物体検出装置および物体検出方法
【課題】レーダ装置が検出した物体を精度良くグループ化することのできる物体検出装置および物体検出方法を提供する。
【解決手段】物体検出装置は、車両周辺の物体を検出することによって得られた捕捉点を示す信号を用いて、当該捕捉点それぞれの移動方向を算出する移動方向算出手段と、予め検出対象となる物体の形状に応じた枠および当該物体で想定されている進行方向として当該枠に進行基準方向を設定し、上記捕捉点のうち、上記移動方向に当該進行基準方向を合わせた当該枠内に存在する捕捉点を同じ物体の捕捉点として判定する判定手段とを備える。
【解決手段】物体検出装置は、車両周辺の物体を検出することによって得られた捕捉点を示す信号を用いて、当該捕捉点それぞれの移動方向を算出する移動方向算出手段と、予め検出対象となる物体の形状に応じた枠および当該物体で想定されている進行方向として当該枠に進行基準方向を設定し、上記捕捉点のうち、上記移動方向に当該進行基準方向を合わせた当該枠内に存在する捕捉点を同じ物体の捕捉点として判定する判定手段とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体検出装置および物体検出方法に関し、より特定的には、車両に搭載され、当該車両の周辺から接近してくる物体を適切にグループ化することのできる物体検出装置および物体検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、乗用車などの車両には、当該車両(以下、自車両と称す)の周囲に存在する、他車両、歩行者、及び路上にある設置物などを検出する車載用レーダ装置が搭載されている。上記車載用レーダ装置は、自車両の前方や側方から接近してくるターゲットを検出し、自車両と当該ターゲットとの相対距離、相対速度、及び当該対象物の存在する方向(方位角)などを測定する。そして、上記車載用レーダ装置は、当該検出結果に基づいて、自車両とターゲットとが衝突する危険性を判断する。このような車載用レーダ装置の一例として、特許文献1に開示されているレーダ装置がある。
【特許文献1】特開平8−160132号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、車載用レーダ装置は、自車両周辺に存在する物体を検出する場合、複数の捕捉点を得ることがある。例えば、車載用レーダ装置が、複数の捕捉点を得る例として、自車両周辺に複数の他車両が存在し、当該複数の他車両からそれぞれ捕捉点を得る場合である。
【0004】
また、一方で、車載用レーダ装置は、自車両周辺に存在する1台の他車両を検出した場合でも(車両は一定の大きさを持った物体であるため)1台の他車両から複数の捕捉点を検出することがある。例えば、ターゲットがバスやトラックなどの大型車であった場合、ターゲットが乗用車であった場合と比べて、1台の他車両から複数の捕捉点を捉えることが顕著にみられる。
【0005】
そのため、一般的な車載用レーダ装置では、上記車載用レーダ装置が検出した各捕捉点の特徴に基づいて、単一の物体として推定するというグループ化の処理を行っている。
【0006】
例えば、上記特許文献1に開示されているレーダ装置は、自車両が進む曲率半径(曲線)を求め、当該自車両に設置されているレーダ装置で捕捉した捕捉点の座標から上記曲線までの距離Dと、上記捕捉点から自車両前部中心まで延ばした線の自車両正面方向に対する角度θを求める。そして、距離Dと角度θとが近い捕捉点をグループ化し、単一の物体と推定している。
【0007】
具体的には、図14に示すように、上記特許文献1に開示されているレーダ装置は、複数の捕捉点(図14に示した捕捉点P1および捕捉点P2)を得た場合、当該複数の捕捉点について、曲線Rまでの距離Dの差(距離D2−距離D1)と角度θ(角度θ2−角度θ1)の差とを比較する。そして、上記特許文献1に開示されているレーダ装置は、距離D2−距離D1≦閾値D、かつ角度θ2−角度θ1≦閾値θであった場合、捕捉点P1および捕捉点P2をグループ化する。つまり、上記レーダ装置は、他車両1(単一の物体)から、捕捉点P1および捕捉点P2を得たと推定している。
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に開示されているレーダ装置によれば、物体の位置や進行方向によっては、複数の物体であっても1つのグループである(単一の物体である)と推定してしまう可能性がある。例えば、図15に示すように、自車両前方に他車両2および他車両3が存在し、当該他車両2および他車両3をそれぞれレーダ装置が検出した場合を想定する。図15に示すように、仮に、距離D4−距離D3≦閾値D、かつ角度θ3−角度θ3≦閾値θであった場合、上記レーダ装置は、捕捉点P3および捕捉点P4をグループ化し、捕捉点P3および捕捉点P4は、単一の物体から得られたものであると推定してしまう可能性がある。つまり、上記特許文献1に開示されているレーダ装置は、複数の他車両が近接して移動している場合など、複数の他車両を同一の他車両と推定してしまう可能性があるため、必ずしも十分な精度でグループ化を行うことができなかった。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、レーダ装置が検出した物体を精度良くグループ化することのできる物体検出装置および物体検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記のような目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。すなわち、第1の発明は、車両に搭載され、当該車両周辺の物体を検出する物体検出装置である。上記物体検出装置は、上記車両周辺の物体を検出することによって得られた捕捉点を示す信号を用いて、当該捕捉点それぞれの移動方向を算出する移動方向算出手段と、予め検出対象となる物体の形状に応じた枠および当該物体で想定されている進行方向として当該枠に進行基準方向を設定し、上記捕捉点のうち、上記移動方向に当該進行基準方向を合わせた当該枠内に存在する捕捉点を同じ物体の捕捉点として判定する判定手段とを備える。
【0011】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記枠は、上記検出対象となる物体の形状を模した矩形枠とする。
【0012】
第3の発明は、上記第2の発明において、上記判定手段は、前記矩形枠の長手方向を前記進行基準方向として設定する。
【0013】
第4の発明は、上記第1の発明において、上記判定手段は、上記枠内に存在し、かつ、上記移動方向が同じ捕捉点を同じ物体の捕捉点として判定する。
【0014】
第5の発明は、上記第1の発明において、上記判定手段は、上記車両周辺の物体を検出することによって得られた捕捉点から1つの捕捉点を選出する処理を行い、当該選出された捕捉点の移動方向に上記進行基準方向に合わせた上記枠内に存在する捕捉点のうち、上記選出された捕捉点を基準に前記車両より遠方に存在する捕捉点を同じ物体の捕捉点として判定する。
【0015】
第6の発明は、上記第1の発明において、上記移動方向算出手段は、上記捕捉点の時系列的な移動方向の履歴を予め定められた関数で演算することによって、それぞれの上記捕捉点における現時点の移動方向を算出する。
【0016】
第7の発明は、上記第1の発明において、上記移動方向算出手段は、さらに上記捕捉点それぞれの移動速度を算出する。上記判定手段は、上記移動速度が閾値以上であり、かつ、上記捕捉点の履歴において当該捕捉点を得た信号強度が予め定められた強度以上であった割合が閾値以上である場合、当該捕捉点を上記判定の対象とする。
【0017】
第8の発明は、上記第1の発明において、上記判定手段は、上記枠内に存在すると判定された回数が予め定められた回数に到達したとき、当該枠内の捕捉点を同じ物体の捕捉点として確定する。
【0018】
第9の発明は、上記第1の発明において、上記同じ物体の捕捉点として判定された捕捉点のうち、何れか1つの捕捉点を用いて上記車両と当該物体とが衝突するか否かを判断する衝突判定手段を、さらに備える。
【0019】
第10の発明は、上記第9の発明において、上記衝突判定手段は、上記同じ物体の捕捉点として判定された捕捉点のうち、上記車両に最も近い捕捉点を用いて上記車両と当該物体とが衝突するか否かを判断する。
【0020】
第11の発明は、上記第3の発明において、上記判定手段は、上記矩形枠の長手方向の長さおよび短手方向の幅を、自動車の長さおよび幅に応じてそれぞれ設定する。
【0021】
第12の発明は、車両に搭載され、当該車両周辺の物体を検出する物体検出方法である。上記物体検出方法は、上記車両周辺の物体を検出することによって得られた捕捉点を示す信号を用いて、当該捕捉点それぞれの移動方向を算出する移動方向算出ステップと、予め検出対象となる物体の形状に応じた枠および当該物体で想定されている進行方向として当該枠に進行基準方向を設定し、上記捕捉点のうち、上記移動方向に当該進行基準方向を合わせた当該枠内に存在する捕捉点を同じ物体の捕捉点として判定する判定ステップとを備える。
【発明の効果】
【0022】
上記第1の発明によれば、レーダ装置が検出した複数のターゲットについて、当該ターゲットの動きの特徴と自車両の動きの特徴とに基づいて、グループ化を行うことができる。したがって、レーダ装置が検出した物体を精度良くグループ化することができ、同一の物体から得た捕捉点を同じ物体の捕捉点であると適切に判定することができる。
【0023】
上記第2および3の発明によれば、枠の形状は矩形であり、矩形枠の長手方向を進行基準方向として設定するので、車載用レーダ装置が検出対象とする物体(乗用車、大型車、バス等)に対応させることができる。
【0024】
上記第4の発明によれば、レーダ装置が複数のターゲットを検出した場合でも、適切にグループ化をすることができる。
【0025】
上記第5の発明によれば、自車両に最も近いターゲットを代表ターゲットとするグループ化処理を行うことができる。
【0026】
上記第6の発明によれば、移動方向算出手段は、移動方向の時系列な履歴を用いることができるので、現時点における移動方向を算出するとき、例えば、最小二乗法などを利用できる。
【0027】
上記第7の発明によれば、判定手段は、捕捉点の信頼性について判断することができる。
【0028】
上記第8の発明によれば、判定手段は、当該枠内の捕捉点を同じ物体の捕捉点とする判断を、より確実に行うことができる。
【0029】
上記第9および第10の発明によれば、同じ物体の捕捉点と判定された捕捉点のうち、1つの捕捉点を用いて衝突判断をするので、衝突判定手段が行う処理の負荷が低減される。
【0030】
上記第11の発明によれば、枠の大きさをレーダ装置の想定される使用環境(実際の道路)に対応させることができる。
【0031】
本発明の物体検出方法によれば、上述した本発明の物体検出装置と同様の効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る物体検出装置について説明する。なお、本実施形態では、当該物体検出装置を含むドライバーサポートシステム(DSS(Driver Support System))が、車両(以下、自車両VMと称す)に搭載される場合を想定して説明する。
【0033】
図1は、ドライバーサポートシステムの構成を示すブロック図である。図1に示すように、ドライバーサポートシステムは、左側レーダ装置1L、中央レーダ装置1C、右側レーダ装置1R、車両制御ECU(Electrical Control Unit)2、および安全装置3を備える。
【0034】
右側レーダ装置1Rは、自車両VMの所定の位置(例えば、自車両VMの前部右側の前照灯や方向指示器などが搭載されている位置)に設置され、自車両VMの外側に向けて電磁波を照射し、自車両VM前方の周囲を監視している。例えば、図2に示すように、右側レーダ装置1Rは、自車両VMの斜め右前方に向けて電磁波を照射し、当該右側レーダ装置1Rの検出範囲内(図2のAR)に存在するターゲット(他車両、自転車、歩行者、建造物など)を検出する。
【0035】
中央レーダ装置1Cは、自車両VMの所定の位置(例えば、自車両VMの前部の中央)に設置され、自車両VMの外側に向けて電磁波を照射し、自車両VM前方の周囲を監視している。例えば、図2に示すように、中央レーダ装置1Cは、自車両VMの前方に向けて電磁波を照射し、当該中央レーダ装置1Cの検出範囲内(図2のAC)に存在するターゲット(他車両、自転車、歩行者、建造物など)を検出する。
【0036】
左側レーダ装置1Lは、自車両VMの所定の位置(例えば、自車両VMの前部左側の前照灯や方向指示器などが搭載されている位置)に設置され、自車両VMの外側に向けて電磁波を照射し、自車両VM前方の周囲を監視している。例えば、図2に示すように、左側レーダ装置1Lは、自車両VMの斜め左前方に向けて電磁波を照射し、当該左側レーダ装置1Lの検出範囲内(図2のAL)に存在するターゲット(他車両、自転車、歩行者、建造物など)を検出する。
【0037】
なお、右側レーダ装置1R、中央レーダ装置1C、および左側レーダ装置1Lは、それぞれ電磁波を照射して、その反射波を受信する。そして、各レーダ装置は、例えば、車両の前方および側方周囲に存在するターゲットを検出し、当該ターゲットを検出した信号を、車両制御ECU2に出力する。また、各レーダ装置が複数のターゲットを検出している場合、当該各レーダ装置は、ターゲットを検出した信号をターゲット毎にそれぞれ車両制御ECU2に出力する。
【0038】
また、各レーダ装置は、図2に示した例に限られるものではない。例えば、右側レーダ装置1Rおよび左側レーダ装置1Lのみで自車両VMの前方の周囲を監視してもよいし、中央レーダ装置1Cのみで自車両VMの前方の周囲を監視してもよい。つまり、1つ以上のレーダ装置を用いて自車両VMの周囲における、所望の方向を監視できるように、各レーダ装置は設置されればよい。
【0039】
なお、各レーダ装置は、電磁波の照射方向が異なることを除いて構成は同様である。したがって、以下の説明において、右側レーダ装置1R、中央レーダ装置1C、および左側レーダ装置1Lを特に区別する場合を除き、上記各レーダ装置を総称して、単に「レーダ装置1」と称す。
【0040】
図1の説明に戻って、図1に示すように、車両制御ECU2は、ターゲット処理部21、進行方向予測部22、グループ化判定部23、衝突判定部24、ターゲット情報記憶部25、およびインターフェース回路などを備える情報処理装置である。
【0041】
ターゲット処理部21は、レーダ装置1から取得した信号を用いて、自車両VMに対するターゲットの位置、速度、距離等のターゲット情報を算出する。例えば、ターゲット処理部21は、レーダ装置1が照射した照射波と受信した反射波との和および差や送受信タイミング等を用いて、自車両VMに対するターゲットの相対距離、相対速度、および相対位置等を算出する。具体的には、例えば、右側レーダ装置1Rがターゲットを検出し、当該ターゲットを検出した信号を車両制御ECU2に出力した場合、ターゲット処理部21は、当該右側レーダ装置1Rに対するターゲット物体の相対距離、相対速度、および相対位置等を含む情報をターゲット情報irとして生成する。
【0042】
同様に、ターゲット処理部21は、中央レーダ装置1Cおよび左側レーダ装置1Lについても、中央レーダ装置1Cおよび左側レーダ装置1Lがそれぞれターゲットを検出することによって得た信号を用いて、上記各レーダ装置に対するターゲットの相対距離、相対速度、および相対位置等を算出する。そして、ターゲット処理部21は、中央側レーダ装置1Cに対するターゲットの相対距離、相対速度、および相対位置等を含む情報をターゲット情報icとして生成する。また、ターゲット処理部21は、左側レーダ装置1Lに対するターゲットの相対距離、相対速度、および相対位置等を含む情報をターゲット情報ilとして生成する。
【0043】
さらに、ターゲット処理部21は、レーダ装置1が検出した各ターゲットの位置を任意の位置を原点とする地上固定座標系における位置に変換する処理を行う。例えば、右側レーダ装置1Rがターゲットを検出し、車両制御ECU2が、右側レーダ装置1Rから出力された信号を用いて処理を行う場合を考えたとき、当該ターゲットの位置は右側レーダ装置1Rが設置されている位置を基準とした座標系で算出されるのが一般的である。そこで、ターゲット処理部21は、各レーダ装置1から出力されるターゲットについて基準を同じにするために、任意の位置を原点とするに地上固定座標系で示される位置にターゲットの位置を変換する処理を行う(中央レーダ装置1Cおよび左側レーダ装置1Lがターゲットを検出した場合も同様)。
【0044】
