説明

燃料電池車両

【課題】燃料電池車両において、燃料電池から生成される生成水を減速時にブレーキに排出し、減速に伴うブレーキの発熱により生成水を蒸発させる。
【解決手段】燃料電池車両は、燃料電池本体と、燃料電池本体からガスを排出するガス排出通路と、ガス排出通路内のガスから水分を分離する気液分離器と、分離した水分を貯留する貯留器と、燃料電池本体から電力の供給を受けて回転される車輪と、車輪の回転に制動を加える制動手段と、制動手段の温度を測定する測定手段と、貯留器内の水分を制動手段に排出させる排出手段と、測定した温度が所定の閾値以上の場合、排出手段を作動させる制御手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電時において水を発生させる燃料電池を搭載する燃料電池車両に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は発電時において生成水を生成する。生成された生成水は、外気に排出される。燃料電池から生成される生成水をヒーターで加熱することにより、生成水を蒸発させて、外気に排出する方法がある。
【特許文献1】特開平07−169498号公報
【特許文献2】特開2005−153853号公報
【特許文献3】特開2005−174608号公報
【特許文献4】特開2005−251576号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、燃料電池から生成される生成水をヒーターで加熱することにより、生成水を蒸発させて、外気に排出する方法は、ヒーターへの電力供給を必要とする。ヒーターへの電力供給を行った場合、燃料電池の発電効率が悪化する。そのため、ヒーターへの電力供給を行わずに、燃料電池から生成される生成水を蒸発させる必要がある。本発明の目的は、燃料電池車両において、燃料電池から生成される生成水を減速時にブレーキに排出し、減速に伴うブレーキの発熱により生成水を蒸発させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上述した課題を解決するために、以下の手段を採用する。すなわち、本発明の燃料電池車両は、燃料電池本体と、前記燃料電池本体からガスを排出するガス排出通路と、前記ガス排出通路内のガスから水分を分離する気液分離器と、前記分離した水分を貯留する貯留器と、前記燃料電池本体から電力の供給を受けて回転される車輪と、前記車輪の回転に制動を加える制動手段と、前記制動手段の温度を測定する測定手段と、前記貯留器内の水分を前記制動手段に排出させる排出手段と、前記測定した温度が所定の閾値以上の場合、前記排出手段を作動させる制御手段と、を備える。本発明の燃料電池車両によれば、測定手段が測定した温度が所定の閾値以上の場合に貯留器内の水分を制動手段に排出させることができる。その結果、貯留器内の水分を制動手段に排出させることにより、排出した水分を蒸発させることが可能となる。
【0005】
また、本発明の燃料電池車両は、燃料電池本体と、前記燃料電池本体からガスを排出するガス排出通路と、前記ガス排出通路内のガスから水分を分離する気液分離器と、前記分離した水分を貯留する貯留器と、前記燃料電池本体から電力の供給を受けて回転される車輪と、前記車輪の回転に制動を加える制動手段と、燃料電池車両が移動する速度を測定する測定手段と、前記貯留器内の水分を前記制動手段に排出させる排出手段と、前記燃料電池車両の減速度が所定の閾値以上である場合、前記排出手段を作動させる制御手段と、を備える。本発明の燃料電池車両によれば、燃料電池車両の減速度が所定の閾値以上である場合に貯留器内の水分を制動手段に排出させることができる。その結果、貯留器内の水分を制動手段に排出させることにより、排出した水分を蒸発させることが可能となる。
【0006】
また、本発明の燃料電池車両は、前記制動手段が、前記車輪と連動して回転する回転盤および前記回転盤を押圧することにより前記回転盤の回転を停止させる停止手段からなるものであってもよい。また、本発明の燃料電池車両は、前記排出手段の排出が、前記停止手段に前記貯留器内の水分を滴下することであってもよい。本発明の燃料電池車両は、前
記排出手段の排出が、前記停止手段に前記貯留器内の水分を噴霧することであってもよい。また、本発明の燃料電池車両は、前記回転盤が、ブレーキディスクであってもよい。本発明の燃料電池車両は、前記停止手段が、ブレーキパッドであってもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、燃料電池車両において、燃料電池から生成される生成水を減速時にブレーキに排出し、減速に伴うブレーキの発熱により生成水を蒸発させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施をするための最良の形態(以下、実施形態という)に係る燃料電池車両について説明する。以下の実施形態の構成は例示であり、本発明は実施形態の構成に限定されない。
