物体検出装置
【課題】検出時刻が異なる場合でも、物体の同じ部位の位置情報を取得することにより、より精度良く物体の位置情報を導出することができる物体検出装置を提供する。
【解決手段】物体検出装置10において、レーダ14が放射電磁波の反射波に基づいて他車両等200の物体の物標点を検出し、形状推定部26cが、レーダ14が検出した物標点に基づいて他車両200の少なくとも側面と前面とを推定し、位置情報導出部26dが、形状推定部26cが推定した側面と前面とから特定される代表点から他車両200の位置情報を導出する。これによれば、レーダ14の物標点の検出情報から検出誤差の影響を排除した生成情報である他車両200の側面及び前面を推定し、検出誤差を含む物標点そのものではなく、検出誤差に影響されない生成情報を利用するため、他車両200の特定部位の位置情報の時間変化を導出することができる。
【解決手段】物体検出装置10において、レーダ14が放射電磁波の反射波に基づいて他車両等200の物体の物標点を検出し、形状推定部26cが、レーダ14が検出した物標点に基づいて他車両200の少なくとも側面と前面とを推定し、位置情報導出部26dが、形状推定部26cが推定した側面と前面とから特定される代表点から他車両200の位置情報を導出する。これによれば、レーダ14の物標点の検出情報から検出誤差の影響を排除した生成情報である他車両200の側面及び前面を推定し、検出誤差を含む物標点そのものではなく、検出誤差に影響されない生成情報を利用するため、他車両200の特定部位の位置情報の時間変化を導出することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は物体検出装置に関し、特に、放射電磁波の反射波に基づいて検出された車両等の物体の物標点から、物体の位置情報を導出するための物体検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両等において、レーダ等の放射電磁波の反射波を用いた物体検出装置が提案されている。例えば、特許文献1では、放射電磁波の反射波から他車両の複数点の位置情報を検出する検出部を備え、検出された複数点の位置情報を平均した値の時間変化に基づき、他車両の進路を予測し、自車両との衝突判定を行う装置が提案されている。
【特許文献1】特開2003−232853号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、他車両等の進路予測の精度を向上させるためには、物体の同じ部位の時間変化を取得する必要がある。しかし、電波を利用した検出手段を利用した場合、例えば、A時点での検出位置に対して、B時点での検出位置は物体の表面(形状)に沿った方向にぶれ易く(物標点のぶれ)、それが検出誤差となる。すなわち、異なる時点で物体の同じ部位を物標点として検出することは困難である。上記の技術において、複数の物標点の位置情報を平均した値も上述のような物標点の検出誤差の影響を受けるため、精度良く進路予測や衝突判定を行うことが困難である。
【0004】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、検出時刻が異なる場合でも、物体の同じ部位の位置情報を取得することにより、より精度良く物体の位置情報を導出することができる物体検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、放射電磁波の反射波に基づいて物体の物標点を検出する物標点検出手段と、物標点検出手段が検出した物標点に基づいて、物体の形状を推定する形状推定手段と、形状推定手段が推定した物体の形状から特定される代表点から物体の位置情報を導出する位置情報導出手段と、を備えた物体検出装置である。
【0006】
この構成によれば、物標点検出手段が放射電磁波の反射波に基づいて物体の物標点を検出し、形状推定手段が物標点検出手段が検出した物標点に基づいて物体の形状を推定する。すなわち、上記構成では、物標点の検出情報から検出誤差の影響を排除した情報を生成する(以下、生成情報と称する)。上記構成では、推定される「物体の形状」が生成情報に相当する。物標点から物体の形状を推定することで、物標点の検出誤差による影響が小さい情報を生成することができる。また、上記構成では、位置情報導出手段が、形状推定手段が推定した形状から特定される代表点から物体の位置情報を導出する。すなわち、上記構成では、生成情報に基づいて物体の(特定の部位、角部等に対応する)位置情報を導出する。上記構成では、検出誤差を含む物標点そのものではなく、検出誤差に影響されない生成情報を利用することにより、物体の特定部位の位置情報を導出することが可能となる。上記構成によれば、物体の特定部位に対応した位置情報の時間変化を取得することが可能となるため、他車両等の進路予測や衝突判定の精度が向上する。
【0007】
この場合、形状推定手段は、物体の少なくとも第1の面と第2の面とを推定し、位置情報導出手段は、形状手段が推定した第1の面と第2の面とから特定される代表点から物体の位置情報を導出することが好適である。
【0008】
この構成によれば、形状推定手段が物標点検出手段が検出した物標点に基づいて物体の少なくとも第1の面と第2の面とを推定する。この構成によれば、物体の表面を推定することで物標点の検出誤差の影響を除去した情報を生成し、推定した少なくとも二つの面に基づいて代表点を特定することにより、物体の特定部位の位置情報を導出することが可能となる。
【0009】
この場合、位置情報導出手段は、第1の面と第2の面との交線に基づいて代表点を特定して物体の位置情報を導出する、ことが好適である。
【0010】
この構成によれば、第1の面と第2の面との交線は一意に定まるため、位置情報導出手段が第1の面と第2の面との交線に基づいて代表点を特定して物体の位置情報を導出することによって、一層精度良く物体の位置情報を導出することができる。
【0011】
なお、本発明において、「交線に基づく」とは、必ずしも交線上に代表点を特定することを意味せず、あくまでも交線に基づいて代表点を特定することができれば良い。例えば、交線上から所定距離をおいた部位に代表点を特定しても良い。
【0012】
一方、物体が車両である場合において、物標点検出手段が検出した物標点が車両の前面、側面及び後面のいずれに属するかを判別する物標点判別手段をさらに備えることが好適である。
【0013】
この構成によれば、物標点判別手段が物標点検出手段が検出した物標点が車両の前面、側面及び後面のいずれに属するかを判別するため、車両を検出する場合に、車両の前面、側面及び後面の推定を容易にすることができる。
【0014】
