説明

燃料電池

【課題】効率よく短時間で燃料電池の劣化を回復させるようにする。
【解決手段】本発明はアノードとカソードとを電解質の両側に積層した単位セルを有するセルユニット内外に、二種類の反応用ガスを互いに分離して流通させることによる発電を行う燃料電池を有する燃料電池システムA1において、単位セルを昇温させる単位セル昇温手段C1と、単位セルが所定の温度以上となったか否かを判定するセル温度判定手段C2と、単位セルが所定の温度以上になったと判定したときには、水素ガスをアノードに送給するための水素ガス送給手段C3とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば固体高分子形燃料電池(PEFC)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の燃料電池として、特許文献1に開示された構成のものがある。
特許文献1に開示された燃料電池は、燃料極と空気極のうち、燃料極の表面の被覆物を除去する除去手段を備えたものであり、燃料ガスを前記燃料極の表面に吹き付けることにより該表面の被覆物を除去して劣化を回復させるとした実施形態が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−191428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、燃料極表面に燃料ガスを吹き付けるという手法では、劣化した燃料極の回復を行なわせるには不十分であり、また、劣化の回復に長時間を要してしまうという欠点がある。
【0005】
そこで本発明は、効率よく短時間で燃料電池の劣化を回復させることができる燃料電池システムの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明は、アノードとカソードとを電解質の両側に積層した単位セルを有するセルユニット内外に、二種類の反応用ガスを互いに分離して流通させることによる発電を行う燃料電池を有する燃料電池システムにおいて、単位セルを昇温させる単位セル昇温手段と、単位セルが所定の温度以上となったか否かを判定するセル温度判定手段と、単位セルが所定の温度以上になったと判定したときには、水素ガスをアノードに送給するための水素ガス送給手段とを有している。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、単位セルを昇温させ、その単位セルが所定の温度以上となったか否かを判定し、単位セルが所定の温度以上になったと判定したときには、水素ガスをアノードに送給しているので、燃料電池の劣化を短時間で効率よく回復させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第一の実施形態に係る燃料電池システムのハードウェアの概略構成を示すブロック図である。
【図2】(A),(B)は、イリジウム触媒を用いた単位セルの概念図である。
【図3】第一の実施形態に係る燃料電池システムの動作を示すフローチャートである。
【図4】第二の実施形態に係る燃料電池システムの動作を示すフローチャートである。
【図5】第三の実施形態に係る燃料電池システムの動作を示すフローチャートである。
【図6】第四の実施形態に係る燃料電池システムの動作を示すフローチャートである。
【図7】第五の実施形態に係る燃料電池システムの動作を示すフローチャートである。
【図8】第六の実施形態に係る燃料電池システムの動作を示すフローチャートである。
【図9】第七の実施形態に係る燃料電池システムの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。図1は、本発明の第一の実施形態に係る燃料電池システムのハードウェアの概略構成を示すブロック図、図2(A),(B)は、イリジウム触媒を用いた単位セルの概念図である。
【0010】
本発明の第一の実施形態に係る燃料電池システムA1は、一方の反応用ガスを流通させるためのガス流通路10、他方の反応用ガスを流通させるためのガス流通路11、後述するセルスタック20を冷却する冷却媒体を流通させるための冷却媒体流通路12及び電力を出力するための出力経路13が、燃料電池Bを中心として形成されている。
本実施形態における一方の反応用ガスは水素ガス、他方の反応用ガスは空気である。
【0011】
燃料電池Bは、セルスタック20をケース14に収容したものである。
セルスタック20は、複数のセルユニット21…を互いに間隙をもって積層してなるものである。
