説明

物品支持台車

【課題】不使用時にはコンパクトに折り畳みを可能にして,狭小なスペースへ容易に格納し得る物品支持台車を提供する。
【解決手段】底枠2と,この底枠2の下面に取り付けられる複数のキャスタ3,4と,物品8を支持すべく底枠2に立設される左右一対の支柱13,13及びこの両支柱13,13の上端部間を一体に連結する物品支持板14よりなる支持枠5と,底枠2に立設されて両支柱13,13にそれぞれ交差連結される左右一対のステー6,6とよりなる物品支持台車において,両支柱13,13を第1枢軸21,21を介して底枠2に倒伏可能に連結し,またステー6,6の上端部を第1枢軸21,21と平行な第2枢軸22,22を介して支柱13,13に回動可能に連結すると共に,各ステー6の下端部を,底枠2上のブラケット19に抜き差し可能の連結ピン30を介して連結し,この連結ピン30の離脱時,支持枠5及びステー6を互いに重ねて底枠2上に倒伏させ得るようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,底枠と,この底枠の下面に取り付けられる複数のキャスタと,物品を支持すべく底枠に立設される左右一対の支柱及びこの両支柱の上端部間を一体に連結する物品支持板よりなる逆U字状の支持枠と,底枠に立設されて両支柱にそれぞれ交差連結される左右一対のステーとよりなる物品支持台車の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
かゝる物品支持台車は,特許文献1に開示されるように,既に知られている。
【特許文献1】特開平5−50922号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のかゝる物品支持台車は,不使用時,折り畳むことができないため,その格納時には大きなスペースを必要とし,不便であった。
【0004】
本発明は,かゝる事情に鑑みてなされたもので,不使用時にはコンパクトに折り畳みを可能にして,狭小なスペースへ容易に格納し得るようにした前記物品支持台車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために,本発明は,底枠と,この底枠の下面に取り付けられる複数のキャスタと,物品を支持すべく底枠に立設される左右一対の支柱及びこの両支柱の上端部間を一体に連結する物品支持板よりなる支持枠と,底枠に立設されて両支柱にそれぞれ交差連結される左右一対のステーとよりなる物品支持台車において,両支柱を第1枢軸を介して底枠に倒伏可能に連結し,また各ステーの上端部を第1枢軸と平行な第2枢軸を介して支柱に回動可能に連結すると共に,このステーの下端部を,底枠上のブラケットに抜き差し可能の連結ピンを介して連結し,この連結ピンの離脱時,支持枠及びステーを互いに重ねて底枠上に倒伏させ得るようにしたことを第1の特徴とする。
【0006】
また本発明は,第1の特徴に加えて,前記ブラケット及びステーの一方と他方とに,前記連結ピンの,ブラケット及びステーへの挿入位置を決定すべく互いに係合する位置決め凹部と位置決め突起とをそれぞれ設けたことを第2の特徴とする。
【0007】
さらに本発明は,第1又は第2の特徴に加えて,底枠に,支持枠の下端部側に位置する左右一対の後部キャスタと,支持枠の倒伏時,その先端側に位置する一対の前部キャスタとを取り付け,支持枠及びステーを重ねて底枠上に倒伏させた状態で複数の物品支持台車を段積み可能とすべく,各物品支持台車の底枠には,上段の物品支持台車の後部キャスタを移動不能に支承し得るキャスタ受け部を設けると共に,各物品支持台車の物品支持板を,上段の物品支持台車の前部キャスタを支承し得るように構成したことを第3の特徴とする。
【0008】
さらにまた本発明は,第3の特徴に加えて,底枠に,支持枠の下端部側に位置する左右一対の後部キャスタと,支持枠の倒伏時,その先端側に位置する一対の前部キャスタとを取り付け,底枠を,前部キャスタ側に行くにつれて左右幅が狭まるようにハ字状に配置される左右一対の底枠板と,この両底枠板の後端部間を連結するクロスメンバとで構成し,この底枠の両底枠板間には,他の物品支持台車の底枠の前端部を嵌合し得るようにしたことを第4の特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の第1の特徴によれば,支持枠から船外機が外された物品支持台車の不使用時には,連結ピンを支柱及びステーから外すことにより,支持枠及びステーを互いに重ねて底枠上に倒伏させ,物品支持台車をコンパクトな折り畳み状態にすることができる。
