燃料電池
【課題】 発電効率の高い燃料電池を提供する。
【解決手段】 酸素を還元する正極触媒層、燃料を酸化する負極触媒層、および上記正極触媒層と上記負極触媒層の間に設けられた固体電解質膜からなる電極・電解質一体化物と、上記正極触媒層へ空気を導入するための機構と、燃料供給部から供給される燃料を上記負極触媒層へ導入するために、負極に接して設けられた燃料流路を備えた燃料電池であって、上記燃料流路は、内部に存在するガスを外部に排出するためのガス排出口を有し、かつ上記ガス排出口から外部に排出する上記燃料流路内のガス量を、ガス排出口における圧力に応じて制御する機構を有することを特徴とする燃料電池である。
【解決手段】 酸素を還元する正極触媒層、燃料を酸化する負極触媒層、および上記正極触媒層と上記負極触媒層の間に設けられた固体電解質膜からなる電極・電解質一体化物と、上記正極触媒層へ空気を導入するための機構と、燃料供給部から供給される燃料を上記負極触媒層へ導入するために、負極に接して設けられた燃料流路を備えた燃料電池であって、上記燃料流路は、内部に存在するガスを外部に排出するためのガス排出口を有し、かつ上記ガス排出口から外部に排出する上記燃料流路内のガス量を、ガス排出口における圧力に応じて制御する機構を有することを特徴とする燃料電池である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パソコン、携帯電話などのコードレス機器の普及に伴い、その電源である二次電池はますます小型化、高容量化が要望されている。現在、エネルギー密度が高く小型軽量化を図り得る二次電池としてリチウムイオン二次電池が実用化されており、ポータブル電源としての需要が増大している。しかし、使用されるコードレス機器の種類によっては、このリチウム二次電池では未だ十分な連続使用時間を保証する程度にまでは至っていない。
【0003】
このような状況の中で、上記要望に応え得る電池として、固体高分子形燃料電池(PEFC)が開発されている。この固体高分子形燃料電池は、正極で酸素を還元し負極で水素を酸化する反応を利用して発電し、電気を取り出すことのできる電池である。
【0004】
固体高分子形燃料電池では、正極で還元する酸素を空気中から取り込むため、正極が外気と接触した状態となる。他方、負極は水素と酸化反応することから、水素(燃料)を導入するための燃料流路が負極に接して設けられるが、燃料流路内は、外気との接触を避け、水素で満たされた状態を維持しなくてはならない。燃料流路内において、外気との接触などで水素以外の不純ガスが一旦侵入すると、負極に供給される燃料中の水素濃度の低下によって、発電性能の低下や発電不能が生じることがある。
【0005】
そのため、燃料流路内へ不純ガスが侵入してしまった場合には、これを除去しなければならない。例えば、特許文献1には、こうした燃料流路内に侵入した不純ガスを、燃料流路に設けられたガス排出口から、ユーザーが手動で除去したり、または発電時の一定時間について自動的に除去したり、若しくは一定時間毎に自動的に除去したりする技術が提案されている。
【0006】
【特許文献1】特開2002−158020号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、負極への水素の供給圧力や燃料電池の発電状態によって、燃料流路のガス排出口付近では、不純ガスを含有している燃料ガスの当該箇所での圧力が変化しているため、上記の除去方法では不純ガス除去時に同時に排出される燃料(水素)の排出量も変化してしまう。そのため、例えば、ガス排出口における圧力が高い場合には、ガス排出口から排出されるガス量が多くなり、発電に利用されず燃料電池外に排出される水素量も増大してしまうことから、エネルギーロスの一因となっており、燃料電池の発電効率の低下を引き起こす場合があった。
【0008】
また、燃料流路内のガスの除去を手動で行なう場合にはユーザーの手間となる。更に、燃料流路内のガスを、発電時の一定期間に自動的に除去したり、一定期間毎に自動的に除去する場合においても、それらを検知するための装置や排出口を開放するために装置が必要となる。そのため、構造の複雑化や余分な電力の消費を引き起こしたり、また電池システムとしてコンパクト化ができないなどの問題があった。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、発電効率の高い燃料電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成し得た本発明の燃料電池は、酸素を還元する正極触媒層、燃料を酸化する負極触媒層、および上記正極触媒層と上記負極触媒層の間に設けられた固体電解質膜からなる電極・電解質一体化物(MEA)と、上記正極触媒層へ空気を導入するための機構と、燃料供給部から供給される燃料を上記負極触媒層へ導入するために、負極に接して設けられた燃料流路を備えたものであり、上記燃料流路は、内部に存在するガスを外部に排出するためのガス排出口を有し、かつ上記ガス排出口から外部に排出する上記燃料流路内のガス量を、ガス排出口における圧力に応じて制御する機構を有することを特徴とするものである。
【0011】
本発明では、上記構成を有することにより、燃料流路内に存在する不純ガスをガス排出口から排出する際に、不純ガスと同時に排出される水素ガス量を制御することができる。そのため、喩えガス排出口での圧力が高くなっていても、余分な水素の排出量を抑えることができ、エネルギーロスを抑制して発電効率を高めることができる。
【0012】
なお、上記燃料電池は、燃料流路内の圧力と燃料電池外部の大気圧との差圧に応じてガス排出口を閉じる機構や、更に、ガス排出口が閉じたときに正極触媒層と空気との接触を遮断する機構を有していることが好ましい。また、上記燃料電池は、燃料流路内の圧力が高い場合に燃料流路内に存在するガスを逃がす弁を有していることも好ましい。
【0013】
更に、上記燃料電池は、燃料供給部として、着脱可能な水素供給カートリッジを有していることも好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、発電効率の高い燃料電池が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。ただし、後記の各図面に示す実施形態は本発明の一例に過ぎず、本発明は、これらの図面に示したものに限定される訳ではない。
【0016】
図1は、本発明の燃料電池の実施形態の一例を示す断面概略図である。図1の実施形態では、正極集電板1と負極集電板8との間に、電極・電解質一体化物(MEA)100が配置されている。
【0017】
MEA100は、酸素を還元する正極触媒層4と、水素を酸化する負極触媒層9とを有しており、更に、正極触媒層4と負極触媒層9との間に固体電解質膜11を備えている。また、正極触媒層4の固体電解質膜11側の面の反対面には、積層された正極拡散層3を有しており、負極触媒層9の固体電解質膜11側の面の反対面には、積層された負極拡散層10を有している。
【0018】
正極拡散層3および負極拡散層10は、多孔性の電子伝導性材料などから構成され、例えば、撥水処理を施した多孔質炭素シートなどが用いられる。なお、正極拡散層3や負極拡散層10の触媒層側には、更なる撥水性向上および触媒層との接触向上を目的として、フッ素樹脂粒子[ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂粒子など]を含む炭素粉末のペーストが塗布されている場合もある。
【0019】
正極触媒層4は、正極拡散層3を介して拡散してきた酸素を還元する機能を有している。正極触媒層4は、例えば、触媒を担持した炭素粉末(触媒担持炭素粉末)と、プロトン伝導性材料とを含有している。また、必要に応じて、樹脂バインダを更に含有していてもよい。
