説明

物品情報読取装置、物品情報読取設備、及び移動体情報読取装置

【課題】無線タグに記憶された情報を読み取る情報管理空間内の全域において所望の電界強度を確保することが可能であり、かつ低コストの物品情報読取装置、物品情報読取設備、及び移動体情報読取装置を提供する。
【解決手段】物品情報読取装置10は、無線タグ32が備え付けられた物品12を格納する情報管理空間Sに隣り合う導波路16と、電波送信手段及び電波受信手段とを有している。導波路16には、情報管理空間Sに向けて開口する電波出入口56が形成されている。電波送信手段から送信された電波は、反射部材60によって電波出入口56を通して情報管理空間Sへ向けて反射される。導波路16の内壁と反射部材60との間には、電波が通る通過部62が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線タグに記憶された情報を読み取る物品情報読取装置、物品情報読取設備、及び移動体情報読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工場や倉庫等で扱われる物品に無線タグを貼り付けて、物品の管理を行う情報管理システムが提案されている。
このような情報管理システムで用いられる無線タグには、用途に応じた情報が記憶されている。そして、無線交信機能を備えた情報読取装置によって、この無線タグに記憶されている情報を読み取ったり、又は、この無線タグに新たな情報を書き込んだりすることができる。
【0003】
情報を伝達する方式には、電磁誘導方式と電波方式がある。電磁誘導方式は、アンテナとしてのコイルと無線タグのコイルとを磁束結合させてエネルギーや信号を伝達する。電波方式は、アンテナと無線タグとの間で電波のやりとりを行ってエネルギーや信号を伝達する。
【0004】
電磁誘導方式は電波方式に比べてエネルギーを効率的に伝達できるので、開発が先行し普及しているが、通信可能距離は非常に小さく数十cm程度である。これに対して電波方式は、電波を空間に放射して伝達するので電磁誘導方式よりも通信可能距離は大きくなるが、通信距離が大きくなるに伴って読み取り率が低下してしまう。
【0005】
図27に示すように、特許文献1の物品管理装置では、移動棚300に収納された物品302にICタグ304が付加されている。また、このICタグ304との間でやりとりされる電波の受発信手段としてのアンテナ306が陳列庫308の内側に設けられている。そして、アンテナ306から電波を発信し、この電波を受信した物品302のICタグ304から発信された電波をアンテナ306で受信し、これによって、ICタグ304に記憶されている情報を読み取ることができる。
【0006】
しかし、特許文献1の物品管理装置においては、電波の受発信手段としてのアンテナ306の近くに配置されている物品302に付加されたICタグ304の読み取り率に比べて、アンテナ306の遠くに配置されている物品302に付加されたICタグ304の読み取り率が低くなってしまうことが懸念される。
すなわち、物品302が配置されICタグ304の情報が読み取られる空間(以下、「情報管理空間」とする)内の全域において所望の電界強度を確保することが難しい。
【0007】
また、アンテナ306の数を増やして、アンテナ306の遠くに配置されている物品302に付加されたICタグ304の読み取り率を向上させようとすると、設備コストが高くなってしまう。
【0008】
そして、これらの問題は、無線タグが備え付けられた物品や人等の移動体をゲート状の管理装置に通過させて無線タグの情報を読み取る情報管理システムにおいても懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−254865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は係る事実を考慮し、無線タグに記憶された情報を読み取る情報管理空間内の全域において所望の電界強度を確保することが可能であり、かつ低コストの物品情報読取装置、物品情報読取設備、及び移動体情報読取装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明は、情報を記憶した無線タグが備え付けられた物品を格納する情報管理空間と、前記情報管理空間に隣り合うように又は前記情報管理空間内に配置された導波路と、前記導波路に複数形成され前記情報管理空間に向けて開口する電波出入口と、前記導波路内へ電波を送信する電波送信手段と、前記導波路内から電波を受信する電波受信手段と、前記電波送信手段から送信された電波を前記電波出入口を通して前記情報管理空間へ向けて反射すると共に、前記無線タグから発信され前記電波出入口から前記導波路内へ向けて放射される電波を前記電波受信手段に向けて反射する反射部材と、前記導波路の内壁と前記反射部材との間又は前記反射部材に設けられ電波が通る通過部と、前記電波受信手段で受信された電波を情報として読み取る情報読取手段と、を有する。
【0012】
請求項1に記載の発明では、物品を格納する情報管理空間に隣り合うように、又は情報管理空間内に、導波路が配置されている。物品には、情報を記憶した無線タグが備え付けられている。
【0013】
物品情報読取装置は、電波送信手段と電波受信手段とを有している。電波送信手段は、導波路内へ電波を送信し、電波受信手段は、導波路内から電波を受信する。電波受信手段で受信された電波は、情報読取手段により情報として読み取られる。
【0014】
導波路には、情報管理空間に向けて開口する電波出入口が複数形成されている。電波送信手段から送信された電波は、反射部材によって電波出入口を通して情報管理空間へ向けて反射される。また、無線タグから発信され電波出入口から導波路内へ向けて放射される電波は、反射部材によって電波受信手段に向けて反射される。導波路の内壁と反射部材との間、又は反射部材には、電波が通る通過部が設けられている。
【0015】
電波送信手段から導波路内へ送信された電波は導波路内を伝播し、電波出入口、反射部材、又は通過部へ導かれる。
そして、電波出入口へ導かれた電波は、この電波出入口から情報管理空間へ放射される。また、反射部材へ導かれた電波は、この反射部材によって電波出入口を通して情報管理空間へ向けて反射され、情報管理空間へ放射される。また、通過部へ導かれた電波は、この通過部を通って導波路内を再び伝播し、次の電波出入口、反射部材、又は通過部へ導かれる。
電波送信手段から送信された電波は、導波路内を伝播するので、電波送信手段から遠い距離にある電波出入口、反射部材、又は通過部まで電波を導くことができる。
【0016】
よって、複数の電波出入口から情報管理空間へ電波を放射することにより、情報管理空間への電波放射量を増加させることができる。また、複数の電波出入口から情報管理空間へ放射された電波は、情報管理空間において横方向及び上下方向へ伝播される。これにより、情報管理空間の全体へ電波が伝播される。
【0017】
電波出入口から情報管理空間へ放射された電波を受信した無線タグから発信された電波は、電波出入口から導波路内へ向けて放射される。電波出入口から導波路内へ放射された電波は、反射部材によって電波受信手段に向けて反射された後、電波受信手段によって受信される。電波受信手段で受信された電波は、無線タグ(物品)の情報として情報読取手段によって読み取られる。
【0018】
これらにより、物品情報読取装置は、少ない電波送信手段及び電波受信手段で、情報管理空間の全域において所望の電波強度を確保することができる。よって、電波送信手段及び電波受信手段と無線タグとの通信距離に影響されることなく、無線タグの読み取り率を向上させることができ、また、低コスト化を図ることができる。
【0019】
請求項2に記載の発明は、前記情報管理空間は、電波を反射する電波反射層で囲まれている。
【0020】
請求項2に記載の発明では、電波を反射する電波反射層で情報管理空間が囲まれているので、電波出入口から情報管理空間へ放射された電波が情報管理空間の外部へ拡散するのを抑制し、また、情報管理空間の外部から情報管理空間へ外来電波が侵入するのを抑制することができる。
【0021】
例えば、2つの物品情報読取装置を近づけて配置した場合、一方の物品情報読取装置の情報管理空間に格納されている物品に備え付けられている無線タグから発信された電波を、他方の物品情報読取装置に設けられている電波受信手段が誤って受信してしまうことを防ぐことができる。
【0022】
請求項3に記載の発明は、前記情報管理空間の側面には開口部が形成され、該開口部によって前記情報管理空間が外部に開放されている。
【0023】
請求項3に記載の発明では、情報管理空間を外部に開放する開口部が情報管理空間の側面に形成されているので、情報管理空間への物品の出し入れを行うことができる。
【0024】
請求項4に記載の発明は、前記物品を収容した移動式の棚が前記開口部から前記情報管理空間へ出入可能となっている。
【0025】
請求項4に記載の発明では、移動式の棚に物品が収容されており、この棚が情報管理空間へ出入可能となっているので、グループ(棚)単位で物品を管理することができる。また、グループ単位で一括して物品を移動させることができる。
【0026】
請求項5に記載の発明は、前記開口部の開口周縁部に電波を吸収する電波吸収層が形成されている。
【0027】
請求項5に記載の発明では、開口部の開口周縁部に電波を吸収する電波吸収層が形成されているので、開口部付近から情報管理空間の外部へ拡散する電波を電波吸収層によって吸収することができる。これにより、電波送信手段及び電波受信手段によるセンシング範囲を限定できる。
