説明

燐酸水素アルカリ土類金属塩及びその製造方法並びに該燐酸水素アルカリ土類金属塩を用いた蛍光体

【課題】アスペクト比が大きな柱状のハロ燐酸アルカリ土類金属塩蛍光体の製造原料として有用な、新規の燐酸水素アルカリ土類金属塩及びその製造方法並びにこれを用いて得られた蛍光体の提供。
【解決手段】一般式Sr(1−x)HPO(ただし、Mはストロンチウム以外のアルカリ土類金属から選ばれる1種以上の元素を表し、xは0.3≦x<1.0の範囲の値である。)で表されることを特徴とする燐酸水素アルカリ土類金属塩。該燐酸水素アルカリ土類金属塩は、粒子形状が柱状であること、全粒子のうちの90%以上の粒子のアスペクト比が2〜20であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハロ燐酸アルカリ土類金属塩蛍光体用原料として好適な燐酸水素アルカリ土類金属塩及びその製造方法、並びに該燐酸水素アルカリ土類金属塩を原料として用いた蛍光体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、蛍光体の演色特性および発光出力を改善するために、発光スペクトルが比較的狭い帯域を占める赤色、緑色、青色の蛍光体を適切な範囲で混合した3波長蛍光体を用いた照明ランプが使用されている。また、液晶パネルのバックライト用の冷陰極管に塗布する蛍光体も3波長蛍光体が使用されている。
【0003】
これら3波長蛍光体に使用される青色蛍光体は、ハロ燐酸アルカリ土類金属塩系蛍光体とアルミン酸塩系蛍光体の2種類に大別されるが、アルミン酸塩系蛍光体は、ハロ燐酸アルカリ土類金属塩系蛍光体に比べて色シフトが大きく、さらに生産コストも高いなど、一般用蛍光ランプの蛍光体には適していないことから、ハロ燐酸アルカリ土類金属塩系蛍光体についての検討が数多くなされている。
【0004】
ハロ燐酸アルカリ土類金属塩系蛍光体の母結晶としては、アルカリ土類金属の燐酸塩が主に用いられており、一般的に燐酸水素アルカリ土類金属塩、賦活元素、ハロゲン化合物及びアルカリ土類金属塩などの混合原料を焼成することによりハロ燐酸アルカリ土類金属塩系蛍光体が合成されている。
【0005】
ハロ燐酸アルカリ土類金属塩蛍光体の粒子形状としては発光効率や塗布時の緻密性等の観点から立方体状乃至柱状の粒子形状を有し、アスペクト比が大きな材料が求められている。また、ハロ燐酸アルカリ土類金属塩蛍光体の粒子形状が原料として用いる燐酸水素アルカリ土類金属塩の粒子形状に大きく依存することが知られている。
【0006】
蛍光体の原料となる燐酸水素塩では粒子形状が柱状や板状のものが得られており、柱状の粒子形状を有する燐酸水素アルカリ土類金属塩としては、特許文献1及び特許文献2において、棒状のSrHPO及び板状のSrHPO、BaHPOが提案されているが、そのアスペクト比は大きくても5程度であり、アスペクト比がそれ以上の大きな柱状のものが得られないという問題点があった。また、特許文献3には、直方体の粒子形状を有する蛍光体とその製造方法について提案されている。しかし、この特許文献3の方法では、板状の粒子形状を有する蛍光体は得られるものの、アスペクト比が大きい柱状の粒子形状は得られておらず、アスペクト比が大きな柱状の粒子形状を有する蛍光体の開発が求められていた。
【特許文献1】特公昭48−12638号公報
【特許文献2】特公昭38−11954号公報
【特許文献3】特開2004−18545号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、アスペクト比が大きな柱状のハロ燐酸アルカリ土類金属塩蛍光体の製造原料として有用な、新規の燐酸水素アルカリ土類金属塩及びその製造方法並びに該燐酸水素アルカリ土類金属塩を原料として用いた発光輝度の優れた蛍光体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、ストロンチウム塩とストロンチウム以外のアルカリ土類金属塩と燐酸又は燐酸塩とを溶媒中で反応させて得られる、特定の一般式で示される燐酸水素アルカリ土類金属塩は、アスペクト比が大きな柱状粒子になること、及び、該柱状の燐酸水素アルカリ土類金属塩を原料として用いることによって柱状の形状を有するハロ燐酸アルカリ土類金属塩蛍光体が得られること、更には該ハロ燐酸アルカリ土類金属塩蛍光体は従来のハロ燐酸アルカリ土類金属塩蛍光体に比べて発光強度が向上することを知見し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、下記一般式(1)
Sr(1−x)HPO …(1)
(ただし、Mはストロンチウム以外のアルカリ土類金属から選ばれる1種以上の元素を表し、xは0.3≦x<1.0の範囲の値である。)で表されることを特徴とする燐酸水素アルカリ土類金属塩を提供する。
