説明

燃焼工程の温度制御

本明細書は、空気供給と、燃料供給と、その中で空気と燃料を混合し燃焼することの可能な燃焼ゾーンと、燃焼ゾーン内の少なくとも1点の温度を測定することの可能な、燃焼ゾーン内に配置された温度検知器と、制御システムとを含む装置を開示し、該制御システムは、温度検知器が測定した温度を伝達することの可能なプロセッサと、プロセッサによって制御され伝達された温度に応答して燃焼ゾーンへの空気の流速を調節することの可能な空気流調節装置とを含む。また、本発明者らは改質器と、発電施設と、装置を含む又は装置に付属する燃料電池も開示する。さらに、本発明者らは、燃焼ゾーン内の少なくとも1点の温度を所望の温度範囲に維持する方法を開示し、所望の温度範囲の上限値を特定する工程と、燃焼ゾーンへ空気と燃料を供給する工程であって、空気がある空気供給速度で供給され、燃料がある燃料供給速度で供給され、O/C比が化学量論的O/C比よりも大きいとき、燃焼ゾーン中に存在する空気の量と燃料の量が燃料に対する酸素の比(「O/C比」)を規定する工程と、燃焼ゾーン内の少なくとも1点の温度を測定する工程と、O/C比が継続的に化学量論的O/C比よりも大きいとき、燃焼ゾーン内の少なくとも1点の温度が所望の温度範囲のおよその上限値よりも高ければ、空気供給速度を高める工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は燃料処理器に関し、さらに詳細には燃料処理器における酸化器の温度制御に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池技術は化石燃料の燃焼を利用する、より伝統的なエネルギー源の代替のエネルギー源である。燃料電池は典型的に燃料と酸素から電気、水、熱を生成する。さらに詳細には、燃料電池は化学的酸化還元反応から電気を提供し、清浄さと効率の面で他の電力発生の形よりも大きな利点を有する。典型的に、燃料電池は燃料として水素を、酸化剤として酸素を用いる。電力の発生は反応物の消費速度に比例する。
【0003】
燃料電池のさらに広い使用を抑制する大きな欠点は、普及している水素の社会的生産基盤がないことである。水素は比較的容積エネルギー密度が低く、最近の電力発生装置の大部分に用いられる炭化水素燃料よりも貯蔵と輸送が難しい。この困難を克服する1つの方法は、「燃料処理器」又は「改質器」を用いて、炭化水素燃料を燃料電池の原料として使用できる水素に富むガス流に変換することである。天然ガス、LPG、ガソリン、ジーゼルなどの炭化水素ベースの燃料は、大部分の燃料電池の燃料源として使用するための変換工程が必要である。現在の技術は最初の変換工程にいくつかの清浄化工程を組み合わせた複数段階の工程を用いる。最初の工程はほとんど蒸気改質(「SR」)、自己発熱改質(「ATR」)、触媒部分酸化(「CPOX」)、又は非触媒部分酸化(「POX」)である。清浄化工程は、通常、脱硫、高温水−気体転移、低温水−気体転移、選択的CO酸化、又は選択的COメタン化の組合せからなる。代替の工程は水素選択性メンブレン反応器及びフィルターを含む。
【0004】
したがって、多くの種類の燃料を使用することができ、それらのいくつかは化石燃料との混成であるが、理想的な燃料は水素である。例えば、燃料が水素であるならば、燃焼は非常に清浄で、実際に燃焼及び/又は熱の消費及び電気の消費の後、水だけが残る。最も容易に入手可能な燃料(例えば天然ガス、プロパン及びガソリン)、及びあまり一般的ではないもの(例えばメタノール及びエタノール)も、その分子構造中に水素を含む。したがって、いくつかの燃料電池の器具には、特定の燃料を処理して燃料電池の燃料として用いられる比較的純粋な水素流を生成する「燃料処理器」が利用される。
【0005】
燃料電池が活用されて百年以上になるが、技術は未だに未成熟であると考えられる。この状態の原因は多く、難しい。しかし、最近の潜在的な、市場的な、環境的な状況は燃料電池技術への関心を刺激してきた。即ち、高まった関心によって技術開発のペースが高められた。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態において、本発明は、
空気供給と、
燃料供給と、
その中で空気と燃料を混合し燃焼することの可能な燃焼ゾーンと、
燃焼ゾーン内の少なくとも1点の温度を測定することの可能な、燃焼ゾーン内に配置された温度検知器と、
制御システム(control system;制御系統)とを含む装置に関し、該制御システムは、
温度検知器が測定した温度を伝達することの可能なプロセッサと、
プロセッサによって制御され、伝達された温度に応答して燃焼ゾーンへの空気の流速を調節することの可能な空気流調節装置とを含む。
【0007】
他の実施形態において、本発明は、燃焼ゾーン内の少なくとも1点の温度を所望の温度範囲内に維持する方法に関し、
所望の温度範囲の上限値を特定する工程と、
空気と燃料を燃焼ゾーンに供給する工程であって、空気がある空気供給速度で供給され、燃料がある燃料供給速度で供給され、燃料に対する酸素の比(「O/C比」)が化学量論的O/C比よりも大きいとき、燃焼ゾーン中に存在する空気の量と燃料の量がO/C比を規定する工程と、
燃焼ゾーン内の少なくとも1点の温度を測定する工程と、
O/C比が継続的に化学量論的O/C比よりも大きいとき、燃焼ゾーン内の少なくとも1点の温度が所望の温度範囲のおよその上限値よりも高ければ、空気供給速度を高める工程とを含む。
【0008】
他の実施形態において、本発明は、燃焼ゾーン内の少なくとも1点の温度を所望の温度範囲内に維持する方法に関し、
所望の温度範囲の下限値を特定する工程と、
空気と燃料を燃焼ゾーンに供給する工程であって、空気がある空気供給速度で供給され、燃料がある燃料供給速度で供給され、O/C比が化学量論的O/C比よりも大きいとき、燃焼ゾーン中に存在する空気の量と燃料の量がO/C比を規定する工程と、
燃焼ゾーン内の少なくとも1点の温度を測定する工程と、
O/C比が継続的に化学量論的O/C比よりも大きいとき、燃焼ゾーン内の少なくとも1点の温度が所望の温度範囲のおよその下限値未満であれば、空気供給速度を下げる工程とを含む。
【0009】
さらに他の実施形態において、本発明は、燃料の改質に用いられる方法に関し、
空気を燃焼ゾーンに供給する工程と、
燃料を燃焼ゾーンに供給する工程と、
燃焼ゾーン内の少なくとも1点の温度を測定する工程と、
伝達された温度に応答して燃焼ゾーンへの空気の流速を調節する工程とを含む。
【0010】
さらに他の実施形態において、本発明は、
空気供給と、
燃料供給と、
酸化器とを含む燃料処理器に関し、該酸化器は、
