説明

物体検知システム及び方法

【課題】レーザセンサから照射されるレーザビームが障害物に遮断されて物体が一時的に未検知となっても、連続性を以て同一の物体を特定する。
【解決手段】監視領域にて物体の探索をする探索空間、及び物体を検索する所定の単位のマス目からなる検索グリッドの数を物体毎に設定しておき、得られる測距データから監視領域内に存在する物体を経時的に測距する。障害物によりレーザビームが遮断されて、物体が一時的に未検知となった場合、探索空間にレーザビームを照射して物体を経時的に探索する。探索による物体の探索の対応を経時的に取りながら物体の位置の検索及び追跡し、この追跡により得られるデータを用いて、物体の軌跡を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は物体検知システム及び方法に係り、特に、所定の領域にレーザ光を照射して得られる測距データを処理して、監視領域内を移動する物体及びその位置を検知する物体検知システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
対象とする所定の領域にレーザレーダを照射して、得られる測距データを処理して領域内の物体を検知する技術が知られている。例えば、特許文献1には、レーザレーダを用いて踏み切り等の所定の領域及びその周辺領域を走査して、検知される物体との距離情報とその走査方向の情報から3次元レーダ情報を求め、3次元レーダ情報から所定の領域及び周辺領域内にある物体が列車であるか否かを識別する検知装置が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、ホームから線路上に転落した者と保守者を正確に検知するために、センサ部から線路上に電磁波を照射し、物体からの反射波と保守者が携帯しているID応答器からの識別波を受信して各反射物体を検出し、反射物体検知信号にID応答器からの識別信号が含まれていないときに転落者と判定して、警報を発する転落者識別装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−212553号公報
【特許文献2】特開2005−231444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術にはいずれも、監視領域に障害物が存在する場合、その障害物の裏側を通過する物体の同一性を如何に同定して検知するかについては開示されていない。レーザレーダを用いて物体を測距する場合、一旦、障害物によりレーザビームが遮断されると、物体は未検知となる。その状態から同一物体を再度検知した場合には、これまでとは別の新たな物体の検知として認識してしまうため、連続性を以って同一物体を検知する物体探索ができないという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、レーザセンサから照射されるレーザビームが障害物に遮断されて物体が一時的に未検知となっても、連続性を以て同一の物体を特定することができる物体検知システム及び方法を提供することにある。
本発明は、監視領域において定義された検索グリッドを用いて物体の寸法や大きさを把握して、死角領域を通過して検知された物体が、監視領域内で既に検知された物体と同一であるか、又は別の新しい物体であるかを認識して物体を検知することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る物体検知システムは、レーザセンサよりレーザビームを監視領域に照射して得られる測距データを処理することにより、物体を検知する物体検知システムであって、該監視領域にて物体の探索をする探索空間、及び物体を検索する所定の単位のマス目からなる検索グリッドの各サイズを設定する設定手段と、得られる測距データから該監視領域内に存在する物体を経時的に測距する測距手段と、障害物によりレーザビームが遮断されて、物体が未検知となった場合、該探索空間にレーザビームを照射して物体を経時的に探索する探索手段と、該探索手段による物体の探索の対応を経時的に取りながら物体の位置の検索及び追跡する追跡手段と、該追跡手段により得られるデータを用いて、物体の軌跡を表示する表示手段と、を有することを特徴とする物体検知システムとして構成される。
【0008】
好ましい例によれば、前記設定手段は、該監視領域内に予め複数面の検索グリッドを組み合わせて構成される探索空間を以て物体の探索ができるように設定し、