進行方向予測部22は、ターゲット処理部21から出力される各ターゲット情報に基づいて、ターゲットの進行方向を予測(ターゲットが自車両VMにこれから向かってくるであろう進路を予測)する。さらに、進行方向予測部22は、自車両VMの車速、ヨーレート等から、自車両VMの進行方向も予測(自車両VMがこれから進んでいくであろう進路を予測)する。なお、ターゲット処理部21および進行方向予測部22は、請求項に記載の移動方向算出手段の一例に相当する。
【0045】
グループ化判定部23は、詳細は後述するが、各レーダ装置1が検出した複数のターゲットについて、当該ターゲットの動きの特徴と自車両VMの動きの特徴とに基づいて、単一の物体として推定するというグループ化の処理を行う。なお、グループ化判定部23は、請求項に記載の判定手段の一例に相当する。
【0046】
衝突判定部24は、ターゲット処理部21、グループ化判定部23から出力される情報に基づいて、自車両VMとターゲットとが衝突するか否かを判断する。例えば、衝突判定部24は、自車両VMとターゲットとが衝突するまでの時間、つまり衝突予測時間(TTC(Time to collision))をターゲット毎、またはグループ化されたグループごとに算出する。そして、TTCを算出した結果、当該算出されたTTCが予め定められた時間より短かった場合、衝突判定部24は、安全装置3に指示し、後述する安全措置を講じる。なお、TTCは、例えば相対距離を相対速度で除算(TTC=相対距離/相対速度)することによって求めることができる。なお、衝突判定部24は、請求項に記載の衝突判定手段の一例に相当する。
【0047】
ターゲット情報記憶部25は、ターゲット処理部21が生成したターゲット情報を一時的に記憶する記憶媒体である。また、ターゲット情報記憶部25は、ターゲット処理部21が生成したターゲット情報を時系列的に記憶する。
【0048】
なお、レーダ装置1は、当該レーダ装置1内において、上述した車両制御ECU2の処理を行っても構わない。例えば、自車両VMに複数のレーダ装置が搭載されているような場合、各レーダ装置から出力される信号は、全て車両制御ECU2に集約されることになる。したがって、例えば、右側レーダ装置1R内において、上述した車両制御ECU2の処理を行えば、当該右側レーダ装置1Rが検出したターゲットについてのみ処理することが可能となり、各レーダ装置から出力される信号が全て車両制御ECU2に集約される形態と比べて処理負荷が低減される。
【0049】
安全装置3は、車両制御ECU2からの指示に従って、ターゲットとの衝突の危険性が高い場合には自車両VMのドライバーに対して注意喚起を行う。また、安全装置3は、ターゲットとの衝突が避けられない場合に、自車両VMの乗員の被害を低減する、乗員保護や衝突条件の緩和を行うための各種装置も含まれる。以下、安全装置3が行う動作、すなわち、衝突危険回避動作または衝突被害低減動作を総称して安全措置と称する。
【0050】
ここで、安全装置3を構成する装置の一例を挙げる。図1に示すように、例えば、安全装置3は、警告灯等の表示装置31や警報ブザー等の警報装置32を含む。そして、安全装置3には、自車両VMのドライバーが、ターゲットとの衝突の危険を回避するために行うブレーキ操作をアシストする危険回避装置33やシートベルトを巻き取ったり、シートを駆動させたりすることにより、自車両VMの乗員の拘束性を高め、衝突被害を低減する衝突被害低減装置34も含まれる。さらに、衝突被害低減装置34は、エアバッグのセーフィング解除をしたり、シートポジションを衝突に備えたポジションに変更したりするもする。なお、安全装置3に含まれる装置は一例であり、これらの装置に限られるものではない。
【0051】
このように、ターゲット処理部21は、各レーダ装置1から取得した信号を用いて、ターゲット情報を生成する。そして、グループ化判定部23は、各レーダ装置1が検出した複数のターゲットについて、当該ターゲットの動きの特徴と自車両VMの動きの特徴とに基づいて、単一の物体として推定するというグループ化の処理を行う。さらに、衝突判定部24は、ターゲット処理部21、グループ化判定部23から出力される情報に基づいて、自車両VMとターゲット、自車両VMと単一の物体とみなされたターゲットとが衝突するか否かを判断し、安全装置3に対して適切な指示をする。
【0052】
ところで、レーダ装置1が、自車両VM周辺に存在する1台の他車両を検出した場合、(車両は一定の大きさを持った物体であるため)1つの他車両から複数の捕捉点を取得することがある。そのため、同一の他車両であるにも関わらず、複数の他車両が存在していると判断してしまう場合がある。従来、上記特許文献1に示したグループ化の手法の他に、一般的な車両(自動車)の大きさの枠を設定し、複数のターゲットについてグループ化を行う手法もある。
【0053】
ここで、図3および図4を用いて、従来のグループ化の手法を説明する。図3は、グループ化範囲枠を示す図である。図4は、図3のグループ化範囲枠を用いた、従来のグループ化の手法を示した図である。
【0054】
従来のグループ化の手法は、まず図3に示すような、車両(自動車)の大きさを想定したグループ化範囲枠を設定する。そして、レーダ装置1が検出した各ターゲットがグループ化範囲枠に入るか否かを判断することでグループ化を行う。なお、グループ化範囲枠の大きさを長さHおよび幅Wとし、当該長さHおよび幅Wは一般的な自動車の大きさに、余裕を持たせた値で設定される。
【0055】
次の、図4を用いて、例えば右側レーダ装置1Rがターゲットを2つ検出した場合を想定して、従来のグループ化の手法について、具体的に説明する。図4(a)に示すように、例えば、自車両VMに搭載された右側レーダ装置1Rが2つのターゲットPa、Pbを検出した場合を想定する。このとき、従来のグループ化の手法では、上記右側レーダ装置1Rが検出した2つのターゲットPa、Pbに対して、自車両VMに最も近いターゲット(図4(a)ではターゲットPa)を基準に、グループ化範囲枠を当てはめる。そして、グループ化範囲枠の枠に存在するターゲット(具体的には、図4(a)に示したターゲットPa、Pb)を単一の物体とみなして、グループ化する。つまり、上記右側レーダ装置1Rが検出したターゲットは、図4(a)の破線で示したように、同一車両を検出することによって得られた捕捉点であると推定する。
【0056】
しかしながら、上述したような従来のグループ化の手法は、自車両VMに斜めから向かってくる他車両に対しては、適切にグループ化できない場合が考えられる。例えば、図4(b)に示すように、自車両VMに搭載された右側レーダ装置1Rが2つのターゲットPc、Pdを検出した場合を想定する。そして、上記右側レーダ装置1Rが検出した2つのターゲットPc、Pdに対して、自車両VMに最も近いターゲット(図4(b)に示すターゲットPc)を基準に、グループ化範囲枠を当てはめる。このようにすると、図4(b)に示すように、ターゲットPdは、グループ化範囲枠の枠内に入ることはない。つまり、図4(b)の破線で示したように、上記右側レーダ装置1Rが検出したターゲットPc、Pdが、仮に同一車両を検出することによって得られた捕捉点であった場合、各ターゲットPc、Pdは、同一車両を検出することによって得られた捕捉点であるのにも関わらず、2つのターゲットPc、Pdを同一車両であると推定することはできない。
【0057】
そこで、本実施形態に係る物体検出装置の車両制御ECU2のグループ化判定部23は、各レーダ装置1が検出したターゲットの動きの特徴を考慮し、自車両VMに対して対向してくるターゲットだけでなく、自車両VMに対して斜めから接近してくるターゲットに対しても適切にグループ化する。これによって、各レーダ装置1が検出したターゲットを精度良くグループ化することができる。以下、車両制御ECU2の動作について詳説する。
【0058】
以下、図5、図6および図7を参照して、本実施形態に係る車両制御ECU2の各部が行う動作の一例を説明する。なお、以下では、右側レーダ装置1Rがターゲットを捕捉した場合を想定し、当該右側レーダ装置1Rから信号を受け取った場合の処理の一例について説明する。
【0059】
図5、図6および図7は、本実施形態に係る物体検出装置の車両制御ECU2の各部において行われる処理の一例を示したフローチャートである。なお、図5、図6および図7に示したフローチャートの処理は、車両制御ECU2内に備わった所定のプログラムを当該車両制御ECU2が実行することによって行われる。さらに、図5、図6および図7に示した処理を実行するためのプログラムは、例えば車両制御ECU2の記憶領域に予め格納されている。また、車両制御ECU2の電源がONになったとき(例えば、自車両VMのドライバーが上記処理を実行させる処理を開始させる操作等を行った場合、自車両VMのイグニッションスイッチがONされた場合等)当該車両制御ECU2によって、図5、図6および図7に示したフローチャートの処理が実行される。
【0060】
図5のステップS501において、ターゲット処理部21は、初期化を実行する。具体的には、後述より明らかとなるが、ターゲット情報記憶部25にターゲット情報が記憶されていれば消去し、グループ化カウンタがクリアされていなければクリアする。
【0061】
ステップS502において、ターゲット処理部21は、右側レーダ装置1Rからターゲットを検出した信号を取得し、次のステップS503に処理を進める。なお、右側レーダ装置1Rがターゲットを検出しなかった場合(具体的には、自車両VM前方周辺にターゲットが存在しなかった場合)、当該右側レーダ装置1Rは、ターゲットは0(ターゲットは無し)であることを示す信号をターゲット処理部21に出力する。
【0062】
ステップS503において、ターゲット処理部21は、右側レーダ装置1Rが検出したターゲットはあるか否かを判断する。具体的には、ターゲット処理部21は、上記ステップS502で右側レーダ装置1Rから取得した信号に基づいて、右側レーダ装置1Rは、ターゲットを検出したか否かを判断する。そして、ターゲット処理部21によって、判断が肯定された場合(YES)、次のステップS504に処理を進め、判断が否定された場合(NO)、ステップS502に戻って再び信号を取得する。つまり、ターゲット処理部21は、右側レーダ装置1Rが実際にターゲットを検出しなければ、ステップS504へ進めることができず、右側レーダ装置1Rがターゲットを検出していない場合、ステップS502へ処理を戻すことになる。なお、当該ステップでの判断が否定される場合とは、例えば、右側レーダ装置1Rの検出範囲AR内に物体が存在しない場合などである。
【0063】
ステップS504において、ターゲット処理部21は、右側レーダ装置1Rから取得した信号を用いて、当該右側レーダ装置1Rが検出したターゲットにターゲット番号Trnを設定する。
【0064】
ターゲット番号Trnを設定した次のステップS505において、ターゲット処理部21は、右側レーダ装置1Rから取得した信号を用いて、ターゲット番号Trnで示されるターゲットのターゲット情報irnを生成する。例えば、上記ステップS504において、ターゲット処理部21によってターゲット番号Tr1が付されたターゲットを想定すると、当該ターゲット処理部21は、右側レーダ装置1Rからの信号を用いて、当該右側レーダ装置1Rに対するターゲットの相対距離、相対速度、および相対位置等を含む情報をターゲット情報ir1として生成する。つまり、ターゲット番号Tr1で表されるターゲットのターゲット情報をir1として表すことができる。そして、ターゲット処理部21は、次のステップS506に処理を進める。
【0065】
なお、ステップS504でターゲット番号Trnを付与するときは、ターゲット処理部21は、右側レーダ装置1Rがターゲットを検出した場合、すでに検出されたターゲットについては同じ番号Trnを付与する。また、右側レーダ装置1Rが新たにターゲットを検出した場合については、ターゲット情報記憶部25にターゲット情報irnが記憶されていないターゲット番号Trnの末番nうち、最も若い番号nを付与する。例えば、ターゲット番号Tr1で示されるターゲットを検出した後、右側レーダ装置1Rが新たにターゲットを検出したとき、ターゲット処理部21は、当該ターゲットをターゲット番号Tr2で示されるターゲットとして、ターゲット番号Trnを付与する。
【0066】
ステップS506において、ターゲット処理部21は、上記ステップS505で生成したターゲット毎のターゲット情報irnを時系列順にターゲット情報記憶部25に一時的に記憶する。具体的には、当該フローチャートの処理を繰り返すことによって、ターゲット情報記憶部25には、ターゲット番号Trnで示されるターゲット情報irnが時系列順に記憶される。例えば、ターゲット番号Tr1で示されるターゲットを例に説明すると、ターゲット情報記憶部25は、1つのターゲットにつき、K個のターゲット情報ir1を記憶可能とした場合、ターゲット情報記憶部25には、当該フローチャートの処理を繰り返すことによって、ターゲット番号Tr1で示されるターゲットのターゲット情報ir1が、ターゲット情報ir1(1)、ir1(2)、ir1(3)、ir1(4)、ir1(k)、ir(K−1)、…ir(K)と時系列的に記憶されていくことになる。なお、この場合、ターゲット番号Tr1で示されるターゲットについて、現時点での最新のターゲット情報は、ターゲット情報ir1(K)となる。そして、ターゲット処理部21は、ターゲット情報irnを時系列順にターゲット情報記憶部25に一時的に記憶した後、次のステップS507に処理を進める。
【0067】
ステップS507において、ターゲット処理部21は、j個以上のターゲット情報はあるか否かを判断する。つまり、ステップS507において、ターゲット処理部21は、ターゲット情報記憶部25に記憶されているターゲット番号Trnで示されるそれぞれのターゲット情報irn(k)のうち、j個以上のターゲット情報irnが記憶されているターゲットが少なくとも1つ以上あるか否かを判断する。
【0068】
なお、後述より明らかとなるが、進行方向予測部22は、ターゲットの進行方向を予測するために、現時点における最新のターゲット情報irn(K)を含む、当該ターゲットの過去のターゲット情報irnが複数個必要となる。そのため、ステップS507の処理において、ターゲット処理部21は、最新のターゲット情報irn(K)を含む、ターゲット情報irnを少なくとも予め定められた個数(以下、j個と称する)、ターゲット情報記憶部25に記憶されている否かを判断する。言い換えると、ターゲット処理部21は、ステップS507の処理において、各ターゲットについて、irn(K)から過去irn(K−(j−1))までのターゲット情報がターゲット情報記憶部25に記憶されているか否かを判断する。
【0069】
例えば、j=5とした場合、ステップS507の判断において、ターゲット番号Tr1で示されるターゲットのターゲット情報ir1の履歴(最新のターゲット情報を含む)が4個、ターゲット番号Tr2で示されるターゲットのターゲット情報ir2の履歴(最新のターゲット情報を含む)が5個、であった場合、5個(j個)以上のターゲット情報irnが記憶されているターゲットが少なくとも1つ以上あるので(この場合は、ターゲット番号Tr2で示されるターゲット)、当該ステップでの判断は肯定されることになる。つまり、ターゲット番号Tr2で示されるターゲットの現時点における最新のターゲット情報ir1(K)と過去のターゲット情報ir2(K−1)、ir2(K−2)、ir2(K−3)、ir2(K−4)の5つがターゲット情報記憶部25に記憶されていることになる。
【0070】
そして、ターゲット処理部21は、判断を肯定した場合(YES)、次のステップS508に処理を進める。つまり、ターゲット情報irn(K)から過去irn(K−(j−1))までのターゲット情報irnされているターゲットが1つでもあれば、判断は肯定されることになる。
【0071】
一方、ターゲット処理部21は、判断を否定した場合(NO)、ステップS502に処理を戻す。
【0072】
このように、ターゲット処理部21は、上記ステップS502〜ステップS507の処理を行うことによって、ターゲット番号Trnで示されるターゲットのターゲット情報irnを生成し、ターゲット情報記憶部25に記憶することができる。
【0073】
ステップS508において、進行方向予測部22は、当該フローチャートで用いる一時変数nを1に設定し次のステップS509に処理を進める。
【0074】
ステップS509において、ターゲット処理部21は、ターゲット番号Trnのターゲット情報irnはj個以上記憶済であるか否かを判断する。そして、ターゲット処理部21は、判断を肯定した場合(YES)、次のステップS510に処理を進める。一方、ターゲット処理部21は、判断を否定した場合(NO)、ステップS514に処理を進める。
【0075】