【0010】
本発明の燐酸水素アルカリ土類金属塩は、結晶構造が三斜晶であることが好ましい。
【0011】
本発明の燐酸水素アルカリ土類金属塩は、前記一般式(1)においてxの範囲が0.4≦x≦0.8であることが好ましい。
【0012】
本発明の燐酸水素アルカリ土類金属塩は、粒子形状が柱状であることが好ましい。
【0013】
本発明の燐酸水素アルカリ土類金属塩は、粒子の最短径が1〜10μmの範囲であることが好ましい。
【0014】
本発明の燐酸水素アルカリ土類金属塩は、全粒子のうちの90%以上の粒子のアスペクト比が2〜20の範囲であることが好ましい。
【0015】
本発明の燐酸水素アルカリ土類金属塩は、比表面積が0.1〜5.0m/gの範囲であることが好ましい。
【0016】
本発明の燐酸水素アルカリ土類金属塩は、前記一般式(1)においてMが少なくともバリウムを含むものであることが好ましい。
【0017】
本発明の燐酸水素アルカリ土類金属塩は、ハロ燐酸アルカリ土類金属塩蛍光体製造用に用いられることが好ましい。
【0018】
また、本発明は、ストロンチウム塩とストロンチウム以外のアルカリ土類金属塩と燐酸又は燐酸塩とを溶媒中で反応させて前記本発明に係る燐酸水素アルカリ土類金属塩を得ることを特徴とする燐酸水素アルカリ土類金属塩の製造方法を提供する。
【0019】
本発明の燐酸水素アルカリ土類金属塩の製造方法において、前記各材料を50℃以上の温度で反応させた後、70℃以上の温度で30分以上熟成することが好ましい。
【0020】
本発明の燐酸水素アルカリ土類金属塩の製造方法において、前記燐酸塩が燐酸アンモニウムであることが好ましい。
【0021】
また、本発明は、燐酸水素アルカリ土類金属塩、ハロゲン化物及び賦活元素を含有する化合物を含む混合物、又は必要により添加されるアルカリ土類金属化合物を含有する前記混合物を焼成して得られるハロ燐酸アルカリ土類金属塩蛍光体であって、該燐酸水素アルカリ土類金属塩として前記本発明に係る燐酸水素アルカリ土類金属塩を用いて生成されたものであることを特徴とする蛍光体を提供する。
【0022】
本発明の蛍光体は、粒子形状が柱状であることが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明の燐酸水素アルカリ土類金属塩は新規な化合物であり、特にアスペクト比が大きく粒子形状が柱状であるものは、ハロ燐酸アルカリ土類金属塩蛍光体の製造用として好適に使用できる。
また、本発明の燐酸水素アルカリ土類金属塩を原料として用いた蛍光体は、アスペクト比が大きく粒子形状を柱状とすることができる。また、蛍光体粒子内のアルカリ土類金属が均一に分散しているため、蛍光体の発光輝度を高くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明する。
【0025】
(燐酸水素アルカリ土類金属塩)
前記一般式(1)中、Mはストロンチウム(Sr)以外のアルカリ土類金属元素であり、好ましくはマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、バリウム(Ba)である。これらの元素の中でも、MがBaであると、青色発光蛍光体用の原料として好適に使用できる点で、特に好ましい。また、これらのアルカリ土類金属元素は1種類でも2種類以上であってもよく、その含有比率には特に制限はないが、ストロンチウムとアルカリ土類金属元素の総量に対するストロンチウムの割合xは、0.3以上1.0未満、好ましくは0.4以上0.8以下の範囲とすることが望ましい。本発明の燐酸水素アルカリ土類金属塩は、結晶構造が三斜晶であり、後述するようにその粒子形状が柱状であることが1つの特徴である。なお、本発明において前記一般式(1)中のxを前記範囲とする理由は、前記範囲以外では結晶構造が三斜晶で粒子形状が後述する柱状のものが得られないからである。
【0026】
本発明の燐酸水素アルカリ土類金属塩は、前述したように、その粒子形状が柱状であることも1つの特徴である。ここで、粒子形状が柱状とは、角柱状を示し、具体的には燐酸水素アルカリ土類金属塩粒子の直方体の最も長い辺をa、次に長い辺をb、最も短い辺をcとした場合に、a/cの値(アスペクト比)が2以上20以下、好ましくは2以上15以下、特に好ましくは6以上10以下の範囲であり、a/bの値が2以上10以下、好ましくは3以上8以下の範囲であり、かつ、b/cの値が1以上5以下、好ましくは1以上3以下の範囲となるものを言う。燐酸水素アルカリ土類金属塩粒子の最長径(a)と最短径(c)の比(アスペクト比)が前記範囲内のもので、更に個数として粒子全体の90%以上、好ましくは95%以上含むものであると、該燐酸水素アルカリ土類金属塩を原料として用いた蛍光体の塗布特性が良好となる傾向があるため好ましい。また、燐酸水素アルカリ土類金属塩の大きさは、該燐酸水素アルカリ土類金属塩粒子の最短径(c)で1〜10μm、好ましくは1〜5μmの範囲である。最短径が1μm未満であると、粒子の分散性が不良となる傾向があるため好ましくなく、10μmより大きくなると、得られる蛍光体の発光ムラが生じる傾向があるため好ましくない。この燐酸水素アルカリ土類金属塩粒子の形状は、走査型電子顕微鏡(SEM)等により確認することができる。