【0028】
請求項6に記載の発明は、前記開口部に対向する前記情報管理空間の内壁に電波を吸収する電波吸収層が形成されている。
【0029】
請求項6に記載の発明では、開口部に対向する情報管理空間の内壁に反射して開口部から情報管理空間の外部へ拡散する電波を、この内壁に形成された電波吸収層によって吸収することができる。これにより、電波送信手段及び電波受信手段によるセンシング範囲を限定できる。
【0030】
請求項7に記載の発明は、前記電波送信手段から離れるに従って前記通過部の開口面積を順に小さくする。
【0031】
請求項7に記載の発明では、電波送信手段から離れるに従って通過部の開口面積を順に小さくすることによって、電波送信手段に近い側に配置されている通過部を通過する電波を多くし、電波送信手段からの距離に起因する電波の伝播効率低下の影響を小さくする。これによって、導波路の全域に電波を均一に伝播させることができる。
【0032】
請求項8に記載の発明は、複数の前記情報管理空間に隣り合うように1つの導波路が配置され、各情報管理空間へ向けて前記電波出入口が開口している。
【0033】
請求項8に記載の発明では、複数の情報管理空間に隣り合うように1つの導波路が配置されている。そして、1つの導波路に形成された複数の電波出入口が、複数の情報管理空間へ向けてそれぞれ開口している。
よって、少ない電波送信手段及び電波受信手段により、複数の情報管理空間に格納された物品の管理を行うことができる。
【0034】
請求項9に記載の発明は、前記導波路の横断面形状は矩形であり、該矩形の各辺の長さが電波の波長の1/2以上である。
【0035】
請求項9に記載の発明では、導波路の横断面形状を矩形としている。そして、この矩形の各辺の長さは、電波の波長の1/2以上となっている。
一般に、a×bの矩形横断面を有する導波路に、円偏波の電波(波長λ)を通過させる為には、(a≧λ/2)かつ(b≧λ/2)の条件を満たす必要がある。よって、導波路の横断面形状を矩形にし、この矩形の各辺の長さを電波の波長の1/2以上とすれば、円偏波の電波を通過させることが可能な必要最低限の大きさ((a≧λ/2)かつ(b≧λ/2))の横断面形状を有する導波路を構成することができる。
【0036】
請求項10に記載の発明は、前記導波路は直管である。
【0037】
請求項10に記載の発明では、導波路を直管とすることにより、導波路の製作が容易になり、製作コストを低く抑えることができる。
また、導波路がコーナー部を有する曲管である場合には、このコーナー部で電波減衰を生じることが考えられるが、直管の導波路は、このような電波減衰を生じさせることなく、効率よく電波を導波路内で伝播させることができる。
【0038】
請求項11に記載の発明は、請求項10に記載の物品情報読取装置を複数組み合わせて配置した物品情報読取設備である。
【0039】
請求項11に記載の発明では、物品情報読取装置を複数組み合わせて配置することにより、電波送信手段及び電波受信手段による広いセンシング範囲を確保することができる。
【0040】
請求項12に記載の発明は、情報を記憶した無線タグが備え付けられた移動体が通過する情報管理空間と、前記情報管理空間に隣り合うように又は前記情報管理空間内に配置された導波路と、前記導波路に複数形成され前記情報管理空間に向けて開口する電波出入口と、前記導波路内へ電波を送信する電波送信手段と、前記導波路内から電波を受信する電波受信手段と、前記電波送信手段から送信された電波を前記電波出入口を通して前記情報管理空間へ向けて反射すると共に、前記無線タグから発信され前記電波出入口から前記導波路内へ向けて放射される電波を前記電波受信手段に向けて反射する反射部材と、前記導波路の内壁と前記反射部材との間又は前記反射部材に設けられ電波が通る通過部と、前記電波受信手段で受信された電波を情報として読み取る情報読取手段と、を有する。
【0041】
請求項12に記載の発明では、移動体が通過する情報管理空間に隣り合うように、又は情報管理空間内に、導波路が配置されている。移動体には、情報を記憶した無線タグが備え付けられている。
【0042】
移動体情報読取装置は、電波送信手段と電波受信手段とを有している。電波送信手段は、導波路内へ電波を送信し、電波受信手段は、導波路内から電波を受信する。電波受信手段で受信された電波は、情報読取手段により情報として読み取られる。
【0043】
導波路には、情報管理空間に向けて開口する電波出入口が複数形成されている。電波送信手段から送信された電波は、反射部材によって電波出入口を通して情報管理空間へ向けて反射される。また、無線タグから発信され電波出入口から導波路内へ向けて放射される電波は、反射部材によって電波受信手段に向けて反射される。導波路の内壁と反射部材との間、又は反射部材には、電波が通る通過部が設けられている。
【0044】
電波送信手段から導波路内へ送信された電波は導波路内を伝播し、電波出入口、反射部材、又は通過部へ導かれる。
そして、電波出入口へ導かれた電波は、この電波出入口から情報管理空間へ放射される。また、反射部材へ導かれた電波は、この反射部材によって電波出入口を通して情報管理空間へ向けて反射され、情報管理空間へ放射される。また、通過部へ導かれた電波は、この通過部を通って導波路内を再び伝播し、次の電波出入口、反射部材、又は通過部へ導かれる。
電波送信手段から送信された電波は、導波路内を伝播するので、電波送信手段から遠い距離にある電波出入口、反射部材、又は通過部まで電波を導くことができる。
【0045】
よって、複数の電波出入口から情報管理空間へ電波を放射することにより、情報管理空間への電波放射量を増加させることができる。また、複数の電波出入口から情報管理空間へ放射された電波は、情報管理空間において横方向及び上下方向へ伝播される。これにより、情報管理空間の全体へ電波が伝播される。
【0046】
電波出入口から情報管理空間へ放射された電波を受信した無線タグから発信された電波は、電波出入口から導波路内へ向けて放射される。電波出入口から導波路内へ放射された電波は、反射部材によって電波受信手段に向けて反射された後、電波受信手段によって受信される。電波受信手段で受信された電波は、無線タグ(物品)の情報として情報読取手段によって読み取られる。
【0047】
これらにより、移動体情報読取装置は、少ない電波送信手段及び電波受信手段で、情報管理空間の全域において所望の電波強度を確保することができる。よって、電波送信手段及び電波受信手段と無線タグとの通信距離に影響されることなく、無線タグの読み取り率を向上させることができ、また、低コスト化を図ることができる。
また、移動体情報読取装置は、無線タグの読み取り率を高くすることが可能なので、移動体に備え付けられてこの移動体と共に移動する無線タグの情報を確実に読み取ることができる。
【発明の効果】
【0048】
本発明は上記構成としたので、無線タグに記憶された情報を読み取る情報管理空間内の全域において所望の電界強度を確保することが可能であり、かつ低コストの物品情報読取装置、物品情報読取設備、及び移動体情報読取装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の第1実施形態に係る物品情報読取装置及び棚を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る棚を示す正面図及び側面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る物品情報読取装置及び棚を示す斜視図である。
【図4】図1のA−A矢視図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る物品情報読取装置を示す説明図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係る導波管を示す斜視図である。
【図7】本発明の第1実施形態に係る導波管を示す正面図及び側面図である。
【図8】本発明の第1実施形態に係るアンテナ及びリーダライタ装置を示す説明図である。
【図9】本発明の第1実施形態に係る導波管とその変形例を示す断面図である。
【図10】本発明の第1実施形態に係る導波管の作用を示す説明図である。
【図11】本発明の第1実施形態に係る電波に対する反射損失を示す説明図である。
【図12】本発明の第1実施形態に係る導波管の変形例を示す側断面図である。
【図13】本発明の第2実施形態に係る物品情報読取装置を示す説明図である。
【図14】本発明の第2実施形態に係る物品情報読取装置の変形例を示す説明図である。
【図15】本発明の第3実施形態に係る移動体情報読取装置を示す斜視図である。
【図16】本発明の第4実施形態に係る移動体情報読取装置を示す斜視図である。
【図17】本発明の実施形態に係る物品情報読取装置の変形例を示す平面図である。
【図18】本発明の実施形態に係る物品情報読取装置の変形例を示す正面図である。
【図19】本発明の実施形態に係る物品情報読取設備を示す説明図である。
【図20】本発明の実施例に係る実験方法を示す平面図である。
【図21】本発明の実施例に係るシミュレーションモデルを示す斜視図である。
【図22】本発明の実施例に係るシミュレーションモデルを示す斜視図である。
【図23】本発明の実施例に係るシミュレーション結果を示す分布図である。
【図24】本発明の実施例に係るシミュレーションモデルを示す斜視図である。
【図25】本発明の実施例に係るシミュレーションモデルを示す斜視図である。