例えば、当該フローチャートの処理を繰り返すことにより、右側レーダ装置1Rが5つのターゲットを検出していた場合(ターゲット番号Tr1、Tr2、Tr3、Tr4、Tr5でそれぞれ示されるターゲット)、ステップS509において、ターゲット処理部21は、ターゲット番号Tr1で示されるターゲットのターゲット情報ir1はj個以上記憶済であるか否かを判断する。そして、ターゲット情報ir1はj個以上記憶済では無かった場合、判断を否定しステップS514に処理を進める。そして、ステップS514で判断が否定され(n≠N=5)、ステップS515でnに1を加算し、ターゲット番号Tr2で示されるターゲットのターゲット情報ir2はj個以上記憶済であるか否かを判断することになる。
【0076】
なお、以下では、図8に示すように、一例として、当該フローチャートの処理を繰り返すことにより、右側レーダ装置1Rが5つのターゲットを検出していた場合(ターゲット番号Tr1、Tr2、Tr3、Tr4、Tr5でそれぞれ示されるターゲット)、j個以上のターゲット情報が記憶されているものとして説明を続ける。
【0077】
ステップS510において、進行方向予測部22は、ターゲット番号Trnで示されるターゲットの推定進行方向VTrnを算出する。具体的には、進行方向予測部22は、現在の一時変数nに応じて、ターゲット番号Trnが付与されたターゲットの推定進行方向VTrnを算出する。ここで、当該ステップで進行方向予測部22が行う具体的な処理について、ターゲット番号Tr1で示されるターゲットを例に、図9を用いて説明する。
【0078】
図9は、ターゲット情報記憶部25に記憶されているターゲット番号Tr1で示されるターゲットの検出状況を示した図である。なお、説明を簡単にするために、一例として、進行方向予測部22がターゲット番号Tr1で示されるターゲットの進行方向を予測するために必要なターゲット情報irnの個数(ステップS507でのj個に相当)を5として説明する。つまり、ターゲット番号Tr1で示されるターゲットを例に説明すると、図9に示すように、最新のターゲット情報ir1(K)から過去のターゲット情報ir1(K−1)、ir1(K−2)、ir1(K−3)、ir1(K−4)を用いて、ターゲット番号Tr1で示されるターゲットの進行方向VTr1を予測する。
【0079】
具体的には、ステップS510において、進行方向予測部22は、ターゲット情報記憶部25に記憶されているターゲット情報ir1(K)〜ir1(K−4)を用いて、右側レーダ装置1Rによって検出された各ターゲットの位置について、任意の位置を原点とするに地上固定座標系(x、y)において、点をプロットする(図9参照)。そして、進行方向予測部22は、当該各点について最小二乗法等により近似直線の傾きを求める。さらに、進行方向予測部22は、最新のターゲット(具体的には、ターゲット情報ir1(K)で示される点)を通過し、かつ上記傾きを持つ直線を求め、当該直線をターゲットの予測進行方向VTr1を算出する。そして、進行方向予測部22は、次のステップS511に処理を進める。なお、ベクトルの向き(予測進行方向VTr1の矢印の向き)は、ターゲット番号Tr1で示されるターゲットが進む向きで設定される。
【0080】
図5の説明に戻って、図5のステップS511において、進行方向予測部22は、ターゲット番号Trnが付与されたターゲットの推定進行方向VTrnの信頼性を算出する。具体的には、上記ステップS510における進行方向VTrn算出処理で用いたターゲット情報irnが、第1の条件と第2の条件とを満たすか否かによって、ターゲット番号Trnで示されたターゲットの推定進行方向VTrnの信頼性を算出する。
【0081】
上記第1の条件と第2の条件とは、具体的に、以下の通りである。
第1の条件:「進行方向VTrnを予測するときに用いたターゲット情報irn(k)のうち、通常認識点は一定割合以上であったか」
第2の条件:「移動距離は予め定められた距離以上か」
【0082】
まず、第1の条件は、推定進行方向VTrnを予測するときに用いた、最新のターゲット情報irn(K)を含むターゲット情報irnの履歴のうち、通常認識点は一定割合以上か否かである。上述したように、ターゲット情報irnは、右側レーダ装置1Rから取得した信号を用いて、ターゲット処理部21によって算出される。しかしながら、例えば右側レーダ装置1Rから出力される信号の強度によっては、ターゲット情報irnに含まれる情報(自車両VMに対するターゲットの相対距離、相対速度、および相対位置等)のうち、一部の情報しか算出できない場合がある。つまり、右側レーダ装置1Rが検出したターゲット番号Trnで示されるターゲットについて、ターゲット番号Trnで示されるターゲットに関する全ての情報が、進行方向VTrnを予測するときに用いたターゲット情報irn(k)に一定割合以上含まれていたか否かを判断する。なお、ターゲット番号Trnで示されるターゲットに関する全ての情報が含まれているターゲット情報irn(k)を通常認識点という。そして、進行方向予測部22は、進行方向VTnを予測するときに用いたターゲット情報irn(k)を参照し、通常認識点は一定割合以上であったか否かを判断する。なお、上記通常認識点ではなくても、外挿点の場合も位置、速度情報等が含まれている場合がある。しかしながら、当該位置、速度情報等は、推測された情報であるので、上記第1の条件での判断には、外挿点から得られる情報を含めて判断はしない。
【0083】
次に、第2の条件は、移動距離は一定以上であるか否かである。ここで、ターゲットの移動距離とは、推定進行方向VTrnを算出する際に用いたターゲット情報irn(k)のうち、最新のターゲット情報と最古のターゲット情報を参照することによって得られる距離である。具体的には、図9に示した例で説明すると、推定進行方向VTr1を算出する際に用いたターゲット情報ir1(k)のうち、最新のターゲット情報ir1(K)と最古のターゲット情報ir(K−4)を参照することによって得られる距離である。つまり、進行方向予測部22は、ターゲット情報ir1(K−4)が記憶されて、現時点の最新のターゲット情報ir1(K)が記憶されるまでの間に、ターゲット番号Tr1で示されるターゲットの移動距離を算出する。そして、進行方向予測部22が、上記算出された移動距離は予め定められた距離以上であるか否かを判断する。なお、第2の条件で否定される場合とは、例えば、ターゲットの移動速度が遅くターゲット情報の履歴を参照した際に、ターゲットの位置にあまり変化がない場合である。つまり、ターゲットの移動距離が一定以上でないと、方向ベクトルの信頼性が低下するからである。
【0084】
進行方向予測部22は、ステップS511において、上述した第1の条件と第2の条件ともに満たした場合、判断を肯定(YES)し、ステップS512に処理を進める。一方、進行方向予測部22は、ステップS510の判断を否定した場合(NO)、ステップS514に処理を進める。なお、当該ステップでの判断が否定(NO)される場合とは、ターゲット番号Trnで示されるターゲットについて、当該ターゲットの推定進行方向VTrnを予測はしたものの、当該推定進行方向VTrnの信頼性は高くない場合である。逆に、第1の条件と第2の条件とを満たすターゲット番号Trnで示されるターゲットの推定進行方向VTrnは、信頼性が高いと言える。
【0085】
ステップS512において、進行方向予測部22は、ターゲット番号Trnで示されるターゲットで示されるターゲットの進行方向VTrnは、信頼性は高いと判断する。そして、進行方向予測部22は、ターゲット情報記憶部25にターゲット番号Trnで示されるターゲットの進行方向VTrnは信頼性高と記憶し、次のステップS513に処理を進める。
【0086】
ステップS513において、進行方向予測部22は、進行方向角度δrnを算出する。以下、図10を参照して、進行方向角度δrnについて説明する。図10は、ターゲット番号Trnで示されるターゲットの推定進行方向VTrnと自車両VMの進行方向VVとの関係を示した図である。図10に示すように、進行方向角度δrnは、任意の位置を原点とするに地上固定座標系において、推定進行方向VTrnの矢印方向に延ばした直線と自車両VMの進行方向VVとがなす角のことである。つまり、例えば、進行方向角度δrnが30°であった場合、自車両VMから、ターゲット番号Trnで示されるターゲットを見た場合、右前方から当該自車両VMに向かってターゲット番号Trnで示されるターゲットが進んでくることになる。なお、進行方向角度δrnは、ターゲット番号Trnで示されるターゲットの推定進行方向VTrnと自車両VMの進行方向VVとの向きが逆で、平行である場合に0°として示す。
【0087】
また、自車両VMの進行方向VVは、自車両VMに備わったセンサ等からの情報に基づいて進行方向予測部22によって算出される。例えば、進行方向予測部22は、自車両VMに搭載された車速センサ、ヨーレートセンサ、横加速度センサ等からの情報を用いて、これから自車両VMが進んでいくであろう方向、自車両VMの予測進行方向VVを算出する。
【0088】
図5の説明に戻って、進行方向予測部22は、進行方向角度δrnを算出(上記ステップS513)した後、次のステップS514に処理を進める。なお、進行方向予測部22は、上記ステップS513で算出した進行方向角度δrnを示す情報をターゲット情報記憶部25に一時的に保存する。
【0089】
ステップS514において、進行方向予測部22は、一時変数nが取得ターゲット数Nに到達したか否かを判断する。つまり、当該ステップS514において、進行方向予測部22は、右側レーダ装置1Rが検出した全てのターゲットについて(例えば、図8で示した例ではターゲット番号Tr1〜Tr5であるのでN=5)、推定進行方向VTrnの信頼性について判断している。そして、進行方向予測部22は、判断を肯定した場合(ステップS513でYES)、図6のステップS516に処理を進める。一方、進行方向予測部22は、判断を否定した場合(ステップS514でNO)、一時変数nに1を加算し(ステップS515)、上記ステップS509に戻って処理を繰り返す。
【0090】
このように、ステップS508〜ステップS515までの処理を繰り返すことによって進行方向予測部22は、右側レーダ装置1Rが検出した全てのターゲットについて、推定進行方向VTrnを算出し、当該推定進行方向VTrnの信頼性を判断する。さらに、進行方向予測部22は、推定進行方向VTrnの信頼性が高いと判断されたターゲットについて、進行方向角度δrnを算出する。
【0091】
図6のフローチャートの処理に進んで、図6のステップS516において、グループ化判定部23は、一時変数nを1に設定し次のステップS517に処理を進める。
【0092】
ステップS517において、グループ化判定部23は、ターゲット番号Trnで示されるターゲットの推定進行方向VTrnの信頼性は高か否かを判断する。具体的には、グループ化判定部23は、ターゲット情報記憶部25に記憶されている推定進行方向VTrnを示す情報を参照して、当該推定進行方向VTrnの信頼性は高いか否かを判断する。そして、グループ化判定部23は、判断を肯定した場合(YES)、次のステップS518に処理を進める。一方、グループ化判定部23は、判断を否定した場合(NO)、ステップS519に処理を進め、一時変数nに1を加算して、上記ステップS517に処理を戻す。
【0093】
ステップS518において、グループ化判定部23は、当該フローチャートで用いる一時変数mを1に設定し、次のステップS520に処理を進める。
【0094】
ステップS520において、グループ化判定部23は、一時変数nとmとが等しいか否かを判断する。そして、グループ化判定部23は、判断を肯定した場合(YES)、ステップS527に処理を進める。一方、グループ化判定部23は、当該ステップS520での処理を否定した場合(NO)、次のステップS521に処理を進める。
【0095】
なお、当該ステップS520での判断が肯定される場合について具体的に説明する。例えば、ステップS516でn=1と設定され、次のステップS517で判断が肯定(推定進行方向VTr1の信頼性高)された場合、グループ化判定部23は、当該ステップS517の判断を肯定した次のステップS518において、一時変数mを1に設定された場合である。つまり、グループ化判定部23は、ステップS520、ステップS527、ステップS528、ステップS529の処理を行うことにより、ステップS521の処理で、同一のターゲット番号が付されたターゲットどうしで距離差分の算出を行うことはなくなる。
【0096】
ステップS521において、グループ化判定部23は、ターゲット番号Trnで示されるターゲットからターゲット番号Trmで示されるターゲットへの距離差分を算出する。そして、グループ化判定部23は、次のステップS522において、上記差分を角度δrnだけ回転させる回転変換を行う。さらに、グループ化判定部23は、ステップS521の距離差分算出処理およびステップS522の回転変換処理の後、ステップS523において、ターゲット番号Trmで示されるターゲットは、枠SPの範囲内か否かを判断する。以下、図11および図12を用いて、一例として、n=1、m=2として、グループ化判定部23が行う上記ステップS521、ステップS522およびステップS523での処理について説明する。
【0097】
図11は、ターゲット番号Tr1で示されるターゲットとターゲット番号Tr2で示されるターゲットとを任意の位置を原点とするに地上固定座標系に示した図である。グループ化判定部23は、上記ステップS521およびステップS522での処理において、ターゲット番号Tr1で示されるターゲットを基準にして、ターゲット番号Tr2で示されるターゲットを角度δr1だけ回転変換する処理を行う。なお、このとき用いるターゲット情報ir1およびir2は最新のターゲット情報である。つまり、図11のターゲット番号Tr1で示されるターゲットの位置は、ターゲット情報ir1(K)に基づいて示されており、ターゲット番号Tr2で示されるターゲットの位置は、ターゲット情報ir2(K)に基づいて示されている。
【0098】
具体的な処理は、図11に示すように、グループ化判定部23は、まず、上記地上固定座標系において、ターゲット番号Tr1で示されるターゲットの位置を(x1、y1)、ターゲット番号Tr2で示されるターゲットの位置を(x2、y2)としてプロットする。そしてグループ化判定部23は、ターゲット番号Tr1で示されるターゲットからターゲット番号Tr2で示されるターゲットへの距離差分ΔL2を、Δx2およびΔy2に分解して求める。つまり、Δx2は、x2−x1で求めることができ、Δy2は、y2−y1で求めることができる。
【0099】
そして、グループ化判定部23は、Δx2およびΔy2を以下の数式(1)および(2)に代入することにより、回転変換後のターゲット番号Tr2で示されるターゲットの位置を(X2、Y2)を算出する。
X2=Δx2cosδr1+Δy2sinδr1 …(1)
Y2=-Δx2sinδr1+Δy2cosδr1 …(2)
なお、回転変換処理に用いる角度δrnは自車両VMに対する衝突直前角度にするため、回転に向きを持たせ符号を考慮して変換する。具体的には、自車両VMの右側からターゲットが接近してくる場合(右側レーダ装置1Rで検出した場合)は、当該ターゲットが右カーブを走行していると想定して、−の値で左回転させる。例えば、δr1が30°であった場合、上記数式(1)および数式(2)には、−30°として代入する。
【0100】
次に、グループ化判定部23は、ターゲット番号Trmで示されるターゲットは、枠SPの範囲内であるか否かを判断する(ステップS523)。図12は、ステップS523での処理を示す図である。なお、図12の説明においても、図11と同様に、一例として、n=1、m=2として、ターゲット番号Tr1で示されるターゲットを基準にして、回転変換処理されたターゲット番号Tr2で示されるターゲットを例に説明する。図12に示すように、ターゲット番号Tr1で示されるターゲットを基準に回転処理された後のターゲット番号Tr2で示されるターゲットが示されている。ステップS523の処理において、グループ化判定部23は、ターゲット番号Tr1で示されるターゲットを基準にして、回転処理後のターゲット番号Tr2で示されるターゲットが枠SPの範囲内であるか否かを判断する。例えば、図3に示したグループ化範囲枠を参考にし、ターゲット番号Tr1で示されるターゲットの位置から基準に左右にそれぞれ距離W、ターゲット番号Tr1で示されるターゲットの位置を基準に縦Hの範囲とする枠SPを設定する。そして、グループ化判定部23は、図12に示すように、ターゲット番号Tr1で示されるターゲットの位置を基準として、枠SPを当てはめる。つまり、ターゲット番号Tr1で示されるターゲットの位置を(x1、y1)とすると、点A(x1−W、y1+H)、点B(x1−W、y1)、点C(x1+W、y1+H)、点D(x1+W、y1)の4点で示される範囲を枠SPとして、回転処理後のターゲット番号Tr2で示されるターゲットが、当該枠SPに入るか否かを判断する(図12に示した例では、回転処理後のターゲット番号Tr2で示されるターゲットは、枠SPの範囲内である)。なお、上述したように、枠SPは、図3に示したグループ化範囲枠を参考にして設定したが、枠SPの大きさは、これに限られるものではない。つまり、予め検出対象となる物体の形状に応じた枠の大きさを適宜設定すればよい。
