物体検知装置および物体検知プログラム
【課題】FM−CWレーダを利用して得られる検知結果を定期的に出力する物体検知装置を提供する。
【解決手段】物体検知装置は、差分が閾値周波数よりも小さいUP/DOWN周波数に基づいて決まる距離を表す距離データを登録する登録部と、前記UP/DOWN周波数の差分が閾値周波数よりも小さいときに前記距離との差分が閾値距離よりも小さい距離データが既に登録されている場合には、前記UP/DOWN周波数をペアリングするペア生成部と、第1の時間間隔で送信波の送信を指示すると共に、前記UP/DOWN周波数の差分が閾値周波数よりも小さいときに前記距離との差分が閾値距離よりも小さい距離データが登録されていない場合には、第2の時間間隔で送信波の送信を指示する送信制御部と、第1の時間間隔でペアリングの結果を出力する出力部、を備える。
【解決手段】物体検知装置は、差分が閾値周波数よりも小さいUP/DOWN周波数に基づいて決まる距離を表す距離データを登録する登録部と、前記UP/DOWN周波数の差分が閾値周波数よりも小さいときに前記距離との差分が閾値距離よりも小さい距離データが既に登録されている場合には、前記UP/DOWN周波数をペアリングするペア生成部と、第1の時間間隔で送信波の送信を指示すると共に、前記UP/DOWN周波数の差分が閾値周波数よりも小さいときに前記距離との差分が閾値距離よりも小さい距離データが登録されていない場合には、第2の時間間隔で送信波の送信を指示する送信制御部と、第1の時間間隔でペアリングの結果を出力する出力部、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、FM−CWレーダを利用して物体を検知する物体検知装置、物体検知方法、物体検知プログラムに係わる。
【背景技術】
【0002】
従来より、FM−CW(Frequency Modulated Continuous Wave)を用いて、車両などの移動物体までの距離およびその速度を検知する物体検知装置(以下、FM−CWレーダ装置と呼ぶことがある。)が実用化されている。FM−CWレーダ装置は、周波数変調された電波(例えば、ミリ波)送信する。そして、送信した電波の周波数と、物体に反射して返ってきた反射波の周波数との周波数差を検出することで、静止物体/移動物体までの距離、および移動物体の速度が算出される。
【0003】
図1は、FM−CWレーダ装置の動作を説明する図である。図1において、fs(t)は、FM−CWレーダ装置から送信される電波(送信波)の周波数を表す。このように、送信波は、周波数がリニアに上昇していく区間(UP区間)、および周波数がリニアに下降していく区間(DOWN区間)を有している。「f0」は送信波の中心周波数、「T」は送信波の変調周期、「β」は送信波の周波数変調帯域を表す。
【0004】
FM−CWレーダ装置は、レーダ範囲内のターゲットからの反射波を受信する。図1において、fr(t)は、反射電波(反射波または受信波)の周波数を表す。受信波は、FM−CWレーダ装置とターゲットとの間の距離に応じて、送信波に対して時間τだけ遅延している。そして、送信波および受信波の周波数は、下記の特性を有する。
(a)ある時刻における受信波は、その時刻よりも時間τだけ前に生成された送信波の反射波である。よって、UP区間においては、受信波の周波数は、現在の送信周波数より低い。また、DOWN区間においては、受信波の周波数は、現在の送信周波数より高い。
(b)FM−CWレーダ装置に近づいてくるターゲットにより得られる受信波は、ドップラ効果により、そのターゲットの速度に応じて周波数が高くなる。また、FM−CWレーダ装置から遠ざかっていくターゲットにより得られる受信波は、ドップラ効果により、そのターゲットの速度に応じて周波数が低くなる。
【0005】
FM−CWレーダ装置は、送信波と受信波とを混合することでビート信号を生成し、ビート周波数を検出する。ビート周波数は、送信波周波数fs(t)と受信波周波数fr(t)との差分に相当する。このとき、UP区間においてはビート周波数fup(以下、UP周波数)が検出され、DOWN区間においてはビート周波数fdown(以下、DOWN周波数)が検出される。図1に示す例では、FM−CWレーダ装置は、FM−CWレーダ装置に近づいてくるターゲットからの反射波を受信している。このため、UP周波数fupよりもDOWN周波数fdownの方が高くなっている。なお、ターゲットがFM−CWレーダ装置から遠ざかるときには、UP周波数fupよりもDOWN周波数fdownの方が低くなる。また、ターゲットが静止しているときは、UP周波数fup、DOWN周波数fdownは互いにほぼ一致する。
【0006】
図2は、1つのターゲットから得られるビート信号のスペクトラムを示す図である。ターゲットが静止しているときは、図2(a)に示すように、UP周波数fupおよびDOWN周波数fdownは互いに一致する。この場合、FM−CWレーダ装置からターゲットまでの距離は、fup、fdownの和または平均(=f1)に基づいて算出される。
【0007】
ターゲットがFM−CWレーダ装置に近づいてくるときは、図2(b)に示すように、UP周波数fupよりもDOWN周波数fdownの方が高くなる。また、ターゲットがFM−CWレーダ装置から遠ざかるときは、図2(c)に示すように、UP周波数fupよりもDOWN周波数fdownの方が低くなる。これらの場合、FM−CWレーダ装置からターゲットまでの距離は、fup、fdownの和または平均に基づいて算出される。また、ターゲットの速度は、fup、fdown間の差分に基づいて算出される。
【0008】
なお、fup、fdown間の差分は、ターゲットの移動に起因するドップラ効果により生じる。したがって、以下の説明では、fup、fdown間の差分を「ドップラ変位」と呼ぶことがある。すなわち、ターゲットの速度が速いときはドップラ変位が大きく、また、ドップラ変位がゼロであるときはターゲットが静止していると判定される。
【0009】
図3は、FM−CWレーダ装置で複数のターゲットを検知する方法を説明する図である。ここでは、ビート周波数として、UP区間においてUP周波数1、2が検出され、DOWN区間においてDOWN周波数1、2が検出されたものとする。また、UP周波数2とDOWN周波数1が互いにほぼ同じであるものとする。さらに、図3(a)に示す例では静止物体Aおよび移動物体Bによりビート信号が生成され、図3(b)に示す例では、2つの移動物体B1、B2によりビート信号が生成されているものとする。
【0010】
レーダ範囲内に存在する物体を検知する際には、UP周波数およびDOWN周波数のペアリングが行われる。そして、各周波数ペアに基づいて対応する物体を検知する。すなわち、例えば、ペアリングされたUP周波数とDOWN周波数との和に基づいてターゲットまでの距離が算出され、ペアリングされたUP周波数とDOWN周波数との差分に基づいてターゲットの速度が算出される。なお、「ペアリング」は、UP周波数とDOWN周波数のペアを決定する処理である。
【0011】
ここで、静止物体により得られる1組のUP周波数およびDOWN周波数は、互いにほぼ一致する。すなわち、静止物体により生じるドップラ変位はほぼゼロである。したがって、図3に示す例において、まず、UP周波数2およびDOWN周波数1がペアリングされる。この場合、静止物体によりUP周波数2およびDOWN周波数1が得られたものと仮定し、周波数f2に基づいてその静止物体までの距離が算出される。続いて、残りのビート信号(すなわち、UP周波数1およびDOWN周波数2)がペアリングされる。そして、移動物体によってUP周波数1およびDOWN周波数2が得られたものと仮定し、周波数f1、f3に基づいてその静止物体までの距離およびその移動物体の速度が算出される。これにより、図3(a)に示す例では、静止物体Aおよび移動物体Bが正しく検知される。
【0012】
しかし、図3(b)に示す例では、上記アルゴリズムでは、UP周波数およびDOWN周波数のペアリングが不適切になる。すなわち、実際には、移動物体B1によりUP周波数1およびDOWN周波数1が生成され、移動物体B2によりUP周波数2およびDOWN周波数2が生成されているにもかかわらず、ドップラ変位がゼロであるUP周波数2およびDOWN周波数1が先にペアリングされ、残りのUP周波数1およびDOWN周波数2がペアリングされることとなる。この結果、移動物体B1、B2まで距離、および移動物体B1、B2の速度を正しく検知できないことがある。
【0013】
なお、関連する技術として、送信手段、ミキサ、周波数算出手段、静止物体周波数検出手段を備える物体検知装置が提案されている。送受信手段は、周波数が上昇する周波数上昇区間と周波数が下降する周波数下降区間とを有する送信波を送信して物体からの反射波を受信する。ミキサは、送信波および反射波を混合して、ビート信号を生成する。周波数算出手段は、周波数上昇区間と周波数下降区間とにおけるビート信号の周波数成分を算出する。静止物体周波数検出手段は、周波数上昇区間と周波数下降区間との一方における周波数成分のレベルが高閾値を超え、他方の区間における同じ周波数成分のレベルが高閾値より小さい低閾値を超えており、かつ両者のレベル差が所定の範囲内であれば、静止している物体の周波数成分として検出する。(例えば、特許文献1)
また、他の関連する技術として、下記の車載用のレーダ装置が提案されている。このレーダ装置は、検出した過去の物標データと今回の物標データとの連続性の判定を、物標との距離差、相対速度差、及び横位置差の条件で行う連続性判定手段を有する。そして、連続性判定手段は、物標の連続性を判定する際に、物標との距離差と相対速度差の判定条件に加えて、前回と今回の物標が横位置差を満足するか、或いは、角度差を満足する条件から連続性を判断する。(例えば、特許文献2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2008−111779号公報
【特許文献2】特開2004−132734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上述のように、従来の検知方法においては、静止物体および移動物体を正しく検知できないことがある。
また、過去の物標データおよび今回の物標データを利用して物標を捕捉するレーダ装置が提案されているが、提案されている構成では、レーダ範囲内に静止物体および移動物体が混在する場合に、検知結果を定期的に出力できないことがある。そして、検知結果が定期的に出力されないと、例えば、移動物体の軌跡計算または移動方向推定などの処理が複雑になる。
【0016】
本発明の課題は、FM−CWレーダを利用して得られる検知結果を定期的に出力する物体検知装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の1つの態様の物体検知装置は、周波数上昇区間および周波数下降区間を含む送信波を送信する送信部と、前記送信波と前記送信波に対応する反射波とのビート信号を生成するビート信号生成部と、前記周波数上昇区間に検出される上昇区間ビート周波数および前記周波数下降区間に検出される下降区間ビート周波数に係わる周波数情報を記憶する記憶部と、第1の上昇区間ビート周波数と第1の下降区間ビート周波数との差分が閾値周波数よりも小さいときに、前記周波数情報として、前記第1の上昇区間ビート周波数および前記第1の下降区間ビート周波数に基づいて決まる第1の距離を表す距離データを前記記憶部に登録する登録部と、前記第1の上昇区間ビート周波数と前記第1の下降区間ビート周波数との差分が前記閾値周波数よりも小さいときに前記第1の距離との差分が閾値距離よりも小さい距離データが前記記憶部に既に登録されている場合には、前記第1の上昇区間ビート周波数と前記第1の下降区間ビート周波数とをペアリングするペア生成部と、第1の時間間隔で前記送信部に前記送信波の送信を指示すると共に、前記第1の上昇区間ビート周波数と前記第1の下降区間ビート周波数との差分が前記閾値周波数よりも小さいときに前記第1の距離との差分が前記閾値距離よりも小さい距離データが前記記憶部に登録されていない場合には、前記第1の時間間隔よりも短い第2の時間間隔で前記送信部に前記送信波の送信を指示する送信制御部と、前記第1の時間間隔で前記ペア生成部によるペアリングの結果を出力する出力部、を有する。
【発明の効果】
【0018】
本出願において開示される構成によれば、FM−CWレーダを利用して得られる検知結果を定期的に出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】FM−CWレーダ装置の動作を説明する図である。
【図2】1つのターゲットから得られるビート信号のスペクトラムを示す図である。
【図3】複数のターゲットを検知する方法を説明する図である。
【図4】実施形態の物体検知装置の構成を示す図である。
【図5】実施形態の物体検知装置の機能を説明するブロック図である。
【図6】送信制御部による送信制御について説明する図である。
【図7】ビート信号のスペクトラムを示す図である。
【図8】UP/DOWN周波数から静止物体を検知する方法を説明する図である。
【図9】動作例1において得られたビート周波数のスペクトラムを示す図である。
【図10】動作例1において記憶部に格納されるデータの例を示す図である。
【図11】動作例2において得られたビート周波数のスペクトラムを示す図である。
【図12】実施形態の物体検知装置の概略動作を示すフローチャートである。
【図13】ペアリング処理を示すフローチャートである。
【図14】補助測定によるペアリングを説明する図である。
【図15】物体検知装置の制御部のハードウェア構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図4は、実施形態の物体検知装置の構成を示す図である。実施形態の物体検知装置1は、IF部11、制御部12、発振器13、フィルタ14、23、26、アンプ15、19、21、24、27、スイッチ16、20、方向性結合器17、アンテナ18、ミキサ22、アナログ信号処理部25、A/D変換器28を備えている。
【0021】
IF部11は、物体検知装置1と上位装置との間のインタフェースを提供する。すなわち、IF部11は、上位装置からの指示を制御部12に通知し、制御部12による処理結果を上位装置に通知する。上位装置は、CPUを備えるコンピュータである。また、上位装置は、物体検知装置1から出力される処理結果を利用して、例えば、検知した移動物体の軌跡計算または移動方向推定などを行う。さらに、上位装置は、物体検知装置1の全体動作を制御するようにしてもよい。
【0022】
発振器13は、制御部12による制御に従って送信波(測定信号)を出力する。送信波は、周波数変調信号であって、周波数がリニアに上昇する周波数上昇区間(以下、UP区間と呼ぶことがある。)、および周波数がリニアに下降する周波数下降区間(以下、DOWN区間と呼ぶことがある。)を含む。なお、発振器13は、例えば、電圧制御発振器であり、制御部12から与えられる制御電圧に対応する周波数で発振する。
【0023】
発振器13から出力される送信波は、フィルタ14により不用な周波数成分が除去される。すなわち、フィルタ14は、必要な周波数成分の送信波のみがアンテナ18を介して無線送信されるように周波数をフィルタリングする。アンプ15は、フィルタ14から出力される送信波を増幅する。スイッチ16は、オン状態に制御されたときに、アンプ15により増幅された送信波を方向性結合器17に出力する。なお、スイッチ16は、例えば制御部12により制御される。方向性結合器17は、スイッチ16から出力される送信波をアンテナ18に導き、アンテナ18を介して入力する反射波をアンプ19に導く。