【0020】
正極触媒層4の含有する触媒としては、酸素を還元できるものであれば特に制限はないが、例えば、白金微粒子が挙げられる。また、上記触媒は、鉄、ニッケル、コバルト、錫、ルテニウムおよび金よりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素と白金との合金で構成される微粒子などであってもよい。
【0021】
触媒の担体である炭素粉末としては、例えば、BET比表面積が10〜2000m2/gであり、平均粒子径が20〜100nmのカーボンブラックなどが用いられる。炭素粉末への上記触媒の担持は、例えば、コロイド法などで行うことができる。
【0022】
上記炭素粉末と上記触媒との含有比率としては、例えば、炭素粉末100質量部に対して、触媒が5〜400質量部であることが好ましい。このような含有比率であれば、十分な触媒活性を有する正極触媒層が構成できるからである。また、例えば、炭素粉末上に触媒を析出させる方法(例えば、コロイド法)で触媒担持炭素粉末が作製される場合には、炭素粉末と触媒とが上記の含有比率であれば、触媒の径が大きくなりすぎず、十分な触媒活性が得られるからである。
【0023】
正極触媒層4に含まれるプロトン伝導性材料としては、特に制限はないが、例えば、ポリパーフルオロスルホン酸樹脂、スルホン化ポリエーテルスルホン酸樹脂、スルホン化ポリイミド樹脂などのスルホン酸基を有する樹脂を用いることができる。ポリパーフルオロスルホン酸樹脂としては、具体的には、デュポン社製の「ナフィオン(登録商標)」、旭硝子社製の「フレミオン(登録商標)」、旭化成工業社製の「アシプレックス(商品名)」などが挙げられる。
【0024】
正極触媒層4におけるプロトン伝導性材料の含有量は、触媒担持炭素粉末100質量部に対して、2〜200質量部であることが好ましい。プロトン伝導性材料が上記の量で含有されていれば、正極触媒層4において十分なプロトン伝導性が得られ、電気抵抗値が大きくなりすぎず、電池性能の良好な燃料電池を得ることができるからである。
【0025】
正極触媒層4に係るバインダとしては、特に制限はないが、例えば、PTFE、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(E/TFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)およびポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)などのフッ素樹脂や、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリスチレン、ポリエステル、アイオノマー、ブチルゴム、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体およびエチレン・アクリル酸共重合体などの非フッ素樹脂などが用いることができる。
【0026】
正極触媒層4におけるバインダの含有量は、触媒担持炭素粉末100質量部に対して、0.01〜100質量部であることが好ましい。バインダが上記の量で含有されていれば、正極触媒層4について十分な結着性が得られ、電気抵抗値が大きくなりすぎず、電池性能の良好な燃料電池を得ることができるからである。
【0027】
負極触媒層9は、負極拡散層10を介して拡散してきた水素を酸化する機能を有している。負極触媒層9は、例えば、触媒を担持した炭素粉末(触媒担持炭素粉末)と、プロトン伝導性材料とを含有している。必要に応じて、樹脂などのバインダを更に含有していてもよい。
【0028】
負極触媒層9に係る触媒は、水素を酸化できれば特に制限はなく、例えば、正極触媒層4に係る触媒として例示した上記の各触媒を用いることができる。負極触媒層9に係る上記炭素粉末、プロトン伝導性材料、およびバインダについても、正極触媒層4に係る炭素粉末、プロトン伝導性材料、およびバインダとして例示した上記の各材料を用いることができる。
【0029】
固体電解質膜11は、プロトンを輸送可能であり、かつ、電子伝導性は示さない材料で構成された膜であれば、特に制限はない。固体電解質膜11を構成し得る材料としては、例えば、ポリパーフルオロスルホン酸樹脂、具体的には、デュポン社製の「ナフィオン(登録商標)」、旭硝子社製の「フレミオン(登録商標)」、旭化成工業社製の「アシプレックス(商品名)」などが挙げられる。その他、スルホン化ポリエーテルスルホン酸樹脂、スルホン化ポリイミド樹脂、硫酸ドープポリベンズイミダゾールなども、固体電解質膜11の材料として用いることができる。
【0030】
正極集電板1および負極集電板8は、例えば、白金、金などの貴金属;ステンレス鋼などの耐食性金属;カーボン;などの材料で構成されている。また、耐食性向上のために、上記の各材料の表面にメッキや塗装が施されている場合もある。
【0031】
なお、図1において、6はシリコーンゴムなどからなるシール材である。
【0032】
正極集電板1の端部には正極リード線5が接続され、負極集電板8の端部には負極リード線12が接続されている。例えば、必要に応じて、図1に示す燃料電池を複数個用い、それぞれを正極リード線5および負極リード線12で接続することで、直列または並列に燃料電池を配置することも可能である。
【0033】
燃料電池では、正極触媒層で還元される酸素は、通常、空気として供給される。そのため、燃料電池には、正極触媒層への空気供給手段が備えられている。図1に示す実施形態では、正極触媒層4(正極拡散層3)への空気供給手段として、正極集電体1に空気孔2が設けられており、この空気孔2から、大気中の空気(酸素)が正極拡散層3を通過して正極触媒層4に供給されるようになっている。
【0034】
一方、負極集電板8には、燃料流路13が形成されており、燃料供給部(図示しない)に接続された燃料流路入口7から燃料流路13内に入ってくる燃料(水素)が、負極拡散層10を通過して負極触媒層9へ供給されるようになっている。そして、燃料流路13の燃料流路入口7の他端側には、ガス排出口14が設けられている。燃料流路内に侵入した不純ガスは、燃料の一部と共にガス排出口14から外部へ排出される。
【0035】
ガス排出口14には、燃料流路13内のガスを、ガス排出口14における圧力に応じてガス排出量を制御しつつ外部に排出するための機構として、ガス排出調整器200が設けられている。ガス排出調整器200は、ガス圧応答バネ15、ガス圧応答ピストン16、ガス排出絞り−ガス圧応答ピストン連結体17、およびガス排出絞り18を有している。ガス排出口14のガスの圧力は、供給される燃料の圧力や発電状態によって変化する。このときの圧力の変化に対応して、ガス圧応答ピストン16が移動し、ガス排出絞り18の位置が調整され、ガス排出口14の開度が制御される。
【0036】
図2および図3に、ガス排出口14の圧力が異なる場合のガス排出絞り18の状態を示す。図2は、ガス排出口14のガスの圧力が低い場合を示している。ガス圧応答バネ15は、負荷が掛かっていないときには、縮んだ状態となるバネである。そのため、ガス排出口14のガスの圧力が低くなると、ガス圧応答バネ15が縮み、ガス圧応答ピストン16は図中左方向に移動した状態になる。この場合、ガス圧応答ピストン16の移動に伴って、このガス圧応答ピストン16に連結体17で連結されたガス排出絞り18も、図中左方向に移動し、ガス排出口14におけるガス排出抵抗が低い状態となる。
【0037】