【図26】本発明の実施例に係るシミュレーション結果を示す分布図である。
【図27】従来の物品管理装置を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
図を参照しながら、本発明の物品情報読取装置、物品情報読取設備、及び移動体情報読取装置を説明する。
まず、本発明の第1の実施形態について説明する。
【0051】
図1の斜視図に示すように、第1の実施形態の物品情報読取装置10は、物品12が収容された移動式の棚14を格納する情報管理空間Sと、この情報管理空間Sに隣り合うように配置された導波路としての導波管16とを有している。
【0052】
図2(a)の正面図、及び図2(b)の側面図に示すように、棚14は、棚板18A〜18D(棚14の下方から上方に向かって18A、18B、18C、18Dの順に配置されている)を略水平にかけ渡して物品12を載せる一般的な棚構造となっている。
【0053】
棚板18A〜18Dは硬質ウレタンフォームによって形成され、この棚板18A〜18Dの左右両端を梁部材20A〜20D、22A〜22Dで支持している。
梁部材20A〜20Eの左右両端は、略鉛直に立てられた柱部材24C、24Bにそれぞれ接合され、梁部材22A〜22Eの左右両端は、略鉛直に立てられた柱部材24A、24Dにそれぞれ接合されている。すなわち、棚板18A〜18Dは、梁部材20A〜20D、22A〜22Dを介して柱部材24A〜24Dに支持されている。
【0054】
柱部材24B、24Aの間には、梁部材26A〜26Eが架け渡されており、この梁部材26A〜26Eの左右両端が柱部材24B、24Aに接合されている。また、柱部材24D、24Cの間には、梁部材28A〜28Eが架け渡されており、この梁部材28A〜28Eの左右両端が柱部材24D、24Cに接合されている。
柱部材24A〜24Dの下端部にはキャスター30が設けられ、これによって棚14は横方向に自由に移動できる。
【0055】
図3の斜視図には、物品12が収容された棚14を物品情報読取装置10に格納した状態が示されている。すなわち、図3は、物品12が情報管理空間Sに格納されている状態を示している。
【0056】
梁部材20A〜20E、22A〜22E、26A〜26E、28A〜28E、及び柱部材24A〜24Dには、紙製の角パイプが用いられている。また、梁部材20A〜20E、22A〜22E、26A〜26E、28A〜28Eと、柱部材24A〜24Dとは、プラスチック製のジョイント部材(不図示)によって接合されている。
【0057】
図2(a)、(b)に示すように、棚板18A〜18D上には、直方体状の物品12が載置されている。棚板18B〜18D上の6箇所には、3つの物品12が3段に積み重ねねられて配置され、棚板18A上の6箇所には、物品12が各1つ配置されている。
【0058】
棚板18B〜18D上に3段に積み重ねて配置されている物品12の内の1段目(一番下)と3段目(一番上)の物品12、及び棚板18A上に配置されている物品12の全面(6面)には、無線タグとしてのRFIDタグ32が備え付けられている。
【0059】
このRFIDタグ32は、無線交信機能を有するICメモリであり、物品12の物品番号、製造メーカー名、製品名、型番、製造番号、納品日等の情報が記憶されている。また、RFIDタグ32には、953MHzのUHF帯の電波を受信し、さらにはRFIDタグ32に記憶された情報を信号(953MHzのUHF帯の電波)として発信するためのアンテナ(不図示)を備えている。
【0060】
図1、及び図1のA−A矢視図である図4に示すように、物品情報読取装置10は、角筒状の壁部材34、36、板状の壁部材38、40、板状の天井部材42、及び導波管16によって構成されている。壁部材34、36、38、40、及び天井部材42は、木製である。
【0061】
導波管16の左右には、壁部材34、36が隣り合って配置され、これらの導波管16及び壁部材34、36は、一体となっている。この状態で、導波管16の前面16Aと、壁部材34、36の側面34A、36Aとは面一となり、壁面44を形成している。
【0062】
壁部材40は、平面視にて壁部材40の壁面40Aが壁面44と略直交するように壁部材36に固定されている。壁部材38は、平面視にて壁部材38の壁面38Aが壁部材40の壁面40Aと略直交するように壁部材40に固定されている。天井部材42は、物品情報読取装置10の天井部に配置され、壁部材34、36、38、40、及び導波管16の上端部に固定されている。
このようにして、壁面38A、40A、44、及び天井部材42の下面42Aに囲まれた略直方体の空間が、情報管理空間Sとなっている。
【0063】
壁部材40の壁面40Aに対向する情報管理空間Sの側面には、情報管理空間Sを外部に開放する開口部46が形成されており、棚14がこの開口部46を介して出入可能となっている。
【0064】
壁面44を正面から見た図5(a)、物品情報読取装置10を正面(図1の棚14側)から見た図5(b)、及び壁面38Aを正面から見た図5(c)に示すように、壁部材36の側面36A、壁部材40の壁面40Aの一部(壁部材38側の約1/7)、壁部材38の壁面38Aの一部(壁部材40側の約2/3)、及び天井部材42の下面42Aは、電波を反射する電波反射層Rとなっている。また、壁部材34の側面34A、壁部材40の壁面40Aの一部(壁部材36側の約6/7)、及び壁部材38の壁面38Aの一部(開口部46側の約1/3)は、電波を吸収する電波吸収層Qとなっている。
【0065】
すなわち、情報管理空間Sは、電波を反射する電波反射層Rで囲まれ、開口部46の開口周縁部、及び開口部46に対向する情報管理空間Sの内壁(壁面40A)に、電波を吸収する電波吸収層Qが形成されている。
【0066】
図6の斜視図、図7(a)の正面図、及び図7(b)の側面図に示すように、導波路としての導波管16は、木材により形成された角筒状の直管48と、直管48の内周面全体に被覆された導電性被覆部54とにより構成されている。導電性被覆部54は、953MHzのUHF帯の電波を反射及び遮蔽する機能を有する導電性材料によって形成する。
導波管16(直管48)の横断面形状は、矩形となっている。直管48の上端部の開口は、下面が導電性材料で覆われた天井板50で塞がれている。
【0067】
天井板50の下面には、アンテナ52が1つ設置されている。アンテナ52に備えられている電波送信部及び電波受信部は下向きに配設されており、953MHzのUHF帯の電波の送信及び受信を行う。すなわち、アンテナ52は、直管48内へ電波を送信する電波送信手段と、直管48内から電波を受信する電波受信手段との両方の役割りを兼ねている。
【0068】
図8に示すように、アンテナ52は、情報読取手段としてのリーダライタ装置66に接続され、このリーダライタ装置66は、パーソナルコンピューター68に接続されている。パーソナルコンピューター68は、必要に応じて、RFIDタグ発行器、サーバー、及び情報データベース等につなげてもよい。
【0069】
図3に示すように、棚14が物品情報読取装置10に格納された状態において、パーソナルコンピューター68からの命令によって、リーダライタ装置66を介してアンテナ52の電波送信部から電波が送信される。
【0070】
そして、物品12に備え付けられたRFIDタグ32に備えられたアンテナがこの電波を受信する。そして、RFIDタグ32は、RFIDタグ32が受けた電波のエネルギーを電力に変換し、この電力を使って、RFIDタグ32に記憶された情報をRFIDタグ32に備えられたアンテナから電波として発信する。
【0071】
RFIDタグ32から発信された電波はアンテナ52の電波受信部によってRFIDタグ32と非接触で受信され、この電波はパーソナルコンピューター68からの命令により情報としてリーダライタ装置66に読み取られる。
【0072】
図6、及び図7(a)、(b)に示すように、導波管16の上下方向中間部には、情報管理空間Sに向けて開口する電波出入口56が形成されている。また、導波管16の上下方向下部には、情報管理空間Sに向けて開口する電波出入口58が形成されている。すなわち、導波管16には、情報管理空間Sに向けて開口する電波出入口56、58が複数形成されている。
【0073】
図7(b)に示すように、電波出入口56付近には、電波を反射する反射部材としての反射板60が内設されている。これにより、アンテナ52から送信された電波は、反射板60によって電波出入口56を通して情報管理空間Sへ向けて反射される。また、物品12に備え付けらえたRFIDタグ32から発信され電波出入口56から導波管16内へ向けて放射される電波は、反射板60によってアンテナ52に向けて反射される。
【0074】
図9(a)の側断面図(上の図)及び平断面図(下の図)に示されているように、導波管16の内壁(導電性被覆部54)と反射板60の後方端部との間には、電波が通る通過部62が形成されている。
【0075】
図7(b)に示すように、電波出入口58付近には、電波を反射する反射部材としての反射板64が内設されている。また、反射板64は、導波管16の管内を閉塞するように配設されている。
【0076】
次に、本発明の第1の実施形態の作用及び効果について説明する。
【0077】
図7(b)、図10(a)の側断面図に示すように、アンテナ52から導波管16内へ送信された電波は導波管16内を伝播し、電波出入口56、反射板60、又は通過部62へ導かれる。
【0078】