【0024】
アンテナ18は、方向性結合器17から出力される送信波を所定の方向に向けて無線送信し、送信波に対応する反射波を受信する。アンプ19は、方向性結合器17から出力される反射波を増幅する。スイッチ20は、オン状態に制御されたときに、アンプ19により増幅された反射波をミキサ22に出力する。なお、スイッチ20は、例えば制御部12により制御される。
【0025】
アンプ21は、フィルタ14から出力される送信波を増幅する。ミキサ22は、アンプ21により増幅された送信波と、アンプ19により増幅された反射波とを混合し、ビート信号を生成する。すなわち、ミキサ22により送信波と反射波とのビート信号が生成される。このビート信号の周波数は、送信波の周波数と反射波の周波数との差分に相当する。
【0026】
フィルタ23は、ビート信号に含まれているノイズを除去する。アンプ24は、フィルタ23から出力されるビート信号を増幅する。アナログ信号処理部25は、例えば、ホールド回路および積分回路等を備え、ビート信号を連続した波形に整形する。なお、反射波は、スイッチ20のスイッチングにより細断された波形となることがある。
【0027】
フィルタ26は、アナログ信号処理部25の出力に含まれているビート信号から不用な信号を除去する。アンプ27は、フィルタ26から出力されるビート信号を増幅する。A/D変換器28は、ビート信号をデジタル信号に変換して制御部12へ出力する。
【0028】
制御部12は、例えばデジタル信号処理部(DSP)を備え、ビート信号を表すデジタル信号を利用して物体検知処理を実行する。すなわち、制御部12は、例えばFFTにより、各ビート信号の周波数成分を算出する。続いて、制御部12は、UP区間において検出されるビート周波数成分(以下、UP周波数と呼ぶことがある。)と、DOWN区間において検出されるビート周波数成分(以下、DOWN周波数と呼ぶことがある。)とのペアリングを行う。そして、制御部12は、ペアリングされたUP周波数およびDOWN周波数に基づいて、物体検知装置1からターゲット(静止物体、移動物体)までの距離、および移動物体の速度を算出する。
【0029】
図5は、実施形態の物体検知装置1の機能を説明するブロック図である。実施形態の物体検知装置1は、送信部31、ビート信号生成部32、記憶部33、登録部34、ペア生成部35、送信制御部36、出力37を備える。なお、登録部34、ペア生成部35、送信制御部36、出力37は、制御部12により実現される。また、記憶部33は、制御部12の内部に設けられてもよいし、制御部12の外に設けられてもよい。
【0030】
送信部31は、図4に示す発振器13を含み、送信制御部36からの指示に従って、UP区間(周波数情報区間)およびDOWN区間(周波数下降区間)を含む送信波を生成する。この送信波は、例えば、図1に示すUP区間およびDOWN区間を有するように、連続波(CW:Continuous Wave)の周波数を変調することにより生成される。ここで、送信部31は、送信制御部36から送信指示が与えられると、例えば、1組のUP区間およびDOWN区間を有する送信波を生成する。なお、以下の説明において、1組のUP区間およびDOWN区間を有する送信波を「測定信号」と呼ぶことがある。すなわち、送信制御部36から送信指示が与えられ毎に、送信部31は、1つの測定信号を生成する。また、この例では、UP区間において周波数が上昇する速度およびDOWN区間において周波数が下降する速度は、互いに同じである。また、各測定信号において、UP区間の後にDOWN区間が設けられてもよいし、UP区間の前にDOWN区間が設けられてもよい。
【0031】
ビート信号生成部32は、図4に示すミキサ22およびA/D変換器28を含み、送信波とその送信波に対応する反射波とのビート信号を生成する。このとき、論理的には、1つのターゲットについて1つのビート信号が生成される。生成されるビート信号は、デジタルデータで表され、制御部12に送信される。ここで、ビート信号の周波数(ビート周波数)は、送信波の周波数と対応する反射波の周波数との差分に相当する。なお、以下の説明において、UP区間に生成されるビート信号の周波数を「UP周波数」と呼び、DOWN区間に生成されるビート信号の周波数を「DOWN周波数」と呼ぶことがある。すなわち、論理的には、1つのターゲットについて1組のUP周波数およびDOWN周波数が検出されることになる。
【0032】
記憶部33は、UP区間に検出されるUP周波数とDOWN区間に検出されるDOWN周波数に係わる周波数情報を記憶する。なお、記憶部33は、制御部12が有するメモリ領域または制御部12に接続するメモリ領域により実現される。
【0033】
登録部34は、ドップラ変位(すなわち、UP周波数とDOWN周波数との差分)が閾値周波数よりも小さいUP周波数とDOWN周波数との組合せをサーチする。そして、この条件を満たすUP周波数とDOWN周波数との組合せが検出されたときは、登録部34は、上述した周波数情報として、検出されたUP周波数およびDOWN周波数に基づいて決まる距離を表す距離データを記憶部33内の仮登録テーブルに登録する。ここで、ターゲットが静止しているときは、図2を参照しながら説明したように、そのターゲットに対応する1組のUP周波数およびDOWN周波数は互いにほぼ一致する。また、閾値周波数として、1組のUP周波数およびDOWN周波数に対応するターゲットが静止しているか否かを判定するための十分に小さい値が使用される。そして、登録部34は、1組のUP周波数およびDOWN周波数に対応するターゲットが静止していると判定される場合に、その1組のUP周波数およびDOWN周波数に基づいて決まる距離を表す距離データを仮登録テーブルに登録する。なお、距離データは、例えば、1組のUP周波数およびDOWN周波数の和で表される。
【0034】
ペア生成部35は、登録部34により新たに検出されたUP周波数およびDOWN周波数に対応する距離データと同じまたはほぼ同じ距離データが、既に、仮登録テーブルに登録されているかをチェックする。このとき、仮登録テーブルにおいて、新たに得られた距離データとの差分が予め決められた閾値距離よりも小さい距離データがサーチされる。そして、新たな距離データが過去に仮登録テーブルに登録された距離データとほぼ同じであれば、ペア生成部35は、過去および現在において同じ位置にターゲットが存在していると判定する。すなわち、ターゲットは静止していると判定される。さらに、ペア生成部35は、上記UP周波数およびDOWN周波数が静止物体からの反射波により発生したと判定し、それらのUP周波数およびDOWN周波数をペアリングする。
【0035】
なお、一般に、UP区間において複数のUP周波数が検出され、DOWN区間において複数のDOWN周波数が検出される。この場合、ペア生成部35は、まず、静止物体に対応するUP周波数およびDOWN周波数のペアを確定させ、その後、残りの周波数成分の中から、他のターゲット(主に、移動物体)に対応するUP周波数およびDOWN周波数のペアを決定する。
【0036】
送信制御部36は、基本送信間隔で送信部31に送信波(1つの測定信号)の送信を指示する。また、検出されたUP周波数とDOWN周波数との差分が上記閾値周波数よりも小さい場合であって、そのUP周波数とDOWN周波数に対応する距離との差分が上記閾値距離よりも小さい距離データが仮登録テーブルに登録されていない場合には、送信制御部36は、基本送信間隔よりも短い時間間隔で送信部31に送信波の送信を指示する。
【0037】
図6は、送信制御部36による送信制御について説明する図である。図6(a)に示すように、送信制御部36は、一定の時間間隔(例えば、100m秒間隔(基本送信間隔または第1の時間間隔))で、送信部31に測定信号を出力させる。この例では、時刻1、2、3、4において、それぞれ測定信号1、2、3、4が送信されている。なお、各測定信号は、それぞれ、図1に示すUP区間およびDOWN区間を含む。また、測定信号の周期(測定信号に含まれるUP区間およびDOWN区間の和)は、基本送信間隔に対して十分に短く、例えば1〜10m秒程度である。
【0038】
ただし、基本送信間隔で送信されるある1つの測定信号に対して、差分が閾値周波数よりも小さいUP周波数およびDOWN周波数が検出されたときは、送信制御部36は、その新たに検出されたUP/DOWN周波数に対応する距離データとの差分が上述の閾値距離よりも小さい距離データが仮登録テーブルに登録されているか否かをチェックする。そして、新たな距離データとの差分が上述の閾値距離よりも小さい距離データが仮登録テーブルに登録されていないときは、送信制御部36は、図6(b)に示すように、基本送信間隔で送信される測定信号に加えて、補助測定を行うために、さらに1または複数の測定信号を送信部31に送信させる。例えば、時刻1に送信された測定信号1に基づくビート周波数を測定した際に、上述の条件を満たす距離データが仮登録テーブルに登録されていなければ、送信制御部36は、時刻2よりも前に、送信部31に追加的に測定信号を送信させる。図6(b)に示す例では、時刻1と時刻2との間の時刻1aにおいて、測定信号1aが送信されている。時刻1から時刻1aまでの時間間隔(第2の時間間隔)は、例えば、登録部34、ペア生成部35、出力部37、算出部38の合計処理時間よりも長くなるように設定される。
【0039】
出力部37は、基本送信間隔で、ペア生成部35によるペアリングの結果を出力する。図6(a)に示す例では、例えば、時刻1、2、3、...に送信された測定信号を利用して得られるペアリング結果は、それぞれ時刻2、3、4、...に出力される。また、図6(b)に示す例では、測定信号1および1aに応じて得られるペアリング結果が時刻2に出力され、測定信号2に応じて得られるペアリング結果が時刻3に出力されている。すなわち、出力部37は、基本送信間隔で測定信号が送信されたか否かにかかわらず、基本送信間隔でペア生成部35によるペアリングの結果を出力する。
【0040】
算出部38は、ペア生成部35によりペアリングされたUP周波数およびDOWN周波数に基づいて、物体検知装置1からターゲットまでの距離を算出する。また、算出部38は、ペアリングされたUP周波数およびDOWN周波数に基づいて、物体検知装置1からターゲットまでの距離、およびそのターゲットの速度を算出してもよい。なお、算出部38による算出結果は、例えば、ペア生成部35によるペアリングの結果と共に出力されてもよい。また、算出部38は、IF部11を介して接続される上位装置によって実現されてもよい。
【0041】
測定信号として図1に示す送信波が送信されたときに、ターゲットからの反射波に応じて生成されるビート周波数(UP周波数fup、DOWN周波数fdown)は、下式で表される。
fup=(4β/T)×r+(2f0/c)×V
fdown=(4β/T)×r−(2f0/c)×V
「r」は、物体検知装置1からターゲットまでの距離を表す。「V」は、ターゲットの速度を表す。「c」は、光速を表す。「β」は、測定信号(送信波)の周波数変調帯域を表す。「T」は、測定信号の変調周期を表す。「f0」は、測定信号(送信波)の中心周波数を表す。
【0042】
したがって、各ターゲットについてそれぞれUP周波数およびDOWN周波数のペアリングを行い、各ペアについて連立方程式を解けば、下式(1)により各ターゲットについて距離rが算出され、下式(2)により各ターゲットの速度Vが算出される。
r=(fup+fdown)×T/(8β) ・・・(1)
V=(fup−fdown)×c/(4f0) ・・・(2)
【0043】
このように、実施形態の物体検知方法においては、静止物体に起因すると考えられるUP/DOWN周波数が検出されると、そのUP/DOWN周波数に対応する距離データが仮登録テーブルに登録される。このとき、実質的に同じ距離データが既に仮登録テーブルに登録されていれば、上記UP/DOWN周波数が静止物体により得られた可能性が高いと判定し、上記UP/DOWN周波数のペアリングを確定させる。
【0044】
一方、実質的に同じ距離データが仮登録テーブルに登録されていなければ、上記UP/DOWN周波数が静止物体により得られたのか否かが不定であると判定し、基本送信間隔における次の測定信号の前に追加的に1または複数の測定信号を送信する。そして、この追加的な測定信号を利用して、基本送信間隔における次の測定信号の前に、上記UP/DOWN周波数が静止物体により得られたものか否かを確定させ、UP/DOWN周波数のペアリングを行う。この場合であっても、ペアリングの結果は、基本送信間隔に同期して出力される。すなわち、実施形態の方法によれば、静止物体について確度の高いペアリング情報が、一定の時間間隔で出力される。
【0045】
次に、実施形態の物体検知装置1の動作を詳しく説明する。物体検知装置1は、所定の方向に向けて、定期的に測定信号を送信する。測定信号は、図1に示すように、UP区間およびDOWN区間を含む。UP区間では周波数がリニアに上昇する送信波が送信され、DOWN区間では周波数がリニアに下降する送信波が送信される。そして、物体検知装置1は、ターゲットからの反射波を受信し、UP区間およびDOWN区間のそれぞれにおいて、送信波と反射波とのビート信号を生成する。これにより、各測定信号に対して、UP区間にUP周波数が検出され、DOWN区間にDOWN周波数が検出される。
【0046】
レーダ範囲内に複数のターゲットが存在するときは、物体検知装置1は、複数の反射波を受信する。この場合、UP区間およびDOWN区間のそれぞれにおいて、複数のビート信号が生成される。
【0047】
レーダ範囲内に複数のターゲットが存在するときは、図7に示すように、ビート信号のスペクトラムとして、複数の周波数成分が検出される。このとき、物体検知装置1が受信する反射波は、ノイズを含んでいる。このため、物体検知装置1は、物体検知のために使用するビート信号の周波数成分として、所定の閾値レベルを超える周波数成分のみを抽出する。なお、周波数成分の抽出は、UP区間およびDOWN区間のそれぞれにおいて行われる。
【0048】
図8は、UP周波数およびDOWN周波数から静止物体を検知する方法を説明する図である。なお、図8は、UP区間およびDOWN区間に得られるビート信号のスペクトラムを示している。
【0049】
ターゲットが静止しているときは、そのターゲットから得られるUP周波数およびDOWN周波数は、互いにほぼ同じである。また、UP区間およびDOWN区間において1つのターゲットから得られるビート信号のレベルは、互いにほぼ同じである。よって、物体検知装置1は、静止物体に起因する周波数成分ペアとして、周波数が互いにほぼ一致するUP周波数およびDOWN周波数を抽出する。図8では、2組の周波数成分が検出されている。なお、ペアとして抽出される周波数成分は、互いにレベルが一致またはほぼ一致していることが好ましい。
【0050】
続いて、物体検知装置1は、静止物体における周波数成分を除いて、従来からある種々のアルゴリズムにより、同一のターゲットに起因するものと考えられる周波数成分のペアリングを行い、各ペアに基づいて移動物体を検知する。
【0051】
このように、物体検知装置1は、静止物体に起因するUP周波数およびDOWN周波数のペアリングを行い、残りの周波数成分において、移動物体に起因するUP周波数およびDOWN周波数のペアリングを行う。このため、静止物体の検知が誤っていると、移動物体を正しく検知することができない。そこで、実施形態の物体検知装置1は、静止物体を検知するために、複数回の測定を行う。
