説明

物体搬送装置

【課題】物体を搬送する支持機構部のサイズを変更できる物体搬送装置において、支持機構部を軽量な構成とするものを提供する。
【解決手段】支持機構部100は、基板60を支持する支持部材として、固定フレーム10、可動フレーム20および可動フレーム30を備える。可動フレーム20および可動フレーム30は、それぞれ筋肉チューブ40および筋肉チューブ50を介して固定フレーム10に連結される。筋肉チューブ40および筋肉チューブ50の伸縮に応じ、可動フレーム20および可動フレーム30が固定フレーム10に対して摺動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は物体搬送装置に関し、とくに支持機構部のサイズを変化させられるものに関する。
【背景技術】
【0002】
物体搬送装置として、支持機構部(把持装置、吸着装置等)と、これを移動させる駆動装置とを備えたものが知られている。このような物体搬送装置では、搬送対象となる物体を支持機構部が支持かつ固定し、そのまま移動することによって物体を搬送する。
このような物体搬送装置には、異なるサイズの物体に対応するために、支持機構部のサイズが変更可能となっているものがある。たとえば、特許文献1に記載されるパネル搬送装置は、吸着ブロックにパネルを吸着して搬送するものであるが、吸着ブロックのねじによる締結固定位置を変更することにより、異なるパネルのサイズに対応することができる構成となっている。
この他に、支持機構部の一部を変形または移動させてサイズ変更を行うための機構として、ステッピングモータ、サーボモータ、シャフトモータ、空圧シリンダ等を支持機構部に搭載した構成も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−256742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術では、サイズを容易に変更できる支持機構部を軽量な構成によって実現することは困難であった。
たとえば、特許文献1の技術では、サイズの変更のたびに作業者による吸着ブロックの位置変更作業が必要となるので、サイズの変更に時間と労力が必要となる。また、ステッピングモータ、サーボモータ、シャフトモータ、空圧シリンダ等を用いると支持機構部全体の重量が増加し、支持機構部を軽量化することが困難である。
【0005】
この発明はこのような問題点を解消するためになされたものであり、サイズを容易に変更できる支持機構部を軽量な構成によって実現する、物体搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る物体搬送装置は、搬送対象の物体を支持する支持機構部と、支持機構部を移動させる駆動装置とを備える、物体搬送装置であって、支持機構部は複数の支持部材を備え、支持部材は筋肉チューブを介して連結され、筋肉チューブが伸縮することによって支持部材が互いに対して運動し、これによって支持機構部のサイズが変化するものである。
【0007】
筋肉チューブは、軸方向および径方向を有する筒状の表面を有し、表面によって画定される内部空間に流体が封入され、物体支持装置は、流体の圧力を制御する圧力制御装置を備え、流体の圧力の増減に応じて筋肉チューブの容積が増減し、筋肉チューブの容積が増加する際、筋肉チューブは径方向において膨張するとともに軸方向において収縮し、筋肉チューブの容積が減少する際、筋肉チューブは径方向において収縮するとともに軸方向において伸長してもよい。
表面の面積は、流体の圧力の増減に依存しないか、または、表面の面積の変化率は、流体の圧力の変化率よりも小さいものであってもよい。
複数の支持部材は、第一の支持部材および第二の支持部材を含み、第一の支持部材および第二の支持部材は、互いに摺動可能に設けられ、筋肉チューブの一端は、第一の支持部材に連結され、筋肉チューブの他端は、第二の支持部材に連結され、筋肉チューブが伸縮することによって、第一の支持部材および第二の支持部材が摺動してもよい。
複数の支持部材は、第一の支持部材と、第二の支持部材と、第三の支持部材とを含み、第二の支持部材および第三の支持部材は、いずれも第一の支持部材に対して摺動可能に設けられ、筋肉チューブの一端は、第二の支持部材に連結され、筋肉チューブの他端は、第三の支持部材に連結され、筋肉チューブの両端間の一部が、第一の支持部材に連結され、筋肉チューブが伸縮することによって、第二の支持部材および第三の支持部材が摺動してもよい。