他方、図3には、ガス排出口14のガスの圧力が高い場合を示している。ガス排出口14のガスの圧力が高くなると、ガス圧応答ピストン16の燃料流路13内側(図中左側)の壁面に掛かる圧力が高くなり、ガス圧応答バネ15が図中右方向に引き伸ばされて、ガス圧応答ピストン16も図中右方向に移動した状態となる。この場合、ガス圧応答ピストン16の移動に伴って、このガス圧応答ピストン16に連結体17で連結されたガス排出絞り18も図中右方向に移動し、ガス排出口14におけるガス排出抵抗が高い状態となる。通常、ガス排出口のガスの圧力が高い場合には、それに応じて排出されるガスの量が増加するが、本実施形態では、ガス排出絞り18が図中右方向に移動し、ガス排出抵抗が大きくなっているため、排出されるガス量を抑えることができる。
【0038】
本実施形態の燃料電池では、以上の機構によって、燃料流路13内の不純ガスをガス排出口14から排出するに当たり、ガス排出口14における圧力に応じて外部へ排出されるガス量を制御できるため、不純ガス排出時に同時に排出される水素の排出量を抑えることが可能となる。
【0039】
例えば、燃料電池内(燃料流路内)への不純ガスの侵入は、空気との接触のために正極側が開放されている燃料電池作動時(発電時)に特に生じ易いため、燃料流路内における不純ガスを含むガスの外部への排出は、燃料電池の作動の際に継続することが好ましい。しかしながら、単にガス排出口を開口して燃料流路内のガスを排出するのでは、ガス排出口の圧力が高いとガス排出量が多くなり、不純ガスと同時に排出されてしまう燃料(水素)量も多くなってしまう。これに対し、本発明の燃料電池では、上記機構の採用によって、ガス排出口の圧力が高い場合においても、ガス排出口の圧力が低い場合と比べて、外部へ排出されるガス量をあまり増大させずに済む。そのため、特に燃料電池の作動時に連続的に不純ガスを排出しても、その際の燃料の排出を可及的に抑制することができるため、電池の発電性能を維持しつつ、発電効率の向上も達成することができる。また、上記の通り、燃料流路内のガスの排出を制御する上記機構は簡易な構造であり、上記燃料電池の大型化を招くような特殊な装置(ガス排出口の開閉を制御するための装置など)などを用いる必要もないため、燃料電池の小型化も達成できる。
【0040】
なお、本実施形態の燃料電池に係るガス排出調整器200には、燃料流路13内の圧力と燃料電池外部の大気圧との差圧に応じてガス排出口14を閉じる機構として、ガス排出絞り−出口蓋連結体19とガス排出口蓋20が設けられている。ガス排出口蓋20は、ガス排出絞り−出口蓋連結体19を介してガス排出絞り18と連結されており、更には、連結体19を介してガス圧応答ピストン16と連結されている。そのため、ガス排出口14におけるガスの圧力の変化に応じて位置が変化するガス圧応答ピストン16に連動して、ガス排出絞り18と共に移動する。
【0041】
例えば、図2や図3に示すように、ガス排出口14の圧力が所定値以上の場合には、ガス排出口蓋20はガス排出口14と接触しておらず、ガス排出口14は開いた状態にある。これに対し、ガス排出口14の圧力が所定値以下となったときの状態を図4に示す。図4に示すように、ガス排出口14の圧力が非常に低くなることで、ガス圧応答ピストン16が図中左方向に大きく移動し、それに伴って、ガス排出絞り18およびガス排出口蓋20も図中左方向に大きく移動し、ガス排出口蓋20がガス排出口14を塞ぐ状態となり、燃料流路13と外部との間のガスの移動を遮断する。
【0042】
このように、燃料流路13内の圧力と燃料電池外部の大気圧との差圧に応じてガス排出口14を閉じる機構によって、例えば、発電および燃料の供給が停止した場合、燃料流路13内の圧力が一定の値に低下した段階で、自動的にガス排出口14を塞ぐことができる。これにより、発電停止時の燃料流路内を水素で満たされた状態を保持することが可能となることから、再起動時に瞬時に発電することが可能となる。
【0043】
なお、燃料流路13内のガスを、ガス排出口14における圧力に応じてガス排出量を制御しつつ外部に排出するための機構、および燃料流路13内の圧力と燃料電池外部の大気圧との差圧に応じてガス排出口14を閉じる機構の別の実施形態を図5および図6に示す。
【0044】
図5および図6は、上記の両機構を有する燃料電池の、ガス排出口14近傍を拡大した断面概略図であり、それぞれ、(a)にガス排出口14の圧力が低い場合、(b)にガス排出口14の圧力が高い場合、(c)にガス排出口14の圧力が所定値以下で、例えば燃料電池が停止状態にある場合を示している。
【0045】
図5に示す実施形態では、一端を固定したガス圧応答バネ15の他端に連結されたガス圧応答ピストン16に、ガス排出口14の開度を調節するためのバルブ21およびガス排出口蓋20が、連結体23、22を介して連結されている。そして、ガス排出口14のガスの圧力に応じて図中左右方向に移動するガス圧応答ピストン16に連動して、バルブ21がガス排出口14の開度を変化させることでガス排出量が制御される。また、ガス排出口14のガスの圧力が所定値以下となった場合には、図中左方向に大きく移動するガス圧応答ピストン16に連動してガス排出口蓋20が図中左方向に移動し、ガス排出口14が塞がれる。
【0046】
また、図6に示す実施形態では、一端を固定したガス応答バネ15の他端に連結されたガス排出絞り18に、ガス排出口蓋20が、連結体19を介して連結されている。そして、ガス排出絞り18が、ガス排出口14のガスの圧力に応じて図中左右方向に移動するため、ガス排出口14の開度が変化し、ガス排出量が制御される。また、ガス排出口14のガスの圧力が所定値以下となった場合には、図中左方向に大きく移動するガス排出絞り18に連動してガス排出口蓋20が図中左方向に移動し、ガス排出口14が塞がれる。
【0047】
次に、ガス排出口が閉じたときに正極触媒層と空気との接触を遮断する機構を有する燃料電池の実施形態を、図7および図8を用いて説明する。この実施形態では、正極集電体1に設けられた空気孔2を塞ぐための空気孔蓋24を有しており、この空気孔蓋24とガス排出口蓋20が、ガス排出口蓋−空気孔蓋連結体25で連結されており、空気孔蓋24は、ガス排出口蓋20と連動して移動することができる。
【0048】
図7に示すように、ガス排出口14の圧力が所定値以上の場合には、ガス排出口蓋20はガス排出口14と接触しておらず、ガス排出口14が開口した状態となっている。この際、連結体25でガス排出口蓋20に連結された空気孔蓋24は、正極集電体1の空気孔2を塞がないような位置に保持される。
【0049】
一方、図8に示すように、ガス排出口14の圧力が所定値以下となった場合、ガス排出口蓋20はガス排出口14を塞ぐように移動し、燃料流路13と外部とのガスの移動を遮断する。この時、連結体25でガス排出口蓋20に連結された空気孔蓋24は、ガス排出口蓋20に連動して、空気孔2を塞ぐ位置に移動する。
【0050】
以上のように、本実施形態の燃料電池では、ガス排出口の圧力が所定値以下に下がり、ガス排出口が閉じたときに、正極触媒層と空気との接触が遮断されるため、発電停止時において、正極側から燃料流路内への不純ガスの侵入を抑制することが可能である。
【0051】
なお、図1、図2、図7および図8には図示していないが、燃料流路13には、内部の圧力が高い場合に、燃料流路内に存在するガスを外部に逃がす弁を設けることが好ましく、この場合には、燃料流路内が高圧になることによる燃料電池の破裂を防止でき、安全性の高い燃料電池とすることができる。
【0052】
また、本発明の燃料電池では、図1、図2、図7および図8には図示していないが、燃料流路入口7は燃料供給部に接続されており、この燃料供給部から燃料である水素が燃料流路13に供給される。燃料供給部としては特に制限はなく、従来公知の燃料電池で採用されているもの(水素タンクや水素発生装置など)が採用できるが、例えば、燃料供給部として着脱可能な水素供給カートリッジを用いることが好ましく、この場合には、燃料が消費されてしまった際にも、この水素供給カートリッジを交換することで、瞬時に発電することが可能となる。