【0010】
本発明の第2の特徴によれば,位置決め突起及び位置決め凹部の係合により,連結ピンの,ブラケット及びステーへの挿入位置が自動的に決定されるので,連結ピンの,ブラケット及びステーへの挿入を容易,的確に行うことができ,したがって物品支持台車の使用状態への変更を容易に行うことができる。
【0011】
本発明の第3の特徴によれば,各物品支持台車の支持枠を倒伏状態にすれば,複数の物品支持台車をコンパクトに段積み状態にすることができる。
【0012】
本発明の第4の特徴によれば,支持枠を起立状態にした複数台の物品支持台車を前後に並べるときは,前側の物品支持台車の底枠の両底枠板間に,後側の底枠の前端部を順次嵌合することにより,複数台の物品支持台車をコンパクトに整列させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施の形態を,添付図面に示す本発明の好適な実施例に基づいて説明する。
【0014】
図1は本発明の実施例に係る物品支持台車を,船外機を支持した状態で示す側面図,図2は図1の2矢視図,図3は図1の3矢視図,図4は同物品支持台車の平面図,図5は同物品支持台車の要部斜視図,図6は同物品支持台車の要部分解斜視図,図7は同物品支持台車の支持枠の倒伏要領説明図,図8は図7の8矢視図,図9は複数の物品支持台車の段積み状態を示す側面図,図10は図9の10−10線断面図,図11は複数の物品支持台車の前後整列要領説明図である。
【0015】
先ず,図1〜図3において,物品支持台車1は,底枠2と,この底枠2の前部下面に取り付けられる左右一対の前部キャスタ3,3と,同底枠2の後部下面に取り付けられる左右一対の後部キャスタ4,4と,底枠2の後端部上に立設される支持枠5と,底枠2及び支持枠5間を連結する左右一対のステー6,6とより構成される。前部キャスタ3,3及び後部キャスタ4,4の少なくとも一方にはブレーキ7,7が付設され,支持枠5には,物品として船外機8が取り付けられる。
【0016】
底枠2は,前方に向かって左右間隔が狭まるようにハ字状に配置される左右一対の底枠板10,10と,この両底枠板10,10の前端部間を一体に連結するクロスメンバ11とで構成され,そのクロスメンバ11は,その中間部が底枠板10,10の下方に来るようにU字状をなしている。
【0017】
支持枠5は,左右一対の支柱13,13と,この両支柱13,13の上端部間を一体に連結する物品支持板14とで構成される。各支柱13は,その中間部及び下端部にそれぞれ前方に突出した上部小腕部15及び下部小腕部16を一体に備えており,その下部小腕部16は,同側の底枠板10の後端部上面に突設される一対の後部ブラケット18,18に,左右方向水平に延びる第1枢軸21を介して連結され,これにより支持枠5は起立位置A(図1〜図3参照)と,前方への倒伏位置B(図7(c)及び図8参照)との間を第1枢軸21周りに回動し得るようになっている。また両支柱13,13間には,これらの後方に突出する移動用ハンドル23が連結される。
【0018】
各支柱13の上部小腕部15にはステー6の上端部が第1枢軸21と平行な第2枢軸22を介して回動自在に連結される。図1,図5及び図6に示すように,このステー6の下端部には,第1枢軸21と平行な内側ピン孔24と,この内側ピン孔24直上のステー6外側面に突出する位置決め突起26とが設けられる。また各底枠板10の上面には,後部ブラケット18より前方に位置してステー6の下端部を挟み得る左右一対の前部ブラケット19,19が固設され,この両前部ブラケット19,19の少なくとも一方には,ステー6の前記位置決め突起26が係合し得る位置決め凹部27が設けられ,この位置決め凹部27に前記位置決め突起26が係合したとき,前記内側ピン孔24と同軸に一致する外側ピン孔25,25が両後部ブラケット18,18に穿設される。これら内側ピン孔24及び外側ピン孔25,25には,膨大頭部30a付きの連結ピン30が抜き差し可能に挿入され,この連結ピン30の先端部には,その抜け止め用の割りピン31が装着されるようになっている。
【0019】