複数の支持部材のうち少なくとも2つは、物体を把持する把持部材または物体を吸着する吸着部材を備えてもよい。
複数の支持部材のうち少なくとも1つは、物体を吸着する吸着部材と、吸着部材を往復運動させる筋肉チューブとをさらに備えてもよい。
物体搬送装置は、少なくとも一部を重ねて配置した複数の物体のうち、一時に一つのみを搬送するものであり、物体搬送装置は、吸着部材を往復運動させることによって、複数の物体のうち、吸着部材が吸着しているもの以外を振り落とすものであってもよい。
支持機構部は、複数の支持面を有し、それぞれの支持面において物体を支持可能であってもよい。
【発明の効果】
【0008】
この発明に係る物体搬送装置は、支持機構部に含まれる支持部材を軽量な筋肉チューブで互いに連結し、筋肉チューブが伸縮することによって支持部材が運動し、その結果支持機構部のサイズが変化するので、サイズを容易に変更でき、また支持機構部を軽量に構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の実施の形態1に係る物体搬送装置に含まれる支持機構部の構成を示す図である。
【図2】図1の支持機構部の構成を説明する分解図である。
【図3】図1の筋肉チューブの構成および作用を説明する図である。
【図4】図1の把持部材が基板を把持している状態を示す図である。
【図5】図1の支持機構部を含む物体搬送装置の構成を示す図である。
【図6】実施の形態2に係る物体搬送装置に含まれる支持機構部の構成を示す図である。
【図7】図6の支持機構部の正面図である。
【図8】実施の形態3に係る物体搬送装置に含まれる支持機構部の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
実施の形態1.
図1および図2は、この発明の実施の形態1に係る物体搬送装置に含まれる支持機構部100の構成を示す。図1は支持機構部100の各構成要素を組み合わせた状態の図であり、図2は支持機構部100の構成を説明する分解図である。なお、説明の便宜上、図2では図1の構成の一部を省略している。
【0011】
支持機構部100は、搬送対象となる物体を支持するための支持部材として、複数のフレームを含む。複数のフレームは、固定フレーム10、可動フレーム20および可動フレーム30を含む。固定フレーム10は第一の支持部材であり、可動フレーム20および可動フレーム30は、固定フレーム10に対して運動可能に設けられた第二の支持部材である。支持機構部100は、これらの複数のフレームによって物体を支持する。搬送対象の物体(ワーク)は、たとえば基板のような板状の物体である。
また、固定フレーム10と、可動フレーム20または可動フレーム30とが互いに運動して位置関係が変化することにより、支持機構部100全体のサイズが変化し、これによって異なるサイズまたは形状の物体を搬送することができる構成となっている。
【0012】
固定フレーム10と可動フレーム20とは、伸縮可能な筋肉チューブ40を介して連結される。すなわち、筋肉チューブ40の一端は固定フレーム10の筋肉チューブ連結部12に連結され、筋肉チューブ40の他端は可動フレーム20の筋肉チューブ連結部24に連結される。
【0013】
可動フレーム20には、固定フレーム10に向かって延びるスライド部材25が設けられる。固定フレーム10において、このスライド部材25に対応する位置にガイド孔15が設けられる。スライド部材25はガイド孔15に摺動可能に嵌合し、これによって固定フレーム10および可動フレーム20は互いに摺動可能となっている。
このスライド部材25は、たとえば可動フレーム20の端部または周辺部に複数設けられ、すべて平行に配置される。固定フレーム10のガイド孔15は、スライド部材25のそれぞれに対応して設けられる。
このような構成により、固定フレーム10と可動フレーム20とを連結する筋肉チューブ40が伸縮することによって、固定フレーム10および可動フレーム20が互いに摺動し、これによって支持機構部100のサイズが変化することになる。
【0014】
また、固定フレーム10と可動フレーム30とは、伸縮可能な筋肉チューブ50を介して連結される。すなわち、筋肉チューブ50の一端は固定フレーム10の筋肉チューブ連結部13に連結され、筋肉チューブ50の他端は可動フレーム30の筋肉チューブ連結部34に連結される。
