説明

物体接触検知装置

【課題】センサが物体に触れなくても、ドアの挟み込みを検出可能とする。
【解決手段】ドアパネルが開方向又は閉方向に移動している間、振動センサ9はドアパネルの振動レベルを検出する。制御部15は、検出された振動レベルと閾値とを比較し、振動レベルが閾値を超えたときに、挟み込みが発生したと判定する。制御部15は、駆動部17を制御し、ドアパネルを停止もしくは反転作動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動部材の他物体への接触を検出する物体接触検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の自動ドアや、ワゴン、バン等の車両の電動スライドドア装置は、モータ等によってドアをスライドさせて開閉する電動開閉装置を備えている。電動開閉装置は、ドアを閉める際に、ドア枠とドアとの間に物体を挟み込むことがある。
【0003】
そこで、挟み込みが発生した場合に、挟み込みが発生したことを検出して閉扉動作を停止させたり、ドアを開ける開扉動作に切り換えたりするような制御機能を備えた電動開閉装置が、例えば、特許文献1〜3に提案されている。
【0004】
特許文献1に開示されている挟み込み判定・防止装置は、窓やドアといった開閉部の周縁部に取り付けられた圧電センサを備える。挟み込み判定・防止装置は、圧電センサの出力に基づいて、開閉部への物体の接触を検出する。
【0005】
また、特許文献2に記載された挟み込み検出センサは、断面が十字状の孔が形成されたチューブ内に複数の導線を互いに離間した状態で配置したケーブル状の構成を有する。この検出センサも、開閉部の周縁部に取り付けられる。物体の挟み込みによって、チューブに圧力が加わると、チューブが潰れ、2以上の導線が互いに接触して導通する。挟み込み検出センサは、この導通を検出して、挟み込みが発生したことを検出する。
【0006】
また、特許文献3は、ドア等の挟み込みが発生する部分に配置された接触センサを備える挟み込み判定装置と、開閉部材を駆動する駆動装置と、挟み込み判定装置の判定に従って駆動装置を制御する制御装置と、を備えるドア制御装置を開示する。挟み込み判定装置が挟み込みを検知した場合、制御装置は、駆動装置を停止するか、開閉部の移動方向を反転させて開方向に移動するよう制御する。
【特許文献1】特開平10−76843号公報
【特許文献2】特許第3300660号公報
【特許文献3】特開2002−106258号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上説明したように、従来の挟み込み検出センサは、挟み込みを発生する開閉部の外緑部に感圧センサを設けた構成を有する。このため、センサの配置されていない部分での挟み込みを検出することができない。このため、物体の挟み込みが発生し得る領域全体に感圧センサを配置しなければ、検出できないエリアが生じてしまう。しかし、圧電センサ等を広いエリアに配置することは困難である。特許文献2に開示されているケーブル状の圧電センサは、開閉部の外縁に配設するのは容易であるが、構造が複雑である。また、圧電センサからの信号を信号処理部に送るためにコネクタが必要であるが、コネクタによって占有された部分では挟み込みに対する感度がなくなってしまう。
【0008】
加えて、従来の装置は、感圧センサに物体が触れないと検知できない。特に特許文献3では、開閉部が閉方向に移動中の挟み込みが検知されるにすぎない。
【0009】
このように、従来の挟み込み検出装置は、非検出エリアが生じてしまうか構造が複雑であった。また、感圧センサに物体が直接触れた場合しか挟み込みを検出することができなかった。また、装置が高価であるという問題もあった。
【0010】
本発明は上記の実情に鑑みてなされたものであり、構造が簡単で且つ非検出エリアの小さい物体接触検知装置を提供することを目的とする。
また、この発明は、センサ部に物体が直接触れない場合に於いても、物体が移動部材の一部分に接触したことを検知できる物体接触検知装置を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点にかかる物体接触検知装置は、