【0027】
また、本発明に係る燐酸水素アルカリ土類金属塩は、BET比表面積が0.1〜5.0m/gの範囲、好ましくは0.3〜3.0m/gの範囲の比表面積を有することが望ましい。BET比表面積が0.1m/g未満であると、得られる蛍光体の発光ムラが生じる傾向があるため好ましくなく、また5.0m/gより大きいと、粒子同士の凝集が強くなり、得られる蛍光体の分散性が悪くなるため好ましくない。
【0028】
本発明に係る燐酸水素アルカリ土類金属塩は、以下の各工程を備えた方法により合成することができる。
(第1工程)
ストロンチウム塩とストロンチウム以外のアルカリ土類金属塩(以下、「他のアルカリ土類金属塩」と記す。)と燐酸又は燐酸塩との反応工程;
(第2工程)
生成した燐酸水素アルカリ土類金属塩の熟成工程;
(第3工程)
製品化(固液分離、必要により行われる洗浄、乾燥)工程;
であり、第1工程から第3工程まで、この順に行うことにより、本発明に係る燐酸水素アルカリ土類金属塩を得ることができる。
【0029】
(反応工程)
反応工程は、ストロンチウムと他のアルカリ土類金属塩とを溶媒に溶解した溶液(A液)と、燐酸又は燐酸塩を溶媒に溶解した溶液(B液)を調製し、前記A液とB液を接触させて反応を行う。前記A液とB液で使用する溶媒としては、水又はアルコール等の有機溶媒等が挙げられるが、発生する廃液の処理の点から、水が好ましい。用いる水は、脱イオン水や超純水など不純物含有量が小さい水が好ましい。これらの水に可溶性のストロンチウム塩、他のアルカリ土類金属塩や可溶性の燐酸又は/及び燐酸塩を溶解することで、均一な原料水溶液を得ることができる。
【0030】
前記A液中に含有させるストロンチウム塩及び他のアルカリ土類金属塩としてそれらの酸化物、水酸化物や炭酸塩を用いる場合は、得られる燐酸水素アルカリ土類金属塩が柱状にならない傾向があるため好ましくない。したがって、ストロンチウム塩及び他のアルカリ土類金属塩としては、可溶性の塩を用いることが好ましい。
【0031】
具体的には、Srの可溶性の塩としては、燐酸原料との反応温度で十分な溶解度を有する塩であれば特に制限はないが、例えば塩化ストロンチウム、硝酸ストロンチウムなどが挙げられる。マグネシウムの可溶性の塩としては、燐酸原料との反応温度で十分な溶解度を有する塩であれば特に制限はないが、例えば塩化マグネシウム、硝酸マグネシウムなどが挙げられる。カルシウムの可溶性の塩としては、燐酸原料との反応温度で十分な溶解度を有する塩であれば特に制限はないが、例えば塩化カルシウム、硝酸カルシウムなどが挙げられる。バリウムの可溶性の塩としては、燐酸原料との反応温度で十分な溶解度を有する塩であれば特に制限はないが、例えば塩化バリウム、硝酸バリウムなどが挙げられる。これらの可溶性の塩は、それぞれ別々に所望の溶媒に溶解した後、混合して均一溶液としてもよく、またこれらの可溶性の塩を同時に溶解させて均一な混合溶液を調製しても良い。このように、可溶性のストロンチウム塩や他のアルカリ土類金属塩を溶解して用いることで、酸化物等の不溶性の化合物を原料として燐酸原料と共沈乃至混合して得られた燐酸水素アルカリ土類金属塩に比べて、アルカリ土類金属の成分が原子レベルで均一なものを得ることができる。
【0032】
前記A液中のストロンチウム塩及び他のアルカリ土類金属塩の濃度は、ストロンチウム塩及び他のアルカリ土類金属塩が溶解できる濃度であれば、特に制限されるものではないが、1〜20質量%、好ましくは5〜15質量%の範囲とすることが望ましい。
【0033】
前記B液に含有させる原料は、燐酸の他、燐酸塩を用いることができる。使用する燐酸塩としては、アルカリ土類金属原料との反応温度で十分な溶解度を有する塩であれば特に制限はないが、例えば燐酸ナトリウムや燐酸アンモニウム等が挙げられる。また、これらの塩あるいは燐酸は、単独で用いても2種以上を混合して用いても良い。
【0034】
前記B液中の燐酸及び燐酸塩の濃度は、燐酸及び燐酸塩が溶解できる濃度であれば特に制限されるものではないが、1〜20質量%、好ましくは5〜15質量%の範囲とすることが望ましい。
【0035】