この場合、車両の移動方向を取得する移動方向取得手段をさらに備え、形状推定手段は、物標点判別手段が判別した車両の側面に属する物標点と、移動方向取得手段が取得した車両の移動方向とから、車両の移動方向に平行であって車両の側面に属する物標点を通る直線に基づいて車両の側面を推定することが好適である。
【0015】
この構成によれば、形状推定手段は、物標点判別手段が判別した車両の側面に属する物標点と、移動方向取得手段が取得した車両の移動方向とから、車両の移動方向に平行であって車両の側面に属する物標点を通る直線に基づいて車両の側面を推定するため、物標点のぶれの影響を受けずに、車両の側面を精度良く推定することが可能となる。
【0016】
さらに、車両の移動方向を取得する移動方向取得手段をさらに備え、形状推定手段は、物標点判別手段が判別した車両の前面及び後面のいずれかに属する物標点と、移動方向取得手段が取得した車両の移動方向とから、車両の移動方向に垂直であって車両の前面及び後面のいずれかに属する物標点を通る直線に基づいて車両の前面及び後面の少なくともいずれかを推定することが好適である。
【0017】
この構成によれば、形状推定手段は、物標点判別手段が判別した車両の前面及び後面のいずれかに属する物標点と、移動方向取得手段が取得した車両の移動方向とから、車両の移動方向に垂直であって車両の前面及び後面のいずれかに属する物標点を通る直線に基づいて車両の前面及び後面の少なくともいずれかを推定するため、物標点のぶれの影響を受けずに、車両の前面及び後面を精度良く推定することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の物体検出装置によれば、より精度良く物体の位置情報を導出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態に係る物体検出装置について添付図面を参照して説明する。
【0020】
図1は、第1実施形態に係る物体検出装置の構成を示すブロック図である。本実施形態の物体検出装置は車両に搭載され、レーダによる検出結果から他車両等の物体の位置、速度及び方向を推定することにより自車両との衝突判定を行うことによって、特に自車両の側方から接近する他車両等との衝突回避及び衝突時の被害軽減を図るためのものである。図1に示すように、物体検出装置10は、装置全体の制御を行う制御ECU12と、レーダ(物標点検出手段)14と、操舵角センサ16と、車速センサ18と、ブレーキECU20と、エアバックアクチュエータ22と、シートベルトアクチュエータ24とを備えている。
【0021】
制御ECU12には、レーダ14、操舵角センサ16及び車速センサ18等の各種センサが接続されている。この制御ECU12は、衝突判定部26を有している。衝突判定部26は、レーダ14、操舵角センサ16、及び車速センサ18により検出されたデータに基づいて、他車両等の物体の位置情報を導出し、他車両が自車両に衝突する部位を推定する。その詳細については、後述する。
【0022】
レーダ14は、例えば自車両の前面中央部や前部左右側部に設けられたミリ波レーダであり、他車両等の位置(方位及び距離)及び相対速度を他車両に関する情報として検出するためのものである。操舵角センサ16は、自車両の操舵角を検出し、車速センサ18は、自車両の車速を検出するためのものである。なお、レーダ14としては、レーザ光を利用したレーザレーダ等も適用することができる。
【0023】
また制御ECU12には、ブレーキECU20、エアバックアクチュエータ22、及びシートベルトアクチュエータ24が接続されている。
【0024】
ブレーキECU20は、ホイールシリンダの油圧を調整するブレーキアクチュエータに目標油圧信号を送り、ブレーキアクチュエータを制御してホイールシリンダの油圧を調整することで、自車両の減速制御を行う。
【0025】
エアバックアクチュエータ22は、インフレータを作動させ、サイドエアバックを展開させる。シートベルトアクチュエータ24は、シートベルトの巻取装置を作動させ、シートベルトを巻き取って緊張させる。
【0026】
以下、本実施形態における衝突判定部26について説明する。図2は、第1実施形態に係る衝突判定部の構成を示す機能ブロック図である。本実施形態の衝突判定部26は、物理的には、制御ECU26内におけるマイクロコンピュータのハードウェアおよびソフトウェアを利用して構成されている。図2に示すように、本実施形態の衝突判定部26は、物標点判別部(物標点判別手段)26a、移動方向取得部(移動方法取得手段)26b、形状推定部(形状推定手段)26c、位置情報導出部26d、アクチュエータ駆動部26eを有している。
【0027】
物標点判別部26aは、レーダ14が検出した物標点が他車両の前面、側面及び後面のいずれに属するかを判別するためのものである。移動方向取得部26bは、他車両の移動方向を取得するためのものである。
【0028】
形状推定部26cは、物標点判別部26aが判別した他車両の前面、側面及び後面のいずれかに係る物標点と、移動方向取得部26bが取得した他車両の移動方向とに基づいて、他車両の前面、側面及び後面のいずれかを推定するためのものである。
【0029】
位置情報導出部26dは、形状推定部26cが推定した他車両の前面、側面及び後面から特定される代表点から他車両の位置情報を導出するためのものである。アクチュエータ駆動部26eは、位置情報導出部26dが導出した他車両の位置情報に基づき、ブレーキECU20、エアバックアクチュエータ22及びシートベルトアクチュエータ24に対して駆動信号を供給するためのものである。
【0030】
次に、本実施形態の物体検出装置の動作について説明する。なお、以下の説明において面と面との交線については、平面図上では点として表わされるため、便宜上、交点として示す。図3は第1実施形態に係る物体検出装置の動作を示すフロー図であり、図4は第1実施形態に係る物標点及び代表点の導出方法を示す平面図である。図3及び4に示すように、レーダ14は、時刻t1における他車両200の物標点P11,P12及び時刻t1における他車両200の物標点P21を検出し、移動方向取得部26bは、他車両200の自車両100に対する接近角度を計算する(S11)。
【0031】
図4に示すように、本実施形態では時刻t1と時刻t2との対応する物標点である例えば物標点P11と物標点P21とを結んだ直線と、自車両100の進行方向との角度θを算出することにより、比較的正確に他車両200の自車両100に対する接近角度を計算することができる。あるいは本実施形態では、時刻t1及びt2における物標点の重心を求め、当該時刻t1及びt2における重心同士を結んだ直線と、自車両100の進行方向との角度θを算出するようにしても良い。もし、レーダ14が検出した物標点が少ない場合は、測定時間を長くし、最もレーダ波の反射が強く、他車両200の接近角度である可能性が高い角度θとする。