移動部材に装着され、該移動部材の振動レベルに対応する信号レベルを有する検出信号を出力する振動センサと、
前記振動センサから出力された検出信号に基づいて、前記移動部材が他物体に接触したことを判別する接触判別手段と、
を備えることを特徴とする。
【0012】
例えば、前記接触判別手段は、前記振動センサから出力される検出信号の信号レベルと前記移動部材が移動中に定常状態となったときに前記振動センサから出力される検出信号の信号レベルとの差が、基準レベルを超えたときに、前記移動部材が他物体に接触したと判別する。
【0013】
例えば、前記振動センサは、互いに直交する3つの方向の振動成分の振動レベルに対応する3つの検出信号を出力する3方向センサから構成され、前記接触判別手段は、前記振動センサの出力する3つの検出信号の何れかの信号レベルと、前記移動部材が移動中に定常状態となったときに前記振動センサから出力される対応する検出信号の信号レベルとの差が、基準レベルを超えたときに、前記移動部材が他物体に接触したと判別する。
【0014】
例えば、前記振動センサは、互いに直交する3つの方向の振動成分の振動レベルに対応する3つの検出信号を出力する3方向センサから構成され、前記接触判別手段は、前記振動センサの出力する3つの検出信号の全てにおいて、検出信号の信号レベルと、前記移動部材が移動中に定常状態となったときに前記振動センサから出力される対応する検出信号の信号レベルとの差が、基準レベルを超えたとき、前記移動部材が他物体に接触したと判別しない。この場合、電磁波ノイズなどにより、3方向同時に信号が発生してしまう状況と他物体に接触した状況を区別でき、電磁波ノイズなどの影響を除外できる。
【0015】
例えば、前記物体接触判定手段は、前記移動部材が物体に接触しない場合に前記振動センサから出力される検出信号を記憶する記憶手段と、前記振動センサから出力される検出信号と前記記憶手段に記憶されている信号とを比較し、2つの信号の特性が異なると判別した場合に、前記移動部材が他物体に接触したと判別する判別手段と、を備える。
【0016】
例えば、前記接触判別手段は、前記移動部材が他物体に接触したと判別したときに、前記移動部材を駆動する駆動部に移動物体の動きを制御する制御信号を出力する制御部を備えてもよい。
【0017】
また、この発明の第2の観点に係る開閉装置は、
上記の物体接触検知装置と、
前記移動部材を駆動する駆動手段と、
前記接触判別手段が前記移動部材が他物体に接触したと判別信号したときに、前記移動部材を停止するか又は移動方向を反転させるよう前記駆動手段を制御する移動制御手段と、から、構成される。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、振動センサの出力する検出信号に基づいて移動部材が他物体に接触したことを検出する。従って、センサの構造を簡単にできる。また、振動センサ自体が他物体に接触しなくても、移動部材の振動を検出できれば、他物体への接触を検出することができる。このため、非検出エリアは小さい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に本実施形態にかかる物体接触検知装置及について図面を参照して説明する。以下で説明する実施形態は、本発明の物体接触装置を車両用電動スライドドアの挟み込み検知装置及びドアの開閉装置に適用した例である。
【0020】
まず、図1と図2を参照して本実施の形態に係る挟み込み検知装置を備えた車両用電動スライドドアの構成を説明する。
【0021】
図1に示すように、車両8の側部には、スライドドア1が設けられている。スライドドア1は、ドアパネル3のその上辺・下辺がガイド溝5により支持されており、水平方向にスライドして開閉する。乗員の出入りや物体の出し入れ時にはスライドドア1が開けられ、開口部7が形成される。スライドドア1が閉じられると、スライドドア1はドア枠4に圧接する。
【0022】
スライドドア1の上部には上下動可能な窓ガラス2が配置されている。
【0023】
図2の断面図に示すように、ドアパネル3内には、スライドドア1の移動中の振動(加速度)を検出して、検出した振動の大きさに対応した電圧レベルを有する電圧信号を生成して出力する振動センサ9と、振動センサ9から出力される電圧信号を処理する信号処理回路10とが配置されている。振動センサ9及び信号処理回路10は、導電性の部材(鉄板)でシールドされた位置に配置されている。