【0052】
<動作例1>
図9は、動作例1において得られたビート周波数のスペクトラムを示す図である。図9においては、時刻1〜時刻4にそれぞれ得られたUP区間およびDOWN区間のスペクトラムが示されている。この例では、各時刻のUP区間およびDOWN区間において、それぞれ2つの周波数成分が得られている。以下の説明では、UP区間において得られる2つの周波数成分を、小さい方から順番に、f(u1)、f(u2)と呼び、DOWN区間において得られる2つの周波数成分を、小さい方から順番に、f(d1)、f(d2)と呼ぶことにする。また、図10は、動作例1において記憶部33に格納されるデータの例を示す図である。なお、動作例1では、図6(a)に示すように、基本送信間隔(時刻1、2、3、4)で測定信号が送信されるものとする。
【0053】
時刻1において測定信号1が送信され、図9に示すように、UP区間においてUP周波数f(u1)、f(u2)が検出され、DOWN区間においてDOWN周波数f(d1)、f(d2)が検出されたものとする。この場合、検出された周波数f(u1)、f(u2)、f(d1)、f(d2)は、記憶部33に格納される。また、登録部34は、記憶部33に登録された周波数データを参照し、閾値周波数よりも小さい差分を有するUP周波数およびDOWN周波数のペアをサーチする。閾値周波数は、特に限定されるものではないが、例えば0.1Hzである。この例では、時刻1に送信された測定信号1に対して、UP周波数f(u1)およびDOWN周波数f(d2)が抽出される。
【0054】
登録部34は、抽出した1組の周波数の和を、距離データとして記憶部33に設けられる仮登録テーブルに格納する。この例では、「83.2Hz(=41.6+41.6)」が登録される。ここで、UP周波数とDOWN周波数との和は、上述した式(1)により表されるように、物体検知装置1からターゲットまでの距離rに比例する。また、UP周波数およびDOWN周波数が互いに一致するときは、一般に、ターゲットが静止物体である可能性が高い。したがって、時刻1において「f(u1)+f(d2)」は、物体検知装置1から静止物体までの距離を表す距離データとして仮登録テーブルに登録される。
【0055】
ただし、UP周波数およびDOWN周波数が互いに一致する場合であっても、ターゲットが静止物体であるとは限らない。したがって、物体検知装置1は、時刻1において得られた距離データを、仮登録データとして保持する。
【0056】
時刻2において測定信号2が送信され、周波数f(u1)、f(u2)、f(d1)、f(d2)が検出される。そうすると、登録部34は、閾値周波数よりも小さい差分を有するUP周波数およびDOWN周波数のペアをサーチする。時刻2においては、UP周波数f(u1)およびDOWN周波数f(d1)が抽出される。さらに、登録部34は、抽出したUP周波数およびDOWN周波数のペアに対応する距離データを算出する。この例では「f(u1)+f(d1)」に基づいて、距離データとして「83.2Hz」が得られる。
【0057】
ペア生成部35は、時刻2の測定信号2に応じて得られた距離データと、時刻2の時点で仮登録テーブルに既に登録されている距離データとを比較する。この例では、仮登録テーブルには、時刻1で送信された測定信号1に対応する距離データ「83.2Hz」が登録されており、これらの距離データは互いに一致する。そして、これらの距離データの差分が所定の閾値よりも小いときは、ペア生成部35は、登録部33により抽出されたUP周波数およびDOWN周波数が、静止物体に起因して発生したものと判定し、そのUP周波数およびDOWN周波数をペアリングする。すなわち、静止物体を検知するための周波数ペア「f(u1),f(d1)」が得られる。また、残りの周波数成分から、移動物体を検知するための周波数ペア「f(u2),f(d2)」が得られる。
【0058】
時刻2において算出された距離データは、新たな仮登録データとして記憶部33に登録される。この距離データは、時刻3以降の測定において参照される。なお、時刻3以降の動作は、基本的に、時刻2における動作を同じである。
【0059】
このように、実施形態の物体検知装置は、ある時刻に送信した測定信号に基づいて静止物体に対応する周波数ペアが得られたときには、過去に同様の周波数ペアが登録されているか否をチェックする。そして、過去に同様の周波数ペアが登録されていれば、その周波数ペアに基づいて、静止しているターゲットを検知するためのペアリング情報が出力される。よって、静止物体を検知するための周波数ペアの抽出精度が向上し、さらに、移動物体を検知するための周波数ペアの抽出精度も向上する。この結果、物体検知装置からターゲットまでの距離およびターゲットの速度を精度よく検知できる。
【0060】
<動作例2>
図11は、動作例2において得られたビート周波数のスペクトラムを示す図である。図11においては、時刻1〜時刻3にそれぞれ得られたUP区間およびDOWN区間のスペクトラムが示されている。この例では、各時刻においてUP周波数f(u1)、f(u2)、およびDOWN周波数f(d1)、f(d2)が得られている。
【0061】
動作例2では、時刻1で送信された測定信号に対して、閾値周波数よりも小さい差分を有するUP周波数およびDOWN周波数のペアは存在しない。この場合、仮登録テーブルに距離データが登録されることはない。また、物体検知装置は、静止物体に対応する周波数ペアを確定した後に他のターゲットを検知するアルゴリズムを実行しない。よって、他のアルゴリズム(例えば、ビート周波数の小さい順番に、UP周波数とDOWN周波数とをペアリングする方法)でUP周波数とDOWN周波数とのペアリングが行われる。図11に示す例では、2つの周波数ペア「f(u1),f(d1)」「f(u2),f(d2)」が生成され、これらの周波数ペアに応じてそれぞれターゲットが検知される。
【0062】
時刻2で測定信号が送信されたときには、閾値周波数よりも小さい差分を有するUP周波数およびDOWN周波数のペアとして、「f(u2),f(d1)」が得られる。この場合、動作例1と同様に、この周波数ペアに基づいて距離データが算出される。そして、ペア生成部35は、この距離データとの差分が閾値よりも小さい距離データが仮登録テーブルに既に登録されているか否かをチェックする。この例では、時刻1の測定に際して同一周波数のUP/DOWN周波数ペアは検出されず、時刻2において仮登録テーブルに距離データは登録されていない。したがって、ペア生成部35は、時刻1と同様のアルゴリズムでUP周波数とDOWN周波数とのペアリングを行う。なお、登録部34は、新たに算出した距離データを、時刻3以降のペアリング処理のために、仮登録テーブルに登録する。このとき、登録される距離データは「f(u2)+f(d1)」である。
【0063】
時刻3で送信された測定信号に対しては、閾値周波数よりも小さい差分を有するUP周波数およびDOWN周波数のペアは存在しない。この場合、仮登録テーブルに登録されている距離データは、使用されることなく廃棄される。そして、ペア生成部35は、時刻1と同様のアルゴリズムでUP周波数とDOWN周波数とのペアリングを行う。
【0064】
動作例2は、例えば、レーダ範囲内に物体検知装置から遠ざかる2つの移動物体が存在している状況を示している。すなわち、閾値周波数よりも小さい差分を有するUP/DOWN周波数のペアは、1つの静止物体からの反射波に起因して発生するだけでなく、複数の移動物体からの反射波に起因しても発生し得る。しかし、移動物体からの反射波に起因するUP/DOWN周波数は、一般に、時間経過に伴って変化するので、UP/DOWN周波数が互いに一致する状態が継続することは極めて稀である。したがって、実施形態の物体検知装置は、閾値周波数よりも小さい差分を有するUP/DOWN周波数のペアを検出した場合であっても、その状態が継続しない場合には、そのUP/DOWN周波数のペアに基づいて静止物体を検知することは行わない。この結果、UP/DOWN周波数の誤ったペアリングを回避することができ、ターゲットの検知精度が向上する。
【0065】
<動作例3>
上述した動作例1、2においては、検知精度を高めるために、実質的に同じ距離データが得られるUP/DOWN周波数ペアが繰り返し検出されたときに、静止物体を検知するためのペアが決定される。しかし、この方法では、あるタイミングにおいて実質的に同一のUP/DOWN周波数ペアが検出された場合であっても、その時点で仮登録テーブルに距離データが登録されていないときには、静止物体を検知するためのUP/DOWN周波数ペアは決定されない。例えば、図9に示す例では、時刻1に送信した測定信号に応じて新たな距離データが算出されたときに、仮登録テーブルには前回の測定による距離データは登録されていない。この場合、時刻1における測定を利用して静止物体を検知することができない。
【0066】
したがって、実施形態の物体検知装置は、新たな距離データを算出したときに前回の測定による距離データが登録されていなければ、基本送信間隔で送信されるべき次の測定信号の前に、補助測定を行うための測定信号を送信する。例えば、図6(b)に示す実施例では、測定信号1に対して新たな距離データ1が算出されたときに、仮登録テーブルに過去の距離データが登録されていない。この場合、物体検知装置1は、時刻2において測定信号2を送信する前に、補助測定を行うために、時刻1aにおいて測定信号1aを送信する。そして、物体検知装置1は、測定信号1aに対して新たな距離データ1aを算出したときは、その新たな距離データ1aと先に算出された距離データ1とを比較することで、静止物体を検知するためのペアリングの有効/無効を判定する。
【0067】
図12は、実施形態の物体検知装置の概略動作を示すフローチャートである。このフローチャートの処理は、制御部12により実行される。
ステップS1は、ステップS2〜S5の処理を所定の時間間隔で繰り返し実行するために設けられている。「所定の時間間隔」は、上述した基本送信間隔に相当し、図6に示す例では、100m秒である。
【0068】
ステップS2において、制御部12の出力部37は、前回のペアリング処理の結果を出力する。ここで、ペアリング処理は、ステップS3またはS5に相当する。したがって、例えば、時刻2に実行される処理ループにおいては、時刻1に実行されたステップS3またはS5の処理結果が出力され、時刻3に実行される処理ループにおいては、時刻2に実行されたステップS3またはS5の処理結果が出力される。
【0069】
ステップS3において、制御部12はペアリング処理を実行する。ペアリング処理は、測定信号を送信させる手順、測定信号に対応するビート信号を検出する手順、ビート信号を利用してターゲット毎にUP周波数とDOWN周波数とのペアを生成する手順を含む。なお、ペアリング処理については、図13を参照しながら後で詳しく説明する。
【0070】
ステップS4において、制御部12は、静止物体か移動物体かを判断できないターゲットが存在するか否かをチェックする。そして、静止物体か移動物体かを判断できないターゲットが存在する場合は、ステップS5が実行される。一方、静止物体か移動物体かを判断できないターゲットが存在しないときは、ステップS5が実行されることなく、次の処理ループの実行を待つ。なお、ドップラ変位が閾値よりも小さいUP/DOWN周波数ペアが検出されたときに、そのUP/DOWN周波数に基づいて算出される距離データが仮登録テーブルに登録されていない場合には、ステップS4は「Yes」と判定される。
【0071】
ステップS5において、制御部12は、補助測定によるペアリング処理を実行する。なお、補助測定によるペアリング処理は、ステップS3と同じ手順であってもよいし、ステップS3と異なる手順であってもよい。
【0072】
このように、実施形態の物体検知装置は、一定の時間間隔でUP周波数とDOWN周波数とのペアリングを実行し、一定の時間間隔でそのペアリングの結果を出力する。このとき、物体検知装置は、ステップS5の補助測定を実行したか否かにかかわらず、一定の時間間隔でペアリングの結果を出力する。ここで、ペアリングの結果は、式(1)(2)に示すように、各ターゲットまでの距離および/または各ターゲットの速度を計算するために使用される。したがって、UP周波数とDOWN周波数とのペアリングの結果が一定の時間間隔で出力されると、ターゲットまでの距離、ターゲットの速度、移動物体の軌跡計算または移動方向推定などの処理が容易になる。
【0073】
図13は、ペアリング処理を示すフローチャートである。この処理は、図12のステップS3に相当する。すなわち、このペアリング処理は、一定の時間間隔で制御部12により繰り返し実行される。
【0074】
ステップS11において、送信制御部36は、送信部31に対して測定信号の送信を指示する。測定信号は、図1を参照しながら説明したように、送信波の周波数がリニアに上昇するUP区間および送信波の周波数がリニアに下降するDOWN区間を含む。物体検知装置は、ターゲットからの反射波を受信し、送信波と受信波とを混合することによってビート信号を生成する。生成されたビート信号は、デジタルデータに変換されて制御部12に入力される。そして、制御部12は、ステップS12において、ステップS11で送信された測定信号に対応するビート信号を検出する。このとき、制御部12は、UP区間およびDOWN区間のそれぞれにおいてビート周波数(UP周波数およびDOWN周波数)を検出する。
【0075】
ステップS13において、ペア生成部35は、UP周波数とDOWN周波数との総当りでペアを生成する。続いて、ステップS14〜S15において、制御部12は、電力(又は、信号レベル)が互いに類似しており、且つ、所定の閾値よりも小さい差分を有する、UP周波数およびDOWN周波数のペアをサーチする。そして、上記条件を満たすUP/DOWN周波数ペアが検出されたときは、制御部12は、そのUP/DOWN周波数ペアに対応する距離データを算出する。なお、距離データは、検出されたUP周波数とDOWN周波数の和により表される。
【0076】
ステップS16において、制御部12は、ステップS14〜S15で算出された距離データと実質的に同じ距離データが既に仮登録テーブルに登録されているか否かをチェックする。そして、上記距離データが既に仮登録テーブルに登録されていれば、ステップS17において、制御部12は、ステップS13〜S14で検出されたUP/DOWN周波数を、静止物体に対応するUP/DOWN周波数としてペアとして確定する。ペアを確定する処理は、例えば、フラグを設定することにより実現される。なお、上記距離データが仮登録テーブルに登録されていなければ(ステップS16:No)、ステップS17はスキップされる。そして、ステップS18において、制御部12は、ステップS14〜S15で算出された距離データを仮登録テーブルに登録する。
【0077】
ステップS19において、制御部12は、未処理のペアが残っているかチェックする。そして、未処理のペアが残っていれば、ステップS14〜S18の処理が実行される。このように、ステップS11〜S19においては、静止物に対応するUP/DOWN周波数のペアが確定され、その静止物までの距離データが登録される。
【0078】
ステップS21において、ペア生成部35は、距離データが登録されていないペアを抽出する。ここで抽出されるペアは、静止物でないターゲットを表すUP/DOWN周波数ペアとして、ステップS22以降の処理が実行される。
