物理量センサおよび物理量計測方法
【課題】物体の物理量を高い分解能で計測し、計測に要する時間を短縮する。
【解決手段】物理量センサは、少なくとも発振波長が連続的に単調増加する発振期間が繰り返し存在するように半導体レーザ1−1を動作させるレーザドライバ4−1と、レーザ1−1と発振波長の増減が逆になるように半導体レーザ1−2を動作させるレーザドライバ4−2と、レーザ1−1,1−2からのレーザ光とその戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形を含む電気信号を検出するフォトダイオード2−1,2−2および電流−電圧変換増幅部5−1,5−2と、電流−電圧変換増幅部5−1,5−2の出力信号に含まれる干渉波形の周期を計測する信号抽出部7−1,7−2と、信号抽出部7−1,7−2の計測結果に基づいて物体10との距離および物体10の速度を算出する演算部8とを有する。
【解決手段】物理量センサは、少なくとも発振波長が連続的に単調増加する発振期間が繰り返し存在するように半導体レーザ1−1を動作させるレーザドライバ4−1と、レーザ1−1と発振波長の増減が逆になるように半導体レーザ1−2を動作させるレーザドライバ4−2と、レーザ1−1,1−2からのレーザ光とその戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形を含む電気信号を検出するフォトダイオード2−1,2−2および電流−電圧変換増幅部5−1,5−2と、電流−電圧変換増幅部5−1,5−2の出力信号に含まれる干渉波形の周期を計測する信号抽出部7−1,7−2と、信号抽出部7−1,7−2の計測結果に基づいて物体10との距離および物体10の速度を算出する演算部8とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体レーザから放射したレーザ光と物体からの戻り光との自己結合効果によって生じる干渉の情報から、物体との距離や物体の速度等の物理量を計測する物理量センサおよび物理量計測方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体レーザの自己結合効果を用いた波長変調型の物理量センサが提案されている(特許文献1参照)。この物理量センサの構成を図24に示す。図24の物理量センサは、測定対象の物体210にレーザ光を放射する第1、第2の半導体レーザ201−1,201−2と、半導体レーザ201−1,201−2の光出力をそれぞれ電気信号に変換するフォトダイオード202−1,202−2と、半導体レーザ201−1,201−2からの光をそれぞれ集光して物体210に照射すると共に、物体210からの戻り光を集光して半導体レーザ201−1,201−2に入射させるレンズ203−1,203−2と、半導体レーザ201−1,201−2に発振波長が連続的に増加する第1の発振期間と発振波長が連続的に減少する第2の発振期間とを交互に繰り返させる第1、第2のレーザドライバ204−1,204−2と、フォトダイオード202−1,202−2の出力電流をそれぞれ電圧に変換して増幅する電流−電圧変換増幅器205−1,205−2と、電流−電圧変換増幅器205−1,205−2の出力電圧から搬送波を除去するフィルタ回路206−1,206−2と、フィルタ回路206−1,206−2の出力電圧に含まれる自己結合信号であるモードホップパルス(以下、MHPとする)の数を数える計数装置207と、物体210との距離および物体210の速度を算出する演算装置208と、演算装置208の算出結果を表示する表示装置209とを有する。
【0003】
レーザドライバ204−1,204−2は、時間に関して一定の変化率で増減を繰り返す三角波駆動電流を注入電流として半導体レーザ201−1,201−2に供給する。これにより、半導体レーザ201−1,201−2は、注入電流の大きさに比例して発振波長が一定の変化率で連続的に増加する第1の発振期間と発振波長が一定の変化率で連続的に減少する第2の発振期間とを交互に繰り返すように駆動される。このとき、レーザドライバ204−1,204−2は、半導体レーザ201−1と201−2とで発振波長の増減が逆になるように駆動電流を供給する。図25は半導体レーザ201−1,201−2の発振波長の時間変化を示す図である。図25において、LD1は半導体レーザ201−1の発振波形、LD2は半導体レーザ201−2の発振波形、P1は第1の発振期間、P2は第2の発振期間、λaは各期間における発振波長の最小値、λbは各期間における発振波長の最大値、Tcarは三角波の周期である。
【0004】
半導体レーザ201−1,201−2から出射したレーザ光は、レンズ203−1,203−2によって集光され、物体210に入射する。物体210で反射された半導体レーザ201−1,201−2の光は、それぞれレンズ203−1,203−2によって集光され、半導体レーザ201−1,201−2に入射する。電流−電圧変換増幅器205−1,205−2は、それぞれフォトダイオード202−1,202−2の出力電流を電圧に変換して増幅する。フィルタ回路206−1,206−2は、電流−電圧変換増幅器205−1,205−2の出力電圧から搬送波を除去する。計数装置207は、フィルタ回路206−1,206−2の出力電圧に含まれるMHPの数を数える。演算装置208は、半導体レーザ201−1,201−2の最小発振波長λaと最大発振波長λbと計数装置207の計数結果に基づいて物体210との距離および物体210の速度を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−014701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された自己結合型の物理量センサでは、距離や速度の算出にある程度の計測時間(特許文献1の例では、半導体レーザの発振波長変調の搬送波の半周期)が必要となるため、速度の変化が速い測定対象の計測においては計測誤差を生じるという問題点があった。また、信号処理においてMHPの数を数える必要があるため、半導体レーザの半波長未満の分解能を実現することが難しいという問題点があった。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、物体との距離や物体の速度等の物理量を高い分解能で計測することができ、計測に要する時間を短縮することができる物理量センサおよび物理量計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の物理量センサ(第1の実施の形態)は、測定対象に第1のレーザ光を放射する第1の半導体レーザと、前記測定対象に前記第1のレーザ光と平行に第2のレーザ光を放射する第2の半導体レーザと、少なくとも発振波長が連続的に単調増加する発振期間が繰り返し存在するように前記第1の半導体レーザを動作させる第1の発振波長変調手段と、前記第1の半導体レーザと発振波長の増減が逆になるように前記第2の半導体レーザを動作させる第2の発振波長変調手段と、前記第1のレーザ光とこのレーザ光の前記測定対象からの戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形を含む電気信号を検出する第1の検出手段と、前記第2のレーザ光とこのレーザ光の前記測定対象からの戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形を含む電気信号を検出する第2の検出手段と、前記第1、第2の検出手段の出力信号に含まれる干渉波形の周期をそれぞれ干渉波形が入力される度に計測する第1、第2の信号抽出手段と、この第1、第2の信号抽出手段の計測結果からそれぞれ単位時間当たりの干渉波形の数を算出する第1、第2の個数算出手段と、この第1、第2の個数算出手段の算出結果のうち大きい方の算出結果とこの算出結果よりも過去の算出結果を用いて算出された、前記半導体レーザと測定対象との平均距離に比例した干渉波形の数である距離比例個数の2倍数との大小関係、前記第1、第2の個数算出手段の算出結果の増減方向の一致不一致、あるいは前記第1、第2の個数算出手段の算出結果の平均値の変化に応じて、前記第1、第2の個数算出手段の算出結果に正負の符号を付与する符号付与手段と、この符号付与手段によって符号が与えられた最新の符号付き算出結果と過去の符号付き算出結果の平均値との差の絶対値を算出することにより、前記測定対象の変位に比例した干渉波形の数である変位比例個数を求める変位比例個数算出手段と、前記符号付与手段によって符号が与えられた符号付き算出結果と前記変位比例個数算出手段が算出した変位比例個数に基づいて前記測定対象の物理量を算出する物理量算出手段とを備えることを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明の物理量センサ(第2の実施の形態)は、測定対象に第1のレーザ光を放射する第1の半導体レーザと、前記測定対象に前記第1のレーザ光と平行に第2のレーザ光を放射する第2の半導体レーザと、少なくとも発振波長が連続的に単調増加する発振期間が繰り返し存在するように前記第1の半導体レーザを動作させる第1の発振波長変調手段と、前記第1の半導体レーザと発振波長の増減が逆になるように前記第2の半導体レーザを動作させる第2の発振波長変調手段と、前記第1のレーザ光とこのレーザ光の前記測定対象からの戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形を含む電気信号を検出する第1の検出手段と、前記第2のレーザ光とこのレーザ光の前記測定対象からの戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形を含む電気信号を検出する第2の検出手段と、前記第1、第2の検出手段の出力信号に含まれる干渉波形の周期をそれぞれ干渉波形が入力される度に計測する第1、第2の信号抽出手段と、この第1、第2の信号抽出手段の計測結果からそれぞれ単位時間当たりの干渉波形の数を算出する第1、第2の個数算出手段と、この第1、第2の個数算出手段の算出結果に基づいて前記測定対象の物理量の候補値を算出する物理量候補値算出手段と、前記第1、第2の個数算出手段の算出結果の増減方向の一致不一致に基づいて前記測定対象の状態を判定する状態判定手段と、前記状態判定手段の判定結果に基づいて前記候補値の選定を行い、前記測定対象の物理量を確定する物理量確定手段とを備えることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明の物理量センサの1構成例(第1の実施の形態)において、前記符号付与手段は、前記第1、第2の個数算出手段の算出結果のうち大きい方の算出結果が前記距離比例個数の2倍数よりも小さい場合、前記第1の個数算出手段の算出結果の時間変化に対して前記第2の個数算出手段の算出結果の時間変化が逆方向の場合、あるいは前記第1、第2の個数算出手段の算出結果の平均値に変化が無い場合、前記第1、第2の個数算出手段の算出結果にそれぞれ正の符号を付与した符号付き算出結果を出力し、前記第1、第2の個数算出手段の算出結果のうち大きい方の算出結果が前記距離比例個数の2倍数以上の場合、前記第1の個数算出手段の算出結果の時間変化に対して前記第2の個数算出手段の算出結果の時間変化が同方向の場合、あるいは前記第1、第2の個数算出手段の算出結果の平均値が変化した場合、前記第1、第2の個数算出手段の算出結果のうち大きい方の算出結果に正の符号を付与し、小さい方の算出結果に負の符号を付与した符号付き算出結果を出力し、前記物理量算出手段は、前記第1、第2の半導体レーザの最小発振波長および最大発振波長と前記符号付与手段によって符号が与えられた符号付き算出結果に基づいて前記測定対象との距離を算出し、前記第1、第2の半導体レーザの平均発振波長と前記変位比例個数算出手段が算出した変位比例個数に基づいて前記測定対象の速度を算出することを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の物理量センサの1構成例(第2の実施の形態)において、前記物理量候補値算出手段は、前記測定対象の状態を微小変位状態あるいは前記微小変位状態よりも動きが急な変位状態のいずれかであるとし、前記測定対象が微小変位状態と仮定した場合と変位状態と仮定した場合の各々について、前記第1、第2の半導体レーザの最小発振波長および最大発振波長と前記第1、第2の個数算出手段の算出結果から前記測定対象との距離の候補値と前記測定対象の速度の候補値を算出し、前記状態判定手段は、前記第1の個数算出手段の算出結果の時間変化に対して前記第2の個数算出手段の算出結果の時間変化が逆方向の場合、前記測定対象が微小変位状態にあると判定し、前記第1の個数算出手段の算出結果の時間変化に対して前記第2の個数算出手段の算出結果の時間変化が同方向の場合、前記測定対象が変位状態にあると判定し、前記物理量確定手段は、前記測定対象が微小変位状態と判定された場合、前記測定対象が微小変位状態と仮定して算出された前記距離および速度の候補値を前記測定対象の物理量として確定し、前記測定対象が変位状態と判定された場合、前記測定対象が変位状態と仮定して算出された前記距離および速度の候補値を前記測定対象の物理量として確定することを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の物理量センサの1構成例(第1、第2の実施の形態)は、さらに、前記第1、第2の信号抽出手段の計測結果を記憶する記憶手段と、前記第1の信号抽出手段によって計測された補正対象の干渉波形の周期の直前に計測され前記記憶手段に記憶された所定数の干渉波形の周期の移動平均値と、前記第1の信号抽出手段によって計測された補正対象の干渉波形の周期の直後に計測され前記記憶手段に記憶された所定数の干渉波形の周期の移動平均値とを前記第1の信号抽出手段の計測結果について算出する第1の移動平均値算出手段と、前記第2の信号抽出手段によって計測された補正対象の干渉波形の周期の直前に計測され前記記憶手段に記憶された所定数の干渉波形の周期の移動平均値と、前記第2の信号抽出手段によって計測された補正対象の干渉波形の周期の直後に計測され前記記憶手段に記憶された所定数の干渉波形の周期の移動平均値とを前記第2の信号抽出手段の計測結果について算出する第2の移動平均値算出手段と、前記第1の信号抽出手段によって計測された補正対象の干渉波形の周期と前記第1の移動平均値算出手段によって算出された移動平均値とを比較することにより、前記第1の信号抽出手段によって計測された補正対象の干渉波形の周期を補正し、この補正の結果に従って前記記憶手段に記憶された周期を更新する第1の周期補正手段と、前記第2の信号抽出手段によって計測された補正対象の干渉波形の周期と前記第2の移動平均値算出手段によって算出された移動平均値とを比較することにより、前記第2の信号抽出手段によって計測された補正対象の干渉波形の周期を補正し、この補正の結果に従って前記記憶手段に記憶された周期を更新する第2の周期補正手段とを備え、前記第1、第2の個数算出手段は、前記第1、第2の信号抽出手段の計測結果から単位時間当たりの干渉波形の数を算出する代わりに、前記第1、第2の周期補正手段によって補正された干渉波形の周期からそれぞれ単位時間当たりの干渉波形の数を算出することを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の物理量計測方法(第1の実施の形態)は、少なくとも発振波長が連続的に単調増加する発振期間が繰り返し存在するように第1の半導体レーザを動作させる第1の発振手順と、前記第1の半導体レーザと発振波長の増減が逆になるように第2の半導体レーザを動作させる第2の発振手順と、前記第1の半導体レーザから放射された第1のレーザ光とこのレーザ光の測定対象からの戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形を含む電気信号を検出する第1の検出手順と、前記第2の半導体レーザから放射された第2のレーザ光とこのレーザ光の前記測定対象からの戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形を含む電気信号を検出する第2の検出手順と、前記第1、第2の検出手順で得られた出力信号に含まれる干渉波形の周期をそれぞれ干渉波形が入力される度に計測する第1、第2の信号抽出手順と、この第1、第2の信号抽出手順の計測結果からそれぞれ単位時間当たりの干渉波形の数を算出する第1、第2の個数算出手順と、この第1、第2の個数算出手順の算出結果のうち大きい方の算出結果とこの算出結果よりも過去の算出結果を用いて算出された、前記半導体レーザと測定対象との平均距離に比例した干渉波形の数である距離比例個数の2倍数との大小関係、前記第1、第2の個数算出手順の算出結果の増減方向の一致不一致、あるいは前記第1、第2の個数算出手順の算出結果の平均値の変化に応じて、前記第1、第2の個数算出手順の算出結果に正負の符号を付与する符号付与手順と、この符号付与手順によって符号が与えられた最新の符号付き算出結果と過去の符号付き算出結果の平均値との差の絶対値を算出することにより、前記測定対象の変位に比例した干渉波形の数である変位比例個数を求める変位比例個数算出手順と、前記符号付与手順によって符号が与えられた符号付き算出結果と前記変位比例個数算出手順で算出した変位比例個数に基づいて前記測定対象の物理量を算出する物理量算出手順とを備えることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の物理量計測方法(第2の実施の形態)は、少なくとも発振波長が連続的に単調増加する発振期間が繰り返し存在するように第1の半導体レーザを動作させる第1の発振手順と、前記第1の半導体レーザと発振波長の増減が逆になるように第2の半導体レーザを動作させる第2の発振手順と、前記第1の半導体レーザから放射された第1のレーザ光とこのレーザ光の測定対象からの戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形を含む電気信号を検出する第1の検出手順と、前記第2の半導体レーザから放射された第2のレーザ光とこのレーザ光の前記測定対象からの戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形を含む電気信号を検出する第2の検出手順と、前記第1、第2の検出手順で得られた出力信号に含まれる干渉波形の周期をそれぞれ干渉波形が入力される度に計測する第1、第2の信号抽出手順と、この第1、第2の信号抽出手順の計測結果からそれぞれ単位時間当たりの干渉波形の数を算出する第1、第2の個数算出手順と、この第1、第2の個数算出手順の算出結果に基づいて前記測定対象の物理量の候補値を算出する物理量候補値算出手順と、前記第1、第2の個数算出手順の算出結果の増減方向の一致不一致に基づいて前記測定対象の状態を判定する状態判定手順と、前記状態判定手順の判定結果に基づいて前記候補値の選定を行い、前記測定対象の物理量を確定する物理量確定手順とを備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、発振波長の増減が逆になる第1、第2の半導体レーザからそれぞれレーザ光を測定対象に同時に放射させ、第1、第2の検出手段の出力信号に含まれる干渉波形の周期を計測し、2つの計測結果からそれぞれ単位時間当たりの干渉波形の数を算出し、2つの算出結果のうち大きい方の算出結果とこの算出結果よりも過去の算出結果を用いて算出された、半導体レーザと測定対象との平均距離に比例した干渉波形の数である距離比例個数の2倍数との大小関係、2つの算出結果の増減方向の一致不一致、あるいは2つの算出結果の平均値の変化に応じて、2つの算出結果に正負の符号を付与し、符号が与えられた最新の符号付き算出結果と過去の符号付き算出結果の平均値との差の絶対値を算出することにより変位比例個数を求め、符号付き算出結果と変位比例個数に基づいて測定対象の物理量を算出することにより、測定対象の物理量を従来よりも高い分解能で計測することができる。また、従来の物理量センサでは、半導体レーザの発振波長変調の搬送波の半周期分の計測時間がかかるのに対して、本発明では、1つ1つの干渉波形の周期を単位時間当たりの干渉波形の数に変換して、この干渉波形の数から測定対象の物理量を求めることができるので、計測に要する時間を大幅に短縮することができ、速度の変化が速い物体にも対応することができる。
【0016】
また、本発明では、発振波長の増減が逆になる第1、第2の半導体レーザからそれぞれレーザ光を測定対象に同時に放射させ、第1、第2の検出手段の出力信号に含まれる干渉波形の周期を計測し、2つの計測結果からそれぞれ単位時間当たりの干渉波形の数を算出し、2つの算出結果に基づいて測定対象の物理量の候補値を算出し、2つの算出結果の増減方向の一致不一致に基づいて測定対象の状態を判定し、この判定結果に基づいて候補値の選定を行い、測定対象の物理量を確定することにより、測定対象の物理量を従来よりも高い分解能で計測することができる。また、本発明では、従来の物理量センサに比べて計測に要する時間を大幅に短縮することができ、速度の変化が速い物体にも対応することができる。
【0017】