【0024】
振動センサ9は、お互いに垂直な3方向(X方向、Y方向、Z方向)の振動を個別に検出する機能を有する3方向(3次元)振動(加速度)センサから構成される。振動センサ9は、X方向がスライドドア1の閉方向(水平方向)に一致し、Y方向がドアパネル3の上(鉛直)方向に一致し、Z方向がドアパネル3のパネル面にほぼ垂直な水平方向に一致するように設置されている。
【0025】
次に、図3を参照して、この実施の形態に係る開閉装置の回路構成を説明する。
この開閉装置は、図3に示すように、振動センサ9、信号処理回路10、電子制御装置(ECU)11、駆動部17、モータ18、開閉スイッチ19から構成される。
【0026】
図3に示す構成は、1個のスライドドア1用の構成であり、車両8に左右2つのスライドドアが配置されている場合には、2つの回路が配置され、それぞれ、対応するスライドドア1を制御する。
【0027】
振動センサ9は、前述のように、スライドドア1の振動(加速度)のX方向成分、Y方向成分、Z方向成分の振動レベルを検出し、検出した振動レベルに対応した電圧を有する3つの検出信号(震度レベル信号)を出力する。
【0028】
信号処理回路10は、ローパスフィルタ12と増幅回路13とから構成される。ローパスフィルタ12と増幅回路13とは振動センサ9からの3方向の信号にそれぞれが対応するために、各3つ配置されている。
【0029】
振動センサ9の出力する3つの検出信号は、対応するローパスフィルタ12に供給され、高周波帯域の雑音が低減され、増幅回路13によって増幅され、ECU11に出力される。
【0030】
ECU11はA/D変換部14と、制御部15と、記憶部16とを備える。
【0031】
A/D変換器14は、3つの増幅回路13の出力するアナログの検出信号をそれぞれデジタル検出信号に変換する。
【0032】
制御部15は、プロセッサ(マイクロプロセッサ)、スライドドア1の開閉動作を制御するための動作プログラムを記憶したROM(Read Only Memory)、ワークメモリとして機能するRAM(Random Access Memory)などを備える。
【0033】
制御部15は、開閉スイッチ19から供給される指示信号に応答して、駆動部17を介してモータ18を駆動して、スライドドア1を開閉する。また、制御部15は、スライドドア1の開閉動作中に、A/D変換部14から供給されるデジタル検出信号を処理して、スライドドア1への物体の接触(挟み込み)の有無を常時監視している。制御部15は、スライドドア1への物体の接触を検出すると、駆動部17を介してモータ18を停止させ、スライドドア1の開閉を停止させる。制御部15による開閉制御動作については、図4を参照して後述する。
【0034】
記憶部16には、物体への接触を検出するための基準値となる閾値が予め格納されている。この閾値は、スライドドア1が移動中に定常状態となったときのドアパネル3の振動レベルを基準として、所定のレベル差が設定されている値である。閾値は、X方向,Y方向,Z方向にそれぞれ且つ正レベルの閾値+tx、+ty、+tzと負レベルの閾値−tx、−ty、−tzが設定されている。閾値は、スライドドア1の通常の加速・減速動作を物体への接触であると検出せず、且つ、スライドドア1に物体が接触したことによる加速度の急激な変動を検出できる程度の値に、実験等に基づいて、設定される。
【0035】
駆動部17は、制御部15の指示に従って、モータ18を駆動(回転)し、スライドドア1を開閉させる。また、駆動部17は、図示せぬスイッチのオン・オフ等に基づいて、スライドドア1の開閉動作の終了を検出し、その旨を制御部15に通知する。
【0036】
モータ18は、駆動部17により駆動されて回転し、その動力が開閉機構伝達され、スライドドア1を水平方向に移動して開閉する。
【0037】
開閉スイッチ19は開・閉・ニュートラルの3位置を持ち、スイッチが開または閉の位置にあるときに、それぞれの位置に応じてスライドドアの開動作、閉動作を指示する指示信号をECU11の制御部15に出力する。
【0038】