反応工程では、前記A液とB液とを接触させて、50℃以上100℃以下、好ましくは70℃以上100℃以下の温度で5〜60分間、好ましくは15〜30分間反応させる。この反応温度が50℃未満では、燐酸水素アルカリ土類金属塩が柱状とならない傾向があるため好ましくなく、100℃を超えると、反応溶液の維持管理が困難となるため好ましくない。また、反応時間が15分未満では、アルカリ土類金属と燐酸の反応が不十分となるため好ましくなく、また、60分を超えて反応を行っても、得られる燐酸水素アルカリ土類金属塩の品質は略飽和に達しており、反応時間は60分程度で十分な品質のものを得ることができる。
【0036】
前記A液とB液の接触は、(1)A液にB液を添加する方法、(2)B液にA液を添加する方法、(3)別途反応溶媒としてC液を調製し、A液とB液を同時にC液に添加する方法のいずれかを用いることができる。
【0037】
前記(1)A液に対するB液の添加量、(2)B液に対するA液の添加量、又は(3)C液へのA液とB液の添加量は、A液中のストロンチウム原子(Sr)と他のアルカリ土類金属原子(M)との総量(Sr+M)に対するB液中の燐酸及び燐酸塩の燐モル比(P/(Sr+M))で0.9〜1.5、好ましくは0.95〜1.2の範囲となるように添加すると、高収率で燐酸水素アルカリ土類金属塩を得ることができるため好ましい。
【0038】
反応槽へのA液あるいはB液の滴下速度は特に制限はなく、例えば3Lの反応槽に対して0.01〜0.1L/minの範囲で滴下することにより行うことができる。
【0039】
反応形態は、ストロンチウム塩又は他のアルカリ土類金属塩と、燐酸又は燐酸塩とを均一に反応させる方法であれば特に制限はされないが、例えばバッチ式やオーバーフロー方式などが挙げられ、バッチ式であると反応の管理が容易になることから好ましい。
【0040】
また、反応槽に用いる材質は、原料のストロンチウム塩又は他のアルカリ土類金属塩や燐酸又は燐酸塩と反応しないものであれば特に制限はなく、ガラス、ステンレス鋼、ホウロウ、ゴムライニング材等を用いることができる。
【0041】
前記(1)A液にB液を添加後、(2)B液にA液を添加後、又は(3)別途反応溶媒としてC液を調製し、A液とB液を同時にC液に添加後、更に熟成反応を行う。
【0042】
(熟成工程)
この熟成を行うことにより、燐酸水素アルカリ土類金属塩の溶解再析出が生じ、柱状の粒子形状を発達させることができるため、柱状の粒子形状を有する粒子の割合を増大させることができ、反応を完結させると共に、生成した粒子中に取り込まれた不純物を粒子外に除去することができる。
【0043】
熟成条件は、10〜120分間、好ましくは10〜30分間、70〜100℃、好ましくは70〜95℃の温度範囲に保持することで反応生成物を熟成する。熟成温度を前記範囲とする理由は、熟成温度が70℃未満では柱状粒子の発達や不純物の除去速度が遅いため、長時間の熟成が必要になり、一方、100℃を越えると大量の蒸気の発生により熟成条件を一定に保つことが困難になるからである。熟成は静置状態で行っても良いが、撹拌しながら生成した燐酸水素アルカリ土類金属塩を熟成させると、熟成時間を短縮できる点で好ましい。
【0044】
熟成は、反応槽への原料水溶液の滴下が完了した後、反応槽中で継続して行っても良く、また、オーバーフロー等により反応溶液を別の容器に取り出し、別の容器で熟成工程を行っても良い。
【0045】
(製品化工程)
製品化工程では、熟成した反応溶液中に含まれる燐酸水素アルカリ土類金属塩を固液分離して回収し、必要に応じて回収した燐酸水素アルカリ土類金属塩を洗浄、乾燥する。固液分離手段の一例として、ろ過がある。ろ過方法は特に制限されないが、例えば、吸引ろ過、遠心分離や加圧ろ過等の方法が挙げられ、これらの中でも遠心分離は、ろ過の作業性が良好であるため好ましい。
【0046】
また洗浄は、燐酸水素アルカリ土類金属塩表面に付着した不純物や反応液を除去するために適宜行う。洗浄に用いられる溶媒は、揮発性を有する溶媒であれば特に制限はないが、例えば水、アルコール、アセトン等を用いることができ、この中でも特に水を用いると、廃水処理や操作の簡便性などの点で好ましい。また、洗浄に用いる水は、イオン交換水や超純水など不純物含有量の小さいものを用いることが好ましい。
【0047】
次いで、洗浄等により液体を含んだ燐酸水素アルカリ土類金属塩を乾燥する。乾燥方法は特に制限されないが、前記洗浄で用いた液体の沸点以上の温度、例えば100〜200℃、好ましくは105〜150℃で、2〜15時間、好ましくは5〜10時間乾燥を行うことで、含有水分等の液体成分をほぼ完全に除去することができる。
【0048】
さらに、必要に応じて乾燥後の燐酸水素アルカリ土類金属塩を粉砕、更に分級しても良い。分級は、粗大粒子が混入している場合や工程中に混入した不純物を除去するために適宜行う。分級は、溶媒を用いない空気分級やフルイ分け分級であれば特に制限されないが、装置や処理が簡便であることからフルイ分け分級が好ましい。