【0079】
ステップS22において、制御部12は、ステップS14と同様に、電力(又は、信号レベル)が互いに類似しているUP周波数およびDOWN周波数のペアをサーチする。そして、電力が互いに類似していれば、ステップS23において、そのUP/DOWN周波数ペアの距離データが登録される。この距離データは、移動物までの距離を表す確定データとして登録される。このとき、この移動物の速度データも合わせて登録するようにしてもよい。なお、抽出したペアの電力が互いに類似していないときは、制御部12は、UP周波数とDOWN周波数との組合せが不適切であると判定し、処理を終了する。
【0080】
ステップS24において、制御部12は、未処理のペアが残っているかチェックする。そして、未処理のペアが残っていれば、ステップS22〜S23の処理が実行される。ステップS22〜S23を繰り返し実行することにより、各移動物についての距離データが登録される。そして、ステップS25において、制御部12は、新たに登録した距離データ(すなわち、仮登録状態のデータ)を除いて仮登録テーブルを初期化する。すなわち、仮登録テーブルにおいて、確定状態のデータは削除される。なお、仮登録テーブルに残されるデータは、図12のステップS4における「静止物体か移動物体かを判断できないターゲット」に相当する。
【0081】
確定状態のデータは、静止物または移動物であることが確定されているターゲットまでの距離を表す。よって、このデータは、レーダの検出結果として利用することもできる。また、静止物として確定されたペアの距離データは、静止物体までの距離として利用することもできる。
【0082】
図12のステップS5で実行される補助測定によるペアリング処理は、例えば、図13に示すペアリング処理と同じである。ただし、補助測定によるペアリング処理は、図13に示すペアリング処理と異なっていてもよい。この場合、制御部12は、例えば、3回繰り返し測定信号を送信し、各測定信号を利用してそれぞれターゲットまでの距離を算出する。そして、2回以上同じ距離が算出された場合に、制御部12は、その距離を静止物体までの距離として出力する。この場合であっても、結果データは、基本送信間隔に従って出力される。
【0083】
次に、図6(b)および図14を参照しながら動作例3について具体的に説明する。なお、この例では、時刻1において、仮登録テーブルには距離データが登録されていないものとする。
【0084】
時刻1において、ドップラ変位がゼロである周波数ペア(f(u1)、f(d1))が検出される。この場合、周波数ペア(f(u1)、f(d1))は、静止物体を表す候補データである。しかし、時刻1において、仮登録テーブルには距離データは登録されていない。よって、周波数ペア(f(u1)、f(d1))は、静止物体を表す確定データとして使用されず、補助測定が実行される。なお、時刻1において検出された周波数ペア(f(u1)、f(d1))に対応する距離データ(f(u1)+f(d1))は、以降の処理のために仮登録テーブルに登録される。また、時刻1においては、時刻0で得られたペアリング結果が出力される。
【0085】
時刻1aにおいて、仮登録テーブルには、距離データ(f(u1)+f(d1))が登録されている。そして、図6(b)に示すように、測定信号1aが送信され、この測定信号1aに対応するビート周波数が検出される。このとき、図14に示す例では、ドップラ変位がゼロである周波数ペア(f(u1a)、f(d1a)が検出される。この場合、時刻1aにおいて検出された周波数ペア(f(u1a)、f(d1a))に対応する距離データ(f(u1a)+f(d1a))が算出される。続いて、仮登録テーブルに登録されている距離データ(f(u1)+f(d1))と、新たに算出された距離データ(f(u1a)+f(d1a))とが比較される。そして、これらの距離データが互いに一致したときは、時刻1または時刻1aで得られた周波数ペアを、静止物体を表す周波数ペアとして確定する。また、残りの周波数成分をペアリングすることにより、移動物体を表す周波数ペアを生成する。
【0086】
時刻2において、時刻1〜時刻1aで得られたペアリング処理の結果が出力される。すなわち、ペアリング処理の結果は、補助測定を実行した場合であっても、一定の時間間隔で出力される。なお、時刻2においても測定信号が送信され、時刻1と同様のペアリング処理が実行される。
【0087】
<物体検知装置のハードウェア構成>
図15は、物体検知装置の制御部12のハードウェア構成を示す図である。図15において、CPU101は、メモリ103を利用して物体検知プログラムを実行することにより、実施形態の物体検知方法を提供する。記憶装置102は、物体検知プログラムを格納する。なお、記憶装置102は、外部記憶装置であってもよい。メモリ103は、例えば半導体メモリであり、RAM領域およびROM領域を含んで構成される。
【0088】
読み取り装置104は、CPU101の指示に従って可搬型記録媒体105にアクセスする。可搬性記録媒体105は、例えば、半導体デバイス、磁気的作用により情報が入出力される媒体、光学的作用により情報が入出力される媒体を含むものとする。通信インタフェース106は、CPU101の指示に従って、ネットワークを介してデータを送受信する。入出力装置107は、例えば、ユーザからの指示を受け付けるデバイス等に相当する。
【0089】
実施形態に係わる物体検知プログラムは、例えば、下記の形態で提供される。
(1)記憶装置102に予めインストールされている。
(2)可搬型記録媒体105により提供される。
(3)プログラムサーバ110からダウンロードする。
【0090】
そして、上記構成のプロセッサシステムで物体検知プログラムを実行することにより、実施形態に係わる物体検知装置が実現される。すなわち、上記構成のプロセッサシステムで実施形態の物体検知プログラムを実行することにより、登録部34、ペア生成部35、送信制御部36、出力37、算出部38の一部または全部が実現される。また、仮登録テーブルは、例えば、メモリ103上に作成される。
【0091】
以上の各実施例を含む実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)
周波数上昇区間および周波数下降区間を含む送信波を送信する送信部と、
前記送信波と前記送信波に対応する反射波とのビート信号を生成するビート信号生成部と、
前記周波数上昇区間に検出される上昇区間ビート周波数および前記周波数下降区間に検出される下降区間ビート周波数に係わる周波数情報を記憶する記憶部と、
第1の上昇区間ビート周波数と第1の下降区間ビート周波数との差分が閾値周波数よりも小さいときに、前記周波数情報として、前記第1の上昇区間ビート周波数および前記第1の下降区間ビート周波数に基づいて決まる第1の距離を表す距離データを前記記憶部に登録する登録部と、
前記第1の上昇区間ビート周波数と前記第1の下降区間ビート周波数との差分が前記閾値周波数よりも小さいときに前記第1の距離との差分が閾値距離よりも小さい距離データが前記記憶部に既に登録されている場合には、前記第1の上昇区間ビート周波数と前記第1の下降区間ビート周波数とをペアリングするペア生成部と、
第1の時間間隔で前記送信部に前記送信波の送信を指示すると共に、前記第1の上昇区間ビート周波数と前記第1の下降区間ビート周波数との差分が前記閾値周波数よりも小さいときに前記第1の距離との差分が前記閾値距離よりも小さい距離データが前記記憶部に登録されていない場合には、前記第1の時間間隔よりも短い第2の時間間隔で前記送信部に前記送信波の送信を指示する送信制御部と、
前記第1の時間間隔で前記ペア生成部によるペアリングの結果を出力する出力部、
を有する物体検知装置。
(付記2)
付記1に記載の物体検知装置であって、
前記第1の上昇区間ビート周波数と前記第1の下降区間ビート周波数との差分が前記閾値周波数よりも小さいときに前記第1の距離との差分が前記閾値距離よりも小さい距離データが前記記憶部に登録されていない場合には、前記送信制御部は、前記第1の時間間隔で送信される次の送信波の前に、前記送信部に1または複数の送信波を送信させる
ことを特徴とする物体検知装置。
(付記3)
付記1または2に記載の物体検知装置であって、
前記ペア生成部によりペアリングされた前記第1の上昇区間ビート周波数および前記第1の下降区間ビート周波数に基づいて、前記物体検知装置からターゲットまでの距離を算出する算出部をさらに備える
ことを特徴とする物体検知装置。
(付記4)
付記1に記載の物体検知装置であって、
前記周波数上昇区間において前記第1の上昇区間ビート周波数の他に第2の上昇区間ビート周波数が検出され、前記周波数下降区間において前記第1の下降区間ビート周波数の他に第2の下降区間ビート周波数が検出されたときに、前記ペアリング部は、前記第2の上昇区間ビート周波数と前記第2の下降区間ビート周波数とをペアリングする
ことを特徴とする物体検知装置。
(付記5)
付記4に記載の物体検知装置であって、
前記ペア生成部によりペアリングされた前記第1の上昇区間ビート周波数および前記第1の下降区間ビート周波数に基づいて、前記物体検知装置から第1のターゲットまでの距離を算出すると共に、前記ペア生成部によりペアリングされた前記第2の上昇区間ビート周波数および前記第2の下降区間ビート周波数に基づいて、前記物体検知装置から第2のターゲットまでの距離および前記第2のターゲットの速度を算出する算出部をさらに備える
ことを特徴とする物体検知装置。
(付記6)
付記1〜5のいずれか1つに記載の物体検知装置であって、
前記距離データは、対応する上昇区間ビート周波数および下降区間ビート周波数との和で表される
ことを特徴とする物体検知装置。
(付記7)
周波数上昇区間および周波数下降区間を含む送信波を送信する送信部、前記送信波と前記送信波に対応する反射波とのビート信号を生成するビート信号生成部、前記周波数上昇区間に検出される上昇区間ビート周波数および前記周波数下降区間に検出される下降区間ビート周波数に係わる周波数情報を記憶する記憶部、およびプロセッサを備える物体検知装置において、前記プロセッサを、
第1の上昇区間ビート周波数と第1の下降区間ビート周波数との差分が閾値周波数よりも小さいときに、前記周波数情報として、前記第1の上昇区間ビート周波数および前記第1の下降区間ビート周波数に基づいて決まる第1の距離を表す距離データを前記記憶部に登録する登録部、
前記第1の上昇区間ビート周波数と前記第1の下降区間ビート周波数との差分が前記閾値周波数よりも小さいときに前記第1の距離との差分が閾値距離よりも小さい距離データが前記記憶部に既に登録されている場合には、前記第1の上昇区間ビート周波数と前記第1の下降区間ビート周波数とをペアリングするペア生成部、
第1の時間間隔で前記送信部に前記送信波の送信を指示すると共に、前記第1の上昇区間ビート周波数と前記第1の下降区間ビート周波数との差分が前記閾値周波数よりも小さいときに前記第1の距離との差分が前記閾値距離よりも小さい距離データが前記記憶部に登録されていない場合には、前記第1の時間間隔よりも短い第2の時間間隔で前記送信部に前記送信波の送信を指示する送信制御部、
前記第1の時間間隔で前記ペア生成部によるペアリングの結果を出力する出力部、
として機能させるための物体検知プログラム。
【符号の説明】
【0092】
1 物体検知装置
12 制御部
13 発振器
22 ミキサ
31 送信部
32 ビート信号生成部
33 記憶部
34 登録部
35 ペア生成部
36 送信制御部
37 出力部
38 算出部
【技術分野】
【0001】
本発明は、FM−CWレーダを利用して物体を検知する物体検知装置、物体検知方法、物体検知プログラムに係わる。
【背景技術】
【0002】
従来より、FM−CW(Frequency Modulated Continuous Wave)を用いて、車両などの移動物体までの距離およびその速度を検知する物体検知装置(以下、FM−CWレーダ装置と呼ぶことがある。)が実用化されている。FM−CWレーダ装置は、周波数変調された電波(例えば、ミリ波)送信する。そして、送信した電波の周波数と、物体に反射して返ってきた反射波の周波数との周波数差を検出することで、静止物体/移動物体までの距離、および移動物体の速度が算出される。
【0003】
図1は、FM−CWレーダ装置の動作を説明する図である。図1において、fs(t)は、FM−CWレーダ装置から送信される電波(送信波)の周波数を表す。このように、送信波は、周波数がリニアに上昇していく区間(UP区間)、および周波数がリニアに下降していく区間(DOWN区間)を有している。「f0」は送信波の中心周波数、「T」は送信波の変調周期、「β」は送信波の周波数変調帯域を表す。
【0004】
FM−CWレーダ装置は、レーダ範囲内のターゲットからの反射波を受信する。図1において、fr(t)は、反射電波(反射波または受信波)の周波数を表す。受信波は、FM−CWレーダ装置とターゲットとの間の距離に応じて、送信波に対して時間τだけ遅延している。そして、送信波および受信波の周波数は、下記の特性を有する。
(a)ある時刻における受信波は、その時刻よりも時間τだけ前に生成された送信波の反射波である。よって、UP区間においては、受信波の周波数は、現在の送信周波数より低い。また、DOWN区間においては、受信波の周波数は、現在の送信周波数より高い。
(b)FM−CWレーダ装置に近づいてくるターゲットにより得られる受信波は、ドップラ効果により、そのターゲットの速度に応じて周波数が高くなる。また、FM−CWレーダ装置から遠ざかっていくターゲットにより得られる受信波は、ドップラ効果により、そのターゲットの速度に応じて周波数が低くなる。
【0005】
FM−CWレーダ装置は、送信波と受信波とを混合することでビート信号を生成し、ビート周波数を検出する。ビート周波数は、送信波周波数fs(t)と受信波周波数fr(t)との差分に相当する。このとき、UP区間においてはビート周波数fup(以下、UP周波数)が検出され、DOWN区間においてはビート周波数fdown(以下、DOWN周波数)が検出される。図1に示す例では、FM−CWレーダ装置は、FM−CWレーダ装置に近づいてくるターゲットからの反射波を受信している。このため、UP周波数fupよりもDOWN周波数fdownの方が高くなっている。なお、ターゲットがFM−CWレーダ装置から遠ざかるときには、UP周波数fupよりもDOWN周波数fdownの方が低くなる。また、ターゲットが静止しているときは、UP周波数fup、DOWN周波数fdownは互いにほぼ一致する。
【0006】
図2は、1つのターゲットから得られるビート信号のスペクトラムを示す図である。ターゲットが静止しているときは、図2(a)に示すように、UP周波数fupおよびDOWN周波数fdownは互いに一致する。この場合、FM−CWレーダ装置からターゲットまでの距離は、fup、fdownの和または平均(=f1)に基づいて算出される。
【0007】
ターゲットがFM−CWレーダ装置に近づいてくるときは、図2(b)に示すように、UP周波数fupよりもDOWN周波数fdownの方が高くなる。また、ターゲットがFM−CWレーダ装置から遠ざかるときは、図2(c)に示すように、UP周波数fupよりもDOWN周波数fdownの方が低くなる。これらの場合、FM−CWレーダ装置からターゲットまでの距離は、fup、fdownの和または平均に基づいて算出される。また、ターゲットの速度は、fup、fdown間の差分に基づいて算出される。
【0008】