【0101】
図6の説明に戻って、グループ化判定部23は、ステップS523での処理を肯定した場合(YES)、次のステップS524に処理を進め、グループ化カウントをインクリメントする。一方、グループ化判定部23は、ステップS523での処理を肯定した否定(NO)、ステップS525に処理を進める。
【0102】
ステップS525において、グループ化判定部23は、カウンタの値は閾値以上であるか否かを判断する。そして、グループ化判定部23は、ステップS525での処理を肯定した場合(YES)、次のステップS526に処理を進めグループ化を確定する。一方、グループ化判定部23は、ステップS525での処理を否定した場合(NO)、ステップS527に処理を進める。
【0103】
ステップS527において、グループ化判定部23は、一時変数mは、右側レーダ装置1Rが取得したターゲットの個数(N個)に達したか否かを判断する。そして、グループ化判定部23は、ステップS527での判断を否定した場合(NO)、ステップS528においてmに1を加算しステップS520に処理を戻す。一方、グループ化判定部23は、ステップS527での判断を肯定した場合(YES)、図7のステップS529に処理を進める。
【0104】
ステップS529において、グループ化判定部23は、一時変数nは、右側レーダ装置1Rが取得したターゲットの個数(N個)に達したか否かを判断する。そして、グループ化判定部23は、ステップS529での判断を否定した場合(NO)、ステップS519においてnに1を加算しステップS517に処理を戻す。一方、グループ化判定部23は、ステップS529での判断を肯定した場合(YES)、ステップS530に処理を進める。
【0105】
このように、グループ化判定部23は、ステップS520、ステップS527、ステップS528、ステップS529の処理を行うことにより、推定進行方向の信頼性が高いとされた全てのターゲットのうち、もれなく2つのターゲットおいて、順次、距離差分算出および回転変換処理を行い、枠SPの範囲内であるか否かを判断することができる。
【0106】
さらに、グループ化判定部23は、ステップS524〜ステップS526の処理を行うことによって、同一範囲内(枠SP内)に所定回数以上入ったターゲットについてはグループ化の対象とする。ここで、グループ化判定部23が行うステップS524〜ステップS526での処理について、図13を用いて、より具体的に説明する。
【0107】
例えば、図13に示すように右側レーダ装置1Rが他車両VOAおよび他車両VOBから捕捉点を計5つ得たとする。つまり、図8に示した右側レーダ装置1Rは、5つターゲットを検出したことになる。そして、ターゲット処理部21によって、上述したように、当該検出されたターゲットについて、例えば、ターゲット番号Tr1〜Tr5を設定する。
【0108】
そして、進行方向予測部22は、ターゲット番号Tr1〜Tr5で示されるターゲット全てについて進行方向VTrnを予測する。さらに、進行方向予測部22は、当該予測された各ターゲットの進行方向VTrnに基づいて、進行方向角度δrnを算出する。なお、以下の説明では、また、ターゲット番号Tr1〜Tr5で示されるターゲットの予測進行方向VTr1〜VTr5は全て信頼性は高いものとする。
【0109】
グループ化判定部23は、上述したステップS518〜ステップS529の処理を行うことによって、全てのターゲットのうち、もれなく2つのターゲットおいて、順次、距離差分算出および回転変換処理を行い、枠SPの範囲内であるか否かを判断する。例えば、図13に示した、ターゲット番号Tr1で示されるターゲットを基準として、ターゲット番号Tr2およびターゲット番号Tr3で示されるターゲットを回転変換し枠SPの範囲内であるか否かを判断した場合、それぞれのターゲットは枠SPの範囲内に入ると考えられる。このとき、ターゲット番号Tr2で示されるターゲットのカウンタおよびターゲット番号Tr3で示されるターゲットのカウンタがそれぞれインクリメントされる。この処理を当該フローチャートの処理を繰り返し行うことで、ターゲット番号Tr2で示されるターゲットのカウンタおよびターゲット番号Tr3で示されるターゲットのカウンタの値がそれぞれ閾値以上であった場合、ターゲット番号Tr2およびターゲット番号Tr3で示されるターゲットは、ターゲット番号Tr1を基準として、グループ化されることになる。
【0110】
一方、ターゲット番号Tr2で示されるターゲットを基準として、ターゲット番号Tr1およびターゲット番号Tr3で示されるターゲットを回転変換すると、それぞれのターゲットは枠SPの範囲外になると考えられる。つまり、例えば、ターゲット番号Tr2で示されるターゲットからターゲット番号Tr1で示されるターゲットへの距離差分ΔL1(Δx1=x1−x2、Δy1=y1−y2)を算出した場合、その値は、負の値で算出されるため、図12で説明したような枠SPを当てはめると枠SPの範囲外になると考えられる。したがって、ターゲット番号Tr1およびターゲット番号Tr3で示されるターゲットは、ターゲット番号Tr2を基準としてグループ化されることはない。言い換えると、自車両VMに近いターゲットがグループ化の基準(代表ターゲット)にすることができる。
【0111】
同様に、ターゲット番号Tr4で示されるターゲットを基準として、ターゲット番号Tr5で示されるターゲットを回転変換すると、ターゲット番号Tr5で示されるターゲットは枠SPの範囲内になると考えられ、ターゲット番号Tr4で示されるターゲットはグループ化される。つまり、ターゲット番号Tr4で示されるターゲットを代表ターゲットとして、ターゲット番号Tr4、Tr5で示されるターゲットは、同一のグループであると確定される。
【0112】
このようにすれば、例えば図13に示すように、右側レーダ装置1Rが、他車両VOAと他車両VOBといった複数の物体から捕捉点を取得しても単一の物体であると推定してしまうことを防ぐことができる。
【0113】
図7の説明に戻って、その後、グループ化判定部23は、ステップS530において履歴を消去する。具体的には、グループ化判定部23は、カウンタの値が閾値以上であったターゲットについてのカウンタを0にする。また、グループ化判定部23は、ターゲット情報記憶部25に記憶されているターゲット情報irn(k)を、当該ターゲット情報記憶部25に記憶されているうちの過去のターゲット情報irn(k)から順次消去する。例えば、最新のターゲット情報irn(K)からj個だけ過去のターゲット情報irnを消去する。そして、ステップS531に処理を進める。
【0114】
ステップS531において、グループ化判定部23は、処理を終了するか否かを判断する。例えば、グループ化判定部23は、車両制御ECU2の電源がOFFになったとき(例えば、ドライバーが上記処理を実行させる処理を終了させる操作等を行った場合、自車両VMのイグニッションスイッチがOFFされた場合等)処理を終了する。一方、グループ化判定部23は、処理を継続すると判断した場合、上記ステップS502に戻って処理を繰り返す。
【0115】
なお、衝突判定部24は、右側レーダ装置1Rが検出したターゲットと自車両VMとが衝突する可能性があるか否かの判断は、グループ化された代表ターゲット、つまり図13で示した例では他車両VOAにつき自車両VMに最も近いターゲット番号Tr1で示されるターゲットのターゲット情報ir1(K)のみに基づいて判断してもよいし、右側レーダ装置1Rが検出したターゲットの全てのターゲット情報に基づいて総合的に判断してもよい。そして、衝突判定部24が、自車両VMとターゲットとが衝突する可能性がある、衝突は避けられないと判断した場合、当該衝突判定部24は、安全装置3に指示し、上述したような安全措置を講じる。
【0116】
このように、本実施形態に係る物体検出装置によれば、車両制御ECU2のグループ化判定部23は、各レーダ装置1が検出したターゲットの動きの特徴を考慮し、自車両VMに対して対向してくるターゲットだけでなく、自車両VMに対して斜めから接近してくるターゲットに対しても適切にグループ化する。これによって、各レーダ装置1が検出したターゲットを精度良くグループ化することができる。
【0117】
なお、上述の説明では、右側レーダ装置1Rが検出したターゲットについて説明したが、左側レーダ装置1Lがターゲットを検出した場合においても、適応できることはいうまでもない。この場合、ターゲット処理部21は、左側レーダ装置1Lが検出したターゲットについてターゲット番号Tlnを設定し、ターゲット情報irnを生成する。そして、進行方向予測部22は、左側レーダ装置1Lが検出した全てのターゲットについて、推定進行方向VTlnを算出し、当該推定進行方向VTlnの信頼性を判断する。さらに、進行方向予測部22は、推定進行方向VTlnの信頼性が高いと判断されたターゲットについて、進行方向角度δlnを算出し、グループ化判定部23は、推定進行方向の信頼性が高いとされた全てのターゲットのうち、もれなく2つのターゲットおいて、順次、距離差分算出および回転変換処理を行い、枠SPの範囲内であるか否かを判断すればよい。
【0118】
なお、回転変換処理を行う際は、自車両VMの左側からターゲットが接近してくる場合(左側レーダ装置1Lで検出した場合)は、当該ターゲットが左カーブを走行していると想定して、+の値で右回転させる。例えば、左側レーダ装置1Lがターゲットを検出し、当該検出されたターゲットについて進行方向を予測し、進行方向角度δlnを算出したとき、当該進行方向角度δlnが、30°であった場合(自車両VMからターゲットを見た場合、左前方から当該自車両VMに向かって進んでくる場合)、上記数式(1)および数式(2)には、30°として代入する。
【0119】
また、上記物体検出装置に加えて、自車両VMに例えば画像処理装置を搭載すれば、各レーダ装置1が検出しようとする物体の大きさに合わせて上記枠SPの長さHおよび幅Wを適宜変更することも考えられる。具体的には、例えば、自車両VMの前方周囲を撮像可能なカメラ等を含む画像処理装置を車両VMに搭載する。そして、上記カメラによって撮像された画像を処理することにより、自車両VMの前方周囲に存在する物体の大きさを推定する。例えば、一般的な乗用車よりも長さが長い物体が、自車両VMの前方周囲に存在すると上記画像処理装置が推定した場合、枠SPの大きさは長さHを大型車両(バス等)長さに設定してもよい。つまり、画像処理装置による推定結果を用いて、物体検出装置が処理を行えば、枠SPを大きくしたために、例えば、隣接車線を走る複数の乗用車を誤ってグループ化してしまうことを防ぐことができると考えられる。
【0120】
なお、上記画像処理装置によって、自車両VMの前方周囲に存在する物体の向きが正確に判定できれば、物体検出装置は、当該判定された物体の向きに基づいて進行方向角度を算出してもよい。
【0121】
上記の実施形態で説明した態様は、単に具体例を示すものであり、本願発明の技術的範囲を何ら限定するものではない。よって本願の効果を奏する範囲において、任意の構成を採用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明に係る、物体検出装置および物体検出方法は、レーダ装置が検出した物体を精度良くグループ化することのできる車載用レーダ装置等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】ドライバーサポートシステムの構成を示すブロック図
【図2】各レーダ装置1の搭載位置の一例を示す図
【図3】グループ化範囲枠を示す図
【図4】図3のグループ化範囲枠を用いた、従来のグループ化の手法を示した図
【図5】本実施形態に係る物体検出装置の車両制御ECU2の各部において行われる前半の処理の一例を示したフローチャート
【図6】本実施形態に係る物体検出装置の車両制御ECU2の各部において行われる半ばの処理の一例を示したフローチャート
【図7】本実施形態に係る物体検出装置の車両制御ECU2の各部において行われる後半の処理の一例を示したフローチャート
【図8】右側レーダ装置1Rにおけるターゲットの検出状況を示した図
【図9】ターゲット情報記憶部25に記憶されているターゲット番号Tr1で示されるターゲットの検出状況を示した図
【図10】ターゲット番号Trnで示されるターゲットの推定進行方向VTrnと自車両VMの進行方向VVとの関係を示した図
【図11】ターゲット番号Tr1で示されるターゲットとターゲット番号Tr2で示されるターゲットとを示した図
【図12】ステップS523での処理を示す図である。
【図13】右側レーダ装置1Rが他車両VOAおよび他車両VOBから捕捉点を計5つ得た場合を示す図
【図14】上記特許文献1に開示されている手法を説明するための図
【図15】上記特許文献1に開示されている手法を説明するための図
【符号の説明】
【0124】
1R…右側レーダ装置
1C…中央レーダ装置
1L…左側レーダ装置
2…車両制御ECU
21…ターゲット処理部
22…進行方向予測部
23…グループ化判定部
24…衝突判定部
25…ターゲット情報記憶部
3…安全装置
31…表示装置
32…警報装置
33…危険回避装置
34…衝突被害低減装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体検出装置および物体検出方法に関し、より特定的には、車両に搭載され、当該車両の周辺から接近してくる物体を適切にグループ化することのできる物体検出装置および物体検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、乗用車などの車両には、当該車両(以下、自車両と称す)の周囲に存在する、他車両、歩行者、及び路上にある設置物などを検出する車載用レーダ装置が搭載されている。上記車載用レーダ装置は、自車両の前方や側方から接近してくるターゲットを検出し、自車両と当該ターゲットとの相対距離、相対速度、及び当該対象物の存在する方向(方位角)などを測定する。そして、上記車載用レーダ装置は、当該検出結果に基づいて、自車両とターゲットとが衝突する危険性を判断する。このような車載用レーダ装置の一例として、特許文献1に開示されているレーダ装置がある。
【特許文献1】特開平8−160132号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、車載用レーダ装置は、自車両周辺に存在する物体を検出する場合、複数の捕捉点を得ることがある。例えば、車載用レーダ装置が、複数の捕捉点を得る例として、自車両周辺に複数の他車両が存在し、当該複数の他車両からそれぞれ捕捉点を得る場合である。
【0004】
また、一方で、車載用レーダ装置は、自車両周辺に存在する1台の他車両を検出した場合でも(車両は一定の大きさを持った物体であるため)1台の他車両から複数の捕捉点を検出することがある。例えば、ターゲットがバスやトラックなどの大型車であった場合、ターゲットが乗用車であった場合と比べて、1台の他車両から複数の捕捉点を捉えることが顕著にみられる。
【0005】
そのため、一般的な車載用レーダ装置では、上記車載用レーダ装置が検出した各捕捉点の特徴に基づいて、単一の物体として推定するというグループ化の処理を行っている。
【0006】
例えば、上記特許文献1に開示されているレーダ装置は、自車両が進む曲率半径(曲線)を求め、当該自車両に設置されているレーダ装置で捕捉した捕捉点の座標から上記曲線までの距離Dと、上記捕捉点から自車両前部中心まで延ばした線の自車両正面方向に対する角度θを求める。そして、距離Dと角度θとが近い捕捉点をグループ化し、単一の物体と推定している。
【0007】
具体的には、図14に示すように、上記特許文献1に開示されているレーダ装置は、複数の捕捉点(図14に示した捕捉点P1および捕捉点P2)を得た場合、当該複数の捕捉点について、曲線Rまでの距離Dの差(距離D2−距離D1)と角度θ(角度θ2−角度θ1)の差とを比較する。そして、上記特許文献1に開示されているレーダ装置は、距離D2−距離D1≦閾値D、かつ角度θ2−角度θ1≦閾値θであった場合、捕捉点P1および捕捉点P2をグループ化する。つまり、上記レーダ装置は、他車両1(単一の物体)から、捕捉点P1および捕捉点P2を得たと推定している。