また、本発明では、第1、第2の信号抽出手段によって計測された干渉波形の周期を補正することにより、測定対象の物理量の計測精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る物理量センサの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態における電流−電圧変換増幅部の出力電圧波形およびフィルタ部の出力電圧波形を模式的に示す波形図である。
【図3】モードホップパルスについて説明するための図である。
【図4】半導体レーザの発振波長とフォトダイオードの出力波形との関係を示す図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態における信号抽出部の動作を説明するための図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態における演算部の構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態における演算部の動作を示すフローチャートである。
【図8】本発明の第1の実施の形態における周期補正部の動作を説明するための図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態におけるモードホップパルスの周期の補正原理を説明するための図である。
【図10】モードホップパルスの周期の度数分布を示す図である。
【図11】物体が等速運動している場合の物体との距離の変化を示す図である。
【図12】物体が等速運動している場合のモードホップパルスの周期の度数分布を示す図である。
【図13】物体の速度が変化している場合の物体との距離の変化および物体の速度の変化を示す図である。
【図14】物体の速度が変化している場合のモードホップパルスの周期の度数分布を示す図である。
【図15】本発明の第1の実施の形態における個数算出部の算出結果の時間変化の例を示す図である。
【図16】本発明の第2の実施の形態における演算部の構成を示すブロック図である。
【図17】本発明の第2の実施の形態における演算部の動作を示すフローチャートである。
【図18】本発明の第3の実施の形態における演算部の構成を示すブロック図である。
【図19】本発明の第3の実施の形態における演算部の動作を示すフローチャートである。
【図20】本発明の第4の実施の形態における演算部の動作を示すフローチャートである。
【図21】本発明の第5の実施の形態に係る物理量センサの構成を示すブロック図である。
【図22】本発明の第1〜第5の実施の形態における半導体レーザの発振波長の時間変化の他の例を示す図である。
【図23】本発明の第1〜第5の実施の形態における半導体レーザの発振波長の時間変化の他の例を示す図である。
【図24】従来の物理量センサの構成を示すブロック図である。
【図25】図24の物理量センサにおける半導体レーザの発振波長の時間変化の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の第1の実施の形態に係る物理量センサの構成を示すブロック図である。図1の物理量センサは、測定対象の物体10にレーザ光を放射する第1、第2の半導体レーザ1−1,1−2と、半導体レーザ1−1,1−2の光出力をそれぞれ電気信号に変換するフォトダイオード2−1,2−2と、半導体レーザ1−1,1−2からの光をそれぞれ集光して物体10に照射すると共に、物体10からの戻り光を集光して半導体レーザ1−1,1−2に入射させるレンズ3−1,3−2と、半導体レーザ1−1,1−2を駆動する第1、第2の発振波長変調手段となるレーザドライバ4−1,4−2と、フォトダイオード2−1,2−2の出力電流をそれぞれ電圧に変換して増幅する電流−電圧変換増幅部5−1,5−2と、電流−電圧変換増幅部5−1,5−2の出力電圧からそれぞれ搬送波を除去するフィルタ部6−1,6−2と、フィルタ部6−1,6−2の出力電圧に含まれる自己結合信号であるMHPの周期を計測する信号抽出部7−1,7−2と、物体10との距離および物体10の速度を算出する演算部8と、演算部8の算出結果を表示する表示部9とを有する。
【0020】
フォトダイオード2−1と電流−電圧変換増幅部5−1とは第1の検出手段を構成し、フォトダイオード2−2と電流−電圧変換増幅部5−2とは第2の検出手段を構成している。以下、説明容易にするために、半導体レーザ1には、モードホッピング現象を持たない型(VCSEL型、DFBレーザ型)のものが用いられているものと想定する。
【0021】
レーザドライバ4−1,4−2は、時間に関して一定の変化率で増減を繰り返す三角波駆動電流を注入電流として半導体レーザ1−1,1−2に供給する。これにより、半導体レーザ1−1,1−2は、注入電流の大きさに比例して発振波長が一定の変化率で連続的に増加する第1の発振期間P1と発振波長が一定の変化率で連続的に減少する第2の発振期間P2とを交互に繰り返すように駆動される。
【0022】
このとき、レーザドライバ4−1,4−2は、半導体レーザ1−1と1−2とで発振波長の増減が逆になるように駆動電流を供給する。すなわち、半導体レーザ1−1と1−2は、発振波長の変化率の絶対値が同一で変化率の極性が逆になっている。したがって、半導体レーザ1−1の発振波長が最大値になったときに、半導体レーザ1−2の発振波長は最小値となり、半導体レーザ1−1の発振波長が最小値になったときに、半導体レーザ1−2の発振波長は最大値となる。半導体レーザ1−1の発振波形をLD1、半導体レーザ1−2の発振波形をLD2とすると、半導体レーザ1−1,1−2の発振波長の時間変化は、図25に示したとおりである。本実施の形態では、発振波長の最大値λbおよび発振波長の最小値λaはそれぞれ常に一定になされており、それらの差λb−λaも常に一定になされている。
【0023】
半導体レーザ1−1,1−2から出射したレーザ光は、レンズ3−1,3−2によって集光され、物体10に入射する。このとき、半導体レーザ1−1,1−2のレーザ光は互いに平行に出射して物体10に入射する。物体10で反射された半導体レーザ1−1,1−2の光は、それぞれレンズ3−1,3−2によって集光され、半導体レーザ1−1,1−2に入射する。なお、レンズ3−1,3−2による集光は必須ではない。フォトダイオード2−1,2−2は、それぞれ半導体レーザ1−1,1−2の内部又はその近傍に配置され、半導体レーザ1−1,1−2の光出力を電流に変換する。電流−電圧変換増幅部5−1,5−2は、それぞれフォトダイオード2−1,2−2の出力電流を電圧に変換して増幅する。
【0024】
フィルタ部6−1,6−2は、変調波から重畳信号を抽出する機能を有するものである。図2(A)、図2(B)はそれぞれ電流−電圧変換増幅部5−1,5−2の出力電圧波形を模式的に示す図、図2(C)、図2(D)はそれぞれフィルタ部6−1,6−2の出力電圧波形を模式的に示す図である。これらの図は、フォトダイオード2−1,2−2の出力に相当する図2(A)、図2(B)の波形(変調波)から、図25に示したような半導体レーザ1−1,1−2の発振波形(搬送波)を除去して、図2(C)、図2(D)のMHP波形(重畳波)を抽出する過程を表している。
【0025】
信号抽出部7−1,7−2は、それぞれフィルタ部6−1,6−2の出力電圧に含まれるMHPの周期をMHPが発生する度に計測する。ここで、自己結合信号であるMHPについて説明する。図3に示すように、ミラー層1013から物体10までの距離をL、レーザの発振波長をλとすると、以下の共振条件を満足するとき、物体10からの戻り光と半導体レーザ1の光共振器内のレーザ光は強め合い、レーザ出力がわずかに増加する。
L=qλ/2 ・・・(1)
式(1)において、qは整数である。この現象は、物体10からの散乱光が極めて微弱であっても、半導体レーザ1の共振器内の見かけの反射率が増加することにより、増幅作用が生じ、十分観測できる。なお、図3において、1019はミラーとなる誘電体多層膜である。
【0026】
図4は、半導体レーザ1の発振波長をある一定の割合で変化させたときの発振波長とフォトダイオード2の出力波形との関係を示す図である。式(1)に示したL=qλ/2を満足したときに、戻り光と光共振器内のレーザ光の位相差が0°(同位相)になって、戻り光と光共振器内のレーザ光とが最も強め合い、L=qλ/2+λ/4のときに、位相差が180°(逆位相)になって、戻り光と光共振器内のレーザ光とが最も弱め合う。そのため、半導体レーザ1の発振波長を変化させていくと、レーザ出力が強くなるところと弱くなるところとが交互に繰り返し現れ、このときのレーザ出力をフォトダイオード2で検出すると、図4に示すように一定周期の階段状の波形が得られる。このような波形は一般的には干渉縞と呼ばれる。この階段状の波形、すなわち干渉縞の1つ1つがMHPである。物体10が静止している場合、ある一定時間において半導体レーザ1の発振波長を変化させた場合、測定距離に比例してMHPの数は変化する。なお、物体10が運動している場合は、ある一定時間において半導体レーザ1の発振波長を変化させた場合、MHPの数は測定距離に比例する個数と変位に比例する個数とが線形結合した数になる。
【0027】
図5(A)〜図5(D)は信号抽出部7−1の動作を説明するための図であり、図5(A)はフィルタ部6−1の出力電圧の波形、すなわちMHPの波形を模式的に示す図、図5(B)はMHPを2値化した波形を示す図、図5(C)は信号抽出部7−1に入力されるサンプリングクロックを示す図、図5(D)は図5(B)に対応する信号抽出部7−1の測定結果を示す図である。
【0028】
まず、信号抽出部7−1は、図5(A)に示すフィルタ部6−1の出力電圧が上昇してしきい値TH1以上になったときにハイレベルと判定し、フィルタ部6−1の出力電圧が下降してしきい値TH2(TH2<TH1)以下になったときにローレベルと判定することにより、フィルタ部6−1の出力を2値化する。そして、信号抽出部7−1は、2値化したMHPの立ち上がりエッジの周期(すなわち、MHPの周期)を立ち上がりエッジが発生する度に測定する。このとき、信号抽出部7−1は、図5(C)に示すサンプリングクロックの周期を1単位としてMHPの周期を測定する。図5(D)の例では、信号抽出部7−1は、MHPの周期としてTα,Tβ,Tγを順次測定している。図5(C)、図5(D)から明らかなように、周期Tα,Tβ,Tγの大きさは、それぞれ5[samplings]、4[samplings]、2[samplings]である。サンプリングクロックの周波数は、MHPの取り得る最高周波数に対して十分に高いものとする。
【0029】
信号抽出部7−2の動作は、信号抽出部7−1と同様である。すなわち、信号抽出部7−2は、信号抽出部7−1と同じサンプリングクロックを用いて、フィルタ部6−2の出力電圧に含まれるMHPの周期を計測する。信号抽出部7−1がフィルタ部6−1の出力電圧に含まれるMHPの周期TXを計測すると同時に、信号抽出部7−2がフィルタ部6−2の出力電圧に含まれるMHPの周期TYを計測するといったように、MHPの周期TXとTYは同時に求められる。
【0030】
次に、演算部8は、半導体レーザ1−1,1−2の最小発振波長λaと最大発振波長λbとMHPの周期TX,TYに基づいて、物体10との距離および物体10の速度を算出する。図6は演算部8の構成を示すブロック図、図7はこの演算部8の動作を示すフローチャートである。
【0031】
演算部8は、信号抽出部7−1,7−2の計測結果等を記憶する記憶部80と、補正対象のMHPの周期の直前に計測され記憶部80に記憶された所定数のMHPの周期の移動平均値と補正対象のMHPの周期の直後に計測され記憶部80に記憶された所定数のMHPの周期の移動平均値とを信号抽出部7−1,7−2の計測結果について算出する移動平均値算出部81−1,81−2と、移動平均値算出部81−1,81−2が算出した移動平均値と信号抽出部7−1,7−2によって計測され記憶部80に記憶された補正対象のMHPの周期とを比較することにより補正対象のMHPの周期を補正する周期補正部82−1,82−2と、周期補正部82−1,82−2によって補正されたMHPの周期から単位時間当たりのMHPの数を算出する個数算出部83−1,83−2と、個数算出部83−1,83−2の算出結果の増減方向の一致不一致に応じて個数算出部83−1,83−2の算出結果に正負の符号を付与する符号付与部84と、符号付与部84によって符号が与えられた最新の符号付き算出結果と過去の符号付き算出結果の平均値との差の絶対値を算出することにより、物体10の変位に比例したMHPの数(以下、変位比例個数とする)を求める変位比例個数算出部85と、物体10との距離および物体10の速度を算出する物理量算出部86とから構成される。
【0032】
記憶部80は、信号抽出部7−1,7−2の計測結果を記憶する。移動平均値算出部81−1は、信号抽出部7−1によって計測された補正対象のMHPの周期の直前に計測され記憶部80に記憶された所定数のMHPの周期の移動平均値TAXと、信号抽出部7−1によって計測された補正対象のMHPの周期の直後に計測され記憶部80に記憶された所定数のMHPの周期の移動平均値TBXとを信号抽出部7−1の計測結果について算出する(図7ステップS10)。
【0033】
移動平均値算出部81−1の処理と並行して移動平均値算出部81−2は、信号抽出部7−2によって計測された補正対象のMHPの周期の直前に計測され記憶部80に記憶された所定数のMHPの周期の移動平均値TAYと、信号抽出部7−2によって計測された補正対象のMHPの周期の直後に計測され記憶部80に記憶された所定数のMHPの周期の移動平均値TBYとを信号抽出部7−2の計測結果について算出する(図7ステップS10)。
【0034】
移動平均値算出部81−1,81−2は、それぞれ信号抽出部7−1,7−2から新たな計測結果が出力され記憶部80に格納される度に、移動平均値算出済みの現在の補正対象の周期よりも1回新しい計測結果を新たな補正対象の周期として、移動平均値TAX,TBX,TAY,TBYの算出処理を行う。移動平均値算出部81−1,81−2の算出結果は、記憶部80に格納される。
【0035】
次に、周期補正部82−1は、移動平均値算出部81−1が算出した移動平均値TAX,TBXと信号抽出部7−1によって計測され記憶部80に記憶された補正対象のMHPの周期とを比較することにより、補正対象のMHPの周期を補正する(図7ステップS11)。周期補正部82−1は、この補正を信号抽出部7−1から新たな計測結果が出力され記憶部80に格納される度に行う。図8(A)〜図8(D)は周期補正部82−1の動作を説明するための図である。
【0036】
周期補正部82−1は、移動平均値算出部81−1が算出した2つの移動平均値TAX,TBXのうち小さい方をT1、大きい方をT2とし、Tx=T1+α・(T2−T1)としたとき(0≦α≦1)、図8(A)に示すように補正対象のMHPの周期Tがk・Tx未満の場合は(kは1未満の正の値)、図8(B)に示すように補正対象のMHPの周期Tと次に計測されたMHPの周期Tnextとを合わせた周期を補正後のMHPの周期T’とし、周期を合わせた波形を1つの波形とする。
【0037】
また、周期補正部82−1は、補正対象のMHPの周期Tが(m−0.5)・Tx以上で(m+0.5)・Tx未満の場合は(mは2以上の自然数)、補正対象のMHPの周期Tをm等分した周期をそれぞれ補正後の周期とし、補正後の周期の波形がm個あるものとする。図8(C)の例は、m=2で補正対象のMHPの周期Tが1.5Tx以上2.5Tx未満の場合であり、この場合、図8(D)に示すように補正対象のMHPの周期TがTdiv1,Tdiv2に2等分される。
【0038】
周期補正部82−1は、記憶部80に記憶されている信号抽出部7−1の計測結果を、補正結果に従って更新する。したがって、図8(A)、図8(B)に示した例の場合には、信号抽出部7−1の2つの計測結果が1つに合成されることになり、図8(C)、図8(D)に示した例の場合には、信号抽出部7−1の1つの計測結果が2つに分割されることになる。また、補正対象のMHPの周期よりも前に計測されたMHPの周期は、周期補正部82−1によって既に補正されていることになる。つまり、移動平均値算出部81−1が算出する移動平均値TAXは、補正済みの計測結果から算出されることになる。
【0039】
周期補正部82−1の処理と並行して周期補正部82−2は、移動平均値算出部81−2が算出した移動平均値TAY,TBYと信号抽出部7−2によって計測され記憶部80に記憶された補正対象のMHPの周期とを比較することにより、補正対象のMHPの周期を補正する(図7ステップS11)。周期補正部82−1との違いは、移動平均値TAX,TBXの代わりに移動平均値TAY,TBYを用いる点と、信号抽出部7−2によって計測されたMHPの周期を補正する点である。これにより、周期補正部82−2は、記憶部80に記憶されている信号抽出部7−2の計測結果を、補正結果に従って更新する。
周期補正部82−1,82−2は、以上のような補正処理を信号抽出部7−1,7−2から新たな計測結果が出力され記憶部80に格納される度に行う。
【0040】
図9はMHPの周期の補正原理を説明するための図であり、フィルタ部6−1,6−2の出力電圧の波形、すなわちMHPの波形を模式的に示す図である。ただし、説明を簡単にするため、ここでの原理は物体10が静止している場合もしくは物体10の振動の中心が変化しない場合を説明しており、補正対象のMHPの周期の比較対象として移動平均値T1,T2の代わりに、基準周期T0を用いている。基準周期T0は、物体10が静止していたときのMHPの周期、算出された距離におけるMHPの周期、もしくは周期補正部82−1,82−2による周期補正の直前に計測された一定数のMHPの周期の移動平均値のいずれかである。物体10が動く場合の周期補正の原理については後述する。
【0041】
MHPの周期は物体10との距離によって異なるが、物体10との距離が不変であれば、MHPは同じ周期で出現する。しかし、ノイズのために、MHPの波形には欠落が生じたり、信号として数えるべきでない波形が生じたりして、MHPの周期に誤差が生じる。
信号の欠落が生じると、欠落が生じた箇所でのMHPの周期Twは、本来の周期のおよそ2倍になる。つまり、MHPの周期が基準周期T0のおよそ2倍以上の場合には、信号に欠落が生じていると判断できる。そこで、周期Twを2等分することで、信号の欠落を補正することができる。
【0042】
また、ノイズをカウントした箇所でのMHPの周期Tsは、少なくとも1つの周期は本来の周期のおよそ0.5倍以下になる。つまり、MHPの周期が基準周期T0のおよそ0.5倍未満の場合には、信号を過剰に数えていると判断できる。そこで、周期Tsと次に計測される周期Tnextとを加算することで、誤って数えたノイズを補正することができる。
【0043】
以上が、MHPの周期補正の基本原理である。信号に欠落が生じたと見なす周期Twを決めるためのしきい値を基準周期T0の2倍の値とせずに、1.5倍(本実施の形態で実際に用いるのは(m−0.5)倍であり、m=2の場合に1.5倍となる)とする理由は、特開2009−47676号公報に開示されている。特開2009−47676号公報に記載された原理はMHPの計測結果を補正する原理であるが、MHPの周期Tと計数結果Nとは、三角波の半周期あたりのサンプリングクロック数をMとすると、T=M/Nの関係にあり、Mは一定値であるから、信号に欠落が生じたと見なす周期Twを決めるためのしきい値は、計数結果Nを補正する場合と同様に、基準周期T0の1.5倍とすればよいことが分かる。
【0044】
次に、物体10が動く場合の周期の補正原理について説明する。MHPの時間当たりの数は、物体10との距離に比例した個数と物体10の速度に比例する個数との和で表すことができる。物体10がある状態でMHPの周期がTの場合、個々のMHPの周期の確率分布はノイズなどによってばらつきが生じ、Tを中心とした概ね正規分布になる。よって、物体10が静止している場合、個々のMHPの周期の確率分布も基準周期T0を中心とした正規分布になり、静止している期間のMHPの周期の度数分布は、図10に示したように基準周期T0を中心とした正規分布になる。
【0045】
ここで、図11に示すように物体10が等速運動している場合を考える。自己結合型のレーザセンサでは、物体10の速度に比例するMHPの数と比較すると、物体10との距離に比例するMHPの数の変化は非常に小さい。このため、個々のMHPの周期の確率分布は、図11のA点でもB点でも、物体10との平均距離に相当するT0から速度の大きさの分だけ周期が変化した値Tを中心とした正規分布になるため、A点からB点の期間のMHPの周期の度数分布も、Tを中心とした正規分布になる(図12)。
【0046】
次に、図13(A)、図13(B)に示すように物体10の速度が変化している場合を考える。ここでは、簡略化するために、折れ線運動を考える。すなわち、物体10との距離Lを期間Aにおける距離LAと期間Bにおける距離LBに簡略化し、同様に物体10の速度Vを期間Aにおける速度VAと期間Bにおける速度VBに簡略化する。このように物体10の運動を簡略化すると、MHPの周期の度数分布は図14のようになる。図14においてTAは期間Aにおける物体10の平均速度と平均距離に対応するMHPの周期、TBは期間Bにおける物体10の平均速度と平均距離に対応するMHPの周期である。ただし、距離比例分LAとLBは同一とみなしても良い。