その中で空気と燃料を混合し燃焼することの可能な燃焼ゾーンと、
燃焼ゾーン内の少なくとも1点の温度を測定することの可能な燃焼ゾーン内に配置された温度検知器と、
制御システムとを含み、該制御システムは、
温度検知器が測定した温度を伝達することの可能なプロセッサと、
プロセッサによって制御され、伝達された温度に応答して燃焼ゾーンへの空気の流速を調節することの可能な空気流調節装置とを含む。
【0011】
追加の実施形態において、本発明は、
燃料電池と、
燃料処理器とを含む発電施設に関し、該燃料処理器は、
空気供給と、
燃料供給と、
酸化器とを含み、該酸化器は、
その中で空気と燃料を混合し燃焼することの可能な燃焼ゾーンと、
燃焼ゾーン内の少なくとも1点の温度を測定することの可能な燃焼ゾーン内に配置された温度検知器と、
制御システムとを含み、該制御システムは、
温度検知器が測定した温度を伝達することの可能なプロセッサと、
プロセッサによって制御され、伝達された温度に応答して燃焼ゾーンへの空気の流速を調節することの可能な空気流調節装置とを含む。
【0012】
さらに追加の実施形態において、本発明は、燃料処理器の酸化器用制御システムに関し、
酸化器の燃焼ゾーン中の少なくとも1点の温度を受け取ることの可能なプロセッサと、
プロセッサによって制御され、伝達された温度に応答して燃焼ゾーンへの空気の流速を調節することの可能な空気流調節装置とを含む。
【0013】
さらに他の実施形態において、本発明は、命令をエンコードされたプログラム記憶媒体(storage medium;貯蔵媒体)に関し、コンピュータによって実行されるとき、
酸化器の燃焼ゾーン中の少なくとも1点の温度の伝達を受ける工程と、
伝達された温度に応答して燃焼ゾーンへの空気流速を調節する命令を出す工程とを含む方法を実行する。
【0014】
本発明は、以下の説明を付随する図面と共に参照することによって理解できよう。同様の参照符号は同様の要素を表す。
【0015】
本発明には様々な修正と変更を加えることができるが、図面は本明細書で詳細に説明した特定の実施形態を例示的に示す。しかし、本明細書の特定の実施形態は、開示した特定の形態に本発明を制限するものではなく、逆に、付属の請求項によって定義される本発明の本質と範囲内に包含されるすべての修正、等価、及び代替を含むことが意図されていることを理解すべきである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の例示的実施形態を以下に説明する。簡明さを期すために、実際の実施形態のすべての特徴はこの明細書には記述されない。無論、任意のそれらの実際の実施形態を開発する上で、開発者の特定の目標を達成するためには、装置関連及び事業に関連する制約を遵守することなど、実施ごとに変化する実施上に特有の多くの決定を行わなければならないことが理解されよう。さらに、それらの開発努力は複雑で時間のかかることであっても、本開示の利益を受ける当業者がやはり慣例的に行う手順であることが理解されよう。
【0017】
本発明は全体的に、工程熱を提供するために炭化水素燃料又は水素に富むガスを燃焼する装置の温度を制御する方法及び装置に関する。装置は、本明細書で燃料を空気と混合する装置として定義される「酸化器」の構成要素とすることができる。酸化器は他の装置又は工程の排出物であるテールガスを酸化することができる。一実施形態において、酸化器は燃料処理反応器と共に使用され、装置の組合せは改質器又は燃料処理器と呼ばれ、炭化水素燃料を水素に富むガスに変換するための装置である。一実施形態において、酸化器は燃料電池のアノードからのテールガスに作用し、この実施形態では酸化器は「アノードテールガス酸化器」と呼ぶことができる。本明細書に示す実施形態において、方法及び装置は炭化水素燃料から燃料電池に使用する水素に富むガス流を生成するための工程熱を提供する。しかし、装置は代替の実施形態において他の酸化器で用いることができる。さらに、本明細書に説明する装置及び方法は、特定の温度又は温度範囲内の工程熱を提供することが望ましいあらゆる用途を含んで、他の可能性のある用途が意図されている。したがって、本発明は本明細書において燃料電池と共に使用されるものとして説明されるが、本発明の範囲はそれらの用途に制限されない。
【0018】
一実施形態において、本発明は、
空気供給と、
燃料供給と、
その中で空気と燃料を混合し燃焼することの可能な燃焼ゾーンと、
該燃焼ゾーン内の少なくとも1点の温度を測定することの可能な、燃焼ゾーン内に配置された温度検知器と、
制御システムとを含む装置に関し、該制御システムは、
温度検知器が測定した温度を伝達することの可能なプロセッサと、
プロセッサによって制御され、伝達された温度に応答して燃焼ゾーンへの空気の流速を調節することの可能な空気流調節装置とを含む。
【0019】
装置100の一実施形態が図1に示される。空気供給110及び燃料供給120は空気及び燃料をそれぞれ燃焼ゾーン200へ提供する。空気供給は空気導入口(示さず)及び空気導入口と燃焼ゾーン200間のガスの連絡を可能にする1個又は複数のライン(示さず)を含む。(空気供給による空気の流れを調節するための空気流調節装置(図1には示さず)は制御システム300の一部として以下に論じる。)空気導入口は、大気、又は燃焼ゾーン200中の燃焼を可能にするのに十分な酸素を含むガス混合物の供給、又はその両方へ開放又は開放可能とすることができる。本明細書に用いる用語「空気」は、特記しない限り地球の大気のガス混合物を指し、燃料の燃焼を可能にする十分な酸素を含む任意のガス混合物を包含する。また、空気供給110は本発明の装置100を含む装置の他のゾーンへも空気を供給することができ、それらのゾーンは、中でも燃料処理反応器、燃料電池のカソード、又はその両方を含むことができる。空気供給110が他のゾーンへ空気を提供するかどうかは本発明の実施に関わる問題ではない。
【0020】
燃料供給120は燃料源(示さず)と燃焼ゾーン200間のガス又は液体の連絡を可能にする1個又は複数のライン(示さず)を含む。本明細書に用いられる用語「燃料源」は、中でも、炭化水素燃料のタンク、水素のタンク、改質器からの改質物の戻りライン、燃料電池のアノードからのアノード戻りラインなど、1種又は複数の燃料の1個又は複数の供給を含むことができる。本明細書に用いられる用語「燃料」は、炭化水素、水素、又はその両方のいずれかを含む混合物を指す。また、燃料供給120は、本発明の装置100を含む装置の他のゾーンへ燃料を提供することができ、それらのゾーンは中でも燃料処理反応器を含むことができる。燃料供給120が他のゾーンへ燃料を提供するかどうかは本発明の実施に関わる問題ではない。
【0021】
