説明

物品検査装置

【課題】X線透過画像内に不存在領域やシール領域を特定する処理を不要とすることにより、処理の負荷を軽減できるとともに検査速度及び検査精度を向上することが可能なX線検査装置を得る。
【解決手段】X線検査装置1は、内容物がパッケージ内に封入された物品50を検査するX線検査装置であって、物品50にX線を照射するX線照射部7と、物品50を透過したX線を検出するX線検出部8と、X線検出部8の検出結果に基づいてX線透過画像60を作成する透過画像作成部30と、X線透過画像60に基づいて、パッケージのシール部への内容物の噛み込みを判定する噛み込み判定部31とを備え、噛み込み判定部31は、パッケージの外縁から内容物の外縁までの長さをX線透過画像60に基づいて算出し、該算出された長さに基づいて内容物の噛み込みを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は物品検査装置に関し、特にX線検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食品等の物品の製造ラインにおいては、異物が混入している物品が出荷されることを未然に防止するために、X線検査装置を用いた物品の異物検査が行われている。X線検査装置では、搬送コンベアによって連続的に搬送されてくる物品に対してX線を照射し、物品を透過した透過X線をX線センサで検出することにより、透過X線の強度に基づいて物品内への異物の混入の有無が検査される。
【0003】
ところで、内容物がパッケージ内に封入された形態の物品においては、内容物をパッケージに封入する際に、パッケージのシール部に内容物の一部が噛み込まれる場合がある。このような内容物の噛み込みが生じている物品は、不良品として良品の製造ラインから排除する必要がある。
【0004】
下記特許文献1には、X線透過画像内において本来は内容物が存在しない不存在領域を予め設定しておき、その不存在領域内に不要物が存在しているか否かによって、欠陥の有無を判別するX線検査装置が開示されている。
【0005】
また、下記特許文献2には、物品サイズ及びシール幅等を予め設定しておき、その設定値と物品のX線透過画像とに基づいて、シール部への内容物の噛み込みを判定するX線検査装置が開示されている。このX線検査装置では、設定されたシール幅に基づいてX線透過画像の中からシール領域を特定し、そのシール領域の中に、輝度レベルが内容物のそれと同等以上の領域が存在する場合には、シール部への内容物の噛み込みが発生していると判定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−127962号公報
【特許文献2】特許第3860154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に開示されたX線検査装置によると、まずX線透過画像内に不存在領域を特定する処理を実行し、次に不存在領域内に不要物が存在するか否かを判定する処理を実行する必要がある。同様に、上記特許文献2に開示されたX線検査装置によると、まずX線透過画像内にシール領域を特定する処理を実行し、次にシール領域内に内容物が存在するか否かを判定する処理を実行する必要がある。このように、上記特許文献1,2に開示されたX線検査装置によると、X線透過画像内に不存在領域又はシール領域を特定する処理が必要となるため、処理の負荷が大きいとともに、所要時間が長くなって検査速度が低下するという問題がある。また、検査精度が不十分であるという問題もある。
【0008】
本発明はかかる問題を解決するために成されたものであり、X線透過画像内に不存在領域やシール領域を特定する処理を不要とすることにより、処理の負荷を軽減できるとともに検査速度及び検査精度を向上することが可能な物品検査装置を得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様に係る物品検査装置は、内容物がパッケージ内に封入された物品を検査する物品検査装置であって、物品にX線を照射する照射手段と、物品を透過したX線を検出する検出手段と、前記検出手段の検出結果に基づいてX線透過画像を作成する画像作成手段と、前記X線透過画像に基づいて、前記パッケージの封止部分への前記内容物の噛み込みを判定する判定手段とを備え、前記判定手段は、前記パッケージの外縁から前記内容物の外縁までの長さを前記X線透過画像に基づいて算出し、該算出された長さに基づいて前記内容物の噛み込みを判定することを特徴とするものである。
【0010】
第1の態様に係る物品検査装置によれば、判定手段は、パッケージの外縁から内容物の外縁までの長さをX線透過画像に基づいて算出し、該算出された長さに基づいて、パッケージの封止部分への内容物の噛み込みを判定する。従って、X線透過画像内に不存在領域やシール領域を特定する処理が不要となるため、処理の負荷を軽減できるとともに検査速度を向上することが可能となる。しかも、噛み込みの直接的な原因となるパッケージの外縁から内容物の外縁までの長さに基づいて合否を判定するため、検査精度を向上することが可能となる。