なお、fup、fdown間の差分は、ターゲットの移動に起因するドップラ効果により生じる。したがって、以下の説明では、fup、fdown間の差分を「ドップラ変位」と呼ぶことがある。すなわち、ターゲットの速度が速いときはドップラ変位が大きく、また、ドップラ変位がゼロであるときはターゲットが静止していると判定される。
【0009】
図3は、FM−CWレーダ装置で複数のターゲットを検知する方法を説明する図である。ここでは、ビート周波数として、UP区間においてUP周波数1、2が検出され、DOWN区間においてDOWN周波数1、2が検出されたものとする。また、UP周波数2とDOWN周波数1が互いにほぼ同じであるものとする。さらに、図3(a)に示す例では静止物体Aおよび移動物体Bによりビート信号が生成され、図3(b)に示す例では、2つの移動物体B1、B2によりビート信号が生成されているものとする。
【0010】
レーダ範囲内に存在する物体を検知する際には、UP周波数およびDOWN周波数のペアリングが行われる。そして、各周波数ペアに基づいて対応する物体を検知する。すなわち、例えば、ペアリングされたUP周波数とDOWN周波数との和に基づいてターゲットまでの距離が算出され、ペアリングされたUP周波数とDOWN周波数との差分に基づいてターゲットの速度が算出される。なお、「ペアリング」は、UP周波数とDOWN周波数のペアを決定する処理である。
【0011】
ここで、静止物体により得られる1組のUP周波数およびDOWN周波数は、互いにほぼ一致する。すなわち、静止物体により生じるドップラ変位はほぼゼロである。したがって、図3に示す例において、まず、UP周波数2およびDOWN周波数1がペアリングされる。この場合、静止物体によりUP周波数2およびDOWN周波数1が得られたものと仮定し、周波数f2に基づいてその静止物体までの距離が算出される。続いて、残りのビート信号(すなわち、UP周波数1およびDOWN周波数2)がペアリングされる。そして、移動物体によってUP周波数1およびDOWN周波数2が得られたものと仮定し、周波数f1、f3に基づいてその静止物体までの距離およびその移動物体の速度が算出される。これにより、図3(a)に示す例では、静止物体Aおよび移動物体Bが正しく検知される。
【0012】
しかし、図3(b)に示す例では、上記アルゴリズムでは、UP周波数およびDOWN周波数のペアリングが不適切になる。すなわち、実際には、移動物体B1によりUP周波数1およびDOWN周波数1が生成され、移動物体B2によりUP周波数2およびDOWN周波数2が生成されているにもかかわらず、ドップラ変位がゼロであるUP周波数2およびDOWN周波数1が先にペアリングされ、残りのUP周波数1およびDOWN周波数2がペアリングされることとなる。この結果、移動物体B1、B2まで距離、および移動物体B1、B2の速度を正しく検知できないことがある。
【0013】
なお、関連する技術として、送信手段、ミキサ、周波数算出手段、静止物体周波数検出手段を備える物体検知装置が提案されている。送受信手段は、周波数が上昇する周波数上昇区間と周波数が下降する周波数下降区間とを有する送信波を送信して物体からの反射波を受信する。ミキサは、送信波および反射波を混合して、ビート信号を生成する。周波数算出手段は、周波数上昇区間と周波数下降区間とにおけるビート信号の周波数成分を算出する。静止物体周波数検出手段は、周波数上昇区間と周波数下降区間との一方における周波数成分のレベルが高閾値を超え、他方の区間における同じ周波数成分のレベルが高閾値より小さい低閾値を超えており、かつ両者のレベル差が所定の範囲内であれば、静止している物体の周波数成分として検出する。(例えば、特許文献1)
また、他の関連する技術として、下記の車載用のレーダ装置が提案されている。このレーダ装置は、検出した過去の物標データと今回の物標データとの連続性の判定を、物標との距離差、相対速度差、及び横位置差の条件で行う連続性判定手段を有する。そして、連続性判定手段は、物標の連続性を判定する際に、物標との距離差と相対速度差の判定条件に加えて、前回と今回の物標が横位置差を満足するか、或いは、角度差を満足する条件から連続性を判断する。(例えば、特許文献2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2008−111779号公報
【特許文献2】特開2004−132734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上述のように、従来の検知方法においては、静止物体および移動物体を正しく検知できないことがある。
また、過去の物標データおよび今回の物標データを利用して物標を捕捉するレーダ装置が提案されているが、提案されている構成では、レーダ範囲内に静止物体および移動物体が混在する場合に、検知結果を定期的に出力できないことがある。そして、検知結果が定期的に出力されないと、例えば、移動物体の軌跡計算または移動方向推定などの処理が複雑になる。
【0016】
本発明の課題は、FM−CWレーダを利用して得られる検知結果を定期的に出力する物体検知装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の1つの態様の物体検知装置は、周波数上昇区間および周波数下降区間を含む送信波を送信する送信部と、前記送信波と前記送信波に対応する反射波とのビート信号を生成するビート信号生成部と、前記周波数上昇区間に検出される上昇区間ビート周波数および前記周波数下降区間に検出される下降区間ビート周波数に係わる周波数情報を記憶する記憶部と、第1の上昇区間ビート周波数と第1の下降区間ビート周波数との差分が閾値周波数よりも小さいときに、前記周波数情報として、前記第1の上昇区間ビート周波数および前記第1の下降区間ビート周波数に基づいて決まる第1の距離を表す距離データを前記記憶部に登録する登録部と、前記第1の上昇区間ビート周波数と前記第1の下降区間ビート周波数との差分が前記閾値周波数よりも小さいときに前記第1の距離との差分が閾値距離よりも小さい距離データが前記記憶部に既に登録されている場合には、前記第1の上昇区間ビート周波数と前記第1の下降区間ビート周波数とをペアリングするペア生成部と、第1の時間間隔で前記送信部に前記送信波の送信を指示すると共に、前記第1の上昇区間ビート周波数と前記第1の下降区間ビート周波数との差分が前記閾値周波数よりも小さいときに前記第1の距離との差分が前記閾値距離よりも小さい距離データが前記記憶部に登録されていない場合には、前記第1の時間間隔よりも短い第2の時間間隔で前記送信部に前記送信波の送信を指示する送信制御部と、前記第1の時間間隔で前記ペア生成部によるペアリングの結果を出力する出力部、を有する。
【発明の効果】
【0018】
本出願において開示される構成によれば、FM−CWレーダを利用して得られる検知結果を定期的に出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】FM−CWレーダ装置の動作を説明する図である。
【図2】1つのターゲットから得られるビート信号のスペクトラムを示す図である。
【図3】複数のターゲットを検知する方法を説明する図である。
【図4】実施形態の物体検知装置の構成を示す図である。
【図5】実施形態の物体検知装置の機能を説明するブロック図である。
【図6】送信制御部による送信制御について説明する図である。
【図7】ビート信号のスペクトラムを示す図である。
【図8】UP/DOWN周波数から静止物体を検知する方法を説明する図である。
【図9】動作例1において得られたビート周波数のスペクトラムを示す図である。
【図10】動作例1において記憶部に格納されるデータの例を示す図である。
【図11】動作例2において得られたビート周波数のスペクトラムを示す図である。
【図12】実施形態の物体検知装置の概略動作を示すフローチャートである。
【図13】ペアリング処理を示すフローチャートである。
【図14】補助測定によるペアリングを説明する図である。
【図15】物体検知装置の制御部のハードウェア構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図4は、実施形態の物体検知装置の構成を示す図である。実施形態の物体検知装置1は、IF部11、制御部12、発振器13、フィルタ14、23、26、アンプ15、19、21、24、27、スイッチ16、20、方向性結合器17、アンテナ18、ミキサ22、アナログ信号処理部25、A/D変換器28を備えている。
【0021】
IF部11は、物体検知装置1と上位装置との間のインタフェースを提供する。すなわち、IF部11は、上位装置からの指示を制御部12に通知し、制御部12による処理結果を上位装置に通知する。上位装置は、CPUを備えるコンピュータである。また、上位装置は、物体検知装置1から出力される処理結果を利用して、例えば、検知した移動物体の軌跡計算または移動方向推定などを行う。さらに、上位装置は、物体検知装置1の全体動作を制御するようにしてもよい。
【0022】
発振器13は、制御部12による制御に従って送信波(測定信号)を出力する。送信波は、周波数変調信号であって、周波数がリニアに上昇する周波数上昇区間(以下、UP区間と呼ぶことがある。)、および周波数がリニアに下降する周波数下降区間(以下、DOWN区間と呼ぶことがある。)を含む。なお、発振器13は、例えば、電圧制御発振器であり、制御部12から与えられる制御電圧に対応する周波数で発振する。
【0023】
発振器13から出力される送信波は、フィルタ14により不用な周波数成分が除去される。すなわち、フィルタ14は、必要な周波数成分の送信波のみがアンテナ18を介して無線送信されるように周波数をフィルタリングする。アンプ15は、フィルタ14から出力される送信波を増幅する。スイッチ16は、オン状態に制御されたときに、アンプ15により増幅された送信波を方向性結合器17に出力する。なお、スイッチ16は、例えば制御部12により制御される。方向性結合器17は、スイッチ16から出力される送信波をアンテナ18に導き、アンテナ18を介して入力する反射波をアンプ19に導く。
【0024】
アンテナ18は、方向性結合器17から出力される送信波を所定の方向に向けて無線送信し、送信波に対応する反射波を受信する。アンプ19は、方向性結合器17から出力される反射波を増幅する。スイッチ20は、オン状態に制御されたときに、アンプ19により増幅された反射波をミキサ22に出力する。なお、スイッチ20は、例えば制御部12により制御される。
【0025】
アンプ21は、フィルタ14から出力される送信波を増幅する。ミキサ22は、アンプ21により増幅された送信波と、アンプ19により増幅された反射波とを混合し、ビート信号を生成する。すなわち、ミキサ22により送信波と反射波とのビート信号が生成される。このビート信号の周波数は、送信波の周波数と反射波の周波数との差分に相当する。
【0026】
フィルタ23は、ビート信号に含まれているノイズを除去する。アンプ24は、フィルタ23から出力されるビート信号を増幅する。アナログ信号処理部25は、例えば、ホールド回路および積分回路等を備え、ビート信号を連続した波形に整形する。なお、反射波は、スイッチ20のスイッチングにより細断された波形となることがある。
【0027】
フィルタ26は、アナログ信号処理部25の出力に含まれているビート信号から不用な信号を除去する。アンプ27は、フィルタ26から出力されるビート信号を増幅する。A/D変換器28は、ビート信号をデジタル信号に変換して制御部12へ出力する。
【0028】
制御部12は、例えばデジタル信号処理部(DSP)を備え、ビート信号を表すデジタル信号を利用して物体検知処理を実行する。すなわち、制御部12は、例えばFFTにより、各ビート信号の周波数成分を算出する。続いて、制御部12は、UP区間において検出されるビート周波数成分(以下、UP周波数と呼ぶことがある。)と、DOWN区間において検出されるビート周波数成分(以下、DOWN周波数と呼ぶことがある。)とのペアリングを行う。そして、制御部12は、ペアリングされたUP周波数およびDOWN周波数に基づいて、物体検知装置1からターゲット(静止物体、移動物体)までの距離、および移動物体の速度を算出する。
【0029】
図5は、実施形態の物体検知装置1の機能を説明するブロック図である。実施形態の物体検知装置1は、送信部31、ビート信号生成部32、記憶部33、登録部34、ペア生成部35、送信制御部36、出力37を備える。なお、登録部34、ペア生成部35、送信制御部36、出力37は、制御部12により実現される。また、記憶部33は、制御部12の内部に設けられてもよいし、制御部12の外に設けられてもよい。
【0030】
送信部31は、図4に示す発振器13を含み、送信制御部36からの指示に従って、UP区間(周波数情報区間)およびDOWN区間(周波数下降区間)を含む送信波を生成する。この送信波は、例えば、図1に示すUP区間およびDOWN区間を有するように、連続波(CW:Continuous Wave)の周波数を変調することにより生成される。ここで、送信部31は、送信制御部36から送信指示が与えられると、例えば、1組のUP区間およびDOWN区間を有する送信波を生成する。なお、以下の説明において、1組のUP区間およびDOWN区間を有する送信波を「測定信号」と呼ぶことがある。すなわち、送信制御部36から送信指示が与えられ毎に、送信部31は、1つの測定信号を生成する。また、この例では、UP区間において周波数が上昇する速度およびDOWN区間において周波数が下降する速度は、互いに同じである。また、各測定信号において、UP区間の後にDOWN区間が設けられてもよいし、UP区間の前にDOWN区間が設けられてもよい。
【0031】
ビート信号生成部32は、図4に示すミキサ22およびA/D変換器28を含み、送信波とその送信波に対応する反射波とのビート信号を生成する。このとき、論理的には、1つのターゲットについて1つのビート信号が生成される。生成されるビート信号は、デジタルデータで表され、制御部12に送信される。ここで、ビート信号の周波数(ビート周波数)は、送信波の周波数と対応する反射波の周波数との差分に相当する。なお、以下の説明において、UP区間に生成されるビート信号の周波数を「UP周波数」と呼び、DOWN区間に生成されるビート信号の周波数を「DOWN周波数」と呼ぶことがある。すなわち、論理的には、1つのターゲットについて1組のUP周波数およびDOWN周波数が検出されることになる。
【0032】
記憶部33は、UP区間に検出されるUP周波数とDOWN区間に検出されるDOWN周波数に係わる周波数情報を記憶する。なお、記憶部33は、制御部12が有するメモリ領域または制御部12に接続するメモリ領域により実現される。
【0033】
登録部34は、ドップラ変位(すなわち、UP周波数とDOWN周波数との差分)が閾値周波数よりも小さいUP周波数とDOWN周波数との組合せをサーチする。そして、この条件を満たすUP周波数とDOWN周波数との組合せが検出されたときは、登録部34は、上述した周波数情報として、検出されたUP周波数およびDOWN周波数に基づいて決まる距離を表す距離データを記憶部33内の仮登録テーブルに登録する。ここで、ターゲットが静止しているときは、図2を参照しながら説明したように、そのターゲットに対応する1組のUP周波数およびDOWN周波数は互いにほぼ一致する。また、閾値周波数として、1組のUP周波数およびDOWN周波数に対応するターゲットが静止しているか否かを判定するための十分に小さい値が使用される。そして、登録部34は、1組のUP周波数およびDOWN周波数に対応するターゲットが静止していると判定される場合に、その1組のUP周波数およびDOWN周波数に基づいて決まる距離を表す距離データを仮登録テーブルに登録する。なお、距離データは、例えば、1組のUP周波数およびDOWN周波数の和で表される。