空気供給110及び燃料供給120の両方において、ラインはステンレス鋼、他の金属、ゴム、又は他の有機ポリマーから作製することができる。一般に、燃料はステンレス鋼ラインを通して提供することができる。空気供給110及び燃料供給120の両方とも、1個又は複数のバルブ(示さず)、1個又は複数の温度検知器(示さず)、1個又は複数の圧力ゲージ(示さず)、1個又は複数のフィルター(示さず)、1個又は複数の流量計(示さず)、空気供給又は燃料供給に有用な当技術分野に既知の他の装置の代替又は追加で、2個又はそれ以上の前述のものを含むことができる。調節の可能なバルブ及び他のデバイス(示さず)は手動、電気的、電子的、液圧的、又は他の技術による調節が可能なように選択することができる。
【0022】
燃焼ゾーン200において、空気供給110によって提供された空気は燃料供給120によって提供された燃料を燃焼するのに用いられる。「燃焼」は、水蒸気及び燃料に応じて二酸化炭素を生成する燃料と酸素の反応を指す。具体的には、燃料が炭化水素を含むとき、以下のような化学反応を起こすことができる(この例示的反応において、炭化水素はメタン、CHである)。
CH+2O→CO+2HO+Δ
式中、Δ(デルタ)は反応が発熱(熱を発生する)であることを示すために非定性的に用いられる。しかし、一般に反応を開始し維持するために少量の熱が必要である。
【0023】
燃料が水素を含むとき、以下の化学反応を起こすことができる。
2H+O→2HO+Δ
【0024】
再び、一般に、反応による全体的な熱の発生に拘らず、反応を開始し維持するためにいくらかの熱が必要である。燃料が炭化水素と水素の両方を含むとき、上記の化学反応の両方を起こすことができる。さらに、他の化学反応も起こり得る。それらの反応の1つは炭化水素の不完全燃焼であり、一酸化炭素(CO)がCOの代りに、又は追加で発生する。
【0025】
燃焼ゾーン200は1個又は複数の容器(示さず)を含むことができる。容器は、温度、圧力、及びその中で行われる燃焼の他の特徴に耐えることの可能な任意の適切な材料から作製することができる。一実施形態において、燃焼ゾーン200容器はステンレス鋼から作製することができる。燃焼ゾーン200の容器は、燃焼を起こすことができ、燃焼によって発生した熱を所望の位置に伝導することができ、燃焼によって発生した排出物を排気することができ、又は前述の2種又はそれ以上である任意の媒体を含むことができる。
【0026】
1個又は複数のバルブ(示さず)、1個又は複数の圧力ゲージ(示さず)、又は前述の両方とも、他のデバイス(示さず)の代替として又は追加で燃焼ゾーン200の外部であるがその近くに配設することができる。
【0027】
燃焼ゾーン200は、図2A及び2Bによって詳細に示したように、1個又は複数の温度検知器を含むことができる。図2Aに示した実施形態において、燃焼ゾーン200は温度検知器210を含む。温度検知器210は燃焼ゾーン200内の少なくとも1点の温度を測定することができる。これは温度検知器210が燃焼ゾーン200内の1、2、3、4、又はそれ以上の点を測定できる実施形態を包含する。一実施形態において、温度検知器210は燃焼ゾーン200内の4点の温度を測定することができる。温度を測定することのできる点又は複数の点は燃焼ゾーン200内の任意の点から選択することができる。この開示の恩恵を受ける当業者であれば、点又は複数の点を慣例的な実験から選択することができる。
【0028】
温度検知器210には、燃焼ゾーン200を運転することのできる温度、圧力、及び他のパラメーターで機能することのできる温度測定可能な任意のデバイスを使用することができる。一実施形態において、温度検知器210は熱電対である。
【0029】
図2Bに示した実施形態において、燃焼ゾーン200は温度検知器210及びヒーター220の両方を含む。ヒーター220は、燃焼反応を開始させ又は維持するために燃焼ゾーン200内の少なくとも1つの領域(示さず)に熱を提供することができる。一実施形態において、その領域は空気供給110によって提供された空気と燃料供給120によって提供された燃料が燃焼のために混合される領域である。ヒーター220は電気的加熱による、又は発熱化学反応による熱を提供することができ、伝導、対流、又は放射のいずれかによって熱を提供することができる。
【0030】
図1、2A、2Bは燃焼ゾーン200に分離して流入する空気供給110及び燃料供給120を表している。これは便宜的に示すもので本発明の実施に関わる問題ではない。一実施形態において、空気供給110及び燃料供給120は燃焼ゾーン200の混合容器(示さず)中で混合され、燃焼ゾーン200の一次燃焼容器へ混合物として供給される。
【0031】
図1に戻って、装置は制御システム300を含むことができる。制御システム300は、中でも、ラック搭載コンピュータ装置、デスクトップパソコン、ワークステーション、ノート型コンピュータ又はラップトップコンピュータ、又は埋め込まれた演算装置などのコンピュータ装置で大部分ソフトウェア処理される。本開示の教示の中で、制御システム300の正確な方法は本発明の実施に関わる問題ではない。
【0032】
典型的な演算装置(示さず)は、本開示の利益を受ける当業者には明らかであろうように、バス装置を経由してストレージと通信するプロセッサを含む。ストレージは、中でも、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(「RAM」)、フロッピー(登録商標)磁気ディスク又は光ディスクなどのリムーバブルストレージ媒体、又は前述の2種又はそれ以上を含むことができる。ストレージは、中でも、運転中に得た1個又は複数のデータの組を記憶するデータ構造、オペレーティングシステム、ユーザインターフェースソフトウェア、又はアプリケーションをエンコードすることができる。ユーザインターフェースソフトウェアは、ディスプレイと共に、ユーザインターフェースを実行することができる。ユーザインターフェースは、中でもキーパッド又はキーボード、マウス、ジョイスティック、又は前述の2種又はそれ以上の周辺I/Oデバイスを含むことができる。プロセッサはオペレーティングシステムの制御下で運転することができ、実際には、当業者に知られた任意のオペレーティングシステムとすることができる。アプリケーションはオペレーティングシステムの実行に応じて、電源を入れ、リセットし、又はその両方で、オペレーティングシステムによって呼び出すことができる。
【0033】