そして、電波出入口56へ導かれた電波は、この電波出入口56から情報管理空間Sへ放射される(矢印70A)。また、図10(b)の側断面図に示すように、反射板60へ導かれた電波は、この反射板60によって電波出入口56を通して情報管理空間Sへ向けて反射され、情報管理空間Sへ放射される(矢印70B)。また、図10(c)の側断面図に示すように、通過部62へ導かれた電波は、この通過部62を通って導波管16内を再び伝播し、次の電波出入口、反射部材、又は通過部(図7(b)の場合には、電波出入口58又は反射板64)へ導かれる(矢印70C)。
【0079】
アンテナ52から送信された電波は、導波管16内を伝播するので、アンテナ52から遠い距離にある電波出入口、反射部材、又は通過部まで電波を導くことができる。
【0080】
通過部62を通って導波管16内を伝播し電波出入口58へ導かれた電波は、この電波出入口58から情報管理空間Sへ放射される。また、通過部62を通って導波管16内を伝播し反射板64へ導かれた電波は、この反射板64によって電波出入口58を通して情報管理空間Sへ向けて反射され、情報管理空間Sへ放射される。
【0081】
よって、複数の電波出入口56、58から情報管理空間Sへ電波を放射することにより、情報管理空間Sへの電波放射量を増加させることができる。また、複数の電波出入口56、58から情報管理空間Sへ放射された電波は、情報管理空間Sにおいて横方向及び上下方向へ伝播される。これにより、情報管理空間Sの全体へ電波が伝播される。
【0082】
電波出入口56、58から情報管理空間Sへ放射された電波を受信したRFIDタグ32から発信された電波は、電波出入口56、58から導波管16内へ向けて放射される。
電波出入口56、58から導波管16内へ放射された電波は、反射板60、64によってアンテナ52に向けて反射された後、アンテナ52によって受信される。図10(d)の側断面図には、反射板60によってアンテナ52に向けて反射される電波の伝搬する方向(矢印70D)が示されている。反射板64についても、図10(d)と同じように電波はアンテナ52に向けて反射される。
【0083】
ここで、電波出入口56、58から導波管16内へ放射された電波は、反射板60、64によってアンテナ52のある方向(図10(d)の場合には、上方向)へのみ反射されるので、アンテナ52によって電波を確実に受信することができる。
アンテナ52で受信された電波は、RFIDタグ32(物品12)の情報としてリーダライタ装置66によって読み取られる。
【0084】
これらにより、物品情報読取装置10は、少ない電波送信手段(アンテナ52の電波送信部)及び電波受信手段(アンテナ52の電波受信部)で、情報管理空間Sの全域において所望の電波強度を確保することができる。よって、電波送信手段及び電波受信手段とRFIDタグ32との通信距離に影響されることなく、RFIDタグ32の読み取り率を向上させることができ、また、低コスト化を図ることができる。
【0085】
ここで、読み取り率とは、情報管理空間S内に存在し(情報管理空間S内に一時的に存在する場合も含む)且つリーダライタ装置66によって読み取られた無線タグ(RFIDタグ32)の数を、情報管理空間S内に存在する無線タグの数(第1の実施形態の場合、情報管理空間S内に存在する無線タグの数=1つの物品12に備え付けられたRFIDタグ32の数×情報管理空間S内に格納され且つRFIDタグ32が備え付けられている物品12の数)で割った値を意味する。
【0086】
また、例えば、1つのアンテナ52のみを備える物品情報読取装置10を複数設置する場合、複数のアンテナ52を接続することが可能なリーダライタ装置66を用いれば、少ない数のリーダライタ装置66で複数の物品情報読取装置10に対応することができる。
具体例としては、4つのアンテナ52を接続することが可能なリーダライタ装置66を用いれば、1つのアンテナ52のみを備える4つの物品情報読取装置10を1つのリーダライタ装置66で対応させることができる。
【0087】
また、一般に電波を送受信するアンテナは指向性を有しているので、アンテナの配置や設置角度の微妙な違いによって読み取り率にバラツキを生じることがある。そして、アンテナの数が増えるとこのバラツキが生じ易くなる。
これに対して物品情報読取装置10では、物品収容空間Sに設置するアンテナを少なくすることができるので、読み取り率のバラツキを低減することができる。
【0088】
また、情報管理空間Sは、電波を反射する電波反射層Rで囲まれているので、電波出入口56、58から情報管理空間Sへ放射された電波が情報管理空間Sの外部へ拡散するのを抑制し、また、情報管理空間Sの外部から情報管理空間Sへ外来電波が侵入するのを抑制することができる。
【0089】
例えば、2つの物品情報読取装置10を近づけて配置した場合、一方の物品情報読取装置10の情報管理空間Sに格納されている物品12に備え付けられているRFIDタグ32から発信された電波を、他方の物品情報読取装置10に設けられているアンテナ52が誤って受信してしまうことを防ぐことができる。
【0090】
また、情報管理空間Sを外部に開放する開口部46が情報管理空間Sの側面に形成されているので、情報管理空間Sへの物品12の出し入れを行うことができる。
また、物品12が収容された移動式の棚14が、情報管理空間Sへ出入可能となっているので、グループ(棚)単位で物品12を管理することができる。また、グループ単位で一括して物品12を移動させることができる。
【0091】
また、開口部46の開口周縁部に電波を吸収する電波吸収層Qが形成されているので、開口部46付近から情報管理空間Sの外部へ拡散する電波を電波吸収層Qによって吸収することができる。これにより、電波送信手段(アンテナ52の電波送信部)及び電波受信手段(アンテナ52の電波受信部)によるセンシング範囲を限定できる。
【0092】
また、開口部46に対向する情報管理空間Sの内壁(壁面40A)に電波を吸収する電波吸収層Qが形成されているので、この内壁に反射して開口部46から情報管理空間Sの外部へ拡散する電波を、この内壁に形成された電波吸収層Qによって吸収することができる。これにより、電波送信手段(アンテナ52の電波送信部)及び電波受信手段(アンテナ52の電波受信部)によるセンシング範囲を限定できる。
【0093】
また、第1の実施形態では、導波管16の横断面形状を矩形としている。一般に、a×bの矩形横断面を有する導波路に、円偏波の電波(波長λ)を通過させる為には、(a≧λ/2)かつ(b≧λ/2)の条件を満たす必要がある。
例えば、953MHzのUHF帯の電波(λ=0.315m)を用いた場合には、導波路の横断面を157.5mm×157.5mm以上の大きさの矩形にするのが好ましい。
【0094】
よって、導波路の横断面の形状を各辺の長さがλ/2以上の矩形にすれば、円偏波の電波を通過させることが可能な必要最低限の大きさ((a≧λ/2)かつ(b≧λ/2))の横断面形状を有する導波路を構成することができる。
【0095】
この原理は、導波管16に形成される電波出入口56、58の形状についても同様に適用される。すなわち、953MHzのUHF帯の電波を用いた場合、電波出入口56、58の形状は、157.5mm×157.5mm以上の大きさの矩形にするのが好ましい。
【0096】
また、導波管16は直管なので、製作が容易であり、製作コストを低く抑えることができる。一般に、導波路がコーナー部を有する曲管である場合には、このコーナー部で電波減衰を生じることが考えられるが、導波管16は直管なので、このような電波減衰を生じさせることなく、効率よく電波を導波管16内で伝播させることができる。
【0097】
また、物品情報読取装置10は、情報管理空間Sの片側にのみ導波管16を配置した構成なので、小型化及び省スペース化を図り、高い運搬性及び設置容易性を発揮することが可能である。
【0098】
以上、本発明の第1の実施形態について説明した。
【0099】
なお、第1の実施形態では、導波管16を情報管理空間Sに隣り合うように配置した例を示したが、導波管16は情報管理空間S内に配置してもよい。
【0100】
また、第1の実施形態では、物品12を収容体としての棚14に収容する例(図2を参照のこと)を示したが、収容体の収容構造は、物品12に貼り付けられたRFIDタグ32の電波の受発信が可能となるように物品12を収容する構造であればよい。
例えば、収容体を棚構造とする場合には、棚板に載置した物品を仕切る仕切り部材を設けてもよいし、棚板や仕切部材はどのような形状や配置であってもよい。また、収容体を、キャビネット等のような棚構造以外の収容構造としてもよい。
また、棚14は、移動しない固定式の棚としてもよい。また、棚等の収容体を用いずに、情報管理空間Sに物品12を直接格納するようにしてもよい。
【0101】
また、第1の実施形態では、棚板18A〜18Dを硬質ウレタンフォームによって形成し、梁部材20A〜20E、22A〜22E、26A〜26E、28A〜28E、及び柱部材24A〜24Dを紙製とした例を示したが、棚を構成する部材(棚板、梁部材、柱部材等)には、電波に対する反射損失が大きな(=電波を透過する)材料や部材を用いるのが好ましい。
【0102】
棚を構成する部材に、電波に対する反射損失が大きな材料や部材を用いれば、アンテナ52から発信される電波を透過させることができ、これによって、RFIDタグ32の電波の受発信を確実に行うことができる。電波に対する反射損失が20dB以上の材料によって棚の各部材を形成すれば、電波に対するより優れた透過性能を発揮できるのでより好ましい。
【0103】