【0015】
可動フレーム30には、固定フレーム10に向かって延びるスライド部材35が設けられる。固定フレーム10において、このスライド部材35に対応する位置にガイド孔15が設けられる。スライド部材35はガイド孔15に摺動可能に嵌合し、これによって固定フレーム10および可動フレーム30は互いに摺動可能となっている。このスライド部材35は、可動フレーム20のスライド部材25と同様の構成を有する。
このような構成により、筋肉チューブ50が伸縮することによって、固定フレーム10および可動フレーム30が互いに摺動し、これによって支持機構部100のサイズが変化することになる。
【0016】
図3は、筋肉チューブ40の構成および作用を説明する図である。図3(a)に示すように、筋肉チューブ40は、軸方向および径方向を有する筒状の表面42を有し、この表面42によって画定される内部空間、すなわち表面42の内側には流体として空気が封入されている。また、筋肉チューブ40の内部は、圧力調整チューブ41を介して、空気の圧力を制御する圧力制御装置43と連通している。圧力制御装置43は圧力制御機能を有する圧力制御弁を備え、これによって筋肉チューブ40内の空気の圧力が連続的または段階的な値に制御可能となっている。
【0017】
筋肉チューブ40は、内部の空気の圧力の増減に応じて変形し、その容積が増減する構成となっている。図3(b)は、図3(a)に比べて空気の圧力が高くなった状態を示す。図3(b)に示すように、圧力の上昇に応じて圧力制御装置43から筋肉チューブ40の内部に空気が送られ(矢印A)、筋肉チューブ40の容積が増加する。この際、筋肉チューブ40はその径方向において膨張するとともに(矢印B)、その軸方向において収縮する(矢印C)。
【0018】
この変形は、筋肉チューブ40が、圧力の上昇に応じ、その表面積の増加を比較的小さく抑えつつ、容積を増加させようとする性質によるものである。すなわち、筋肉チューブ40の表面42の面積は、その内部の空気の圧力の増減に依存しないか、または、表面42の面積の変化率は、その内部の空気の圧力の変化率よりも小さいものである。
なお、図3(a)に示す状態において、圧力が減少する場合には、これとは逆の作用が生じる。すなち、圧力の減少に応じて筋肉チューブ40の容積が減少し、その際、筋肉チューブ40は径方向において収縮するとともに軸方向において伸長する。ただし、筋肉チューブ40内の圧力は、周囲の圧力(たとえば大気圧)以下にはならないものとする。
【0019】
圧力制御装置43による筋肉チューブ40の制御には、周知のPID制御が用いられる。筋肉チューブ40の軸方向の長さは、内部の空気の圧力に応じて変動し、内部の空気の圧力が一定であれば長さは変化しないのが理想である。しかしながら、実際には、内部の空気の圧力が一定であっても、表面42(たとえばゴムを用いて構成される)の特性によっては、筋肉チューブ40の長さが変動する(たとえば縮む)場合がある。このような表面42の特性による長さの変動を補償するため、PID制御が用いられる。
たとえば筋肉チューブ40の一部にリニアスケール(図示せず)を取り付け、このリニアスケールが筋肉チューブ40の位置情報(たとえば軸方向の長さを表す値)を取得する。そして、圧力制御装置43が、この位置情報に応じてフィードバック制御を行い、筋肉チューブ40の長さを所望の値に維持する。
【0020】
以上では筋肉チューブ40のみについて説明したが、筋肉チューブ50についても同様である。すなわち、筋肉チューブ50は、軸方向および径方向を有する筒状の表面52を有し、筋肉チューブ50の長さは圧力調整チューブ51を介して圧力制御装置53によって制御される。
【0021】
図1に示すように、可動フレーム20は、把持部材21〜23を備える。同様に、可動フレーム30は、把持部材31〜33を備える。これらの把持部材21〜23および把持部材31〜33は、それぞれ可動フレーム20および可動フレーム30の下部に取り付けられ、搬送対象の物体を把持し固定する。
【0022】
図4は、把持部材31および32が、搬送対象の物体として基板60を把持している状態を示す図である。図4には把持部材31および32のみを示すが、把持部材33の形状は把持部材32と同様である。また、把持部材21、22および23の形状は、それぞれ把持部材31、32および33と対称である。
