてなるセルスタックの複数個を並置し、隣り合う該セルスタックの前記電流引き出し部を連結部材により接続して電気的に直列に接続してなるとともに、前記セルスタックの直列配列における一端に位置する前記電流引き出し部と前記セルスタックの直列配列における他端に位置する前記電流引き出し部と前記連結部材との電気的接続を切り替える制御装置を具備する燃料電池装置であって、前記制御装置は、複数の前記セルスタックを電気的に接続している際に、1つまたは複数の前記セルスタックの電圧が所定の電圧値よりも低くなった場合に、所定の電圧値より低くなった前記セルスタック以外の前記セルスタックを電気的に直列に接続するように切り替える制御を行なうことを特徴とする。
【0012】
このような燃料電池装置においては、複数のセルスタックを電気的に直列に接続するとともに、直列配列の一端に位置する電流引き出し部と、隣接するセルスタックの電流引き出し部を接続する連結部材と、直列配列の他端に位置する電流引き出し部との電気的接続を切り替える制御装置が、1つまたは複数のセルスタックの電圧が所定の電圧値よりも低くなった場合に、所定の電圧値よりも低くなったセルスタック以外のセルスタックを電気的に直列に接続するように制御する。
【0013】
それにより、複数のセルスタックを電気的に直列に接続してなる燃料電池装置において、制御装置が所定の電圧値よりも低くなったセルスタック以外のセルスタックを電気的に直列に接続するように切り替える制御を行なうことから、燃料電池装置としての電圧値(複数のセルスタックの電圧値の合計)は低下するものの、燃料電池装置を停止することなく、継続して燃料電池装置を稼動することができる。
【0014】
それにより、燃料電池装置を停止させる回数を減らせるほか、燃料電池装置のメンテナンスの回数を減らすことができ、利便性が向上した燃料電池装置とすることができる。
【0015】
また、本発明の燃料電池装置は、前記制御装置は、1つまたは複数の前記セルスタックの電圧が所定の電圧値よりも低い状態が所定時間継続した場合に、所定の電圧値よりも低くなった前記セルスタック以外の前記セルスタックを電気的に直列に接続する制御を行なうことが好ましい。
【0016】
このような燃料電池装置においては、制御装置が、1つまたは複数のセルスタックの電圧が所定の電圧値よりも低い状態が所定時間継続した場合に、所定の電圧よりも低くなったセルスタック以外のセルスタックを電気的に直列に接続するように制御することから、燃料電池装置の起動時や要求負荷電力が低い場合などにセルスタックの電気的接続が切り替わることを避けることができる。
【0017】
また、本発明の燃料電池装置は、複数の前記セルスタックが、前記燃料電池セルに燃料ガスを供給するためのマニホールドにそれぞれ接続されていることが好ましい。
【0018】
このような燃料電池装置においては、複数のセルスタックが、燃料電池セルに燃料ガスを供給するマニホールドにそれぞれ(別個に)固定されていることから、セルスタックの電気的接続を切り替えた場合に、電気的に接続されたセルスタックにのみ燃料ガスを供給することでよいこととなる。
【0019】
それにより、電気的に接続されていないセルスタックに燃料ガスが供給されることを抑制(防止)することができ、発電効率のよい燃料電池装置とすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の燃料電池装置は、制御装置が、セルスタックの電圧が所定の電圧値よりも低くなった場合に、他のセルスタックを電気的に接続するように切り替える制御を行なうことから、燃料電池装置を停止することなく、継続して稼動することができ、利便性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は、本発明の燃料電池装置を構成するセルスタック5を収納してなる燃料電池モジュール1(以下、モジュールという場合がある。)の一例を示す外観斜視図である。なお、図1に示したセルスタック5においては、端部集電部材の一部を省略して示している。また、以降の図において同一の部材については同一の番号を付するものとする。
【0022】
なお、本発明の燃料電池装置においては、図示はしないが、外装ケース内に設けた仕切部材により、外装ケースを上下に区画し、その上部側をモジュール収納室として図1に示すモジュール1を収納し、下部側に補機収納室としてモジュール1を動作させるための補機類(後述する制御装置14等)を収納して構成されることが好ましい。
【0023】