電波に対する反射損失とは、図11に示すように、ある対象物72に照射された電波74の電界強度に対する、この対象物72に反射した電波76の電界強度の減る度合いを示す値である。対象物72の内部で電波が吸収されなければ、電波に対する反射損失が大きいほど、電波に対する対象物の透過性が高く、電波に対する反射損失が小さいほど電波に対する対象物の透過性が低くなる。
【0104】
梁部材20A〜20E、22A〜22E、26A〜26E、28A〜28E、及び柱部材24A〜24Dは、例えば、低発泡プラスチックによって形成してもよい。
また、棚板18A〜18Dは、例えば、低発泡プラスチック、アクリル板、又はペーパーハニカム板によって形成してもよい。
【0105】
また、例えば、棚を構成する部材(棚板、梁部材、柱部材等)に複数の穴を設けたり、棚を構成する部材に網状の部材を用いたりして、電波に対する透過性を向上させてもよい。
また、例えば、電波を透過する材料によって形成された棚板の表面を、フェルト、塩化ビニールシート、ポリ合金、又はメラミン樹脂で覆って表面を保護するようにしてもよい。
【0106】
また、第1の実施形態では、壁部材36の側面36A、壁部材38、40の壁面38A、40A、及び天井部材42の下面42Aを、電波を反射する電波反射層Rとした例を示したが、電波を反射する材料で、壁部材36、38、40、及び天井部材42を形成してもよい。例えば、壁部材36、38、40、及び天井部材42を、鋼板、アルミニウム板、又はステンレス板としてもよい。
【0107】
また、第1の実施形態では、導波管16を、木材により形成された角筒状の直管48と、直管48の内周面全体に被覆された導電性被覆部54とにより構成した例を示したが、電波を伝搬することができる導波路を構成するものであればよく、例えば、合板等にアルミシートを貼り付けて導波管16を構成してもよいし、導電性を有する亜鉛メッキ銅板で導波管16自体を形成するようにしてもよい。
【0108】
また、第1の実施形態では、導波管16に、1つの電波出入口56と1つの電波出入口58とを形成した例を示したが、導波管16に複数の電波出入口56を形成してもよい。この場合、全ての電波出入口56に対応するように反射板60を設けてもよいし、少なくとも1つの電波出入口56に対応するように反射板60を設けてもよい。
【0109】
また、電波出入口56、58の形状、大きさ、及び配置は、適宜決めればよい。先に説明したように、953MHzのUHF帯の電波を用いた場合、電波出入口56、58の形状は、157.5mm×157.5mm以上の大きさの矩形にするのが好ましい。
【0110】
導波管16に電波出入口56を複数設け、これらの電波出入口56の全てに対して反射板を設ける場合、通過部の形状や大きさを全て同じにしてもよいし、異ならせてもよい。
例えば、図12の側断面図に示すように、反射板80A〜80Cの大きさを異ならせて、電波送信手段(アンテナ52)から離れるに従って通過部78A〜78Cの開口面積の大きさを順に小さくしてもよい。
このようにすれば、電波送信手段(アンテナ52)に近い側に配置されている通過部78Aを通過する電波を多くし、電波送信手段(アンテナ52)からの距離に起因する電波の伝播効率低下の影響を小さくすることができる。これによって、導波管16の全域に電波を均一に伝播させることが可能になる。
【0111】
また、第1の実施形態では、導波管16の内壁(導電性被覆部54)と反射板60の後方端部との間に、電波が通る通過部62を形成した例を示したが、通過部は、反射板が設けられた導波管16の横断面において電波が通過できるものであればよく、導波管16の内壁(導電性被覆部54)と反射板との間、又は反射板自体に設ければよい。
【0112】
例えば、反射板60を、図9(b)〜(e)の側断面図(上の図)及び平断面図(下の図)に示すような反射板60B〜60Eとしてもよい。
図9(b)では、導波管16の内壁(導電性被覆部54)と反射板60Bの前方端部との間に、電波が通る通過部62Bを形成している。
図9(c)では、導波管16の内壁(導電性被覆部54)と反射板60Cの側方両端部との間に、電波が通る通過部62Cを形成している。
図9(d)では、導波管16の内壁(導電性被覆部54)と反射板60Dの後方端部及び側方両端部との間に、電波が通る通過部62Dを形成している。
図9(e)では、反射板60Eの略中央に、電波が通る通過部62Eを形成している。反射板に通過部を形成する例としては、図9(e)の他に、反射板の中央に平面視にて矩形の貫通穴を形成したり、反射板に複数の貫通孔を形成したりしてもよい。
【0113】
次に、本発明の第2の実施形態とその作用及び効果について説明する。
【0114】
第2の実施形態は、第1の実施形態の導波管16を2つの情報管理空間Sに隣り合うように配置したものである。したがって、以下の説明において、第1の実施形態と同じ構成のものは、同符号を付すると共に、適宜省略して説明する。
【0115】
図13の側断面図に示すように、第2の実施形態の物品情報読取装置82は、2つの情報管理空間Sのそれぞれに隣り合うように1つの導波管84が配置されている。第2の実施形態では、図13において、左に配置されている情報管理空間Sを情報管理空間Sとし、右に配置されている情報管理空間Sを情報管理空間Sとする。
【0116】
導波管84は、第1の実施形態の導波管16と同様に、木材により形成された角筒状の直管48と、直管48の内周面全体に被覆された導電性被覆部54とにより構成されている。そして、1つの導波管84には、2つの情報管理空間S、Sのそれぞれに向けて開口する複数の電波出入口56が形成されている。
【0117】
情報管理空間Sに向けて開口する電波出入口56と、情報管理空間Sに向けて開口する電波出入口56とは、上下方向で互い違いとなるように形成されている。また、それぞれの電波出入口56に対応する反射板60が設けられている。そして、導波管84の内壁(導電性被覆部54)と反射板60の後方端部との間には、電波が通る通過部106が形成されている。
【0118】
このような構成により、導波管84の上端部に設けられた天井板50の下面に設置されたアンテナ52から送信され、電波出入口56へ導かれた電波は、この電波出入口56から情報管理空間S、Sへ放射される。また、反射板60へ導かれた電波は、この反射板60によって電波出入口56を通して情報管理空間S、Sへ向けて反射され、情報管理空間S、Sへ放射される。また、通過部106へ導かれた電波は、この通過部106を通って導波管84内を再び伝播する。
【0119】
よって、少ない電波送信手段(アンテナ52の電波送信部)及び電波受信手段(アンテナ52の電波受信部)により、複数の情報管理空間S、Sに格納された物品12の管理を行うことができる。
【0120】
以上、本発明の第2の実施形態について説明した。
【0121】
なお、第2の実施形態では、2つの情報管理空間S、Sに隣り合うように1つの導波管84を配置した例を示したが、3つ以上の情報管理空間に隣り合うように1つの導波管を配置するようにしてもよい。
【0122】
また、第2の実施形態では、情報管理空間Sに向けて開口する電波出入口56と、情報管理空間Sに向けて開口する電波出入口56とが、上下方向で互い違いとなるように形成する例を示したが、例えば、図14の側断面図に示した物品情報読取装置120のように、情報管理空間Sに向けて開口する電波出入口56と、情報管理空間Sに向けて開口する電波出入口56とを対向するように配置した導波管86としてもよい。
【0123】
この場合、反射板100を上方に尖る山形状とし、反射板100の左側の斜面により電波出入口56を通して情報管理空間Sへ向けて電波を反射させ、反射板100の右側の斜面により電波出入口56を通して情報管理空間Sへ向けて電波を反射させるようにすればよい。導波管86の内壁(導電性被覆部54)と反射板100の下端部との間には、電波が通る通過部108が形成されている。
【0124】
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
【0125】
第3の実施形態は、第1の実施形態の物品情報読取装置10を、人の入退管理に応用したものである。したがって、以下の説明において、第1の実施形態と同じ構成のものは、同符号を付すると共に、適宜省略して説明する。
【0126】
図15の斜視図に示すように、第3の実施形態では、オフィスビルや空港等の施設における人の入退管理を、移動体情報読取装置130を用いて行う。図15の左側に配置されている移動体情報読取装置130が入場ゲートであり(以下、「入場ゲート88」とする)、右側に配置されている移動体情報読取装置130が退場ゲートである(以下、「退場ゲート90」とする)。
【0127】
入場ゲート88、退場ゲート90は、第1の実施形態の物品情報読取装置10の構成から壁部材40を無くした構成となっている。これによって、移動体としての入場者92や退場者94が情報管理空間Sを通過できるようになっている。また、入場ゲート88及び退場ゲート90の出入口(開口部)付近に位置する壁部材38の壁面38A、及び壁部材34、36の側面34A、36Aは、電波吸収層Qとなっている。また、壁部材38の壁面38Aにおける電波吸収層Qの間、及び導波管16の前面16Aは、電波反射層Rとなっている。
【0128】
入場者92及び退場者94が所持するIDカードやパスポートには、RFIDタグ32が備え付けられている。すなわち、第3の実施形態では、RFIDタグ32が備え付けられた移動体としての入場者92や退場者94が情報管理空間Sを通過する。
【0129】
次に、本発明の第3の実施形態の作用及び効果について説明する。
【0130】