前記測距手段は、該監視領域内の障害物によるレーザビームの遮断により物体が未検知となった場合に、前記設定手段により設定された探索空間を以て重点的に物体検知を行い、
前記探索手段は、経時的に探索空間を以て物体を探索した結果、再度、物体を検知した場合に、検索グリッドにて物体の寸法や大きさから物体を特定し連続性を以て物体を同一物体として判断する機能を有し、
前記追跡手段は、前記探索手段の結果に基づき経時的に物体の位置を検索して軌跡を抽出する。
【0009】
本発明に係る物体検知方法は、レーザセンサよりレーザビームを監視領域に照射して得られる測距データを処理することにより、物体を検知する物体検知方法であって、該監視領域にて物体の探索をする探索空間、及び物体を検索する所定の単位のマス目からなる検索グリッドの各サイズを設定する設定ステップと、得られる測距データから該監視領域内に存在する物体を経時的に測距する測距ステップと、障害物によりレーザビームが遮断されて、物体が未検知となった場合、該探索空間にレーザビームを照射して物体を経時的に探索する探索ステップと、該探索による物体の探索の対応を経時的に取りながら物体の位置の検索及び追跡する追跡ステップと、該追跡により得られるデータを用いて、物体の軌跡を表示手段に表示する表示ステップと、を有することを特徴とする物体検知方法として構成される。
【0010】
好ましい例によれば、前記設定ステップにおいて、該監視領域内に予め複数面の検索グリッドを組み合わせて構成される探索空間を以て物体検知するための設定を行い、
前記測距ステップにおいて、監視領域内の障害物によるレーザビームの遮断により物体未検知となった場合に、設定ステップにより設定された探索空間を以て、重点的に物体を検知し、
前記探索ステップにおいて、経時的に探索空間を以て物体探索した結果、再度、物体を検知した場合に検索グリッドにて物体の寸法や大きさから物体を特定し連続性を以て物体を同一物体として判断し、
前記追跡ステップにおいて、前記探索ステップの結果に基づき経時的に物体位置を検索し、これを追跡し、
前記表示ステップにおいて、前記追跡ステップの物体の追跡に基づき、表示手段に表示する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、レーザセンサによる物体の測距において、監視領域内の障害物によってレーザビームが遮断されて物体が一時的に未検知となった場合でも、予め設定された探索空間における検索グリッドを用いて物体を検索して追跡することができる。
これは、物体未検知状態からこれまでの物体測距データ(時間データ、存在位置)に基づいて、経時的に物体未検知位置からの上下、左右方向の移動(ベクトル)を求めることと、探索空間における物体の探索と、検索グリッドによる物体位置を検索して、物体が検索グリッドに占める割合である面積から、物体の寸法や大きさを以て物体を特定することで、連続性を以て良好に監視領域における同一物体を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態による物体検知システムの構成を示す図、
【図2】監視領域における探索空間と検索グリッドの関係を示す図、
【図3】背景データDB321の記録フォーマットを示す図、
【図4】測距データDB322の記録フォーマットを示す図、
【図5】物体情報DB323の記録フォーマットを示す図、
【図6】軌跡情報DB324の記録フォーマットを示す図、
【図7】物体の再検知時における同一物体の判断処理を示すフローチャート、
【図8】物体の軌跡の表示処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は、一実施形態による物体検知システムの構成を示す。
物体検知システムは、監視領域100を照射する複数のレーザセンサ111、112(総じて11ということがある)と、レーザセンサの制御及びレーザセンサで検知された測距データの処理を行うパーソナルコンピュータPC3などのような処理装置を備えて構成される。
【0014】
監視領域100とは、例えば線路上や踏切などの場所である。その監視領域に障害物12の存在や歩行者や車両のような移動物が検知対象の物体9となる。物体9である人は例えば物体9から物体9´にように移動し、時には障害物の背後(レーザビームに対して)を移動することがある。このため、レーザセンサ11による物体の検知が途切れる。
【0015】