【0053】
本発明で採用し得る水素供給カートリッジの一例を図9に示す。図9の水素供給カートリッジは、水素発生材料32と水とを内部に密閉しかつ両者を反応させるための容器31と、水供給口33、水素導出口34とを備え、マイクロポンプなどにより、水供給パイプ35を通じて、水供給口33から水素発生材料32に水を連続的に供給できるようになっている。あるいは、水を充填した別の容器を水素供給カートリッジの一部に予め備えておき、燃料電池または燃料電池を駆動電源とする機器(携帯電子機器など)に、水素供給カートリッジが装着された後、その水が容器31内に供給されるような構造であってもよい。供給された水は、容器31内で水素発生材料32と反応して水素を発生させる。生成した水素は、水素導出口34を通じて水素導出パイプ37から燃料電池に供給される。
【0054】
水素発生材料32は、アルミニウム、マグネシウム、ケイ素、亜鉛、ナトリウム、リチウムなどの金属や、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化カルシウムなどの水素化物など、水と反応して水素を発生する材料であればよい。
【0055】
容器31に用いる材質は、水および水素を透過しにくく、かつ100℃程度に加熱しても破損しない材質であれば特に限定されるものではなく、例えば、アルミニウム、チタン、ニッケルなどの金属;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネートなどの樹脂;アルミナ、シリカ、チタニアなどのセラミックス;ガラス(特に耐熱ガラス);などの材料を用いることができる。また、水供給パイプ35および水素導出パイプ37の材質についても、容器31と同様である。なお、容器31の周囲は、発泡スチロールなどの断熱性の高い材料で構成される保温材で覆っていることも好ましい。更に、水素以外の内容物が外に漏れ出すのを防ぐため、水素導出口34に、必要に応じて気液分離膜などのフィルターを設置してもよい。
【0056】
水供給パイプ35から供給された水は主に水素発生材料32との反応に直接供されるが、一部は、吸水材36a、36bにより保持される。吸水材36a、36bは必ずしも必要ではないが、水素発生反応による水の消費に応じて、吸水材36a、36bにより保持された水も水素発生材料に供給されるため、水素発生速度の時間変動をある程度抑制することが可能となる。吸水材は、水を吸って保持することのできる材質のものであれば特に限定されるものではなく、一般には脱脂綿や不織布などを用いることができる。
【0057】
以上のように、本発明の燃料電池は、簡易な構成で発電効率の向上を達成できるものであり、その特性を生かして、パソコン、携帯電話などのコードレス機器の駆動電源などとして用いることができる。
【実施例】
【0058】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は本発明を制限するものではなく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施をすることは、全て本発明の技術的範囲に包含される。
【0059】
実施例1
図1に示す燃料電池に、水素ボンベから純度99.99999%の水素を30kPaの圧力で供給し、電流値100mA/cm2および300mA/cm2をそれぞれ10分ずつ繰り返し印加し、排出されるガスの圧力および量を測定した。
【0060】
300mA/cm2の電流値で燃料電池が発電している場合、ガス排出口14のガスの圧力が10kPaとなり、その時、ガス排出量は0.1ml/minとなった。また、同様の圧力で水素が供給され、100mA/cm2の電流値で燃料電池が発電している場合、ガス排出口14のガスの圧力が20kPaとなって、ガス排出口14とガス排出絞り18の隙間が狭くなり、その時、ガス排出量は0.12ml/minとなった。以上のように、実施例1の燃料電池では、発電量の減少によってガス排出口14のガス圧が増加したにもかかわらず、ガス排出調整器200の作用によってガスの排出量は大幅な増加はなく、燃料である水素のロスを抑えることができた。
【0061】
比較例1
ガス排出調整器を有しない図10に示す燃料電池に、水素ボンベから純度99.99999%の水素を30kPaの圧力で供給し、電流値100mA/cm2および300mA/cm2をそれぞれ10分ずつ繰り返し印加し、排出されるガスの圧力および量を測定した。
【0062】
300mA/cm2の電流値で燃料電池が発電している場合、ガス排出口14のガスの圧力が1kPaとなり、その時、ガス排出量は0.3ml/minとなった。また、100mA/cm2の電流値で燃料電池が発電している場合、ガス排出口14のガスの圧力が3kPaとなり、ガス排出量は0.8ml/minとなった。以上のように、比較例1の燃料電池ではガス排出調整器がないために、ガス排出口14のガスの圧力が高い場合に、ガスの排出量が大幅に増加し、多量の燃料ロスが生じた。
【0063】
比較例2
ガス排出調整器に代えてガス排出バルブを設けた図11に示す燃料電池に、水素ボンベから純度99.99999%の水素を30kPaの圧力で供給し、最初の1分間、ガス排出バルブを開放した後、バルブを閉じて電流値100mA/cm2および300mA/cm2をそれぞれ10分ずつ繰り返し印加した。放電時間と共に出力が徐々に低下し、2時間後に放電不能となった。これは、不純ガスが混入し、徐々に蓄積したために水素濃度が低下した結果、発電に必要な水素が電極へ供給できなくなったためである。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の燃料電池の一実施形態を示す断面概略図である。
【図2】図1の要部の拡大図である。
【図3】図2の燃料電池の要部の作動の様子を示す断面概略図である。
【図4】図2の燃料電池の要部の作動の様子を示す断面概略図である。
【図5】本発明の燃料電池の他の実施形態の要部を示す断面概略図である。
【図6】本発明の燃料電池の他の実施形態の要部を示す断面概略図である。
【図7】本発明の燃料電池の他の実施形態を示す断面概略図である。
【図8】図7の燃料電池の作動の様子を示す断面概略図である。
【図9】水素供給カートリッジの一例を示す概略図である。
【図10】比較例1の燃料電池の断面概略図である。
【図11】比較例2の燃料電池の断面概略図である。
【符号の説明】
【0065】
2 空気孔
4 正極触媒層
9 負極触媒層
11 固体電解質膜
13 燃料流路
14 ガス排出口
15 ガス圧応答バネ
16 ガス圧応答ピストン
18 ガス排出絞り
20 ガス排出口蓋
21 バルブ
24 空気孔蓋
100 電極・電解質一体化物(MEA)
200 ガス排出調整器
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パソコン、携帯電話などのコードレス機器の普及に伴い、その電源である二次電池はますます小型化、高容量化が要望されている。現在、エネルギー密度が高く小型軽量化を図り得る二次電池としてリチウムイオン二次電池が実用化されており、ポータブル電源としての需要が増大している。しかし、使用されるコードレス機器の種類によっては、このリチウム二次電池では未だ十分な連続使用時間を保証する程度にまでは至っていない。
【0003】
このような状況の中で、上記要望に応え得る電池として、固体高分子形燃料電池(PEFC)が開発されている。この固体高分子形燃料電池は、正極で酸素を還元し負極で水素を酸化する反応を利用して発電し、電気を取り出すことのできる電池である。