次に図4のフローチャートを参照して、開閉装置の動作を説明する。
【0039】
車両8の電気系統がオンにされると、制御部15は図4のフローチャートに示す処理を開始する。また、各部への動作電力の供給が開始し、振動センサ9はドアパネル3の振動を検出し、検出信号の出力を開始する。
【0040】
制御部15は、図4に示すドア開閉制御処理を開始すると、開閉スイッチ19からの指示を待機する(ステップS21)。制御部15は、開閉スイッチ19から開指示信号又は閉指示信号を受信すると、駆動部17に、ドアの開動作又は閉動作を開始することを指示する制御信号を送出する(ステップ21)。駆動部17は、この制御信号に応答して、モータ18を駆動し、スライドドア1の開動作又は閉動作を開始させる。
【0041】
駆動部17は、スライドドア1の開閉状況をモニタしており、完全に開いたこと或いは完全に閉じたことを検出すると、制御部15にその旨を通知する。
【0042】
制御部15は、スライドドア1が完全に開又は閉の状態になったか否かを、駆動部17からの通知に基づいて、判別する(ステップ22)。
【0043】
制御部15は、スライドドア1が完全に開いた状態或いは完全に閉まった状態となったことを判別すると(ステップS22;Yes)、今回の処理を終了する。
【0044】
一方、制御部15は、スライドドア1が完全に開又は閉の状態になっていないと判別すると(ステップ22;No)、デジタル検出信号が示す振動レベルと記憶部16に記憶されている各閾値とを比較し、振動レベル(加速度)が閾値を超えているか否かを、X、Y、Zの各方向且つ正負各閾値について判定する(ステップS23)。
【0045】
物体がスライドドア1とドア枠の間に挟み込まれると、スライドドア1が急停止(急減速)させられることとなる。このため、振動レベルが急激に変化し(加速度が正又は負に急増し)、正又は負の閾値を超える。
【0046】
制御部15は、X方向、Y方向、Z方向の振動レベル(絶対値)の何れかが記憶部16に格納されている対応する閾値を超えた(正の閾値より大きいか、負の閾値より小さい)場合(ステップS23;Yes)、スライドドア1が物体に接触した(挟み込みが発生した)と判定する。
【0047】
ステップ23において物体接触(挟み込み)が発生したと判定したときには、制御部15は、スライドドア1を反転作動させるための制御信号を、駆動部17に送出する(ステップS24)。駆動部17は、制御信号に応答し、モータ18を反転させ、スライドドア1の開動作を閉動作に、閉動作を開動作に切り替える。その後、処理はステップS22にリターンする。
【0048】
一方、ステップS23で、振動レベルが閾値を超えておらず、挟み込みが発生していないと判定した場合(ステップS23;No)、制御部15は、制御をステップS22に戻して、開閉動作の終了を検出する処理(ステップS22)と接触の発生を検出する動作(ステップS23,24)を継続する。
【0049】
スライドドア1とドア枠4の間に物体の挟み込みが生じた場合に、信号処理回路10の出力する検出信号に生ずる変化の一例を図5に示す。
【0050】
この例では、スライドドア1の閉動作が開始後、ドアパネル3とドア枠4の間に物体の挟み込みが生じたため、X方向の加速度AXが負方向に急激に上昇し、負の閾値−txを超える。また、Y方向の加速度AYも負方向に急上昇し、負の閾値−tyを超える。このため、制御部15は、X方向の加速度AXが負の閾値−txを超えた時点で、振動レベルが閾値を超えたと判別する(ステップS23;Yes)。
【0051】
従って、制御部15は、駆動部17に制御信号を出力して、モータ18を開方向に回転させる、スライドドア1を開制御させ、挟み込みを防止する。
【0052】
なお、スライドドア1の閉動作中にドアパネル3とドア枠4との間に物体の挟み込みが生じた場合の例を説明したが、スライドドア1の開動作中にドアパネル3が他の物体に衝突した場合には、X方向の加速度AXが正方向に急上昇し、閾値+txを超える(ステップS23;Yes)。従って、スライドドア1が閉動作から開動作に切り替えられる。
【0053】