把持部材32は、基板60の一辺に外側から接し、これを上下から挟みこんで把持する形状となっている。また、把持部材31は、基板60の角部分に外側から接し、これを包みこんで把持する形状となっている。すなわち、把持部材31は、基板60の頂点付近を二辺にわたって把持する。
【0023】
把持部材21、22および23は、それぞれ把持部材31、32および33と対向する位置に設けられる。これによって、把持部材21と把持部材31とがそれぞれ基板60の対向する部分をその両側から挟持する。同様に、把持部材22と把持部材32とがそれぞれ基板60の対向する部分をその両側から挟持し、把持部材23と把持部材33とがそれぞれ基板60の対向する部分をその両側から挟持する。このようにして、支持機構部100は基板60を把持する。
【0024】
また、図1に示すように、固定フレーム10は吸着パッド11を備える。図1の例では、3つの吸着パッド11が固定フレーム10の下部に取り付けられる。吸着パッド11は、搬送対象の物体すなわち基板60を吸着して固定する吸着部材である。吸着パッド11は、たとえば真空吸着パッド等の周知の構成を有するものであり、基板60を吸着する状態と吸着しない状態とを切り替え制御可能である。なお吸着パッド11は、シリコン等を用いて形成され、その吸着状態を制御する周知の機構を備えるが、これについては図示および説明を省略する。
以上のような構成をもって、吸着パッド11が基板60を吸着し、かつ把持部材21〜23および31〜33が基板60を把持することによって、支持機構部100は基板60を支持し固定する。
【0025】
図5は、支持機構部100を含む物体搬送装置200の構成を示す図である。なお図5では、支持機構部100の構成を簡略化し、支持機構部100と基板60とを重ねられた二枚の平板状の構造として表しているが、支持機構部100は実際には図1および図2に示す構成を有するものである。
物体搬送装置200は、支持機構部100と、支持機構部100を移動させる駆動装置70とを備える。支持機構部100は駆動アーム71を介して駆動装置70に連結され、駆動装置70が駆動アーム71の動作を制御することによって支持機構部100を移動させる。なお、ここで「移動」とは、平行移動による位置変位、回転による位置変位、およびこれらが複合した運動による位置変位を含む。また、平行移動による位置変位は、3次元空間におけるいずれの方向の変位であってもよく、たとえば水平方向(前後方向、左右方向等)または垂直方向(すなわち上下方向、鉛直方向)の変位を含む。
【0026】
物体搬送装置200が基板60を搬送する際の動作は次のようになる。
まず、駆動装置70が駆動アーム71を制御して支持機構部100を基板60の近傍まで移動させ、基板60と平行に配置する。次に、圧力制御装置43および圧力制御装置53が筋肉チューブ40および筋肉チューブ50を伸張させ、把持部材21〜23および把持部材31〜33を基板60の外縁より外側方向に移動させる。そして、駆動装置70が支持機構部100をさらに基板60に接近させ、吸着パッド11を基板60に接触させて吸着させる。ここで、駆動装置70は、支持機構部100を移動させることによって基板60をわずかに移動させ(たとえば基板60が置かれていた面から数センチ上昇させ)、把持部材21〜23および把持部材31〜33が把持を行うための余裕を生じさせる。この状態で、圧力制御装置43および圧力制御装置53が筋肉チューブ40および筋肉チューブ50を収縮させ、これによって把持部材21〜23および把持部材31〜33が基板60を把持する。このようにして支持機構部100は基板60を支持し固定する。図4はこの状態における構成の一部を表す。
【0027】
次に、支持機構部100が基板60を固定した状態のまま駆動装置70が支持機構部100を移動させることにより、物体搬送装置200は基板60を搬送する。目的の位置まで搬送した後、基板60を支持機構部100から解放する。すなわち、圧力制御装置43および圧力制御装置53が筋肉チューブ40および筋肉チューブ50を伸張させて把持部材21〜23および把持部材31〜33による把持を解除するとともに、吸着パッド11による吸着を解除する。
【0028】