【0004】
固体高分子形燃料電池では、正極で還元する酸素を空気中から取り込むため、正極が外気と接触した状態となる。他方、負極は水素と酸化反応することから、水素(燃料)を導入するための燃料流路が負極に接して設けられるが、燃料流路内は、外気との接触を避け、水素で満たされた状態を維持しなくてはならない。燃料流路内において、外気との接触などで水素以外の不純ガスが一旦侵入すると、負極に供給される燃料中の水素濃度の低下によって、発電性能の低下や発電不能が生じることがある。
【0005】
そのため、燃料流路内へ不純ガスが侵入してしまった場合には、これを除去しなければならない。例えば、特許文献1には、こうした燃料流路内に侵入した不純ガスを、燃料流路に設けられたガス排出口から、ユーザーが手動で除去したり、または発電時の一定時間について自動的に除去したり、若しくは一定時間毎に自動的に除去したりする技術が提案されている。
【0006】
【特許文献1】特開2002−158020号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、負極への水素の供給圧力や燃料電池の発電状態によって、燃料流路のガス排出口付近では、不純ガスを含有している燃料ガスの当該箇所での圧力が変化しているため、上記の除去方法では不純ガス除去時に同時に排出される燃料(水素)の排出量も変化してしまう。そのため、例えば、ガス排出口における圧力が高い場合には、ガス排出口から排出されるガス量が多くなり、発電に利用されず燃料電池外に排出される水素量も増大してしまうことから、エネルギーロスの一因となっており、燃料電池の発電効率の低下を引き起こす場合があった。
【0008】
また、燃料流路内のガスの除去を手動で行なう場合にはユーザーの手間となる。更に、燃料流路内のガスを、発電時の一定期間に自動的に除去したり、一定期間毎に自動的に除去する場合においても、それらを検知するための装置や排出口を開放するために装置が必要となる。そのため、構造の複雑化や余分な電力の消費を引き起こしたり、また電池システムとしてコンパクト化ができないなどの問題があった。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、発電効率の高い燃料電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成し得た本発明の燃料電池は、酸素を還元する正極触媒層、燃料を酸化する負極触媒層、および上記正極触媒層と上記負極触媒層の間に設けられた固体電解質膜からなる電極・電解質一体化物(MEA)と、上記正極触媒層へ空気を導入するための機構と、燃料供給部から供給される燃料を上記負極触媒層へ導入するために、負極に接して設けられた燃料流路を備えたものであり、上記燃料流路は、内部に存在するガスを外部に排出するためのガス排出口を有し、かつ上記ガス排出口から外部に排出する上記燃料流路内のガス量を、ガス排出口における圧力に応じて制御する機構を有することを特徴とするものである。
【0011】
本発明では、上記構成を有することにより、燃料流路内に存在する不純ガスをガス排出口から排出する際に、不純ガスと同時に排出される水素ガス量を制御することができる。そのため、喩えガス排出口での圧力が高くなっていても、余分な水素の排出量を抑えることができ、エネルギーロスを抑制して発電効率を高めることができる。
【0012】
なお、上記燃料電池は、燃料流路内の圧力と燃料電池外部の大気圧との差圧に応じてガス排出口を閉じる機構や、更に、ガス排出口が閉じたときに正極触媒層と空気との接触を遮断する機構を有していることが好ましい。また、上記燃料電池は、燃料流路内の圧力が高い場合に燃料流路内に存在するガスを逃がす弁を有していることも好ましい。
【0013】
更に、上記燃料電池は、燃料供給部として、着脱可能な水素供給カートリッジを有していることも好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、発電効率の高い燃料電池が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。ただし、後記の各図面に示す実施形態は本発明の一例に過ぎず、本発明は、これらの図面に示したものに限定される訳ではない。
【0016】
図1は、本発明の燃料電池の実施形態の一例を示す断面概略図である。図1の実施形態では、正極集電板1と負極集電板8との間に、電極・電解質一体化物(MEA)100が配置されている。
【0017】
MEA100は、酸素を還元する正極触媒層4と、水素を酸化する負極触媒層9とを有しており、更に、正極触媒層4と負極触媒層9との間に固体電解質膜11を備えている。また、正極触媒層4の固体電解質膜11側の面の反対面には、積層された正極拡散層3を有しており、負極触媒層9の固体電解質膜11側の面の反対面には、積層された負極拡散層10を有している。
【0018】
正極拡散層3および負極拡散層10は、多孔性の電子伝導性材料などから構成され、例えば、撥水処理を施した多孔質炭素シートなどが用いられる。なお、正極拡散層3や負極拡散層10の触媒層側には、更なる撥水性向上および触媒層との接触向上を目的として、フッ素樹脂粒子[ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂粒子など]を含む炭素粉末のペーストが塗布されている場合もある。
【0019】
正極触媒層4は、正極拡散層3を介して拡散してきた酸素を還元する機能を有している。正極触媒層4は、例えば、触媒を担持した炭素粉末(触媒担持炭素粉末)と、プロトン伝導性材料とを含有している。また、必要に応じて、樹脂バインダを更に含有していてもよい。
【0020】
正極触媒層4の含有する触媒としては、酸素を還元できるものであれば特に制限はないが、例えば、白金微粒子が挙げられる。また、上記触媒は、鉄、ニッケル、コバルト、錫、ルテニウムおよび金よりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素と白金との合金で構成される微粒子などであってもよい。
【0021】
触媒の担体である炭素粉末としては、例えば、BET比表面積が10〜2000m2/gであり、平均粒子径が20〜100nmのカーボンブラックなどが用いられる。炭素粉末への上記触媒の担持は、例えば、コロイド法などで行うことができる。
【0022】
上記炭素粉末と上記触媒との含有比率としては、例えば、炭素粉末100質量部に対して、触媒が5〜400質量部であることが好ましい。このような含有比率であれば、十分な触媒活性を有する正極触媒層が構成できるからである。また、例えば、炭素粉末上に触媒を析出させる方法(例えば、コロイド法)で触媒担持炭素粉末が作製される場合には、炭素粉末と触媒とが上記の含有比率であれば、触媒の径が大きくなりすぎず、十分な触媒活性が得られるからである。
【0023】
正極触媒層4に含まれるプロトン伝導性材料としては、特に制限はないが、例えば、ポリパーフルオロスルホン酸樹脂、スルホン化ポリエーテルスルホン酸樹脂、スルホン化ポリイミド樹脂などのスルホン酸基を有する樹脂を用いることができる。ポリパーフルオロスルホン酸樹脂としては、具体的には、デュポン社製の「ナフィオン(登録商標)」、旭硝子社製の「フレミオン(登録商標)」、旭化成工業社製の「アシプレックス(商品名)」などが挙げられる。
【0024】
正極触媒層4におけるプロトン伝導性材料の含有量は、触媒担持炭素粉末100質量部に対して、2〜200質量部であることが好ましい。プロトン伝導性材料が上記の量で含有されていれば、正極触媒層4において十分なプロトン伝導性が得られ、電気抵抗値が大きくなりすぎず、電池性能の良好な燃料電池を得ることができるからである。