【0011】
本発明の第2の態様に係る物品検査装置は、第1の態様に係る物品検査装置において特に、前記判定手段は、前記X線透過画像における前記パッケージの留め部を除外して、前記内容物の外縁を規定することを特徴とするものである。
【0012】
第2の態様に係る物品検査装置によれば、判定手段は、X線透過画像におけるパッケージの留め部を除外して、内容物の外縁を規定する。従って、留め部が誤って内容物と判定される事態を回避することが可能となる。
【0013】
本発明の第3の態様に係る物品検査装置は、第1又は第2の態様に係る物品検査装置において特に、前記X線透過画像において前記パッケージの角部が湾曲している場合、前記判定手段は、当該角部の周辺の形状に基づいて湾曲が生じていない角部の形状を求めて、前記パッケージの外縁を規定することを特徴とするものである。
【0014】
第3の態様に係る物品検査装置によれば、X線透過画像においてパッケージの角部が湾曲している場合、判定手段は、当該角部の周辺の形状に基づいて湾曲が生じていない角部の形状を求めて、パッケージの外縁を規定する。従って、カールに起因してX線透過画像の外縁から内容物までの距離が短くなっている場合に、噛み込みが生じていると誤って判定される事態を回避することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、X線透過画像内に不存在領域やシール領域を特定する処理が不要となるため、処理の負荷を軽減できるとともに検査速度及び検査精度を向上することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態に係るX線検査装置の構成を示す正面図である。
【図2】シールドボックスの内部を模式的に示す斜視図である。
【図3】X線検査装置の構成を示すブロック図である。
【図4】演算部の機能構成を示すブロック図である。
【図5】良品に関して作成されたX線透過画像の一例を示す図である。
【図6】X線透過画像の一例を示す図である。
【図7】X線透過画像の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、異なる図面において同一の符号を付した要素は、同一又は相応する要素を示すものとする。
【0018】
図1は、本発明の実施の形態に係るX線検査装置1の構成を示す正面図である。図1に示すように、X線検査装置1は、上部筐体2、シールドボックス3、及び下部筐体4を備えている。上部筐体2には、液晶表示装置等の表示部5が配設されている。シールドボックス3内には、搬送コンベア6、X線照射部7、及びX線検出部8が配設されている。シールドボックス3には、物品搬入口10及び物品搬出口11が形成されている。搬送コンベア6の上流端(図1では左端)は物品搬入口10からシールドボックス3の外部に突出しており、下流端(図1では右端)は物品搬出口11からシールドボックス3の外部に突出している。搬送コンベア6は、上流端から下流端に向けて物品50を搬送する。下部筐体4内には、コンピュータ9が配設されている。
【0019】
物品50は、内容物がパッケージ内に封入された物品であり、本実施の形態の例では、外装の薬袋内に湿布薬が封入された物品である。
【0020】
図1を参照して、搬送コンベア6の上流には、搬送コンベア12が配設されている。搬送コンベア12は、図示しない包装機によってパッケージングされた物品50を、搬送コンベア6の上流端に連続的に供給する。搬送コンベア6の下流には、任意の振分装置13が配設されている。振分装置13は、X線検査装置1によって異物の混入が検出された物品50を、良品の製造ラインから排除する。また、振分装置13は、X線検査装置1によって内容物の噛み込みが検出された物品50を、良品の製造ラインから排除する。
【0021】
図2は、シールドボックス3の内部を模式的に示す斜視図である。X線照射部7は、搬送コンベア6の物品搬送面の上方に配設されている。X線検出部8は、本実施の形態の例ではX線ラインセンサであり、複数のX線検出素子8aを有している。複数のX線検出素子8aは、搬送コンベア6による物品50の搬送方向に直交する方向(つまり搬送コンベア6のコンベアベルトの幅方向)に沿って直線状に並んでいる。X線検出部8は、物品搬送面の下方に配設されている。なお、ラインセンサの代わりに、複数のX線検出素子8aが平面上に並設されたエリアセンサを用いることもできる。
【0022】
図2に示すように、X線照射部7は、X線検出部8に向かって、扇形状にX線を照射する。搬送コンベア6は、搬送コンベア12から供給された物品50を、X線照射部7とX線検出部8との間のX線照射経路100を通過するように搬送する。X線検出部8は、物品50を透過した透過X線を検出する。