【0032】
次に、物標点判別部26aは、レーダ14が検出した物標点P11等から当該物標点が他車両200の前面、側面及び後面のいずれの面に属するかを判別し、形状推定部26cは、物標点判別部26aが判別した他車両200の前面、側面及び後面のいずれかに係る物標点P11と、移動方向取得部26bが取得した他車両200の移動方向である角度θとに基づいて、他車両200の前面、側面及び後面を推定し、形状の当てはめを行う(S12)。
【0033】
形状の当てはめは、図4に示すように、他車両200における自車両100に近い側の側面(第1の面)、及び他車両200における前面(第2の面)を推定して形状F1の当てはめを行うことができる。あるいは、図5に示すように、他車両200における自車両100に近い側の側面と前面とに加えて、他車両200における自車両100に遠い側の側面と後面とを含む長方形の形状F2を推定し、形状の当てはめを行っても良い。以下、他車両200の前面、左右側面及び後面からなる長方形を推定し、形状F2の当てはめを行っても良い。以下、長方形である形状F2の当てはめを行う手法について説明する。
【0034】
図6は、第1実施形態に係る車両の側面、前面及び後面を推定する手法を示す平面図である。図6に示すように、レーダ14によって検出された物標点P11〜P1nを通る角度θの直線同士の距離を計算し、最も互いの距離の離れた2直線である物標点P11を通る直線L1及び物標点P12を通るL2を決定する。次に、最も自車両100に近い直線L1に対し、最も自車両100から遠い直線L2上の最も自車両100に近い点P12から垂線を下ろし交点を代表点P1とする。さらに、物標点P11,P12及び代表点P1を頂点とする長方形の形状F2を当てはめる。これにより、他車両200の前面、側面及び後面を推定することができる。
【0035】
物標点P12が検出できない場合や、直線L1と直線L2との距離が小さい場合、あるいは図6に示すような同一直線L1上の物標点P11及びP12間の距離が一定値よりも小さい場合は、軽自動車程度の長さ(全長3.4m、全幅1.48m)を最小値として、長方形の形状F2を当てはめる。なお、代表点は、かならずしも長方形の形状F2の角部に限られず、長方形の形状F2の各辺の中点を代表点としても良いし、重心を代表点としても良い。
【0036】
図2に戻り、位置情報導出部26dが代表点P1,P2等に基づいて他車両200の位置情報(位置、速度及び方向)を導出し、自車両100との衝突判定を行う。アクチュエータ駆動部26eは、位置情報導出部26dによる衝突判定に基づいて、ブレーキECU20による自車両100の減速制御、エアバックアクチュエータ22によるサイドエアバックの展開、及びシートベルトアクチュエータ24によるシートベルトの緊張を行う(S13)。
【0037】
なお、上述の他車両200の自車両100に対する角度θは、時刻t1及びt2における代表点P1,P2を結ぶ直線と自車両100の進行方向とのなす角に修正して、再度上述の計算を行うことにより、導出される他車両200の位置情報の精度を向上させることができる。
【0038】
図8に示すように従来のレーダを用いた装置では、レーダによる物標点P11,P12及びP21等が他車両200の表面に沿った方向にぶれやすく、検出される物標点の数も変化するため、それらの重心Gの位置もぶれやすい。そのため、これらの物標点をそのまま用いて他車両200の位置情報を導出した場合、精度良く進路予測や衝突判定を行うことが困難である。
【0039】
一方、本実施形態によれば、レーダ14が放射電磁波の反射波に基づいて他車両200等の物体の物標点を検出し、形状推定部26cが、レーダ14が検出した物標点に基づいて他車両200の形状である少なくとも側面と前面とを推定する。つまり、本実施形態によれば、レーダ14の物標点の検出情報から検出誤差の影響を排除した生成情報を生成する。形状推定部26cが推定する他車両200の側面及び前面が生成情報に相当する。物標点から他車両200の側面及び前面を推定することで、物標点の検出誤差による影響が小さい情報を生成することができる。また、本実施形態によれば、位置情報導出部26dが、形状推定部26cが推定した側面と前面とから特定される代表点から他車両200の位置情報を導出する。すなわち、本実施形態では、生成情報に基づいて他車両200の(特定の部位、角部等に対応する)位置情報を導出する。本実施形態では、検出誤差を含む物標点そのものではなく、検出誤差に影響されない生成情報を利用することにより、他車両200の特定部位の位置情報を導出することが可能となる。本実施形態によれば、他車両200の特定部位に対応した位置情報の時間変化を取得することが可能となるため、他車両200の進路予測や衝突判定の精度が向上する。
【0040】
特に、本実施形態においては、側面と前面との交点(交線)は一意に定まるため、位置情報導出部26dが側面と前面との交点に基づいて代表点を特定して他車両の位置情報を導出することによって、一層精度良く物体の位置情報を導出することができる。
【0041】
さらに、本実施形態によれば、形状推定部26cは、物標点判別部26aが判別した他車両200の側面に属する物標点と、移動方向取得部26bが取得した他車両200の移動方向とから、他車両200の移動方向に平行であって車両の側面に属する物標点を通る直線に基づいて車両の側面を推定するため、物標点のぶれの影響を受けずに、他車両の側面を精度良く推定することが可能となる。
【0042】
加えて、本実施形態によれば、形状推定部26cは、物標点判別部26aが判別した他車両200の前面及び後面に属する物標点と、移動方向取得部26bが取得した他車両200の移動方向とから、他車両200の移動方向に垂直であって他車両200の前面及び後面に属する物標点を通る直線に基づいて他車両200の前面及び後面を推定するため、物標点のぶれの影響を受けずに、他車両200の前面及び後面を精度良く推定することが可能となる。
【0043】
以下、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態においては、他車両200の大きさを推定し、当該推定した大きさを用いて衝突判定を行う点が上記第1実施形態とは異なっている。図10に示すように、本実施形態では長方形の形状F2における代表点P1a及びP1bを車両200における最大の長さとして衝突判定を行う。
【0044】