【0047】
物体10の速度変化がなだらかに変化しているとしたら、図13(A)、図13(B)の時刻tでの物体10の速度は速度VAとVBとの間にあるので、MHPの周期も周期TAとTBとの間にある。このときのMHPの周期をTZとすると、信号に欠落が生じて2つのMHPが1つになった場合のMHPの周期の確率分布は、2TZを中心とした正規分布になると考えられる。また、周期TZのMHPがノイズで2分割された場合のMHPの2つの確率分布は、0.5TZを軸にした対称の形になる。したがって、TAからTBの間の値と考えられるTZの周期補正を考える場合、基準周期T0の代わりに、TAとTBの移動平均値を基準として周期補正を行うことが妥当である。以上が、物体10が動く場合のMHPの周期補正の原理である。
【0048】
次に、個数算出部83−1,83−2は、それぞれ周期補正部82−1,82−2によって補正されたMHPの周期から単位時間当たりのMHPの数を算出する(図7ステップS12)。周期補正部82−1によって補正されたMHPの周期をTX’とすると、個数算出部83−1が算出する単位時間当たりのMHPの数Xは次式のようになる。
X=1/TX’ ・・・(2)
【0049】
同様に、周期補正部82−2によって補正されたMHPの周期をTY’とすると、個数算出部83−2が算出する単位時間当たりのMHPの数Yは次式のようになる。
Y=1/TY’ ・・・(3)
個数算出部83−1,83−2は、以上のような算出処理を周期補正部82−1,82−2によってMHPの周期が補正される度に行う。個数算出部83−1,83−2の算出結果は、記憶部80に格納される。なお、図8(C)、図8(D)のような例の場合、MHPの周期をm等分する補正が行われるが、この場合はm等分された周期のうちの1個の周期について式(2)または式(3)から単位時間当たりのMHPの数を算出すればよい。
【0050】
次に、符号付与部84は、個数算出部83−1,83−2の算出結果X,Yの増減方向の一致不一致を判定し(図7ステップS13)、この判定の結果に応じて個数算出部83−1,83−2の算出結果X,Yに正負の符号を付与する(図7ステップS14,S15)。
【0051】
図15は符号付与部84の動作を説明するための図であり、個数算出部83−1,83−2の算出結果X,Yの時間変化を示す図である。半導体レーザ1−1,1−2と物体10との距離の変化率が半導体レーザ1−1,1−2の発振波長変化率よりも小さい場合、個数算出部83−1の算出結果Xの時間変化と個数算出部83−2の算出結果Yの時間変化は、互いの位相差が180度の正弦波形となる。特許文献1では、このときの物体10の状態を微小変位状態としている。
【0052】
一方、半導体レーザ1−1,1−2と物体10との距離の変化率が半導体レーザ1−1,1−2の発振波長変化率よりも大きい場合、個数算出部83−1の算出結果Xの時間変化は、図15の150で示す負側の波形が正側に折り返された形になり、同様に個数算出部83−2の算出結果Yの時間変化は、図15の151で示す負側の波形が正側に折り返された形になる。特許文献1では、この算出結果X,Yの折り返しが生じている部分における物体10の状態を変位状態としている。算出結果X,Yの折り返しが生じていない部分における物体10の状態は、上記の微小変位状態である。
【0053】
運動している物体10の物理量を求めるためには、物体10が変位状態であるか微小変位状態であるかを判定し、物体10が変位状態の場合には、正側に折り返されている計数結果X,Yが図15の150,151で示した軌跡を描くように補正する必要がある。
そこで、符号付与部84は、個数算出部83−1の算出結果Xの時間変化に対して個数算出部83−2の算出結果Yの時間変化が逆方向の場合(図7ステップS13においてNO)、算出結果X,Yに折り返しが生じていないことになるので、物体10が微小変位状態であると判定し、個数算出部83−1,83−2の最新の算出結果X,Yにそれぞれ正の符号を付与した符号付き算出結果X’,Y’を出力する(図7ステップS14)。
【0054】
また、符号付与部84は、個数算出部83−1の算出結果Xの時間変化に対して個数算出部83−2の算出結果Yの時間変化が同方向の場合(図7ステップS13においてYES)、算出結果X,Yのどちらか一方に折り返しが生じていることになるので、物体10が変位状態であると判定し、個数算出部83−1,83−2の最新の算出結果X,Yのうち大きい方の算出結果に正の符号を付与し、小さい方の算出結果に負の符号を付与した符号付き算出結果X’,Y’を出力する(図7ステップS15)。
【0055】
個数算出部83−1の算出結果Xの増減は、最新の算出結果X(t)と1回前の算出結果X(t−1)との差X(t)−X(t−1)の符号で判別することができ、個数算出部83−2の算出結果Yの増減は、最新の算出結果Y(t)と1回前の算出結果Y(t−1)との差Y(t)−Y(t−1)の符号で判別することができる。このような増減の判別の結果、算出結果X,Yが共に増加している場合あるいは共に減少している場合は、算出結果Xの時間変化と算出結果Yの時間変化が同方向であり、物体10が変位状態であると判定することができる。また、算出結果X,Yのどちらか一方が増加していて他方が減少している場合は、算出結果Xの時間変化と算出結果Yの時間変化が同方向でなく、物体10が微小変位状態であると判定することができる。
【0056】
符号付き算出結果X’,Y’は、記憶部80に格納される。符号付与部84は、以上のような符号付与処理を、個数算出部83−1,83−2によってMHPの数X,Yが算出される度に行う。
【0057】
次に、変位比例個数算出部85は、次式のように符号付与部84によって符号が与えられた最新の符号付き算出結果X’(t)とj(jは正の整数)回前から1回前までに算出された過去の符号付き算出結果X’,Y’の平均値との差の絶対値を算出することにより、変位比例個数NVを求める(図7ステップS16)。
NV=|X’(t)−{X’(t−j)+Y’(t−j)+・・・+X’(t−1)
+Y’(t−1)}/2j| ・・・(4)
【0058】
また、変位比例個数算出部85は、次式のように符号付与部84によって符号が与えられた最新の符号付き算出結果Y’(t)と過去の符号付き算出結果X’,Y’の平均値との差の絶対値を算出することにより、変位比例個数NVを求めてもよい。
NV=|Y’(t)−{X’(t−j)+Y’(t−j)+・・・+X’(t−1)
+Y’(t−1)}/2j| ・・・(5)
【0059】
また、変位比例個数算出部85は、式(4)の算出結果と式(5)の算出結果の平均値を変位比例個数NVとしてもよい。変位比例個数NVは、記憶部80に格納される。変位比例個数算出部85は、以上のような変位比例個数NVの算出処理を、個数算出部83−1,83−2によってMHPの数X,Yが算出される度に行う。
【0060】
次に、物理量算出部86は、半導体レーザ1−1,1−2の最小発振波長λaと最大発振波長λbと平均発振波長λと符号付与部84が出力した符号付き算出結果X’,Y’と変位比例個数算出部85が算出した変位比例個数NVに基づいて、半導体レーザ1−1,1−2と物体10との距離Lおよび物体10の速度Vを算出する(図7ステップS17)。物理量算出部86は、次式のように物体10との距離Lを算出する。
L=λa×λb×(X’+Y’)/(4×(λa−λb)) ・・・(6)
また、物理量算出部86は、次式のように物体10の速度Vを算出する。
V=NV×λ/2 ・・・(7)
【0061】
なお、物理量算出部86は、個数算出部83−1,83−2が算出したMHPの数X,Yの大小を比較し、半導体レーザ1−1の発振波長が増加し半導体レーザ1−2の発振波長が減少する期間においてYよりもXが大きい場合は物体10が物理量センサに近づきつつあると判定し、XよりもYが大きい場合は物体10が物理量センサから遠ざかりつつあると判定することができる。また、物理量算出部86は、半導体レーザ1−1の発振波長が減少し半導体レーザ1−2の発振波長が増加する期間においてXよりもYが大きい場合は物体10が物理量センサに近づきつつあると判定し、YよりもXが大きい場合は物体10が物理量センサから遠ざかりつつあると判定することができる。
【0062】
物理量算出部86は、以上のような算出処理を、個数算出部83−1,83−2によってMHPの数X,Yが算出される度に行う。
表示部9は、物理量算出部86が算出した物体10との距離Lおよび物体10の速度Vを表示する。
【0063】
特許文献1に開示された物理量センサでは、距離と速度の分解能は半導体レーザの半波長λ/2程度である。これに対して、本実施の形態では、半波長λ/2未満の分解能を実現することができ、従来よりも高分解能の計測を実現することができる。以上のように、本実施の形態では、物体との距離や物体の速度等の物理量を従来よりも高い分解能で計測することができる。
【0064】
また、特許文献1に開示された物理量センサでは、半導体レーザの発振波長変調の搬送波(三角波)の半周期分の計測時間がかかるのに対して、本実施の形態では、1つ1つのMHPの周期を単位時間当たりのMHPの数に変換して、このMHPの数から物体との距離や物体の速度等の物理量を求めることができるので、計測に要する時間を大幅に短縮することができ、速度の変化が速い物体にも対応することができる。さらに、本実施の形態では、MHPの周期の誤差を補正することができるので、距離や速度の計測精度を向上させることができる。
【0065】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。図16は本発明の第2の実施の形態に係る物理量センサの演算部8の構成を示すブロック図、図17はこの演算部8の動作を示すフローチャートである。本実施の形態においても、物理量センサ全体の構成は第1の実施の形態と同様であるので、図1の符号を用いて説明する。
【0066】
図16に示すように、本実施の形態の演算部8は、記憶部80と、移動平均値算出部81−1,81−2と、周期補正部82−1,82−2と、個数算出部83−1,83−2と、半導体レーザ1−1,1−2の最小発振波長λaと最大発振波長λbと個数算出部83−1,83−2の算出結果X,Yに基づいて物体10との距離の候補値と物体10の速度の候補値を算出する物理量候補値算出部87と、個数算出部83−1,83−2の算出結果X,Yの増減方向の一致不一致に基づいて物体10の状態を判定する状態判定部88と、状態判定部88の判定結果に基づいて候補値の選定を行い、物体10との距離および物体10の速度を確定する物理量確定部89とから構成される。
【0067】
記憶部80、移動平均値算出部81−1,81−2、周期補正部82−1,82−2、個数算出部83−1,83−2の動作(図17ステップS10〜S12)は、第1の実施の形態で説明したとおりである。
【0068】
物理量候補値算出部87は、個数算出部83−1,83−2の算出結果X,Yから、半導体レーザ1−1,1−2と物体10との距離の第1の候補値L1と第2の候補値L2を次式のように算出して、記憶部80に格納する(図17ステップS18)。
L1=λa×λb×(X+Y)/(4×(λa−λb)) ・・・(8)
L2=λa×λb×(X−Y)/(4×(λa−λb)) ・・・(9)
【0069】
また、物理量候補値算出部87は、個数算出部83−1,83−2の算出結果X,Yから物体10との速度の第1の候補値V1と第2の候補値V2とを次式のように算出して、記憶部80に格納する(図17ステップS18)。
V1=(X−Y)×(λa+λb)/8 ・・・(10)
V2=(X+Y)×(λa+λb)/8 ・・・(11)
【0070】
式(8)〜式(11)において、第1の候補値L1,V1は物体10が微小変位状態にあると仮定して計算した値であり、第2の候補値L2,V2は物体10が変位状態にあると仮定して計算した値である。
物理量候補値算出部87は、以上のような算出処理を、個数算出部83−1,83−2によってMHPの数X,Yが算出される度に行う。
【0071】
次に、状態判定部88は、個数算出部83−1,83−2の算出結果X,Yの増減方向の一致不一致に基づいて物体10の状態を判定する(図17ステップS19)。この判定処理は、第1の実施の形態の符号付与部84で行う判定処理と同じである。すなわち、状態判定部88は、個数算出部83−1の算出結果Xの時間変化に対して個数算出部83−2の算出結果Yの時間変化が逆方向の場合、物体10が微小変位状態であると判定し、個数算出部83−1の算出結果Xの時間変化に対して個数算出部83−2の算出結果Yの時間変化が同方向の場合、物体10が変位状態であると判定する。
状態判定部88は、以上のような判定処理を、個数算出部83−1,83−2によってMHPの数X,Yが算出される度に行う。
【0072】
物理量確定部89は、状態判定部88の判定結果に基づいて物体10との距離および物体10の速度を確定する(図17ステップS20,S21)。物理量確定部89は、物体10が微小変位状態と判定された場合、記憶部80に記憶されている距離の候補値L1を物体10との距離として確定し、速度の候補値V1を物体10の速度として確定する(図17ステップS20)。また、物理量確定部89は、物体10が変位状態と判定された場合、記憶部80に記憶されている距離の候補値L2を物体10との距離として確定し、速度の候補値V2を物体10の速度として確定する(図17ステップS21)。
【0073】
なお、物理量確定部89は、個数算出部83−1,83−2が算出したMHPの数X,Yの大小を比較し、半導体レーザ1−1の発振波長が増加し半導体レーザ1−2の発振波長が減少する期間においてYよりもXが大きい場合は物体10が物理量センサに近づきつつあると判定し、XよりもYが大きい場合は物体10が物理量センサから遠ざかりつつあると判定することができる。また、物理量確定部89は、半導体レーザ1−1の発振波長が減少し半導体レーザ1−2の発振波長が増加する期間においてXよりもYが大きい場合は物体10が物理量センサに近づきつつあると判定し、YよりもXが大きい場合は物体10が物理量センサから遠ざかりつつあると判定することができる。
物理量確定部89は、以上のような確定処理を、個数算出部83−1,83−2によってMHPの数X,Yが算出される度に行う。
【0074】
表示部9は、物理量確定部89が確定した物体10との距離および物体10の速度を表示する。物理量センサの他の構成は、第1の実施の形態で説明したとおりである。
以上のようにして、本実施の形態では、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0075】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。図18は本発明の第3の実施の形態に係る物理量センサの演算部8の構成を示すブロック図、図19はこの演算部8の動作を示すフローチャートである。本実施の形態においても、物理量センサ全体の構成は第1の実施の形態と同様であるので、図1の符号を用いて説明する。
【0076】
本実施の形態の演算部8は、記憶部80と、移動平均値算出部81−1,81−2と、周期補正部82−1,82−2と、個数算出部83−1,83−2と、個数算出部83−1,83−2の算出結果のうち大きい方の算出結果とこの算出結果よりも過去の算出結果を用いて算出された距離比例個数の2倍数との大小関係に応じて、個数算出部83−1,83−2の算出結果に正負の符号を付与する符号付与部84aと、変位比例個数算出部85と、物理量算出部86と、半導体レーザ1−1,1−2と物体10との平均距離に比例したMHPの数である距離比例個数を求める距離比例個数算出部90とから構成される。
【0077】
移動平均値算出部81−1,81−2と周期補正部82−1,82−2と個数算出部83−1,83−2の動作は、第1の実施の形態と同じである(図19ステップS10,S11,S12)。
符号付与部84aは、個数算出部83−1,83−2の最新の算出結果X,Yのうち大きい方の算出結果とこの算出結果よりも過去の算出結果を用いて算出された距離比例個数NLの2倍数2NLとの大小関係を判定し(図19ステップS22)、この大小関係に応じて個数算出部83−1,83−2の最新の算出結果X,Yに正負の符号を付与する(図19ステップS23,S24)。
【0078】
個数算出部83−1,83−2の最新の算出結果X,Yのうち大きい方の算出結果をZとすると、算出結果X,Yの折り返しが生じている変位状態では、Z≧2NLが成立する。符号付与部84aは、Z≧2NLが成立する場合(図19ステップS22においてYES)、個数算出部83−1,83−2の最新の算出結果X,Yのうち大きい方の算出結果に正の符号を付与し、小さい方の算出結果に負の符号を付与した符号付き算出結果X’,Y’を出力する(図19ステップS24)。
【0079】
一方、算出結果X,Yの折り返しが生じていない微小変位状態では、Z<2NLが成立する。符号付与部84aは、Z<2NLが成立する場合(図19ステップS22においてNO)、個数算出部83−1,83−2の最新の算出結果X,Yにそれぞれ正の符号を付与した符号付き算出結果X’,Y’を出力する(図19ステップS23)。
【0080】
符号付き算出結果X’,Y’は、記憶部80に格納される。符号付与部84aは、以上のような符号付与処理を、個数算出部83−1,83−2によってMHPの数X,Yが算出される度に行う。
なお、ステップS22において判定YESとなる条件をZ>2NLにして、ステップS22において判定NOとなる条件をZ≦2NLにしてもよい。
【0081】
次に、距離比例個数算出部90は、符号付与部84aによって符号が与えられた符号付き算出結果から距離比例個数NLを求める(図19ステップS25)。距離比例個数NLは、算出結果X’,Y’の平均値に相当する。距離比例個数算出部90は、次式に示すように符号付き算出結果X’,Y’を用いて、距離比例個数NLを算出する。
NL=(X’+Y’)/2 ・・・(12)
【0082】
なお、物理量の計測開始初期時においては、符号付与部84aが大小関係を判定するのに必要な距離比例個数NLが得られていない。このため、符号付与部84aは、算出結果X,Yのうち大きい方の算出結果とこの算出結果よりも過去の算出結果を用いて算出された距離比例個数NLの2倍数2NLとの大小関係を判定することはできず、符号付き算出結果を出力することはできない。したがって、計測開始初期時においては、距離比例個数算出部90は、式(12)の代わりに個数算出部83−1,83−2の算出結果X,Yを用いる次式により距離比例個数NLを算出する。
NL=(X+Y)/2 ・・・(13)
【0083】
つまり、距離比例個数算出部90は、計測開始初期時に式(13)を用いて距離比例個数NLを算出し、符号付与部84aによって距離比例個数NLの算出に必要な符号付き算出結果が算出されるようになった後は式(12)を用いて距離比例個数NLを算出することになる。
【0084】
距離比例個数算出部90が算出した距離比例個数NLは、記憶部80に格納される。距離比例個数算出部90は、以上のような距離比例個数NLの算出処理を、個数算出部83−1,83−2によってMHPの数X,Yが算出される度に行う。なお、本実施の形態では、1回分の算出結果を用いて距離比例個数NLを算出しているが、2m(mは正の整数)回の算出結果を用いて距離比例個数NLを算出するようにしてもよい。
【0085】
変位比例個数算出部85と物理量算出部86の動作は、第1の実施の形態と同じである(図19ステップS16,S17)。
こうして、本実施の形態においても、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0086】
[第4の実施の形態]
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。図15で説明したような算出結果の折り返しが生じると、算出結果X,Yの平均値に変化が生じる。そこで、符号付与部84は、算出結果X,Yの平均値の変化に応じて個数算出部83−1,83−2の最新の算出結果に正負の符号を付与するようにしてもよい。本実施の形態においても、物理量センサの構成は第1の実施の形態と同様であるので、図1、図6の符号を用いて説明する。
【0087】
図20は本実施の形態の演算部8の動作を示すフローチャートである。移動平均値算出部81−1,81−2と周期補正部82−1,82−2と個数算出部83−1,83−2の動作は、第1の実施の形態と同じである(図20ステップS10,S11,S12)。
【0088】
本実施の形態の符号付与部84は、現時刻t以前に求めた算出結果Xの最新の平均値がこの値よりも前に求めた算出結果Xの平均値に対して所定のしきい値以内であり、かつ現時刻t以前に求めた算出結果Yの最新の平均値がこの値よりも前に求めた算出結果Xの平均値に対して所定のしきい値以内である場合、算出結果X,Yのそれぞれの平均値に変化無しと判断して(図20ステップS26においてNO)、個数算出部83−1,83−2の最新の算出結果X,Yにそれぞれ正の符号を付与した符号付き算出結果X’,Y’を出力する(図20ステップS27)。
【0089】