図15に示すように、オフィスビルや空港等の施設において、入場者92が、入場ゲート88を通過して施設内あるいは搭乗口へ入場し、また、退場者94が、退場ゲート90を通過し施設内あるいは搭乗口から退場する。
【0131】
そして、入場者92や退場者94が、入場ゲート88や退場ゲート90を通過する際に情報管理空間Sに入ったときに、パーソナルコンピューター68からの命令によって、リーダライタ装置66を介してアンテナ52の電波送信部から電波が送信される。そして、入場者92及び退場者94が所持するIDカードやパスポート等に備え付けられたRFIDタグ32がこの電波を受信し、この電波のエネルギーを使って、RFIDタグ32に記憶された情報をRFIDタグ32から電波として発信する。RFIDタグ32から発信された電波はアンテナ52の電波受信部によって受信され、この電波はパーソナルコンピューター68からの命令により情報としてリーダライタ装置66に読み取られる。
【0132】
よって、移動体情報読取装置130(入場ゲート88及び退場ゲート90)は、第1の実施形態の物品情報読取装置10と同様に、RFIDタグ32の読み取り率を向上させることができるものなので、移動する移動体としての入場者92や退場者94に備え付けられたRFIDタグ32の情報も確実に読み取ることが可能であり、これによって人(入場者92及び退場者94)の入退管理を行うことができる。
【0133】
また、少ない電波送信手段(アンテナ52の電波送信部)及び電波受信手段(アンテナ52の電波受信部)を有する移動体情報読取装置130を構成することができるので、移動体情報読取装置130を低コストで製造することができる。
【0134】
オフィスビルや空港等の施設においては、多くの数の入場ゲート及び退場ゲートを必要とするので、入場ゲート及び退場ゲートとなる移動体情報読取装置130の低コスト化は、オフィスビルや空港等の施設の設備費低減に大きく貢献することができる。
【0135】
また、移動体情報読取装置130を低コストで製造することができれば、オフィスビルや空港等の施設に入場ゲート及び退場ゲートとしての移動体情報読取装置130を多く設置することが可能になる。これにより、より効果的な人の入退管理を行うことができる。
【0136】
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。
【0137】
第4の実施形態は、第2の実施形態の物品情報読取装置82を、ベルトコンベアにより搬送される物品の管理に応用したものである。したがって、以下の説明において、第2の実施形態と同じ構成のものは、同符号を付すると共に、適宜省略して説明する。
【0138】
図16に示すように、第4の実施形態では、工場や物流センター等の施設において2列並列に設置されたベルトコンベア96、98により搬送される完成品や部品等の物品102を、移動体情報読取装置132を用いて管理する。
【0139】
移動体情報読取装置132は、第2の実施形態の物品情報読取装置82の構成から壁部材40を無くした構成となっている。これによって、移動体としての物品102が情報管理空間S、Sを通過できるようになっている。また、情報管理空間S、Sの出入り口(開口部)付近に位置する壁部材38の壁面38A、及び壁部材34、36の側面34A、36Aは、電波吸収層Qとなっている。また、壁部材38の壁面38Aにおける電波吸収層Qの間、及び導波管84の前面84Aは、電波反射層Rとなっている。
【0140】
また、物品102には、RFIDタグ32が備え付けられている。このRFIDタグ32には、物品102の物品番号、製造メーカー名、製品名、型番、製造番号、納品日等の情報が記憶されている。すなわち、第4の実施形態では、RFIDタグ32が備え付けられている移動体としての物品102が情報管理空間S、Sを通過する。
【0141】
次に、本発明の第4の実施形態の作用及び効果について説明する。
【0142】
図16に示すように、ベルトコンベア96、98により物品102が情報管理空間S、S内を通過するように搬送される。
【0143】
まず、ベルトコンベア96、98により搬送される物品102が、情報管理空間S、Sを通過する際に情報管理空間S、S内に入ったときに、パーソナルコンピューター68からの命令によって、リーダライタ装置66を介してアンテナ52の電波発信部から電波が発信される。
【0144】
次に、物品102に備え付けられたRFIDタグ32に備えられたアンテナがこの電波を受信する。そして、RFIDタグ32が受けた電波のエネルギーを電力に変換し、この電力を使って、RFIDタグ32に記憶された情報をRFIDタグ32に備えられたアンテナから電波として発信する。
【0145】
次に、RFIDタグ32から発信された電波は、アンテナ52の電波受信部によってRFIDタグ32と非接触で受信され、この電波はパーソナルコンピューター68からの命令により情報としてリーダライタ装置66に読み取られる。
【0146】
移動体情報読取装置132は、第2の実施形態の物品情報読取装置82と同様に、RFIDタグ32の読み取り率を向上させることができるものなので、移動する移動体としての物品102に備え付けられたRFIDタグ32の情報も確実に読み取ることが可能であり、これによって物品102の管理を行うことができる。
【0147】
また、少ない電波送信手段(アンテナ52の電波送信部)及び電波受信手段(アンテナ52の電波受信部)を有する移動体情報読取装置132を構成することができるので、移動体情報読取装置132を低コストで製造することができる。
【0148】
工場や物流センター等の施設においては、多くの物品を管理する必要があるので、移動体情報読取装置132も多く設置する必要がある。よって、移動体情報読取装置132の低コスト化は、工場や物流センター等の施設の設備費低減に大きく貢献することができる。
【0149】
以上、本発明の第4の実施形態について説明した。
【0150】
なお、第4の実施形態で示した移動体情報読取装置132には、壁部材40が設けられていなかったが、第2の実施形態と同様に、壁面40Aが電波吸収層Qや電場反射層Rとなっている壁部材40を設けてもよい。この場合、ベルトコンベア96、98の設置、及び物品102の通り抜けを可能とする開口を壁部材40に形成する。
例えば、移動体情報読取装置132の出口側に壁部材40を設ければ、移動体情報読取装置132の出口から情報管理空間S、Sの外部へ拡散する電波を抑制することができると共に、壁部材40の壁面40Aに反射して移動体情報読取装置132の入口から情報管理空間S、Sの外部へ拡散する電波を抑制することができる。
【0151】
また、第4の実施形態では、ベルトコンベア96、98により物品102を搬送する例を示したが、第1の実施形態で示した棚14やカート等に、RFIDタグが備え付けられた物品102を載せて、この棚14やカート等を移動体情報読取装置132の情報管理空間S、Sに通過させるようにしてもよい。
【0152】
以上、本発明の第1〜第4の実施形態について説明した。
【0153】
なお、第1〜第4の実施形態で示した、物品情報読取装置10、82、120、導波管16、84、86、棚14、物品12、102、及び移動体情報読取装置130、132の形状や大きさは、適宜決めればよい。図2、5、6、7には、棚14、物品情報読取装置10、又は導波管16の具体的な寸法が示されているが、この数値は、後に説明する実施例の実験条件を明確にするために示した一例であり、この寸法に限られるものではない。
【0154】
また、第1〜第4の実施形態では、導波管16、84、86の横断面形状を矩形とした例を示したが、導波管16、84、86の横断面形状は、矩形以外の形状であってもよい。
【0155】
また、第1〜第4の実施形態では、物品情報読取装置10、82、120、移動体情報読取装置130、132に電波反射層R及び電波吸収層Qを設けた例を示したが、情報管理空間S、S、Sの外部へ拡散する電波が問題とならない場合には、電波反射層Rや電波吸収層Qは設けなくてもよい。
【0156】
また、第1〜第4の実施形態では、導波管16、84、86を直管とした例を示したが、曲管を用いてもよい。
【0157】
また、第1〜第4の実施形態では、1つの導波管16、84、86に1つのアンテナ52を設けた例を示したが、1つの導波管16、84、86に複数のアンテナ52を設けてもよい。また、電波送信部を備えるアンテナと、電波受信部を備えるアンテナとを、導波管の異なる位置に設けるようにしてもよい。
【0158】
また、第1〜第4の実施形態では、情報管理空間S、S、Sに隣り合うように導波管16、84、86を配置した例を示したが、導波管16、84、86は、情報管理空間S、S、S内に配置してもよい。
【0159】
また、第1の実施形態では、棚板18B〜18D上に3段に積み重ねて配置されている物品12の内の1段目(一番下)と3段目(一番上)の物品12、及び棚板18A上に配置されている物品12に、RFIDタグ32を備え付けた例を示したが、棚14に収容されている全ての物品12にRFIDタグ32を備え付けてもよい。また、RFIDタグ32は、物品12の全面(6面)の少なくとも1つの面に備え付けられていればよい。
【0160】
また、第3の実施形態では、第1の実施形態を人の入退管理に応用した例を示し、第4の実施形態では、第2の実施形態をベルトコンベアにより搬送される物品の管理に応用した例を示したが、第1の実施形態をベルトコンベアにより搬送される物品の管理に応用してもよいし、第2の実施形態を人の入退管理に応用してもよい。
【0161】