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に開示されているレーダ装置によれば、物体の位置や進行方向によっては、複数の物体であっても1つのグループである(単一の物体である)と推定してしまう可能性がある。例えば、図15に示すように、自車両前方に他車両2および他車両3が存在し、当該他車両2および他車両3をそれぞれレーダ装置が検出した場合を想定する。図15に示すように、仮に、距離D4−距離D3≦閾値D、かつ角度θ3−角度θ3≦閾値θであった場合、上記レーダ装置は、捕捉点P3および捕捉点P4をグループ化し、捕捉点P3および捕捉点P4は、単一の物体から得られたものであると推定してしまう可能性がある。つまり、上記特許文献1に開示されているレーダ装置は、複数の他車両が近接して移動している場合など、複数の他車両を同一の他車両と推定してしまう可能性があるため、必ずしも十分な精度でグループ化を行うことができなかった。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、レーダ装置が検出した物体を精度良くグループ化することのできる物体検出装置および物体検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記のような目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。すなわち、第1の発明は、車両に搭載され、当該車両周辺の物体を検出する物体検出装置である。上記物体検出装置は、上記車両周辺の物体を検出することによって得られた捕捉点を示す信号を用いて、当該捕捉点それぞれの移動方向を算出する移動方向算出手段と、予め検出対象となる物体の形状に応じた枠および当該物体で想定されている進行方向として当該枠に進行基準方向を設定し、上記捕捉点のうち、上記移動方向に当該進行基準方向を合わせた当該枠内に存在する捕捉点を同じ物体の捕捉点として判定する判定手段とを備える。
【0011】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記枠は、上記検出対象となる物体の形状を模した矩形枠とする。
【0012】
第3の発明は、上記第2の発明において、上記判定手段は、前記矩形枠の長手方向を前記進行基準方向として設定する。
【0013】
第4の発明は、上記第1の発明において、上記判定手段は、上記枠内に存在し、かつ、上記移動方向が同じ捕捉点を同じ物体の捕捉点として判定する。
【0014】
第5の発明は、上記第1の発明において、上記判定手段は、上記車両周辺の物体を検出することによって得られた捕捉点から1つの捕捉点を選出する処理を行い、当該選出された捕捉点の移動方向に上記進行基準方向に合わせた上記枠内に存在する捕捉点のうち、上記選出された捕捉点を基準に前記車両より遠方に存在する捕捉点を同じ物体の捕捉点として判定する。
【0015】
第6の発明は、上記第1の発明において、上記移動方向算出手段は、上記捕捉点の時系列的な移動方向の履歴を予め定められた関数で演算することによって、それぞれの上記捕捉点における現時点の移動方向を算出する。
【0016】
第7の発明は、上記第1の発明において、上記移動方向算出手段は、さらに上記捕捉点それぞれの移動速度を算出する。上記判定手段は、上記移動速度が閾値以上であり、かつ、上記捕捉点の履歴において当該捕捉点を得た信号強度が予め定められた強度以上であった割合が閾値以上である場合、当該捕捉点を上記判定の対象とする。
【0017】
第8の発明は、上記第1の発明において、上記判定手段は、上記枠内に存在すると判定された回数が予め定められた回数に到達したとき、当該枠内の捕捉点を同じ物体の捕捉点として確定する。
【0018】
第9の発明は、上記第1の発明において、上記同じ物体の捕捉点として判定された捕捉点のうち、何れか1つの捕捉点を用いて上記車両と当該物体とが衝突するか否かを判断する衝突判定手段を、さらに備える。
【0019】
第10の発明は、上記第9の発明において、上記衝突判定手段は、上記同じ物体の捕捉点として判定された捕捉点のうち、上記車両に最も近い捕捉点を用いて上記車両と当該物体とが衝突するか否かを判断する。
【0020】
第11の発明は、上記第3の発明において、上記判定手段は、上記矩形枠の長手方向の長さおよび短手方向の幅を、自動車の長さおよび幅に応じてそれぞれ設定する。
【0021】
第12の発明は、車両に搭載され、当該車両周辺の物体を検出する物体検出方法である。上記物体検出方法は、上記車両周辺の物体を検出することによって得られた捕捉点を示す信号を用いて、当該捕捉点それぞれの移動方向を算出する移動方向算出ステップと、予め検出対象となる物体の形状に応じた枠および当該物体で想定されている進行方向として当該枠に進行基準方向を設定し、上記捕捉点のうち、上記移動方向に当該進行基準方向を合わせた当該枠内に存在する捕捉点を同じ物体の捕捉点として判定する判定ステップとを備える。
【発明の効果】
【0022】
上記第1の発明によれば、レーダ装置が検出した複数のターゲットについて、当該ターゲットの動きの特徴と自車両の動きの特徴とに基づいて、グループ化を行うことができる。したがって、レーダ装置が検出した物体を精度良くグループ化することができ、同一の物体から得た捕捉点を同じ物体の捕捉点であると適切に判定することができる。
【0023】
上記第2および3の発明によれば、枠の形状は矩形であり、矩形枠の長手方向を進行基準方向として設定するので、車載用レーダ装置が検出対象とする物体(乗用車、大型車、バス等)に対応させることができる。
【0024】
上記第4の発明によれば、レーダ装置が複数のターゲットを検出した場合でも、適切にグループ化をすることができる。
【0025】
上記第5の発明によれば、自車両に最も近いターゲットを代表ターゲットとするグループ化処理を行うことができる。
【0026】
上記第6の発明によれば、移動方向算出手段は、移動方向の時系列な履歴を用いることができるので、現時点における移動方向を算出するとき、例えば、最小二乗法などを利用できる。
【0027】
上記第7の発明によれば、判定手段は、捕捉点の信頼性について判断することができる。
【0028】
上記第8の発明によれば、判定手段は、当該枠内の捕捉点を同じ物体の捕捉点とする判断を、より確実に行うことができる。
【0029】
上記第9および第10の発明によれば、同じ物体の捕捉点と判定された捕捉点のうち、1つの捕捉点を用いて衝突判断をするので、衝突判定手段が行う処理の負荷が低減される。
【0030】
上記第11の発明によれば、枠の大きさをレーダ装置の想定される使用環境(実際の道路)に対応させることができる。
【0031】
本発明の物体検出方法によれば、上述した本発明の物体検出装置と同様の効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る物体検出装置について説明する。なお、本実施形態では、当該物体検出装置を含むドライバーサポートシステム(DSS(Driver Support System))が、車両(以下、自車両VMと称す)に搭載される場合を想定して説明する。
【0033】
図1は、ドライバーサポートシステムの構成を示すブロック図である。図1に示すように、ドライバーサポートシステムは、左側レーダ装置1L、中央レーダ装置1C、右側レーダ装置1R、車両制御ECU(Electrical Control Unit)2、および安全装置3を備える。
【0034】
右側レーダ装置1Rは、自車両VMの所定の位置(例えば、自車両VMの前部右側の前照灯や方向指示器などが搭載されている位置)に設置され、自車両VMの外側に向けて電磁波を照射し、自車両VM前方の周囲を監視している。例えば、図2に示すように、右側レーダ装置1Rは、自車両VMの斜め右前方に向けて電磁波を照射し、当該右側レーダ装置1Rの検出範囲内(図2のAR)に存在するターゲット(他車両、自転車、歩行者、建造物など)を検出する。
【0035】
中央レーダ装置1Cは、自車両VMの所定の位置(例えば、自車両VMの前部の中央)に設置され、自車両VMの外側に向けて電磁波を照射し、自車両VM前方の周囲を監視している。例えば、図2に示すように、中央レーダ装置1Cは、自車両VMの前方に向けて電磁波を照射し、当該中央レーダ装置1Cの検出範囲内(図2のAC)に存在するターゲット(他車両、自転車、歩行者、建造物など)を検出する。
【0036】
左側レーダ装置1Lは、自車両VMの所定の位置(例えば、自車両VMの前部左側の前照灯や方向指示器などが搭載されている位置)に設置され、自車両VMの外側に向けて電磁波を照射し、自車両VM前方の周囲を監視している。例えば、図2に示すように、左側レーダ装置1Lは、自車両VMの斜め左前方に向けて電磁波を照射し、当該左側レーダ装置1Lの検出範囲内(図2のAL)に存在するターゲット(他車両、自転車、歩行者、建造物など)を検出する。
【0037】
なお、右側レーダ装置1R、中央レーダ装置1C、および左側レーダ装置1Lは、それぞれ電磁波を照射して、その反射波を受信する。そして、各レーダ装置は、例えば、車両の前方および側方周囲に存在するターゲットを検出し、当該ターゲットを検出した信号を、車両制御ECU2に出力する。また、各レーダ装置が複数のターゲットを検出している場合、当該各レーダ装置は、ターゲットを検出した信号をターゲット毎にそれぞれ車両制御ECU2に出力する。
【0038】
また、各レーダ装置は、図2に示した例に限られるものではない。例えば、右側レーダ装置1Rおよび左側レーダ装置1Lのみで自車両VMの前方の周囲を監視してもよいし、中央レーダ装置1Cのみで自車両VMの前方の周囲を監視してもよい。つまり、1つ以上のレーダ装置を用いて自車両VMの周囲における、所望の方向を監視できるように、各レーダ装置は設置されればよい。
【0039】
なお、各レーダ装置は、電磁波の照射方向が異なることを除いて構成は同様である。したがって、以下の説明において、右側レーダ装置1R、中央レーダ装置1C、および左側レーダ装置1Lを特に区別する場合を除き、上記各レーダ装置を総称して、単に「レーダ装置1」と称す。
【0040】
図1の説明に戻って、図1に示すように、車両制御ECU2は、ターゲット処理部21、進行方向予測部22、グループ化判定部23、衝突判定部24、ターゲット情報記憶部25、およびインターフェース回路などを備える情報処理装置である。
【0041】
ターゲット処理部21は、レーダ装置1から取得した信号を用いて、自車両VMに対するターゲットの位置、速度、距離等のターゲット情報を算出する。例えば、ターゲット処理部21は、レーダ装置1が照射した照射波と受信した反射波との和および差や送受信タイミング等を用いて、自車両VMに対するターゲットの相対距離、相対速度、および相対位置等を算出する。具体的には、例えば、右側レーダ装置1Rがターゲットを検出し、当該ターゲットを検出した信号を車両制御ECU2に出力した場合、ターゲット処理部21は、当該右側レーダ装置1Rに対するターゲット物体の相対距離、相対速度、および相対位置等を含む情報をターゲット情報irとして生成する。
【0042】
同様に、ターゲット処理部21は、中央レーダ装置1Cおよび左側レーダ装置1Lについても、中央レーダ装置1Cおよび左側レーダ装置1Lがそれぞれターゲットを検出することによって得た信号を用いて、上記各レーダ装置に対するターゲットの相対距離、相対速度、および相対位置等を算出する。そして、ターゲット処理部21は、中央側レーダ装置1Cに対するターゲットの相対距離、相対速度、および相対位置等を含む情報をターゲット情報icとして生成する。また、ターゲット処理部21は、左側レーダ装置1Lに対するターゲットの相対距離、相対速度、および相対位置等を含む情報をターゲット情報ilとして生成する。
【0043】
さらに、ターゲット処理部21は、レーダ装置1が検出した各ターゲットの位置を任意の位置を原点とする地上固定座標系における位置に変換する処理を行う。例えば、右側レーダ装置1Rがターゲットを検出し、車両制御ECU2が、右側レーダ装置1Rから出力された信号を用いて処理を行う場合を考えたとき、当該ターゲットの位置は右側レーダ装置1Rが設置されている位置を基準とした座標系で算出されるのが一般的である。そこで、ターゲット処理部21は、各レーダ装置1から出力されるターゲットについて基準を同じにするために、任意の位置を原点とするに地上固定座標系で示される位置にターゲットの位置を変換する処理を行う(中央レーダ装置1Cおよび左側レーダ装置1Lがターゲットを検出した場合も同様)。
【0044】
進行方向予測部22は、ターゲット処理部21から出力される各ターゲット情報に基づいて、ターゲットの進行方向を予測(ターゲットが自車両VMにこれから向かってくるであろう進路を予測)する。さらに、進行方向予測部22は、自車両VMの車速、ヨーレート等から、自車両VMの進行方向も予測(自車両VMがこれから進んでいくであろう進路を予測)する。なお、ターゲット処理部21および進行方向予測部22は、請求項に記載の移動方向算出手段の一例に相当する。
【0045】
グループ化判定部23は、詳細は後述するが、各レーダ装置1が検出した複数のターゲットについて、当該ターゲットの動きの特徴と自車両VMの動きの特徴とに基づいて、単一の物体として推定するというグループ化の処理を行う。なお、グループ化判定部23は、請求項に記載の判定手段の一例に相当する。
【0046】
衝突判定部24は、ターゲット処理部21、グループ化判定部23から出力される情報に基づいて、自車両VMとターゲットとが衝突するか否かを判断する。例えば、衝突判定部24は、自車両VMとターゲットとが衝突するまでの時間、つまり衝突予測時間(TTC(Time to collision))をターゲット毎、またはグループ化されたグループごとに算出する。そして、TTCを算出した結果、当該算出されたTTCが予め定められた時間より短かった場合、衝突判定部24は、安全装置3に指示し、後述する安全措置を講じる。なお、TTCは、例えば相対距離を相対速度で除算(TTC=相対距離/相対速度)することによって求めることができる。なお、衝突判定部24は、請求項に記載の衝突判定手段の一例に相当する。
【0047】
ターゲット情報記憶部25は、ターゲット処理部21が生成したターゲット情報を一時的に記憶する記憶媒体である。また、ターゲット情報記憶部25は、ターゲット処理部21が生成したターゲット情報を時系列的に記憶する。
【0048】
なお、レーダ装置1は、当該レーダ装置1内において、上述した車両制御ECU2の処理を行っても構わない。例えば、自車両VMに複数のレーダ装置が搭載されているような場合、各レーダ装置から出力される信号は、全て車両制御ECU2に集約されることになる。したがって、例えば、右側レーダ装置1R内において、上述した車両制御ECU2の処理を行えば、当該右側レーダ装置1Rが検出したターゲットについてのみ処理することが可能となり、各レーダ装置から出力される信号が全て車両制御ECU2に集約される形態と比べて処理負荷が低減される。
【0049】
安全装置3は、車両制御ECU2からの指示に従って、ターゲットとの衝突の危険性が高い場合には自車両VMのドライバーに対して注意喚起を行う。また、安全装置3は、ターゲットとの衝突が避けられない場合に、自車両VMの乗員の被害を低減する、乗員保護や衝突条件の緩和を行うための各種装置も含まれる。以下、安全装置3が行う動作、すなわち、衝突危険回避動作または衝突被害低減動作を総称して安全措置と称する。
【0050】
ここで、安全装置3を構成する装置の一例を挙げる。図1に示すように、例えば、安全装置3は、警告灯等の表示装置31や警報ブザー等の警報装置32を含む。そして、安全装置3には、自車両VMのドライバーが、ターゲットとの衝突の危険を回避するために行うブレーキ操作をアシストする危険回避装置33やシートベルトを巻き取ったり、シートを駆動させたりすることにより、自車両VMの乗員の拘束性を高め、衝突被害を低減する衝突被害低減装置34も含まれる。さらに、衝突被害低減装置34は、エアバッグのセーフィング解除をしたり、シートポジションを衝突に備えたポジションに変更したりするもする。なお、安全装置3に含まれる装置は一例であり、これらの装置に限られるものではない。
【0051】
このように、ターゲット処理部21は、各レーダ装置1から取得した信号を用いて、ターゲット情報を生成する。そして、グループ化判定部23は、各レーダ装置1が検出した複数のターゲットについて、当該ターゲットの動きの特徴と自車両VMの動きの特徴とに基づいて、単一の物体として推定するというグループ化の処理を行う。さらに、衝突判定部24は、ターゲット処理部21、グループ化判定部23から出力される情報に基づいて、自車両VMとターゲット、自車両VMと単一の物体とみなされたターゲットとが衝突するか否かを判断し、安全装置3に対して適切な指示をする。