【0049】
このようにして得られた燐酸水素アルカリ土類金属塩は、X線回折的に燐酸水素アルカリ土類金属塩単相を示し、結晶構造が三斜晶に属し、粒子が緻密で、粒子形状が柱状となることから、蛍光体の母結晶として好適に用いることができる。なお、製造条件等によっては、柱状以外の粒子形状を有する燐酸水素アルカリ土類金属塩粒子が生成混入することがあるが、個数換算で粒子全体の90%以上が柱状の粒子形状を有していれば、全体として柱状であるといえる。
【0050】
本発明の燐酸水素アルカリ土類金属塩は、例えば、防錆顔料、光学ガラス用原料、低融点ガラス原料等として用いることができ、特に本発明の燐酸水素アルカリ土類金属塩は、ハロ燐酸水素アルカリ土類金属塩蛍光体製造用として好適に用いることができる。
【0051】
(ハロ燐酸アルカリ土類金属塩蛍光体)
本発明のハロ燐酸水素アルカリ土類金属塩蛍光体は、燐酸水素アルカリ土類金属塩、ハロゲン化物及び賦活元素を含有する化合物を含む混合物、又は必要により添加されるアルカリ土類金属化合物を含有する前記混合物を焼成して得られるハロ燐酸アルカリ土類金属塩蛍光体において、前述した本発明に係る燐酸水素アルカリ土類金属塩を用いて生成されたものである。
【0052】
このハロ燐酸アルカリ土類金属塩蛍光体は、一般式(SrM110(PO(式中、M1はストロンチウム以外のアルカリ土類金属から選ばれる1種以上の元素、Zは賦活元素、Xはハロゲン元素を示す。aは0<a<1、bは0<b<1、cは0<c≦0.5を示す。但し、a+b+c=1である。)で表される。
【0053】
ハロ燐酸アルカリ土類金属塩蛍光体の粒子形状は、母結晶となる燐酸水素アルカリ土類金属塩の粒子形状に強く影響される。そのため、アスペクト比が大きく、粒子形状が柱状の本発明の前記燐酸水素アルカリ土類金属塩を原料として用いることにより、該燐酸水素アルカリ土類金属塩の粒子形状に起因したアスペクト比が大きく、柱状のハロ燐酸アルカリ土類金属塩を得ることができる。
【0054】
前記一般式中の賦活元素としては、ハロ燐酸アルカリ土類金属塩蛍光体に一般的に用いられる元素であれば特に制限はないが、マンガンなどの遷移金属元素やユーロピウム、ディスプロシウムなどの希土類元素であると、発光効率や発光強度が高くできるため好ましい。また、これらの賦活元素は、2種以上を用いても良い。前記一般式中ハロゲン元素としては特に制限はなく、例えばフッ素や塩素などを用いることができる。これらハロゲン元素は1種又は2種以上で使用することができる。賦活元素の原料化合物となる賦活元素を含有する化合物としては特に制限はないが、例えば水酸化物、酸化物、ハロゲン化物、シュウ酸塩や炭酸塩などを用いることができる。燐酸水素アルカリ土類金属塩以外の原料であるアルカリ土類金属の炭酸塩、ハロゲン化物については特に制限は無いが、例えば粒子径が小さく、比表面積が大きく、不純物含有量の小さいものを用いると、均一なハロ燐酸アルカリ土類金属塩蛍光体が得られる傾向があるため好ましい。使用できるハロゲン化物としては特に制限はないが、例えばアルカリ土類金属ハロゲン化物やハロゲン化アンモニウム等が用いられる。
【0055】
前記必要により添加されるアルカリ土類金属化合物は、式中のストロンチウム及び他のアルカリ土類金属の組成調整を行うために適宜添加される。使用できるアルカリ土類金属化合物としては、例えば、これらの水酸化物、酸化物、炭酸塩、硝酸塩又は有機酸塩などが挙げられる。
【0056】
前記原料を所定の比率で配合した後、混合を行う。混合は原料を均一に混合できる方法であれば乾式であっても湿式であっても特に制限されないが、例えば、ボールミルによる混合であると原料を粉砕する効果も有することから、原料を微細化してより均一に混合できる傾向があるため好ましい。
【0057】
混合した原料は、900〜1300℃、好ましくは900〜1200℃で0.5〜10時間、好ましくは1〜5時間焼成する。焼成温度が900℃未満であると、焼成が不十分となり、均一な蛍光体が得られない傾向があるため好ましくなく、また、1300℃より大きいと、焼結が進んで粗大粒子の割合が増加する傾向があるため、前記温度範囲で焼成を行うことが好ましい。さらに、焼成時間が0.5時間未満であると、焼成が不十分となる傾向があるため好ましくなく、また、10時間を超えると、粗大粒子の割合が増加する傾向があることから、前記時間の範囲内で焼成を行うことが好ましい。焼成雰囲気は特に限定されないが、例えば窒素、アルゴンなどの不活性雰囲気とすることができる。また、賦活元素を還元する必要がある場合には、還元雰囲気下で焼成することが好ましく、その場合の雰囲気は、還元雰囲気であれば特に制限はされないが、例えば、窒素等不活性雰囲気に水素を0.1〜10体積%含有させた還元雰囲気とすることができる。なお、焼成に先立って、焼成温度より低い温度で仮焼成を行ってもよく、また、焼成を適宜繰り返し行っても良い。