また、第1の実施形態では、物品情報読取装置10を、壁部材34、36、38、40、天井部材42、及び導波管16によって構成した例を示したが、図17の平面図に示すように、壁部材40を、2つの壁材41A、41Bに分割されて開閉する開閉式の壁部材としてもよい。
このようにすれば、棚14の物品情報読取装置10への出し入れの自由度が大きくなる。
【0162】
また、第1〜第4の実施形態では、導波管16、84、86を情報管理空間Sの左側又は右側に配置した例を示したが、情報管理空間Sの上方又は下方に配置してもよい。例えば、図18(a)の正面図に示すように、導波管16が情報管理空間Sの上方に略水平に配置されるように、床110上に物品情報読取装置10を設置してもよいし、図18(b)の正面図に示すように、導波管16が情報管理空間Sの下方に略水平に配置されるように、床110に物品情報読取装置10を設置してもよい。図18(b)に示すように、床110に導波管16を埋設すれば、物品情報読取装置10の高さを低くすることができる。
【0163】
また、第1の実施形態の物品情報読取装置10を複数組み合わせて配置し、図19(a)〜(d)に示すような物品情報読取設備112、114、116、118を構築してもよい。このようにすれば、電波送信手段(アンテナ52の電波送信部)及び電波受信手段(アンテナ52の電波受信部)による広いセンシング範囲を確保することができる。
図19(a)の物品情報読取設備112の場合、物品情報読取装置10同士の間に隙間を空けずに物品情報読取装置10を設置することができるので、物品情報読取装置10同士の接合部から電波が漏れ難くなり、また精度よく物品情報読取装置10を設置することができる。
【0164】
また、物品情報読取装置10を複数組み合わせて配置した物品情報読取設備の情報管理空間Sに無線タグが備え付けられた物品を通過させて、物品を管理するようにしてもよい。例えば、図19(d)の物品情報読取設備118においては、情報管理空間Sが連なった通路が形成されるので、この通路にRFID32が備え付けられた物品102を流せば、RFID32とアンテナ52との送受信に長い時間をかけることが可能になるので、無線タグの読み取り率をより向上させることができる。
【0165】
以上、本発明の第1〜第4の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものでなく、第1〜第4の実施形態を組み合わせて用いてもよいし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【0166】
(実施例)
【0167】
本実施例では、本発明の第1の実施形態の物品情報読取装置10の効果を検証した実験及びシミュレーションの結果について示す。
【0168】
まず、第1の実施形態の物品情報読取装置10に対して実施した実験について説明する。
【0169】
実験で用いた、物品情報読取装置10の寸法は図5に、導波管16の寸法は図6、7に、棚14の寸法及び物品12の配置間隔は図2に、それぞれ示されている。すなわち、物品情報読取装置10の外形を、幅1480mm×奥行き900mm×高さ1990mm、導波管16の外形を、幅340mm×奥行き260mm×高さ1990mm(厚さ20mm)、棚14の外形を、幅880mm×奥行き657mm×高さ1960mmとし、棚板18A〜18D上に物品12を300mm間隔で設置した。
物品12は、縦150mm×横150mm×高さ100mmの寸法を有する直方体状の箱体とし、紙によって形成した。
【0170】
実験では、まず、棚14を情報管理空間Sに格納した状態(図3を参照のこと)で、アンテナ52から電波を2.5秒間隔で15回送信し、このときのリーダライタ装置66による読み取り率(アンテナ52による受信率)の平均値を求めた。
【0171】
読み取り率とは、情報管理空間S内に存在し且つリーダライタ装置66によって読み取られた無線タグ(RFIDタグ32)の数を、情報管理空間S内に存在する無線タグの数(=1つの物品12に備え付けられたRFIDタグ32の数×情報管理空間S内に格納され且つRFIDタグ32が備え付けられている物品12の数)で割った値である。
【0172】
次に、図20の平面図に示す位置P〜Pに棚14を順に配置した。そして、棚14を情報管理空間Sに格納したときと同様に、位置P〜Pで、リーダライタ装置66による読み取り率の平均値をそれぞれ求めた。
【0173】
位置Pに棚14を配置した状態において、物品情報読取装置10側に面する棚14の側面124と開口部46の開口面122とが略平行となり、且つ側面124と開口面122との間の距離が500mmとなっている。また、正面視にて、棚14の右側の側面126と物品情報読取装置10の壁面44とが面一となっている。
【0174】
また、位置Pに棚14を配置した状態において、棚14の側面124と開口部46の開口面122とが略平行となり、且つ側面124と開口面122との間の距離が500mmとなっている。また、正面視にて、棚14の右側の側面126及び左側の側面128と、情報管理空間Sに格納したときの棚14の側面126及び側面128とが面一となっている。
【0175】
また、位置Pに棚14を配置した状態において、棚14の側面124と開口部46の開口面122とが略平行となり、且つ側面124と開口面122との間の距離が500mmとなっている。また、正面視にて、棚14の側面128と物品情報読取装置10の壁面38Aとが面一となっている。
【0176】
また、位置Pに棚14を配置した状態において、棚14の側面124と開口部46の開口面122とが略平行となり、且つ側面124と開口面122との間の距離が1000mmとなっている。また、正面視にて、棚14の側面126及び側面128と、情報管理空間Sに格納したときの棚14の側面126及び側面128とが面一となっている。
【0177】
また、位置Pに棚14を配置した状態において、棚14の側面124と開口部46の開口面122とが略平行となり、且つ側面124と開口面122との間の距離が1000mmとなっている。また、正面視にて、棚14の側面128と物品情報読取装置10の壁面38Aとが面一となっている。
【0178】
実験の結果、棚14を情報管理空間Sに格納した状態での読み取り率の平均値は80.6%、棚14を位置Pに配置した状態での読み取り率の平均値は5.0%、棚14を位置Pに配置した状態での読み取り率の平均値は10.0%、棚14を位置Pに配置した状態での読み取り率の平均値は22.2%、棚14を位置Pに配置した状態での読み取り率の平均値は2.0%、棚14を位置Pに配置した状態での読み取り率の平均値は5.0%となった。
【0179】
よって、実験により、1つのアンテナ52(電波送信手段及び電波受信手段)を用いた物品情報読取装置10において、情報管理空間Sに格納された物品12に備え付けられたRFIDタグ32の読み取り率を向上させることができ、80.6%という高精度の読み取り率を実現できることがわかった。
【0180】
また、物品情報読取装置10に設けられた電波反射層R及び電波吸収層Qの作用によって、導波管16から情報管理空間Sへ放射された電波が情報管理空間Sの外部へ拡散するのを抑制できることがわかった。特に、電波が最も拡散するであろうと予測された位置Pにおいても、22.2%という低い読み取り率に抑えられた。
【0181】
次に、第1の実施形態の物品情報読取装置10に対して実施したシミュレーション結果について説明する。
【0182】
図23(a)〜(d)には、図21(a)、(b)、及び図22(a)、(b)の斜視図に示すモデル1〜4に対して、3次元電磁界シミュレーションを行った結果が示されている。
【0183】
モデル1〜4の構成は、第1の実施形態で説明した物品情報読取装置10と同じなので、同符号を付すると共に、説明を省略する。モデル1〜4の各部の寸法は、先に説明した実験で用いたものと同じである(物品情報読取装置10の寸法は図5に、導波管16の寸法は図6、7に示されている)。
【0184】
図21(a)、(b)、及び図22(a)、(b)に示されている座標軸X、Y、Zは、X軸とZ軸とからなる面が物品情報読取装置10の壁面44と同一面となり、導波管16の前面16Aを正面から見たときにY軸とZ軸とからなる面が導波管16を左右に均等に分割するように設定されている。
【0185】
図21(a)のモデル1は、第1の実施形態の物品情報読取装置10において、開口部46の開口周縁部と、開口部46に対向する壁部材40Aとに電波を吸収する電波吸収層Qが設けられていないものである。
【0186】
図21(b)のモデル2は、第1の実施形態の物品情報読取装置10において、開口部46に対向する壁部材40Aに電波を吸収する電波吸収層Qが設けられていない(開口部46の開口周縁部のみに電波吸収層Qが設けられている)ものである。
【0187】
図22(a)のモデル3は、第1の実施形態の物品情報読取装置10において、開口部46の開口周縁部に電波を吸収する電波吸収層Qが設けられていない(開口部46に対向する壁部材40Aのみに電波吸収層Qが設けられている)ものである。
【0188】
図22(b)のモデル4は、第1の実施形態の物品情報読取装置10において、開口部46の開口周縁部と、開口部46に対向する壁部材40Aとの両方に電波を吸収する電波吸収層Qが設けられているものである。
【0189】
図23(a)には、図21(a)のモデル1のX=1000mmの断面における電界分布が示され、図23(b)には、図21(b)のモデル2のX=1000mmの断面における電界分布が示され、図23(c)には、図22(a)のモデル3のX=1000mmの断面における電界分布が示され、図23(d)には、図22(b)のモデル4のX=1000mmの断面における電界分布が示されている。