したがって、本発明の少なくともいくつかの態様は、典型的に、適切にプログラムされた演算装置のソフトウェアとして実行されるであろう。命令は、例えば中でも、ストレージ、フロッピー(登録商標)ディスク、光ディスク、又は前述の2種又はそれ以上にエンコードすることができる。したがって、本発明は、一態様において、本発明の方法を実行するようにプログラムされた演算装置を含むことができる。他の態様において、本発明は、演算装置によって実行されるとき、本発明の方法を実施する命令をエンコードしたプログラム記憶デバイスを含むことができる。
【0034】
したがって、本明細書の詳細な説明のいくつかの部分は、演算装置又は演算デバイス中のメモリー内でのデータビットによる演算を記号化した表現を含む、ソフトウェア実行プロセスによって示される。これらの説明及び表現は、最も有効にその仕事の主題を他の当業者に伝えるために当業者によって用いられる手段である。プロセス及び演算は物理量の物理的な操作を必要とする。通常、必然ではないが、これらの量は、記憶し、伝達し、組み合わせ、比較し、及び操作された、電子的、磁気的、又は光的信号の形をとる。多くの場合、これらの信号を、ビット、値、要素、記号、文字、用語、数字等として参照することは、主として通常の使用に便利であることが実証された。
【0035】
しかし、これらの及び類似の用語のすべては、適切な物理量を伴うべきものであり、これらの定量化に加えられた便利な標識にすぎないことを認識すべきである。本開示を通じて、特記しない限り又は明らかであるとき以外、これらの説明は、ある電子デバイスのストレージ内の物理(電気的、磁気的、又は光的)量として表されるデータを操作して、ストレージ内又は伝送若しくは表示デバイス中の物理量として同様に表される他のデータへ変換する電子デバイスの動作及びプロセスを指す。それらの説明を表す用語の例は、用語「処理する(processing)」、「演算する(computing)」、「計算する(calculating)」、「決定する(determining)」、「表示する(displaying)」等であるが制限されない。
【0036】
図3に戻って、一実施形態において、制御システム300はプロセッサ310と空気流調節装置320を含み、温度検知器は燃焼ゾーン200内の少なくとも1点の温度をプロセッサ310に伝達する。この伝達は測定された温度を示す電気的、光的、又は他の種類の信号の形である。また、制御システム300は、データ及び命令をプロセッサ310と温度検知器210の間、又はプロセッサ310と空気流調節装置320の間に一方向伝送又は二方向伝送するための通信装置(列挙しない)も含む。通信装置は、本開示の利益を受ける当業者には明らかなものの中でも、ワイヤ、無線リンク、又は光ファイバーを含んで、それらのデータ及び命令の一方向伝送又は二方向伝送することの可能な任意のデバイスとすることができるがそれに限らない。
【0037】
プロセッサ310は上述のものとすることができる。
【0038】
空気流調節装置320は、空気供給110の中へ、又はそれを経由して、燃焼ゾーン200中へ流れる空気流を調節することの可能な任意の装置とすることができる。「調節する(regulating)」は、容積/分、質量/分、又は燃焼ゾーン200へ送達される空気の単位時間あたりの他の測定値で測定して、必要に応じて、空気流を可逆的に増加させること、又は可逆的に減少させること、又はその両方を意味する。一実施形態において、空気流の調節装置320はブロワーである。
【0039】
制御システム300において、プロセッサ310は温度検知器210によって伝達された燃焼ゾーン200の少なくとも1点の温度を受け取ることができ、空気流調節装置320へ命令を出すことによって、空気供給110を通る空気流又は燃焼ゾーン200へ入る空気流を調節することができる。
【0040】
制御システム300が含むことのできる上記デバイスに加えて、制御システム300は追加のデバイスを含むことができる。それらの追加のデバイスは、中でも、燃料流調節装置又は緊急停止装置を含むことができるが、制限されない。装置100の制御システム300は、装置100がその1部分である系統を制御している全体的な制御系統の一構成要素とすることができる。例えば、装置100が燃料処理器中の酸化器に熱を提供するために用いられるとき、制御システム300は、当業者にとって明らかな他の構成要素の中でも、改質器への空気供給、燃料供給、及び蒸気供給、アノードへの改質物供給、装置100の燃料供給120への過剰な改質物の再循環供給、装置100の燃料供給120へのアノード戻り供給、1個又は複数の改質器供給へのカソード戻り供給を制御する、全体的な制御系統の一構成要素とすることができる。装置100が異なる用途に用いられるとき、制御システム300は、それらの異なる用途の全体的な装置の異なる態様を制御している全体的な制御系統の一構成要素とすることができる。
【0041】
本発明の一実施形態において、装置100はさらに加熱すべきゾーン及び熱伝導装置をさらに含むことができる。それらの一実施形態は図4で示される。この実施形態において、熱伝導装置420は燃焼ゾーン200と加熱されるゾーン410の間の熱流連絡を提供する。「熱流連絡」は熱が燃焼ゾーン200と加熱されるゾーン410の間を伝導、対流、又は放射の1種又は複数によって流れることができることを意味する。典型的に、熱伝導装置420は熱伝導率の比較的高い材料を含む。図4には燃焼ゾーン200から分離されて示されているが、熱伝導装置420は燃焼ゾーン200内に配設された副構造とすることができる。
【0042】
加熱すべきゾーン410は燃焼ゾーン200内の反応によって発生した熱を伝導するのに必要な任意のゾーンとすることができる。(これは加熱すべきゾーン410が、熱伝導の前に燃焼ゾーン200よりも低い温度であることを仮定している。)加熱すべきゾーン410は付随するライン(示さず)、ポンプ(示さず)、ゲージ(示さず)、又は他のデバイス(やはり示さず)を備える1個又は複数の容器を含むことができる。一般に、加熱すべきゾーン410は、化学反応、相転移(例えば沸騰又は溶融)、又は他の物理的変化、化学的変化、又はその両方を促進するために、固体、液体、蒸気、又は前記相の2種又はそれ以上の化合物が、燃焼ゾーン200中の温度にほぼ等しい温度にされるゾーンとすることができる。しかし、加熱すべきゾーン410は、化合物が物理的又は化学的変化を受けるゾーンである必要はない。加熱すべきゾーン410又はその中に存在する化合物を調節することのできる温度は、本開示の利益を享受する当業者にとって慣例的な実験上の問題であろう。
【0043】
一実施形態において、加熱すべきゾーン410は燃料処理器である。一実施形態において、加熱すべきゾーン410は酸化器、即ちライン又は複数のライン及び燃料と空気を混合して燃料処理反応器へ燃料と空気の混合物を提供する関連デバイスを含む。