以上説明したように、上記実施の形態の開閉装置は、ドアパネル3内に配置された振動センサ9でドアパネル3の振動レベル(強度)を検出し、この振動レベルと閾値を比較することより、スライドドア1への物体の接触を検出する。従って、ドアパネル3の挟み込みが発生する位置全体にセンサを配置する必要がなく、簡単な構成で、挟み込みを検出することが可能である。また、ドアパネル3とドア枠4との間の挟み込みだけでなく、ドアパネル3を開動作している時の他物体への衝突なども判定することができる。
【0054】
また、スライドドア1の他物体への接触や衝突を検出し、スライドドア1を反転移動させるので、挟み込みを防止・解消することができる。
【0055】
なお、この発明は、上記実施の形態に限定されず、種々の変形及び応用が可能である。
【0056】
例えば、上記の実施の形態では、スライドドア1が他物体に接触したと判別したときに(ステップS23;Yes)、スライドドア1の移動を反転させる例を示した。これに限定されず、接触を検出したときに、スライドドア1を停止させるようにしてもよい。その場合、制御部15は、図4のステップS24で、駆動部17にモータ18の停止を指示する制御信号を供給する。また、制御部15は、スライドドア1を停止させる時に一定の短期間のみモータ18を逆回転したり、図示せぬ制動機構を駆動することにより、ドアパネル3の動きに制動をかけるようにしてもよい。また、スライドドア1を停止させた後に、反転動作を開始するように制御信号を出力してもよい。
【0057】
上記実施の形態においては、X,Y,Z何れかの方向の振動レベルが閾値を超えた場合に、何らかの衝突が生じたと判別した(ステップS23)。この発明はこれに限定されない。例えば、制御部15は、ステップS23で、何れか2つの方向の振動レベルが閾値を超えた場合に、何らかの衝突が生じたと判別し、ステップS24に進むようにしてもよい。この場合、例えば、図4のフローチャートのステップS23を図6のステップS23aに示すように修正する。この場合、検出信号が図6(b)に示すようなものであれば、制御部15は、X方向の加速度AXとY方向の加速度AYが、それぞれ、閾値−tx、−tyを超えた時点で、他物体への接触・挟み込みが生じたと判別する。
【0058】
特に、スライドドアの場合、スライドドアの移動方向は、全開時から全閉付近まではx方向となり、全閉付近ではz方向の動きが加わる。全開時から全閉付近で衝突があった場合、スライドドアの完全な上下中央に衝突しないケースがほとんどであるが、この場合、衝突によりスライドドアを回転させる力が加わるので、x方向だけでなく、y方向の出力も検出される。
【0059】
移動中のドアパネル3が他物体に接触した場合、通常、X,Y、Zの全方向で振動が大きくなることは無く、振動が大きくなるのは、2方向以下である。X,Y、Zの3方向全てで振動が大きくなるのは、ユーザがドアパネル3を叩いたり、揺すった場合、荷物がぶつかった場合等、人為的な原因の場合が多い。そこで、X,Y、Zの3方向全てで振動が大きくなった場合には、それをノイズとして無視するようにしてもよい。
【0060】
この場合、図4のステップ23を、図10のステップ23b、23cに置き換える。少なくとも1つの振動レベルが閾値を超える場合であり、かつ、3つの振動レベルが閾値を超える場合でないとき、接触の発生と検出する。3つとも同様な信号が発生する場合は、電磁波ノイズが重畳された、または、車両自体に大きな振動が与えられたといったようなノイズと見なして、接触の判定はしない。
【0061】
例えば、図7(a)、(b)、(c)のグラフの組み合わせの場合、XとYの2方向の振動レベルAX,AYが閾値−tx、−tyを超えたタイミングで、Z方向の振動レベルAZは予め設定されている基準値±rz(閾値±tzよりも絶対値が小さい)を超えていない。従って、X方向とY方向の振動レベルAX、AYが閾値−tx、−tyを超えた原因が接触にあるものとして、制御部15は、駆動部18に制御信号を出力する。
【0062】
一方、図7(a)、(b)、(d)のグラフの組み合わせの場合、XとYの2方向の振動レベルAX,AYが閾値−tx、−tyを超えたタイミングで、Z方向の振動レベルAZは基準値±rzを超えている。従って、制御部15は、X方向とY方向、Z方向の振動レベルの全てが大きいと判断し、駆動部18に制御信号を出力せず、従前の駆動制御を継続する。
【0063】