以下、本実施形態の物体検出装置の動作について説明する。図10は第2実施形態に係る物体検出装置の動作を示すフロー図である。図10に示すように、本実施形態においては、他車両200と自車両100とのコース判定を行う(S21)。図11に示すように、他車両200のコース判定は、第1実施形態のように、形状推定部26cが他車両200に対して長方形の形状F2の当てはめを行い、長方形の頂点である代表点(左前部)TFL,代表点(左後部)TRL,代表点(右前部)TFR及び代表点(右後部)TRRを特定する。そして、位置情報取得部26dが、代表点TFL,TRLが通過すると推定される直線TLと、代表点TFR,TRRが通過すると推定される直線TRとを導出する。自車両100についても同様に、左前部の代表点SFL,左後部の代表点SRL,右前部の代表点SER及び右後部の代表点SRRを特定し、代表点SFL,SRLが通過すると推定される曲線SLと、代表点SER,SRRが通過すると推定される曲線SRとを導出する。
【0045】
次に位置情報取得部26dは、直線TL,TRと曲線SL,SRとの交点CP1〜CP4を算出する(S22)。直線TL,TRと曲線SL,SRとの交点については、一本の直線と一本の曲線との交点が2点以上となる場合もあり得るが、その場合は他車両200に近い側の交点のみを抽出する。直線TL,TRと曲線SL,SRとの交点が一点でもあれば、コースとしては衝突する可能性があると判定し、時間判定を行う。
【0046】
位置情報取得部26dは、時間判定を行う(S23)。時間判定は、他車両200と自車両100とがコース上において時間的な重なりがあるか否かを判定するものである。時間判定において、位置情報取得部26dは下記の4つの時刻を計算する。
(1)自車両到達時間STI
・自車両100の前面の代表点SFL,SFRと交点CP1〜CP4との距離が最も短い方と自車両100の速度から計算する。
(2)自車両通過時間STO
・自車両100の後面の代表点SRL,SRRと交点CP1〜CP4との距離が最も長い方と自車両100の速度から計算する。
(3)他車両到達時間TTI
・他車両200の前面の代表点TFL,TFRと交点CP1〜CP4との距離が最も短い方と他車両200の速度から計算する。
(4)他車両通過時間TTO
・他車両200の後面の代表点TRL,TRRと交点CP1〜CP4との距離が最も長い方と他車両200の速度から計算する。
【0047】
図12に示すケース1及び2のように、自車両到達時間STIから自車両通過時間STOまでの時間と、他車両到達時間TTIから他車両通過時間TTOまでの時間との間に重なり合いがあるときは、他車両200と自車両100とは衝突するとみなし(S24)、実際に自車両100のどの部分に衝突するかを判定する(S25)。一方、ケース3及び4のように、自車両到達時間STIから自車両通過時間STOまでの時間と、他車両到達時間TTIから他車両通過時間TTOまでの時間との間に重なり合いがないときは、車両200と自車両100とは衝突しないと判定する(S25)。その後の、アクチュエータ駆動部26eによる動作は第1実施例と同様に行う
【0048】
本実施形態によれば、衝突判定を代表点のみで行う方法よりも衝突判定の精度を向上させることができる。すなわち、図13に示すように点13のみで衝突判定を行った場合、実際には自車両100のキャビンへ衝突する可能性があるにもかかわらず、自車両100の後部への衝突と判断される場合がある。一方、本実施形態によれば、他車両200の車幅も計算に含めて衝突判定を行うため、図13に示すような場合であっても、自車両100のキャビンへの衝突を予測することができる。
【0049】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】第1実施形態に係る物体検出装置の構成を示すブロック図である。
【図2】第1実施形態に係る衝突判定部の構成を示す機能ブロック図である。
【図3】第1実施形態に係る物体検出装置の動作を示すフロー図である。
【図4】第1実施形態に係る物標点及び代表点の導出方法を示す平面図である。
【図5】第1実施形態に係る物標点及び代表点の導出方法の別の例を示す平面図である。
【図6】第1実施形態に係る車両の側面、前面及び後面を推定する手法を示す平面図である。
【図7】第1実施形態に係る車両の側面、前面及び後面を推定する手法の別の例を示す平面図である。
【図8】従来の物標点から車両の位置情報を導出する手法を示す平面図である。
【図9】第2実施形態に係る代表点から車両の大きさを推定する手法を示す平面図である。
【図10】第2実施形態に係る音声認識装置の動作を示すフロー図である。
【図11】第2実施形態に係る衝突判定を示す平面図である。
【図12】第2実施形態に係る時間判定を示すタイミングチャートである。
【図13】自車両に他車両が衝突する様子を示す平面図である。
【符号の説明】
【0051】
10…物体検出装置、12…制御ECU、14…レーダ、16…操舵角センサ、18…車速センサ、20…ブレーキECU、22…エアバックアクチュエータ、24…シートベルトアクチュエータ、26…衝突判定部、26a…物標点判別部、26b…移動方向取得部、26c…形状推定部、26d…位置情報導出部、26e…アクチュエータ駆動部、100…自車両、200…他車両。
【技術分野】
【0001】
本発明は物体検出装置に関し、特に、放射電磁波の反射波に基づいて検出された車両等の物体の物標点から、物体の位置情報を導出するための物体検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両等において、レーダ等の放射電磁波の反射波を用いた物体検出装置が提案されている。例えば、特許文献1では、放射電磁波の反射波から他車両の複数点の位置情報を検出する検出部を備え、検出された複数点の位置情報を平均した値の時間変化に基づき、他車両の進路を予測し、自車両との衝突判定を行う装置が提案されている。
【特許文献1】特開2003−232853号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、他車両等の進路予測の精度を向上させるためには、物体の同じ部位の時間変化を取得する必要がある。しかし、電波を利用した検出手段を利用した場合、例えば、A時点での検出位置に対して、B時点での検出位置は物体の表面(形状)に沿った方向にぶれ易く(物標点のぶれ)、それが検出誤差となる。すなわち、異なる時点で物体の同じ部位を物標点として検出することは困難である。上記の技術において、複数の物標点の位置情報を平均した値も上述のような物標点の検出誤差の影響を受けるため、精度良く進路予測や衝突判定を行うことが困難である。