【0044】
一実施形態において、熱伝導装置420は、酸化器の1個又は複数のラインと液状に連絡する、コイル状ステンレス鋼ラインなどのコイル状ラインであり、加熱されるゾーン410は酸化器である。酸化器は、絶縁、補助加熱、又は他の適切な技術によって、熱の伝導によって得る温度に維持することができ、その中に存在する化合物は燃料処理反応器へ送ることができる。
【0045】
装置100はさらに他のデバイス(示さず)を含むことができ、燃料処理器又は燃料処理器と燃料電池を含む発電施設などの大きな全体的装置の一構成要素とすることができる。それらのさらに他の装置の1つは、命令をエンコードしたプログラム記憶媒体とすることができ、コンピュータによって実行されるとき、酸化器の燃焼ゾーン中の少なくとも1点の温度の伝達を受けるステップと、伝達された温度に応答して燃焼ゾーンへ空気流速を調節する命令を出すステップとを含む方法を実行する。
【0046】
他の実施形態において、本発明は、燃焼ゾーン内の少なくとも1点の温度を所望の温度範囲内に維持する方法に関し、
所望の温度範囲の上限値を特定する工程と、
空気と燃料を燃焼ゾーンに供給する工程であって、空気がある空気供給速度で供給され、燃料がある燃料供給速度で供給され、燃料に対する酸素の比(「O/C比」)が化学量論的O/C比よりも大きいとき、燃焼ゾーン中に存在する空気の量と燃料の量がO/C比を規定する工程と、
燃焼ゾーン内の少なくとも1点の温度を測定する工程と、
O/C比が継続的に化学量論的O/C比よりも大きいとき、燃焼ゾーン内の少なくとも1点の温度が所望の温度範囲のおよその上限値よりも高ければ、空気供給速度を高める工程とを含む。
【0047】
用語「温度」は本実施形態のこの説明の前文において、任意の所与の点は本質的に1個で唯一の温度を有することを認識して用いられる。燃焼ゾーンは上で説明されており、本質的に複数の点を有する。燃焼ゾーン内の「少なくとも1点」は燃焼ゾーン内の1点又は複数の点を指す。
【0048】
「所望の温度範囲」は、少なくとも1点の温度が望ましい又は許容された範囲内にあることのできる温度値の範囲を指す。
【0049】
一実施形態において、特定ステップは所望の温度範囲の下限値を特定することをさらに含み、方法は、O/C比が継続的に化学量論的O/C比よりも大きいとき、燃焼ゾーン内の少なくとも1点の温度が所望の温度範囲のおよその下限値未満であれば、空気供給速度を減少させる工程を含む。
【0050】
減少工程を含んで、方法の一実施形態は、図5に概要図が示される。
【0051】
特定工程510において、所望の温度範囲の下限値及び所望の温度範囲の上限値が特定される。下限値の具体的な値及び上限値の具体的な値は、方法のオペレータによって慣例的に選択することができる。
【0052】
一般に、上限は、燃焼による任意の単位時間あたりの放出エネルギーを制限する燃焼させた燃料と燃焼速度、及び、燃焼ゾーンを損傷させることなく燃焼ゾーンに加えることのできる最大温度を制限する、燃焼ゾーンの作製材料とによって定まる物理的な限界によって制約を受ける。また、当業者であれば、本発明の範囲内であっても、一般に大気温度未満の上限値を選択しようとはしないであろう。上限値の選択において、オペレータは燃焼ゾーンから熱を伝導すべきゾーン又は他の場所の最大安全温度又は望ましい温度を一般に知っているであろう。例えば、燃焼ゾーンからの温度が反応器中の化学反応を促進するために使用される予定であり、化学反応が、特定の温度又はそれ以上の温度で失活させた触媒によって触媒作用を与えられるならば、オペレータは一般に特定の温度よりも低い又はほぼ等しい上限値を選択しようとするであろう。
【0053】
一実施形態において、上限値は約700℃である。他の実施形態において、上限値は約750℃である。
【0054】
下限値は上限値未満の任意の温度値を選択することができる。一実施例において、燃焼ゾーンからの熱が反応器中の化学反応を促進するために用いられる予定であり、化学反応の速度が反応器の温度に比例するならば、オペレータは一般に化学反応の速度を加速するためにより高い下限値を選択しようとするであろう。
【0055】
一実施形態において、温度範囲の下限値は約500℃である。他の実施形態において、温度範囲の下限値は約600℃である。
【0056】
一実施形態において、温度範囲の下限値は約500℃であり、温度範囲の上限値は約750℃である。
【0057】
供給工程520において、空気と燃料は燃焼ゾーンへ送られる。上で定義したように、「空気」は酸素を含む任意のガス混合物であり、「燃料」は炭化水素又は水素を含む任意の混合物である。水素を含む混合物は本明細書では「改質物」と呼ぶことができる。一実施形態において、燃料はメタン、天然ガス、ガソリン、ジーゼル燃料、改質物、水素、又はその2種又はそれ以上の混合物を含む。空気を燃焼ゾーンへ供給する速度は、空気供給速度と呼ぶことができ、燃料が燃焼ゾーンへ供給する速度は燃料供給速度と呼ぶことができる。
【0058】
燃焼ゾーンに存在する空気の量と燃料の量は、一緒にO/C比を規定する。O/C比は燃料の燃焼性化合物又は複数の化合物に対する酸素のモル(2原子分子の酸素、O)に基づいて計算される。燃料の燃焼性化合物又は複数の化合物は炭素を含む必要はない。例えば、3モルの酸素と1モルのメタンが存在すれば、O/C比は3である。他の例では、4モルの酸素と1モルの水素が存在すれば、O/C比は4である。
【0059】
任意の所与の燃料又は燃料の混合物について、燃料が化学量論的である、即ちすべて燃焼することを仮定して、過剰の燃料も過剰の酸素もないO/C比の値がある。このO/C比の値は「化学量論的O/C比」と呼ぶことができる。例えば、燃料がメタン(CH)であるとき、質量平衡式CH+2O→CO+2HOで与えられるように、化学量論的O/C比は2である。第2の例として、燃料がベンゼン(C)であるとき、質量平衡式2C+15O→12CO+6HOで与えられるように、化学量論的O/C比は7.5である。第3の例として、燃料が分子状水素(H)であるとき、質量平衡式2H+O→CO+2HOで与えられるように、化学量論的O/C比は0.5である。一般に、化学量論的O/C比は、酸素分子の数を適切な質量平衡式の反応物と考えられる燃料の分子数で除して計算することができる。
【0060】
燃焼ゾーンに複数の燃料が存在し、それらの各々に対する比率が判っている場合、化学量論的O/C比は様々な燃料のモル比から計算することができる。例えば、0.75モルのメタンと0.25モルの水素が存在すれば、化学量論的O/C比は(0.75×2)+(0.25×0.5)=1.625である。複数の燃料の互いに対する割合は未知であるが、燃焼ゾーン中の異なる燃料及びその全質量が判っていれば、燃料混合物全体の化学量論的O/C比は、最大の化学量論的O/C比を有する個々の燃料の化学量論的O/C比に等しいものとして計算することができる。