【0058】
焼成して得られたハロ燐酸アルカリ土類金属塩蛍光体は、未反応のハロゲン化物を含むため、水洗処理することが好ましい。この水洗処理は、ハロゲン化物を除去できる方法であれば特に制限はなく、また、繰り返し水洗処理を行っても良い。
【0059】
ハロ燐酸アルカリ土類金属塩蛍光体を水洗処理後、ろ過、乾燥することにより、ハロ燐酸アルカリ土類金属塩蛍光体粉末を得ることができる。ハロ燐酸アルカリ土類金属塩蛍光体粉末は、粒子径や粒度分布の調整のため、適宜粉砕処理や分級処理を行っても良い。粉砕処理は、ハロ燐酸アルカリ土類金属塩蛍光体の水洗処理前に行っても良く、また、粉砕処理を湿式によって行う場合には、溶媒として水を用い、水洗処理を兼ねて粉砕処理を行ってもよい。
【0060】
このようにして得られたハロ燐酸アルカリ土類金属塩蛍光体は、母結晶中のアルカリ土類金属が均一に分散しているため、発光中心近傍の組成や構造が均一であり、そのため従来の蛍光体に比べて発光輝度を大きくすることができる。また、蛍光体粒子自身も緻密であることに加え、粒子形状が柱状でアスペクト比が1〜5、好ましくは1.5〜4と高いため、蛍光体の塗布膜を均一で緻密な膜とすることができる。なお、製造条件等によっては、柱状以外の粒子形状を有する蛍光体粒子が生成混入することがあるが、個数換算で粒子全体の90%以上が柱状の粒子形状を有していれば、全体として柱状であるといえる。
【実施例】
【0061】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、これらは単に例示であって、本発明はこれらの記載にのみ限定されるものではない。
【0062】
[物性の評価]
(粒子形状の評価)
粒子形状の評価は、SEM(日立製作所社製、S−4800)で観察することにより行った。任意の視野における粒子20個について最長径(a)、次に長い径(b)、最短径(c)を測定し、その平均値を求めた。
【0063】
(粒子径の評価)
粒子径は、レーザー法による粒子径をマイクロトラック(日機装社製、FRA)を用いて測定した。
【0064】
(比表面積の評価)
比表面積(BET比表面積)の測定は、フローソーブ(島津製作所社製、フローソーブ2300)を用いて行った。
【0065】
(組成分析)
・リン(P)の分析方法(比色分析)
試料0.55gを塩酸(1+1)20mLに加熱溶解し、純水で500mLに定容して試料溶液を調製した。
この試料溶液10mLに硝酸(1+1)4mLを加えて5分間煮沸した。さらにフェノールフタレイン指示薬を1滴加え、アンモニア水(1+1)で中和した後、硝酸(1+1)3滴を加えて無色溶液を得た。次いで、この無色溶液に純水70mLと発色剤としてバナドモリブデン酸アンモニウム溶液20mLを加えて、純水で100mLの定容として測定溶液を調製した。
測定溶液を分光光度計(島津製作所社製、UV−160)を用いて測定し、波長430nmの吸光度で濃度を測定し、Pの含有量を決定した。
【0066】
・ストロンチウム(Sr)とバリウム(Ba)の全量測定
試料0.55gを塩酸(1+1)20mLに加熱溶解し、純水で500mLに定容して試料溶液を調製した。
この試料溶液25mLに1M塩化アンモニウム水溶液2mLとZn−EDTA水溶液10mLを加えた後、純水で100mLの定容として測定前溶液を調製した。
この測定前溶液にアンモニア水(1+1)7mLとエリオクロームブラックT指示薬を2滴加えて測定溶液を調製した。
この測定溶液を0.01MのEDTA溶液で滴定を行い、SrとBaの総量を測定した。
【0067】
・ストロンチウム(Sr)/バリウム(Ba)比率の測定
試料0.1gを塩酸(1+1)20mLで加熱溶解し、冷却後純水で500mLに定容して試料溶液を調製した。
この試料溶液1mLを純水で100mLに定容し、測定溶液を調製した。
測定溶液を誘導結合プラズマ発光分析(ICP−AES)装置(バリアン社製、LibertyII)で分析してSr/Ba比率を求めた。
【0068】
さらに、(Sr+Ba)総量とSr/Ba比率からSr含有量とBa含有量を求め、Sr含有量、Ba含有量とPの含有量から測定試料の組成を決定した。
【0069】
[燐酸水素アルカリ土類金属塩の合成]
(実施例1)
3Lのガラス製反応槽に、市販の硝酸ストロンチウム(純正化学社製、純度97%)63.5gと市販の硝酸バリウム(純正化学社製、純度98.5%)52.5gとを95℃のイオン交換水1Lに溶解し、Sr/Baのモル比が0.6/0.4の硝酸塩水溶液をA液として調製した。また、市販の燐酸水素二アンモニウム(日本化学工業社製、純度99%)66.0gを室温(25℃)のイオン交換水1Lの割合で溶解して燐酸アンモニウム水溶液をB液として調製した。反応槽中のA液を95℃に加熱した後、25℃のB液を1066.0gを53.3g/minの速度で滴下して反応させた。反応中は反応槽中の反応溶液の温度が95℃となるように投げ込みヒーターで制御しながら300rpmの速度で撹拌して反応させた。