また、符号付与部84は、現時刻t以前に求めた算出結果Xの最新の平均値がこの値よりも前に求めた算出結果Xの平均値に対して所定のしきい値を超えて変化したり、現時刻t以前に求めた算出結果Yの最新の平均値がこの値よりも前に求めた算出結果Xの平均値に対して所定のしきい値を超えて変化したりした場合(図20ステップS26においてYES)、個数算出部83−1,83−2の最新の算出結果X,Yのうち大きい方の算出結果に正の符号を付与し、小さい方の算出結果に負の符号を付与した符号付き算出結果X’,Y’を出力する(図20ステップS28)。
【0090】
符号付き算出結果X’,Y’は、記憶部80に格納される。符号付与部84は、以上のような符号付与処理を、個数算出部83−1,83−2によってMHPの数X,Yが算出される度に行う。
変位比例個数算出部85と物理量算出部86の動作は、第1の実施の形態と同じである(図20ステップS16,S17)。
こうして、本実施の形態においても、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0091】
[第5の実施の形態]
次に、本発明の第5の実施の形態について説明する。第1〜第4の実施の形態では、MHP波形を含む電気信号を検出する検出手段としてフォトダイオード2−1,2−2と電流−電圧変換増幅部5−1,5−2とを用いたが、フォトダイオードを使用することなくMHP波形を抽出することも可能である。図21は本発明の第5の実施の形態に係る物理量センサの構成を示すブロック図であり、図1と同様の構成には同一の符号を付してある。本実施の形態の物理量センサは、第1の実施の形態のフォトダイオード2−1,2−2と電流−電圧変換増幅部5−1,5−2の代わりに、第1、第2の検出手段として電圧検出部11−1,11−2を用いるものである。
【0092】
電圧検出部11−1,11−2は、それぞれ半導体レーザ1−1,1−2の端子間電圧、すなわちアノード−カソード間電圧を検出して増幅する。半導体レーザ1−1,1−2から放射されたレーザ光と物体10からの戻り光とによって干渉が生じるとき、半導体レーザ1−1,1−2の端子間電圧には、MHP波形が現れる。したがって、半導体レーザ1−1,1−2の端子間電圧からMHP波形を抽出することが可能である。
【0093】
フィルタ部6−1,6−2は、それぞれ電圧検出部11−1,11−2の出力電圧から搬送波を除去する。物理量センサのその他の構成は、第1〜第4の実施の形態と同じである。こうして、本実施の形態では、フォトダイオードを使用することなくMHP波形を抽出することができ、第1〜第4の実施の形態と比較して物理量センサの部品を削減することができ、物理量センサのコストを低減することができる。また、本実施の形態では、フォトダイオードを使用しないので、外乱光による影響を除去することができる。
【0094】
なお、第1〜第5の実施の形態において少なくとも信号抽出部7−1,7−2と演算部8とは、例えばCPU、メモリおよびインタフェースを備えたコンピュータとこれらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。CPUは、メモリに格納されたプログラムに従って第1〜第5の実施の形態で説明した処理を実行する。
【0095】
また、第1〜第5の実施の形態では、半導体レーザ1−1と1−2の最小発振波長λaが同一で、かつ半導体レーザ1−1と1−2の最大発振波長λbが同一の場合について説明したが、これに限るものではなく、図22に示すように、半導体レーザ1−1と1−2の間で最小発振波長λa及び最大発振波長λbが異なっていてもよい。図22において、λa1,λb1は半導体レーザ1−1の最小発振波長、最大発振波長、λa2,λb2は半導体レーザ1−2の最小発振波長、最大発振波長である。この場合、λa1×λb1/{4×(λb1−λa1)}とλa2×λb2/{4×(λb2−λa2)}とが常に同一の固定値であればよい。この場合、式(6)、式(8)〜式(11)におけるλa,λbとしては、λa1,λb1を使ってもよいし、λa2,λb2を使ってもよい。
【0096】
また、第1〜第5の実施の形態では、半導体レーザ1−1,1−2を三角波状に発振させていたが、これに限るものではなく、図23に示すように半導体レーザ1−1,1−2を鋸波状に発振させてもよい。すなわち、本発明では、少なくとも第1の発振期間P1が繰り返し存在するように半導体レーザ1−1を動作させ、半導体レーザ1−1と発振波長の増減が逆になるように半導体レーザ1−2を動作させればよい。図22の場合と同様にλa1≠λa2、λb1≠λb2でもよいし、図25の場合と同様にλa1=λa2、λb1=λb2でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明は、半導体レーザから放射したレーザ光と物体からの戻り光との自己結合効果によって生じる干渉の情報から、物体との距離や物体の速度等の物理量を計測する技術に適用することができる。
【符号の説明】
【0098】
1−1,1−2…半導体レーザ、2−1,2−2…フォトダイオード、3−1,3−2…レンズ、4−1,4−2…レーザドライバ、5−1,5−2…電流−電圧変換増幅部、6−1,6−2…フィルタ部、7−1,7−2…信号抽出部、8…演算部、9…表示部、10…物体、11−1,11−2…電圧検出部、80…記憶部、81−1,81−2…移動平均値算出部、82−1,82−2…周期補正部、83−1,83−2…個数算出部、84,84a…符号付与部、85…変位比例個数算出部、86…物理量算出部、87…物理量候補値算出部、88…状態判定部、89…物理量確定部、90…距離比例個数算出部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体レーザから放射したレーザ光と物体からの戻り光との自己結合効果によって生じる干渉の情報から、物体との距離や物体の速度等の物理量を計測する物理量センサおよび物理量計測方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体レーザの自己結合効果を用いた波長変調型の物理量センサが提案されている(特許文献1参照)。この物理量センサの構成を図24に示す。図24の物理量センサは、測定対象の物体210にレーザ光を放射する第1、第2の半導体レーザ201−1,201−2と、半導体レーザ201−1,201−2の光出力をそれぞれ電気信号に変換するフォトダイオード202−1,202−2と、半導体レーザ201−1,201−2からの光をそれぞれ集光して物体210に照射すると共に、物体210からの戻り光を集光して半導体レーザ201−1,201−2に入射させるレンズ203−1,203−2と、半導体レーザ201−1,201−2に発振波長が連続的に増加する第1の発振期間と発振波長が連続的に減少する第2の発振期間とを交互に繰り返させる第1、第2のレーザドライバ204−1,204−2と、フォトダイオード202−1,202−2の出力電流をそれぞれ電圧に変換して増幅する電流−電圧変換増幅器205−1,205−2と、電流−電圧変換増幅器205−1,205−2の出力電圧から搬送波を除去するフィルタ回路206−1,206−2と、フィルタ回路206−1,206−2の出力電圧に含まれる自己結合信号であるモードホップパルス(以下、MHPとする)の数を数える計数装置207と、物体210との距離および物体210の速度を算出する演算装置208と、演算装置208の算出結果を表示する表示装置209とを有する。
【0003】
レーザドライバ204−1,204−2は、時間に関して一定の変化率で増減を繰り返す三角波駆動電流を注入電流として半導体レーザ201−1,201−2に供給する。これにより、半導体レーザ201−1,201−2は、注入電流の大きさに比例して発振波長が一定の変化率で連続的に増加する第1の発振期間と発振波長が一定の変化率で連続的に減少する第2の発振期間とを交互に繰り返すように駆動される。このとき、レーザドライバ204−1,204−2は、半導体レーザ201−1と201−2とで発振波長の増減が逆になるように駆動電流を供給する。図25は半導体レーザ201−1,201−2の発振波長の時間変化を示す図である。図25において、LD1は半導体レーザ201−1の発振波形、LD2は半導体レーザ201−2の発振波形、P1は第1の発振期間、P2は第2の発振期間、λaは各期間における発振波長の最小値、λbは各期間における発振波長の最大値、Tcarは三角波の周期である。
【0004】
半導体レーザ201−1,201−2から出射したレーザ光は、レンズ203−1,203−2によって集光され、物体210に入射する。物体210で反射された半導体レーザ201−1,201−2の光は、それぞれレンズ203−1,203−2によって集光され、半導体レーザ201−1,201−2に入射する。電流−電圧変換増幅器205−1,205−2は、それぞれフォトダイオード202−1,202−2の出力電流を電圧に変換して増幅する。フィルタ回路206−1,206−2は、電流−電圧変換増幅器205−1,205−2の出力電圧から搬送波を除去する。計数装置207は、フィルタ回路206−1,206−2の出力電圧に含まれるMHPの数を数える。演算装置208は、半導体レーザ201−1,201−2の最小発振波長λaと最大発振波長λbと計数装置207の計数結果に基づいて物体210との距離および物体210の速度を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−014701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された自己結合型の物理量センサでは、距離や速度の算出にある程度の計測時間(特許文献1の例では、半導体レーザの発振波長変調の搬送波の半周期)が必要となるため、速度の変化が速い測定対象の計測においては計測誤差を生じるという問題点があった。また、信号処理においてMHPの数を数える必要があるため、半導体レーザの半波長未満の分解能を実現することが難しいという問題点があった。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、物体との距離や物体の速度等の物理量を高い分解能で計測することができ、計測に要する時間を短縮することができる物理量センサおよび物理量計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の物理量センサ(第1の実施の形態)は、測定対象に第1のレーザ光を放射する第1の半導体レーザと、前記測定対象に前記第1のレーザ光と平行に第2のレーザ光を放射する第2の半導体レーザと、少なくとも発振波長が連続的に単調増加する発振期間が繰り返し存在するように前記第1の半導体レーザを動作させる第1の発振波長変調手段と、前記第1の半導体レーザと発振波長の増減が逆になるように前記第2の半導体レーザを動作させる第2の発振波長変調手段と、前記第1のレーザ光とこのレーザ光の前記測定対象からの戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形を含む電気信号を検出する第1の検出手段と、前記第2のレーザ光とこのレーザ光の前記測定対象からの戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形を含む電気信号を検出する第2の検出手段と、前記第1、第2の検出手段の出力信号に含まれる干渉波形の周期をそれぞれ干渉波形が入力される度に計測する第1、第2の信号抽出手段と、この第1、第2の信号抽出手段の計測結果からそれぞれ単位時間当たりの干渉波形の数を算出する第1、第2の個数算出手段と、この第1、第2の個数算出手段の算出結果のうち大きい方の算出結果とこの算出結果よりも過去の算出結果を用いて算出された、前記半導体レーザと測定対象との平均距離に比例した干渉波形の数である距離比例個数の2倍数との大小関係、前記第1、第2の個数算出手段の算出結果の増減方向の一致不一致、あるいは前記第1、第2の個数算出手段の算出結果の平均値の変化に応じて、前記第1、第2の個数算出手段の算出結果に正負の符号を付与する符号付与手段と、この符号付与手段によって符号が与えられた最新の符号付き算出結果と過去の符号付き算出結果の平均値との差の絶対値を算出することにより、前記測定対象の変位に比例した干渉波形の数である変位比例個数を求める変位比例個数算出手段と、前記符号付与手段によって符号が与えられた符号付き算出結果と前記変位比例個数算出手段が算出した変位比例個数に基づいて前記測定対象の物理量を算出する物理量算出手段とを備えることを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明の物理量センサ(第2の実施の形態)は、測定対象に第1のレーザ光を放射する第1の半導体レーザと、前記測定対象に前記第1のレーザ光と平行に第2のレーザ光を放射する第2の半導体レーザと、少なくとも発振波長が連続的に単調増加する発振期間が繰り返し存在するように前記第1の半導体レーザを動作させる第1の発振波長変調手段と、前記第1の半導体レーザと発振波長の増減が逆になるように前記第2の半導体レーザを動作させる第2の発振波長変調手段と、前記第1のレーザ光とこのレーザ光の前記測定対象からの戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形を含む電気信号を検出する第1の検出手段と、前記第2のレーザ光とこのレーザ光の前記測定対象からの戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形を含む電気信号を検出する第2の検出手段と、前記第1、第2の検出手段の出力信号に含まれる干渉波形の周期をそれぞれ干渉波形が入力される度に計測する第1、第2の信号抽出手段と、この第1、第2の信号抽出手段の計測結果からそれぞれ単位時間当たりの干渉波形の数を算出する第1、第2の個数算出手段と、この第1、第2の個数算出手段の算出結果に基づいて前記測定対象の物理量の候補値を算出する物理量候補値算出手段と、前記第1、第2の個数算出手段の算出結果の増減方向の一致不一致に基づいて前記測定対象の状態を判定する状態判定手段と、前記状態判定手段の判定結果に基づいて前記候補値の選定を行い、前記測定対象の物理量を確定する物理量確定手段とを備えることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明の物理量センサの1構成例(第1の実施の形態)において、前記符号付与手段は、前記第1、第2の個数算出手段の算出結果のうち大きい方の算出結果が前記距離比例個数の2倍数よりも小さい場合、前記第1の個数算出手段の算出結果の時間変化に対して前記第2の個数算出手段の算出結果の時間変化が逆方向の場合、あるいは前記第1、第2の個数算出手段の算出結果の平均値に変化が無い場合、前記第1、第2の個数算出手段の算出結果にそれぞれ正の符号を付与した符号付き算出結果を出力し、前記第1、第2の個数算出手段の算出結果のうち大きい方の算出結果が前記距離比例個数の2倍数以上の場合、前記第1の個数算出手段の算出結果の時間変化に対して前記第2の個数算出手段の算出結果の時間変化が同方向の場合、あるいは前記第1、第2の個数算出手段の算出結果の平均値が変化した場合、前記第1、第2の個数算出手段の算出結果のうち大きい方の算出結果に正の符号を付与し、小さい方の算出結果に負の符号を付与した符号付き算出結果を出力し、前記物理量算出手段は、前記第1、第2の半導体レーザの最小発振波長および最大発振波長と前記符号付与手段によって符号が与えられた符号付き算出結果に基づいて前記測定対象との距離を算出し、前記第1、第2の半導体レーザの平均発振波長と前記変位比例個数算出手段が算出した変位比例個数に基づいて前記測定対象の速度を算出することを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の物理量センサの1構成例(第2の実施の形態)において、前記物理量候補値算出手段は、前記測定対象の状態を微小変位状態あるいは前記微小変位状態よりも動きが急な変位状態のいずれかであるとし、前記測定対象が微小変位状態と仮定した場合と変位状態と仮定した場合の各々について、前記第1、第2の半導体レーザの最小発振波長および最大発振波長と前記第1、第2の個数算出手段の算出結果から前記測定対象との距離の候補値と前記測定対象の速度の候補値を算出し、前記状態判定手段は、前記第1の個数算出手段の算出結果の時間変化に対して前記第2の個数算出手段の算出結果の時間変化が逆方向の場合、前記測定対象が微小変位状態にあると判定し、前記第1の個数算出手段の算出結果の時間変化に対して前記第2の個数算出手段の算出結果の時間変化が同方向の場合、前記測定対象が変位状態にあると判定し、前記物理量確定手段は、前記測定対象が微小変位状態と判定された場合、前記測定対象が微小変位状態と仮定して算出された前記距離および速度の候補値を前記測定対象の物理量として確定し、前記測定対象が変位状態と判定された場合、前記測定対象が変位状態と仮定して算出された前記距離および速度の候補値を前記測定対象の物理量として確定することを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の物理量センサの1構成例(第1、第2の実施の形態)は、さらに、前記第1、第2の信号抽出手段の計測結果を記憶する記憶手段と、前記第1の信号抽出手段によって計測された補正対象の干渉波形の周期の直前に計測され前記記憶手段に記憶された所定数の干渉波形の周期の移動平均値と、前記第1の信号抽出手段によって計測された補正対象の干渉波形の周期の直後に計測され前記記憶手段に記憶された所定数の干渉波形の周期の移動平均値とを前記第1の信号抽出手段の計測結果について算出する第1の移動平均値算出手段と、前記第2の信号抽出手段によって計測された補正対象の干渉波形の周期の直前に計測され前記記憶手段に記憶された所定数の干渉波形の周期の移動平均値と、前記第2の信号抽出手段によって計測された補正対象の干渉波形の周期の直後に計測され前記記憶手段に記憶された所定数の干渉波形の周期の移動平均値とを前記第2の信号抽出手段の計測結果について算出する第2の移動平均値算出手段と、前記第1の信号抽出手段によって計測された補正対象の干渉波形の周期と前記第1の移動平均値算出手段によって算出された移動平均値とを比較することにより、前記第1の信号抽出手段によって計測された補正対象の干渉波形の周期を補正し、この補正の結果に従って前記記憶手段に記憶された周期を更新する第1の周期補正手段と、前記第2の信号抽出手段によって計測された補正対象の干渉波形の周期と前記第2の移動平均値算出手段によって算出された移動平均値とを比較することにより、前記第2の信号抽出手段によって計測された補正対象の干渉波形の周期を補正し、この補正の結果に従って前記記憶手段に記憶された周期を更新する第2の周期補正手段とを備え、前記第1、第2の個数算出手段は、前記第1、第2の信号抽出手段の計測結果から単位時間当たりの干渉波形の数を算出する代わりに、前記第1、第2の周期補正手段によって補正された干渉波形の周期からそれぞれ単位時間当たりの干渉波形の数を算出することを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の物理量計測方法(第1の実施の形態)は、少なくとも発振波長が連続的に単調増加する発振期間が繰り返し存在するように第1の半導体レーザを動作させる第1の発振手順と、前記第1の半導体レーザと発振波長の増減が逆になるように第2の半導体レーザを動作させる第2の発振手順と、前記第1の半導体レーザから放射された第1のレーザ光とこのレーザ光の測定対象からの戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形を含む電気信号を検出する第1の検出手順と、前記第2の半導体レーザから放射された第2のレーザ光とこのレーザ光の前記測定対象からの戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形を含む電気信号を検出する第2の検出手順と、前記第1、第2の検出手順で得られた出力信号に含まれる干渉波形の周期をそれぞれ干渉波形が入力される度に計測する第1、第2の信号抽出手順と、この第1、第2の信号抽出手順の計測結果からそれぞれ単位時間当たりの干渉波形の数を算出する第1、第2の個数算出手順と、この第1、第2の個数算出手順の算出結果のうち大きい方の算出結果とこの算出結果よりも過去の算出結果を用いて算出された、前記半導体レーザと測定対象との平均距離に比例した干渉波形の数である距離比例個数の2倍数との大小関係、前記第1、第2の個数算出手順の算出結果の増減方向の一致不一致、あるいは前記第1、第2の個数算出手順の算出結果の平均値の変化に応じて、前記第1、第2の個数算出手順の算出結果に正負の符号を付与する符号付与手順と、この符号付与手順によって符号が与えられた最新の符号付き算出結果と過去の符号付き算出結果の平均値との差の絶対値を算出することにより、前記測定対象の変位に比例した干渉波形の数である変位比例個数を求める変位比例個数算出手順と、前記符号付与手順によって符号が与えられた符号付き算出結果と前記変位比例個数算出手順で算出した変位比例個数に基づいて前記測定対象の物理量を算出する物理量算出手順とを備えることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の物理量計測方法(第2の実施の形態)は、少なくとも発振波長が連続的に単調増加する発振期間が繰り返し存在するように第1の半導体レーザを動作させる第1の発振手順と、前記第1の半導体レーザと発振波長の増減が逆になるように第2の半導体レーザを動作させる第2の発振手順と、前記第1の半導体レーザから放射された第1のレーザ光とこのレーザ光の測定対象からの戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形を含む電気信号を検出する第1の検出手順と、前記第2の半導体レーザから放射された第2のレーザ光とこのレーザ光の前記測定対象からの戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形を含む電気信号を検出する第2の検出手順と、前記第1、第2の検出手順で得られた出力信号に含まれる干渉波形の周期をそれぞれ干渉波形が入力される度に計測する第1、第2の信号抽出手順と、この第1、第2の信号抽出手順の計測結果からそれぞれ単位時間当たりの干渉波形の数を算出する第1、第2の個数算出手順と、この第1、第2の個数算出手順の算出結果に基づいて前記測定対象の物理量の候補値を算出する物理量候補値算出手順と、前記第1、第2の個数算出手順の算出結果の増減方向の一致不一致に基づいて前記測定対象の状態を判定する状態判定手順と、前記状態判定手順の判定結果に基づいて前記候補値の選定を行い、前記測定対象の物理量を確定する物理量確定手順とを備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、発振波長の増減が逆になる第1、第2の半導体レーザからそれぞれレーザ光を測定対象に同時に放射させ、第1、第2の検出手段の出力信号に含まれる干渉波形の周期を計測し、2つの計測結果からそれぞれ単位時間当たりの干渉波形の数を算出し、2つの算出結果のうち大きい方の算出結果とこの算出結果よりも過去の算出結果を用いて算出された、半導体レーザと測定対象との平均距離に比例した干渉波形の数である距離比例個数の2倍数との大小関係、2つの算出結果の増減方向の一致不一致、あるいは2つの算出結果の平均値の変化に応じて、2つの算出結果に正負の符号を付与し、符号が与えられた最新の符号付き算出結果と過去の符号付き算出結果の平均値との差の絶対値を算出することにより変位比例個数を求め、符号付き算出結果と変位比例個数に基づいて測定対象の物理量を算出することにより、測定対象の物理量を従来よりも高い分解能で計測することができる。また、従来の物理量センサでは、半導体レーザの発振波長変調の搬送波の半周期分の計測時間がかかるのに対して、本発明では、1つ1つの干渉波形の周期を単位時間当たりの干渉波形の数に変換して、この干渉波形の数から測定対象の物理量を求めることができるので、計測に要する時間を大幅に短縮することができ、速度の変化が速い物体にも対応することができる。