【0061】
本方法において、O/C比は化学量論的O/C比よりも大きく保たなければならない。当業者であれば、化学量論的O/C比よりも小さいO/C比では燃焼が不完全であり、燃料の損失であること、及び燃焼してCOの替りにCOになる、又はその両方を意味することを理解するであろう。いずれの結果も一般に望ましくない。O/C比は、燃焼ゾーンに存在する空気の量を増加させ、燃焼ゾーンに存在する燃料の量を減少させること、又はその両方によって、化学量論的O/C比よりも大きく保つことができる。
【0062】
ある実施形態において、化学量論的O/C比よりも大きい、最小のO/C比の値を提供することが望ましいであろう。一実施形態において、この最小値は約5である。
【0063】
供給工程520が進むと、燃焼ゾーン中に燃料と空気の燃焼が進展する。燃焼が進むと熱が放出され、それらの熱は燃焼ゾーン内又はその一部の温度を上昇させるであろう。
【0064】
図5から続いて、測定する工程530は燃焼ゾーン内の少なくとも1点の温度を測定することを含む。測定は中でも熱電対などの任意の適切な技術及びデバイスによって実施することができる。
【0065】
測定するステップ530を実施する際に、当業者は3つの結果の1つを見出すことができるのを理解するであろう。第1に、燃焼ゾーン内の少なくとも1点の温度が所望の温度範囲内にあることができる。第2に、燃焼ゾーン内の少なくとも1点の温度が所望の温度範囲の下限値未満であることができる。第3に、燃焼ゾーン内の少なくとも1点の温度が所望の温度範囲の上限値を超えることができる。
【0066】
第1の結果、即ち燃焼ゾーン内の少なくとも1点の温度が所望の温度範囲内にある場合、O/C比の変化は必要ない。しかし、O/C比は、燃焼ゾーン内の少なくとも1点の温度を調節するために所望の温度範囲内で調節することができる。燃焼によって放出される熱、熱を伝導して加熱すべきゾーンの温度、又は当業者が明らかであると判断する他の目的のために、当業者が微調整又は最適化することを望むならば、それらの調節は推奨することができる。実施する場合、調節は以下に説明する原理によって実施することができる。
【0067】
第2の結果、即ち燃焼ゾーン内の少なくとも1点の温度が所望の温度範囲の下限値未満である場合、O/C比が継続的に化学量論的O/C比よりも大きいならば、O/C比を減少させる減少工程540を実施することが一般に望ましい。当業者であれば理解するであろうように、O/C比が化学量論的O/C比よりも大きいとき、燃料と反応せず、代りに、燃焼によって放出される熱を吸収する希釈剤になる酸素があるであろう。温度が分子の平均動エネルギーに分子数を乗じたものに比例すると考えることができ、且つ、生成分子(主としてCOとHO)及び希釈分子(未反応O、N、又は「空気」が純粋な酸素ではないときに存在し得る他の不活性分子)の両方に伝導される燃焼反応の熱が、存在する希釈分子の数にかかわらず同じであるとすれば、存在する希釈分子がより少なくより小さなO/C比で、燃焼によって放出された同じ熱量がより少数の分子に与えられ、各分子の平均動エネルギーはより大きくなり、温度がより高くなるであろう。したがって、O/C比を減少させることは、燃焼ゾーン内の少なくとも1点の温度を一般に上昇させ、これは、少なくとも1点の温度を所望の温度範囲の下限値よりも大きな値に戻すであろう。
【0068】
O/C比は空気供給速度を減少させることによって減少させることができる。これは、中でも装置に吹き込むブロアの空気速度を遅くすること、装置にポンプ送気している空気のポンプ引き抜きを遅くすることなど、任意の適切な技術によって達成することができる。
【0069】
代りに、又は追加で、O/C比は燃料供給速度を増加させることによって減少させることができる。これは、任意の適切な技術によって達成することができる。空気供給速度の減少と燃料供給速度の増加の組合せも可能である。しかし、多くの実施形態において、空気供給速度の減少によってだけO/C比を減少させることは、より便利であり、より経済的であり、或いはその両方であろう。空気は、消費燃料の増加よりも一般に安価である。また、燃料が、燃料電池の部分として改質器中の改質など、他の関連装置又は方法で使用されるならば、燃焼ゾーンと改質器の両方へ同じ燃料貯蔵から引き抜くことができ、したがって、空気供給に比べて複雑な燃料供給が必要とされるであろう。
【0070】
第3の結果、即ち燃焼ゾーン内の少なくとも1点の温度が所望の温度範囲の上限値を超える場合、O/C比が化学量論的O/C比よりも大きく留まるならば、O/C比を増加させる増加工程550を実施することが一般に望ましい。上で論じたように、O/C比が化学量論的O/C比よりも大きいとき、燃料と反応せず、代りに燃焼によって放出される熱を吸収する希釈剤になる過剰の酸素があるであろう。上で論じた温度と熱の場合、存在する希釈分子がより多くより大きなO/C比で、燃焼によって放出された同じ熱量がより多数の分子に与えられ、各分子の平均動エネルギーはより小さくなり、温度がより低くなるであろう。したがって、O/C比の増加は一般に燃焼ゾーン内の少なくとも1点の温度を減少させ、これは、少なくとも1点の温度を所望の温度範囲の上限値未満の値に戻すであろう。
【0071】
O/C比は空気供給速度を増加させることによって増加させることができる。これは、中でも装置に吹き込む空気の速度を高めること、装置にポンプ送気している空気のポンプ引き抜きを増加させることなど、任意の適切な技術によって達成することができる。
【0072】
代りに、又は追加で、O/C比は燃料供給速度を減少させることによって増加させることができる。これは、任意の適切な技術によって達成することができる。空気供給速度の減少と燃料供給速度の増加の組合せも可能である。しかし、多くの実施形態において、空気供給速度の増加によってだけO/C比を減少させることは、より便利であり、より経済的であり、或いはその両方であろう。燃料が、燃料電池の部分として改質器中の改質など、他の関連装置又は方法で使用されるならば、燃焼ゾーンと改質器の両方へ同じ燃料貯蔵から引き抜くことができ、したがって、空気供給に比べて複雑な燃料供給が必要とされるであろう。
【0073】
測定する工程530が、任意の特定の時間に、O/C比の変化が必要でないこと、減少工程540で減少させること、又は増加工程550で増加させることを示唆するかどうかにかかわらず、当業者であれば、工程530〜550を任意の所望の繰り返し速度で無限に繰り返すことができる、即ち、測定する工程530を所望の周期で実施し、減少工程540又は増加工程550、又は両方を同じ又は異なる周期で実施することができることを理解するであろう。