セルユニット21は、図2(A),(B)に示すように、アノード(燃料極)22とカソード(空気極)23とを電解質24の両側に対設した固体高分子型の単位セル25をセパレータ(図示しない)内に収容したものであり、そのアノード22とカソード23とに、二種類の反応用ガスを互いに分離して流接させることによる発電を行うものである。
【0012】
本実施形態において示すアノード22は、イリジウム触媒を用いることにより、図2(A)に示すように、起動時のカソードカーボン腐食抑制と耐久性向上を図ったものである。すなわち、Ptと比較してIrのORR活性が低いので、カソード電位の上昇が抑制され、カーボン腐食量を低減させている。これにより、Ptを低減させる以上の効果がある。
【0013】
また、図2(B)に示すように、水素欠乏時のアノードカーボン腐食抑制・耐久・信頼性向上を図ることができる。すなわち、Ptと比較して高電位におけるIrの水電解(酸素発生)活性が高く、アノード22の電位上昇を抑制することができるため、カーボン腐食量が低減するのである。
さらに、 アノード22の非Pt化を図ることにより、さらにはPt量を低減することにより、コストの低減を図ることができる。
【0014】
ところで、一方の反応用ガスを流通させるためのガス流通路10は、水素タンクTからセルスタックBに至る経路10aに供給弁30、セルスタックBから系路外に至る経路10bに遮断弁31がそれぞれ配設されている。
【0015】
他方の反応用ガスを流通させるためのガス流通路11の経路11a,11bのうち、経路11aにはコンプレッサ32が配設されている。
上記した冷却媒体流通路12には、これのセルスタックBからラジエータ33に至る経路12aに三方弁34、ラジエータ33からセルスタックBに至る経路12bに冷却ポンプ35とセル温度測定センサS1が配設されているとともに、その三方弁34と経路12bとの間にはバイパス路12cが設けられている。
【0016】
三方弁34は、冷却媒体(以下、「冷却水」という。)を、ラジエータ33とバイパス路12cとに選択的に流通させるためのものである。換言すると、ラジエータ33を介さずに流通させることにより、冷却水の温度を高められるようにしている。
【0017】
セル温度測定センサS1は、セルユニット21の温度、従ってまた、単位セル25の温度を測定するためのものであり、本実施形態においては経路12bに設けているが、これに限らず、セルスタックBの入口側又は出口側若しくはそれらの両側に配設することができる。
このようなセル温度測定センサS1を設けることにより、単位セル25の温度を確実に測定することができる。
【0018】
コンプレッサ32は、他方の反応用ガスである空気をセルスタックBに圧送するためのものである。
水素ガスは、供給弁30を通じてセルスタックBに供給され、遮断弁31によって流通路内のガス圧力や排出量を調整するようにしている。なお、水素ガスは循環的に利用しても直接排出してもよい。
本実施形態に示す「水素ガス」は、相対湿度30パーセント以下であるが、相対湿度0パーセント以下にすることもできる。このような相対湿度にすることにより、還元能力を高めることができる。
【0019】
コントロールユニットCは、CPU(Central Processing Unit)、インターフェース回路等(いずれも図示しない)からなる中央制御部と、ハードディスク,半導体メモリ等からなるメモリとを有するものである。
【0020】
メモリには、中央制御部に所要の機能を発揮させるためのプログラム等が記憶されている。
中央制御部は、メモリに記憶されている本燃料電池システムA1に用いるプログラムの実行により以下の各機能を発揮する。
【0021】
1)単位セル25の劣化を判定する機能。この機能を「セル劣化判定手段C1」という。
単位セル25の劣化は、積層したセルユニット21…のうちの両端部側に配設したものに接続した電圧計9によって「転極」を検知している。本実施形態においては、その電圧計9が劣化検知部である。
なお、電圧計9を単一のセルユニット21に接続したものにかぎらず、二つ以上のものに共通に接続してもよい。
【0022】
本実施形態における「単位セル25の劣化」は、「転極」を一回検知することにより行なう。
「転極」は、水素欠乏時において電流を取り出そうとする際、アノード22の反応が0Vでは起こらず、アノード22の電位がカソード23の電位(1.2V)以上に上昇し、計測電圧がマイナスになる状態をいう。
燃料電池Bにおいて転極するパターンは様々あるが、主な原因は水素欠乏であるため、転極したときは水素欠乏によりアノード22が劣化したとみなすことができる。