本発明の特徴の1つとして、監視領域100は、データ処理上の所定の間隔で区切られたマトリックス状の検索グリッド101が定義される。監視領域のうち、とりわけ注目して監視する領域(例えば障害物の陰となりやすい場所)を探索空間102が規定される。レーザセンサ11は、例えば分解能0.25°の毎にレーザ光を照射し、その受信した測距データを経時的にPC3へ送る。測距データには、監視領域の背景、障害物、及び移動する物体の検知データが含まれる。なお、探索空間と検索グリッドについては、図2を参照して、更に後述する。
【0016】
PC3は、既知のように、プログラムを実行することで情報処理を行うCPU31、メモリや外部記憶装置などの記憶部に形成されるデータベース(DB)32、表示装置33、入力装置34を有する。DB32には、監視領域の背景データを登録する背景データDB321(図3)、キャリブレーション、各レーザセンサからの測距データ(立体形状データを含む)を登録する測距データDB322(図4)、監視領域において検知の対象とする(或いは検知対象と想定される)特定の物体に関する情報を登録する物体情報DB323(図5)、物体の移動に関する情報を登録する軌跡データDB324(図6)が保管される。
【0017】
ここで、図2を参照して、探索空間と検索グリッドの関係について説明する。
検索グリッド101は1つ1つのマス目から成る、物体検知の最小単位の大きさ(例えば20×20cm)である。また、監視領域100において物体9を検知する場合、障害物12によってレーザビームが遮断されて物体が未検知となることがある。このように障害物などの陰となる場所が重点的に監視したい場所に対して、探索空間(例えば200×200cm)102が設定される。探索空間は複数の検索グリッドの集合として表される。
【0018】
例えば、レーザセンサ11からのレーザビームの照射が遮断されて死角となる領域は、障害物12の陰となる3点の検索ポイント241〜243で囲まれる範囲である。この検索ポイント241〜243で囲まれた死角領域内の複数の検索グリッド101に物体が存在している場合、物体は未検知状態である。データ処理上、レーザセンサ11から見て障害物による死角の始まる特定位置(検索ポイント241及び242)を求めることで、探索領域を特定して設定することができる。
【0019】
未検知の状態となった物体が死角領域から外れて移動した場合、レーザビームによって物体は再び検知され、その物体は前に検知された物体と同一の可能性がある。本発明において、物体がそれ以前に検知された物体と同一であるか否かの判断は、物体の大きさと移動(軌跡)を照合することで行う。これは、検知された物体を構成する検索グリッド101の数(即ち物体の大きさ)及び物体の移動ベクトルを計算して照合することで判断する。
【0020】
物体が監視領域に存在する限り、測距データは取得され続ける。一方、未検知状態にある物体が移動して、探索空間における重点的な物体探索により検知されることがある。例えば、
探索空間の面積=縦×横=60(cm)×60(cm)=3.6(m) とする。
対象物体が人体の場合、検索グリッド(20×20cmで設定(図5))は、
一辺の検索グリッド枚数=60(cm)÷20(cm)=3(枚) となる。
その結果、人体検知の探索空間内の検索グリッド枚数=縦×横=3(枚)×3(枚)=9(枚)
が必要であることがわかる(図5参照)。
【0021】
本実施例では、上記のように算出した探索空間の面積における検索グリッドの枚数を前提にして、監視領域内の障害物によるレーザビームの遮断を考慮して、障害物を中心とした広範囲に探索空間を設定する。そして、障害物付近に物体が接近した時点で物体の未検知の発生を想定して、物体の探索と検索グリッドによる物体の寸法や大きさを特定することで、同一物体の検知か否かを判断する。
【0022】
本実施例によれば、検知対象の物体の大きさに合わせた探索空間の設定ができる。
測距データの処理による物体の検知において、一度、物体を検知すると、その物体の検索グリッドが占める割合(検索グリッドの枚数)を計算して、物体情報DBに登録する。その後、その物体が未検知となり、探索空間内で再度検知された場合、当該物体についての検索グリッド面積を計算し、その計算された検索グリッドの面積と、以前に物体情報DBに登録された物体であって未検知状態の物体の検索グリッドの枚数を照合することで、同一物体を特定するものである。
本実施例では、線路上や踏切などに存在する物体について検知することを目的としていることから、検索グリッドの占める割合が類似する物体を全て対象とする必要はなく、設定値(人体の場合は、約60cm)を有する物体を対象に、それ以上の大きさ、若しくはそれ以下の大きさなどの分解能にて、物体を特定することが可能である。
【0023】