【0074】
本方法は増加工程又は増加工程及び減少工程のいずれかを有する2種類の実施形態について説明した。他の実施形態において、本方法は減少工程を有する。言い換えれば、この実施形態において、方法は、
所望の温度範囲の下限値を特定する工程と、
空気と燃料を燃焼ゾーンに供給する工程であって、空気がある空気供給速度で供給され、燃料がある燃料供給速度で供給され、O/C比が化学量論的O/C比よりも大きいとき、燃焼ゾーン中に存在する空気の量と燃料の量がO/C比を規定する工程と、
燃焼ゾーン内の少なくとも1点の温度を測定する工程と、
O/C比が継続的に化学量論的O/C比よりも大きいとき、燃焼ゾーン内の少なくとも1点の温度が所望の温度範囲のおよその下限値未満であれば、空気供給速度を下げる工程とを含む。
【0075】
上述の工程に加えて、方法は追加のステップを含むことができる。図6に示した一実施形態において、方法600は、特定工程の後に加熱工程610をさらに含み、燃焼ゾーン内の少なくとも1点を所望の温度範囲の上限値未満の第1温度に加熱することを含む。それらの加熱工程は、プロパン又は天然ガスストーブ、オーブン、炉、温水機、又は同様の器具のパイロット火を点火することと同様に、燃料と空気の燃焼を活性化するのに十分な熱を提供するのに利用することができる。燃焼によって放出される熱は、一般にその後燃焼ゾーンへ供給される新鮮な又は再循環空気及び新鮮な又は再循環燃料を活性化するのに十分であるので、加熱工程610は一般に燃焼反応が開始されるまでしか必要ではない。しかし、その時点を超えて加熱工程610を継続したければ、それらの連続的な加熱は本発明の範囲内である。
【0076】
図7に示した他の実施形態において、方法700は燃焼ゾーンからの熱を加熱すべきゾーンへ伝導することを含む伝導工程710をさらに含む。伝導工程710は、熱を任意の適切な加熱すべきゾーンへ伝導する任意の適切な装置又は技術を用いることができる。熱の伝導は伝導、対流、又は放射の1種又は複数を用いることができる。一実施形態において、熱の伝導は、加熱すべきゾーンと液体が連絡しているコイル状ステンレス鋼ラインなどのコイル状ラインの使用によって実施することができる。
【0077】
一実施形態において、加熱すべきゾーンは上述のように、改質器、酸化器、又はその両方を含む。
【0078】
改質器は自己発熱改質器、即ち、部分酸化(下の式I)と任意選択的な蒸気改質(下の式II)の2種の反応を組み合わせて、燃料供給流を水素と一酸化炭素を含む合成ガスに変換する自己発熱改質ステップを行うことの可能な改質器とすることができる。式Iと式IIは、炭化水素としてメタンを考えるときの例示的反応式である。
CH+1/2O→2H+CO (I)
CH+HO→3H+CO (II)
【0079】
自己発熱改質器の運転温度は、供給条件と触媒に応じて約500℃〜約900℃の範囲とすることができる。触媒が約750℃を超える温度に感受性がある一実施形態において、自己発熱改質器の運転温度は約500℃〜約750℃である。
【0080】
改質器によって行うことのできる追加のプロセスは、
自己発熱改質工程の排出物を冷却する工程と、
排出物から硫化水素を除去する工程と(式IIIのように、硫化水素吸収剤として酸化亜鉛を使用することなどによって
S+ZnO→HO+ZnS (III))、
好ましくは一酸化炭素の濃度が、式IVに従って燃料電池の許容する典型的に50ppm未満のレベルまで低下する程度に、一酸化炭素を二酸化炭素へ変換する水ガス転移反応工程と、
O+CO→H+CO (IV)
追加の冷却工程、
例えば一酸化炭素の優先的酸化が低温で好まれることを考慮して、以下のように、典型的に一酸化炭素の望ましい酸化(式V)及び水素の望ましくない酸化(式VI)の両方を含む、典型的に一酸化炭素の酸化のための触媒の存在下で、排出流中に残る一酸化炭素のほとんどすべてを二酸化炭素に変換する酸化工程とを含み、
CO+1/2O→CO (V)
+1/2O→HO (VI)
したがって、この具体的な実施形態では、二酸化炭素、及び水や不活性成分(例えば窒素、アルゴン)、炭化水素の残渣等など、存在し得る他の構成要素を含む水素に富むガスの改質物を生成する。生成ガスは、水素に富む供給流が望まれる燃料電池又は他の用途の原料として使用することができる。任意選択的に、生成ガスは、例えば二酸化炭素、水又は他の成分を除去するためにさらに他の処理へ送ることができる。
【0081】
ここで詳細な説明を結論付ける。本発明は、本明細書の教示の利益を享受する当業者であれば明らかな修正を加え、異なるが等価の方法で実施することができるので、上に開示した具体的な実施形態は例示のためである。さらに、本明細書に示した構造又は設計の詳細は、以下の請求項の記述以外に制限を設けることは意図していない。したがって、上に説明した具体的な実施形態は変更又は修正を加えることができ、それらの変形は本発明の範囲と本質の範囲内であると考えられることは明らかである。したがって、本発明が求める保護は請求項に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明による装置の特定の一実施形態を示す図である。
【図2A】図1の実施形態の実施に用いることのできる燃焼ゾーンの概念を示す図である。
【図2B】図1の実施形態の実施に用いることのできる燃焼ゾーンの概念を示す図である。
【図3】図1の実施形態の実施に用いることのできる制御系統を示す図である。
【図4】図1の実施形態の実施に用いることのできる熱伝導装置及び加熱すべきゾーンを示す図である。
【図5】本発明による方法の特定の一実施形態を示す図である。
【図6】本発明による方法の他の特定の一実施形態を示す図である。
【図7】本発明による方法のさらに他の特定の一実施形態を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気供給と、
燃料供給と、
その中で空気と燃料を混合し燃焼することの可能な燃焼ゾーンと、
前記燃焼ゾーン内の少なくとも1点の温度を測定することの可能な、燃焼ゾーン内に配置された温度検知器と、
制御システムとを含む装置であって、前記制御システムは、
温度検知器が測定した温度を伝達することの可能なプロセッサと、
前記プロセッサによって制御され、伝達された温度に応答して燃焼ゾーンへの空気の流速を調節することの可能な空気流調節装置と
を含む、上記装置。
【請求項2】