【0016】
また、本発明では、発振波長の増減が逆になる第1、第2の半導体レーザからそれぞれレーザ光を測定対象に同時に放射させ、第1、第2の検出手段の出力信号に含まれる干渉波形の周期を計測し、2つの計測結果からそれぞれ単位時間当たりの干渉波形の数を算出し、2つの算出結果に基づいて測定対象の物理量の候補値を算出し、2つの算出結果の増減方向の一致不一致に基づいて測定対象の状態を判定し、この判定結果に基づいて候補値の選定を行い、測定対象の物理量を確定することにより、測定対象の物理量を従来よりも高い分解能で計測することができる。また、本発明では、従来の物理量センサに比べて計測に要する時間を大幅に短縮することができ、速度の変化が速い物体にも対応することができる。
【0017】
また、本発明では、第1、第2の信号抽出手段によって計測された干渉波形の周期を補正することにより、測定対象の物理量の計測精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る物理量センサの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態における電流−電圧変換増幅部の出力電圧波形およびフィルタ部の出力電圧波形を模式的に示す波形図である。
【図3】モードホップパルスについて説明するための図である。
【図4】半導体レーザの発振波長とフォトダイオードの出力波形との関係を示す図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態における信号抽出部の動作を説明するための図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態における演算部の構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態における演算部の動作を示すフローチャートである。
【図8】本発明の第1の実施の形態における周期補正部の動作を説明するための図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態におけるモードホップパルスの周期の補正原理を説明するための図である。
【図10】モードホップパルスの周期の度数分布を示す図である。
【図11】物体が等速運動している場合の物体との距離の変化を示す図である。
【図12】物体が等速運動している場合のモードホップパルスの周期の度数分布を示す図である。
【図13】物体の速度が変化している場合の物体との距離の変化および物体の速度の変化を示す図である。
【図14】物体の速度が変化している場合のモードホップパルスの周期の度数分布を示す図である。
【図15】本発明の第1の実施の形態における個数算出部の算出結果の時間変化の例を示す図である。
【図16】本発明の第2の実施の形態における演算部の構成を示すブロック図である。
【図17】本発明の第2の実施の形態における演算部の動作を示すフローチャートである。
【図18】本発明の第3の実施の形態における演算部の構成を示すブロック図である。
【図19】本発明の第3の実施の形態における演算部の動作を示すフローチャートである。
【図20】本発明の第4の実施の形態における演算部の動作を示すフローチャートである。
【図21】本発明の第5の実施の形態に係る物理量センサの構成を示すブロック図である。
【図22】本発明の第1〜第5の実施の形態における半導体レーザの発振波長の時間変化の他の例を示す図である。
【図23】本発明の第1〜第5の実施の形態における半導体レーザの発振波長の時間変化の他の例を示す図である。
【図24】従来の物理量センサの構成を示すブロック図である。
【図25】図24の物理量センサにおける半導体レーザの発振波長の時間変化の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の第1の実施の形態に係る物理量センサの構成を示すブロック図である。図1の物理量センサは、測定対象の物体10にレーザ光を放射する第1、第2の半導体レーザ1−1,1−2と、半導体レーザ1−1,1−2の光出力をそれぞれ電気信号に変換するフォトダイオード2−1,2−2と、半導体レーザ1−1,1−2からの光をそれぞれ集光して物体10に照射すると共に、物体10からの戻り光を集光して半導体レーザ1−1,1−2に入射させるレンズ3−1,3−2と、半導体レーザ1−1,1−2を駆動する第1、第2の発振波長変調手段となるレーザドライバ4−1,4−2と、フォトダイオード2−1,2−2の出力電流をそれぞれ電圧に変換して増幅する電流−電圧変換増幅部5−1,5−2と、電流−電圧変換増幅部5−1,5−2の出力電圧からそれぞれ搬送波を除去するフィルタ部6−1,6−2と、フィルタ部6−1,6−2の出力電圧に含まれる自己結合信号であるMHPの周期を計測する信号抽出部7−1,7−2と、物体10との距離および物体10の速度を算出する演算部8と、演算部8の算出結果を表示する表示部9とを有する。
【0020】
フォトダイオード2−1と電流−電圧変換増幅部5−1とは第1の検出手段を構成し、フォトダイオード2−2と電流−電圧変換増幅部5−2とは第2の検出手段を構成している。以下、説明容易にするために、半導体レーザ1には、モードホッピング現象を持たない型(VCSEL型、DFBレーザ型)のものが用いられているものと想定する。
【0021】
レーザドライバ4−1,4−2は、時間に関して一定の変化率で増減を繰り返す三角波駆動電流を注入電流として半導体レーザ1−1,1−2に供給する。これにより、半導体レーザ1−1,1−2は、注入電流の大きさに比例して発振波長が一定の変化率で連続的に増加する第1の発振期間P1と発振波長が一定の変化率で連続的に減少する第2の発振期間P2とを交互に繰り返すように駆動される。
【0022】
このとき、レーザドライバ4−1,4−2は、半導体レーザ1−1と1−2とで発振波長の増減が逆になるように駆動電流を供給する。すなわち、半導体レーザ1−1と1−2は、発振波長の変化率の絶対値が同一で変化率の極性が逆になっている。したがって、半導体レーザ1−1の発振波長が最大値になったときに、半導体レーザ1−2の発振波長は最小値となり、半導体レーザ1−1の発振波長が最小値になったときに、半導体レーザ1−2の発振波長は最大値となる。半導体レーザ1−1の発振波形をLD1、半導体レーザ1−2の発振波形をLD2とすると、半導体レーザ1−1,1−2の発振波長の時間変化は、図25に示したとおりである。本実施の形態では、発振波長の最大値λbおよび発振波長の最小値λaはそれぞれ常に一定になされており、それらの差λb−λaも常に一定になされている。
【0023】
半導体レーザ1−1,1−2から出射したレーザ光は、レンズ3−1,3−2によって集光され、物体10に入射する。このとき、半導体レーザ1−1,1−2のレーザ光は互いに平行に出射して物体10に入射する。物体10で反射された半導体レーザ1−1,1−2の光は、それぞれレンズ3−1,3−2によって集光され、半導体レーザ1−1,1−2に入射する。なお、レンズ3−1,3−2による集光は必須ではない。フォトダイオード2−1,2−2は、それぞれ半導体レーザ1−1,1−2の内部又はその近傍に配置され、半導体レーザ1−1,1−2の光出力を電流に変換する。電流−電圧変換増幅部5−1,5−2は、それぞれフォトダイオード2−1,2−2の出力電流を電圧に変換して増幅する。
【0024】
フィルタ部6−1,6−2は、変調波から重畳信号を抽出する機能を有するものである。図2(A)、図2(B)はそれぞれ電流−電圧変換増幅部5−1,5−2の出力電圧波形を模式的に示す図、図2(C)、図2(D)はそれぞれフィルタ部6−1,6−2の出力電圧波形を模式的に示す図である。これらの図は、フォトダイオード2−1,2−2の出力に相当する図2(A)、図2(B)の波形(変調波)から、図25に示したような半導体レーザ1−1,1−2の発振波形(搬送波)を除去して、図2(C)、図2(D)のMHP波形(重畳波)を抽出する過程を表している。
【0025】
信号抽出部7−1,7−2は、それぞれフィルタ部6−1,6−2の出力電圧に含まれるMHPの周期をMHPが発生する度に計測する。ここで、自己結合信号であるMHPについて説明する。図3に示すように、ミラー層1013から物体10までの距離をL、レーザの発振波長をλとすると、以下の共振条件を満足するとき、物体10からの戻り光と半導体レーザ1の光共振器内のレーザ光は強め合い、レーザ出力がわずかに増加する。
L=qλ/2 ・・・(1)
式(1)において、qは整数である。この現象は、物体10からの散乱光が極めて微弱であっても、半導体レーザ1の共振器内の見かけの反射率が増加することにより、増幅作用が生じ、十分観測できる。なお、図3において、1019はミラーとなる誘電体多層膜である。
【0026】
図4は、半導体レーザ1の発振波長をある一定の割合で変化させたときの発振波長とフォトダイオード2の出力波形との関係を示す図である。式(1)に示したL=qλ/2を満足したときに、戻り光と光共振器内のレーザ光の位相差が0°(同位相)になって、戻り光と光共振器内のレーザ光とが最も強め合い、L=qλ/2+λ/4のときに、位相差が180°(逆位相)になって、戻り光と光共振器内のレーザ光とが最も弱め合う。そのため、半導体レーザ1の発振波長を変化させていくと、レーザ出力が強くなるところと弱くなるところとが交互に繰り返し現れ、このときのレーザ出力をフォトダイオード2で検出すると、図4に示すように一定周期の階段状の波形が得られる。このような波形は一般的には干渉縞と呼ばれる。この階段状の波形、すなわち干渉縞の1つ1つがMHPである。物体10が静止している場合、ある一定時間において半導体レーザ1の発振波長を変化させた場合、測定距離に比例してMHPの数は変化する。なお、物体10が運動している場合は、ある一定時間において半導体レーザ1の発振波長を変化させた場合、MHPの数は測定距離に比例する個数と変位に比例する個数とが線形結合した数になる。
【0027】
図5(A)〜図5(D)は信号抽出部7−1の動作を説明するための図であり、図5(A)はフィルタ部6−1の出力電圧の波形、すなわちMHPの波形を模式的に示す図、図5(B)はMHPを2値化した波形を示す図、図5(C)は信号抽出部7−1に入力されるサンプリングクロックを示す図、図5(D)は図5(B)に対応する信号抽出部7−1の測定結果を示す図である。
【0028】
まず、信号抽出部7−1は、図5(A)に示すフィルタ部6−1の出力電圧が上昇してしきい値TH1以上になったときにハイレベルと判定し、フィルタ部6−1の出力電圧が下降してしきい値TH2(TH2<TH1)以下になったときにローレベルと判定することにより、フィルタ部6−1の出力を2値化する。そして、信号抽出部7−1は、2値化したMHPの立ち上がりエッジの周期(すなわち、MHPの周期)を立ち上がりエッジが発生する度に測定する。このとき、信号抽出部7−1は、図5(C)に示すサンプリングクロックの周期を1単位としてMHPの周期を測定する。図5(D)の例では、信号抽出部7−1は、MHPの周期としてTα,Tβ,Tγを順次測定している。図5(C)、図5(D)から明らかなように、周期Tα,Tβ,Tγの大きさは、それぞれ5[samplings]、4[samplings]、2[samplings]である。サンプリングクロックの周波数は、MHPの取り得る最高周波数に対して十分に高いものとする。
【0029】
信号抽出部7−2の動作は、信号抽出部7−1と同様である。すなわち、信号抽出部7−2は、信号抽出部7−1と同じサンプリングクロックを用いて、フィルタ部6−2の出力電圧に含まれるMHPの周期を計測する。信号抽出部7−1がフィルタ部6−1の出力電圧に含まれるMHPの周期TXを計測すると同時に、信号抽出部7−2がフィルタ部6−2の出力電圧に含まれるMHPの周期TYを計測するといったように、MHPの周期TXとTYは同時に求められる。
【0030】
次に、演算部8は、半導体レーザ1−1,1−2の最小発振波長λaと最大発振波長λbとMHPの周期TX,TYに基づいて、物体10との距離および物体10の速度を算出する。図6は演算部8の構成を示すブロック図、図7はこの演算部8の動作を示すフローチャートである。
【0031】
演算部8は、信号抽出部7−1,7−2の計測結果等を記憶する記憶部80と、補正対象のMHPの周期の直前に計測され記憶部80に記憶された所定数のMHPの周期の移動平均値と補正対象のMHPの周期の直後に計測され記憶部80に記憶された所定数のMHPの周期の移動平均値とを信号抽出部7−1,7−2の計測結果について算出する移動平均値算出部81−1,81−2と、移動平均値算出部81−1,81−2が算出した移動平均値と信号抽出部7−1,7−2によって計測され記憶部80に記憶された補正対象のMHPの周期とを比較することにより補正対象のMHPの周期を補正する周期補正部82−1,82−2と、周期補正部82−1,82−2によって補正されたMHPの周期から単位時間当たりのMHPの数を算出する個数算出部83−1,83−2と、個数算出部83−1,83−2の算出結果の増減方向の一致不一致に応じて個数算出部83−1,83−2の算出結果に正負の符号を付与する符号付与部84と、符号付与部84によって符号が与えられた最新の符号付き算出結果と過去の符号付き算出結果の平均値との差の絶対値を算出することにより、物体10の変位に比例したMHPの数(以下、変位比例個数とする)を求める変位比例個数算出部85と、物体10との距離および物体10の速度を算出する物理量算出部86とから構成される。
【0032】
記憶部80は、信号抽出部7−1,7−2の計測結果を記憶する。移動平均値算出部81−1は、信号抽出部7−1によって計測された補正対象のMHPの周期の直前に計測され記憶部80に記憶された所定数のMHPの周期の移動平均値TAXと、信号抽出部7−1によって計測された補正対象のMHPの周期の直後に計測され記憶部80に記憶された所定数のMHPの周期の移動平均値TBXとを信号抽出部7−1の計測結果について算出する(図7ステップS10)。
【0033】
移動平均値算出部81−1の処理と並行して移動平均値算出部81−2は、信号抽出部7−2によって計測された補正対象のMHPの周期の直前に計測され記憶部80に記憶された所定数のMHPの周期の移動平均値TAYと、信号抽出部7−2によって計測された補正対象のMHPの周期の直後に計測され記憶部80に記憶された所定数のMHPの周期の移動平均値TBYとを信号抽出部7−2の計測結果について算出する(図7ステップS10)。
【0034】
移動平均値算出部81−1,81−2は、それぞれ信号抽出部7−1,7−2から新たな計測結果が出力され記憶部80に格納される度に、移動平均値算出済みの現在の補正対象の周期よりも1回新しい計測結果を新たな補正対象の周期として、移動平均値TAX,TBX,TAY,TBYの算出処理を行う。移動平均値算出部81−1,81−2の算出結果は、記憶部80に格納される。
【0035】
次に、周期補正部82−1は、移動平均値算出部81−1が算出した移動平均値TAX,TBXと信号抽出部7−1によって計測され記憶部80に記憶された補正対象のMHPの周期とを比較することにより、補正対象のMHPの周期を補正する(図7ステップS11)。周期補正部82−1は、この補正を信号抽出部7−1から新たな計測結果が出力され記憶部80に格納される度に行う。図8(A)〜図8(D)は周期補正部82−1の動作を説明するための図である。
【0036】
周期補正部82−1は、移動平均値算出部81−1が算出した2つの移動平均値TAX,TBXのうち小さい方をT1、大きい方をT2とし、Tx=T1+α・(T2−T1)としたとき(0≦α≦1)、図8(A)に示すように補正対象のMHPの周期Tがk・Tx未満の場合は(kは1未満の正の値)、図8(B)に示すように補正対象のMHPの周期Tと次に計測されたMHPの周期Tnextとを合わせた周期を補正後のMHPの周期T’とし、周期を合わせた波形を1つの波形とする。
【0037】
また、周期補正部82−1は、補正対象のMHPの周期Tが(m−0.5)・Tx以上で(m+0.5)・Tx未満の場合は(mは2以上の自然数)、補正対象のMHPの周期Tをm等分した周期をそれぞれ補正後の周期とし、補正後の周期の波形がm個あるものとする。図8(C)の例は、m=2で補正対象のMHPの周期Tが1.5Tx以上2.5Tx未満の場合であり、この場合、図8(D)に示すように補正対象のMHPの周期TがTdiv1,Tdiv2に2等分される。
【0038】
周期補正部82−1は、記憶部80に記憶されている信号抽出部7−1の計測結果を、補正結果に従って更新する。したがって、図8(A)、図8(B)に示した例の場合には、信号抽出部7−1の2つの計測結果が1つに合成されることになり、図8(C)、図8(D)に示した例の場合には、信号抽出部7−1の1つの計測結果が2つに分割されることになる。また、補正対象のMHPの周期よりも前に計測されたMHPの周期は、周期補正部82−1によって既に補正されていることになる。つまり、移動平均値算出部81−1が算出する移動平均値TAXは、補正済みの計測結果から算出されることになる。
【0039】
周期補正部82−1の処理と並行して周期補正部82−2は、移動平均値算出部81−2が算出した移動平均値TAY,TBYと信号抽出部7−2によって計測され記憶部80に記憶された補正対象のMHPの周期とを比較することにより、補正対象のMHPの周期を補正する(図7ステップS11)。周期補正部82−1との違いは、移動平均値TAX,TBXの代わりに移動平均値TAY,TBYを用いる点と、信号抽出部7−2によって計測されたMHPの周期を補正する点である。これにより、周期補正部82−2は、記憶部80に記憶されている信号抽出部7−2の計測結果を、補正結果に従って更新する。
周期補正部82−1,82−2は、以上のような補正処理を信号抽出部7−1,7−2から新たな計測結果が出力され記憶部80に格納される度に行う。
【0040】
図9はMHPの周期の補正原理を説明するための図であり、フィルタ部6−1,6−2の出力電圧の波形、すなわちMHPの波形を模式的に示す図である。ただし、説明を簡単にするため、ここでの原理は物体10が静止している場合もしくは物体10の振動の中心が変化しない場合を説明しており、補正対象のMHPの周期の比較対象として移動平均値T1,T2の代わりに、基準周期T0を用いている。基準周期T0は、物体10が静止していたときのMHPの周期、算出された距離におけるMHPの周期、もしくは周期補正部82−1,82−2による周期補正の直前に計測された一定数のMHPの周期の移動平均値のいずれかである。物体10が動く場合の周期補正の原理については後述する。