【0004】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、検出時刻が異なる場合でも、物体の同じ部位の位置情報を取得することにより、より精度良く物体の位置情報を導出することができる物体検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、放射電磁波の反射波に基づいて物体の物標点を検出する物標点検出手段と、物標点検出手段が検出した物標点に基づいて、物体の形状を推定する形状推定手段と、形状推定手段が推定した物体の形状から特定される代表点から物体の位置情報を導出する位置情報導出手段と、を備えた物体検出装置である。
【0006】
この構成によれば、物標点検出手段が放射電磁波の反射波に基づいて物体の物標点を検出し、形状推定手段が物標点検出手段が検出した物標点に基づいて物体の形状を推定する。すなわち、上記構成では、物標点の検出情報から検出誤差の影響を排除した情報を生成する(以下、生成情報と称する)。上記構成では、推定される「物体の形状」が生成情報に相当する。物標点から物体の形状を推定することで、物標点の検出誤差による影響が小さい情報を生成することができる。また、上記構成では、位置情報導出手段が、形状推定手段が推定した形状から特定される代表点から物体の位置情報を導出する。すなわち、上記構成では、生成情報に基づいて物体の(特定の部位、角部等に対応する)位置情報を導出する。上記構成では、検出誤差を含む物標点そのものではなく、検出誤差に影響されない生成情報を利用することにより、物体の特定部位の位置情報を導出することが可能となる。上記構成によれば、物体の特定部位に対応した位置情報の時間変化を取得することが可能となるため、他車両等の進路予測や衝突判定の精度が向上する。
【0007】
この場合、形状推定手段は、物体の少なくとも第1の面と第2の面とを推定し、位置情報導出手段は、形状手段が推定した第1の面と第2の面とから特定される代表点から物体の位置情報を導出することが好適である。
【0008】
この構成によれば、形状推定手段が物標点検出手段が検出した物標点に基づいて物体の少なくとも第1の面と第2の面とを推定する。この構成によれば、物体の表面を推定することで物標点の検出誤差の影響を除去した情報を生成し、推定した少なくとも二つの面に基づいて代表点を特定することにより、物体の特定部位の位置情報を導出することが可能となる。
【0009】
この場合、位置情報導出手段は、第1の面と第2の面との交線に基づいて代表点を特定して物体の位置情報を導出する、ことが好適である。
【0010】
この構成によれば、第1の面と第2の面との交線は一意に定まるため、位置情報導出手段が第1の面と第2の面との交線に基づいて代表点を特定して物体の位置情報を導出することによって、一層精度良く物体の位置情報を導出することができる。
【0011】
なお、本発明において、「交線に基づく」とは、必ずしも交線上に代表点を特定することを意味せず、あくまでも交線に基づいて代表点を特定することができれば良い。例えば、交線上から所定距離をおいた部位に代表点を特定しても良い。
【0012】
一方、物体が車両である場合において、物標点検出手段が検出した物標点が車両の前面、側面及び後面のいずれに属するかを判別する物標点判別手段をさらに備えることが好適である。
【0013】
この構成によれば、物標点判別手段が物標点検出手段が検出した物標点が車両の前面、側面及び後面のいずれに属するかを判別するため、車両を検出する場合に、車両の前面、側面及び後面の推定を容易にすることができる。
【0014】
この場合、車両の移動方向を取得する移動方向取得手段をさらに備え、形状推定手段は、物標点判別手段が判別した車両の側面に属する物標点と、移動方向取得手段が取得した車両の移動方向とから、車両の移動方向に平行であって車両の側面に属する物標点を通る直線に基づいて車両の側面を推定することが好適である。
【0015】
この構成によれば、形状推定手段は、物標点判別手段が判別した車両の側面に属する物標点と、移動方向取得手段が取得した車両の移動方向とから、車両の移動方向に平行であって車両の側面に属する物標点を通る直線に基づいて車両の側面を推定するため、物標点のぶれの影響を受けずに、車両の側面を精度良く推定することが可能となる。
【0016】
さらに、車両の移動方向を取得する移動方向取得手段をさらに備え、形状推定手段は、物標点判別手段が判別した車両の前面及び後面のいずれかに属する物標点と、移動方向取得手段が取得した車両の移動方向とから、車両の移動方向に垂直であって車両の前面及び後面のいずれかに属する物標点を通る直線に基づいて車両の前面及び後面の少なくともいずれかを推定することが好適である。
【0017】
この構成によれば、形状推定手段は、物標点判別手段が判別した車両の前面及び後面のいずれかに属する物標点と、移動方向取得手段が取得した車両の移動方向とから、車両の移動方向に垂直であって車両の前面及び後面のいずれかに属する物標点を通る直線に基づいて車両の前面及び後面の少なくともいずれかを推定するため、物標点のぶれの影響を受けずに、車両の前面及び後面を精度良く推定することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の物体検出装置によれば、より精度良く物体の位置情報を導出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態に係る物体検出装置について添付図面を参照して説明する。
【0020】
図1は、第1実施形態に係る物体検出装置の構成を示すブロック図である。本実施形態の物体検出装置は車両に搭載され、レーダによる検出結果から他車両等の物体の位置、速度及び方向を推定することにより自車両との衝突判定を行うことによって、特に自車両の側方から接近する他車両等との衝突回避及び衝突時の被害軽減を図るためのものである。図1に示すように、物体検出装置10は、装置全体の制御を行う制御ECU12と、レーダ(物標点検出手段)14と、操舵角センサ16と、車速センサ18と、ブレーキECU20と、エアバックアクチュエータ22と、シートベルトアクチュエータ24とを備えている。
【0021】
制御ECU12には、レーダ14、操舵角センサ16及び車速センサ18等の各種センサが接続されている。この制御ECU12は、衝突判定部26を有している。衝突判定部26は、レーダ14、操舵角センサ16、及び車速センサ18により検出されたデータに基づいて、他車両等の物体の位置情報を導出し、他車両が自車両に衝突する部位を推定する。その詳細については、後述する。
【0022】
レーダ14は、例えば自車両の前面中央部や前部左右側部に設けられたミリ波レーダであり、他車両等の位置(方位及び距離)及び相対速度を他車両に関する情報として検出するためのものである。操舵角センサ16は、自車両の操舵角を検出し、車速センサ18は、自車両の車速を検出するためのものである。なお、レーダ14としては、レーザ光を利用したレーザレーダ等も適用することができる。