以上説明される実施の形態1によれば、支持機構部100は筋肉チューブ40および50を備えるので、その構成を簡素かつ軽量なものとすることができる。支持機構部100に取り付けられるアクチュエータ部分は比較的簡素かつ軽量な筋肉チューブ40および50のみでよく、複雑で重量の大きい圧力制御装置43および53は、それぞれ圧力調整チューブ41および51を介して支持機構部100とは離れた位置に設けることができる。なお、従来の伸縮機構、たとえば電動機(ステッピングモータ、サーボモータ、シャフトモータ等)や空圧シリンダー等では、支持機構部に取り付けるべきアクチュエータ部分や動力装置の構成が複雑であり、また重量も比較的大きく、結果として支持機構部全体を簡素化・軽量化できない。
【0029】
上述の実施の形態1では、説明の便宜上、支持機構部100が図1に示す姿勢にある状態を想定して方向(たとえば上下方向)を示したが、これは支持機構部100の姿勢に応じて異なる方向を示す。支持機構部100は、図5のように基板60をその下側に支持してもよく、上側に支持してもよく、支持機構部100が縦になった状態で基板60を側面に支持してもよい。
【0030】
上述の実施の形態1において、支持機構部100は支持部材として3つのフレーム(固定フレーム10、可動フレーム20および可動フレーム30)を備える。変形例として、フレームの数は2であってもよく、4以上であってもよい。少なくとも2つのフレームが筋肉チューブによって連結され、互いに対して運動可能であれば、支持機構部のサイズを変更可能とすることができ、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。たとえば、フレームの数を2とする場合には、一方を固定フレームとし、他方を可動フレームとして、これらを相対的に移動させて支持機構部のサイズを変更することができる。また、フレームの数を5とする場合には、1つを固定フレームとして4本の筋肉チューブを連結し、それぞれの筋肉チューブに可動フレームを連結すれば、4つの可動フレームによって支持機構部のサイズを変更することができる。
また、実施の形態1ではフレームの相対移動は摺動によるものであるが、これは他の態様の運動であってもよく、たとえば回動運動を含むものであってもよい。この場合、たとえばスライド部材25およびガイド孔15に代えて蝶番構造を備えてもよい。
【0031】
実施の形態1では、支持部材のうち1つ(固定フレーム10)が吸着パッド11を備え、残る2つ(可動フレーム20および可動フレーム30)が把持部材21〜23および31〜33を備える。変形例として、すべての支持部材が吸着パッドを備えてもよく、またすべての支持部材が把持部材を備えてもよい。さらに、吸着パッドおよび把持部材はすべての支持部材に設ける必要はなく、少なくとも2つの支持部材に設ければ基板60を支持することができる。たとえば、可動フレーム20および可動フレーム30が吸着パッドまたは把持部材を備えていれば、固定フレーム10は吸着パッドも把持部材も備えない構成としてもよい。
【0032】
実施の形態1では、駆動装置70は駆動アーム71を介して支持機構部100を移動させるが、これは他の構成によってもよく、たとえば支持機構部100はレール上を移動するものであってもよい。
実施の形態1では、搬送対象の物体は基板60であるが、これは他の形状を有する物体であってもよく、搬送対象の物体に応じて支持部材の形状および把持部材・吸着部材の構造を設計することができる。
実施の形態1では、筋肉チューブ40および筋肉チューブ50の圧力を制御する流体として空気が用いられるが、これは他の流体であってもよい。
【0033】
実施の形態1において、支持機構部100は、基板60の位置検出および基板60の搬送時のアライメント制御に用いる撮影手段を備えてもよい。この場合、支持機構部100または物体搬送装置200は、撮影手段によって撮影された映像に応じて支持機構部100の動作を制御する制御手段をさらに備えてもよい。この撮影手段はたとえばCCDカメラであり、固定フレーム10、可動フレーム20、または可動フレーム30に取り付けることができる。たとえば、可動フレーム20の周縁部に設けられてもよい。
制御手段は、この撮影手段からの画像に基づき、画像処理を行って基板60の位置を検出する。この処理は、たとえば画像中のエッジを検出し、検出されたエッジに基づいて基盤60の縁(または、基板60の端部が形成する段差)を認識する処理を含む。