【0009】
本発明の実施形態に係る燃料電池車両を図1から図5を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態に係る燃料電池車両の構成例を示す図である。図1において、本発明の実施形態に係る燃料電池車両は、燃料電池スタック1、アノードガス通路2、アノードオフガス通路3、アノードオフガス循環通路4、カソードガス通路5、カソードオフガス通路6、水素タンク7、水素ポンプ8、ポンプ9、調圧弁10、フィルタ11、気液分離器12、ドレンタンク13、排水弁14、エア気液分離器15、貯水タンク16、排水弁17、ディスクブレーキ18、温度センサ21、速度メーター22および電子制御ユニット(ECU)23を有する。ディスクブレーキ18は、ブレーキディスク(ディスクロータ)19および摩擦材であるブレーキパッド20から構成されている。
【0010】
燃料電池スタック1は、複数のセルが積層されて構成されている。各セルは電解質膜、アノード(燃料極)、カソード(空気極)、及びセパレータとから構成される。アノードとカソードとの間には、水素及び空気の流路が形成されている。
【0011】
アノードガス通路2は、燃料電池スタック1のアノードに水素を含んだアノードガスを供給する通路である。カソードガス通路5は、燃料電池スタック1のカソードに空気を含んだカソードガスを供給する通路である。
【0012】
水素タンク7は、アノードガス通路2にアノードガスを供給する。水素タンク7から供給されるアノードガスは、調圧弁10により所定圧力に調整される。また、アノードガスはアノードガス通路2から燃料電池スタック1のアノードに供給されている。ポンプ9(エアーコンプレッサともいう)が駆動することにより、燃料電池システム外から供給されるカソードガスが燃料電池スタック1のカソードに供給される。
【0013】
燃料電池スタック1のアノードでは、アノードガスが供給されると、アノードガスに含まれる水素から水素イオンが生成される。また、燃料電池スタック1のカソードには、空気に含まれる酸素が供給される。そして、燃料電池スタック1では、水素と酸素の電気化学反応が起こり、電気エネルギーが発生する。また、燃料電池スタック1のカソードでは、水素から生成した水素イオンと酸素とが結合することにより水が生成される。
【0014】
アノードに供給されたアノードガスのうち未反応の水素及びカソードから透過する窒素等を含むガス(以下、アノードオフガスと表記する)は、燃料電池スタック1からアノードオフガス通路3に送出される。
【0015】
また、カソードに供給されたカソードガスのうち未反応のガス(以下、カソードオフガスと表記する)は、燃料電池スタック1からカソードオフガス通路6に排出される。カソードオフガスは、燃料電池スタック1が生成した水を水蒸気として含んでいる。カソード
から排出されたカソードオフガスは、カソードオフガス通路6を通り外気に排出される。
【0016】
燃料電池スタック1のアノードから排出されたアノードオフガスは、アノードオフガス通路3及びアノードオフガス循環通路4を通り、水素タンク7からのアノードガスとともに再び燃料電池スタック1のアノードへ供給される。そのため、アノードオフガス通路3は、燃料電池スタック1のアノードから排出されたアノードオフガスを気液分離器12に供給する。
【0017】
気液分離器12は、燃料電池スタック1のアノードから排出されたアノードオフガスに含まれる水分と水素を分離する。気液分離器12で水分を分離された水素は水素ポンプ8によりアノードガスとしてアノードオフガス循環通路4を通り、アノードガス通路2に供給される。アノードオフガス循環通路4は、水素ポンプ8から送出されるアノードガスをアノードガス通路2に供給するための通路である。アノードオフガス循環通路4により、アノード側の循環経路が構成されている。
【0018】
ドレンタンク13は、気液分離器12が分離した水分を貯留する。排水弁14の開閉を行うことにより、ドレンタンク13に貯留されている水は、カソードオフガス通路6に送出される。カソードオフガス通路6に送出された水は、カソードオフガス通路6を通り外気に排出される。また、排水弁14は、ドレンタンク13に貯留される水が溢れないように適度に開閉される。
【0019】
カソードオフガス通路6には、エア気液分離器15が設けられている。エア気液分離器15は、カソードオフガス通路6内のカソードオフガスからカソードオフガスに含まれる水分を分離する。貯水タンク16は、エア気液分離器15が分離した水分を貯留する。排水弁17の開閉を行うことにより、貯水タンク16に貯留されている水は、ブレーキディスク19に排出される。