このような制御を行うことにより、利用者が、開閉動作中にドアパネル3をたたいたような場合に、それを無視することが可能となる。
【0064】
なお、一方向の振動レベルが閾値を越えた場合に衝突が発生したと検出する場合においても、例えば、ステップS23で、少なくとも他の一方向の振動が基準レベル以下であることを判断基準とするようにしてもよい。
【0065】
また、スライドドア1が他の物体に接触したことを判別するために、振動レベルと閾値を比較する手法を説明したが、他の手法を採用することも可能である。
【0066】
例えば、スライドドア1の開閉動作に伴う標準的な振動レベルの変化のパターンと実際に検出した振動レベルの変化とを比較し、パターンが不一致となったときに、接触が発生したと判別することも可能である。
【0067】
この場合、例えば、図8(a)に示すような、スライドドア1の開閉動作に伴う標準的な時間対振動レベル(加速度)の変化パターン(基準パターン)を記憶部16に予め登録しておく。
【0068】
制御部15は、スライドドア1の開閉動作中に検出された振動レベルの時間変化のパターンと基準パターンとを比較し(パターンマッチングし)を行い、パターンが一致しているか否かを判別し、一致していないと判別したときに、接触が発生したと判別する。
【0069】
このような構成とすれば、制御部15は、例えば、図8(b)、(c)に示すように、検出信号のレベルが変化した程度では、他物体との接触が生じたとは判別しないが、図8(d)、(e)に示すように、時間軸上でのパターンのずれや波形の形状の変化が生じたと判別した時点で、他物体との接触が生じたと判別する。
【0070】
上記実施の形態においては、3方向振動センサを使用したが、1方向振動センサを3つ配置することにより同様の機能を実現することも可能である。
【0071】
また、X方向と、Y方向と、Z方向の振動の特性から、どの部位で接触が生じたか等を判別し、ユーザに報知するようにしてもよい。例えば、図9に示すように、X方向と、Y方向と、Z方向の振動レベルの組み合わせと、接触や衝突の発生位置とを対応付けて記憶部16に格納しておく。制御部15は、ステップS23で接触が発生したことを検出したときに、その時点でのX、Y、Z各方向の振動レベルを判別し、その組み合わせに基づいてテーブルを参照して接触部位を特定し、図示せぬ表示部し、或いは、音声で報知する。
【0072】
通常、ドアパネル3の移動方向は固定であり、接触や挟み込みの発生する方向もほぼ固定される。例えば、図1の構成例では、衝突や挟み込みが発生するのは、X方向である。そこで、X方向の振動レベル(加速度レベル)を検出し、X方向の振動レベルと閾値とを比較することにより、或いは、X方向の振動特性と基準となるX方向の振動特性とを比較することにより、接触・衝突の発生を検出するようにしてもよい。
【0073】
上記実施形態では、振動センサ9と信号処理回路10をスライドドア1に設置する例をしめした。この発明は、これに限定されない。振動センサ9はドアパネル3の振動を検知できるならばその位置は特定されず、信号処理回路10は車両本体8に配置する等してよい。
【0074】
また、図3に示した回路構成は同様の機能を実現できるならば任意に変更可能である。例えば、振動センサ9の出力する検出信号をデジタル化した後に、ノイズを除去したり、制御部15がデジタル制御信号を出力し、これをアナログ信号に変換して駆動回路に供給する等してもよい。
【0075】
また、上記実施の形態では、スライドドア1毎に振動センサ9〜モータ18を配置したが、例えば、振動センサ9、信号処理回路10,駆動部17,モータ18をスライドドア1毎に配置し、ECU回路11を共用するようにすることも可能である。この場合、ECU11は、時分割処理で、複数のスライドドア用の処理を行う。
【0076】
なお、上記実施形態には開閉部として自動車の電動スライドドアについて説明したが、例えば自動車の電動ハッチバックドア、サンルーフ、パワーウィンドウ、パワーシートに用いても良い。また、自動車に限らずエレベータや電車や飛行機や建物の自動ドアに適用したり、ガレージや店舗等のシャッターに適用してもよい。即ち、開閉部等の移動部材に物体が接触する可能性のあるものであれば、本発明を適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】車両用ドア及びその付近の概略図である。