このようなセル劣化判定手段C1を設けることにより、単位セル25の劣化を確実に検知することができる。
【0023】
2)単位セル25の劣化を検知したときには、単位セル25が所定の温度以上であるか否かを判定する機能。この機能を「セル温度判定手段C2」という。
「所定の温度」は、燃料電池Bの運転温度であり、例えば50℃〜70℃を想定している。すなわち、回復操作を行なわせたい温度(約90℃)に近いために、迅速に温度を上昇させて回復させることができる。
所定の温度未満の場合には、回復操作を行いたい温度(約90℃)まで上昇させるに時間を要し、また、単位セル25に負担がかかることが考えられるために、回復操作は十分に温度があがっているシステム停止直前(車両停止時)に実施する。
【0024】
3)単位セル25を昇温させるための機能。この機能を「単位セル昇温手段C3」という。
単位セル25を運転温度より高温にするために、電流を引くことで過電圧を上昇させ、結果的に温度を速やかに上げることができる。余剰の電力はバッテリ(図示しない)に充電したり、図示しない補機類で消費させる。また、特にバッテリに充電することなく通常走行をしてもよい。
【0025】
4)単位セル25が所定の温度以上になったと判定したときには、水素ガスをアノード22に送給するための機能。この機能を「水素ガス送給手段C4」という。
5)単位セル25の劣化を検知しないときには、発電時間が所定時間よりも大きいか否かを判定する機能。この機能を「発電時間判定手段C5」という。
「所定時間」は、劣化が生じると想定される時間である。
【0026】
第一の実施形態に係る燃料電池システムA1の動作について、図3を参照して説明する。図3は、第一の実施形態に係る燃料電池システムA1の動作を示すフローチャートである。
【0027】
ステップSa1(図3において、単に「Sa1」と略記する。以下同様。):転極を検知したか否かを判定し、転極を検知したときにはステップSa2に進み、そうでなければステップSa4に進む。
【0028】
ステップSa2:単位セル25の温度が所定の温度よりも高いか否かを判定し、単位セル25の温度が所定の温度よりも高いと判定されればステップ3に進み、そうでなければステップ6に進む。
「所定温度」は運転温度(50〜70℃)のことであり、それより高ければ昇温する(+10℃あるいは90℃以上)。
【0029】
ステップSa3:運転時に、制御温度より単位セル25の温度を上昇させる。
「昇温」は単位セル25の性能に影響の与えない温度まで行う。具体的には、100℃若しくはそれ以上である。
【0030】
ステップSa4:発電時間が所定時間よりも大きいか否かを判定し、発電時間が所定時間を超えたと判定すればステップSa2に進み、そうでなければ処理を終了する。
「所定時間」は、数百時間オーダーである。すなわち、転極を検知していなくても、長いスパンでは劣化の可能性があるので、一定期間の経過後に回復操作を行うようにしている。
【0031】
ステップSa5:停止時(非発電時)において、制御温度よりセルユニット21の温度を上昇させて、ステップSa6に進む。
【0032】
ステップSa6:連続乾燥、及び水素ガスのパージを行なう。
具体的には、水素ガスを流し続けてもよく、遮断弁31を用いた循環式若しくは脈動式でもよい。
すなわち、転極を一回検知することによりアノード22が僅かに劣化する。その劣化を蓄積させないため、速やかに回復させるのである。
【0033】
ステップSa7:電圧回復の確認を行ない、電圧が回復していなければステップSa6に戻り、電圧が回復していれば処理を終了する。
具体的には、単位セル25の性能が回復したかどうかを、所定の電流値(アイドル電流等)における電圧値で判断する。例えば劣化前の90%以上なら回復したとみなす。
【0034】
次に、第二の実施形態に係る燃料電池システムA2について説明する。
第二の実施形態に係る燃料電池システムA2は、上記した第一の実施形態に係る燃料電池システムA1において次の機能を設けた構成のものであり、また、ハードウェアの構成についても同等のものであるので、ここでは、その説明を省略する。
【0035】
6)劣化を検知したと判定したときには、単位セル25の電圧が所定の電圧より低いか否かを判定する機能。この機能を「セル電圧判定手段C6」という。
この場合、セル温度判定手段C2は、単位セル25の電圧が所定の電圧より低いと判定したときに、単位セル25が所定の温度以上であるか否かを判定する。
このようなセル電圧判定手段C6を設けることにより、単位セル25の劣化を確実に検知することができる。
【0036】