【0020】
ブレーキディスク19は、本実施形態の燃料電池車両が有するモーター(図示せず)によって回転される車輪(図示せず)とともに回転する。燃料電池スタック1からの電力の供給を受けて、モーターは駆動する。回転しているブレーキディスク19にブレーキパッド20を押圧し、ブレーキディスク19を制動させることにより車輪を制動させる。ブレーキディスク19にブレーキパッド20を押圧する方法は、ブレーキディスク19の両面をブレーキパッド20で圧着させてもよい。回転しているブレーキディスク19にブレーキパッド20を押圧させた場合、ブレーキディスク19とブレーキパッド20との間には摩擦熱が発生する。ブレーキディスク19とブレーキパッド20との間に発生した摩擦熱は、ブレーキディスク19を熱する。ブレーキディスク19の温度が排出された水を蒸発させるのに十分な温度まで上昇した場合、貯水タンク16に貯留されている水を熱せられたブレーキディスク19に排出することにより、その排出された水は蒸発する。
【0021】
貯水タンク16に貯留されている水を排出する対象となるブレーキディスク19は、本実施形態の燃料電池車両が有する後輪に設けられていてもよい。この場合、本実施形態の燃料電池車両が有する後輪の近辺に、エア気液分離器15、貯水タンク16、排水弁17、ブレーキパッド20および温度センサ21を設けてもよい。カソードオフガス通路6は、一般的に後輪近辺に配置されている。そのため、既存の燃料電池車両の構成を変更せずに、本実施形態の燃料電池車両を実現することが可能となる。
【0022】
また、貯水タンク16に貯留されている水を排出する対象となるブレーキディスク19は、本実施形態の燃料電池車両が有する前輪に設けられていてもよい。この場合、本実施形態の燃料電池車両が有する前輪の近辺に、エア気液分離器15、貯水タンク16、排水弁17、ブレーキパッド20および温度センサ21を設けてもよい。一般的に、前輪に設
けられたブレーキディスク19は、後輪に設けられたブレーキディスク19よりも高温になる可能性がある。この構成によれば、後輪に設けられたブレーキディスク19よりも高温になる可能性がある前輪に設けられたブレーキディスク19に、貯水タンク16に貯留されている水を排出することができる。
【0023】
温度センサ21は、ブレーキパッド20の温度を測定する。速度メーター22は、燃料電池車両が移動する速度を測定する。
【0024】
電子制御ユニット23は、排水弁17、温度センサ21および速度メーター22とそれぞれ電気的に接続されている。電子制御ユニット23は、排水弁17の駆動を制御する。また、電子制御ユニット23は、温度センサ21が測定したブレーキパッド20の温度のデータを取得する。さらに、電子制御ユニット23は、速度メーター22が測定する燃料電池車両が移動する速度のデータを取得する。電子制御ユニット23は、その内部にCPUやROM等を備えており、CPUはROMに記録される制御プログラムに従って各種の処理を実行する。
【0025】
〈第1実施形態〉
図2を参照して、本発明の第1実施形態に係る燃料電池車両の動作を説明する。まず、電子制御ユニット23は、温度センサ21により測定されたブレーキパッド20の温度のデータを取得する(S201)。
【0026】
次に、電子制御ユニット23は、温度センサ21から取得したブレーキパッド20の温度が所定の閾値T以上であるか否かを判定する(S202)。この所定の閾値Tは、ブレーキディスク19の温度がブレーキディスク19に排出された水を蒸発させるのに必要な温度に達しているかの基準となる値である。すなわち、ブレーキパッド20の温度が所定の閾値以上である場合、ブレーキディスク19に排出された水は蒸発する。所定の閾値Tは、実測またはシミュレーションにより求めておけばよい。本実施形態では、ブレーキパッド20の温度を測定することにより、ブレーキディスク19の温度がブレーキディスク19に排出された水を蒸発させるのに必要な温度に達しているかを判定している。
【0027】
温度センサ21から取得したブレーキパッド20の温度が所定の閾値T以上である場合、電子制御ユニット23は、排水弁17の駆動を制御することにより排水弁17を開く。排水弁17が開かれた場合、貯水タンク16に貯留されている水はブレーキディスク19に排出される(S203)。
【0028】
貯水タンク16に貯留されている水をブレーキディスク19に排出する方法は、例えば、貯水タンク16に貯留されている水をブレーキパッド20に滴下する方法がある。また、貯水タンク16に貯留されている水をブレーキディスク19に排出する他の方法として、例えば、貯水タンク16に貯留されている水をブレーキディスク19に噴霧する方法がある。