【0052】
ところで、レーダ装置1が、自車両VM周辺に存在する1台の他車両を検出した場合、(車両は一定の大きさを持った物体であるため)1つの他車両から複数の捕捉点を取得することがある。そのため、同一の他車両であるにも関わらず、複数の他車両が存在していると判断してしまう場合がある。従来、上記特許文献1に示したグループ化の手法の他に、一般的な車両(自動車)の大きさの枠を設定し、複数のターゲットについてグループ化を行う手法もある。
【0053】
ここで、図3および図4を用いて、従来のグループ化の手法を説明する。図3は、グループ化範囲枠を示す図である。図4は、図3のグループ化範囲枠を用いた、従来のグループ化の手法を示した図である。
【0054】
従来のグループ化の手法は、まず図3に示すような、車両(自動車)の大きさを想定したグループ化範囲枠を設定する。そして、レーダ装置1が検出した各ターゲットがグループ化範囲枠に入るか否かを判断することでグループ化を行う。なお、グループ化範囲枠の大きさを長さHおよび幅Wとし、当該長さHおよび幅Wは一般的な自動車の大きさに、余裕を持たせた値で設定される。
【0055】
次の、図4を用いて、例えば右側レーダ装置1Rがターゲットを2つ検出した場合を想定して、従来のグループ化の手法について、具体的に説明する。図4(a)に示すように、例えば、自車両VMに搭載された右側レーダ装置1Rが2つのターゲットPa、Pbを検出した場合を想定する。このとき、従来のグループ化の手法では、上記右側レーダ装置1Rが検出した2つのターゲットPa、Pbに対して、自車両VMに最も近いターゲット(図4(a)ではターゲットPa)を基準に、グループ化範囲枠を当てはめる。そして、グループ化範囲枠の枠に存在するターゲット(具体的には、図4(a)に示したターゲットPa、Pb)を単一の物体とみなして、グループ化する。つまり、上記右側レーダ装置1Rが検出したターゲットは、図4(a)の破線で示したように、同一車両を検出することによって得られた捕捉点であると推定する。
【0056】
しかしながら、上述したような従来のグループ化の手法は、自車両VMに斜めから向かってくる他車両に対しては、適切にグループ化できない場合が考えられる。例えば、図4(b)に示すように、自車両VMに搭載された右側レーダ装置1Rが2つのターゲットPc、Pdを検出した場合を想定する。そして、上記右側レーダ装置1Rが検出した2つのターゲットPc、Pdに対して、自車両VMに最も近いターゲット(図4(b)に示すターゲットPc)を基準に、グループ化範囲枠を当てはめる。このようにすると、図4(b)に示すように、ターゲットPdは、グループ化範囲枠の枠内に入ることはない。つまり、図4(b)の破線で示したように、上記右側レーダ装置1Rが検出したターゲットPc、Pdが、仮に同一車両を検出することによって得られた捕捉点であった場合、各ターゲットPc、Pdは、同一車両を検出することによって得られた捕捉点であるのにも関わらず、2つのターゲットPc、Pdを同一車両であると推定することはできない。
【0057】
そこで、本実施形態に係る物体検出装置の車両制御ECU2のグループ化判定部23は、各レーダ装置1が検出したターゲットの動きの特徴を考慮し、自車両VMに対して対向してくるターゲットだけでなく、自車両VMに対して斜めから接近してくるターゲットに対しても適切にグループ化する。これによって、各レーダ装置1が検出したターゲットを精度良くグループ化することができる。以下、車両制御ECU2の動作について詳説する。
【0058】
以下、図5、図6および図7を参照して、本実施形態に係る車両制御ECU2の各部が行う動作の一例を説明する。なお、以下では、右側レーダ装置1Rがターゲットを捕捉した場合を想定し、当該右側レーダ装置1Rから信号を受け取った場合の処理の一例について説明する。
【0059】
図5、図6および図7は、本実施形態に係る物体検出装置の車両制御ECU2の各部において行われる処理の一例を示したフローチャートである。なお、図5、図6および図7に示したフローチャートの処理は、車両制御ECU2内に備わった所定のプログラムを当該車両制御ECU2が実行することによって行われる。さらに、図5、図6および図7に示した処理を実行するためのプログラムは、例えば車両制御ECU2の記憶領域に予め格納されている。また、車両制御ECU2の電源がONになったとき(例えば、自車両VMのドライバーが上記処理を実行させる処理を開始させる操作等を行った場合、自車両VMのイグニッションスイッチがONされた場合等)当該車両制御ECU2によって、図5、図6および図7に示したフローチャートの処理が実行される。
【0060】
図5のステップS501において、ターゲット処理部21は、初期化を実行する。具体的には、後述より明らかとなるが、ターゲット情報記憶部25にターゲット情報が記憶されていれば消去し、グループ化カウンタがクリアされていなければクリアする。
【0061】
ステップS502において、ターゲット処理部21は、右側レーダ装置1Rからターゲットを検出した信号を取得し、次のステップS503に処理を進める。なお、右側レーダ装置1Rがターゲットを検出しなかった場合(具体的には、自車両VM前方周辺にターゲットが存在しなかった場合)、当該右側レーダ装置1Rは、ターゲットは0(ターゲットは無し)であることを示す信号をターゲット処理部21に出力する。
【0062】
ステップS503において、ターゲット処理部21は、右側レーダ装置1Rが検出したターゲットはあるか否かを判断する。具体的には、ターゲット処理部21は、上記ステップS502で右側レーダ装置1Rから取得した信号に基づいて、右側レーダ装置1Rは、ターゲットを検出したか否かを判断する。そして、ターゲット処理部21によって、判断が肯定された場合(YES)、次のステップS504に処理を進め、判断が否定された場合(NO)、ステップS502に戻って再び信号を取得する。つまり、ターゲット処理部21は、右側レーダ装置1Rが実際にターゲットを検出しなければ、ステップS504へ進めることができず、右側レーダ装置1Rがターゲットを検出していない場合、ステップS502へ処理を戻すことになる。なお、当該ステップでの判断が否定される場合とは、例えば、右側レーダ装置1Rの検出範囲AR内に物体が存在しない場合などである。
【0063】
ステップS504において、ターゲット処理部21は、右側レーダ装置1Rから取得した信号を用いて、当該右側レーダ装置1Rが検出したターゲットにターゲット番号Trnを設定する。
【0064】
ターゲット番号Trnを設定した次のステップS505において、ターゲット処理部21は、右側レーダ装置1Rから取得した信号を用いて、ターゲット番号Trnで示されるターゲットのターゲット情報irnを生成する。例えば、上記ステップS504において、ターゲット処理部21によってターゲット番号Tr1が付されたターゲットを想定すると、当該ターゲット処理部21は、右側レーダ装置1Rからの信号を用いて、当該右側レーダ装置1Rに対するターゲットの相対距離、相対速度、および相対位置等を含む情報をターゲット情報ir1として生成する。つまり、ターゲット番号Tr1で表されるターゲットのターゲット情報をir1として表すことができる。そして、ターゲット処理部21は、次のステップS506に処理を進める。
【0065】
なお、ステップS504でターゲット番号Trnを付与するときは、ターゲット処理部21は、右側レーダ装置1Rがターゲットを検出した場合、すでに検出されたターゲットについては同じ番号Trnを付与する。また、右側レーダ装置1Rが新たにターゲットを検出した場合については、ターゲット情報記憶部25にターゲット情報irnが記憶されていないターゲット番号Trnの末番nうち、最も若い番号nを付与する。例えば、ターゲット番号Tr1で示されるターゲットを検出した後、右側レーダ装置1Rが新たにターゲットを検出したとき、ターゲット処理部21は、当該ターゲットをターゲット番号Tr2で示されるターゲットとして、ターゲット番号Trnを付与する。
【0066】
ステップS506において、ターゲット処理部21は、上記ステップS505で生成したターゲット毎のターゲット情報irnを時系列順にターゲット情報記憶部25に一時的に記憶する。具体的には、当該フローチャートの処理を繰り返すことによって、ターゲット情報記憶部25には、ターゲット番号Trnで示されるターゲット情報irnが時系列順に記憶される。例えば、ターゲット番号Tr1で示されるターゲットを例に説明すると、ターゲット情報記憶部25は、1つのターゲットにつき、K個のターゲット情報ir1を記憶可能とした場合、ターゲット情報記憶部25には、当該フローチャートの処理を繰り返すことによって、ターゲット番号Tr1で示されるターゲットのターゲット情報ir1が、ターゲット情報ir1(1)、ir1(2)、ir1(3)、ir1(4)、ir1(k)、ir(K−1)、…ir(K)と時系列的に記憶されていくことになる。なお、この場合、ターゲット番号Tr1で示されるターゲットについて、現時点での最新のターゲット情報は、ターゲット情報ir1(K)となる。そして、ターゲット処理部21は、ターゲット情報irnを時系列順にターゲット情報記憶部25に一時的に記憶した後、次のステップS507に処理を進める。
【0067】
ステップS507において、ターゲット処理部21は、j個以上のターゲット情報はあるか否かを判断する。つまり、ステップS507において、ターゲット処理部21は、ターゲット情報記憶部25に記憶されているターゲット番号Trnで示されるそれぞれのターゲット情報irn(k)のうち、j個以上のターゲット情報irnが記憶されているターゲットが少なくとも1つ以上あるか否かを判断する。
【0068】
なお、後述より明らかとなるが、進行方向予測部22は、ターゲットの進行方向を予測するために、現時点における最新のターゲット情報irn(K)を含む、当該ターゲットの過去のターゲット情報irnが複数個必要となる。そのため、ステップS507の処理において、ターゲット処理部21は、最新のターゲット情報irn(K)を含む、ターゲット情報irnを少なくとも予め定められた個数(以下、j個と称する)、ターゲット情報記憶部25に記憶されている否かを判断する。言い換えると、ターゲット処理部21は、ステップS507の処理において、各ターゲットについて、irn(K)から過去irn(K−(j−1))までのターゲット情報がターゲット情報記憶部25に記憶されているか否かを判断する。
【0069】
例えば、j=5とした場合、ステップS507の判断において、ターゲット番号Tr1で示されるターゲットのターゲット情報ir1の履歴(最新のターゲット情報を含む)が4個、ターゲット番号Tr2で示されるターゲットのターゲット情報ir2の履歴(最新のターゲット情報を含む)が5個、であった場合、5個(j個)以上のターゲット情報irnが記憶されているターゲットが少なくとも1つ以上あるので(この場合は、ターゲット番号Tr2で示されるターゲット)、当該ステップでの判断は肯定されることになる。つまり、ターゲット番号Tr2で示されるターゲットの現時点における最新のターゲット情報ir1(K)と過去のターゲット情報ir2(K−1)、ir2(K−2)、ir2(K−3)、ir2(K−4)の5つがターゲット情報記憶部25に記憶されていることになる。
【0070】
そして、ターゲット処理部21は、判断を肯定した場合(YES)、次のステップS508に処理を進める。つまり、ターゲット情報irn(K)から過去irn(K−(j−1))までのターゲット情報irnされているターゲットが1つでもあれば、判断は肯定されることになる。
【0071】
一方、ターゲット処理部21は、判断を否定した場合(NO)、ステップS502に処理を戻す。
【0072】
このように、ターゲット処理部21は、上記ステップS502〜ステップS507の処理を行うことによって、ターゲット番号Trnで示されるターゲットのターゲット情報irnを生成し、ターゲット情報記憶部25に記憶することができる。
【0073】
ステップS508において、進行方向予測部22は、当該フローチャートで用いる一時変数nを1に設定し次のステップS509に処理を進める。
【0074】
ステップS509において、ターゲット処理部21は、ターゲット番号Trnのターゲット情報irnはj個以上記憶済であるか否かを判断する。そして、ターゲット処理部21は、判断を肯定した場合(YES)、次のステップS510に処理を進める。一方、ターゲット処理部21は、判断を否定した場合(NO)、ステップS514に処理を進める。
【0075】
例えば、当該フローチャートの処理を繰り返すことにより、右側レーダ装置1Rが5つのターゲットを検出していた場合(ターゲット番号Tr1、Tr2、Tr3、Tr4、Tr5でそれぞれ示されるターゲット)、ステップS509において、ターゲット処理部21は、ターゲット番号Tr1で示されるターゲットのターゲット情報ir1はj個以上記憶済であるか否かを判断する。そして、ターゲット情報ir1はj個以上記憶済では無かった場合、判断を否定しステップS514に処理を進める。そして、ステップS514で判断が否定され(n≠N=5)、ステップS515でnに1を加算し、ターゲット番号Tr2で示されるターゲットのターゲット情報ir2はj個以上記憶済であるか否かを判断することになる。
【0076】
なお、以下では、図8に示すように、一例として、当該フローチャートの処理を繰り返すことにより、右側レーダ装置1Rが5つのターゲットを検出していた場合(ターゲット番号Tr1、Tr2、Tr3、Tr4、Tr5でそれぞれ示されるターゲット)、j個以上のターゲット情報が記憶されているものとして説明を続ける。
【0077】
ステップS510において、進行方向予測部22は、ターゲット番号Trnで示されるターゲットの推定進行方向VTrnを算出する。具体的には、進行方向予測部22は、現在の一時変数nに応じて、ターゲット番号Trnが付与されたターゲットの推定進行方向VTrnを算出する。ここで、当該ステップで進行方向予測部22が行う具体的な処理について、ターゲット番号Tr1で示されるターゲットを例に、図9を用いて説明する。
【0078】
図9は、ターゲット情報記憶部25に記憶されているターゲット番号Tr1で示されるターゲットの検出状況を示した図である。なお、説明を簡単にするために、一例として、進行方向予測部22がターゲット番号Tr1で示されるターゲットの進行方向を予測するために必要なターゲット情報irnの個数(ステップS507でのj個に相当)を5として説明する。つまり、ターゲット番号Tr1で示されるターゲットを例に説明すると、図9に示すように、最新のターゲット情報ir1(K)から過去のターゲット情報ir1(K−1)、ir1(K−2)、ir1(K−3)、ir1(K−4)を用いて、ターゲット番号Tr1で示されるターゲットの進行方向VTr1を予測する。
【0079】
具体的には、ステップS510において、進行方向予測部22は、ターゲット情報記憶部25に記憶されているターゲット情報ir1(K)〜ir1(K−4)を用いて、右側レーダ装置1Rによって検出された各ターゲットの位置について、任意の位置を原点とするに地上固定座標系(x、y)において、点をプロットする(図9参照)。そして、進行方向予測部22は、当該各点について最小二乗法等により近似直線の傾きを求める。さらに、進行方向予測部22は、最新のターゲット(具体的には、ターゲット情報ir1(K)で示される点)を通過し、かつ上記傾きを持つ直線を求め、当該直線をターゲットの予測進行方向VTr1を算出する。そして、進行方向予測部22は、次のステップS511に処理を進める。なお、ベクトルの向き(予測進行方向VTr1の矢印の向き)は、ターゲット番号Tr1で示されるターゲットが進む向きで設定される。
【0080】
図5の説明に戻って、図5のステップS511において、進行方向予測部22は、ターゲット番号Trnが付与されたターゲットの推定進行方向VTrnの信頼性を算出する。具体的には、上記ステップS510における進行方向VTrn算出処理で用いたターゲット情報irnが、第1の条件と第2の条件とを満たすか否かによって、ターゲット番号Trnで示されたターゲットの推定進行方向VTrnの信頼性を算出する。
【0081】
上記第1の条件と第2の条件とは、具体的に、以下の通りである。
第1の条件:「進行方向VTrnを予測するときに用いたターゲット情報irn(k)のうち、通常認識点は一定割合以上であったか」
第2の条件:「移動距離は予め定められた距離以上か」
【0082】