【0023】
図3は、X線検査装置1の構成を示すブロック図である。コンピュータ9は、CPU等の演算部20と、半導体メモリ又はハードディスク等の記憶部21とを有している。X線検出部8によって検出された透過X線の強度に関するデータS1は、コンピュータ9に入力される。物品50内に異物が混入している場合には、その異物の混入箇所において透過X線の強度が低下する。従って、コンピュータ9は、透過X線の強度分布において、所定の閾値よりも強度が低い箇所を、異物の混入箇所として特定することができる。
【0024】
コンピュータ9は、物品50内への異物の混入を検出した場合には、その物品50を製造ラインから排除させるために、振分装置13に制御信号S3を入力する。また、コンピュータ9は、X線検出部8から連続的に送られてくるデータS1に基づいて、物品50に関するX線透過画像を作成し、そのX線透過画像の画像データS2を表示部5に入力する。これにより、表示部5において物品50のX線透過画像が表示される。
【0025】
また、コンピュータ9は、X線透過画像に基づいて、パッケージのシール部又は留め部への内容物の噛み込みを判定する機能を有している。以下、この機能について具体的に説明する。
【0026】
図4は、演算部20の機能構成を示すブロック図である。図4に示すように演算部20は、透過画像作成部30と噛み込み判定部31とを有している。また、噛み込み判定部31は、画像加工部40と判定部41とを有している。
【0027】
透過画像作成部30には、X線検出部8からデータS1が入力される。透過画像作成部30は、X線検出部8から連続的に送られてくるデータS1に基づいて、物品50に関するX線透過画像を作成する。
【0028】
図5は、良品(つまり湿布薬の噛み込みが生じていない物品50)に関して作成されたX線透過画像60の一例を示す図である。X線透過画像60は、パッケージの外縁に相当する上辺61、底辺62、左辺63、及び右辺64を有している。X線透過画像60においては、内容物である湿布薬に対応する領域66が最も暗い輝度Y4で表れており、パッケージの上部に設けられているジッパー等の留め部に対応する領域65が若干暗い輝度Y2で表れている。また、図5に示した例では、パッケージの右下角部がカールして反り返っており、このカールに起因して、当該右下角部に対応する領域67が、湾曲してかつ若干暗い輝度Y3で表れている。また、パッケージの外縁内において領域65〜67以外の領域68は、領域65〜67よりも明るい輝度Y1で表れている。領域68には、パッケージのシール部も含まれる。
【0029】
X線透過画像60に関する画像データS2は、画像加工部40に入力される。画像加工部40は、X線透過画像60を加工することによりX線透過画像70を作成する。図6は、X線透過画像70の一例を示す図である。
【0030】
具体的に画像加工部40は、カールに起因する湾曲角部(領域67)がX線透過画像60に存在している場合には、その湾曲角部の周辺の形状に基づいて、湾曲が生じていない角部の形状を求めることにより、湾曲形状の角部を矩形状の角部に置換する。図5に示した例では、画像加工部40は、右辺64を延長した直線と底辺62を延長した直線との交点を求め、当該交点まで領域68を広げるとともに、領域67を削除する。画像加工部40によるこれらの画像処理によって、図5に示したX線透過画像60から図6に示したX線透過画像70が得られる。X線透過画像70は、湾曲角部を除いたパッケージの外縁に相当する上辺71、底辺72、左辺73、及び右辺74を有している。
【0031】
X線透過画像70に関する画像データS12は、判定部41に入力される。判定部41は、X線透過画像70に基づいて、湿布薬の噛み込みを判定する。具体的に判定部41は、上辺71と領域66の外縁(上辺)との間の最短距離L1、底辺72と領域66の外縁(底辺)との間の最短距離L2、左辺73と領域66の外縁(左辺)との間の最短距離L3、及び、右辺74と領域66の外縁(右辺)との間の最短距離L4をそれぞれ求める。例えば距離L1に関しては、上辺71と領域66とが最も近接する箇所を特定し、その箇所における上辺71の位置座標と領域66の位置座標との差を算出することによって、距離L1を求める。距離L2〜L4についても同様である。ここで、上辺71から領域65の下辺までの距離L1Aが予め記憶されており、上辺71と領域66の外縁との間の最短距離を測定するにあたっては、この距離L1A内で低輝度の領域(つまり領域65)が発見されてもそれを無視する。これにより、領域65が誤って領域66と判定されることを回避できる。なお、領域66の形状は、長方形に限らず、湿布薬の外形に応じて円又は楕円等の任意の形状となり得る。この場合であっても、上記と同様に各辺71〜74と領域66の外縁との最短距離が求められる。