【0029】
貯水タンク16に貯留されている水をブレーキディスク19に排出した場合、処理をS201に戻す。一方、温度センサ21から取得したブレーキパッド20の温度が所定の閾値T以上でない場合(S202で否定と判定した場合)、処理をS201に戻す。
【0030】
本発明の第1実施形態によれば、ブレーキディスク19の温度が、排出された水を蒸発させるのに適しているか否かを温度センサ21から取得したブレーキパッド20の温度から判定する。すなわち、電子制御ユニット23は、温度センサ21から取得したブレーキパッド20の温度が所定の閾値T以上であるか否かを判定する。温度センサ21から取得したブレーキパッド20の温度が所定の閾値T以上である場合、電子制御ユニット23は
、排水弁17を開くように排水弁17の駆動を制御する。ブレーキパッド20の温度が所定の閾値T以上である場合、ブレーキディスク19に排出された水は蒸発する。
【0031】
そのため、ブレーキディスク19の温度が、排水された水を蒸発させるのに適している場合において、貯水タンク16に貯留されている水をブレーキディスク19に排出することができる。その結果、貯水タンク16に貯留されている水をブレーキディスク19に排出することで、貯水タンク16に貯留されている水を水蒸気として外気に排出することができる。したがって、貯水タンク16に貯留されている水を加熱するための電力を供給することなしに、貯水タンク16に貯留されている水を蒸発させることができる。さらに、貯水タンク16に貯留されている水をブレーキディスク19に排出することにより、ブレーキディスク19を冷却させることができる。
【0032】
〈第2実施形態〉
図3を参照して、本発明の第2実施形態に係る燃料電池車両の動作を説明する。まず、電子制御ユニット23は、速度メーター22により測定された燃料電池車両が移動する速度のデータを取得する(S301)。
【0033】
次に、電子制御ユニット23は、ブレーキディスク19が制動され、燃料電池車両の移動速度が低下した場合のその減速度を算出する。そして、算出した減速度が所定の閾値S以上であるか否かを判定する(S302)。
【0034】
算出した減速度が所定の閾値S以上である場合、電子制御ユニット23は、排水弁17の駆動を制御することにより排水弁17を開く。排水弁17が開かれた場合、貯水タンク16に貯留されている水はブレーキディスク19に排出される(S303)。貯水タンク16に貯留されている水をブレーキディスク19に排出する方法は、本発明の第1実施形態に係る燃料電池車両と同様である。
【0035】
貯水タンク16に貯留されている水をブレーキディスク19に排出した場合、処理をS301に戻す。一方、算出した減速度が所定の閾値S以上でない場合(S302で否定と判定した場合)、処理をS301に戻す。
【0036】
本発明の第2実施形態に係る燃料電池車両は、図示しない回生ブレーキを有している。本発明の第2実施形態においては、燃料電池車両の減速度が所定の閾値S以上の場合、ディスクブレーキ18が使用され、燃料電池車両の減速度が所定の閾値S未満の場合、回生ブレーキが使用される。そのため、算出した減速度が所定の閾値S以上であるか否かを判定することにより、ディスクブレーキ18が使用されたか否かを判定する。そして、ディスクブレーキ18が使用された場合にのみ、貯水タンク16に貯留されている水をブレーキディスク19に排出させる。
【0037】
したがって、本発明の第2実施形態によれば、ディスクブレーキ18が使用された場合にのみ、貯水タンク16に貯留されている水をブレーキディスク19に排出することができる。本発明の第2実施形態において、他の構成、作用および効果は本発明の第1実施形態と同様である。
【0038】
〈第3実施形態〉
本発明の第3実施形態は、上記第1実施形態と上記第2実施形態を組み合わせた場合について説明している。図4は、本発明の第3実施形態に係る燃料電池車両の動作を説明するフロー図である。
【0039】
まず、電子制御ユニット23は、温度センサ21により測定されたブレーキパッド20
の温度のデータを取得する(S401)。
【0040】
次に、電子制御ユニット23は、温度センサ21から取得したブレーキパッド20の温度が所定の閾値T以上であるか否かを判定する(S402)。所定の閾値Tは、上記第1実施形態と同様である。
【0041】
温度センサ21から取得したブレーキパッド20の温度が所定の閾値T以上である場合、電子制御ユニット23は、速度メーター22により測定された燃料電池車両の速度のデータを取得する(S403)。
【0042】