【0041】
MHPの周期は物体10との距離によって異なるが、物体10との距離が不変であれば、MHPは同じ周期で出現する。しかし、ノイズのために、MHPの波形には欠落が生じたり、信号として数えるべきでない波形が生じたりして、MHPの周期に誤差が生じる。
信号の欠落が生じると、欠落が生じた箇所でのMHPの周期Twは、本来の周期のおよそ2倍になる。つまり、MHPの周期が基準周期T0のおよそ2倍以上の場合には、信号に欠落が生じていると判断できる。そこで、周期Twを2等分することで、信号の欠落を補正することができる。
【0042】
また、ノイズをカウントした箇所でのMHPの周期Tsは、少なくとも1つの周期は本来の周期のおよそ0.5倍以下になる。つまり、MHPの周期が基準周期T0のおよそ0.5倍未満の場合には、信号を過剰に数えていると判断できる。そこで、周期Tsと次に計測される周期Tnextとを加算することで、誤って数えたノイズを補正することができる。
【0043】
以上が、MHPの周期補正の基本原理である。信号に欠落が生じたと見なす周期Twを決めるためのしきい値を基準周期T0の2倍の値とせずに、1.5倍(本実施の形態で実際に用いるのは(m−0.5)倍であり、m=2の場合に1.5倍となる)とする理由は、特開2009−47676号公報に開示されている。特開2009−47676号公報に記載された原理はMHPの計測結果を補正する原理であるが、MHPの周期Tと計数結果Nとは、三角波の半周期あたりのサンプリングクロック数をMとすると、T=M/Nの関係にあり、Mは一定値であるから、信号に欠落が生じたと見なす周期Twを決めるためのしきい値は、計数結果Nを補正する場合と同様に、基準周期T0の1.5倍とすればよいことが分かる。
【0044】
次に、物体10が動く場合の周期の補正原理について説明する。MHPの時間当たりの数は、物体10との距離に比例した個数と物体10の速度に比例する個数との和で表すことができる。物体10がある状態でMHPの周期がTの場合、個々のMHPの周期の確率分布はノイズなどによってばらつきが生じ、Tを中心とした概ね正規分布になる。よって、物体10が静止している場合、個々のMHPの周期の確率分布も基準周期T0を中心とした正規分布になり、静止している期間のMHPの周期の度数分布は、図10に示したように基準周期T0を中心とした正規分布になる。
【0045】
ここで、図11に示すように物体10が等速運動している場合を考える。自己結合型のレーザセンサでは、物体10の速度に比例するMHPの数と比較すると、物体10との距離に比例するMHPの数の変化は非常に小さい。このため、個々のMHPの周期の確率分布は、図11のA点でもB点でも、物体10との平均距離に相当するT0から速度の大きさの分だけ周期が変化した値Tを中心とした正規分布になるため、A点からB点の期間のMHPの周期の度数分布も、Tを中心とした正規分布になる(図12)。
【0046】
次に、図13(A)、図13(B)に示すように物体10の速度が変化している場合を考える。ここでは、簡略化するために、折れ線運動を考える。すなわち、物体10との距離Lを期間Aにおける距離LAと期間Bにおける距離LBに簡略化し、同様に物体10の速度Vを期間Aにおける速度VAと期間Bにおける速度VBに簡略化する。このように物体10の運動を簡略化すると、MHPの周期の度数分布は図14のようになる。図14においてTAは期間Aにおける物体10の平均速度と平均距離に対応するMHPの周期、TBは期間Bにおける物体10の平均速度と平均距離に対応するMHPの周期である。ただし、距離比例分LAとLBは同一とみなしても良い。
【0047】
物体10の速度変化がなだらかに変化しているとしたら、図13(A)、図13(B)の時刻tでの物体10の速度は速度VAとVBとの間にあるので、MHPの周期も周期TAとTBとの間にある。このときのMHPの周期をTZとすると、信号に欠落が生じて2つのMHPが1つになった場合のMHPの周期の確率分布は、2TZを中心とした正規分布になると考えられる。また、周期TZのMHPがノイズで2分割された場合のMHPの2つの確率分布は、0.5TZを軸にした対称の形になる。したがって、TAからTBの間の値と考えられるTZの周期補正を考える場合、基準周期T0の代わりに、TAとTBの移動平均値を基準として周期補正を行うことが妥当である。以上が、物体10が動く場合のMHPの周期補正の原理である。
【0048】
次に、個数算出部83−1,83−2は、それぞれ周期補正部82−1,82−2によって補正されたMHPの周期から単位時間当たりのMHPの数を算出する(図7ステップS12)。周期補正部82−1によって補正されたMHPの周期をTX’とすると、個数算出部83−1が算出する単位時間当たりのMHPの数Xは次式のようになる。
X=1/TX’ ・・・(2)
【0049】
同様に、周期補正部82−2によって補正されたMHPの周期をTY’とすると、個数算出部83−2が算出する単位時間当たりのMHPの数Yは次式のようになる。
Y=1/TY’ ・・・(3)
個数算出部83−1,83−2は、以上のような算出処理を周期補正部82−1,82−2によってMHPの周期が補正される度に行う。個数算出部83−1,83−2の算出結果は、記憶部80に格納される。なお、図8(C)、図8(D)のような例の場合、MHPの周期をm等分する補正が行われるが、この場合はm等分された周期のうちの1個の周期について式(2)または式(3)から単位時間当たりのMHPの数を算出すればよい。
【0050】
次に、符号付与部84は、個数算出部83−1,83−2の算出結果X,Yの増減方向の一致不一致を判定し(図7ステップS13)、この判定の結果に応じて個数算出部83−1,83−2の算出結果X,Yに正負の符号を付与する(図7ステップS14,S15)。
【0051】
図15は符号付与部84の動作を説明するための図であり、個数算出部83−1,83−2の算出結果X,Yの時間変化を示す図である。半導体レーザ1−1,1−2と物体10との距離の変化率が半導体レーザ1−1,1−2の発振波長変化率よりも小さい場合、個数算出部83−1の算出結果Xの時間変化と個数算出部83−2の算出結果Yの時間変化は、互いの位相差が180度の正弦波形となる。特許文献1では、このときの物体10の状態を微小変位状態としている。
【0052】
一方、半導体レーザ1−1,1−2と物体10との距離の変化率が半導体レーザ1−1,1−2の発振波長変化率よりも大きい場合、個数算出部83−1の算出結果Xの時間変化は、図15の150で示す負側の波形が正側に折り返された形になり、同様に個数算出部83−2の算出結果Yの時間変化は、図15の151で示す負側の波形が正側に折り返された形になる。特許文献1では、この算出結果X,Yの折り返しが生じている部分における物体10の状態を変位状態としている。算出結果X,Yの折り返しが生じていない部分における物体10の状態は、上記の微小変位状態である。
【0053】
運動している物体10の物理量を求めるためには、物体10が変位状態であるか微小変位状態であるかを判定し、物体10が変位状態の場合には、正側に折り返されている計数結果X,Yが図15の150,151で示した軌跡を描くように補正する必要がある。
そこで、符号付与部84は、個数算出部83−1の算出結果Xの時間変化に対して個数算出部83−2の算出結果Yの時間変化が逆方向の場合(図7ステップS13においてNO)、算出結果X,Yに折り返しが生じていないことになるので、物体10が微小変位状態であると判定し、個数算出部83−1,83−2の最新の算出結果X,Yにそれぞれ正の符号を付与した符号付き算出結果X’,Y’を出力する(図7ステップS14)。
【0054】
また、符号付与部84は、個数算出部83−1の算出結果Xの時間変化に対して個数算出部83−2の算出結果Yの時間変化が同方向の場合(図7ステップS13においてYES)、算出結果X,Yのどちらか一方に折り返しが生じていることになるので、物体10が変位状態であると判定し、個数算出部83−1,83−2の最新の算出結果X,Yのうち大きい方の算出結果に正の符号を付与し、小さい方の算出結果に負の符号を付与した符号付き算出結果X’,Y’を出力する(図7ステップS15)。
【0055】
個数算出部83−1の算出結果Xの増減は、最新の算出結果X(t)と1回前の算出結果X(t−1)との差X(t)−X(t−1)の符号で判別することができ、個数算出部83−2の算出結果Yの増減は、最新の算出結果Y(t)と1回前の算出結果Y(t−1)との差Y(t)−Y(t−1)の符号で判別することができる。このような増減の判別の結果、算出結果X,Yが共に増加している場合あるいは共に減少している場合は、算出結果Xの時間変化と算出結果Yの時間変化が同方向であり、物体10が変位状態であると判定することができる。また、算出結果X,Yのどちらか一方が増加していて他方が減少している場合は、算出結果Xの時間変化と算出結果Yの時間変化が同方向でなく、物体10が微小変位状態であると判定することができる。
【0056】
符号付き算出結果X’,Y’は、記憶部80に格納される。符号付与部84は、以上のような符号付与処理を、個数算出部83−1,83−2によってMHPの数X,Yが算出される度に行う。
【0057】
次に、変位比例個数算出部85は、次式のように符号付与部84によって符号が与えられた最新の符号付き算出結果X’(t)とj(jは正の整数)回前から1回前までに算出された過去の符号付き算出結果X’,Y’の平均値との差の絶対値を算出することにより、変位比例個数NVを求める(図7ステップS16)。
NV=|X’(t)−{X’(t−j)+Y’(t−j)+・・・+X’(t−1)
+Y’(t−1)}/2j| ・・・(4)
【0058】
また、変位比例個数算出部85は、次式のように符号付与部84によって符号が与えられた最新の符号付き算出結果Y’(t)と過去の符号付き算出結果X’,Y’の平均値との差の絶対値を算出することにより、変位比例個数NVを求めてもよい。
NV=|Y’(t)−{X’(t−j)+Y’(t−j)+・・・+X’(t−1)
+Y’(t−1)}/2j| ・・・(5)
【0059】
また、変位比例個数算出部85は、式(4)の算出結果と式(5)の算出結果の平均値を変位比例個数NVとしてもよい。変位比例個数NVは、記憶部80に格納される。変位比例個数算出部85は、以上のような変位比例個数NVの算出処理を、個数算出部83−1,83−2によってMHPの数X,Yが算出される度に行う。
【0060】
次に、物理量算出部86は、半導体レーザ1−1,1−2の最小発振波長λaと最大発振波長λbと平均発振波長λと符号付与部84が出力した符号付き算出結果X’,Y’と変位比例個数算出部85が算出した変位比例個数NVに基づいて、半導体レーザ1−1,1−2と物体10との距離Lおよび物体10の速度Vを算出する(図7ステップS17)。物理量算出部86は、次式のように物体10との距離Lを算出する。
L=λa×λb×(X’+Y’)/(4×(λa−λb)) ・・・(6)
また、物理量算出部86は、次式のように物体10の速度Vを算出する。
V=NV×λ/2 ・・・(7)
【0061】
なお、物理量算出部86は、個数算出部83−1,83−2が算出したMHPの数X,Yの大小を比較し、半導体レーザ1−1の発振波長が増加し半導体レーザ1−2の発振波長が減少する期間においてYよりもXが大きい場合は物体10が物理量センサに近づきつつあると判定し、XよりもYが大きい場合は物体10が物理量センサから遠ざかりつつあると判定することができる。また、物理量算出部86は、半導体レーザ1−1の発振波長が減少し半導体レーザ1−2の発振波長が増加する期間においてXよりもYが大きい場合は物体10が物理量センサに近づきつつあると判定し、YよりもXが大きい場合は物体10が物理量センサから遠ざかりつつあると判定することができる。
【0062】
物理量算出部86は、以上のような算出処理を、個数算出部83−1,83−2によってMHPの数X,Yが算出される度に行う。
表示部9は、物理量算出部86が算出した物体10との距離Lおよび物体10の速度Vを表示する。
【0063】
特許文献1に開示された物理量センサでは、距離と速度の分解能は半導体レーザの半波長λ/2程度である。これに対して、本実施の形態では、半波長λ/2未満の分解能を実現することができ、従来よりも高分解能の計測を実現することができる。以上のように、本実施の形態では、物体との距離や物体の速度等の物理量を従来よりも高い分解能で計測することができる。
【0064】
また、特許文献1に開示された物理量センサでは、半導体レーザの発振波長変調の搬送波(三角波)の半周期分の計測時間がかかるのに対して、本実施の形態では、1つ1つのMHPの周期を単位時間当たりのMHPの数に変換して、このMHPの数から物体との距離や物体の速度等の物理量を求めることができるので、計測に要する時間を大幅に短縮することができ、速度の変化が速い物体にも対応することができる。さらに、本実施の形態では、MHPの周期の誤差を補正することができるので、距離や速度の計測精度を向上させることができる。
【0065】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。図16は本発明の第2の実施の形態に係る物理量センサの演算部8の構成を示すブロック図、図17はこの演算部8の動作を示すフローチャートである。本実施の形態においても、物理量センサ全体の構成は第1の実施の形態と同様であるので、図1の符号を用いて説明する。
【0066】
図16に示すように、本実施の形態の演算部8は、記憶部80と、移動平均値算出部81−1,81−2と、周期補正部82−1,82−2と、個数算出部83−1,83−2と、半導体レーザ1−1,1−2の最小発振波長λaと最大発振波長λbと個数算出部83−1,83−2の算出結果X,Yに基づいて物体10との距離の候補値と物体10の速度の候補値を算出する物理量候補値算出部87と、個数算出部83−1,83−2の算出結果X,Yの増減方向の一致不一致に基づいて物体10の状態を判定する状態判定部88と、状態判定部88の判定結果に基づいて候補値の選定を行い、物体10との距離および物体10の速度を確定する物理量確定部89とから構成される。
【0067】
記憶部80、移動平均値算出部81−1,81−2、周期補正部82−1,82−2、個数算出部83−1,83−2の動作(図17ステップS10〜S12)は、第1の実施の形態で説明したとおりである。
【0068】
物理量候補値算出部87は、個数算出部83−1,83−2の算出結果X,Yから、半導体レーザ1−1,1−2と物体10との距離の第1の候補値L1と第2の候補値L2を次式のように算出して、記憶部80に格納する(図17ステップS18)。
L1=λa×λb×(X+Y)/(4×(λa−λb)) ・・・(8)
L2=λa×λb×(X−Y)/(4×(λa−λb)) ・・・(9)
【0069】
また、物理量候補値算出部87は、個数算出部83−1,83−2の算出結果X,Yから物体10との速度の第1の候補値V1と第2の候補値V2とを次式のように算出して、記憶部80に格納する(図17ステップS18)。
V1=(X−Y)×(λa+λb)/8 ・・・(10)
V2=(X+Y)×(λa+λb)/8 ・・・(11)
【0070】
式(8)〜式(11)において、第1の候補値L1,V1は物体10が微小変位状態にあると仮定して計算した値であり、第2の候補値L2,V2は物体10が変位状態にあると仮定して計算した値である。
物理量候補値算出部87は、以上のような算出処理を、個数算出部83−1,83−2によってMHPの数X,Yが算出される度に行う。
【0071】
次に、状態判定部88は、個数算出部83−1,83−2の算出結果X,Yの増減方向の一致不一致に基づいて物体10の状態を判定する(図17ステップS19)。この判定処理は、第1の実施の形態の符号付与部84で行う判定処理と同じである。すなわち、状態判定部88は、個数算出部83−1の算出結果Xの時間変化に対して個数算出部83−2の算出結果Yの時間変化が逆方向の場合、物体10が微小変位状態であると判定し、個数算出部83−1の算出結果Xの時間変化に対して個数算出部83−2の算出結果Yの時間変化が同方向の場合、物体10が変位状態であると判定する。
状態判定部88は、以上のような判定処理を、個数算出部83−1,83−2によってMHPの数X,Yが算出される度に行う。
【0072】
物理量確定部89は、状態判定部88の判定結果に基づいて物体10との距離および物体10の速度を確定する(図17ステップS20,S21)。物理量確定部89は、物体10が微小変位状態と判定された場合、記憶部80に記憶されている距離の候補値L1を物体10との距離として確定し、速度の候補値V1を物体10の速度として確定する(図17ステップS20)。また、物理量確定部89は、物体10が変位状態と判定された場合、記憶部80に記憶されている距離の候補値L2を物体10との距離として確定し、速度の候補値V2を物体10の速度として確定する(図17ステップS21)。
【0073】
なお、物理量確定部89は、個数算出部83−1,83−2が算出したMHPの数X,Yの大小を比較し、半導体レーザ1−1の発振波長が増加し半導体レーザ1−2の発振波長が減少する期間においてYよりもXが大きい場合は物体10が物理量センサに近づきつつあると判定し、XよりもYが大きい場合は物体10が物理量センサから遠ざかりつつあると判定することができる。また、物理量確定部89は、半導体レーザ1−1の発振波長が減少し半導体レーザ1−2の発振波長が増加する期間においてXよりもYが大きい場合は物体10が物理量センサに近づきつつあると判定し、YよりもXが大きい場合は物体10が物理量センサから遠ざかりつつあると判定することができる。
物理量確定部89は、以上のような確定処理を、個数算出部83−1,83−2によってMHPの数X,Yが算出される度に行う。
【0074】
表示部9は、物理量確定部89が確定した物体10との距離および物体10の速度を表示する。物理量センサの他の構成は、第1の実施の形態で説明したとおりである。
以上のようにして、本実施の形態では、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0075】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。図18は本発明の第3の実施の形態に係る物理量センサの演算部8の構成を示すブロック図、図19はこの演算部8の動作を示すフローチャートである。本実施の形態においても、物理量センサ全体の構成は第1の実施の形態と同様であるので、図1の符号を用いて説明する。
【0076】
本実施の形態の演算部8は、記憶部80と、移動平均値算出部81−1,81−2と、周期補正部82−1,82−2と、個数算出部83−1,83−2と、個数算出部83−1,83−2の算出結果のうち大きい方の算出結果とこの算出結果よりも過去の算出結果を用いて算出された距離比例個数の2倍数との大小関係に応じて、個数算出部83−1,83−2の算出結果に正負の符号を付与する符号付与部84aと、変位比例個数算出部85と、物理量算出部86と、半導体レーザ1−1,1−2と物体10との平均距離に比例したMHPの数である距離比例個数を求める距離比例個数算出部90とから構成される。
【0077】
移動平均値算出部81−1,81−2と周期補正部82−1,82−2と個数算出部83−1,83−2の動作は、第1の実施の形態と同じである(図19ステップS10,S11,S12)。
符号付与部84aは、個数算出部83−1,83−2の最新の算出結果X,Yのうち大きい方の算出結果とこの算出結果よりも過去の算出結果を用いて算出された距離比例個数NLの2倍数2NLとの大小関係を判定し(図19ステップS22)、この大小関係に応じて個数算出部83−1,83−2の最新の算出結果X,Yに正負の符号を付与する(図19ステップS23,S24)。
【0078】
個数算出部83−1,83−2の最新の算出結果X,Yのうち大きい方の算出結果をZとすると、算出結果X,Yの折り返しが生じている変位状態では、Z≧2NLが成立する。符号付与部84aは、Z≧2NLが成立する場合(図19ステップS22においてYES)、個数算出部83−1,83−2の最新の算出結果X,Yのうち大きい方の算出結果に正の符号を付与し、小さい方の算出結果に負の符号を付与した符号付き算出結果X’,Y’を出力する(図19ステップS24)。
【0079】
一方、算出結果X,Yの折り返しが生じていない微小変位状態では、Z<2NLが成立する。符号付与部84aは、Z<2NLが成立する場合(図19ステップS22においてNO)、個数算出部83−1,83−2の最新の算出結果X,Yにそれぞれ正の符号を付与した符号付き算出結果X’,Y’を出力する(図19ステップS23)。
【0080】
符号付き算出結果X’,Y’は、記憶部80に格納される。符号付与部84aは、以上のような符号付与処理を、個数算出部83−1,83−2によってMHPの数X,Yが算出される度に行う。
なお、ステップS22において判定YESとなる条件をZ>2NLにして、ステップS22において判定NOとなる条件をZ≦2NLにしてもよい。
【0081】
次に、距離比例個数算出部90は、符号付与部84aによって符号が与えられた符号付き算出結果から距離比例個数NLを求める(図19ステップS25)。距離比例個数NLは、算出結果X’,Y’の平均値に相当する。距離比例個数算出部90は、次式に示すように符号付き算出結果X’,Y’を用いて、距離比例個数NLを算出する。