而して,この物品支持台車1の使用時には,支柱13を第1枢軸21周りに起こして,ステー6の位置決め突起26を前部ブラケット19の位置決め凹部27に係合させる。これら位置決め突起26及び位置決め凹部27の係合によれば,ステー6の内側ピン孔24及び前部ブラケット19アs19の外側ピン孔25,25が自動的に同軸に並ぶことになるから,これらピン孔24,25に連結ピン30を容易,的確に挿入し得て,前部ブラケット19にステー6を連結することができる。その後,連結ピン30の先端部には割りピン31を装着して,連結ピン30の抜け止めを行う。こうして前部ブラケット19,19に連結したステー6は,支持枠5を前方に向かって僅かに傾いた所定の起立位置Aに保持することができる。
【0020】
図示例では,支持枠5の物品支持板14は,図1〜図3に示すように,船外機8を支持し得るように船のトランサムに模して構成される。したがって,この物品支持板14の前面には船外機8のスターンブラケット8sがクランプボルト17により固定される。その際,船外機8は,その下端部を底枠2の左右の底枠板10,10間に臨ませて,極力低重心に配置される。しかも左右の底枠板10,10の前端部間を連結するクロスメンバ11は,底枠板10,10より下方に屈曲するU字状をなしているから,船外機8の下端部との干渉を避けることができる。こうして船外機8を支持した物品支持台車1は,支持枠5の後側のハンドル23を把持して,例えば展示場等へ移動し,この物品支持台車1のまゝ船外機8を展示に供することができる。
【0021】
支持枠5から船外機8が外された物品支持台車1の不使用時には,図6及び図7(a)に示すように,連結ピン30から割りピン31を外して連結ピン30を内側及び外側ピン孔24,25から引き抜き,そして支持枠5を少し後方へ回動してステー6の位置決め突起26を前部ブラケット19の位置決め凹部27から離脱させれば,第2枢軸22に支持されるステー6を支持枠5の支柱13の前面に重ねることができる(図7(b)参照)。そして図7(c)に示すように,支持枠5を前方へ倒せば,ステー6を下にして支持枠5及びステー6を底枠2上に倒伏させ,物品支持台車1をコンパクトな折り畳み状態にすることができる。
【0022】
特に,第1枢軸21に直接支持される,支柱13の下部小腕部16が,倒伏した支柱13と底枠2との間にステー6を収める間隙を画成し,また支柱13の前方に突出する上部小腕部15がステー6の上端部を軸支するので,ステー6を下にして支持枠5及びステー6を底枠2上に無理なく倒伏させることができる。その際,各底枠板10上の左右一対の前部ブラケット19,19は,それらの間に同側のステー6及び支柱13を受容して,これらステー6及び支柱13の横触れ防止に寄与する。このような折り畳み状態の物品支持台車1は,小スペースの格納場所へも容易に収めることが可能である。
【0023】
この物品支持台車1は,これが複数台ある場合,上記折り畳み状態で段積みを可能にすべく次のように構成される。
【0024】
即ち,図8〜図10に示すように,底枠板10,10の上面には,対応する後部ブラケット18,18;18,18の各外側方に配置される左右一対のキャスタ受け部32,32が固設される。各キャスタ受け部32は,横断面コ字状のストッパ枠33と,このストッパ枠33の内側壁に水平に固設される載置板34とで構成され,この載置板34は,倒伏状態の支持枠5の物品支持板14と同一レベルになるように配置される。
【0025】
而して,支持枠5を倒伏状態にした複数の物品支持台車1を段積みするとき,上段の物品支持台車1の後部キャスタ4,4を,下段のキャスタ受け部32の載置板34上に載置すると共に,上段の物品支持台車1の前部キャビティ3,3を,下段の物品支持台車1の,倒伏状態の支持枠5の物品支持板14上に載置する。その際,載置板34上に載置した後部キャスタ4,4は,ストッパ枠33により移動を阻止される。
【0026】
こうして,複数の物品支持台車1,1…を段積みすることにより,これらを倉庫等にコンパクトに収納することができる。
【0027】
また支持枠5を起立状態にした物品支持台車1が複数存在する場合には,図11に示すように,前側の物品支持台車1の底枠2のハ字状底枠板10,10間に,後側の物品支持台車1の底枠2の前端部を順次嵌合していくことにより,複数の物品支持台車1,1…をコンパクトに整列させることができる。
【0028】
本発明は,上記実施例に限定されるものではなく,その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば,物品支持板14には,船外機8以外の物品を支持することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施例に係る物品支持台車を,船外機を支持した状態で示す側面図。