次に、電子制御ユニット23は、ブレーキディスク19が制動され、燃料電池車両の速度が低下した場合のその減速度を算出する。そして、算出した減速度が所定の閾値S以上であるか否かを判定する(S404)。
【0043】
算出した減速度が所定の閾値S以上である場合、電子制御ユニット23は、排水弁17の駆動を制御することにより排水弁17を開く。排水弁17が開かれた場合、貯水タンク16に貯留されている水はブレーキディスク19に排出される(S405)。貯水タンク16に貯留されている水をブレーキディスク19に排出する方法は、本発明の第1実施形態に係る燃料電池車両と同様である。
【0044】
貯水タンク16に貯留されている水をブレーキディスク19に排出した場合、処理をS401に戻す。一方、温度センサ21から取得したブレーキパッド20の温度が所定の閾値T以上でない場合(S402で否定と判定した場合)、処理をS401に戻す。また、算出した減速度が所定の閾値S以上でない場合(S404で否定と判定した場合)、処理をS401に戻す。
【0045】
本発明の第4実施形態によれば、温度センサ21から取得したブレーキパッド20の温度が所定の閾値T以上であり、かつ、算出した減速度が所定の閾値S以上である場合にのみ、貯水タンク16に貯留されている水をブレーキディスク19に排出させることができる。本発明の第3実施形態において、他の構成、作用および効果は本発明の第1実施形態および本発明の第2実施形態と同様である。
【0046】
〈第4実施形態〉
本発明の第4実施形態は、上記第1実施形態と上記第2実施形態を組み合わせた場合について説明する。図5は、本発明の第4実施形態に係る燃料電池車両の動作を説明するフロー図である。
【0047】
まず、電子制御ユニット23は、温度センサ21により測定されたブレーキパッド20の温度のデータを取得する(S501)。
【0048】
次に、電子制御ユニット23は、温度センサ21から取得したブレーキパッド20の温度が所定の閾値T以上であるか否かを判定する(S502)。所定の閾値Tは上記第1実施形態と同様である。
【0049】
温度センサ21から取得したブレーキパッド20の温度が所定の閾値T以上である場合、電子制御ユニット23は、排水弁17の駆動を制御することにより排水弁17を開く。排水弁17が開かれた場合、貯水タンク16に貯留されている水はブレーキディスク19に排出される(S503)。貯水タンク16に貯留されている水をブレーキディスク19に排出する方法は、本発明の第1実施形態に係る燃料電池車両と同様である。
【0050】
貯水タンク16に貯留されている水をブレーキディスク19に排出した場合、処理をS501に戻す。一方、温度センサ21から取得したブレーキパッド20の温度が所定の閾値T以上でない場合(S502で否定と判定した場合)、電子制御ユニット23は、速度メーター22により測定された燃料電池車両の速度のデータを取得する(S504)。
【0051】
次に、電子制御ユニット23は、ブレーキディスク19が制動され、燃料電池車両の速度が低下した場合のその減速度を算出する。そして、算出した減速度が所定の閾値S以上であるか否かを判定する(S505)。
【0052】
算出した減速度が所定の閾値S以上である場合、電子制御ユニット23は、S503の処理を行う。一方、算出した減速度が所定の閾値S以上でない場合(S505の処理で否定の場合)、電子制御ユニット23は、S501の処理を行う。
【0053】
本発明の第4実施形態によれば、温度センサ21から取得したブレーキパッド20の温度が所定の閾値T以上である場合、または、算出した減速度が所定の閾値S以上である場合、貯水タンク16に貯留されている水をブレーキディスク19に排出させることができる。本発明の第4実施形態において、他の構成、作用および効果は本発明の第1実施形態および本発明の第2実施形態と同様である。
【0054】
〈変形例〉
本発明の実施形態は、モーターに対して電力の供給を行う燃料電池スタック1を有し、さらに、モーターに対して電力の供給を行う二次電池を有する燃料電池車両システムであってもよい。この場合、モーターは、燃料電池スタック1及び二次電池の少なくとも一方からの電力の供給を受けて駆動する。そのため、そのモーターによって回転される車輪は、燃料電池スタック1及び二次電池の少なくとも一方からの電力の供給を受けて回転されることとなる。
【0055】
また、本発明の実施形態は、ブレーキディスク19が高温となる条件の場合に、貯水タンク16に貯留されている水をブレーキディスク19に排出させてもよい。ブレーキディスク19が高温となる条件としては、車輪の制動が頻繁である場合がある。例えば、所定時間内にディスクブレーキ19の使用回数が所定回数以上の場合は、ブレーキディスク19が高温となる条件に該当するとして、貯水タンク16に貯留されている水をブレーキディスク19に排出させてもよい。ブレーキディスク19が高温となる場合における、所定時間とディスクブレーキ19の使用回数との関係は、実測またはシミュレーションにより求めておけばよい。