次に、第二の実施形態に係る燃料電池システムA2について説明する。図4は、第二の実施形態に係る燃料電池システムA2の動作を示すフローチャートである。
第二の実施形態に係る燃料電池システムA2の動作は、上述した第二の実施形態に係る燃料電池システムA2において説明したものに、ステップSb1を追加した内容になっている。
ステップSb1:セルユニット21の電圧、従ってまた、単位セル25の電圧が所定の電圧より低いか否かを判定し、当該電圧が所定の電圧より低いと判定したときにはステップSa2に進み、そうでない場合にはステップSa1に戻る。
なお、ステップSa2以下は、上記図3において説明したものと同等の内容であるので、ここでは、その詳細な説明を省略する。
【0037】
次に、第三の実施形態に係る燃料電池システムA3について説明する。
第三の実施形態に係る燃料電池システムA3は、上記した第一の実施形態に係る燃料電池システムA1において説明した劣化判定手段の機能が相違するのみであり、また、ハードウェアの構成については同等のものであるので、ここでは、劣化判定手段について説明する。
7)単位セル25の劣化を判定する機能。この機能を「劣化判定手段C1」という。
本実施形態においては、転極した回数が所定の回数を超えたか否かを検知することにより、劣化の判定を行なっている。
「所定の回数」については、たとえば実験等によって算出する値である。
このようなセル劣化判定手段C1を設けることにより、単位セル25の劣化を確実に検知することができる。
【0038】
第三の実施形態に係る燃料電池システムA3の動作は、上述した第一の実施形態に係る燃料電池システムA1において説明したステップSa1の内容が相違しているので、そのステップSa1のみを説明し、他のステップについての説明を省略する。
【0039】
ステップSa1:転極した回数が所定の回数よりも多いか否かを判定し、転極した回数が所定回数よりも多いと判定したときにはステップSa2に進み、そうでない場合にはステップSa6に進む。
【0040】
第四の実施形態に係る燃料電池システムA4について説明する。
第四の実施形態に係る燃料電池システムA4は、上記した第三の実施形態に係る燃料電池システムA3において説明した劣化判定手段C1に、第二の実施形態に係る燃料電池システムA2において説明したセル電圧判定手段C6を設けたものである。
なお、劣化判定手段C1とセル電圧判定手段C6については、第二,第三の実施形態に係る燃料電池システムA2,A3において説明しているので、ここでは、それらの説明を省略する。
【0041】
図6は、第四の実施形態に係る燃料電池システムA4の動作を示すフローチャートである。
ステップSa1:転極した回数が所定の回数よりも多いか否かを判定し、転極した回数が所定回数よりも多いと判定したときにはステップSa2に進み、そうでない場合にはステップSa4に進む。
【0042】
ステップSb1:単位セル25の電圧が所定の電圧より低いか否かを判定し、当該電圧が所定の電圧より低いと判定したときにはステップSa2に進み、そうでない場合には、ステップSa1に戻る。
なお、ステップSa2以下については、上記したものと同等であるので、それらの詳細な説明を省略する。
【0043】
次に、第五の実施形態に係る燃料電池システムA5について説明する。
第五の実施形態に係る燃料電池システムA5は、上記した第一の実施形態に係る燃料電池システムA1において説明した劣化判定手段の機能が相違するのみであり、また、ハードウェアの構成については同等のものであるので、ここでは、劣化判定手段について説明する。
【0044】
8)単位セル25の劣化を判定する機能。この機能を「劣化判定手段C1」という。
本実施形態においては、単位セル25の劣化時間が所定時間よりも長いか否かに基づいて判定している。
本実施形態においては、「転極」している時間に基づいて劣化の判定を行なっている。
【0045】
図7は、第五の実施形態に係る燃料電池システムA5の動作を示すフローチャートである。
ステップSa1:転極時間が所定時間よりも長いか否かを判定し、転極時間が所定時間よりも長いと判定したときにはステップSa2に進み、そうでない場合にはステップSa4に進む。
なお、ステップSa2以下については、上記したものと同等であるので、それらの詳細な説明を省略する。
【0046】
次に、第六の実施形態に係る燃料電池システムA6の動作について説明する。
第六の実施形態に係る燃料電池システムA6は、上記した第一の実施形態に係る燃料電池システムA1において説明したものとは機能が異なる劣化判定手段C1に、第二の実施形態に係る燃料電池システムA2において説明したセル電圧判定手段C6を設けたものである。