図1に示すモジュール1においては、収納容器2の内部に、内部をガスが流通するガス流路を有する柱状の燃料電池セル3を立設させた状態で配列し、隣接する燃料電池セル3間に集電部材(図示せず)を介して電気的に直列に接続するとともに、燃料電池セル3の配列方向における両端部側から複数個の燃料電池セル3を挟み込むように、燃料電池セル3の発電により生じる電流を引き出すための電流引き出し部を有する端部集電部材9(図1においては、一部省略して示す。)を配置してセルスタック5が構成されている。なお、セルスタック5を構成する燃料電池セル3および端部集電部材9の下端部側を、ガラスシール材等の絶縁性接合材(図示せず)によりマニホールド4に固定して収納容器2内に収納する。なお、セルスタック5の構成については後に詳述する。
【0024】
さらに図1においては、燃料電池セル3として、内部を水素含有ガス(燃料ガス)が長手方向に流通するガス流路を有する中空平板型で、支持体の表面に、燃料側電極層、固体電解質層および酸素側電極層を順に設けてなる固体酸化物形燃料電池セル3を例示している。
【0025】
なお、燃料電池セル3としては、上記以外にたとえば円筒状、平板状の燃料電池セルを用いることもでき、また支持体の表面に酸素側電極層、固体電解質層および燃料側電極層を順に設けてなる固体酸化物形燃料電池セル3とすることもできる。この場合において、端部集電部材の形状は適宜変更することができる。
【0026】
さらに図1においては、燃料電池セル3の発電で使用する燃料ガスを得るために、天然ガスや灯油等の原燃料を改質して燃料ガスを生成するための改質器6をセルスタック5(燃料電池セル3)の上方に配置している。そして、改質器6で生成された燃料ガスは、ガス流通管7によりマニホールド4に供給され、マニホールド4を介して燃料電池セル3の内部に設けられたガス流路に供給される。そして、このような構成により、マニホールド4および改質器6を有するセルスタック装置8が構成される。なお、セルスタック装置8の構成は、燃料電池セル3の種類や形状により適宜変更することができる。
【0027】
また図1においては、収納容器2の一部(前後面)を取り外し、内部に収納される燃料電池セルスタック装置8を後方に取り出した状態を示している。ここで、図1に示したモジュール1においては、燃料電池セルスタック装置8を、収納容器2内にスライドして収納することが可能である。
【0028】
図2は、改質器6を取り外した状態のセルスタック装置8を上面図で示すとともに、セルスタック5より引き出された電圧が制御装置14にて電気的に接続されていることを示す概略図である。
【0029】
図2においては、1つのマニホールド4上にセルスタック5を2つ並置しているスタック装置8の一例を示している。なお、各セルスタック5は、燃料電池セル3の配列方向を互いに平行になるように並置し、セルスタック5の同じ側における電流引き出し部12同士を導電性の連結部材11をネジ13で螺着して連結することで、2つのセルスタック5を連結した構成となっている。なお、セルスタック5を3つ以上並置する場合も同様に、セルスタック5の同じ側における電流引き出し部12同士を連結部材にて接続する構成とすることができる。
【0030】
なお各燃料電池セル3間および燃料電池セル3の配列方向における端部と端部集電部材9との間には集電部材10が配置され(燃料電池セル3間の集電部材10は図示せず)、それにより各燃料電池セル3が電気的に直列に接続される。そして燃料電池セル3の発電により得られる電流(電圧)は、燃料電池セル3の配列方向の端部に配置された集電部材10を介して端部集電部材12により接続される。
【0031】
ここで、図2に示したセルスタック5の2つを電気的に直列に接続する場合、一方のセルスタック5に故障や異常等が生じた場合に所定の電圧を得ることができなくなる。また、一方のセルスタック5の発電が停止した場合には、他方のセルスタック5における電流(電圧)を引き出すことが困難となる。
【0032】
それゆえ、セルスタック5の2つを電気的に直列に接続する場合において、セルスタック5に故障や異常を生じた場合(所定の電圧が得られなくなった場合)には、そのつど燃料電池装置を停止してメンテナンスを行なう必要性が生じ、メンテナンスの頻度が増えるほか、燃料電池装置の利便性が悪くなるおそれがある。
【0033】
それゆえ、図2に示すセルスタック装置8においては、一方のセルスタック5と他方のセルスタック5の同じ側(一端側)における電流引き出し部12同士を連結部材11により連結し、連結部材11と制御装置14とを電気的に接続するとともに、一方のセルスタック5と他方のセルスタック5の他端側の電流引き出し部12を、それぞれ別に制御装置14に電気的に接続している。