【0023】
また制御ECU12には、ブレーキECU20、エアバックアクチュエータ22、及びシートベルトアクチュエータ24が接続されている。
【0024】
ブレーキECU20は、ホイールシリンダの油圧を調整するブレーキアクチュエータに目標油圧信号を送り、ブレーキアクチュエータを制御してホイールシリンダの油圧を調整することで、自車両の減速制御を行う。
【0025】
エアバックアクチュエータ22は、インフレータを作動させ、サイドエアバックを展開させる。シートベルトアクチュエータ24は、シートベルトの巻取装置を作動させ、シートベルトを巻き取って緊張させる。
【0026】
以下、本実施形態における衝突判定部26について説明する。図2は、第1実施形態に係る衝突判定部の構成を示す機能ブロック図である。本実施形態の衝突判定部26は、物理的には、制御ECU26内におけるマイクロコンピュータのハードウェアおよびソフトウェアを利用して構成されている。図2に示すように、本実施形態の衝突判定部26は、物標点判別部(物標点判別手段)26a、移動方向取得部(移動方法取得手段)26b、形状推定部(形状推定手段)26c、位置情報導出部26d、アクチュエータ駆動部26eを有している。
【0027】
物標点判別部26aは、レーダ14が検出した物標点が他車両の前面、側面及び後面のいずれに属するかを判別するためのものである。移動方向取得部26bは、他車両の移動方向を取得するためのものである。
【0028】
形状推定部26cは、物標点判別部26aが判別した他車両の前面、側面及び後面のいずれかに係る物標点と、移動方向取得部26bが取得した他車両の移動方向とに基づいて、他車両の前面、側面及び後面のいずれかを推定するためのものである。
【0029】
位置情報導出部26dは、形状推定部26cが推定した他車両の前面、側面及び後面から特定される代表点から他車両の位置情報を導出するためのものである。アクチュエータ駆動部26eは、位置情報導出部26dが導出した他車両の位置情報に基づき、ブレーキECU20、エアバックアクチュエータ22及びシートベルトアクチュエータ24に対して駆動信号を供給するためのものである。
【0030】
次に、本実施形態の物体検出装置の動作について説明する。なお、以下の説明において面と面との交線については、平面図上では点として表わされるため、便宜上、交点として示す。図3は第1実施形態に係る物体検出装置の動作を示すフロー図であり、図4は第1実施形態に係る物標点及び代表点の導出方法を示す平面図である。図3及び4に示すように、レーダ14は、時刻t1における他車両200の物標点P11,P12及び時刻t1における他車両200の物標点P21を検出し、移動方向取得部26bは、他車両200の自車両100に対する接近角度を計算する(S11)。
【0031】
図4に示すように、本実施形態では時刻t1と時刻t2との対応する物標点である例えば物標点P11と物標点P21とを結んだ直線と、自車両100の進行方向との角度θを算出することにより、比較的正確に他車両200の自車両100に対する接近角度を計算することができる。あるいは本実施形態では、時刻t1及びt2における物標点の重心を求め、当該時刻t1及びt2における重心同士を結んだ直線と、自車両100の進行方向との角度θを算出するようにしても良い。もし、レーダ14が検出した物標点が少ない場合は、測定時間を長くし、最もレーダ波の反射が強く、他車両200の接近角度である可能性が高い角度θとする。
【0032】
次に、物標点判別部26aは、レーダ14が検出した物標点P11等から当該物標点が他車両200の前面、側面及び後面のいずれの面に属するかを判別し、形状推定部26cは、物標点判別部26aが判別した他車両200の前面、側面及び後面のいずれかに係る物標点P11と、移動方向取得部26bが取得した他車両200の移動方向である角度θとに基づいて、他車両200の前面、側面及び後面を推定し、形状の当てはめを行う(S12)。
【0033】
形状の当てはめは、図4に示すように、他車両200における自車両100に近い側の側面(第1の面)、及び他車両200における前面(第2の面)を推定して形状F1の当てはめを行うことができる。あるいは、図5に示すように、他車両200における自車両100に近い側の側面と前面とに加えて、他車両200における自車両100に遠い側の側面と後面とを含む長方形の形状F2を推定し、形状の当てはめを行っても良い。以下、他車両200の前面、左右側面及び後面からなる長方形を推定し、形状F2の当てはめを行っても良い。以下、長方形である形状F2の当てはめを行う手法について説明する。
【0034】
図6は、第1実施形態に係る車両の側面、前面及び後面を推定する手法を示す平面図である。図6に示すように、レーダ14によって検出された物標点P11〜P1nを通る角度θの直線同士の距離を計算し、最も互いの距離の離れた2直線である物標点P11を通る直線L1及び物標点P12を通るL2を決定する。次に、最も自車両100に近い直線L1に対し、最も自車両100から遠い直線L2上の最も自車両100に近い点P12から垂線を下ろし交点を代表点P1とする。さらに、物標点P11,P12及び代表点P1を頂点とする長方形の形状F2を当てはめる。これにより、他車両200の前面、側面及び後面を推定することができる。
【0035】
物標点P12が検出できない場合や、直線L1と直線L2との距離が小さい場合、あるいは図6に示すような同一直線L1上の物標点P11及びP12間の距離が一定値よりも小さい場合は、軽自動車程度の長さ(全長3.4m、全幅1.48m)を最小値として、長方形の形状F2を当てはめる。なお、代表点は、かならずしも長方形の形状F2の角部に限られず、長方形の形状F2の各辺の中点を代表点としても良いし、重心を代表点としても良い。
【0036】
図2に戻り、位置情報導出部26dが代表点P1,P2等に基づいて他車両200の位置情報(位置、速度及び方向)を導出し、自車両100との衝突判定を行う。アクチュエータ駆動部26eは、位置情報導出部26dによる衝突判定に基づいて、ブレーキECU20による自車両100の減速制御、エアバックアクチュエータ22によるサイドエアバックの展開、及びシートベルトアクチュエータ24によるシートベルトの緊張を行う(S13)。
【0037】
なお、上述の他車両200の自車両100に対する角度θは、時刻t1及びt2における代表点P1,P2を結ぶ直線と自車両100の進行方向とのなす角に修正して、再度上述の計算を行うことにより、導出される他車両200の位置情報の精度を向上させることができる。