なお、セル電圧判定手段C6については、第三の実施形態に係る燃料電池システムA3において説明しているので、ここでは、それらの説明を省略する。
【0047】
9)単位セル25の劣化を判定する機能。この機能を「劣化判定手段C1」という。
本実施形態においては、空気を置換した回数が所定の回数以上になったか否かに基づいて劣化を判定している。
「空気を置換」するとは、本燃料電池システムA6を搭載した例えば車両が停止したときに、燃料電池Bに空気が流入することである。
「所定の回数」については、たとえば実験等によって算出する値である。
このような劣化判定手段C1を設けることにより、転極を検知することなく、単位セル25の劣化を回復させることができる。
【0048】
図8は、第六の実施形態に係る燃料電池システムA6の動作を示すフローチャートである。
ステップSc1:空気を置換した回数が、所定回数以上になったか否かを判定し、空気を置換した回数が、所定回数以上になったと判定したときには、ステップSa2に進み、そうでない場合にはステップSa4に進む。
なお、ステップSb1以下については、上記したものと同等であるので、それらの詳細な説明を省略する。
【0049】
次に、第七の実施形態に係る燃料電池システムA7について説明する。
第七の実施形態に係る燃料電池システムA7は、上記した第一の実施形態に係る燃料電池システムA1において説明した劣化判定手段の機能が相違している。
10)単位セル25の劣化を判定する機能。この機能を「セル劣化判定手段C1」という。
本実施形態における「単位セル25の劣化」は、定期点検であるか否かによって判定している。
「定期点検」とは、例えば燃料を供給することであり、具体的には燃料供給口の蓋の開閉を検知したときである。
【0050】
図9は、第七の実施形態に係る燃料電池システムA7の動作を示すフローチャートである。
ステップSd1:定期点検か否かを判定し、定期点検であると判定した場合には、ステップS2に進む。
ステップSa2:制御温度よりも単位セル25を温度を上昇させて、ステップSa3に進む。
ステップSa3:連続乾燥、及び水素ガスのパージを行なう。
具体的には、水素ガスを流し続けてもよく、遮断弁31を用いた循環式若しくは脈動式でもよい。すなわち、定期点検の度に、アノード22の劣化を蓄積させないため、速やかに回復させるのである。
【0051】
ステップSa4:電圧回復の確認を行ない、電圧が回復していなければステップ4に戻り、そうでなければ、処理を終了する。
具体的には、単位セル25の性能が回復したかどうかを、所定の電流値(アイドル電流等)における電圧値で判断する。例えば劣化前の90%以上なら回復したとみなす。
【0052】
なお、本発明は上述した実施形態に限るものではなく、次のような変形実施が可能である。
・上述した実施形態においては、三方弁34によって、冷却水をバイパス路12cを介して流通させることにより、冷却水の温度を高められるようにした例について説明したが、例えば、ラジエータ33のファン33aの作動を一時的に停止させて、冷却効率を下げることにより単位セル25の温度を上げてもよく、さらには、冷却ポンプ35を停止してもよい。
【0053】
・上述した実施形態においては、単位セル25の温度を制御温度より高温にするために、電流を引くことで過電圧を上昇させ、結果的に温度を速やかに上げる例について説明したが、単位セル25を例えばヒータを用いて加熱して昇温させるようにしてもよい。
この場合、ヒータの配設位置としては、セルスタックに直接設けてもよく、上記した冷却水経路中に設置してもよい。さらには、環境温度が零下になることを考慮して、起動用にも適用しやすいバイパス路に設置してもよい。
また、電流を引くことで過電圧を上昇させるとともにヒータによる加熱を併用してもよい。
【0054】
・上述した実施形態においては、劣化判定手段を設けた構成について説明したが、劣化判定手段を設けることなく、単位セルを昇温させる単位セル昇温手段、単位セルが所定の温度以上となったか否かを判定するセル温度判定手段、及び単位セルが所定の温度以上になったと判定したときには、水素ガスをアノードに送給するための水素ガス送給手段とを有する構成にしてもよい。
【符号の説明】
【0055】
9 劣化検知部(電圧計)
22 アノード
23 カソード
24 電解質
25 単位セル
21 セルユニット
A1〜A7 燃料電池システム
B 燃料電池
C1 セル劣化判定手段
C2 セル温度判定手段
C3 単位セル昇温手段
C4 水素ガス送給手段
C6 セル電圧判定手段