【0034】
それにより制御装置14は、通常は一方のセルスタック5の電流引き出し部12と連結部材11とを電気的に接続するように制御し(図2においては制御装置14で黒線にて示している)、一方のセルスタック5の電圧が所定の電圧値よりも低くなった場合(所定の電圧が得られなくなった場合)に、他方のセルスタック5の電流引き出し部12と連結部材11とを電気的に接続するように切り替える、すなわち一方のセルスタック5から、他方のセルスタック5に切り替える制御を行なう(図2においては制御装置14で鎖線にて示している)ことができる。
【0035】
なお、制御装置14がセルスタック5の接続を切り替える場合とは、セルスタック5を構成する燃料電池セル3の形状等により適宜設定することができるが、例えばセルスタック5を構成する燃料電池セル3の平均電圧が0.4V以下となった場合に切り替えることが好ましい。
【0036】
それにより、一方のセルスタック5において故障や異常を生じた場合でも、他方のセルスタック5を電気的に接続するように切り替えることにより、発電を継続して行なうことができることから、燃料電池装置を停止することなく、継続して稼動することができる。またあわせて、メンテナンスの回数を減らすことができることから、利便性を向上することもできる。
【0037】
なお、図2のように2つのセルスタック5を並置して、適宜接続を切り替える燃料電池装置においては、1つのセルスタック5の発電で、負荷に必要な電圧を出力できるセルスタック5とすることが好ましい。
【0038】
ところで、1つのセルスタック5の電圧が所定の電圧値よりも低くなった場合に、他の1つのセルスタック5に電気的接続を切り替えることが好ましいが、燃料電池装置の起動時や要求負荷電力が低い場合などに、セルスタック5の電気的接続が頻繁に切り替えられるおそれがある。
【0039】
この場合に、セルスタック5の電気的接続が頻繁に切り替えられると、セルスタック5の耐久性が低下するほか、発電効率が低下するおそれがある。
【0040】
それゆえ、制御装置14は、例えば1つのセルスタック5の電圧が所定の電圧値よりも低い状態が所定時間継続した場合に、他の1つのセルスタック5を電気的に接続するように切り替える制御を行なうことにより、セルスタック5の耐久性が低下することを抑制でき、発電効率のよい燃料電池装置とすることができる。
【0041】
なお、セルスタック5の電圧が所定の電圧値よりも低い状態が所定時間継続した場合とは、例えばセルスタック5を構成する燃料電池セル3の平均電圧が0.4V以下の電圧が5分以上継続した場合とすることができる。
【0042】
図3は、1つのセルスタック16が1つのマニホールド15に固定されているセルスタック装置18の一例を示す外観斜視図であり、図4はセルスタック装置18を2つ並置した場合を示す概略図である。なお、上記図2と図4とを対比して、セルスタック装置18を2つ並べたこと以外に相違はない。
【0043】
上述したように、2つのセルスタック5を燃料電池セル3の配列方向を互いに平行にして1つのマニホールド4上に並置し、一方のセルスタック5のみを電気的に接続している際は(一方のセルスタック5の電流引き出し部12と連結部材11とを電気的に接続している場合)、一方のセルスタック5は発電を行い、他方のセルスタック5は発電を行なっていない状況となる。この場合に、発電を行なう一方のセルスタック5には常に燃料ガスを供給する必要があるため、マニホールド4に常に燃料ガスを供給することとなる。それゆえ、1つのマニホールド上にセルスタック5を2つ並置する場合には、発電していないセルスタック5にも常に燃料ガスが供給されることとなり、セルスタック装置8の発電効率が低下するおそれがある。
【0044】
ここで、図4においては、1つのマニホールド15に対し1つのセルスタック16を固定してなるセルスタック装置18を2つ並置して、一方のセルスタック16と他方のセルスタック16の同じ側(一端側)における電流引き出し部12同士を連結部材11により連結し、その連結部材11と制御装置14とを接続するとともに、一方のセルスタック16と他方のセルスタック16の他端側の電流引き出し部12を、それぞれ別に制御装置14に接続している。
【0045】
それにより、一方のセルスタック16を電気的に接続している間は、他方のセルスタック16に対して燃料ガスの供給を停止しておくことができ、発電効率のよい燃料電池装置とすることができる。
【0046】