次に、図3〜図4を参照して、各DBの構成について説明する。
図3は、背景データDB321の記録フォーマットを示す。
例えば背景データDB321は、複数の各レーザセンサ11を左周りに0.5°毎に移動させながらレーザ光を照射して、監視領域100の背景から取得された測距データ即ちレーザセンサと背景との距離データを記憶する。背景に看板や電柱、障害物などが存在すると、測距データにその部分の距離が反映される。
【0024】
図4は、測距データDB322の記録フォーマットを示す。
測距データDB322は、各レーザセンサ11により得られた測距データを記憶する。測距データには、背景データに、列車や障害物体からの距離データが重畳したデータが含まれる。そこで、実際に得られた測距データDB322のデータと、背景データDB321のデータとの差分を計算することで、物体の検知を判断することになる。なお、図4に追加的に示されているように、背景データDB321を単独に構成しないで、測距データDB322に併合して構成することもできる。
【0025】
図5は、物体情報DB323の記録フォーマットを示す。
物体情報DB323は、検知対象となる(或いは想定される)特定の物体に関する情報を登録する。対象の物体は、物体10に占める検索グリッドの割合(即ち検索グリッドのマス数(縦方向のマス数と横方法のマス数を乗じたもの))で表され、対象物体と検索グリットの数(面積)との関係を登録する。登録される物体情報としては、検知の予想される物体の情報を定義として予め入力装置34から入力して登録されるものと、レーザセンサの測距データから物体が検知される度に順次登録されるものとが含まれる。
【0026】
監視領域が線路上や踏切などである場合、検知対象となる物体は、列車車両、人体、小動物、石などである。例えば、物体が人体の場合、検索グリッドとして3マス×3マス(1マス20cm角が9枚)が登録される。レーザセンサから得られる経時的な測距データから算出された検索グリッドの数と、物体情報DB323に登録された物体の検索グリッドの数を比較することで、対象の物体が同一物体か別物体かが判断されて特定される。
【0027】
図6は、軌跡情報DB324の記録フォーマットを示す。
監視領域内において検知された物体には、その度に、固有の識別情報(物体識別ID)が付与される。固有の物体識別IDに対応して、当該IDが付与された物体が移動する場合、当該物体を何れかのレーザセンサで検知された場合、その検知時刻、位置座標、移動方向(ベクトル)、レーザセンサ111,112の何れで検知されたか否かを示す状態情報(「1」は検知、「0」は未検知を示す)をそれぞれ登録する。
【0028】
次に、図7を参照して、物体の再検知時における同一物体の判断処理について説明する。
この処理は、物体が障害物の背後に移動して一時は未検知になった状態で、その後再び検知された物体が当該物体の再検知か或いは新たな物体の最初の検知かを判断する処理である。
(1)例えば、線路上や踏切などに監視領域100を設定した場合、レーザセンサ11により予め、線路の背景及びキャリブレーションを含む測距データを取得して、背景データDB321に登録する(S71)。
【0029】
(2)事前の準備として、探索空間及び検索グリッドの設定を行う(S72)。すなわち、管理者が表示装置33に表示された設定項目及び監視領域の画像を見ながら入力装置34を操作することで、探索空間102及び検索グリッド101を入力設定する。探索空間102は、表示装置33に表示された監視領域の画像を見ながら、監視領域100内において、例えば障害物によってレーザビームが遮断されて物体が未検知となる可能性がある領域について、入力設定する。
【0030】
(3)物体の検知は、複数のレーザセンサ11より監視領域100にレーザビームを照射し、測距データを経時的に取得することで行う(S73)。
取得された測距データから何らかの物体が検知された(或いは検知状態)か否かの判断を行い(S731)、その結果、物体が検知されたと判断した場合、当該物体が新規の物体か又は既存(既に検知済み)の物体かを判断する(S732)。この判断は、測距データから算出された当該物体の検索グリッドの数と、物体情報DB323に登録されている各物体の検索グリッドの数とを比較することにより、両者が一致(又は最も近似)するものが有るか否かを判断する。