【図2】車両用ドアの縦断面図である。
【図3】実施の形態に係る開閉装置の回路構成を示すブロック図である。
【図4】制御部のドア開閉動作のフローチャートである。
【図5】振動センサから出力される検出信号の例を示す図である。
【図6】(a)は、図4のフローチャートの変形例を示し、(b)は、振動センサから出力される検出信号の例を示す図である。
【図7】変形例において、ドアパネルと他物体の接触が発生したと判別する場合としない場合を説明するための検出信号の例を示す図であり、(a)〜(c)の組み合わせは接触したと検出する例、(a)、(b)、(d)の組み合わせは、接触したと判別しない例である。
【図8】変形例において、ドアパネルと他物体の接触が発生したと判別する場合の検出信号の例を示す図である。
【図9】ドアパネルと他物体とが接触した原因或いは接触した箇所を対応付ける表の例である。
【図10】図4のフローチャートの変形例を示す。
【符号の説明】
【0078】
1 スライドドア(移動部材)
2 窓ガラス
3 ドアパネル
4 ドア枠
5 ガイド溝
7 開口部
8 車体
9 振動センサ
10 信号処理回路(信号処理手段)
11 ECU(接触判別手段、制御部)
12 ローパスフィルタ
13 増幅器
14 A/D(アナログデジタル)変換回路
15 制御部(接触判別手段、判別手段)
16 記憶部 (記憶手段)
17 駆動部
18 モータ
19 開閉スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動部材に装着され、該移動部材の振動レベルに対応する信号レベルを有する検出信号を出力する振動センサと、
前記振動センサから出力された検出信号に基づいて、前記移動部材が他物体に接触したことを判別する接触判別手段と、
を備えることを特徴とする物体接触検知装置。
【請求項2】
前記接触判別手段は、前記振動センサから出力される検出信号の信号レベルと前記移動部材が移動中に定常状態となったときに前記振動センサから出力される検出信号の信号レベルとの差が、基準レベルを超えたときに、前記移動部材が他物体に接触したと判別する、ことを特徴とする請求項1に記載の物体接触検知装置。
【請求項3】
前記振動センサは、互いに直交する3つの方向の振動成分の振動レベルに対応する3つの検出信号を出力する3方向センサから構成され、
前記接触判別手段は、前記振動センサの出力する3つの検出信号の何れかの信号レベルと、前記移動部材が移動中に定常状態となったときに前記振動センサから出力される対応する検出信号の信号レベルとの差が、基準レベルを超えたときに、前記移動部材が他物体に接触したと判別する、
ことを特徴とする請求項1に記載の物体接触検知装置。
【請求項4】
前記振動センサは、互いに直交する3つの方向の振動成分の振動レベルに対応する3つの検出信号を出力する3方向センサから構成され、
前記接触判別手段は、前記振動センサの出力する3つの検出信号の全てにおいて、検出信号の信号レベルと、前記移動部材が移動中に定常状態となったときに前記振動センサから出力される対応する検出信号の信号レベルとの差が基準レベルを超えたとき、前記移動部材が他物体に非接触と判別する、
ことを特徴とする請求項3に記載の物体接触検知装置。
【請求項5】
前記接触判別手段は、
前記移動部材が物体に接触しない場合に前記振動センサから出力される検出信号を記憶する記憶手段と、
前記振動センサから出力される検出信号と前記記憶手段に記憶されている信号とを比較し、2つの信号の特性が異なると判別した場合に、前記移動部材が他物体に接触したと判別する判別手段と、
を備える、ことを特徴とする請求項1から4に記載の物体接触検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−80964(P2008−80964A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−263245(P2006−263245)
【出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】