なお、一方のセルスタック16より他方のセルスタック16に電気的接続を切り替える場合において、一方のセルスタック16から直ちに他方のセルスタック16に電気的接続を切り替えることができるよう、あらかじめ他方のセルスタック16の起動開始条件を定めておくことが好ましい。例えば、他方のセルスタック16の起動開始条件としては、セルスタック16を切り替える所定の電圧値よりも高い電圧値に設定した所定の電圧値以下となったときに、他方のセルスタック16(マニホールド15)に燃料ガスを供給するように制御することなどがあげられる。それにより、セルスタック16の電気的接続の切り替えを直ちに行なうことができる。
【0047】
以上、1つのセルスタックで定格運転を行なうことのできるセルスタックを2つ並置した燃料電池装置の電気的接続について説明したが、燃料電池装置によっては、複数のセルスタックを電気的に直列に接続して定格運転を行なう場合がある。
【0048】
図5は、セルスタック装置18(セルスタック16)を3つ並置するとともに、隣り合うセルスタック16の電流引き出し部12を連結部材11により接続して電気的に直列に接続している例を示す概略図である。なお、各セルスタック16は、燃料電池セル3の配列方向を互いに平行に、かつセルスタック16の同じ側の端で電流極性が逆となるように並置している。
【0049】
ここで、図5に示すように複数のセルスタック装置18を電気的に直列に接続してなる燃料電池装置において、1つまたは複数のセルスタック16に故障や異常が生じて所定の電圧値より低くなった場合、特にはセルスタック16が発電できない状況となった場合には、他のセルスタック16からの電圧(電流)を引き出すことが困難となるおそれがある。
【0050】
それゆえ、複数のセルスタック16を電気的に直列に接続してなる燃料電池装置においては、メンテナンスの頻度が増えるほか、燃料電池装置を停止する頻度が増え、利便性が悪くなるおそれがある。
【0051】
そこで、複数のセルスタックを直列に接続してなる燃料電池装置においては、制御装置は、1つまたは複数のセルスタックの電圧が所定の電圧値よりも低くなった場合に、所定の電圧値よりも低くなったセルスタックを解列して、それ以外のセルスタックを電気的に直列に接続するように切り替える制御を行なうことが好ましい。
【0052】
それにより、複数のセルスタック16を電気的に直列に接続してなる燃料電池装置において、制御装置14が、所定の電圧値よりも低くなったセルスタック16以外のセルスタック16を電気的に直列に接続するように切り替える制御を行なうことから、燃料電池装置としての電圧値(複数のセルスタック16の電圧の合計)は低下するものの、燃料電池装置を停止することなく、継続して燃料電池装置を稼動することができる。それにより、燃料電池装置を停止させる回数を減らせるほか、燃料電池装置のメンテナンスの回数を減らすことができ、利便性が向上した燃料電池装置とすることができる。
【0053】
ここで、図5においては、複数のセルスタック16のうち、直列配列の一端側および他端側が制御装置14にそれぞれ接続され、また連結部材11(図5では2つの連結部材11)が制御装置14に接続されている。それにより、所定の電圧値より低くなったセルスタック16を解列して、それ以外のセルスタック16を電気的に直列に接続するように制御することが可能となる。
【0054】
図6および図7は、図5で示した3つのセルスタック16の接続方法を示す説明図である。なお、図6および図7の説明において、それぞれのセルスタック16を、スタック1、スタック2およびスタック3と呼ぶものとする。
【0055】
図6(a)においては、スタック1とスタック2の一端同士が連結部材11により連結され、スタック2の他端とスタック3の一端同士が、連結部材11により連結されている。また、スタック1の他端と各連結部材11とスタック3の他端が、制御装置14に接続されている。他の図においても同様である。
【0056】
ここで、図6(a)は正常な状態を示しており、制御装置14によりスタック1の他端(図においては+側)とスタック3の他端(図においては−側)とが接続され、それにより、スタック1、スタック2およびスタック3が電気的に直列に接続されている。
【0057】
図6(b)においては、スタック3を解列した状態を示しており、制御装置14は、スタック1の他端(図においては+側)と、スタック2とスタック3とを接続する連結部材とを接続するように制御する。それにより、スタック1とスタック2とを電気的に直列に接続することができる。
【0058】