S1 セル温度測定センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノードとカソードとを電解質の両側に積層した単位セルを有するセルユニット内外に、二種類の反応用ガスを互いに分離して流通させることによる発電を行う燃料電池を有する燃料電池システムにおいて、
単位セルを昇温させる単位セル昇温手段と、
単位セルが所定の温度以上となったか否かを判定するセル温度判定手段と、
単位セルが所定の温度以上になったと判定したときには、水素ガスをアノードに送給するための水素ガス送給手段とを有することを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
アノードとカソードとを電解質の両側に積層した単位セルを有するセルユニット内外に、二種類の反応用ガスを互いに分離して流通させることによる発電を行う燃料電池と、その単位セルの劣化を検知する劣化検知部とを有する燃料電池システムにおいて、
劣化検知部を介して単位セルが劣化しているか否かを判定するセル劣化判定手段と、
単位セルが劣化していると判定したときには、単位セルを昇温させる単位セル昇温手段と、
単位セルが所定の温度以上となったか否かを判定するセル温度判定手段と、
単位セルが所定の温度以上になったと判定したときには、水素ガスをアノードに送給するための水素ガス送給手段とを有することを特徴とする燃料電池システム。
【請求項3】
単位セルの温度を測定するためのセル温度測定センサを備えており、
セル温度測定センサによって測定した単位セルの温度が所定の温度以上であるか否かを判定するセル温度判定手段と、
単位セルの温度が所定の温度以上であると判定したときには、単位セル昇温手段は、発電中において単位セルを昇温することを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
単位セルの温度を測定するためのセル温度測定センサを備えており、
セル温度測定センサによって測定した単位セルの温度が所定の温度以上であるか否かを判定するセル温度判定手段と、
単位セルの温度が所定の温度未満であると判定したときには、単位セル昇温手段は、停止時において単位セルを昇温することを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
セル電圧が所定の電圧以上になったか否かを判定するセル電圧判定手段を有しており、
セル電圧が所定の電圧以上になったと判定したときに、水素ガス送給手段による水素ガスのアノードへの送給を停止することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
セル劣化判定手段は、劣化したことを一回検知することにより、単位セルの劣化を判定することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項7】
セル劣化判定手段は、劣化した回数により、単位セルの劣化を判定することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項8】
セル劣化判定手段は、劣化している時間により、単位セルの劣化を判定することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項9】
燃料極の転極により劣化を判定することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項10】
空気置換回数により単位セルの劣化を判定することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項11】
単位セルの温度が所定の温度以下のときには、非発電時において、水素ガス送給手段が水素ガスをアノードに送給することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項12】
水素ガスは、相対湿度30パーセント以下であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項13】
水素ガスは、相対湿度0パーセント以下であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−138176(P2012−138176A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−287909(P2010−287909)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】