例えば、対象物体が人体の場合、検索グリッド101を20cm角に設定した場合の、検索グリッド101が対象物体である人体に占める割合として、3マス×3マス(約60cm角)が、標準的な定義データとして予め物体情報DB323に登録されている。上記比較の結果、検索の数が一致すれば、既存の人体が登録済みであると判断する。一方、上記比較の結果、不一致ならば、検知された物体は新規の物体であると判断し、この場合、当該物体の検索グリッドの数を物体情報DB323に登録する。
【0031】
(4)上記物体検知の状態の判断の結果(S731)、未検知と判断された場合、例えばレーザビームが障害物等で遮断されて物体が未検知となった場合、その物体の探索動作に移る(S74)。物体の未検知状態とは、物体が一旦検知されて、その物体の存在位置としての座表データが経時的に複数面取得されており、一定の大きさ(クラスタリング)を以て物体を検知している状態から、クラスタリングが取れずに物体の大きさが認識されない状態に陥った状態、若しくは予め取得される背景データとの差分から物体の存在を認識できない状態のことを意味する。
【0032】
未検知状態となった物体の探索は、予め障害物等がある領域に対して設定された探索空間102内に重点的にレーザビームを照射して得られた測距データから物体を探索することで、未検知状態となった時点からの物体探索を経時的に行う(S741)。探索空間102内での物体探索の結果、物体が検知されなければ、測距が終了するまで(S76)、ステップS72の動作へ戻って繰り返す。一方、探索空間内で物体が検知された場合(S741「有」)には、一旦未検知状態になった物体が再検知される事態を含んでいる。そこで、物体情報DB323に登録されている各物体の物体情報(物体の検索グリッドの数)を順次検索することで、同一物体かの判断を行う。
【0033】
(5)同一物体の判断(S75)は、再検知された物体が同一物体かそれとも新たな別物体かを検証する処理である。即ち、物体情報DB323から各物体の検索グリッドの数を順次読み出し(S751)、この読み出された物体の検索グリッドの数と、測距データから算出された再検知物体の検索グリッドの数とを比較して、両者が一致(又は最も近似)するものが有るか否かを判断する(S752)。比較の結果、一致するものがあれば、同一物体と判定する(S753)。一方、一致するものが無ければ(この場合には、再検知で同一物体が無かったことになる)、検知された当該物体は別物体であると判定する(S754)。そして、その物体の検索グリッドの数を物体情報DB323に登録する(S755)。
(6)その後、測距終了かを判断して(S76)、終了なければ、上記処理を繰り返す。
【0034】
次に、図8を参照して、物体の軌跡の表示処理について説明する。
この処理は、物体の再検知における同一物体の判断処理と連動して物体を認識することで、物体の軌跡を抽出してこれを表示装置に表示する処理である。
まず、物体検知(S81(=S73))において、物体が検知される度に測距データから得られる物体の位置情報は測距データDB322に保存される。既存の物体の場合は、物体の位置情報を取得するステップへ遷移する。
【0035】
次に、測距データDB322から物体の存在する位置情報を取得して(S82)、経時的に取得される測距データと、測距データDB322から読出したこれまでの物体の位置情報を以て、物体が移動をした痕跡である軌跡を抽出して(S83)、その抽出された物体の軌跡を表示装置33に表示する(S84)。その後、軌跡の表示の終了又は継続を判断して(S85)、表示を終了する。
【0036】
物体の軌跡処理は、例えば、人体の場合では何れのレーザセンサの測距結果であっても、検知対象物(人体)に固有IDが割り当てられるため、少なくとも1台のレーザセンサで検知されていれば、複数のレーザセンサが同一物体(人体)を検知している状態でも軌跡は途切れることは無い。
本発明では、物体の未検知状態から探索空間と検索グリッドにて、未検知位置までの上下左右方向の移動方向(ベクトル)を、軌跡情報DB324を参照して求め、少なくとも1台以上のレーザセンサで物体を検知することで、連続性を以て同一物体を探索、検知することができる。
【0037】
物体の軌跡の表示については、入力装置34から入力された任意の時刻の範囲や検知された人IDに対して、軌跡情報DB324から軌跡の位置ベクトルを読込み、矢印を用いて人の軌跡を表示装置33にて表示することができる。
例えば、クラスタ処理により表示時刻で人IDに割当て人を検知した人数を求め、その人数に応じた大きさの矢印での表示をする。例えば2台のレーザセンサで検知された場合は太く、1台のみで検知された場合は、細く表示することも可能となる。
【0038】