図7(c)においては、スタック2を解列した状態を示しており、制御装置14は、スタック1の他端(図においては+側)と、スタック3の他端(図においては−側)とを接続するとともに、スタック1とスタック2とを接続する連結部材と、スタック2とスタック3とを接続する連結部材とを接続するように制御する。それにより、スタック1とスタック3とを電気的に直列に接続することができる。
【0059】
図7(d)においては、スタック1を解列した状態を示しており、制御装置14は、スタック1とスタック2とを接続する連結部材と、スタック3の他端(図においては−側)とを接続するように制御する。それにより、スタック2とスタック3とを電気的に直列に接続することができる。
【0060】
なお、図6(b)および図7(c)、(d)においては、所定の電圧値よりも低くなった1つのセルスタック16を解列した例を示したが、2つのセルスタック16が所定の電圧よりも低くなった場合も同様にして切り替えることができる。
【0061】
このようにして、複数のセルスタックを電気的に直列に接続してなるセルスタック装置において、1つまたは複数のセルスタックに故障や異常が生じ所定の電圧よりも低くなった場合には、所定の電圧よりも低くなったセルスタック以外のセルスタックを電気的に直列に接続するように切り替える制御を行なうことにより、燃料電池装置を停止することなく、継続して稼動することができる。
【0062】
なお、この場合において、電気的に直列に接続するセルスタックの数が減ることから、燃料電池装置(複数のセルスタックの合計)としての電圧は低下するものの、燃料電池装置を停止することなく継続して稼動することができることから、燃料電池装置を停止する回数を減らせるほか、燃料電池装置のメンテナンスの回数を減らすことができ、利便性が向上した燃料電池装置とすることができる。
【0063】
なお、電気的に直列に接続するセルスタックを切り替えるにあたっては、各セルスタックの電圧を検知して、それに伴いセルスタックの接続を切り替えるほか、セルスタックの接続を順に切り替えて、所定の電圧値よりも低くなったセルスタック以外のセルスタックを電気的に直列に接続することができた場合(セルスタックが出力可能な所定の電圧の合計となった場合)にその接続を維持するようにしてもよい。
【0064】
ところで、電気的に直列に接続された複数のセルスタックのうち、1つまたは複数のセルスタック16の電圧が所定の電圧値よりも低くなった場合に、所定の電圧値よりも低くなったセルスタック16を解列して、それ以外のセルスタック16を電気的に直列に接続するように電気的接続を切り替えることとなるが、燃料電池装置の起動時や要求負荷電力が低い場合などに、セルスタック16の電気的接続が頻繁に切り替えられるおそれがある。
【0065】
この場合に、セルスタック16の電気的接続が頻繁に切り替えられると、セルスタック16の耐久性が低下するほか、発電効率が低下するおそれがある。
【0066】
それゆえ、制御装置14は、電気的に直列に接続された複数のセルスタックのうち、1つまたは複数のセルスタック16の電圧が所定の電圧値よりも低い状態が所定時間継続した場合に、所定の電圧よりも低いセルスタック16を解列して、それ以外のセルスタック16を電気的に直列に接続するように制御することにより、セルスタック16の耐久性が低下することを抑制でき、発電効率のよい燃料電池装置とすることができる。
【0067】
なお、セルスタック16の電圧が所定の電圧よりも低い状態が所定時間継続した場合とは、セルスタック16を構成する燃料電池セル3の形状等により適宜設定することができるが、例えばセルスタック16を構成する燃料電池セル3の平均電圧が0.4V以下が5分継続した場合とすることができる。
【0068】
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更、改良等が可能である。
【0069】
例えば、制御装置14は、セルスタックの電圧が所定の電圧値以下の場合に、他のセルスタックを電気的に接続するように切り替える制御を行なうが、他のセルスタックを電気的に接続した場合においても所定の電圧が得られない場合には、燃料電池装置を停止するように制御することもできる。
【0070】
また、セルスタックの電圧が所定の電圧値よりも低い状態が所定時間継続した時にセルスタックを切り替える例を示したが、燃料電池装置の起動に時間がかかることを考慮して、燃料電池装置の起動が完了した後、所定時間継続して、セルスタックの電圧が所定の電圧よりも低い状態が継続している場合に、セルスタックを切り替えるように制御することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の燃料電池装置を構成する燃料電池モジュールの一例を示す外観斜視図である。