【0034】
ペア生成部35は、登録部34により新たに検出されたUP周波数およびDOWN周波数に対応する距離データと同じまたはほぼ同じ距離データが、既に、仮登録テーブルに登録されているかをチェックする。このとき、仮登録テーブルにおいて、新たに得られた距離データとの差分が予め決められた閾値距離よりも小さい距離データがサーチされる。そして、新たな距離データが過去に仮登録テーブルに登録された距離データとほぼ同じであれば、ペア生成部35は、過去および現在において同じ位置にターゲットが存在していると判定する。すなわち、ターゲットは静止していると判定される。さらに、ペア生成部35は、上記UP周波数およびDOWN周波数が静止物体からの反射波により発生したと判定し、それらのUP周波数およびDOWN周波数をペアリングする。
【0035】
なお、一般に、UP区間において複数のUP周波数が検出され、DOWN区間において複数のDOWN周波数が検出される。この場合、ペア生成部35は、まず、静止物体に対応するUP周波数およびDOWN周波数のペアを確定させ、その後、残りの周波数成分の中から、他のターゲット(主に、移動物体)に対応するUP周波数およびDOWN周波数のペアを決定する。
【0036】
送信制御部36は、基本送信間隔で送信部31に送信波(1つの測定信号)の送信を指示する。また、検出されたUP周波数とDOWN周波数との差分が上記閾値周波数よりも小さい場合であって、そのUP周波数とDOWN周波数に対応する距離との差分が上記閾値距離よりも小さい距離データが仮登録テーブルに登録されていない場合には、送信制御部36は、基本送信間隔よりも短い時間間隔で送信部31に送信波の送信を指示する。
【0037】
図6は、送信制御部36による送信制御について説明する図である。図6(a)に示すように、送信制御部36は、一定の時間間隔(例えば、100m秒間隔(基本送信間隔または第1の時間間隔))で、送信部31に測定信号を出力させる。この例では、時刻1、2、3、4において、それぞれ測定信号1、2、3、4が送信されている。なお、各測定信号は、それぞれ、図1に示すUP区間およびDOWN区間を含む。また、測定信号の周期(測定信号に含まれるUP区間およびDOWN区間の和)は、基本送信間隔に対して十分に短く、例えば1〜10m秒程度である。
【0038】
ただし、基本送信間隔で送信されるある1つの測定信号に対して、差分が閾値周波数よりも小さいUP周波数およびDOWN周波数が検出されたときは、送信制御部36は、その新たに検出されたUP/DOWN周波数に対応する距離データとの差分が上述の閾値距離よりも小さい距離データが仮登録テーブルに登録されているか否かをチェックする。そして、新たな距離データとの差分が上述の閾値距離よりも小さい距離データが仮登録テーブルに登録されていないときは、送信制御部36は、図6(b)に示すように、基本送信間隔で送信される測定信号に加えて、補助測定を行うために、さらに1または複数の測定信号を送信部31に送信させる。例えば、時刻1に送信された測定信号1に基づくビート周波数を測定した際に、上述の条件を満たす距離データが仮登録テーブルに登録されていなければ、送信制御部36は、時刻2よりも前に、送信部31に追加的に測定信号を送信させる。図6(b)に示す例では、時刻1と時刻2との間の時刻1aにおいて、測定信号1aが送信されている。時刻1から時刻1aまでの時間間隔(第2の時間間隔)は、例えば、登録部34、ペア生成部35、出力部37、算出部38の合計処理時間よりも長くなるように設定される。
【0039】
出力部37は、基本送信間隔で、ペア生成部35によるペアリングの結果を出力する。図6(a)に示す例では、例えば、時刻1、2、3、...に送信された測定信号を利用して得られるペアリング結果は、それぞれ時刻2、3、4、...に出力される。また、図6(b)に示す例では、測定信号1および1aに応じて得られるペアリング結果が時刻2に出力され、測定信号2に応じて得られるペアリング結果が時刻3に出力されている。すなわち、出力部37は、基本送信間隔で測定信号が送信されたか否かにかかわらず、基本送信間隔でペア生成部35によるペアリングの結果を出力する。
【0040】
算出部38は、ペア生成部35によりペアリングされたUP周波数およびDOWN周波数に基づいて、物体検知装置1からターゲットまでの距離を算出する。また、算出部38は、ペアリングされたUP周波数およびDOWN周波数に基づいて、物体検知装置1からターゲットまでの距離、およびそのターゲットの速度を算出してもよい。なお、算出部38による算出結果は、例えば、ペア生成部35によるペアリングの結果と共に出力されてもよい。また、算出部38は、IF部11を介して接続される上位装置によって実現されてもよい。
【0041】
測定信号として図1に示す送信波が送信されたときに、ターゲットからの反射波に応じて生成されるビート周波数(UP周波数fup、DOWN周波数fdown)は、下式で表される。
fup=(4β/T)×r+(2f0/c)×V
fdown=(4β/T)×r−(2f0/c)×V
「r」は、物体検知装置1からターゲットまでの距離を表す。「V」は、ターゲットの速度を表す。「c」は、光速を表す。「β」は、測定信号(送信波)の周波数変調帯域を表す。「T」は、測定信号の変調周期を表す。「f0」は、測定信号(送信波)の中心周波数を表す。
【0042】
したがって、各ターゲットについてそれぞれUP周波数およびDOWN周波数のペアリングを行い、各ペアについて連立方程式を解けば、下式(1)により各ターゲットについて距離rが算出され、下式(2)により各ターゲットの速度Vが算出される。
r=(fup+fdown)×T/(8β) ・・・(1)
V=(fup−fdown)×c/(4f0) ・・・(2)
【0043】
このように、実施形態の物体検知方法においては、静止物体に起因すると考えられるUP/DOWN周波数が検出されると、そのUP/DOWN周波数に対応する距離データが仮登録テーブルに登録される。このとき、実質的に同じ距離データが既に仮登録テーブルに登録されていれば、上記UP/DOWN周波数が静止物体により得られた可能性が高いと判定し、上記UP/DOWN周波数のペアリングを確定させる。
【0044】
一方、実質的に同じ距離データが仮登録テーブルに登録されていなければ、上記UP/DOWN周波数が静止物体により得られたのか否かが不定であると判定し、基本送信間隔における次の測定信号の前に追加的に1または複数の測定信号を送信する。そして、この追加的な測定信号を利用して、基本送信間隔における次の測定信号の前に、上記UP/DOWN周波数が静止物体により得られたものか否かを確定させ、UP/DOWN周波数のペアリングを行う。この場合であっても、ペアリングの結果は、基本送信間隔に同期して出力される。すなわち、実施形態の方法によれば、静止物体について確度の高いペアリング情報が、一定の時間間隔で出力される。
【0045】
次に、実施形態の物体検知装置1の動作を詳しく説明する。物体検知装置1は、所定の方向に向けて、定期的に測定信号を送信する。測定信号は、図1に示すように、UP区間およびDOWN区間を含む。UP区間では周波数がリニアに上昇する送信波が送信され、DOWN区間では周波数がリニアに下降する送信波が送信される。そして、物体検知装置1は、ターゲットからの反射波を受信し、UP区間およびDOWN区間のそれぞれにおいて、送信波と反射波とのビート信号を生成する。これにより、各測定信号に対して、UP区間にUP周波数が検出され、DOWN区間にDOWN周波数が検出される。
【0046】
レーダ範囲内に複数のターゲットが存在するときは、物体検知装置1は、複数の反射波を受信する。この場合、UP区間およびDOWN区間のそれぞれにおいて、複数のビート信号が生成される。
【0047】
レーダ範囲内に複数のターゲットが存在するときは、図7に示すように、ビート信号のスペクトラムとして、複数の周波数成分が検出される。このとき、物体検知装置1が受信する反射波は、ノイズを含んでいる。このため、物体検知装置1は、物体検知のために使用するビート信号の周波数成分として、所定の閾値レベルを超える周波数成分のみを抽出する。なお、周波数成分の抽出は、UP区間およびDOWN区間のそれぞれにおいて行われる。
【0048】
図8は、UP周波数およびDOWN周波数から静止物体を検知する方法を説明する図である。なお、図8は、UP区間およびDOWN区間に得られるビート信号のスペクトラムを示している。
【0049】
ターゲットが静止しているときは、そのターゲットから得られるUP周波数およびDOWN周波数は、互いにほぼ同じである。また、UP区間およびDOWN区間において1つのターゲットから得られるビート信号のレベルは、互いにほぼ同じである。よって、物体検知装置1は、静止物体に起因する周波数成分ペアとして、周波数が互いにほぼ一致するUP周波数およびDOWN周波数を抽出する。図8では、2組の周波数成分が検出されている。なお、ペアとして抽出される周波数成分は、互いにレベルが一致またはほぼ一致していることが好ましい。
【0050】
続いて、物体検知装置1は、静止物体における周波数成分を除いて、従来からある種々のアルゴリズムにより、同一のターゲットに起因するものと考えられる周波数成分のペアリングを行い、各ペアに基づいて移動物体を検知する。
【0051】
このように、物体検知装置1は、静止物体に起因するUP周波数およびDOWN周波数のペアリングを行い、残りの周波数成分において、移動物体に起因するUP周波数およびDOWN周波数のペアリングを行う。このため、静止物体の検知が誤っていると、移動物体を正しく検知することができない。そこで、実施形態の物体検知装置1は、静止物体を検知するために、複数回の測定を行う。
【0052】
<動作例1>
図9は、動作例1において得られたビート周波数のスペクトラムを示す図である。図9においては、時刻1〜時刻4にそれぞれ得られたUP区間およびDOWN区間のスペクトラムが示されている。この例では、各時刻のUP区間およびDOWN区間において、それぞれ2つの周波数成分が得られている。以下の説明では、UP区間において得られる2つの周波数成分を、小さい方から順番に、f(u1)、f(u2)と呼び、DOWN区間において得られる2つの周波数成分を、小さい方から順番に、f(d1)、f(d2)と呼ぶことにする。また、図10は、動作例1において記憶部33に格納されるデータの例を示す図である。なお、動作例1では、図6(a)に示すように、基本送信間隔(時刻1、2、3、4)で測定信号が送信されるものとする。
【0053】
時刻1において測定信号1が送信され、図9に示すように、UP区間においてUP周波数f(u1)、f(u2)が検出され、DOWN区間においてDOWN周波数f(d1)、f(d2)が検出されたものとする。この場合、検出された周波数f(u1)、f(u2)、f(d1)、f(d2)は、記憶部33に格納される。また、登録部34は、記憶部33に登録された周波数データを参照し、閾値周波数よりも小さい差分を有するUP周波数およびDOWN周波数のペアをサーチする。閾値周波数は、特に限定されるものではないが、例えば0.1Hzである。この例では、時刻1に送信された測定信号1に対して、UP周波数f(u1)およびDOWN周波数f(d2)が抽出される。
【0054】
登録部34は、抽出した1組の周波数の和を、距離データとして記憶部33に設けられる仮登録テーブルに格納する。この例では、「83.2Hz(=41.6+41.6)」が登録される。ここで、UP周波数とDOWN周波数との和は、上述した式(1)により表されるように、物体検知装置1からターゲットまでの距離rに比例する。また、UP周波数およびDOWN周波数が互いに一致するときは、一般に、ターゲットが静止物体である可能性が高い。したがって、時刻1において「f(u1)+f(d2)」は、物体検知装置1から静止物体までの距離を表す距離データとして仮登録テーブルに登録される。
【0055】
ただし、UP周波数およびDOWN周波数が互いに一致する場合であっても、ターゲットが静止物体であるとは限らない。したがって、物体検知装置1は、時刻1において得られた距離データを、仮登録データとして保持する。
【0056】
時刻2において測定信号2が送信され、周波数f(u1)、f(u2)、f(d1)、f(d2)が検出される。そうすると、登録部34は、閾値周波数よりも小さい差分を有するUP周波数およびDOWN周波数のペアをサーチする。時刻2においては、UP周波数f(u1)およびDOWN周波数f(d1)が抽出される。さらに、登録部34は、抽出したUP周波数およびDOWN周波数のペアに対応する距離データを算出する。この例では「f(u1)+f(d1)」に基づいて、距離データとして「83.2Hz」が得られる。
【0057】
ペア生成部35は、時刻2の測定信号2に応じて得られた距離データと、時刻2の時点で仮登録テーブルに既に登録されている距離データとを比較する。この例では、仮登録テーブルには、時刻1で送信された測定信号1に対応する距離データ「83.2Hz」が登録されており、これらの距離データは互いに一致する。そして、これらの距離データの差分が所定の閾値よりも小いときは、ペア生成部35は、登録部33により抽出されたUP周波数およびDOWN周波数が、静止物体に起因して発生したものと判定し、そのUP周波数およびDOWN周波数をペアリングする。すなわち、静止物体を検知するための周波数ペア「f(u1),f(d1)」が得られる。また、残りの周波数成分から、移動物体を検知するための周波数ペア「f(u2),f(d2)」が得られる。
【0058】
時刻2において算出された距離データは、新たな仮登録データとして記憶部33に登録される。この距離データは、時刻3以降の測定において参照される。なお、時刻3以降の動作は、基本的に、時刻2における動作を同じである。
【0059】
このように、実施形態の物体検知装置は、ある時刻に送信した測定信号に基づいて静止物体に対応する周波数ペアが得られたときには、過去に同様の周波数ペアが登録されているか否をチェックする。そして、過去に同様の周波数ペアが登録されていれば、その周波数ペアに基づいて、静止しているターゲットを検知するためのペアリング情報が出力される。よって、静止物体を検知するための周波数ペアの抽出精度が向上し、さらに、移動物体を検知するための周波数ペアの抽出精度も向上する。この結果、物体検知装置からターゲットまでの距離およびターゲットの速度を精度よく検知できる。
【0060】
<動作例2>
図11は、動作例2において得られたビート周波数のスペクトラムを示す図である。図11においては、時刻1〜時刻3にそれぞれ得られたUP区間およびDOWN区間のスペクトラムが示されている。この例では、各時刻においてUP周波数f(u1)、f(u2)、およびDOWN周波数f(d1)、f(d2)が得られている。
【0061】
動作例2では、時刻1で送信された測定信号に対して、閾値周波数よりも小さい差分を有するUP周波数およびDOWN周波数のペアは存在しない。この場合、仮登録テーブルに距離データが登録されることはない。また、物体検知装置は、静止物体に対応する周波数ペアを確定した後に他のターゲットを検知するアルゴリズムを実行しない。よって、他のアルゴリズム(例えば、ビート周波数の小さい順番に、UP周波数とDOWN周波数とをペアリングする方法)でUP周波数とDOWN周波数とのペアリングが行われる。図11に示す例では、2つの周波数ペア「f(u1),f(d1)」「f(u2),f(d2)」が生成され、これらの周波数ペアに応じてそれぞれターゲットが検知される。