B液の滴下終了後、反応溶液の温度を95℃に維持して300rpmの速度で撹拌しながらさらに60分間熟成を行った。
次いで、反応溶液を吸引ろ過でろ過して生成物をろ別分離し、洗浄液の電気伝導度が1mS/cm以下となるまで生成物をイオン交換水で洗浄した。洗浄後の生成物を120℃で12時間乾燥させて、白色粉末を得た。得られた粉末の組成分析を行ったところ、Sr0.6Ba0.4HPOであった。また、X線回折測定(XRD)を行ったところ、三斜晶の結晶構造を有する燐酸水素ストロンチウムバリウムであることを確認した。XRD測定結果を図1に示す。さらに、平均粒子径、BET比表面積及び最長径(a)、次に長い辺の径(b)と最短径(c)の測定結果を表1に、SEM写真を図2に示す。
【0070】
【表1】

【0071】
(実施例2)
硝酸ストロンチウム42.3gと硝酸バリウム78.4gを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、燐酸水素ストロンチウムバリウム粉末を合成した。得られた粉末の組成分析を行ったところ、Sr0.4Ba0.6HPOであった。また、X線回折測定(XRD)により、三斜晶の結晶構造を有する燐酸水素ストロンチウムバリウムであることを確認した。さらに、平均粒子径、BET比表面積及び最長径(a)、次に長い辺の径(b)、最短径(c)の測定結果を表1に示す。
【0072】
(実施例3)
硝酸ストロンチウム52.9gと硝酸バリウム65.4gを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、燐酸水素ストロンチウムバリウム粉末を合成した。得られた粉末の組成分析を行ったところ、Sr0.5Ba0.5HPOであった。また、X線回折測定(XRD)により、三斜晶の結晶構造を有する燐酸水素ストロンチウムバリウムであることを確認した。また、平均粒子径、BET比表面積及び最長径(a)、次に長い辺の径(b)、最短径(c)の測定結果を表1に示す。
【0073】
(実施例4)
硝酸ストロンチウム84.7gと硝酸バリウム26.1gを用いたこと以外は実施例1と同様にして、燐酸水素ストロンチウムバリウム粉末を合成した。得られた粉末の組成分析を行ったところ、Sr0.8Ba0.2HPOであった。また、X線回折測定(XRD)により、三斜晶の結晶構造を有する燐酸水素ストロンチウムバリウムであることを確認した。さらに、平均粒子径、BET比表面積及び最長径(a)、次に長い辺の径(b)、最短径(c)の測定結果を表1に示す。
【0074】
(比較例1)
硝酸ストロンチウム21.2gと硝酸バリウム104.5gを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、燐酸水素ストロンチウムバリウム粉末を合成した。得られた粉末の組成分析を行ったところ、Sr0.2Ba0.8HPOであった。また、X線回折測定(XRD)したところ、斜方晶の結晶構造を有する燐酸水素ストロンチウムバリウムであることを確認した。SEMにより粒子形状の観察を行ったところ、板状の粒子形態を有しており、柱状結晶ではないことが分かった。さらに、平均粒子径、BET比表面積測定結果を表1に示す。
【0075】
[ハロ燐酸アルカリ土類金属塩蛍光体の合成]
(実施例5)
実施例1で得られた燐酸水素ストロンチウムバリウム(Sr0.6Ba0.4HPO)125.0g、市販の炭酸ストロンチウム(SrCO;関東化学社製試薬、純度99.9%)43.9g、市販の塩化カルシウム(CaCl;関東化学社製試薬、純度95%)11.0gと市販の酸化ユーロピウム(Er;和光純薬社製試薬、純度99.9%)1.0gを秤量し、ボールミルで1時間混合した。得られた混合原料を体積比で窒素:水素=97:3の割合で混合した還元雰囲気下、930℃で2時間焼成して焼成物を得た。次いで、該焼成物80gをイオン交換水1Lに分散させ0.5時間撹拌することで塩化物を洗浄除去した後、脱水ろ過して、110℃の乾燥機で2時間乾燥して蛍光体粉末Aを得た。この蛍光体粉末Aの元素分析を行ったところ、Sr6.6Ba2.4Ca(POCl:Euであることが確認できた。また、蛍光体粉末Aの平均粒子径は18.8μmであり、BET比表面積は0.41m/gであった。さらに、SEM観察により蛍光体粉末Aの蛍光体粒子は柱状形状で最長径(a)16μm、次に長い辺(b)5.5μm、最短径(c)3.5μmでアスペクト比が4.6であることが分かった。蛍光体粉末AのSEM写真を図3に示す。