【0038】
図8に示すように従来のレーダを用いた装置では、レーダによる物標点P11,P12及びP21等が他車両200の表面に沿った方向にぶれやすく、検出される物標点の数も変化するため、それらの重心Gの位置もぶれやすい。そのため、これらの物標点をそのまま用いて他車両200の位置情報を導出した場合、精度良く進路予測や衝突判定を行うことが困難である。
【0039】
一方、本実施形態によれば、レーダ14が放射電磁波の反射波に基づいて他車両200等の物体の物標点を検出し、形状推定部26cが、レーダ14が検出した物標点に基づいて他車両200の形状である少なくとも側面と前面とを推定する。つまり、本実施形態によれば、レーダ14の物標点の検出情報から検出誤差の影響を排除した生成情報を生成する。形状推定部26cが推定する他車両200の側面及び前面が生成情報に相当する。物標点から他車両200の側面及び前面を推定することで、物標点の検出誤差による影響が小さい情報を生成することができる。また、本実施形態によれば、位置情報導出部26dが、形状推定部26cが推定した側面と前面とから特定される代表点から他車両200の位置情報を導出する。すなわち、本実施形態では、生成情報に基づいて他車両200の(特定の部位、角部等に対応する)位置情報を導出する。本実施形態では、検出誤差を含む物標点そのものではなく、検出誤差に影響されない生成情報を利用することにより、他車両200の特定部位の位置情報を導出することが可能となる。本実施形態によれば、他車両200の特定部位に対応した位置情報の時間変化を取得することが可能となるため、他車両200の進路予測や衝突判定の精度が向上する。
【0040】
特に、本実施形態においては、側面と前面との交点(交線)は一意に定まるため、位置情報導出部26dが側面と前面との交点に基づいて代表点を特定して他車両の位置情報を導出することによって、一層精度良く物体の位置情報を導出することができる。
【0041】
さらに、本実施形態によれば、形状推定部26cは、物標点判別部26aが判別した他車両200の側面に属する物標点と、移動方向取得部26bが取得した他車両200の移動方向とから、他車両200の移動方向に平行であって車両の側面に属する物標点を通る直線に基づいて車両の側面を推定するため、物標点のぶれの影響を受けずに、他車両の側面を精度良く推定することが可能となる。
【0042】
加えて、本実施形態によれば、形状推定部26cは、物標点判別部26aが判別した他車両200の前面及び後面に属する物標点と、移動方向取得部26bが取得した他車両200の移動方向とから、他車両200の移動方向に垂直であって他車両200の前面及び後面に属する物標点を通る直線に基づいて他車両200の前面及び後面を推定するため、物標点のぶれの影響を受けずに、他車両200の前面及び後面を精度良く推定することが可能となる。
【0043】
以下、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態においては、他車両200の大きさを推定し、当該推定した大きさを用いて衝突判定を行う点が上記第1実施形態とは異なっている。図10に示すように、本実施形態では長方形の形状F2における代表点P1a及びP1bを車両200における最大の長さとして衝突判定を行う。
【0044】
以下、本実施形態の物体検出装置の動作について説明する。図10は第2実施形態に係る物体検出装置の動作を示すフロー図である。図10に示すように、本実施形態においては、他車両200と自車両100とのコース判定を行う(S21)。図11に示すように、他車両200のコース判定は、第1実施形態のように、形状推定部26cが他車両200に対して長方形の形状F2の当てはめを行い、長方形の頂点である代表点(左前部)TFL,代表点(左後部)TRL,代表点(右前部)TFR及び代表点(右後部)TRRを特定する。そして、位置情報取得部26dが、代表点TFL,TRLが通過すると推定される直線TLと、代表点TFR,TRRが通過すると推定される直線TRとを導出する。自車両100についても同様に、左前部の代表点SFL,左後部の代表点SRL,右前部の代表点SER及び右後部の代表点SRRを特定し、代表点SFL,SRLが通過すると推定される曲線SLと、代表点SER,SRRが通過すると推定される曲線SRとを導出する。
【0045】
次に位置情報取得部26dは、直線TL,TRと曲線SL,SRとの交点CP1〜CP4を算出する(S22)。直線TL,TRと曲線SL,SRとの交点については、一本の直線と一本の曲線との交点が2点以上となる場合もあり得るが、その場合は他車両200に近い側の交点のみを抽出する。直線TL,TRと曲線SL,SRとの交点が一点でもあれば、コースとしては衝突する可能性があると判定し、時間判定を行う。
【0046】
位置情報取得部26dは、時間判定を行う(S23)。時間判定は、他車両200と自車両100とがコース上において時間的な重なりがあるか否かを判定するものである。時間判定において、位置情報取得部26dは下記の4つの時刻を計算する。
(1)自車両到達時間STI
・自車両100の前面の代表点SFL,SFRと交点CP1〜CP4との距離が最も短い方と自車両100の速度から計算する。
(2)自車両通過時間STO
・自車両100の後面の代表点SRL,SRRと交点CP1〜CP4との距離が最も長い方と自車両100の速度から計算する。
(3)他車両到達時間TTI
・他車両200の前面の代表点TFL,TFRと交点CP1〜CP4との距離が最も短い方と他車両200の速度から計算する。
(4)他車両通過時間TTO
・他車両200の後面の代表点TRL,TRRと交点CP1〜CP4との距離が最も長い方と他車両200の速度から計算する。
【0047】
図12に示すケース1及び2のように、自車両到達時間STIから自車両通過時間STOまでの時間と、他車両到達時間TTIから他車両通過時間TTOまでの時間との間に重なり合いがあるときは、他車両200と自車両100とは衝突するとみなし(S24)、実際に自車両100のどの部分に衝突するかを判定する(S25)。一方、ケース3及び4のように、自車両到達時間STIから自車両通過時間STOまでの時間と、他車両到達時間TTIから他車両通過時間TTOまでの時間との間に重なり合いがないときは、車両200と自車両100とは衝突しないと判定する(S25)。その後の、アクチュエータ駆動部26eによる動作は第1実施例と同様に行う
【0048】