【0062】
時刻2で測定信号が送信されたときには、閾値周波数よりも小さい差分を有するUP周波数およびDOWN周波数のペアとして、「f(u2),f(d1)」が得られる。この場合、動作例1と同様に、この周波数ペアに基づいて距離データが算出される。そして、ペア生成部35は、この距離データとの差分が閾値よりも小さい距離データが仮登録テーブルに既に登録されているか否かをチェックする。この例では、時刻1の測定に際して同一周波数のUP/DOWN周波数ペアは検出されず、時刻2において仮登録テーブルに距離データは登録されていない。したがって、ペア生成部35は、時刻1と同様のアルゴリズムでUP周波数とDOWN周波数とのペアリングを行う。なお、登録部34は、新たに算出した距離データを、時刻3以降のペアリング処理のために、仮登録テーブルに登録する。このとき、登録される距離データは「f(u2)+f(d1)」である。
【0063】
時刻3で送信された測定信号に対しては、閾値周波数よりも小さい差分を有するUP周波数およびDOWN周波数のペアは存在しない。この場合、仮登録テーブルに登録されている距離データは、使用されることなく廃棄される。そして、ペア生成部35は、時刻1と同様のアルゴリズムでUP周波数とDOWN周波数とのペアリングを行う。
【0064】
動作例2は、例えば、レーダ範囲内に物体検知装置から遠ざかる2つの移動物体が存在している状況を示している。すなわち、閾値周波数よりも小さい差分を有するUP/DOWN周波数のペアは、1つの静止物体からの反射波に起因して発生するだけでなく、複数の移動物体からの反射波に起因しても発生し得る。しかし、移動物体からの反射波に起因するUP/DOWN周波数は、一般に、時間経過に伴って変化するので、UP/DOWN周波数が互いに一致する状態が継続することは極めて稀である。したがって、実施形態の物体検知装置は、閾値周波数よりも小さい差分を有するUP/DOWN周波数のペアを検出した場合であっても、その状態が継続しない場合には、そのUP/DOWN周波数のペアに基づいて静止物体を検知することは行わない。この結果、UP/DOWN周波数の誤ったペアリングを回避することができ、ターゲットの検知精度が向上する。
【0065】
<動作例3>
上述した動作例1、2においては、検知精度を高めるために、実質的に同じ距離データが得られるUP/DOWN周波数ペアが繰り返し検出されたときに、静止物体を検知するためのペアが決定される。しかし、この方法では、あるタイミングにおいて実質的に同一のUP/DOWN周波数ペアが検出された場合であっても、その時点で仮登録テーブルに距離データが登録されていないときには、静止物体を検知するためのUP/DOWN周波数ペアは決定されない。例えば、図9に示す例では、時刻1に送信した測定信号に応じて新たな距離データが算出されたときに、仮登録テーブルには前回の測定による距離データは登録されていない。この場合、時刻1における測定を利用して静止物体を検知することができない。
【0066】
したがって、実施形態の物体検知装置は、新たな距離データを算出したときに前回の測定による距離データが登録されていなければ、基本送信間隔で送信されるべき次の測定信号の前に、補助測定を行うための測定信号を送信する。例えば、図6(b)に示す実施例では、測定信号1に対して新たな距離データ1が算出されたときに、仮登録テーブルに過去の距離データが登録されていない。この場合、物体検知装置1は、時刻2において測定信号2を送信する前に、補助測定を行うために、時刻1aにおいて測定信号1aを送信する。そして、物体検知装置1は、測定信号1aに対して新たな距離データ1aを算出したときは、その新たな距離データ1aと先に算出された距離データ1とを比較することで、静止物体を検知するためのペアリングの有効/無効を判定する。
【0067】
図12は、実施形態の物体検知装置の概略動作を示すフローチャートである。このフローチャートの処理は、制御部12により実行される。
ステップS1は、ステップS2〜S5の処理を所定の時間間隔で繰り返し実行するために設けられている。「所定の時間間隔」は、上述した基本送信間隔に相当し、図6に示す例では、100m秒である。
【0068】
ステップS2において、制御部12の出力部37は、前回のペアリング処理の結果を出力する。ここで、ペアリング処理は、ステップS3またはS5に相当する。したがって、例えば、時刻2に実行される処理ループにおいては、時刻1に実行されたステップS3またはS5の処理結果が出力され、時刻3に実行される処理ループにおいては、時刻2に実行されたステップS3またはS5の処理結果が出力される。
【0069】
ステップS3において、制御部12はペアリング処理を実行する。ペアリング処理は、測定信号を送信させる手順、測定信号に対応するビート信号を検出する手順、ビート信号を利用してターゲット毎にUP周波数とDOWN周波数とのペアを生成する手順を含む。なお、ペアリング処理については、図13を参照しながら後で詳しく説明する。
【0070】
ステップS4において、制御部12は、静止物体か移動物体かを判断できないターゲットが存在するか否かをチェックする。そして、静止物体か移動物体かを判断できないターゲットが存在する場合は、ステップS5が実行される。一方、静止物体か移動物体かを判断できないターゲットが存在しないときは、ステップS5が実行されることなく、次の処理ループの実行を待つ。なお、ドップラ変位が閾値よりも小さいUP/DOWN周波数ペアが検出されたときに、そのUP/DOWN周波数に基づいて算出される距離データが仮登録テーブルに登録されていない場合には、ステップS4は「Yes」と判定される。
【0071】
ステップS5において、制御部12は、補助測定によるペアリング処理を実行する。なお、補助測定によるペアリング処理は、ステップS3と同じ手順であってもよいし、ステップS3と異なる手順であってもよい。
【0072】
このように、実施形態の物体検知装置は、一定の時間間隔でUP周波数とDOWN周波数とのペアリングを実行し、一定の時間間隔でそのペアリングの結果を出力する。このとき、物体検知装置は、ステップS5の補助測定を実行したか否かにかかわらず、一定の時間間隔でペアリングの結果を出力する。ここで、ペアリングの結果は、式(1)(2)に示すように、各ターゲットまでの距離および/または各ターゲットの速度を計算するために使用される。したがって、UP周波数とDOWN周波数とのペアリングの結果が一定の時間間隔で出力されると、ターゲットまでの距離、ターゲットの速度、移動物体の軌跡計算または移動方向推定などの処理が容易になる。
【0073】
図13は、ペアリング処理を示すフローチャートである。この処理は、図12のステップS3に相当する。すなわち、このペアリング処理は、一定の時間間隔で制御部12により繰り返し実行される。
【0074】
ステップS11において、送信制御部36は、送信部31に対して測定信号の送信を指示する。測定信号は、図1を参照しながら説明したように、送信波の周波数がリニアに上昇するUP区間および送信波の周波数がリニアに下降するDOWN区間を含む。物体検知装置は、ターゲットからの反射波を受信し、送信波と受信波とを混合することによってビート信号を生成する。生成されたビート信号は、デジタルデータに変換されて制御部12に入力される。そして、制御部12は、ステップS12において、ステップS11で送信された測定信号に対応するビート信号を検出する。このとき、制御部12は、UP区間およびDOWN区間のそれぞれにおいてビート周波数(UP周波数およびDOWN周波数)を検出する。
【0075】
ステップS13において、ペア生成部35は、UP周波数とDOWN周波数との総当りでペアを生成する。続いて、ステップS14〜S15において、制御部12は、電力(又は、信号レベル)が互いに類似しており、且つ、所定の閾値よりも小さい差分を有する、UP周波数およびDOWN周波数のペアをサーチする。そして、上記条件を満たすUP/DOWN周波数ペアが検出されたときは、制御部12は、そのUP/DOWN周波数ペアに対応する距離データを算出する。なお、距離データは、検出されたUP周波数とDOWN周波数の和により表される。
【0076】
ステップS16において、制御部12は、ステップS14〜S15で算出された距離データと実質的に同じ距離データが既に仮登録テーブルに登録されているか否かをチェックする。そして、上記距離データが既に仮登録テーブルに登録されていれば、ステップS17において、制御部12は、ステップS13〜S14で検出されたUP/DOWN周波数を、静止物体に対応するUP/DOWN周波数としてペアとして確定する。ペアを確定する処理は、例えば、フラグを設定することにより実現される。なお、上記距離データが仮登録テーブルに登録されていなければ(ステップS16:No)、ステップS17はスキップされる。そして、ステップS18において、制御部12は、ステップS14〜S15で算出された距離データを仮登録テーブルに登録する。
【0077】
ステップS19において、制御部12は、未処理のペアが残っているかチェックする。そして、未処理のペアが残っていれば、ステップS14〜S18の処理が実行される。このように、ステップS11〜S19においては、静止物に対応するUP/DOWN周波数のペアが確定され、その静止物までの距離データが登録される。
【0078】
ステップS21において、ペア生成部35は、距離データが登録されていないペアを抽出する。ここで抽出されるペアは、静止物でないターゲットを表すUP/DOWN周波数ペアとして、ステップS22以降の処理が実行される。
【0079】
ステップS22において、制御部12は、ステップS14と同様に、電力(又は、信号レベル)が互いに類似しているUP周波数およびDOWN周波数のペアをサーチする。そして、電力が互いに類似していれば、ステップS23において、そのUP/DOWN周波数ペアの距離データが登録される。この距離データは、移動物までの距離を表す確定データとして登録される。このとき、この移動物の速度データも合わせて登録するようにしてもよい。なお、抽出したペアの電力が互いに類似していないときは、制御部12は、UP周波数とDOWN周波数との組合せが不適切であると判定し、処理を終了する。
【0080】
ステップS24において、制御部12は、未処理のペアが残っているかチェックする。そして、未処理のペアが残っていれば、ステップS22〜S23の処理が実行される。ステップS22〜S23を繰り返し実行することにより、各移動物についての距離データが登録される。そして、ステップS25において、制御部12は、新たに登録した距離データ(すなわち、仮登録状態のデータ)を除いて仮登録テーブルを初期化する。すなわち、仮登録テーブルにおいて、確定状態のデータは削除される。なお、仮登録テーブルに残されるデータは、図12のステップS4における「静止物体か移動物体かを判断できないターゲット」に相当する。
【0081】
確定状態のデータは、静止物または移動物であることが確定されているターゲットまでの距離を表す。よって、このデータは、レーダの検出結果として利用することもできる。また、静止物として確定されたペアの距離データは、静止物体までの距離として利用することもできる。
【0082】
図12のステップS5で実行される補助測定によるペアリング処理は、例えば、図13に示すペアリング処理と同じである。ただし、補助測定によるペアリング処理は、図13に示すペアリング処理と異なっていてもよい。この場合、制御部12は、例えば、3回繰り返し測定信号を送信し、各測定信号を利用してそれぞれターゲットまでの距離を算出する。そして、2回以上同じ距離が算出された場合に、制御部12は、その距離を静止物体までの距離として出力する。この場合であっても、結果データは、基本送信間隔に従って出力される。
【0083】
次に、図6(b)および図14を参照しながら動作例3について具体的に説明する。なお、この例では、時刻1において、仮登録テーブルには距離データが登録されていないものとする。
【0084】
時刻1において、ドップラ変位がゼロである周波数ペア(f(u1)、f(d1))が検出される。この場合、周波数ペア(f(u1)、f(d1))は、静止物体を表す候補データである。しかし、時刻1において、仮登録テーブルには距離データは登録されていない。よって、周波数ペア(f(u1)、f(d1))は、静止物体を表す確定データとして使用されず、補助測定が実行される。なお、時刻1において検出された周波数ペア(f(u1)、f(d1))に対応する距離データ(f(u1)+f(d1))は、以降の処理のために仮登録テーブルに登録される。また、時刻1においては、時刻0で得られたペアリング結果が出力される。
【0085】
時刻1aにおいて、仮登録テーブルには、距離データ(f(u1)+f(d1))が登録されている。そして、図6(b)に示すように、測定信号1aが送信され、この測定信号1aに対応するビート周波数が検出される。このとき、図14に示す例では、ドップラ変位がゼロである周波数ペア(f(u1a)、f(d1a)が検出される。この場合、時刻1aにおいて検出された周波数ペア(f(u1a)、f(d1a))に対応する距離データ(f(u1a)+f(d1a))が算出される。続いて、仮登録テーブルに登録されている距離データ(f(u1)+f(d1))と、新たに算出された距離データ(f(u1a)+f(d1a))とが比較される。そして、これらの距離データが互いに一致したときは、時刻1または時刻1aで得られた周波数ペアを、静止物体を表す周波数ペアとして確定する。また、残りの周波数成分をペアリングすることにより、移動物体を表す周波数ペアを生成する。
【0086】
時刻2において、時刻1〜時刻1aで得られたペアリング処理の結果が出力される。すなわち、ペアリング処理の結果は、補助測定を実行した場合であっても、一定の時間間隔で出力される。なお、時刻2においても測定信号が送信され、時刻1と同様のペアリング処理が実行される。
【0087】
<物体検知装置のハードウェア構成>
図15は、物体検知装置の制御部12のハードウェア構成を示す図である。図15において、CPU101は、メモリ103を利用して物体検知プログラムを実行することにより、実施形態の物体検知方法を提供する。記憶装置102は、物体検知プログラムを格納する。なお、記憶装置102は、外部記憶装置であってもよい。メモリ103は、例えば半導体メモリであり、RAM領域およびROM領域を含んで構成される。
【0088】
読み取り装置104は、CPU101の指示に従って可搬型記録媒体105にアクセスする。可搬性記録媒体105は、例えば、半導体デバイス、磁気的作用により情報が入出力される媒体、光学的作用により情報が入出力される媒体を含むものとする。通信インタフェース106は、CPU101の指示に従って、ネットワークを介してデータを送受信する。入出力装置107は、例えば、ユーザからの指示を受け付けるデバイス等に相当する。
【0089】
実施形態に係わる物体検知プログラムは、例えば、下記の形態で提供される。
(1)記憶装置102に予めインストールされている。
(2)可搬型記録媒体105により提供される。
(3)プログラムサーバ110からダウンロードする。
【0090】