前記燃焼ゾーン内にヒーターをさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
加熱すべきゾーン及び燃焼ゾーンと加熱すべきゾーンの間に熱を伝導することの可能な熱伝導装置をさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記加熱すべきゾーンが改質器、酸化器、又はその両方を含む、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
燃焼ゾーン内の少なくとも1点の温度を所望の温度範囲に維持する方法であって、
所望の温度範囲の上限値を特定する工程と、
前記燃焼ゾーンへ空気と燃料を供給する工程であって、空気がある空気供給速度で供給され、燃料がある燃料供給速度で供給され、燃料に対する酸素の比(「O/C比」)が化学量論的O/C比よりも大きいとき、燃焼ゾーン中に存在する空気の量と燃料の量がO/C比を規定する工程と、
前記燃焼ゾーン内の少なくとも1点の温度を測定する工程と、
前記O/C比が継続的に化学量論的O/C比よりも大きいとき、燃焼ゾーン内の少なくとも1点の温度が所望の温度範囲のおよその上限値よりも高ければ、空気供給速度を高める工程と
を含む、上記方法。
【請求項6】
前記温度範囲の上限値が約750℃である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記特定工程が前記所望の温度範囲の下限値を特定することをさらに含み、前記O/C比が継続的に化学量論的O/C比よりも大きいとき、前記燃焼ゾーン内の少なくとも1点の温度が所望の温度範囲のおよその下限値未満であれば、空気供給速度を減少させることをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記温度範囲の下限値が約500℃であり、前記温度範囲の上限値が約750℃である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記燃焼ゾーン内の少なくとも1点を所望の温度範囲の上限値未満の第1温度へ加熱することをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記燃料が、メタン、天然ガス、ガソリン、ジーゼル燃料、改質物、水素、又はその2種又はそれ以上の混合物を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
前記O/C比が継続的に約5より大きい、請求項5に記載の方法。
【請求項12】
前記燃焼ゾーンからの熱を加熱すべきゾーンへ伝導することをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項13】
前記加熱すべきゾーンが改質器、酸化器、又はその両方を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
燃焼ゾーン内の少なくとも1点の温度を所望の温度範囲に維持する方法であって、
所望の温度範囲の下限値を特定する工程と、
前記燃焼ゾーンへ空気と燃料を供給する工程であって、空気がある空気供給速度で供給され、燃料がある燃料供給速度で供給され、O/C比が化学量論的O/C比よりも大きいとき、燃焼ゾーン中に存在する空気の量と燃料の量がO/C比を規定する工程と、
前記燃焼ゾーン内の少なくとも1点の温度を測定する工程と、
O/C比が継続的に化学量論的O/C比よりも大きいとき、燃焼ゾーン内の少なくとも1点の温度が所望の温度範囲のおよその下限値未満であれば、空気供給速度を減少させる工程と
を含む、上記方法。
【請求項15】
燃料の改質に用いる方法であって、
燃焼ゾーンへ空気を供給する工程と、
燃焼ゾーンへ燃料を供給する工程と、
前記燃焼ゾーン内の少なくとも1点の温度を測定するステップと、
伝達された温度に応答して、前記燃焼ゾーンへの空気の流速を調節する工程と
を含む、上記方法。
【請求項16】
燃料処理器であって、
空気供給と、
燃料供給と、
酸化器とを含み、前記酸化器は、
その中で空気と燃料を混合し燃焼することの可能な燃焼ゾーンと、
燃焼ゾーン内の少なくとも1点の温度を測定することの可能な燃焼ゾーン内に配置された温度検知器と、
制御システムとを含み、前記制御システムは、
前記温度検知器が測定した温度を伝達することの可能なプロセッサと、
前記プロセッサによって制御され、伝達された温度に応答して燃焼ゾーンへの空気の流速を調節することの可能な空気流調節装置と
を含む、上記処理器。
【請求項17】
燃料電池と、
燃料処理器とを含み、前記燃料処理器は、
空気供給と、
燃料供給と、
酸化器とを含み、前記酸化器は、
その中で空気と燃料を混合し燃焼することの可能な燃焼ゾーンと、
前記燃焼ゾーン内の少なくとも1点の温度を測定することの可能な燃焼ゾーン内に配置された温度検知器と、
制御システムとを含み、前記制御システムは、
温度検知器が測定した温度を伝達することの可能なプロセッサと、
前記プロセッサによって制御され、伝達された温度に応答して燃焼ゾーンへの空気の流速を調節することの可能な空気流調節装置と
を含む、発電施設。
【請求項18】
前記酸化器が前記燃料電池のアノードからのテールガスを酸化する、請求項17に記載の発電施設。
【請求項19】
燃料処理器の酸化器用制御システムであって、
前記酸化器の燃焼ゾーンの少なくとも1点の温度を受け取ることの可能なプロセッサと、
前記プロセッサによって制御され、伝達された温度に応答して前記燃焼ゾーンへの空気の流速を調節することの可能な空気流調節装置と
を含む、上記制御システム。
【請求項20】
命令をエンコードしたプログラム記憶媒体であって、コンピュータによって実行されるとき、
酸化器の燃焼ゾーンの少なくとも1点の温度の伝達を受ける工程と、
伝達された温度に応答して、前記燃焼ゾーンへの空気流速を調節する命令を出す工程と
を含む方法を実行する、上記記憶媒体。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−524558(P2007−524558A)
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−509499(P2006−509499)
【出願日】平成16年3月30日(2004.3.30)
【国際出願番号】PCT/US2004/009788
【国際公開番号】WO2004/090432
【国際公開日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(503363459)テキサコ ディベラップメント コーポレイション (29)
【Fターム(参考)】