本実施形態によれば、衝突判定を代表点のみで行う方法よりも衝突判定の精度を向上させることができる。すなわち、図13に示すように点13のみで衝突判定を行った場合、実際には自車両100のキャビンへ衝突する可能性があるにもかかわらず、自車両100の後部への衝突と判断される場合がある。一方、本実施形態によれば、他車両200の車幅も計算に含めて衝突判定を行うため、図13に示すような場合であっても、自車両100のキャビンへの衝突を予測することができる。
【0049】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】第1実施形態に係る物体検出装置の構成を示すブロック図である。
【図2】第1実施形態に係る衝突判定部の構成を示す機能ブロック図である。
【図3】第1実施形態に係る物体検出装置の動作を示すフロー図である。
【図4】第1実施形態に係る物標点及び代表点の導出方法を示す平面図である。
【図5】第1実施形態に係る物標点及び代表点の導出方法の別の例を示す平面図である。
【図6】第1実施形態に係る車両の側面、前面及び後面を推定する手法を示す平面図である。
【図7】第1実施形態に係る車両の側面、前面及び後面を推定する手法の別の例を示す平面図である。
【図8】従来の物標点から車両の位置情報を導出する手法を示す平面図である。
【図9】第2実施形態に係る代表点から車両の大きさを推定する手法を示す平面図である。
【図10】第2実施形態に係る音声認識装置の動作を示すフロー図である。
【図11】第2実施形態に係る衝突判定を示す平面図である。
【図12】第2実施形態に係る時間判定を示すタイミングチャートである。
【図13】自車両に他車両が衝突する様子を示す平面図である。
【符号の説明】
【0051】
10…物体検出装置、12…制御ECU、14…レーダ、16…操舵角センサ、18…車速センサ、20…ブレーキECU、22…エアバックアクチュエータ、24…シートベルトアクチュエータ、26…衝突判定部、26a…物標点判別部、26b…移動方向取得部、26c…形状推定部、26d…位置情報導出部、26e…アクチュエータ駆動部、100…自車両、200…他車両。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射電磁波の反射波に基づいて物体の物標点を検出する物標点検出手段と、
前記物標点検出手段が検出した物標点に基づいて、前記物体の形状を推定する形状推定手段と、
前記形状推定手段が推定した前記物体の形状から特定される代表点から前記物体の位置情報を導出する位置情報導出手段と、
を備えた物体検出装置。
【請求項2】
前記形状推定手段は、前記物体の少なくとも第1の面と第2の面とを推定し、
前記位置情報導出手段は、前記形状手段が推定した第1の面と第2の面とから特定される代表点から前記物体の位置情報を導出する、請求項1に記載の物体検出装置。
【請求項3】
前記位置情報導出手段は、前記第1の面と前記第2の面との交線に基づいて前記代表点を特定して前記物体の位置情報を導出する、請求項2に記載の物体検出装置。
【請求項4】
前記物体が車両である場合において、前記物標点検出手段が検出した物標点が前記車両の前面、側面及び後面のいずれに属するかを判別する物標点判別手段をさらに備えた、請求項1〜3のいずれか1項に記載の物体検出装置。
【請求項5】
前記車両の移動方向を取得する移動方向取得手段をさらに備え、
前記形状推定手段は、前記物標点判別手段が判別した前記車両の側面に属する物標点と、前記移動方向取得手段が取得した前記車両の移動方向とから、前記車両の移動方向に平行であって前記車両の側面に属する物標点を通る直線に基づいて前記車両の側面を推定する、請求項4に記載の物体検出装置。
【請求項6】
前記車両の移動方向を取得する移動方向取得手段をさらに備え、
前記形状推定手段は、前記物標点判別手段が判別した前記車両の前面及び後面のいずれかに属する物標点と、前記移動方向取得手段が取得した前記車両の移動方向とから、前記車両の移動方向に垂直であって前記車両の前面及び後面のいずれかに属する物標点を通る直線に基づいて前記車両の前面及び後面の少なくともいずれかを推定する、請求項4又は5に記載の物体検出装置。
【請求項1】
放射電磁波の反射波に基づいて物体の物標点を検出する物標点検出手段と、
前記物標点検出手段が検出した物標点に基づいて、前記物体の形状を推定する形状推定手段と、
前記形状推定手段が推定した前記物体の形状から特定される代表点から前記物体の位置情報を導出する位置情報導出手段と、
を備えた物体検出装置。
【請求項2】
前記形状推定手段は、前記物体の少なくとも第1の面と第2の面とを推定し、
前記位置情報導出手段は、前記形状手段が推定した第1の面と第2の面とから特定される代表点から前記物体の位置情報を導出する、請求項1に記載の物体検出装置。
【請求項3】
前記位置情報導出手段は、前記第1の面と前記第2の面との交線に基づいて前記代表点を特定して前記物体の位置情報を導出する、請求項2に記載の物体検出装置。
【請求項4】
前記物体が車両である場合において、前記物標点検出手段が検出した物標点が前記車両の前面、側面及び後面のいずれに属するかを判別する物標点判別手段をさらに備えた、請求項1〜3のいずれか1項に記載の物体検出装置。
【請求項5】
前記車両の移動方向を取得する移動方向取得手段をさらに備え、
前記形状推定手段は、前記物標点判別手段が判別した前記車両の側面に属する物標点と、前記移動方向取得手段が取得した前記車両の移動方向とから、前記車両の移動方向に平行であって前記車両の側面に属する物標点を通る直線に基づいて前記車両の側面を推定する、請求項4に記載の物体検出装置。
【請求項6】
前記車両の移動方向を取得する移動方向取得手段をさらに備え、
前記形状推定手段は、前記物標点判別手段が判別した前記車両の前面及び後面のいずれかに属する物標点と、前記移動方向取得手段が取得した前記車両の移動方向とから、前記車両の移動方向に垂直であって前記車両の前面及び後面のいずれかに属する物標点を通る直線に基づいて前記車両の前面及び後面の少なくともいずれかを推定する、請求項4又は5に記載の物体検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−267826(P2008−267826A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−107299(P2007−107299)
【出願日】平成19年4月16日(2007.4.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月16日(2007.4.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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