また、このような撮影手段を複数設け、それぞれが撮影した画像に基づいて基板60のサイズを算出してもよい。たとえば、基板60の左端を撮影するカメラと、基板60の右端を撮影するカメラとを設け、左端および右端の位置を検出することによって、基板60の左右方向のサイズを算出することができる。支持機構部100の制御装置は、検出された基板60の位置または算出された基板60のサイズに基づいて支持機構部100を制御する。
【0034】
実施の形態1において、支持機構部100は、可動フレーム20および30の可動範囲をフィードバック制御するための停止位置確認センサを備えてもよい。停止位置確認センサは、たとえば可動フレーム20および30の外縁、すなわち支持機構部100のサイズを拡大するために可動フレーム20および30が移動する際に障害物と接触する可能性のある位置に設けられ、所定距離以内に障害物が存在していることを検出する。また、この場合、支持機構部100または物体搬送装置200は、停止位置確認センサが障害物を検出した場合に、可動フレーム20および30の移動を停止させるよう制御する制御手段を備えてもよい。
【0035】
実施の形態1では、中央の固定フレーム10に2本の筋肉チューブ40および筋肉チューブ50が連結され、これらを介して可動フレーム20および可動フレーム30が摺動可能に設けられている。変形例として、筋肉チューブは1本のみであってもよい。たとえば、固定フレーム(第一の支持部材)に筋肉チューブの両端間の一部を連結して固定し、可動フレームの一方(第二の支持部材)に筋肉チューブの一端を連結して固定し、可動フレームの他方(第三の支持部材)に筋肉チューブの他端を連結して固定してもよい。ここで、固定フレームに筋肉チューブの中央の点を固定すると、2つの可動フレームを対称に、同時に運動させることができる。
このように構成すると、1本の筋肉チューブの伸縮によって、2つの可動フレームを固定フレームに対して摺動させることができ、必要な筋肉チューブの数を低減でき、より軽量化および、構成を簡素化することができる。
【0036】
実施の形態2.
実施の形態2は、上述の実施の形態1において、吸着パッドの連結にも筋肉チューブを用いるものである。
図6および図7は、実施の形態2に係る物体搬送装置に含まれる支持機構部101の構成を示す。図6は図1に対応する斜視図であり、図7は正面図すなわち図6の矢印VIIの方向から見た図である。
【0037】
固定フレーム110は、その下部前端に、筋肉チューブ191を取り付けるための筋肉チューブ取付部材181を備える。筋肉チューブ191の上端は筋肉チューブ取付部材181の下面に固定され、筋肉チューブ191の下端は吸着パッド取付部材182の上面に固定される。吸着パッド取付部材182の下面には3つの吸着パッド111が取り付けられる。なお筋肉チューブ191には筋肉チューブ40(図3)と同様に圧力調整チューブおよび圧力制御装置が接続されるが、図示の便宜上これらは省略する。
【0038】
同様に、固定フレーム110は、その下部中央またはその近傍に、筋肉チューブ192を取り付けるための筋肉チューブ取付部材183を備える。筋肉チューブ192の上端は筋肉チューブ取付部材183の下面に固定され、筋肉チューブ192の下端は吸着パッド取付部材184の上面に固定される。吸着パッド取付部材184の下面両端には2つの吸着パッド112が取り付けられる。
さらに、固定フレーム110は、その下部後端に、筋肉チューブ193を取り付けるための筋肉チューブ取付部材185を備える。筋肉チューブ193の上端は筋肉チューブ取付部材185の下面に固定され、筋肉チューブ193の下端は吸着パッド取付部材186の上面に固定される。吸着パッド取付部材186の下面両端には2つの吸着パッド113が取り付けられる。
【0039】
筋肉チューブ191〜193は、それぞれ吸着パッド111〜113を往復運動させるためのものである。すなわち、吸着パッド111〜113が基板(図示せず)を吸着した状態で筋肉チューブ191〜193が伸縮すると、吸着パッド111〜113が上下方向に連続的に往復運動し、これに伴って基板も上下方向に運動することになる。
ここで、基板が薄く軽量である場合には、吸着パッド111〜113が基板を吸着して持ち上げる際に、複数枚の基板が重なったまま持ち上がってしまうことがある。このような場合であっても、筋肉チューブ191〜193を短周期で繰り返し伸縮させ、吸着パッド111〜113とともに基板を上下方向にバタバタと振動させることにより、2枚目以降の基板を振り剥がし、1枚の基板だけを吸着して持ち上げることができる。