【図2】図1の2矢視図。
【図3】図1の3矢視図。
【図4】同物品支持台車の平面図。
【図5】同物品支持台車の要部斜視図。
【図6】同物品支持台車の要部分解斜視図。
【図7】同物品支持台車の支持枠の倒伏要領説明図。
【図8】図7の8矢視図。
【図9】複数の物品支持台車の段積み状態を示す側面図。
【図10】図9の10−10線断面図。
【図11】複数の物品支持台車の前後整列要領説明図。
【符号の説明】
【0030】
1・・・・・物品支持台車
2・・・・・底枠
3・・・・・前部キャスタ
4・・・・・後部キャスタ
5・・・・・支持枠
6・・・・・ステー
8・・・・・物品(船外機)
10・・・・底枠板
11・・・・クロスメンバ
13・・・・支柱
14・・・・物品支持板
19・・・・ブラケット(前部ブラケット)
21・・・・第1枢軸
22・・・・第2枢軸
24・・・・内側ピン孔
25・・・・外側ピン孔
26・・・・位置決め突起
27・・・・位置決め凹部
30・・・・連結ピン
32・・・・キャスタ受け部
A・・・・・支持枠の起立位置
B・・・・・支持枠の倒伏位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底枠(2)と,この底枠(2)の下面に取り付けられる複数のキャスタ(3,4)と,物品(8)を支持すべく底枠(2)に立設される左右一対の支柱(13,13)及びこの両支柱(13,13)の上端部間を一体に連結する物品支持板(14)よりなる支持枠(5)と,底枠(2)に立設されて両支柱(13,13)にそれぞれ交差連結される左右一対のステー(6,6)とよりなる物品支持台車において,
両支柱(13,13)を第1枢軸(21,21)を介して底枠(2)に倒伏可能に連結し,またステー(6,6)の上端部を第1枢軸(21,21)と平行な第2枢軸(22,22)を介して支柱(13,13)に回動可能に連結すると共に,各ステー(6)の下端部を,底枠(2)上のブラケット(19)に抜き差し可能の連結ピン(30)を介して連結し,この連結ピン(30)の離脱時,支持枠(5)及びステー(6)を互いに重ねて底枠(2)上に倒伏させ得るようにしたことを特徴とする物品支持台車。
【請求項2】
請求項1記載の物品支持台車において,
前記ブラケット(19)及びステー(6)の一方と他方とに,前記連結ピン(30)の,ブラケット(19)及びステー(6)への挿入位置を決定すべく互いに係合する位置決め凹部(27)と位置決め突起(26)とをそれぞれ設けたことを特徴とする物品支持台車。
【請求項3】
請求項1又は第2の記載の物品支持台車において,
底枠(2)に,支持枠(5)の下端部側に位置する左右一対の後部キャスタ(4,4)と,支持枠(5)の倒伏時,その先端側に位置する一対の前部キャスタ(3,3)とを取り付け,支持枠(5)及びステー(6)を重ねて底枠(2)上に倒伏させた状態で複数の物品支持台車(1)を段積み可能とすべく,各物品支持台車(1)の底枠(2)には,上段の物品支持台車(1)の後部キャスタ(4,4)を移動不能に支承し得るキャスタ受け部(32)を設けると共に,各物品支持台車(1)の物品支持板(14)を,上段の物品支持台車(1)の前部キャスタ(3,3)を支承し得るように構成したことを特徴とする物品支持台車。
【請求項4】
請求項3記載の物品支持台車において,
底枠(2)に,支持枠(5)の下端部側に位置する左右一対の後部キャスタ(4,4)と,支持枠(5)の倒伏時,その先端側に位置する一対の前部キャスタ(3,3)とを取り付け,底枠(2)を,前部キャスタ(3,3)側に行くにつれて左右幅が狭まるようにハ字状に配置される左右一対の底枠板(10,10)と,この両底枠板(10,10)間を連結するクロスメンバ(11)とで構成し,この底枠(2)の両底枠板(10,10)間には,他の物品支持台車(1)の底枠(2)の前端部を嵌合し得るようにしたことを特徴とする物品支持台車。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2008−126975(P2008−126975A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−317710(P2006−317710)
【出願日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】