【0056】
また、ブレーキディスク19が高温となる条件としては、周囲の環境温度が高いために、ディスクブレーキ19の放熱が低い場合がある。すなわち、低速で燃料電池車両が移動する場合、走行風によるディスクブレーキ19の放熱が低い場合がある。例えば、燃料電池車両の移動速度が所定速度以下で、所定時間内にディスクブレーキ19の使用回数が所定回数以上の場合は、ブレーキディスク19が高温となる条件に該当するとして、貯水タンク16に貯留されている水をブレーキディスク19に排出させてもよい。ブレーキディスク19が高温となる場合における、所定速度、所定時間及びディスクブレーキ19の使用回数との関係は、実測またはシミュレーションにより求めておけばよい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施形態に係る燃料電池車両の構成例を示す図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る燃料電池車両の動作を説明するフローチャートである。
【図3】本発明の第2実施形態に係る燃料電池車両の動作を説明するフローチャートである。
【図4】本発明の第3実施形態に係る燃料電池車両の動作を説明するフローチャートである。
【図5】本発明の第4実施形態に係る燃料電池車両の動作を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0058】
1 燃料電池スタック
2 アノードガス通路
3 アノードオフガス通路
4 アノードオフガス循環通路
5 カソードガス通路
6 カソードオフガス通路
7 水素タンク
8 水素ポンプ
9 ポンプ
10 調圧弁
11 フィルタ
12 気液分離器
13 ドレンタンク
14 排水弁
15 エア気液分離器
16 貯水タンク
17 排水弁
18 ディスクブレーキ
19 ブレーキディスク(ディスクロータ)
20 ブレーキパッド
21 温度センサ
22 速度メーター
23 電子制御ユニット(EUC)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池本体と、
前記燃料電池本体からガスを排出するガス排出通路と、
前記ガス排出通路内のガスから水分を分離する気液分離器と、
前記分離した水分を貯留する貯留器と、
前記燃料電池本体から電力の供給を受けて回転される車輪と、
前記車輪の回転に制動を加える制動手段と、
前記制動手段の温度を測定する測定手段と、
前記貯留器内の水分を前記制動手段に排出させる排出手段と、
前記測定した温度が所定の閾値以上の場合、前記排出手段を作動させる制御手段と、
を備える燃料電池車両。
【請求項2】
燃料電池本体と、
前記燃料電池本体からガスを排出するガス排出通路と、
前記ガス排出通路内のガスから水分を分離する気液分離器と、
前記分離した水分を貯留する貯留器と、
前記燃料電池本体から電力の供給を受けて回転される車輪と、
前記車輪の回転に制動を加える制動手段と、
燃料電池車両が移動する速度を測定する測定手段と、
前記貯留器内の水分を前記制動手段に排出させる排出手段と、
前記燃料電池車両の減速度が所定の閾値以上である場合、前記排出手段を作動させる制御手段と、
を備える燃料電池車両。
【請求項3】
前記制動手段は、前記車輪と連動して回転する回転盤および前記回転盤を押圧することにより前記回転盤の回転を停止させる停止手段からなる請求項1または2に記載の燃料電池車両。
【請求項4】
前記排出手段の排出は、前記停止手段に前記貯留器内の水分を滴下することである請求項1から3のいずれかに記載の燃料電池車両。
【請求項5】
前記排出手段の排出は、前記停止手段に前記貯留器内の水分を噴霧することである請求項1から3のいずれかに記載の燃料電池車両。
【請求項6】
前記回転盤は、ブレーキディスクである請求項3から5のいずれかに記載の燃料電池車両。
【請求項7】
前記停止手段は、ブレーキパッドである請求項3から6のいずれかに記載の燃料電池車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−68640(P2008−68640A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−246476(P2006−246476)
【出願日】平成18年9月12日(2006.9.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】