すなわち、物体搬送装置200は、一時に一つの基板のみを搬送するものであり、複数の基板が少なくとも一部を重ねた状態で配置されている場合には、吸着パッド111〜113を往復運動させることによって、複数の基板のうち、吸着部材111〜113が吸着しているもの以外を振り落とす。このような動作は、たとえば板状の物体や、シート状の物体のように、重なって持ち上がりやすい物体を個別に搬送する際に特に有用である。
【0040】
なお、把持部材121〜123および131〜133は、それぞれ可動フレーム120および可動フレーム130に、いずれも所定の長さの連結部材187を介して取り付けられ、筋肉チューブ191〜193と整合する高さ位置に設けられる。たとえば、筋肉チューブ191〜193が伸長した位置で停止した状態において、または収縮した位置で停止した状態において、基板を把持できる位置に設けられる。
【0041】
このように、実施の形態2に係る支持機構部101によれば、筋肉チューブ191〜193の伸縮によって2枚目以降の基板を振り剥がし、常に正確に1枚の基板だけを搬送することができる。
【0042】
なお、基板を振り剥がす動作に用いられる筋肉チューブ191〜193は、特定の2つの長さ(伸長した長さおよび収縮した長さ)のみに制御されればよく、中間的な長さをとる必要がないので、オンまたはオフに制御可能な電磁弁を用いて制御することができる。すなわち、支持機構部101のサイズ変更に用いられる筋肉チューブのように比例制御可能な圧力制御弁を備える必要はなく、簡素な制御構造とすることができる。
【0043】
実施の形態3.
実施の形態3は、上述の実施の形態1において、支持機構部の片面のみでなく両面で物体を搬送できる構成とするものである。
図8は、実施の形態3に係る物体搬送装置に含まれる支持機構部102の構成を示す。固定フレーム210は、その下部に3つの下部吸着パッド211を備える。同様に、可動フレーム220は、その下部に5つの下部吸着パッド221を備え、可動フレーム230は、その下部に5つの下部吸着パッド231を備える。
【0044】
また、固定フレーム210は、その上部に3つの上部吸着パッド212を備える。この上部吸着パッド212は、それぞれ、下部吸着パッド211と対応する位置、たとえば真上に設けられる。または、上部吸着パッド212は、それぞれ、下部吸着パッド211と対称となる位置に設けられてもよい。すなわち、支持機構部102が回転等の動作により上下が反転した場合に、反転前の下部吸着パッド211の位置と反転後の上部吸着パッド212の位置とが同じ位置となるように設けられてもよい。
同様に、可動フレーム220は、その上部に5つの上部吸着パッド222を備え、可動フレーム230は、その上部に5つの上部吸着パッド232を備える。上部吸着パッド222は、下部吸着パッド221と対応する位置または下部吸着パッド231と対称となる位置に設けられる。また、上部吸着パッド232は、下部吸着パッド231と対応する位置または上部吸着パッド222と対称となる位置に設けられる。
【0045】
このように、実施の形態3に係る支持機構部102においては、その両面が、物体を支持する支持面となっている。すなわち、支持機構部102は、複数の支持面において物体を支持可能であり、1つの支持機構部102によって2枚の物体を同時に搬送することができる。また、ある位置にある物体を搬送した後、支持機構部102の姿勢を変えず、わずかな距離を移動させるだけでその隣にある物体を吸着することができる。これは、複数の基板が所定の保管位置に狭い間隔をおいて重なった状態で配置されているような状態において、特に有用である。
【0046】
この実施の形態3では、支持機構部102は2つの支持面を有するものであるが、3以上の支持面を有する構成としてもよい。たとえば、支持機構部の前後左右をなす4面に支持面を構成してもよい。また、支持機構部を略六角柱状とし、その6つの側面にそれぞれ支持面を構成してもよい。
また、この実施の形態3ではすべてのフレームが吸着パッドのみを備えるが、実施の形態1および2のような把持部材を備えるものであってもよい。また、実施の形態2のように吸着パッドを運動させるための筋肉チューブをさらに備えてもよい。
【符号の説明】
【0047】