【0025】
正極触媒層4に係るバインダとしては、特に制限はないが、例えば、PTFE、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(E/TFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)およびポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)などのフッ素樹脂や、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリスチレン、ポリエステル、アイオノマー、ブチルゴム、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体およびエチレン・アクリル酸共重合体などの非フッ素樹脂などが用いることができる。
【0026】
正極触媒層4におけるバインダの含有量は、触媒担持炭素粉末100質量部に対して、0.01〜100質量部であることが好ましい。バインダが上記の量で含有されていれば、正極触媒層4について十分な結着性が得られ、電気抵抗値が大きくなりすぎず、電池性能の良好な燃料電池を得ることができるからである。
【0027】
負極触媒層9は、負極拡散層10を介して拡散してきた水素を酸化する機能を有している。負極触媒層9は、例えば、触媒を担持した炭素粉末(触媒担持炭素粉末)と、プロトン伝導性材料とを含有している。必要に応じて、樹脂などのバインダを更に含有していてもよい。
【0028】
負極触媒層9に係る触媒は、水素を酸化できれば特に制限はなく、例えば、正極触媒層4に係る触媒として例示した上記の各触媒を用いることができる。負極触媒層9に係る上記炭素粉末、プロトン伝導性材料、およびバインダについても、正極触媒層4に係る炭素粉末、プロトン伝導性材料、およびバインダとして例示した上記の各材料を用いることができる。
【0029】
固体電解質膜11は、プロトンを輸送可能であり、かつ、電子伝導性は示さない材料で構成された膜であれば、特に制限はない。固体電解質膜11を構成し得る材料としては、例えば、ポリパーフルオロスルホン酸樹脂、具体的には、デュポン社製の「ナフィオン(登録商標)」、旭硝子社製の「フレミオン(登録商標)」、旭化成工業社製の「アシプレックス(商品名)」などが挙げられる。その他、スルホン化ポリエーテルスルホン酸樹脂、スルホン化ポリイミド樹脂、硫酸ドープポリベンズイミダゾールなども、固体電解質膜11の材料として用いることができる。
【0030】
正極集電板1および負極集電板8は、例えば、白金、金などの貴金属;ステンレス鋼などの耐食性金属;カーボン;などの材料で構成されている。また、耐食性向上のために、上記の各材料の表面にメッキや塗装が施されている場合もある。
【0031】
なお、図1において、6はシリコーンゴムなどからなるシール材である。
【0032】
正極集電板1の端部には正極リード線5が接続され、負極集電板8の端部には負極リード線12が接続されている。例えば、必要に応じて、図1に示す燃料電池を複数個用い、それぞれを正極リード線5および負極リード線12で接続することで、直列または並列に燃料電池を配置することも可能である。
【0033】
燃料電池では、正極触媒層で還元される酸素は、通常、空気として供給される。そのため、燃料電池には、正極触媒層への空気供給手段が備えられている。図1に示す実施形態では、正極触媒層4(正極拡散層3)への空気供給手段として、正極集電体1に空気孔2が設けられており、この空気孔2から、大気中の空気(酸素)が正極拡散層3を通過して正極触媒層4に供給されるようになっている。
【0034】
一方、負極集電板8には、燃料流路13が形成されており、燃料供給部(図示しない)に接続された燃料流路入口7から燃料流路13内に入ってくる燃料(水素)が、負極拡散層10を通過して負極触媒層9へ供給されるようになっている。そして、燃料流路13の燃料流路入口7の他端側には、ガス排出口14が設けられている。燃料流路内に侵入した不純ガスは、燃料の一部と共にガス排出口14から外部へ排出される。
【0035】
ガス排出口14には、燃料流路13内のガスを、ガス排出口14における圧力に応じてガス排出量を制御しつつ外部に排出するための機構として、ガス排出調整器200が設けられている。ガス排出調整器200は、ガス圧応答バネ15、ガス圧応答ピストン16、ガス排出絞り−ガス圧応答ピストン連結体17、およびガス排出絞り18を有している。ガス排出口14のガスの圧力は、供給される燃料の圧力や発電状態によって変化する。このときの圧力の変化に対応して、ガス圧応答ピストン16が移動し、ガス排出絞り18の位置が調整され、ガス排出口14の開度が制御される。
【0036】
図2および図3に、ガス排出口14の圧力が異なる場合のガス排出絞り18の状態を示す。図2は、ガス排出口14のガスの圧力が低い場合を示している。ガス圧応答バネ15は、負荷が掛かっていないときには、縮んだ状態となるバネである。そのため、ガス排出口14のガスの圧力が低くなると、ガス圧応答バネ15が縮み、ガス圧応答ピストン16は図中左方向に移動した状態になる。この場合、ガス圧応答ピストン16の移動に伴って、このガス圧応答ピストン16に連結体17で連結されたガス排出絞り18も、図中左方向に移動し、ガス排出口14におけるガス排出抵抗が低い状態となる。
【0037】
他方、図3には、ガス排出口14のガスの圧力が高い場合を示している。ガス排出口14のガスの圧力が高くなると、ガス圧応答ピストン16の燃料流路13内側(図中左側)の壁面に掛かる圧力が高くなり、ガス圧応答バネ15が図中右方向に引き伸ばされて、ガス圧応答ピストン16も図中右方向に移動した状態となる。この場合、ガス圧応答ピストン16の移動に伴って、このガス圧応答ピストン16に連結体17で連結されたガス排出絞り18も図中右方向に移動し、ガス排出口14におけるガス排出抵抗が高い状態となる。通常、ガス排出口のガスの圧力が高い場合には、それに応じて排出されるガスの量が増加するが、本実施形態では、ガス排出絞り18が図中右方向に移動し、ガス排出抵抗が大きくなっているため、排出されるガス量を抑えることができる。
【0038】
本実施形態の燃料電池では、以上の機構によって、燃料流路13内の不純ガスをガス排出口14から排出するに当たり、ガス排出口14における圧力に応じて外部へ排出されるガス量を制御できるため、不純ガス排出時に同時に排出される水素の排出量を抑えることが可能となる。
【0039】
例えば、燃料電池内(燃料流路内)への不純ガスの侵入は、空気との接触のために正極側が開放されている燃料電池作動時(発電時)に特に生じ易いため、燃料流路内における不純ガスを含むガスの外部への排出は、燃料電池の作動の際に継続することが好ましい。しかしながら、単にガス排出口を開口して燃料流路内のガスを排出するのでは、ガス排出口の圧力が高いとガス排出量が多くなり、不純ガスと同時に排出されてしまう燃料(水素)量も多くなってしまう。これに対し、本発明の燃料電池では、上記機構の採用によって、ガス排出口の圧力が高い場合においても、ガス排出口の圧力が低い場合と比べて、外部へ排出されるガス量をあまり増大させずに済む。そのため、特に燃料電池の作動時に連続的に不純ガスを排出しても、その際の燃料の排出を可及的に抑制することができるため、電池の発電性能を維持しつつ、発電効率の向上も達成することができる。また、上記の通り、燃料流路内のガスの排出を制御する上記機構は簡易な構造であり、上記燃料電池の大型化を招くような特殊な装置(ガス排出口の開閉を制御するための装置など)などを用いる必要もないため、燃料電池の小型化も達成できる。
【0040】