【図2】セルスタックの接続を説明する概略図である。
【図3】1つのマニホールドに1つのセルスタックが固定されているセルスタック装置の一例を示す外観斜視図である。
【図4】2つのセルスタックの接続を説明する概略図である。
【図5】3つのセルスタックが電気的に直列に接続されている例を示す概略図である。
【図6】3つのセルスタックの接続を説明する説明図である。
【図7】3つのセルスタックの接続を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0072】
1:燃料電池モジュール
2:収納容器
3:燃料電池セル
4、15:マニホールド
5、16:セルスタック
9:端部集電部材
11:連結部材
12:電流引き出し部
14:制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にガス流路を有する燃料電池セルの複数個を電気的に直列に接続してなるとともに、前記燃料電池セルの配列方向における両端部側から複数個の前記燃料電池セルを挟み込むように配置され、かつ前記燃料電池セルの発電により生じる電流を引き出すための電流引き出し部を有する端部集電部材を備えてなるセルスタックの複数個を並置し、前記セルスタックの同じ側における前記電流引き出し部同士を導電性の連結部材により連結してなるとともに、前記セルスタックの前記電流引き出し部と、前記連結部材との電気的接続を切り替える制御装置を具備する燃料電池装置であって、前記制御装置は、1つの前記セルスタックの前記電流引き出し部と前記連結部材とを電気的に接続している際に、1つの前記セルスタックの電圧が所定の電圧値よりも低くなった場合に、他の1つの前記セルスタックの前記電流引き出し部と前記連結部材とを電気的に接続するように切り替える制御を行なうことを特徴とする燃料電池装置。
【請求項2】
前記制御装置は、1つの前記セルスタックの電圧が所定の電圧値よりも低い状態が所定時間継続した場合に、他の1つの前記セルスタックを電気的に接続するように切り替える制御を行なうことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池装置。
【請求項3】
内部にガス流路を有する燃料電池セルの複数個を電気的に直列に接続してなるとともに、前記燃料電池セルの配列方向における両端部側から複数個の前記燃料電池セル挟み込むように配置され、かつ前記燃料電池セルの発電により生じる電流を引き出すための電流引き出し部を有する端部集電部材を備えてなるセルスタックの複数個を並置し、隣り合う該セルスタックの前記電流引き出し部を連結部材により接続して電気的に直列に接続してなるとともに、前記セルスタックの直列配列における一端に位置する前記電流引き出し部と前記セルスタックの直列配列における他端に位置する前記電流引き出し部と前記連結部材との電気的接続を切り替える制御装置を具備する燃料電池装置であって、前記制御装置は、複数の前記セルスタックを電気的に接続している際に、1つまたは複数の前記セルスタックの電圧が所定の電圧値よりも低くなった場合に、所定の電圧値より低くなった前記セルスタック以外の前記セルスタックを電気的に直列に接続するように切り替える制御を行なうことを特徴とする燃料電池装置。
【請求項4】
前記制御装置は、1つまたは複数の前記セルスタックの電圧が所定の電圧値よりも低い状態が所定時間継続した場合に、所定の電圧値よりも低くなった前記セルスタック以外の前記セルスタックを電気的に直列に接続する制御を行なうことを特徴とする請求項3に記載の燃料電池装置。
【請求項5】
複数の前記セルスタックが、前記燃料電池セルに燃料ガスを供給するためのマニホールドにそれぞれ接続されていることを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれかに記載の燃料電池装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−205805(P2009−205805A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−43882(P2008−43882)
【出願日】平成20年2月26日(2008.2.26)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】