10,110,210 固定フレーム(第一の支持部材)、
11,111〜113,211,212,221,222,231,232 吸着パッド(吸着部材)、
20,30,120,130,220,230 可動フレーム(第二の支持部材または第三の支持部材)、
21〜23,31〜33,121〜123,131〜133 把持部材、
40,50 筋肉チューブ、42,52 表面、43,53 圧力制御装置、60 基板(搬送対象の物体)、70 駆動装置、100〜102 支持機構部、200 物体搬送装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送対象の物体を支持する支持機構部と、前記支持機構部を移動させる駆動装置とを備える、物体搬送装置であって、
前記支持機構部は複数の支持部材を備え、
前記支持部材は筋肉チューブを介して連結され、
前記筋肉チューブが伸縮することによって前記支持部材が互いに対して運動し、これによって前記支持機構部のサイズが変化する
物体搬送装置。
【請求項2】
前記筋肉チューブは、軸方向および径方向を有する筒状の表面を有し、前記表面によって画定される内部空間に流体が封入され、
前記物体支持装置は、前記流体の圧力を制御する圧力制御装置を備え、
前記流体の圧力の増減に応じて前記筋肉チューブの容積が増減し、
前記筋肉チューブの容積が増加する際、前記筋肉チューブは径方向において膨張するとともに軸方向において収縮し、
前記筋肉チューブの容積が減少する際、前記筋肉チューブは径方向において収縮するとともに軸方向において伸長する
請求項1に記載の物体搬送装置。
【請求項3】
前記表面の面積は、前記流体の圧力の増減に依存しないか、または、前記表面の面積の変化率は、前記流体の圧力の変化率よりも小さい
請求項2に記載の物体搬送装置。
【請求項4】
前記複数の支持部材は、第一の支持部材および第二の支持部材を含み、
第一の支持部材および第二の支持部材は、互いに摺動可能に設けられ、
前記筋肉チューブの一端は、第一の前記支持部材に連結され、
前記筋肉チューブの他端は、第二の前記支持部材に連結され、
前記筋肉チューブが伸縮することによって、前記第一の支持部材および第二の支持部材が摺動する
請求項1〜3のいずれか一項に記載の物体搬送装置。
【請求項5】
前記複数の支持部材は、第一の支持部材と、第二の支持部材と、第三の支持部材とを含み、
第二の支持部材および第三の支持部材は、いずれも第一の支持部材に対して摺動可能に設けられ、
前記筋肉チューブの一端は、第二の前記支持部材に連結され、
前記筋肉チューブの他端は、第三の前記支持部材に連結され、
前記筋肉チューブの両端間の一部が、第一の前記支持部材に連結され、
前記筋肉チューブが伸縮することによって、前記第二の支持部材および第三の支持部材が摺動する
請求項1〜3のいずれか一項に記載の物体搬送装置。
【請求項6】
前記複数の支持部材のうち少なくとも2つは、前記物体を把持する把持部材または前記物体を吸着する吸着部材を備える
請求項1〜5のいずれか一項に記載の物体搬送装置。
【請求項7】
前記複数の支持部材のうち少なくとも1つは、前記物体を吸着する吸着部材と、前記吸着部材を往復運動させる筋肉チューブとをさらに備える
請求項1〜6のいずれか一項に記載の物体搬送装置。
【請求項8】
前記物体搬送装置は、少なくとも一部を重ねて配置した複数の前記物体のうち、一時に一つのみを搬送するものであり、
前記物体搬送装置は、前記吸着部材を往復運動させることによって、複数の前記物体のうち、前記吸着部材が吸着しているもの以外を振り落とす
請求項7に記載の物体搬送装置。
【請求項9】
前記支持機構部は、複数の支持面を有し、それぞれの支持面において前記物体を支持可能である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の物体搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−269899(P2010−269899A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−123507(P2009−123507)
【出願日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【出願人】(000162320)協栄産業株式会社 (8)
【Fターム(参考)】