NL=(X’+Y’)/2 ・・・(12)
【0082】
なお、物理量の計測開始初期時においては、符号付与部84aが大小関係を判定するのに必要な距離比例個数NLが得られていない。このため、符号付与部84aは、算出結果X,Yのうち大きい方の算出結果とこの算出結果よりも過去の算出結果を用いて算出された距離比例個数NLの2倍数2NLとの大小関係を判定することはできず、符号付き算出結果を出力することはできない。したがって、計測開始初期時においては、距離比例個数算出部90は、式(12)の代わりに個数算出部83−1,83−2の算出結果X,Yを用いる次式により距離比例個数NLを算出する。
NL=(X+Y)/2 ・・・(13)
【0083】
つまり、距離比例個数算出部90は、計測開始初期時に式(13)を用いて距離比例個数NLを算出し、符号付与部84aによって距離比例個数NLの算出に必要な符号付き算出結果が算出されるようになった後は式(12)を用いて距離比例個数NLを算出することになる。
【0084】
距離比例個数算出部90が算出した距離比例個数NLは、記憶部80に格納される。距離比例個数算出部90は、以上のような距離比例個数NLの算出処理を、個数算出部83−1,83−2によってMHPの数X,Yが算出される度に行う。なお、本実施の形態では、1回分の算出結果を用いて距離比例個数NLを算出しているが、2m(mは正の整数)回の算出結果を用いて距離比例個数NLを算出するようにしてもよい。
【0085】
変位比例個数算出部85と物理量算出部86の動作は、第1の実施の形態と同じである(図19ステップS16,S17)。
こうして、本実施の形態においても、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0086】
[第4の実施の形態]
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。図15で説明したような算出結果の折り返しが生じると、算出結果X,Yの平均値に変化が生じる。そこで、符号付与部84は、算出結果X,Yの平均値の変化に応じて個数算出部83−1,83−2の最新の算出結果に正負の符号を付与するようにしてもよい。本実施の形態においても、物理量センサの構成は第1の実施の形態と同様であるので、図1、図6の符号を用いて説明する。
【0087】
図20は本実施の形態の演算部8の動作を示すフローチャートである。移動平均値算出部81−1,81−2と周期補正部82−1,82−2と個数算出部83−1,83−2の動作は、第1の実施の形態と同じである(図20ステップS10,S11,S12)。
【0088】
本実施の形態の符号付与部84は、現時刻t以前に求めた算出結果Xの最新の平均値がこの値よりも前に求めた算出結果Xの平均値に対して所定のしきい値以内であり、かつ現時刻t以前に求めた算出結果Yの最新の平均値がこの値よりも前に求めた算出結果Xの平均値に対して所定のしきい値以内である場合、算出結果X,Yのそれぞれの平均値に変化無しと判断して(図20ステップS26においてNO)、個数算出部83−1,83−2の最新の算出結果X,Yにそれぞれ正の符号を付与した符号付き算出結果X’,Y’を出力する(図20ステップS27)。
【0089】
また、符号付与部84は、現時刻t以前に求めた算出結果Xの最新の平均値がこの値よりも前に求めた算出結果Xの平均値に対して所定のしきい値を超えて変化したり、現時刻t以前に求めた算出結果Yの最新の平均値がこの値よりも前に求めた算出結果Xの平均値に対して所定のしきい値を超えて変化したりした場合(図20ステップS26においてYES)、個数算出部83−1,83−2の最新の算出結果X,Yのうち大きい方の算出結果に正の符号を付与し、小さい方の算出結果に負の符号を付与した符号付き算出結果X’,Y’を出力する(図20ステップS28)。
【0090】
符号付き算出結果X’,Y’は、記憶部80に格納される。符号付与部84は、以上のような符号付与処理を、個数算出部83−1,83−2によってMHPの数X,Yが算出される度に行う。
変位比例個数算出部85と物理量算出部86の動作は、第1の実施の形態と同じである(図20ステップS16,S17)。
こうして、本実施の形態においても、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0091】
[第5の実施の形態]
次に、本発明の第5の実施の形態について説明する。第1〜第4の実施の形態では、MHP波形を含む電気信号を検出する検出手段としてフォトダイオード2−1,2−2と電流−電圧変換増幅部5−1,5−2とを用いたが、フォトダイオードを使用することなくMHP波形を抽出することも可能である。図21は本発明の第5の実施の形態に係る物理量センサの構成を示すブロック図であり、図1と同様の構成には同一の符号を付してある。本実施の形態の物理量センサは、第1の実施の形態のフォトダイオード2−1,2−2と電流−電圧変換増幅部5−1,5−2の代わりに、第1、第2の検出手段として電圧検出部11−1,11−2を用いるものである。
【0092】
電圧検出部11−1,11−2は、それぞれ半導体レーザ1−1,1−2の端子間電圧、すなわちアノード−カソード間電圧を検出して増幅する。半導体レーザ1−1,1−2から放射されたレーザ光と物体10からの戻り光とによって干渉が生じるとき、半導体レーザ1−1,1−2の端子間電圧には、MHP波形が現れる。したがって、半導体レーザ1−1,1−2の端子間電圧からMHP波形を抽出することが可能である。
【0093】
フィルタ部6−1,6−2は、それぞれ電圧検出部11−1,11−2の出力電圧から搬送波を除去する。物理量センサのその他の構成は、第1〜第4の実施の形態と同じである。こうして、本実施の形態では、フォトダイオードを使用することなくMHP波形を抽出することができ、第1〜第4の実施の形態と比較して物理量センサの部品を削減することができ、物理量センサのコストを低減することができる。また、本実施の形態では、フォトダイオードを使用しないので、外乱光による影響を除去することができる。
【0094】
なお、第1〜第5の実施の形態において少なくとも信号抽出部7−1,7−2と演算部8とは、例えばCPU、メモリおよびインタフェースを備えたコンピュータとこれらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。CPUは、メモリに格納されたプログラムに従って第1〜第5の実施の形態で説明した処理を実行する。
【0095】
また、第1〜第5の実施の形態では、半導体レーザ1−1と1−2の最小発振波長λaが同一で、かつ半導体レーザ1−1と1−2の最大発振波長λbが同一の場合について説明したが、これに限るものではなく、図22に示すように、半導体レーザ1−1と1−2の間で最小発振波長λa及び最大発振波長λbが異なっていてもよい。図22において、λa1,λb1は半導体レーザ1−1の最小発振波長、最大発振波長、λa2,λb2は半導体レーザ1−2の最小発振波長、最大発振波長である。この場合、λa1×λb1/{4×(λb1−λa1)}とλa2×λb2/{4×(λb2−λa2)}とが常に同一の固定値であればよい。この場合、式(6)、式(8)〜式(11)におけるλa,λbとしては、λa1,λb1を使ってもよいし、λa2,λb2を使ってもよい。
【0096】
また、第1〜第5の実施の形態では、半導体レーザ1−1,1−2を三角波状に発振させていたが、これに限るものではなく、図23に示すように半導体レーザ1−1,1−2を鋸波状に発振させてもよい。すなわち、本発明では、少なくとも第1の発振期間P1が繰り返し存在するように半導体レーザ1−1を動作させ、半導体レーザ1−1と発振波長の増減が逆になるように半導体レーザ1−2を動作させればよい。図22の場合と同様にλa1≠λa2、λb1≠λb2でもよいし、図25の場合と同様にλa1=λa2、λb1=λb2でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明は、半導体レーザから放射したレーザ光と物体からの戻り光との自己結合効果によって生じる干渉の情報から、物体との距離や物体の速度等の物理量を計測する技術に適用することができる。
【符号の説明】
【0098】
1−1,1−2…半導体レーザ、2−1,2−2…フォトダイオード、3−1,3−2…レンズ、4−1,4−2…レーザドライバ、5−1,5−2…電流−電圧変換増幅部、6−1,6−2…フィルタ部、7−1,7−2…信号抽出部、8…演算部、9…表示部、10…物体、11−1,11−2…電圧検出部、80…記憶部、81−1,81−2…移動平均値算出部、82−1,82−2…周期補正部、83−1,83−2…個数算出部、84,84a…符号付与部、85…変位比例個数算出部、86…物理量算出部、87…物理量候補値算出部、88…状態判定部、89…物理量確定部、90…距離比例個数算出部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象に第1のレーザ光を放射する第1の半導体レーザと、
前記測定対象に前記第1のレーザ光と平行に第2のレーザ光を放射する第2の半導体レーザと、
少なくとも発振波長が連続的に単調増加する発振期間が繰り返し存在するように前記第1の半導体レーザを動作させる第1の発振波長変調手段と、
前記第1の半導体レーザと発振波長の増減が逆になるように前記第2の半導体レーザを動作させる第2の発振波長変調手段と、
前記第1のレーザ光とこのレーザ光の前記測定対象からの戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形を含む電気信号を検出する第1の検出手段と、
前記第2のレーザ光とこのレーザ光の前記測定対象からの戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形を含む電気信号を検出する第2の検出手段と、
前記第1、第2の検出手段の出力信号に含まれる干渉波形の周期をそれぞれ干渉波形が入力される度に計測する第1、第2の信号抽出手段と、
この第1、第2の信号抽出手段の計測結果からそれぞれ単位時間当たりの干渉波形の数を算出する第1、第2の個数算出手段と、
この第1、第2の個数算出手段の算出結果のうち大きい方の算出結果とこの算出結果よりも過去の算出結果を用いて算出された、前記半導体レーザと測定対象との平均距離に比例した干渉波形の数である距離比例個数の2倍数との大小関係、前記第1、第2の個数算出手段の算出結果の増減方向の一致不一致、あるいは前記第1、第2の個数算出手段の算出結果の平均値の変化に応じて、前記第1、第2の個数算出手段の算出結果に正負の符号を付与する符号付与手段と、
この符号付与手段によって符号が与えられた最新の符号付き算出結果と過去の符号付き算出結果の平均値との差の絶対値を算出することにより、前記測定対象の変位に比例した干渉波形の数である変位比例個数を求める変位比例個数算出手段と、
前記符号付与手段によって符号が与えられた符号付き算出結果と前記変位比例個数算出手段が算出した変位比例個数に基づいて前記測定対象の物理量を算出する物理量算出手段とを備えることを特徴とする物理量センサ。
【請求項2】
測定対象に第1のレーザ光を放射する第1の半導体レーザと、
前記測定対象に前記第1のレーザ光と平行に第2のレーザ光を放射する第2の半導体レーザと、
少なくとも発振波長が連続的に単調増加する発振期間が繰り返し存在するように前記第1の半導体レーザを動作させる第1の発振波長変調手段と、
前記第1の半導体レーザと発振波長の増減が逆になるように前記第2の半導体レーザを動作させる第2の発振波長変調手段と、
前記第1のレーザ光とこのレーザ光の前記測定対象からの戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形を含む電気信号を検出する第1の検出手段と、
前記第2のレーザ光とこのレーザ光の前記測定対象からの戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形を含む電気信号を検出する第2の検出手段と、
前記第1、第2の検出手段の出力信号に含まれる干渉波形の周期をそれぞれ干渉波形が入力される度に計測する第1、第2の信号抽出手段と、
この第1、第2の信号抽出手段の計測結果からそれぞれ単位時間当たりの干渉波形の数を算出する第1、第2の個数算出手段と、
この第1、第2の個数算出手段の算出結果に基づいて前記測定対象の物理量の候補値を算出する物理量候補値算出手段と、
前記第1、第2の個数算出手段の算出結果の増減方向の一致不一致に基づいて前記測定対象の状態を判定する状態判定手段と、
前記状態判定手段の判定結果に基づいて前記候補値の選定を行い、前記測定対象の物理量を確定する物理量確定手段とを備えることを特徴とする物理量センサ。
【請求項3】
請求項1記載の物理量センサにおいて、
前記符号付与手段は、前記第1、第2の個数算出手段の算出結果のうち大きい方の算出結果が前記距離比例個数の2倍数よりも小さい場合、前記第1の個数算出手段の算出結果の時間変化に対して前記第2の個数算出手段の算出結果の時間変化が逆方向の場合、あるいは前記第1、第2の個数算出手段の算出結果の平均値に変化が無い場合、前記第1、第2の個数算出手段の算出結果にそれぞれ正の符号を付与した符号付き算出結果を出力し、前記第1、第2の個数算出手段の算出結果のうち大きい方の算出結果が前記距離比例個数の2倍数以上の場合、前記第1の個数算出手段の算出結果の時間変化に対して前記第2の個数算出手段の算出結果の時間変化が同方向の場合、あるいは前記第1、第2の個数算出手段の算出結果の平均値が変化した場合、前記第1、第2の個数算出手段の算出結果のうち大きい方の算出結果に正の符号を付与し、小さい方の算出結果に負の符号を付与した符号付き算出結果を出力し、
前記物理量算出手段は、前記第1、第2の半導体レーザの最小発振波長および最大発振波長と前記符号付与手段によって符号が与えられた符号付き算出結果に基づいて前記測定対象との距離を算出し、前記第1、第2の半導体レーザの平均発振波長と前記変位比例個数算出手段が算出した変位比例個数に基づいて前記測定対象の速度を算出することを特徴とする物理量センサ。
【請求項4】
請求項2記載の物理量センサにおいて、
前記物理量候補値算出手段は、前記測定対象の状態を微小変位状態あるいは前記微小変位状態よりも動きが急な変位状態のいずれかであるとし、前記測定対象が微小変位状態と仮定した場合と変位状態と仮定した場合の各々について、前記第1、第2の半導体レーザの最小発振波長および最大発振波長と前記第1、第2の個数算出手段の算出結果から前記測定対象との距離の候補値と前記測定対象の速度の候補値を算出し、
前記状態判定手段は、前記第1の個数算出手段の算出結果の時間変化に対して前記第2の個数算出手段の算出結果の時間変化が逆方向の場合、前記測定対象が微小変位状態にあると判定し、前記第1の個数算出手段の算出結果の時間変化に対して前記第2の個数算出手段の算出結果の時間変化が同方向の場合、前記測定対象が変位状態にあると判定し、
前記物理量確定手段は、前記測定対象が微小変位状態と判定された場合、前記測定対象が微小変位状態と仮定して算出された前記距離および速度の候補値を前記測定対象の物理量として確定し、前記測定対象が変位状態と判定された場合、前記測定対象が変位状態と仮定して算出された前記距離および速度の候補値を前記測定対象の物理量として確定することを特徴とする物理量センサ。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の物理量センサにおいて、
さらに、前記第1、第2の信号抽出手段の計測結果を記憶する記憶手段と、
前記第1の信号抽出手段によって計測された補正対象の干渉波形の周期の直前に計測され前記記憶手段に記憶された所定数の干渉波形の周期の移動平均値と、前記第1の信号抽出手段によって計測された補正対象の干渉波形の周期の直後に計測され前記記憶手段に記憶された所定数の干渉波形の周期の移動平均値とを前記第1の信号抽出手段の計測結果について算出する第1の移動平均値算出手段と、
前記第2の信号抽出手段によって計測された補正対象の干渉波形の周期の直前に計測され前記記憶手段に記憶された所定数の干渉波形の周期の移動平均値と、前記第2の信号抽出手段によって計測された補正対象の干渉波形の周期の直後に計測され前記記憶手段に記憶された所定数の干渉波形の周期の移動平均値とを前記第2の信号抽出手段の計測結果について算出する第2の移動平均値算出手段と、
前記第1の信号抽出手段によって計測された補正対象の干渉波形の周期と前記第1の移動平均値算出手段によって算出された移動平均値とを比較することにより、前記第1の信号抽出手段によって計測された補正対象の干渉波形の周期を補正し、この補正の結果に従って前記記憶手段に記憶された周期を更新する第1の周期補正手段と、
前記第2の信号抽出手段によって計測された補正対象の干渉波形の周期と前記第2の移動平均値算出手段によって算出された移動平均値とを比較することにより、前記第2の信号抽出手段によって計測された補正対象の干渉波形の周期を補正し、この補正の結果に従って前記記憶手段に記憶された周期を更新する第2の周期補正手段とを備え、
前記第1、第2の個数算出手段は、前記第1、第2の信号抽出手段の計測結果から単位時間当たりの干渉波形の数を算出する代わりに、前記第1、第2の周期補正手段によって補正された干渉波形の周期からそれぞれ単位時間当たりの干渉波形の数を算出することを特徴とする物理量センサ。
【請求項6】
少なくとも発振波長が連続的に単調増加する発振期間が繰り返し存在するように第1の半導体レーザを動作させる第1の発振手順と、
前記第1の半導体レーザと発振波長の増減が逆になるように第2の半導体レーザを動作させる第2の発振手順と、
前記第1の半導体レーザから放射された第1のレーザ光とこのレーザ光の測定対象からの戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形を含む電気信号を検出する第1の検出手順と、
前記第2の半導体レーザから放射された第2のレーザ光とこのレーザ光の前記測定対象からの戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形を含む電気信号を検出する第2の検出手順と、
前記第1、第2の検出手順で得られた出力信号に含まれる干渉波形の周期をそれぞれ干渉波形が入力される度に計測する第1、第2の信号抽出手順と、
この第1、第2の信号抽出手順の計測結果からそれぞれ単位時間当たりの干渉波形の数を算出する第1、第2の個数算出手順と、
この第1、第2の個数算出手順の算出結果のうち大きい方の算出結果とこの算出結果よりも過去の算出結果を用いて算出された、前記半導体レーザと測定対象との平均距離に比例した干渉波形の数である距離比例個数の2倍数との大小関係、前記第1、第2の個数算出手順の算出結果の増減方向の一致不一致、あるいは前記第1、第2の個数算出手順の算出結果の平均値の変化に応じて、前記第1、第2の個数算出手順の算出結果に正負の符号を付与する符号付与手順と、
この符号付与手順によって符号が与えられた最新の符号付き算出結果と過去の符号付き算出結果の平均値との差の絶対値を算出することにより、前記測定対象の変位に比例した干渉波形の数である変位比例個数を求める変位比例個数算出手順と、
前記符号付与手順によって符号が与えられた符号付き算出結果と前記変位比例個数算出手順で算出した変位比例個数に基づいて前記測定対象の物理量を算出する物理量算出手順とを備えることを特徴とする物理量計測方法。
【請求項7】
少なくとも発振波長が連続的に単調増加する発振期間が繰り返し存在するように第1の半導体レーザを動作させる第1の発振手順と、
前記第1の半導体レーザと発振波長の増減が逆になるように第2の半導体レーザを動作させる第2の発振手順と、
前記第1の半導体レーザから放射された第1のレーザ光とこのレーザ光の測定対象からの戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形を含む電気信号を検出する第1の検出手順と、
前記第2の半導体レーザから放射された第2のレーザ光とこのレーザ光の前記測定対象からの戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形を含む電気信号を検出する第2の検出手順と、
前記第1、第2の検出手順で得られた出力信号に含まれる干渉波形の周期をそれぞれ干渉波形が入力される度に計測する第1、第2の信号抽出手順と、
この第1、第2の信号抽出手順の計測結果からそれぞれ単位時間当たりの干渉波形の数を算出する第1、第2の個数算出手順と、
この第1、第2の個数算出手順の算出結果に基づいて前記測定対象の物理量の候補値を算出する物理量候補値算出手順と、
前記第1、第2の個数算出手順の算出結果の増減方向の一致不一致に基づいて前記測定対象の状態を判定する状態判定手順と、
前記状態判定手順の判定結果に基づいて前記候補値の選定を行い、前記測定対象の物理量を確定する物理量確定手順とを備えることを特徴とする物理量計測方法。
【請求項8】
請求項6記載の物理量計測方法において、