【0190】
図23(a)〜(d)に示された、領域Eは電界強度がB以上2B未満である領域を示し、領域Eは電界強度が2B以上3B未満である領域を示し、領域Eは電界強度が3B以上である領域を示す。なお、Bは電界強度の基準値を意味する。
【0191】
図23(a)〜(d)では、X=1000mmの断面における全体的な電界強度は、モデル1〜4の順に小さくなっている。これにより、電波を吸収する電波吸収体Qを設けることにより、センシング範囲(情報管理空間S)の外部に拡散する電波が小さくなることがわかる。このように、センシング範囲(情報管理空間S)外に拡散する電波を小さくすることができれば、センシング範囲外における読み取り率を小さくすることが可能となる。
【0192】
図26(a)〜(d)は、図24(a)、(b)、及び図25(a)、(b)の斜視図に示すモデル5〜8に対して、3次元電磁界シミュレーションを行った結果が示されている。
【0193】
モデル5〜8の構成は、第1の実施形態で説明した物品情報読取装置10と同じなので、同符号を付すると共に、説明を省略する。モデル5〜8の各部の寸法は、先に説明した実験で用いたものと同じである(物品情報読取装置10の寸法は図5に、導波管16の寸法は図6、7に示されている)。
【0194】
図24(a)、(b)、及び図25(a)、(b)に示されている座標軸X、Y、Zは、X軸とZ軸とからなる面が物品情報読取装置10の壁面44と同一面となり、導波管16の前面16Aを正面から見たときにY軸とZ軸とからなる面が導波管16を左右に均等に分割するように設定されている。
【0195】
図24(a)のモデル5は、第1の実施形態の物品情報読取装置10において、反射板60、64を設けていないものである。
【0196】
図24(b)のモデル6は、第1の実施形態の物品情報読取装置10において、反射板64を設けていない(反射板60のみを設けている)ものである。
【0197】
図25(a)のモデル7は、第1の実施形態の物品情報読取装置10において、反射板60を設けていない(反射板64のみを設けている)ものである。
【0198】
図25(b)のモデル8は、第1の実施形態の物品情報読取装置10において、反射板60、64の両方を設けているものである。
【0199】
図26(a)には、図24(a)のモデル5のX=0mmの断面における電界分布が示され、図26(b)には、図24(b)のモデル6のX=0mmの断面における電界分布が示され、図26(c)には、図25(a)のモデル7のX=0mmの断面における電界分布が示され、図26(d)には、図25(b)のモデル8のX=0mmの断面における電界分布が示されている。
【0200】
図26(a)〜(d)に示された、領域Fは電界強度がD以上2D未満である領域を示し、領域Fは電界強度が2D以上3D未満である領域を示し、領域Fは電界強度が3D以上4D未満である領域を示し、領域Fは電界強度が4D以上である領域を示す。なお、Dは電界強度の基準値を意味する。
【0201】
図26(a)のモデル5と図26(b)のモデル6とを比較すると、モデル5に比べてモデル6では、電波出入口56から真横に領域Fの強さの電界が多く放出されている。また、センシング範囲(情報管理空間S)において電波出入口56と同じ高さに領域Fの強さの電界の広い分布が見られる。
【0202】
図26(a)のモデル5と図26(c)のモデル7とを比較すると、モデル5に比べてモデル7では、電波出入口58から放出される領域Fの強さの電界が多く放出されている。また、センシング範囲(情報管理空間S)において電波出入口58と同じ高さに領域Fの強さの電界の広い分布が見られる。
【0203】
図26(d)のモデル8では、センシング範囲(情報管理空間S)の全域に領域Fの強さの電界の広い分布が見られる。
【0204】
よって、図26(a)〜(d)より、反射板60、64によってセンシング範囲(情報管理空間S)の全域に所望の電界を分布させる効果が得られることがわかる。
【符号の説明】
【0205】
10、82、120 物品情報読取装置
12 物品
14 棚
16、84、86 導波管(導波路)
32 RFIDタグ(無線タグ)
46 開口部
48 直管
52 アンテナ(電波送信手段、電波受信手段)
56、58 電波出入口
60、60B〜60E、64、80A〜80C、100 反射板(反射部材)
62、62B〜62E、78A〜78C、106、108 通過部
66 リーダライタ装置(情報読取手段)
88 入場ゲート(移動体情報読取装置)
90 退場ゲート(移動体情報読取装置)
92 入場者(移動体)
94 退場者(移動体)
102 物品(移動体)
112、114、116、118 物品情報読取設備
130、132 移動体情報読取装置
Q 電波吸収層
R 電波反射層
S、S、S 情報管理空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報を記憶した無線タグが備え付けられた物品を格納する情報管理空間と、
前記情報管理空間に隣り合うように又は前記情報管理空間内に配置された導波路と、
前記導波路に複数形成され前記情報管理空間に向けて開口する電波出入口と、
前記導波路内へ電波を送信する電波送信手段と、
前記導波路内から電波を受信する電波受信手段と、
前記電波送信手段から送信された電波を前記電波出入口を通して前記情報管理空間へ向けて反射すると共に、前記無線タグから発信され前記電波出入口から前記導波路内へ向けて放射される電波を前記電波受信手段に向けて反射する反射部材と、
前記導波路の内壁と前記反射部材との間又は前記反射部材に設けられ電波が通る通過部と、
前記電波受信手段で受信された電波を情報として読み取る情報読取手段と、
を有する物品情報読取装置。
【請求項2】
前記情報管理空間は、電波を反射する電波反射層で囲まれている請求項1に記載の物品情報読取装置。
【請求項3】
前記情報管理空間の側面には開口部が形成され、該開口部によって前記情報管理空間が外部に開放されている請求項1又は2に記載の物品情報読取装置。
【請求項4】
前記物品を収容した移動式の棚が前記開口部から前記情報管理空間へ出入可能となっている請求項3に記載の物品情報読取装置。
【請求項5】
前記開口部の開口周縁部に電波を吸収する電波吸収層が形成されている請求項3又は4に記載の物品情報読取装置。
【請求項6】
前記開口部に対向する前記情報管理空間の内壁に電波を吸収する電波吸収層が形成されている請求項3〜5の何れか1項に記載の物品情報読取装置。
【請求項7】
前記電波送信手段から離れるに従って前記通過部の開口面積を順に小さくする請求項1〜6の何れか1項に記載の物品情報読取装置。
【請求項8】
複数の前記情報管理空間に隣り合うように1つの導波路が配置され、各情報管理空間へ向けて前記電波出入口が開口している請求項1〜7の何れか1項に記載の物品情報読取装置。
【請求項9】
前記導波路の横断面形状は矩形であり、該矩形の各辺の長さが電波の波長の1/2以上である請求項1〜8の何れか1項に記載の物品情報読取装置。
【請求項10】
前記導波路は直管である請求項1〜9の何れか1項に記載の物品情報読取装置。
【請求項11】
請求項10に記載の物品情報読取装置を複数組み合わせて配置した物品情報読取設備。
【請求項12】
情報を記憶した無線タグが備え付けられた移動体が通過する情報管理空間と、
前記情報管理空間に隣り合うように又は前記情報管理空間内に配置された導波路と、
前記導波路に複数形成され前記情報管理空間に向けて開口する電波出入口と、
前記導波路内へ電波を送信する電波送信手段と、
前記導波路内から電波を受信する電波受信手段と、
前記電波送信手段から送信された電波を前記電波出入口を通して前記情報管理空間へ向けて反射すると共に、前記無線タグから発信され前記電波出入口から前記導波路内へ向けて放射される電波を前記電波受信手段に向けて反射する反射部材と、
前記導波路の内壁と前記反射部材との間又は前記反射部材に設けられ電波が通る通過部と、
前記電波受信手段で受信された電波を情報として読み取る情報読取手段と、
を有する移動体情報読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図24】
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【図25】
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【図27】
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【図23】
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【図26】
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【公開番号】特開2010−212806(P2010−212806A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−54185(P2009−54185)
【出願日】平成21年3月6日(2009.3.6)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【出願人】(596100812)京セラコミュニケーションシステム株式会社 (38)
【Fターム(参考)】