まず、第1の条件は、推定進行方向VTrnを予測するときに用いた、最新のターゲット情報irn(K)を含むターゲット情報irnの履歴のうち、通常認識点は一定割合以上か否かである。上述したように、ターゲット情報irnは、右側レーダ装置1Rから取得した信号を用いて、ターゲット処理部21によって算出される。しかしながら、例えば右側レーダ装置1Rから出力される信号の強度によっては、ターゲット情報irnに含まれる情報(自車両VMに対するターゲットの相対距離、相対速度、および相対位置等)のうち、一部の情報しか算出できない場合がある。つまり、右側レーダ装置1Rが検出したターゲット番号Trnで示されるターゲットについて、ターゲット番号Trnで示されるターゲットに関する全ての情報が、進行方向VTrnを予測するときに用いたターゲット情報irn(k)に一定割合以上含まれていたか否かを判断する。なお、ターゲット番号Trnで示されるターゲットに関する全ての情報が含まれているターゲット情報irn(k)を通常認識点という。そして、進行方向予測部22は、進行方向VTnを予測するときに用いたターゲット情報irn(k)を参照し、通常認識点は一定割合以上であったか否かを判断する。なお、上記通常認識点ではなくても、外挿点の場合も位置、速度情報等が含まれている場合がある。しかしながら、当該位置、速度情報等は、推測された情報であるので、上記第1の条件での判断には、外挿点から得られる情報を含めて判断はしない。
【0083】
次に、第2の条件は、移動距離は一定以上であるか否かである。ここで、ターゲットの移動距離とは、推定進行方向VTrnを算出する際に用いたターゲット情報irn(k)のうち、最新のターゲット情報と最古のターゲット情報を参照することによって得られる距離である。具体的には、図9に示した例で説明すると、推定進行方向VTr1を算出する際に用いたターゲット情報ir1(k)のうち、最新のターゲット情報ir1(K)と最古のターゲット情報ir(K−4)を参照することによって得られる距離である。つまり、進行方向予測部22は、ターゲット情報ir1(K−4)が記憶されて、現時点の最新のターゲット情報ir1(K)が記憶されるまでの間に、ターゲット番号Tr1で示されるターゲットの移動距離を算出する。そして、進行方向予測部22が、上記算出された移動距離は予め定められた距離以上であるか否かを判断する。なお、第2の条件で否定される場合とは、例えば、ターゲットの移動速度が遅くターゲット情報の履歴を参照した際に、ターゲットの位置にあまり変化がない場合である。つまり、ターゲットの移動距離が一定以上でないと、方向ベクトルの信頼性が低下するからである。
【0084】
進行方向予測部22は、ステップS511において、上述した第1の条件と第2の条件ともに満たした場合、判断を肯定(YES)し、ステップS512に処理を進める。一方、進行方向予測部22は、ステップS510の判断を否定した場合(NO)、ステップS514に処理を進める。なお、当該ステップでの判断が否定(NO)される場合とは、ターゲット番号Trnで示されるターゲットについて、当該ターゲットの推定進行方向VTrnを予測はしたものの、当該推定進行方向VTrnの信頼性は高くない場合である。逆に、第1の条件と第2の条件とを満たすターゲット番号Trnで示されるターゲットの推定進行方向VTrnは、信頼性が高いと言える。
【0085】
ステップS512において、進行方向予測部22は、ターゲット番号Trnで示されるターゲットで示されるターゲットの進行方向VTrnは、信頼性は高いと判断する。そして、進行方向予測部22は、ターゲット情報記憶部25にターゲット番号Trnで示されるターゲットの進行方向VTrnは信頼性高と記憶し、次のステップS513に処理を進める。
【0086】
ステップS513において、進行方向予測部22は、進行方向角度δrnを算出する。以下、図10を参照して、進行方向角度δrnについて説明する。図10は、ターゲット番号Trnで示されるターゲットの推定進行方向VTrnと自車両VMの進行方向VVとの関係を示した図である。図10に示すように、進行方向角度δrnは、任意の位置を原点とするに地上固定座標系において、推定進行方向VTrnの矢印方向に延ばした直線と自車両VMの進行方向VVとがなす角のことである。つまり、例えば、進行方向角度δrnが30°であった場合、自車両VMから、ターゲット番号Trnで示されるターゲットを見た場合、右前方から当該自車両VMに向かってターゲット番号Trnで示されるターゲットが進んでくることになる。なお、進行方向角度δrnは、ターゲット番号Trnで示されるターゲットの推定進行方向VTrnと自車両VMの進行方向VVとの向きが逆で、平行である場合に0°として示す。
【0087】
また、自車両VMの進行方向VVは、自車両VMに備わったセンサ等からの情報に基づいて進行方向予測部22によって算出される。例えば、進行方向予測部22は、自車両VMに搭載された車速センサ、ヨーレートセンサ、横加速度センサ等からの情報を用いて、これから自車両VMが進んでいくであろう方向、自車両VMの予測進行方向VVを算出する。
【0088】
図5の説明に戻って、進行方向予測部22は、進行方向角度δrnを算出(上記ステップS513)した後、次のステップS514に処理を進める。なお、進行方向予測部22は、上記ステップS513で算出した進行方向角度δrnを示す情報をターゲット情報記憶部25に一時的に保存する。
【0089】
ステップS514において、進行方向予測部22は、一時変数nが取得ターゲット数Nに到達したか否かを判断する。つまり、当該ステップS514において、進行方向予測部22は、右側レーダ装置1Rが検出した全てのターゲットについて(例えば、図8で示した例ではターゲット番号Tr1〜Tr5であるのでN=5)、推定進行方向VTrnの信頼性について判断している。そして、進行方向予測部22は、判断を肯定した場合(ステップS513でYES)、図6のステップS516に処理を進める。一方、進行方向予測部22は、判断を否定した場合(ステップS514でNO)、一時変数nに1を加算し(ステップS515)、上記ステップS509に戻って処理を繰り返す。
【0090】
このように、ステップS508〜ステップS515までの処理を繰り返すことによって進行方向予測部22は、右側レーダ装置1Rが検出した全てのターゲットについて、推定進行方向VTrnを算出し、当該推定進行方向VTrnの信頼性を判断する。さらに、進行方向予測部22は、推定進行方向VTrnの信頼性が高いと判断されたターゲットについて、進行方向角度δrnを算出する。
【0091】
図6のフローチャートの処理に進んで、図6のステップS516において、グループ化判定部23は、一時変数nを1に設定し次のステップS517に処理を進める。
【0092】
ステップS517において、グループ化判定部23は、ターゲット番号Trnで示されるターゲットの推定進行方向VTrnの信頼性は高か否かを判断する。具体的には、グループ化判定部23は、ターゲット情報記憶部25に記憶されている推定進行方向VTrnを示す情報を参照して、当該推定進行方向VTrnの信頼性は高いか否かを判断する。そして、グループ化判定部23は、判断を肯定した場合(YES)、次のステップS518に処理を進める。一方、グループ化判定部23は、判断を否定した場合(NO)、ステップS519に処理を進め、一時変数nに1を加算して、上記ステップS517に処理を戻す。
【0093】
ステップS518において、グループ化判定部23は、当該フローチャートで用いる一時変数mを1に設定し、次のステップS520に処理を進める。
【0094】
ステップS520において、グループ化判定部23は、一時変数nとmとが等しいか否かを判断する。そして、グループ化判定部23は、判断を肯定した場合(YES)、ステップS527に処理を進める。一方、グループ化判定部23は、当該ステップS520での処理を否定した場合(NO)、次のステップS521に処理を進める。
【0095】
なお、当該ステップS520での判断が肯定される場合について具体的に説明する。例えば、ステップS516でn=1と設定され、次のステップS517で判断が肯定(推定進行方向VTr1の信頼性高)された場合、グループ化判定部23は、当該ステップS517の判断を肯定した次のステップS518において、一時変数mを1に設定された場合である。つまり、グループ化判定部23は、ステップS520、ステップS527、ステップS528、ステップS529の処理を行うことにより、ステップS521の処理で、同一のターゲット番号が付されたターゲットどうしで距離差分の算出を行うことはなくなる。
【0096】
ステップS521において、グループ化判定部23は、ターゲット番号Trnで示されるターゲットからターゲット番号Trmで示されるターゲットへの距離差分を算出する。そして、グループ化判定部23は、次のステップS522において、上記差分を角度δrnだけ回転させる回転変換を行う。さらに、グループ化判定部23は、ステップS521の距離差分算出処理およびステップS522の回転変換処理の後、ステップS523において、ターゲット番号Trmで示されるターゲットは、枠SPの範囲内か否かを判断する。以下、図11および図12を用いて、一例として、n=1、m=2として、グループ化判定部23が行う上記ステップS521、ステップS522およびステップS523での処理について説明する。
【0097】
図11は、ターゲット番号Tr1で示されるターゲットとターゲット番号Tr2で示されるターゲットとを任意の位置を原点とするに地上固定座標系に示した図である。グループ化判定部23は、上記ステップS521およびステップS522での処理において、ターゲット番号Tr1で示されるターゲットを基準にして、ターゲット番号Tr2で示されるターゲットを角度δr1だけ回転変換する処理を行う。なお、このとき用いるターゲット情報ir1およびir2は最新のターゲット情報である。つまり、図11のターゲット番号Tr1で示されるターゲットの位置は、ターゲット情報ir1(K)に基づいて示されており、ターゲット番号Tr2で示されるターゲットの位置は、ターゲット情報ir2(K)に基づいて示されている。
【0098】
具体的な処理は、図11に示すように、グループ化判定部23は、まず、上記地上固定座標系において、ターゲット番号Tr1で示されるターゲットの位置を(x1、y1)、ターゲット番号Tr2で示されるターゲットの位置を(x2、y2)としてプロットする。そしてグループ化判定部23は、ターゲット番号Tr1で示されるターゲットからターゲット番号Tr2で示されるターゲットへの距離差分ΔL2を、Δx2およびΔy2に分解して求める。つまり、Δx2は、x2−x1で求めることができ、Δy2は、y2−y1で求めることができる。
【0099】
そして、グループ化判定部23は、Δx2およびΔy2を以下の数式(1)および(2)に代入することにより、回転変換後のターゲット番号Tr2で示されるターゲットの位置を(X2、Y2)を算出する。
X2=Δx2cosδr1+Δy2sinδr1 …(1)
Y2=-Δx2sinδr1+Δy2cosδr1 …(2)
なお、回転変換処理に用いる角度δrnは自車両VMに対する衝突直前角度にするため、回転に向きを持たせ符号を考慮して変換する。具体的には、自車両VMの右側からターゲットが接近してくる場合(右側レーダ装置1Rで検出した場合)は、当該ターゲットが右カーブを走行していると想定して、−の値で左回転させる。例えば、δr1が30°であった場合、上記数式(1)および数式(2)には、−30°として代入する。
【0100】
次に、グループ化判定部23は、ターゲット番号Trmで示されるターゲットは、枠SPの範囲内であるか否かを判断する(ステップS523)。図12は、ステップS523での処理を示す図である。なお、図12の説明においても、図11と同様に、一例として、n=1、m=2として、ターゲット番号Tr1で示されるターゲットを基準にして、回転変換処理されたターゲット番号Tr2で示されるターゲットを例に説明する。図12に示すように、ターゲット番号Tr1で示されるターゲットを基準に回転処理された後のターゲット番号Tr2で示されるターゲットが示されている。ステップS523の処理において、グループ化判定部23は、ターゲット番号Tr1で示されるターゲットを基準にして、回転処理後のターゲット番号Tr2で示されるターゲットが枠SPの範囲内であるか否かを判断する。例えば、図3に示したグループ化範囲枠を参考にし、ターゲット番号Tr1で示されるターゲットの位置から基準に左右にそれぞれ距離W、ターゲット番号Tr1で示されるターゲットの位置を基準に縦Hの範囲とする枠SPを設定する。そして、グループ化判定部23は、図12に示すように、ターゲット番号Tr1で示されるターゲットの位置を基準として、枠SPを当てはめる。つまり、ターゲット番号Tr1で示されるターゲットの位置を(x1、y1)とすると、点A(x1−W、y1+H)、点B(x1−W、y1)、点C(x1+W、y1+H)、点D(x1+W、y1)の4点で示される範囲を枠SPとして、回転処理後のターゲット番号Tr2で示されるターゲットが、当該枠SPに入るか否かを判断する(図12に示した例では、回転処理後のターゲット番号Tr2で示されるターゲットは、枠SPの範囲内である)。なお、上述したように、枠SPは、図3に示したグループ化範囲枠を参考にして設定したが、枠SPの大きさは、これに限られるものではない。つまり、予め検出対象となる物体の形状に応じた枠の大きさを適宜設定すればよい。
【0101】
図6の説明に戻って、グループ化判定部23は、ステップS523での処理を肯定した場合(YES)、次のステップS524に処理を進め、グループ化カウントをインクリメントする。一方、グループ化判定部23は、ステップS523での処理を肯定した否定(NO)、ステップS525に処理を進める。
【0102】
ステップS525において、グループ化判定部23は、カウンタの値は閾値以上であるか否かを判断する。そして、グループ化判定部23は、ステップS525での処理を肯定した場合(YES)、次のステップS526に処理を進めグループ化を確定する。一方、グループ化判定部23は、ステップS525での処理を否定した場合(NO)、ステップS527に処理を進める。
【0103】
ステップS527において、グループ化判定部23は、一時変数mは、右側レーダ装置1Rが取得したターゲットの個数(N個)に達したか否かを判断する。そして、グループ化判定部23は、ステップS527での判断を否定した場合(NO)、ステップS528においてmに1を加算しステップS520に処理を戻す。一方、グループ化判定部23は、ステップS527での判断を肯定した場合(YES)、図7のステップS529に処理を進める。
【0104】
ステップS529において、グループ化判定部23は、一時変数nは、右側レーダ装置1Rが取得したターゲットの個数(N個)に達したか否かを判断する。そして、グループ化判定部23は、ステップS529での判断を否定した場合(NO)、ステップS519においてnに1を加算しステップS517に処理を戻す。一方、グループ化判定部23は、ステップS529での判断を肯定した場合(YES)、ステップS530に処理を進める。
【0105】
このように、グループ化判定部23は、ステップS520、ステップS527、ステップS528、ステップS529の処理を行うことにより、推定進行方向の信頼性が高いとされた全てのターゲットのうち、もれなく2つのターゲットおいて、順次、距離差分算出および回転変換処理を行い、枠SPの範囲内であるか否かを判断することができる。
【0106】
さらに、グループ化判定部23は、ステップS524〜ステップS526の処理を行うことによって、同一範囲内(枠SP内)に所定回数以上入ったターゲットについてはグループ化の対象とする。ここで、グループ化判定部23が行うステップS524〜ステップS526での処理について、図13を用いて、より具体的に説明する。
【0107】
例えば、図13に示すように右側レーダ装置1Rが他車両VOAおよび他車両VOBから捕捉点を計5つ得たとする。つまり、図8に示した右側レーダ装置1Rは、5つターゲットを検出したことになる。そして、ターゲット処理部21によって、上述したように、当該検出されたターゲットについて、例えば、ターゲット番号Tr1〜Tr5を設定する。
【0108】
そして、進行方向予測部22は、ターゲット番号Tr1〜Tr5で示されるターゲット全てについて進行方向VTrnを予測する。さらに、進行方向予測部22は、当該予測された各ターゲットの進行方向VTrnに基づいて、進行方向角度δrnを算出する。なお、以下の説明では、また、ターゲット番号Tr1〜Tr5で示されるターゲットの予測進行方向VTr1〜VTr5は全て信頼性は高いものとする。
【0109】