【0076】
(比較例2)
実施例1で得た燐酸水素ストロンチウムバリウムに代えて、燐酸水素ストロンチウム67.6gと燐酸水素バリウム57.4gとを用いたこと以外は、実施例5と同様にして蛍光体粉末Bを合成した。この蛍光体粉末Bの元素分析を行ったところ、Sr6.6Ba2.4Ca(POCl:Euであることが確認できた。また、蛍光体粉末Bの平均粒子径は17.6μmであり、BET比表面積は0.43m/gであった。
【0077】
[蛍光特性評価]
実施例5及び比較例2で得た蛍光体粉末をそれぞれシャーレに充填し、波長254nmの紫外線ランプ(ULLAND社製、UVL−21)を用いて紫外線を照射したところ、共に青白色の発光を確認した。それぞれの初期発光輝度を比較したところ、蛍光体粉末Aの発光輝度/蛍光体粉末Bの発光輝度=1.12であり、本発明に係る蛍光体は発光特性が優れていることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】実施例1で得られた燐酸水素ストロンチウムバリウムのXRD回折図である。
【図2】実施例1で得られた燐酸水素ストロンチウムバリウムのSEM写真である。
【図3】実施例5で得られたハロ燐酸アルカリ土類金属塩蛍光体のSEM写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
Sr(1−x)HPO …(1)
(ただし、Mはストロンチウム以外のアルカリ土類金属から選ばれる1種以上の元素を表し、xは0.3≦x<1.0の範囲の値である。)で表されることを特徴とする燐酸水素アルカリ土類金属塩。
【請求項2】
結晶構造が三斜晶であることを特徴とする請求項1に記載の燐酸水素アルカリ土類金属塩。
【請求項3】
前記一般式(1)においてxの範囲が0.4≦x≦0.8であることを特徴とする請求項1又は2に記載の燐酸水素アルカリ土類金属塩。
【請求項4】
粒子形状が柱状であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の燐酸水素アルカリ土類金属塩。
【請求項5】
粒子の最短径が1〜10μmの範囲であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の燐酸水素アルカリ土類金属塩。
【請求項6】
全粒子のうちの90%以上の粒子のアスペクト比が2〜20の範囲であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の燐酸水素アルカリ土類金属塩。
【請求項7】
比表面積が0.1〜5.0m/gの範囲であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の燐酸水素アルカリ土類金属塩。
【請求項8】
前記一般式(1)において、Mが少なくともバリウム元素を含むことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の燐酸水素アルカリ土類金属塩。
【請求項9】
ハロ燐酸アルカリ土類金属塩蛍光体製造用として用いられる請求項1乃至8のいずれか1項に記載の燐酸水素アルカリ土類金属塩。
【請求項10】
ストロンチウム塩とストロンチウム以外のアルカリ土類金属塩と燐酸又は燐酸塩とを溶媒中で反応させて請求項1乃至9のいずれか1項に記載の燐酸水素アルカリ土類金属塩を得ることを特徴とする燐酸水素アルカリ土類金属塩の製造方法。
【請求項11】
50℃以上の温度で反応させた後、70℃以上の温度で30分以上熟成することを特徴とする請求項10に記載の燐酸水素アルカリ土類金属塩の製造方法。
【請求項12】
前記燐酸塩が燐酸アンモニウムであることを特徴とする請求項10又は11に記載の燐酸水素アルカリ土類金属塩の製造方法。
【請求項13】
燐酸水素アルカリ土類金属塩、ハロゲン化物及び賦活元素を含有する化合物を含む混合物、又は必要により添加されるアルカリ土類金属化合物を含有する前記混合物を焼成して得られるハロ燐酸アルカリ土類金属塩蛍光体であって、該燐酸水素アルカリ土類金属塩として請求項1乃至8のいずれか1項に記載の燐酸水素アルカリ土類金属塩を用いて生成されたものであることを特徴とする蛍光体。
【請求項14】
粒子形状が柱状であることを特徴とする請求項13に記載の蛍光体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−137865(P2008−137865A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−327012(P2006−327012)
【出願日】平成18年12月4日(2006.12.4)
【出願人】(000230593)日本化学工業株式会社 (296)
【Fターム(参考)】