なお、本実施形態の燃料電池に係るガス排出調整器200には、燃料流路13内の圧力と燃料電池外部の大気圧との差圧に応じてガス排出口14を閉じる機構として、ガス排出絞り−出口蓋連結体19とガス排出口蓋20が設けられている。ガス排出口蓋20は、ガス排出絞り−出口蓋連結体19を介してガス排出絞り18と連結されており、更には、連結体19を介してガス圧応答ピストン16と連結されている。そのため、ガス排出口14におけるガスの圧力の変化に応じて位置が変化するガス圧応答ピストン16に連動して、ガス排出絞り18と共に移動する。
【0041】
例えば、図2や図3に示すように、ガス排出口14の圧力が所定値以上の場合には、ガス排出口蓋20はガス排出口14と接触しておらず、ガス排出口14は開いた状態にある。これに対し、ガス排出口14の圧力が所定値以下となったときの状態を図4に示す。図4に示すように、ガス排出口14の圧力が非常に低くなることで、ガス圧応答ピストン16が図中左方向に大きく移動し、それに伴って、ガス排出絞り18およびガス排出口蓋20も図中左方向に大きく移動し、ガス排出口蓋20がガス排出口14を塞ぐ状態となり、燃料流路13と外部との間のガスの移動を遮断する。
【0042】
このように、燃料流路13内の圧力と燃料電池外部の大気圧との差圧に応じてガス排出口14を閉じる機構によって、例えば、発電および燃料の供給が停止した場合、燃料流路13内の圧力が一定の値に低下した段階で、自動的にガス排出口14を塞ぐことができる。これにより、発電停止時の燃料流路内を水素で満たされた状態を保持することが可能となることから、再起動時に瞬時に発電することが可能となる。
【0043】
なお、燃料流路13内のガスを、ガス排出口14における圧力に応じてガス排出量を制御しつつ外部に排出するための機構、および燃料流路13内の圧力と燃料電池外部の大気圧との差圧に応じてガス排出口14を閉じる機構の別の実施形態を図5および図6に示す。
【0044】
図5および図6は、上記の両機構を有する燃料電池の、ガス排出口14近傍を拡大した断面概略図であり、それぞれ、(a)にガス排出口14の圧力が低い場合、(b)にガス排出口14の圧力が高い場合、(c)にガス排出口14の圧力が所定値以下で、例えば燃料電池が停止状態にある場合を示している。
【0045】
図5に示す実施形態では、一端を固定したガス圧応答バネ15の他端に連結されたガス圧応答ピストン16に、ガス排出口14の開度を調節するためのバルブ21およびガス排出口蓋20が、連結体23、22を介して連結されている。そして、ガス排出口14のガスの圧力に応じて図中左右方向に移動するガス圧応答ピストン16に連動して、バルブ21がガス排出口14の開度を変化させることでガス排出量が制御される。また、ガス排出口14のガスの圧力が所定値以下となった場合には、図中左方向に大きく移動するガス圧応答ピストン16に連動してガス排出口蓋20が図中左方向に移動し、ガス排出口14が塞がれる。
【0046】
また、図6に示す実施形態では、一端を固定したガス応答バネ15の他端に連結されたガス排出絞り18に、ガス排出口蓋20が、連結体19を介して連結されている。そして、ガス排出絞り18が、ガス排出口14のガスの圧力に応じて図中左右方向に移動するため、ガス排出口14の開度が変化し、ガス排出量が制御される。また、ガス排出口14のガスの圧力が所定値以下となった場合には、図中左方向に大きく移動するガス排出絞り18に連動してガス排出口蓋20が図中左方向に移動し、ガス排出口14が塞がれる。
【0047】
次に、ガス排出口が閉じたときに正極触媒層と空気との接触を遮断する機構を有する燃料電池の実施形態を、図7および図8を用いて説明する。この実施形態では、正極集電体1に設けられた空気孔2を塞ぐための空気孔蓋24を有しており、この空気孔蓋24とガス排出口蓋20が、ガス排出口蓋−空気孔蓋連結体25で連結されており、空気孔蓋24は、ガス排出口蓋20と連動して移動することができる。
【0048】
図7に示すように、ガス排出口14の圧力が所定値以上の場合には、ガス排出口蓋20はガス排出口14と接触しておらず、ガス排出口14が開口した状態となっている。この際、連結体25でガス排出口蓋20に連結された空気孔蓋24は、正極集電体1の空気孔2を塞がないような位置に保持される。
【0049】
一方、図8に示すように、ガス排出口14の圧力が所定値以下となった場合、ガス排出口蓋20はガス排出口14を塞ぐように移動し、燃料流路13と外部とのガスの移動を遮断する。この時、連結体25でガス排出口蓋20に連結された空気孔蓋24は、ガス排出口蓋20に連動して、空気孔2を塞ぐ位置に移動する。
【0050】
以上のように、本実施形態の燃料電池では、ガス排出口の圧力が所定値以下に下がり、ガス排出口が閉じたときに、正極触媒層と空気との接触が遮断されるため、発電停止時において、正極側から燃料流路内への不純ガスの侵入を抑制することが可能である。
【0051】
なお、図1、図2、図7および図8には図示していないが、燃料流路13には、内部の圧力が高い場合に、燃料流路内に存在するガスを外部に逃がす弁を設けることが好ましく、この場合には、燃料流路内が高圧になることによる燃料電池の破裂を防止でき、安全性の高い燃料電池とすることができる。
【0052】
また、本発明の燃料電池では、図1、図2、図7および図8には図示していないが、燃料流路入口7は燃料供給部に接続されており、この燃料供給部から燃料である水素が燃料流路13に供給される。燃料供給部としては特に制限はなく、従来公知の燃料電池で採用されているもの(水素タンクや水素発生装置など)が採用できるが、例えば、燃料供給部として着脱可能な水素供給カートリッジを用いることが好ましく、この場合には、燃料が消費されてしまった際にも、この水素供給カートリッジを交換することで、瞬時に発電することが可能となる。
【0053】
本発明で採用し得る水素供給カートリッジの一例を図9に示す。図9の水素供給カートリッジは、水素発生材料32と水とを内部に密閉しかつ両者を反応させるための容器31と、水供給口33、水素導出口34とを備え、マイクロポンプなどにより、水供給パイプ35を通じて、水供給口33から水素発生材料32に水を連続的に供給できるようになっている。あるいは、水を充填した別の容器を水素供給カートリッジの一部に予め備えておき、燃料電池または燃料電池を駆動電源とする機器(携帯電子機器など)に、水素供給カートリッジが装着された後、その水が容器31内に供給されるような構造であってもよい。供給された水は、容器31内で水素発生材料32と反応して水素を発生させる。生成した水素は、水素導出口34を通じて水素導出パイプ37から燃料電池に供給される。
【0054】
水素発生材料32は、アルミニウム、マグネシウム、ケイ素、亜鉛、ナトリウム、リチウムなどの金属や、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化カルシウムなどの水素化物など、水と反応して水素を発生する材料であればよい。
【0055】
容器31に用いる材質は、水および水素を透過しにくく、かつ100℃程度に加熱しても破損しない材質であれば特に限定されるものではなく、例えば、アルミニウム、チタン、ニッケルなどの金属;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネートなどの樹脂;アルミナ、シリカ、チタニアなどのセラミックス;ガラス(特に耐熱ガラス);などの材料を用いることができる。また、水供給パイプ35および水素導出パイプ37の材質についても、容器31と同様である。なお、容器31の周囲は、発泡スチロールなどの断熱性の高い材料で構成される保温材で覆っていることも好ましい。更に、水素以外の内容物が外に漏れ出すのを防ぐため、水素導出口34に、必要に応じて気液分離膜などのフィルターを設置してもよい。