【0032】
また、距離L1〜L4の各々に関する閾値が予め設定されて、データS13として記憶部21に記憶されている。距離L1に関する閾値は、パッケージの上辺のシール部の幅と同一の値(又は測定誤差を考慮してそれよりもわずかに大きな値)に設定されている。距離L2に関する閾値は、パッケージの底辺のシール部の幅と同一の値(又はそれよりもわずかに大きな値)に設定されている。また、距離L3,L4に関する閾値は、パッケージの左右両辺のシール部の幅と同一の値(又はそれよりもわずかに大きな値)に設定されている。
【0033】
判定部41は、算出した距離L1〜L4と、各々に対応する閾値とを比較する。そして、距離L1〜L4の少なくとも一つが閾値以下である場合には、留め部又はシール部への湿布薬の噛み込みが生じていると判定し、一方、距離L1〜L4の全てが閾値より大きい場合には、留め部及びシール部への湿布薬の噛み込みは生じていないと判定する。
【0034】
図6に示した例では、距離L1〜L4はいずれも閾値より大きいため、湿布薬の噛み込みは生じていないと判定される。図7は、X線透過画像70の他の例を示す図である。図7に示した例では、距離L3が閾値以下であるため、シール部への湿布薬の噛み込みが生じていると判定される。判定部41は、湿布薬の噛み込みが生じていると判定した場合には、その物品50を製造ラインから排除させるために、振分装置13に制御信号S3を入力する。
【0035】
このように本実施の形態に係るX線検査装置1によれば、噛み込み判定部31は、パッケージの外縁(上辺71、底辺72、左辺73、及び右辺74)から内容物(領域66)の外縁までの長さ(距離L1〜L4)をX線透過画像70に基づいて算出し、該算出された長さに基づいて、パッケージのシール部及び留め部への内容物の噛み込みを判定する。従って、X線透過画像内に不存在領域やシール領域を特定する処理が不要となるため、処理の負荷を軽減できるとともに検査速度を向上することが可能となる。また、噛み込みの直接的な原因となるパッケージの外縁(上辺71、底辺72、左辺73、及び右辺74)から内容物(領域66)の外縁までの長さ(距離L1〜L4)に基づいて合否を判定するため、検査精度を向上することが可能となる。
【0036】
また、本実施の形態に係るX線検査装置1によれば、噛み込み判定部31は、距離L1A内の低輝度領域を無視することで、X線透過画像60におけるパッケージの留め部(領域65)を除外することにより、内容物(領域66)の外縁を規定する。従って、留め部が誤って内容物と判定される事態を回避することが可能となる。
【0037】
また、本実施の形態に係るX線検査装置1によれば、X線透過画像60においてパッケージの角部が湾曲している場合、噛み込み判定部31は、当該角部の周辺の形状に基づいて湾曲が生じていない角部の形状を求めて、パッケージの外縁を規定する。従って、カールに起因してX線透過画像60の外縁から内容物までの距離が短くなっている場合に、噛み込みが生じていると誤って判定される事態を回避することが可能となる。
【符号の説明】
【0038】
1 X線検査装置
7 X線照射部
8 X線検出部
9 コンピュータ
20 演算部
30 透過画像作成部
31 噛み込み判定部
40 画像加工部
41 判定部
50 物品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物がパッケージ内に封入された物品を検査する物品検査装置であって、
物品にX線を照射する照射手段と、
物品を透過したX線を検出する検出手段と、
前記検出手段の検出結果に基づいてX線透過画像を作成する画像作成手段と、
前記X線透過画像に基づいて、前記パッケージの封止部分への前記内容物の噛み込みを判定する判定手段と
を備え、
前記判定手段は、前記パッケージの外縁から前記内容物の外縁までの長さを前記X線透過画像に基づいて算出し、該算出された長さに基づいて前記内容物の噛み込みを判定する、物品検査装置。
【請求項2】
前記判定手段は、前記X線透過画像における前記パッケージの留め部を除外して、前記内容物の外縁を規定する、請求項1に記載の物品検査装置。
【請求項3】
前記X線透過画像において前記パッケージの角部が湾曲している場合、前記判定手段は、当該角部の周辺の形状に基づいて湾曲が生じていない角部の形状を求めて、前記パッケージの外縁を規定する、請求項1又は2に記載の物品検査装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−286424(P2010−286424A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−141861(P2009−141861)
【出願日】平成21年6月15日(2009.6.15)
【出願人】(000147833)株式会社イシダ (859)
【Fターム(参考)】