以上のように、経時的に実施した物体の探索において物体を再検知した時点で対象物体と同一物体であるかの判断として、再検知された物体のこれまでの物体の存在位置、時間データから移動方向(例えば方向ベクトルとして、未検知位置までに上下左右方向の移動方向(ベクトル)を求めることで、同一物体と判断することにより、連続性を以て同一物体を良好に検知することができる。
【符号の説明】
【0039】
111,112:レーザセンサ 12:障害物 100:監視領域 101:検索グリッド
102:探索空間 9、9´:物体
3:PC 31:CPU 32:DB 33:表示装置 34:入力装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザセンサよりレーザビームを監視領域に照射して得られる測距データを処理することにより、物体を検知する物体検知システムであって、
該監視領域にて物体の探索をする探索空間、及び物体を検索する所定の単位のマス目からなる検索グリッドの各サイズを設定する設定手段と、
得られる測距データから該監視領域内に存在する物体を経時的に測距する測距手段と、
障害物によりレーザビームが遮断されて、物体が未検知となった場合、該探索空間にレーザビームを照射して物体を経時的に探索する探索手段と、
該探索手段による物体の探索の対応を経時的に取りながら物体の位置の検索及び追跡する追跡手段と、
該追跡手段により得られるデータを用いて、物体の軌跡を表示する表示手段と、を有することを特徴とする物体検知システム。
【請求項2】
前記設定手段は、該監視領域内に予め複数面の検索グリッドを組み合わせて構成される探索空間を以て物体の探索ができるように設定し、
前記測距手段は、該監視領域内の障害物によるレーザビームの遮断により物体が未検知となった場合に、前記設定手段により設定された探索空間を以て重点的に物体検知を行い、
前記探索手段は、経時的に探索空間を以て物体を探索した結果、再度、物体を検知した場合に、検索グリッドにて物体の寸法や大きさから物体を特定し連続性を以て物体を同一物体として判断する機能を有し、
前記追跡手段は、前記探索手段の結果に基づき経時的に物体の位置を検索して軌跡を抽出することを特徴とする請求項1の物体検知システム。
【請求項3】
レーザセンサよりレーザビームを監視領域に照射して得られる測距データを処理することにより、物体を検知する物体検知方法であって、
該監視領域にて物体の探索をする探索空間、及び物体を検索する所定の単位のマス目からなる検索グリッドの各サイズを設定する設定ステップと、
得られる測距データから該監視領域内に存在する物体を経時的に測距する測距ステップと、
障害物によりレーザビームが遮断されて、物体が未検知となった場合、該探索空間にレーザビームを照射して物体を経時的に探索する探索ステップと、
該探索による物体の探索の対応を経時的に取りながら物体の位置の検索及び追跡する追跡ステップと、
該追跡により得られるデータを用いて、物体の軌跡を表示手段に表示する表示ステップと、
を有することを特徴とする物体検知方法。
【請求項4】
前記設定ステップにおいて、該監視領域内に予め複数面の検索グリッドを組み合わせて構成される探索空間を以て物体検知するための設定を行い、
前記測距ステップにおいて、監視領域内の障害物によるレーザビームの遮断により物体未検知となった場合に、前記設定ステップにより設定された探索空間を以て、重点的に物体を検知し、
前記探索ステップにおいて、経時的に探索空間を以て物体探索した結果、再度、物体を検知した場合に検索グリッドにて物体の寸法や大きさから物体を特定し連続性を以て物体を同一物体として判断し、
前記追跡ステップにおいて、前記探索ステップの結果に基づき経時的に物体位置を検索し、これを追跡し、
前記表示ステップにおいて、前記追跡ステップの物体の追跡に基づき、表示手段に表示することを特徴とする請求項3の物体検知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−47575(P2012−47575A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−189568(P2010−189568)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(390021577)東海旅客鉄道株式会社 (413)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000233295)日立情報通信エンジニアリング株式会社 (195)
【Fターム(参考)】