【0056】
水供給パイプ35から供給された水は主に水素発生材料32との反応に直接供されるが、一部は、吸水材36a、36bにより保持される。吸水材36a、36bは必ずしも必要ではないが、水素発生反応による水の消費に応じて、吸水材36a、36bにより保持された水も水素発生材料に供給されるため、水素発生速度の時間変動をある程度抑制することが可能となる。吸水材は、水を吸って保持することのできる材質のものであれば特に限定されるものではなく、一般には脱脂綿や不織布などを用いることができる。
【0057】
以上のように、本発明の燃料電池は、簡易な構成で発電効率の向上を達成できるものであり、その特性を生かして、パソコン、携帯電話などのコードレス機器の駆動電源などとして用いることができる。
【実施例】
【0058】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は本発明を制限するものではなく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施をすることは、全て本発明の技術的範囲に包含される。
【0059】
実施例1
図1に示す燃料電池に、水素ボンベから純度99.99999%の水素を30kPaの圧力で供給し、電流値100mA/cm2および300mA/cm2をそれぞれ10分ずつ繰り返し印加し、排出されるガスの圧力および量を測定した。
【0060】
300mA/cm2の電流値で燃料電池が発電している場合、ガス排出口14のガスの圧力が10kPaとなり、その時、ガス排出量は0.1ml/minとなった。また、同様の圧力で水素が供給され、100mA/cm2の電流値で燃料電池が発電している場合、ガス排出口14のガスの圧力が20kPaとなって、ガス排出口14とガス排出絞り18の隙間が狭くなり、その時、ガス排出量は0.12ml/minとなった。以上のように、実施例1の燃料電池では、発電量の減少によってガス排出口14のガス圧が増加したにもかかわらず、ガス排出調整器200の作用によってガスの排出量は大幅な増加はなく、燃料である水素のロスを抑えることができた。
【0061】
比較例1
ガス排出調整器を有しない図10に示す燃料電池に、水素ボンベから純度99.99999%の水素を30kPaの圧力で供給し、電流値100mA/cm2および300mA/cm2をそれぞれ10分ずつ繰り返し印加し、排出されるガスの圧力および量を測定した。
【0062】
300mA/cm2の電流値で燃料電池が発電している場合、ガス排出口14のガスの圧力が1kPaとなり、その時、ガス排出量は0.3ml/minとなった。また、100mA/cm2の電流値で燃料電池が発電している場合、ガス排出口14のガスの圧力が3kPaとなり、ガス排出量は0.8ml/minとなった。以上のように、比較例1の燃料電池ではガス排出調整器がないために、ガス排出口14のガスの圧力が高い場合に、ガスの排出量が大幅に増加し、多量の燃料ロスが生じた。
【0063】
比較例2
ガス排出調整器に代えてガス排出バルブを設けた図11に示す燃料電池に、水素ボンベから純度99.99999%の水素を30kPaの圧力で供給し、最初の1分間、ガス排出バルブを開放した後、バルブを閉じて電流値100mA/cm2および300mA/cm2をそれぞれ10分ずつ繰り返し印加した。放電時間と共に出力が徐々に低下し、2時間後に放電不能となった。これは、不純ガスが混入し、徐々に蓄積したために水素濃度が低下した結果、発電に必要な水素が電極へ供給できなくなったためである。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の燃料電池の一実施形態を示す断面概略図である。
【図2】図1の要部の拡大図である。
【図3】図2の燃料電池の要部の作動の様子を示す断面概略図である。
【図4】図2の燃料電池の要部の作動の様子を示す断面概略図である。
【図5】本発明の燃料電池の他の実施形態の要部を示す断面概略図である。
【図6】本発明の燃料電池の他の実施形態の要部を示す断面概略図である。
【図7】本発明の燃料電池の他の実施形態を示す断面概略図である。
【図8】図7の燃料電池の作動の様子を示す断面概略図である。
【図9】水素供給カートリッジの一例を示す概略図である。
【図10】比較例1の燃料電池の断面概略図である。
【図11】比較例2の燃料電池の断面概略図である。
【符号の説明】
【0065】
2 空気孔
4 正極触媒層
9 負極触媒層
11 固体電解質膜
13 燃料流路
14 ガス排出口
15 ガス圧応答バネ
16 ガス圧応答ピストン
18 ガス排出絞り
20 ガス排出口蓋
21 バルブ
24 空気孔蓋
100 電極・電解質一体化物(MEA)
200 ガス排出調整器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素を還元する正極触媒層、燃料を酸化する負極触媒層、および上記正極触媒層と上記負極触媒層の間に設けられた固体電解質膜からなる電極・電解質一体化物と、上記正極触媒層へ空気を導入するための機構と、燃料供給部から供給される燃料を上記負極触媒層へ導入するために、負極に接して設けられた燃料流路を備えた燃料電池であって、
上記燃料流路は、内部に存在するガスを外部に排出するためのガス排出口を有し、かつ上記ガス排出口から外部に排出する上記燃料流路内のガス量を、ガス排出口における圧力に応じて制御する機構を有することを特徴とする燃料電池。
【請求項2】
燃料流路内の圧力と燃料電池外部の大気圧との差圧に応じて、ガス排出口を閉じる機構を有する請求項1に記載の燃料電池。
【請求項3】
ガス排出口が閉じたときに、正極触媒層と空気との接触を遮断する機構を有する請求項2に記載の燃料電池。
【請求項4】
燃料流路内の圧力が高い場合に、燃料流路内に存在するガスを逃がす弁を有する請求項1〜3のいずれかに記載の燃料電池。
【請求項5】
燃料供給部として、着脱可能な水素供給カートリッジを有する請求項1〜4のいずれかに記載の燃料電池。
【請求項1】
酸素を還元する正極触媒層、燃料を酸化する負極触媒層、および上記正極触媒層と上記負極触媒層の間に設けられた固体電解質膜からなる電極・電解質一体化物と、上記正極触媒層へ空気を導入するための機構と、燃料供給部から供給される燃料を上記負極触媒層へ導入するために、負極に接して設けられた燃料流路を備えた燃料電池であって、
上記燃料流路は、内部に存在するガスを外部に排出するためのガス排出口を有し、かつ上記ガス排出口から外部に排出する上記燃料流路内のガス量を、ガス排出口における圧力に応じて制御する機構を有することを特徴とする燃料電池。
【請求項2】
燃料流路内の圧力と燃料電池外部の大気圧との差圧に応じて、ガス排出口を閉じる機構を有する請求項1に記載の燃料電池。
【請求項3】
ガス排出口が閉じたときに、正極触媒層と空気との接触を遮断する機構を有する請求項2に記載の燃料電池。
【請求項4】
燃料流路内の圧力が高い場合に、燃料流路内に存在するガスを逃がす弁を有する請求項1〜3のいずれかに記載の燃料電池。
【請求項5】
燃料供給部として、着脱可能な水素供給カートリッジを有する請求項1〜4のいずれかに記載の燃料電池。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−66688(P2007−66688A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−251010(P2005−251010)
【出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】
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