グループ化判定部23は、上述したステップS518〜ステップS529の処理を行うことによって、全てのターゲットのうち、もれなく2つのターゲットおいて、順次、距離差分算出および回転変換処理を行い、枠SPの範囲内であるか否かを判断する。例えば、図13に示した、ターゲット番号Tr1で示されるターゲットを基準として、ターゲット番号Tr2およびターゲット番号Tr3で示されるターゲットを回転変換し枠SPの範囲内であるか否かを判断した場合、それぞれのターゲットは枠SPの範囲内に入ると考えられる。このとき、ターゲット番号Tr2で示されるターゲットのカウンタおよびターゲット番号Tr3で示されるターゲットのカウンタがそれぞれインクリメントされる。この処理を当該フローチャートの処理を繰り返し行うことで、ターゲット番号Tr2で示されるターゲットのカウンタおよびターゲット番号Tr3で示されるターゲットのカウンタの値がそれぞれ閾値以上であった場合、ターゲット番号Tr2およびターゲット番号Tr3で示されるターゲットは、ターゲット番号Tr1を基準として、グループ化されることになる。
【0110】
一方、ターゲット番号Tr2で示されるターゲットを基準として、ターゲット番号Tr1およびターゲット番号Tr3で示されるターゲットを回転変換すると、それぞれのターゲットは枠SPの範囲外になると考えられる。つまり、例えば、ターゲット番号Tr2で示されるターゲットからターゲット番号Tr1で示されるターゲットへの距離差分ΔL1(Δx1=x1−x2、Δy1=y1−y2)を算出した場合、その値は、負の値で算出されるため、図12で説明したような枠SPを当てはめると枠SPの範囲外になると考えられる。したがって、ターゲット番号Tr1およびターゲット番号Tr3で示されるターゲットは、ターゲット番号Tr2を基準としてグループ化されることはない。言い換えると、自車両VMに近いターゲットがグループ化の基準(代表ターゲット)にすることができる。
【0111】
同様に、ターゲット番号Tr4で示されるターゲットを基準として、ターゲット番号Tr5で示されるターゲットを回転変換すると、ターゲット番号Tr5で示されるターゲットは枠SPの範囲内になると考えられ、ターゲット番号Tr4で示されるターゲットはグループ化される。つまり、ターゲット番号Tr4で示されるターゲットを代表ターゲットとして、ターゲット番号Tr4、Tr5で示されるターゲットは、同一のグループであると確定される。
【0112】
このようにすれば、例えば図13に示すように、右側レーダ装置1Rが、他車両VOAと他車両VOBといった複数の物体から捕捉点を取得しても単一の物体であると推定してしまうことを防ぐことができる。
【0113】
図7の説明に戻って、その後、グループ化判定部23は、ステップS530において履歴を消去する。具体的には、グループ化判定部23は、カウンタの値が閾値以上であったターゲットについてのカウンタを0にする。また、グループ化判定部23は、ターゲット情報記憶部25に記憶されているターゲット情報irn(k)を、当該ターゲット情報記憶部25に記憶されているうちの過去のターゲット情報irn(k)から順次消去する。例えば、最新のターゲット情報irn(K)からj個だけ過去のターゲット情報irnを消去する。そして、ステップS531に処理を進める。
【0114】
ステップS531において、グループ化判定部23は、処理を終了するか否かを判断する。例えば、グループ化判定部23は、車両制御ECU2の電源がOFFになったとき(例えば、ドライバーが上記処理を実行させる処理を終了させる操作等を行った場合、自車両VMのイグニッションスイッチがOFFされた場合等)処理を終了する。一方、グループ化判定部23は、処理を継続すると判断した場合、上記ステップS502に戻って処理を繰り返す。
【0115】
なお、衝突判定部24は、右側レーダ装置1Rが検出したターゲットと自車両VMとが衝突する可能性があるか否かの判断は、グループ化された代表ターゲット、つまり図13で示した例では他車両VOAにつき自車両VMに最も近いターゲット番号Tr1で示されるターゲットのターゲット情報ir1(K)のみに基づいて判断してもよいし、右側レーダ装置1Rが検出したターゲットの全てのターゲット情報に基づいて総合的に判断してもよい。そして、衝突判定部24が、自車両VMとターゲットとが衝突する可能性がある、衝突は避けられないと判断した場合、当該衝突判定部24は、安全装置3に指示し、上述したような安全措置を講じる。
【0116】
このように、本実施形態に係る物体検出装置によれば、車両制御ECU2のグループ化判定部23は、各レーダ装置1が検出したターゲットの動きの特徴を考慮し、自車両VMに対して対向してくるターゲットだけでなく、自車両VMに対して斜めから接近してくるターゲットに対しても適切にグループ化する。これによって、各レーダ装置1が検出したターゲットを精度良くグループ化することができる。
【0117】
なお、上述の説明では、右側レーダ装置1Rが検出したターゲットについて説明したが、左側レーダ装置1Lがターゲットを検出した場合においても、適応できることはいうまでもない。この場合、ターゲット処理部21は、左側レーダ装置1Lが検出したターゲットについてターゲット番号Tlnを設定し、ターゲット情報irnを生成する。そして、進行方向予測部22は、左側レーダ装置1Lが検出した全てのターゲットについて、推定進行方向VTlnを算出し、当該推定進行方向VTlnの信頼性を判断する。さらに、進行方向予測部22は、推定進行方向VTlnの信頼性が高いと判断されたターゲットについて、進行方向角度δlnを算出し、グループ化判定部23は、推定進行方向の信頼性が高いとされた全てのターゲットのうち、もれなく2つのターゲットおいて、順次、距離差分算出および回転変換処理を行い、枠SPの範囲内であるか否かを判断すればよい。
【0118】
なお、回転変換処理を行う際は、自車両VMの左側からターゲットが接近してくる場合(左側レーダ装置1Lで検出した場合)は、当該ターゲットが左カーブを走行していると想定して、+の値で右回転させる。例えば、左側レーダ装置1Lがターゲットを検出し、当該検出されたターゲットについて進行方向を予測し、進行方向角度δlnを算出したとき、当該進行方向角度δlnが、30°であった場合(自車両VMからターゲットを見た場合、左前方から当該自車両VMに向かって進んでくる場合)、上記数式(1)および数式(2)には、30°として代入する。
【0119】
また、上記物体検出装置に加えて、自車両VMに例えば画像処理装置を搭載すれば、各レーダ装置1が検出しようとする物体の大きさに合わせて上記枠SPの長さHおよび幅Wを適宜変更することも考えられる。具体的には、例えば、自車両VMの前方周囲を撮像可能なカメラ等を含む画像処理装置を車両VMに搭載する。そして、上記カメラによって撮像された画像を処理することにより、自車両VMの前方周囲に存在する物体の大きさを推定する。例えば、一般的な乗用車よりも長さが長い物体が、自車両VMの前方周囲に存在すると上記画像処理装置が推定した場合、枠SPの大きさは長さHを大型車両(バス等)長さに設定してもよい。つまり、画像処理装置による推定結果を用いて、物体検出装置が処理を行えば、枠SPを大きくしたために、例えば、隣接車線を走る複数の乗用車を誤ってグループ化してしまうことを防ぐことができると考えられる。
【0120】
なお、上記画像処理装置によって、自車両VMの前方周囲に存在する物体の向きが正確に判定できれば、物体検出装置は、当該判定された物体の向きに基づいて進行方向角度を算出してもよい。
【0121】
上記の実施形態で説明した態様は、単に具体例を示すものであり、本願発明の技術的範囲を何ら限定するものではない。よって本願の効果を奏する範囲において、任意の構成を採用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明に係る、物体検出装置および物体検出方法は、レーダ装置が検出した物体を精度良くグループ化することのできる車載用レーダ装置等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】ドライバーサポートシステムの構成を示すブロック図
【図2】各レーダ装置1の搭載位置の一例を示す図
【図3】グループ化範囲枠を示す図
【図4】図3のグループ化範囲枠を用いた、従来のグループ化の手法を示した図
【図5】本実施形態に係る物体検出装置の車両制御ECU2の各部において行われる前半の処理の一例を示したフローチャート
【図6】本実施形態に係る物体検出装置の車両制御ECU2の各部において行われる半ばの処理の一例を示したフローチャート
【図7】本実施形態に係る物体検出装置の車両制御ECU2の各部において行われる後半の処理の一例を示したフローチャート
【図8】右側レーダ装置1Rにおけるターゲットの検出状況を示した図
【図9】ターゲット情報記憶部25に記憶されているターゲット番号Tr1で示されるターゲットの検出状況を示した図
【図10】ターゲット番号Trnで示されるターゲットの推定進行方向VTrnと自車両VMの進行方向VVとの関係を示した図
【図11】ターゲット番号Tr1で示されるターゲットとターゲット番号Tr2で示されるターゲットとを示した図
【図12】ステップS523での処理を示す図である。
【図13】右側レーダ装置1Rが他車両VOAおよび他車両VOBから捕捉点を計5つ得た場合を示す図
【図14】上記特許文献1に開示されている手法を説明するための図
【図15】上記特許文献1に開示されている手法を説明するための図
【符号の説明】
【0124】
1R…右側レーダ装置
1C…中央レーダ装置
1L…左側レーダ装置
2…車両制御ECU
21…ターゲット処理部
22…進行方向予測部
23…グループ化判定部
24…衝突判定部
25…ターゲット情報記憶部
3…安全装置
31…表示装置
32…警報装置
33…危険回避装置
34…衝突被害低減装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、当該車両周辺の物体を検出する物体検出装置であって、
前記車両周辺の物体を検出することによって得られた捕捉点を示す信号を用いて、当該捕捉点それぞれの移動方向を算出する移動方向算出手段と、
予め検出対象となる物体の形状に応じた枠および当該物体で想定されている進行方向として当該枠に進行基準方向を設定し、前記捕捉点のうち、前記移動方向に当該進行基準方向を合わせた当該枠内に存在する捕捉点を同じ物体の捕捉点として判定する判定手段とを備えた、物体検出装置。
【請求項2】
前記枠は、前記検出対象となる物体の形状を模した矩形枠とする、請求項1に記載の物体検出装置。
【請求項3】
前記判定手段は、前記矩形枠の長手方向を前記進行基準方向として設定する、請求項2に記載の物体検出装置。
【請求項4】
前記判定手段は、前記枠内に存在し、かつ、前記移動方向が同じ捕捉点を同じ物体の捕捉点として判定する、請求項1に記載の物体検出装置。
【請求項5】
前記判定手段は、前記車両周辺の物体を検出することによって得られた捕捉点から1つの捕捉点を選出する処理を行い、当該選出された捕捉点の移動方向に前記進行基準方向に合わせた前記枠内に存在する捕捉点のうち、前記選出された捕捉点を基準に前記車両より遠方に存在する捕捉点を同じ物体の捕捉点として判定する、請求項1に記載の物体検出装置。
【請求項6】
前記移動方向算出手段は、前記捕捉点の時系列的な移動方向の履歴を予め定められた関数で演算することによって、それぞれの前記捕捉点における現時点の移動方向を算出する、請求項1に記載の物体検出装置。
【請求項7】
前記移動方向算出手段は、さらに前記捕捉点それぞれの移動速度を算出し、
前記判定手段は、前記移動速度が閾値以上であり、かつ、前記捕捉点の履歴において当該捕捉点を得た信号強度が予め定められた強度以上であった割合が閾値以上である場合、当該捕捉点を前記判定の対象とする、請求項1に記載の物体検出装置。
【請求項8】
前記判定手段は、前記枠内に存在すると判定された回数が予め定められた回数に到達したとき、当該枠内の捕捉点を同じ物体の捕捉点として確定する、請求項1に記載の物体検出装置。
【請求項9】
前記同じ物体の捕捉点として判定された捕捉点のうち、何れか1つの捕捉点を用いて前記車両と当該物体とが衝突するか否かを判断する衝突判定手段を、さらに備える、請求項1に記載の物体検出装置。
【請求項10】
前記衝突判定手段は、前記同じ物体の捕捉点として判定された捕捉点のうち、前記車両に最も近い捕捉点を用いて前記車両と当該物体とが衝突するか否かを判断する、請求項9に記載の物体検出装置。
【請求項11】
前記判定手段は、前記矩形枠の長手方向の長さおよび短手方向の幅を、自動車の長さおよび幅に応じてそれぞれ設定する、請求項3に記載の物体検出装置。
【請求項12】
車両に搭載され、当該車両周辺の物体を検出する物体検出方法であって、
前記車両周辺の物体を検出することによって得られた捕捉点を示す信号を用いて、当該捕捉点それぞれの移動方向を算出する移動方向算出ステップと、
予め検出対象となる物体の形状に応じた枠および当該物体で想定されている進行方向として当該枠に進行基準方向を設定し、前記捕捉点のうち、前記移動方向に当該進行基準方向を合わせた当該枠内に存在する捕捉点を同じ物体の捕捉点として判定する判定ステップとを備えた、物体検出方法。
【請求項1】
車両に搭載され、当該車両周辺の物体を検出する物体検出装置であって、
前記車両周辺の物体を検出することによって得られた捕捉点を示す信号を用いて、当該捕捉点それぞれの移動方向を算出する移動方向算出手段と、
予め検出対象となる物体の形状に応じた枠および当該物体で想定されている進行方向として当該枠に進行基準方向を設定し、前記捕捉点のうち、前記移動方向に当該進行基準方向を合わせた当該枠内に存在する捕捉点を同じ物体の捕捉点として判定する判定手段とを備えた、物体検出装置。
【請求項2】
前記枠は、前記検出対象となる物体の形状を模した矩形枠とする、請求項1に記載の物体検出装置。
【請求項3】
前記判定手段は、前記矩形枠の長手方向を前記進行基準方向として設定する、請求項2に記載の物体検出装置。
【請求項4】
前記判定手段は、前記枠内に存在し、かつ、前記移動方向が同じ捕捉点を同じ物体の捕捉点として判定する、請求項1に記載の物体検出装置。
【請求項5】
前記判定手段は、前記車両周辺の物体を検出することによって得られた捕捉点から1つの捕捉点を選出する処理を行い、当該選出された捕捉点の移動方向に前記進行基準方向に合わせた前記枠内に存在する捕捉点のうち、前記選出された捕捉点を基準に前記車両より遠方に存在する捕捉点を同じ物体の捕捉点として判定する、請求項1に記載の物体検出装置。
【請求項6】
前記移動方向算出手段は、前記捕捉点の時系列的な移動方向の履歴を予め定められた関数で演算することによって、それぞれの前記捕捉点における現時点の移動方向を算出する、請求項1に記載の物体検出装置。
【請求項7】
前記移動方向算出手段は、さらに前記捕捉点それぞれの移動速度を算出し、
前記判定手段は、前記移動速度が閾値以上であり、かつ、前記捕捉点の履歴において当該捕捉点を得た信号強度が予め定められた強度以上であった割合が閾値以上である場合、当該捕捉点を前記判定の対象とする、請求項1に記載の物体検出装置。
【請求項8】
前記判定手段は、前記枠内に存在すると判定された回数が予め定められた回数に到達したとき、当該枠内の捕捉点を同じ物体の捕捉点として確定する、請求項1に記載の物体検出装置。
【請求項9】
前記同じ物体の捕捉点として判定された捕捉点のうち、何れか1つの捕捉点を用いて前記車両と当該物体とが衝突するか否かを判断する衝突判定手段を、さらに備える、請求項1に記載の物体検出装置。
【請求項10】
前記衝突判定手段は、前記同じ物体の捕捉点として判定された捕捉点のうち、前記車両に最も近い捕捉点を用いて前記車両と当該物体とが衝突するか否かを判断する、請求項9に記載の物体検出装置。
【請求項11】
前記判定手段は、前記矩形枠の長手方向の長さおよび短手方向の幅を、自動車の長さおよび幅に応じてそれぞれ設定する、請求項3に記載の物体検出装置。
【請求項12】
車両に搭載され、当該車両周辺の物体を検出する物体検出方法であって、
前記車両周辺の物体を検出することによって得られた捕捉点を示す信号を用いて、当該捕捉点それぞれの移動方向を算出する移動方向算出ステップと、
予め検出対象となる物体の形状に応じた枠および当該物体で想定されている進行方向として当該枠に進行基準方向を設定し、前記捕捉点のうち、前記移動方向に当該進行基準方向を合わせた当該枠内に存在する捕捉点を同じ物体の捕捉点として判定する判定ステップとを備えた、物体検出方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−156567(P2010−156567A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−333758(P2008−333758)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】
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