そして、上記構成のプロセッサシステムで物体検知プログラムを実行することにより、実施形態に係わる物体検知装置が実現される。すなわち、上記構成のプロセッサシステムで実施形態の物体検知プログラムを実行することにより、登録部34、ペア生成部35、送信制御部36、出力37、算出部38の一部または全部が実現される。また、仮登録テーブルは、例えば、メモリ103上に作成される。
【0091】
以上の各実施例を含む実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)
周波数上昇区間および周波数下降区間を含む送信波を送信する送信部と、
前記送信波と前記送信波に対応する反射波とのビート信号を生成するビート信号生成部と、
前記周波数上昇区間に検出される上昇区間ビート周波数および前記周波数下降区間に検出される下降区間ビート周波数に係わる周波数情報を記憶する記憶部と、
第1の上昇区間ビート周波数と第1の下降区間ビート周波数との差分が閾値周波数よりも小さいときに、前記周波数情報として、前記第1の上昇区間ビート周波数および前記第1の下降区間ビート周波数に基づいて決まる第1の距離を表す距離データを前記記憶部に登録する登録部と、
前記第1の上昇区間ビート周波数と前記第1の下降区間ビート周波数との差分が前記閾値周波数よりも小さいときに前記第1の距離との差分が閾値距離よりも小さい距離データが前記記憶部に既に登録されている場合には、前記第1の上昇区間ビート周波数と前記第1の下降区間ビート周波数とをペアリングするペア生成部と、
第1の時間間隔で前記送信部に前記送信波の送信を指示すると共に、前記第1の上昇区間ビート周波数と前記第1の下降区間ビート周波数との差分が前記閾値周波数よりも小さいときに前記第1の距離との差分が前記閾値距離よりも小さい距離データが前記記憶部に登録されていない場合には、前記第1の時間間隔よりも短い第2の時間間隔で前記送信部に前記送信波の送信を指示する送信制御部と、
前記第1の時間間隔で前記ペア生成部によるペアリングの結果を出力する出力部、
を有する物体検知装置。
(付記2)
付記1に記載の物体検知装置であって、
前記第1の上昇区間ビート周波数と前記第1の下降区間ビート周波数との差分が前記閾値周波数よりも小さいときに前記第1の距離との差分が前記閾値距離よりも小さい距離データが前記記憶部に登録されていない場合には、前記送信制御部は、前記第1の時間間隔で送信される次の送信波の前に、前記送信部に1または複数の送信波を送信させる
ことを特徴とする物体検知装置。
(付記3)
付記1または2に記載の物体検知装置であって、
前記ペア生成部によりペアリングされた前記第1の上昇区間ビート周波数および前記第1の下降区間ビート周波数に基づいて、前記物体検知装置からターゲットまでの距離を算出する算出部をさらに備える
ことを特徴とする物体検知装置。
(付記4)
付記1に記載の物体検知装置であって、
前記周波数上昇区間において前記第1の上昇区間ビート周波数の他に第2の上昇区間ビート周波数が検出され、前記周波数下降区間において前記第1の下降区間ビート周波数の他に第2の下降区間ビート周波数が検出されたときに、前記ペアリング部は、前記第2の上昇区間ビート周波数と前記第2の下降区間ビート周波数とをペアリングする
ことを特徴とする物体検知装置。
(付記5)
付記4に記載の物体検知装置であって、
前記ペア生成部によりペアリングされた前記第1の上昇区間ビート周波数および前記第1の下降区間ビート周波数に基づいて、前記物体検知装置から第1のターゲットまでの距離を算出すると共に、前記ペア生成部によりペアリングされた前記第2の上昇区間ビート周波数および前記第2の下降区間ビート周波数に基づいて、前記物体検知装置から第2のターゲットまでの距離および前記第2のターゲットの速度を算出する算出部をさらに備える
ことを特徴とする物体検知装置。
(付記6)
付記1〜5のいずれか1つに記載の物体検知装置であって、
前記距離データは、対応する上昇区間ビート周波数および下降区間ビート周波数との和で表される
ことを特徴とする物体検知装置。
(付記7)
周波数上昇区間および周波数下降区間を含む送信波を送信する送信部、前記送信波と前記送信波に対応する反射波とのビート信号を生成するビート信号生成部、前記周波数上昇区間に検出される上昇区間ビート周波数および前記周波数下降区間に検出される下降区間ビート周波数に係わる周波数情報を記憶する記憶部、およびプロセッサを備える物体検知装置において、前記プロセッサを、
第1の上昇区間ビート周波数と第1の下降区間ビート周波数との差分が閾値周波数よりも小さいときに、前記周波数情報として、前記第1の上昇区間ビート周波数および前記第1の下降区間ビート周波数に基づいて決まる第1の距離を表す距離データを前記記憶部に登録する登録部、
前記第1の上昇区間ビート周波数と前記第1の下降区間ビート周波数との差分が前記閾値周波数よりも小さいときに前記第1の距離との差分が閾値距離よりも小さい距離データが前記記憶部に既に登録されている場合には、前記第1の上昇区間ビート周波数と前記第1の下降区間ビート周波数とをペアリングするペア生成部、
第1の時間間隔で前記送信部に前記送信波の送信を指示すると共に、前記第1の上昇区間ビート周波数と前記第1の下降区間ビート周波数との差分が前記閾値周波数よりも小さいときに前記第1の距離との差分が前記閾値距離よりも小さい距離データが前記記憶部に登録されていない場合には、前記第1の時間間隔よりも短い第2の時間間隔で前記送信部に前記送信波の送信を指示する送信制御部、
前記第1の時間間隔で前記ペア生成部によるペアリングの結果を出力する出力部、
として機能させるための物体検知プログラム。
【符号の説明】
【0092】
1 物体検知装置
12 制御部
13 発振器
22 ミキサ
31 送信部
32 ビート信号生成部
33 記憶部
34 登録部
35 ペア生成部
36 送信制御部
37 出力部
38 算出部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数上昇区間および周波数下降区間を含む送信波を送信する送信部と、
前記送信波と前記送信波に対応する反射波とのビート信号を生成するビート信号生成部と、
前記周波数上昇区間に検出される上昇区間ビート周波数および前記周波数下降区間に検出される下降区間ビート周波数に係わる周波数情報を記憶する記憶部と、
第1の上昇区間ビート周波数と第1の下降区間ビート周波数との差分が閾値周波数よりも小さいときに、前記周波数情報として、前記第1の上昇区間ビート周波数および前記第1の下降区間ビート周波数に基づいて決まる第1の距離を表す距離データを前記記憶部に登録する登録部と、
前記第1の上昇区間ビート周波数と前記第1の下降区間ビート周波数との差分が前記閾値周波数よりも小さいときに前記第1の距離との差分が閾値距離よりも小さい距離データが前記記憶部に既に登録されている場合には、前記第1の上昇区間ビート周波数と前記第1の下降区間ビート周波数とをペアリングするペア生成部と、
第1の時間間隔で前記送信部に前記送信波の送信を指示すると共に、前記第1の上昇区間ビート周波数と前記第1の下降区間ビート周波数との差分が前記閾値周波数よりも小さいときに前記第1の距離との差分が前記閾値距離よりも小さい距離データが前記記憶部に登録されていない場合には、前記第1の時間間隔よりも短い第2の時間間隔で前記送信部に前記送信波の送信を指示する送信制御部と、
前記第1の時間間隔で前記ペア生成部によるペアリングの結果を出力する出力部、
を有する物体検知装置。
【請求項2】
請求項1に記載の物体検知装置であって、
前記第1の上昇区間ビート周波数と前記第1の下降区間ビート周波数との差分が前記閾値周波数よりも小さいときに前記第1の距離との差分が前記閾値距離よりも小さい距離データが前記記憶部に登録されていない場合には、前記送信制御部は、前記第1の時間間隔で送信される次の送信波の前に、前記送信部に1または複数の送信波を送信させる
ことを特徴とする物体検知装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の物体検知装置であって、
前記ペア生成部によりペアリングされた前記第1の上昇区間ビート周波数および前記第1の下降区間ビート周波数に基づいて、前記物体検知装置からターゲットまでの距離を算出する算出部をさらに備える
ことを特徴とする物体検知装置。
【請求項4】
請求項1に記載の物体検知装置であって、
前記周波数上昇区間において前記第1の上昇区間ビート周波数の他に第2の上昇区間ビート周波数が検出され、前記周波数下降区間において前記第1の下降区間ビート周波数の他に第2の下降区間ビート周波数が検出されたときに、前記ペアリング部は、前記第2の上昇区間ビート周波数と前記第2の下降区間ビート周波数とをペアリングする
ことを特徴とする物体検知装置。
【請求項5】
周波数上昇区間および周波数下降区間を含む送信波を送信する送信部、前記送信波と前記送信波に対応する反射波とのビート信号を生成するビート信号生成部、前記周波数上昇区間に検出される上昇区間ビート周波数および前記周波数下降区間に検出される下降区間ビート周波数に係わる周波数情報を記憶する記憶部、およびプロセッサを備える物体検知装置において、前記プロセッサを、
第1の上昇区間ビート周波数と第1の下降区間ビート周波数との差分が閾値周波数よりも小さいときに、前記周波数情報として、前記第1の上昇区間ビート周波数および前記第1の下降区間ビート周波数に基づいて決まる第1の距離を表す距離データを前記記憶部に登録する登録部、
前記第1の上昇区間ビート周波数と前記第1の下降区間ビート周波数との差分が前記閾値周波数よりも小さいときに前記第1の距離との差分が閾値距離よりも小さい距離データが前記記憶部に既に登録されている場合には、前記第1の上昇区間ビート周波数と前記第1の下降区間ビート周波数とをペアリングするペア生成部、
第1の時間間隔で前記送信部に前記送信波の送信を指示すると共に、前記第1の上昇区間ビート周波数と前記第1の下降区間ビート周波数との差分が前記閾値周波数よりも小さいときに前記第1の距離との差分が前記閾値距離よりも小さい距離データが前記記憶部に登録されていない場合には、前記第1の時間間隔よりも短い第2の時間間隔で前記送信部に前記送信波の送信を指示する送信制御部、
前記第1の時間間隔で前記ペア生成部によるペアリングの結果を出力する出力部、
として機能させるための物体検知プログラム。
【請求項1】
周波数上昇区間および周波数下降区間を含む送信波を送信する送信部と、
前記送信波と前記送信波に対応する反射波とのビート信号を生成するビート信号生成部と、
前記周波数上昇区間に検出される上昇区間ビート周波数および前記周波数下降区間に検出される下降区間ビート周波数に係わる周波数情報を記憶する記憶部と、
第1の上昇区間ビート周波数と第1の下降区間ビート周波数との差分が閾値周波数よりも小さいときに、前記周波数情報として、前記第1の上昇区間ビート周波数および前記第1の下降区間ビート周波数に基づいて決まる第1の距離を表す距離データを前記記憶部に登録する登録部と、
前記第1の上昇区間ビート周波数と前記第1の下降区間ビート周波数との差分が前記閾値周波数よりも小さいときに前記第1の距離との差分が閾値距離よりも小さい距離データが前記記憶部に既に登録されている場合には、前記第1の上昇区間ビート周波数と前記第1の下降区間ビート周波数とをペアリングするペア生成部と、
第1の時間間隔で前記送信部に前記送信波の送信を指示すると共に、前記第1の上昇区間ビート周波数と前記第1の下降区間ビート周波数との差分が前記閾値周波数よりも小さいときに前記第1の距離との差分が前記閾値距離よりも小さい距離データが前記記憶部に登録されていない場合には、前記第1の時間間隔よりも短い第2の時間間隔で前記送信部に前記送信波の送信を指示する送信制御部と、
前記第1の時間間隔で前記ペア生成部によるペアリングの結果を出力する出力部、
を有する物体検知装置。
【請求項2】
請求項1に記載の物体検知装置であって、
前記第1の上昇区間ビート周波数と前記第1の下降区間ビート周波数との差分が前記閾値周波数よりも小さいときに前記第1の距離との差分が前記閾値距離よりも小さい距離データが前記記憶部に登録されていない場合には、前記送信制御部は、前記第1の時間間隔で送信される次の送信波の前に、前記送信部に1または複数の送信波を送信させる
ことを特徴とする物体検知装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の物体検知装置であって、
前記ペア生成部によりペアリングされた前記第1の上昇区間ビート周波数および前記第1の下降区間ビート周波数に基づいて、前記物体検知装置からターゲットまでの距離を算出する算出部をさらに備える
ことを特徴とする物体検知装置。
【請求項4】
請求項1に記載の物体検知装置であって、
前記周波数上昇区間において前記第1の上昇区間ビート周波数の他に第2の上昇区間ビート周波数が検出され、前記周波数下降区間において前記第1の下降区間ビート周波数の他に第2の下降区間ビート周波数が検出されたときに、前記ペアリング部は、前記第2の上昇区間ビート周波数と前記第2の下降区間ビート周波数とをペアリングする
ことを特徴とする物体検知装置。
【請求項5】
周波数上昇区間および周波数下降区間を含む送信波を送信する送信部、前記送信波と前記送信波に対応する反射波とのビート信号を生成するビート信号生成部、前記周波数上昇区間に検出される上昇区間ビート周波数および前記周波数下降区間に検出される下降区間ビート周波数に係わる周波数情報を記憶する記憶部、およびプロセッサを備える物体検知装置において、前記プロセッサを、
第1の上昇区間ビート周波数と第1の下降区間ビート周波数との差分が閾値周波数よりも小さいときに、前記周波数情報として、前記第1の上昇区間ビート周波数および前記第1の下降区間ビート周波数に基づいて決まる第1の距離を表す距離データを前記記憶部に登録する登録部、
前記第1の上昇区間ビート周波数と前記第1の下降区間ビート周波数との差分が前記閾値周波数よりも小さいときに前記第1の距離との差分が閾値距離よりも小さい距離データが前記記憶部に既に登録されている場合には、前記第1の上昇区間ビート周波数と前記第1の下降区間ビート周波数とをペアリングするペア生成部、
第1の時間間隔で前記送信部に前記送信波の送信を指示すると共に、前記第1の上昇区間ビート周波数と前記第1の下降区間ビート周波数との差分が前記閾値周波数よりも小さいときに前記第1の距離との差分が前記閾値距離よりも小さい距離データが前記記憶部に登録されていない場合には、前記第1の時間間隔よりも短い第2の時間間隔で前記送信部に前記送信波の送信を指示する送信制御部、
前記第1の時間間隔で前記ペア生成部によるペアリングの結果を出力する出力部、
として機能させるための物体検知プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−137779(P2011−137779A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−75(P2010−75)
【出願日】平成22年1月4日(2010.1.4)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月4日(2010.1.4)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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