前記符号付与手順は、前記第1、第2の個数算出手順の算出結果のうち大きい方の算出結果が前記距離比例個数の2倍数よりも小さい場合、前記第1の個数算出手順の算出結果の時間変化に対して前記第2の個数算出手順の算出結果の時間変化が逆方向の場合、あるいは前記第1、第2の個数算出手順の算出結果の平均値に変化が無い場合、前記第1、第2の個数算出手順の算出結果にそれぞれ正の符号を付与した符号付き算出結果を出力し、前記第1、第2の個数算出手順の算出結果のうち大きい方の算出結果が前記距離比例個数の2倍数以上の場合、前記第1の個数算出手順の算出結果の時間変化に対して前記第2の個数算出手順の算出結果の時間変化が同方向の場合、あるいは前記第1、第2の個数算出手順の算出結果の平均値が変化した場合、前記第1、第2の個数算出手順の算出結果のうち大きい方の算出結果に正の符号を付与し、小さい方の算出結果に負の符号を付与した符号付き算出結果を出力し、
前記物理量算出手順は、前記第1、第2の半導体レーザの最小発振波長および最大発振波長と前記符号付与手順によって符号が与えられた符号付き算出結果に基づいて前記測定対象との距離を算出し、前記第1、第2の半導体レーザの平均発振波長と前記変位比例個数算出手順で算出した変位比例個数に基づいて前記測定対象の速度を算出することを特徴とする物理量計測方法。
【請求項9】
請求項7記載の物理量計測方法において、
前記物理量候補値算出手順は、前記測定対象の状態を微小変位状態あるいは前記微小変位状態よりも動きが急な変位状態のいずれかであるとし、前記測定対象が微小変位状態と仮定した場合と変位状態と仮定した場合の各々について、前記第1、第2の半導体レーザの最小発振波長および最大発振波長と前記第1、第2の個数算出手順の算出結果から前記測定対象との距離の候補値と前記測定対象の速度の候補値を算出し、
前記状態判定手順は、前記第1の個数算出手順の算出結果の時間変化に対して前記第2の個数算出手順の算出結果の時間変化が逆方向の場合、前記測定対象が微小変位状態にあると判定し、前記第1の個数算出手順の算出結果の時間変化に対して前記第2の個数算出手順の算出結果の時間変化が同方向の場合、前記測定対象が変位状態にあると判定し、
前記物理量確定手順は、前記測定対象が微小変位状態と判定した場合、前記測定対象が微小変位状態と仮定して算出した前記距離および速度の候補値を前記測定対象の物理量として確定し、前記測定対象が変位状態と判定した場合、前記測定対象が変位状態と仮定して算出した前記距離および速度の候補値を前記測定対象の物理量として確定することを特徴とする物理量計測方法。
【請求項10】
請求項6乃至9のいずれか1項に記載の物理量計測方法において、
さらに、前記第1、第2の信号抽出手順の計測結果を記憶手段に記憶させる記憶手順と、
前記第1の信号抽出手順で計測した補正対象の干渉波形の周期の直前に計測され前記記憶手段に記憶された所定数の干渉波形の周期の移動平均値と、前記第1の信号抽出手順で計測した補正対象の干渉波形の周期の直後に計測され前記記憶手段に記憶された所定数の干渉波形の周期の移動平均値とを前記第1の信号抽出手順の計測結果について算出する第1の移動平均値算出手順と、
前記第2の信号抽出手順で計測した補正対象の干渉波形の周期の直前に計測され前記記憶手段に記憶された所定数の干渉波形の周期の移動平均値と、前記第2の信号抽出手順で計測した補正対象の干渉波形の周期の直後に計測され前記記憶手段に記憶された所定数の干渉波形の周期の移動平均値とを前記第2の信号抽出手順の計測結果について算出する第2の移動平均値算出手順と、
前記第1の信号抽出手順で計測した補正対象の干渉波形の周期と前記第1の移動平均値算出手順で算出した移動平均値とを比較することにより、前記第1の信号抽出手順で計測した補正対象の干渉波形の周期を補正し、この補正の結果に従って前記記憶手段に記憶された周期を更新する第1の周期補正手順と、
前記第2の信号抽出手順で計測した補正対象の干渉波形の周期と前記第2の移動平均値算出手順で算出した移動平均値とを比較することにより、前記第2の信号抽出手順で計測した補正対象の干渉波形の周期を補正し、この補正の結果に従って前記記憶手段に記憶された周期を更新する第2の周期補正手順とを備え、
前記第1、第2の個数算出手順は、前記第1、第2の信号抽出手順の計測結果から単位時間当たりの干渉波形の数を算出する代わりに、前記第1、第2の周期補正手順で補正された干渉波形の周期からそれぞれ単位時間当たりの干渉波形の数を算出することを特徴とする物理量計測方法。
【請求項1】
測定対象に第1のレーザ光を放射する第1の半導体レーザと、
前記測定対象に前記第1のレーザ光と平行に第2のレーザ光を放射する第2の半導体レーザと、
少なくとも発振波長が連続的に単調増加する発振期間が繰り返し存在するように前記第1の半導体レーザを動作させる第1の発振波長変調手段と、
前記第1の半導体レーザと発振波長の増減が逆になるように前記第2の半導体レーザを動作させる第2の発振波長変調手段と、
前記第1のレーザ光とこのレーザ光の前記測定対象からの戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形を含む電気信号を検出する第1の検出手段と、
前記第2のレーザ光とこのレーザ光の前記測定対象からの戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形を含む電気信号を検出する第2の検出手段と、
前記第1、第2の検出手段の出力信号に含まれる干渉波形の周期をそれぞれ干渉波形が入力される度に計測する第1、第2の信号抽出手段と、
この第1、第2の信号抽出手段の計測結果からそれぞれ単位時間当たりの干渉波形の数を算出する第1、第2の個数算出手段と、
この第1、第2の個数算出手段の算出結果のうち大きい方の算出結果とこの算出結果よりも過去の算出結果を用いて算出された、前記半導体レーザと測定対象との平均距離に比例した干渉波形の数である距離比例個数の2倍数との大小関係、前記第1、第2の個数算出手段の算出結果の増減方向の一致不一致、あるいは前記第1、第2の個数算出手段の算出結果の平均値の変化に応じて、前記第1、第2の個数算出手段の算出結果に正負の符号を付与する符号付与手段と、
この符号付与手段によって符号が与えられた最新の符号付き算出結果と過去の符号付き算出結果の平均値との差の絶対値を算出することにより、前記測定対象の変位に比例した干渉波形の数である変位比例個数を求める変位比例個数算出手段と、
前記符号付与手段によって符号が与えられた符号付き算出結果と前記変位比例個数算出手段が算出した変位比例個数に基づいて前記測定対象の物理量を算出する物理量算出手段とを備えることを特徴とする物理量センサ。
【請求項2】
測定対象に第1のレーザ光を放射する第1の半導体レーザと、
前記測定対象に前記第1のレーザ光と平行に第2のレーザ光を放射する第2の半導体レーザと、
少なくとも発振波長が連続的に単調増加する発振期間が繰り返し存在するように前記第1の半導体レーザを動作させる第1の発振波長変調手段と、
前記第1の半導体レーザと発振波長の増減が逆になるように前記第2の半導体レーザを動作させる第2の発振波長変調手段と、
前記第1のレーザ光とこのレーザ光の前記測定対象からの戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形を含む電気信号を検出する第1の検出手段と、
前記第2のレーザ光とこのレーザ光の前記測定対象からの戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形を含む電気信号を検出する第2の検出手段と、
前記第1、第2の検出手段の出力信号に含まれる干渉波形の周期をそれぞれ干渉波形が入力される度に計測する第1、第2の信号抽出手段と、
この第1、第2の信号抽出手段の計測結果からそれぞれ単位時間当たりの干渉波形の数を算出する第1、第2の個数算出手段と、
この第1、第2の個数算出手段の算出結果に基づいて前記測定対象の物理量の候補値を算出する物理量候補値算出手段と、
前記第1、第2の個数算出手段の算出結果の増減方向の一致不一致に基づいて前記測定対象の状態を判定する状態判定手段と、
前記状態判定手段の判定結果に基づいて前記候補値の選定を行い、前記測定対象の物理量を確定する物理量確定手段とを備えることを特徴とする物理量センサ。
【請求項3】
請求項1記載の物理量センサにおいて、
前記符号付与手段は、前記第1、第2の個数算出手段の算出結果のうち大きい方の算出結果が前記距離比例個数の2倍数よりも小さい場合、前記第1の個数算出手段の算出結果の時間変化に対して前記第2の個数算出手段の算出結果の時間変化が逆方向の場合、あるいは前記第1、第2の個数算出手段の算出結果の平均値に変化が無い場合、前記第1、第2の個数算出手段の算出結果にそれぞれ正の符号を付与した符号付き算出結果を出力し、前記第1、第2の個数算出手段の算出結果のうち大きい方の算出結果が前記距離比例個数の2倍数以上の場合、前記第1の個数算出手段の算出結果の時間変化に対して前記第2の個数算出手段の算出結果の時間変化が同方向の場合、あるいは前記第1、第2の個数算出手段の算出結果の平均値が変化した場合、前記第1、第2の個数算出手段の算出結果のうち大きい方の算出結果に正の符号を付与し、小さい方の算出結果に負の符号を付与した符号付き算出結果を出力し、
前記物理量算出手段は、前記第1、第2の半導体レーザの最小発振波長および最大発振波長と前記符号付与手段によって符号が与えられた符号付き算出結果に基づいて前記測定対象との距離を算出し、前記第1、第2の半導体レーザの平均発振波長と前記変位比例個数算出手段が算出した変位比例個数に基づいて前記測定対象の速度を算出することを特徴とする物理量センサ。
【請求項4】
請求項2記載の物理量センサにおいて、
前記物理量候補値算出手段は、前記測定対象の状態を微小変位状態あるいは前記微小変位状態よりも動きが急な変位状態のいずれかであるとし、前記測定対象が微小変位状態と仮定した場合と変位状態と仮定した場合の各々について、前記第1、第2の半導体レーザの最小発振波長および最大発振波長と前記第1、第2の個数算出手段の算出結果から前記測定対象との距離の候補値と前記測定対象の速度の候補値を算出し、
前記状態判定手段は、前記第1の個数算出手段の算出結果の時間変化に対して前記第2の個数算出手段の算出結果の時間変化が逆方向の場合、前記測定対象が微小変位状態にあると判定し、前記第1の個数算出手段の算出結果の時間変化に対して前記第2の個数算出手段の算出結果の時間変化が同方向の場合、前記測定対象が変位状態にあると判定し、
前記物理量確定手段は、前記測定対象が微小変位状態と判定された場合、前記測定対象が微小変位状態と仮定して算出された前記距離および速度の候補値を前記測定対象の物理量として確定し、前記測定対象が変位状態と判定された場合、前記測定対象が変位状態と仮定して算出された前記距離および速度の候補値を前記測定対象の物理量として確定することを特徴とする物理量センサ。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の物理量センサにおいて、
さらに、前記第1、第2の信号抽出手段の計測結果を記憶する記憶手段と、
前記第1の信号抽出手段によって計測された補正対象の干渉波形の周期の直前に計測され前記記憶手段に記憶された所定数の干渉波形の周期の移動平均値と、前記第1の信号抽出手段によって計測された補正対象の干渉波形の周期の直後に計測され前記記憶手段に記憶された所定数の干渉波形の周期の移動平均値とを前記第1の信号抽出手段の計測結果について算出する第1の移動平均値算出手段と、
前記第2の信号抽出手段によって計測された補正対象の干渉波形の周期の直前に計測され前記記憶手段に記憶された所定数の干渉波形の周期の移動平均値と、前記第2の信号抽出手段によって計測された補正対象の干渉波形の周期の直後に計測され前記記憶手段に記憶された所定数の干渉波形の周期の移動平均値とを前記第2の信号抽出手段の計測結果について算出する第2の移動平均値算出手段と、
前記第1の信号抽出手段によって計測された補正対象の干渉波形の周期と前記第1の移動平均値算出手段によって算出された移動平均値とを比較することにより、前記第1の信号抽出手段によって計測された補正対象の干渉波形の周期を補正し、この補正の結果に従って前記記憶手段に記憶された周期を更新する第1の周期補正手段と、
前記第2の信号抽出手段によって計測された補正対象の干渉波形の周期と前記第2の移動平均値算出手段によって算出された移動平均値とを比較することにより、前記第2の信号抽出手段によって計測された補正対象の干渉波形の周期を補正し、この補正の結果に従って前記記憶手段に記憶された周期を更新する第2の周期補正手段とを備え、
前記第1、第2の個数算出手段は、前記第1、第2の信号抽出手段の計測結果から単位時間当たりの干渉波形の数を算出する代わりに、前記第1、第2の周期補正手段によって補正された干渉波形の周期からそれぞれ単位時間当たりの干渉波形の数を算出することを特徴とする物理量センサ。
【請求項6】
少なくとも発振波長が連続的に単調増加する発振期間が繰り返し存在するように第1の半導体レーザを動作させる第1の発振手順と、
前記第1の半導体レーザと発振波長の増減が逆になるように第2の半導体レーザを動作させる第2の発振手順と、
前記第1の半導体レーザから放射された第1のレーザ光とこのレーザ光の測定対象からの戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形を含む電気信号を検出する第1の検出手順と、
前記第2の半導体レーザから放射された第2のレーザ光とこのレーザ光の前記測定対象からの戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形を含む電気信号を検出する第2の検出手順と、
前記第1、第2の検出手順で得られた出力信号に含まれる干渉波形の周期をそれぞれ干渉波形が入力される度に計測する第1、第2の信号抽出手順と、
この第1、第2の信号抽出手順の計測結果からそれぞれ単位時間当たりの干渉波形の数を算出する第1、第2の個数算出手順と、
この第1、第2の個数算出手順の算出結果のうち大きい方の算出結果とこの算出結果よりも過去の算出結果を用いて算出された、前記半導体レーザと測定対象との平均距離に比例した干渉波形の数である距離比例個数の2倍数との大小関係、前記第1、第2の個数算出手順の算出結果の増減方向の一致不一致、あるいは前記第1、第2の個数算出手順の算出結果の平均値の変化に応じて、前記第1、第2の個数算出手順の算出結果に正負の符号を付与する符号付与手順と、
この符号付与手順によって符号が与えられた最新の符号付き算出結果と過去の符号付き算出結果の平均値との差の絶対値を算出することにより、前記測定対象の変位に比例した干渉波形の数である変位比例個数を求める変位比例個数算出手順と、
前記符号付与手順によって符号が与えられた符号付き算出結果と前記変位比例個数算出手順で算出した変位比例個数に基づいて前記測定対象の物理量を算出する物理量算出手順とを備えることを特徴とする物理量計測方法。
【請求項7】
少なくとも発振波長が連続的に単調増加する発振期間が繰り返し存在するように第1の半導体レーザを動作させる第1の発振手順と、
前記第1の半導体レーザと発振波長の増減が逆になるように第2の半導体レーザを動作させる第2の発振手順と、
前記第1の半導体レーザから放射された第1のレーザ光とこのレーザ光の測定対象からの戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形を含む電気信号を検出する第1の検出手順と、
前記第2の半導体レーザから放射された第2のレーザ光とこのレーザ光の前記測定対象からの戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形を含む電気信号を検出する第2の検出手順と、
前記第1、第2の検出手順で得られた出力信号に含まれる干渉波形の周期をそれぞれ干渉波形が入力される度に計測する第1、第2の信号抽出手順と、
この第1、第2の信号抽出手順の計測結果からそれぞれ単位時間当たりの干渉波形の数を算出する第1、第2の個数算出手順と、
この第1、第2の個数算出手順の算出結果に基づいて前記測定対象の物理量の候補値を算出する物理量候補値算出手順と、
前記第1、第2の個数算出手順の算出結果の増減方向の一致不一致に基づいて前記測定対象の状態を判定する状態判定手順と、
前記状態判定手順の判定結果に基づいて前記候補値の選定を行い、前記測定対象の物理量を確定する物理量確定手順とを備えることを特徴とする物理量計測方法。
【請求項8】
請求項6記載の物理量計測方法において、
前記符号付与手順は、前記第1、第2の個数算出手順の算出結果のうち大きい方の算出結果が前記距離比例個数の2倍数よりも小さい場合、前記第1の個数算出手順の算出結果の時間変化に対して前記第2の個数算出手順の算出結果の時間変化が逆方向の場合、あるいは前記第1、第2の個数算出手順の算出結果の平均値に変化が無い場合、前記第1、第2の個数算出手順の算出結果にそれぞれ正の符号を付与した符号付き算出結果を出力し、前記第1、第2の個数算出手順の算出結果のうち大きい方の算出結果が前記距離比例個数の2倍数以上の場合、前記第1の個数算出手順の算出結果の時間変化に対して前記第2の個数算出手順の算出結果の時間変化が同方向の場合、あるいは前記第1、第2の個数算出手順の算出結果の平均値が変化した場合、前記第1、第2の個数算出手順の算出結果のうち大きい方の算出結果に正の符号を付与し、小さい方の算出結果に負の符号を付与した符号付き算出結果を出力し、
前記物理量算出手順は、前記第1、第2の半導体レーザの最小発振波長および最大発振波長と前記符号付与手順によって符号が与えられた符号付き算出結果に基づいて前記測定対象との距離を算出し、前記第1、第2の半導体レーザの平均発振波長と前記変位比例個数算出手順で算出した変位比例個数に基づいて前記測定対象の速度を算出することを特徴とする物理量計測方法。
【請求項9】
請求項7記載の物理量計測方法において、
前記物理量候補値算出手順は、前記測定対象の状態を微小変位状態あるいは前記微小変位状態よりも動きが急な変位状態のいずれかであるとし、前記測定対象が微小変位状態と仮定した場合と変位状態と仮定した場合の各々について、前記第1、第2の半導体レーザの最小発振波長および最大発振波長と前記第1、第2の個数算出手順の算出結果から前記測定対象との距離の候補値と前記測定対象の速度の候補値を算出し、
前記状態判定手順は、前記第1の個数算出手順の算出結果の時間変化に対して前記第2の個数算出手順の算出結果の時間変化が逆方向の場合、前記測定対象が微小変位状態にあると判定し、前記第1の個数算出手順の算出結果の時間変化に対して前記第2の個数算出手順の算出結果の時間変化が同方向の場合、前記測定対象が変位状態にあると判定し、
前記物理量確定手順は、前記測定対象が微小変位状態と判定した場合、前記測定対象が微小変位状態と仮定して算出した前記距離および速度の候補値を前記測定対象の物理量として確定し、前記測定対象が変位状態と判定した場合、前記測定対象が変位状態と仮定して算出した前記距離および速度の候補値を前記測定対象の物理量として確定することを特徴とする物理量計測方法。
【請求項10】
請求項6乃至9のいずれか1項に記載の物理量計測方法において、
さらに、前記第1、第2の信号抽出手順の計測結果を記憶手段に記憶させる記憶手順と、
前記第1の信号抽出手順で計測した補正対象の干渉波形の周期の直前に計測され前記記憶手段に記憶された所定数の干渉波形の周期の移動平均値と、前記第1の信号抽出手順で計測した補正対象の干渉波形の周期の直後に計測され前記記憶手段に記憶された所定数の干渉波形の周期の移動平均値とを前記第1の信号抽出手順の計測結果について算出する第1の移動平均値算出手順と、
前記第2の信号抽出手順で計測した補正対象の干渉波形の周期の直前に計測され前記記憶手段に記憶された所定数の干渉波形の周期の移動平均値と、前記第2の信号抽出手順で計測した補正対象の干渉波形の周期の直後に計測され前記記憶手段に記憶された所定数の干渉波形の周期の移動平均値とを前記第2の信号抽出手順の計測結果について算出する第2の移動平均値算出手順と、
前記第1の信号抽出手順で計測した補正対象の干渉波形の周期と前記第1の移動平均値算出手順で算出した移動平均値とを比較することにより、前記第1の信号抽出手順で計測した補正対象の干渉波形の周期を補正し、この補正の結果に従って前記記憶手段に記憶された周期を更新する第1の周期補正手順と、
前記第2の信号抽出手順で計測した補正対象の干渉波形の周期と前記第2の移動平均値算出手順で算出した移動平均値とを比較することにより、前記第2の信号抽出手順で計測した補正対象の干渉波形の周期を補正し、この補正の結果に従って前記記憶手段に記憶された周期を更新する第2の周期補正手順とを備え、
前記第1、第2の個数算出手順は、前記第1、第2の信号抽出手順の計測結果から単位時間当たりの干渉波形の数を算出する代わりに、前記第1、第2の周期補正手順で補正された干渉波形の周期からそれぞれ単位時間当たりの干渉波形の数を算出することを特徴とする物理量計測方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2011−106816(P2011−106816A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−258771(P2009−258771)
【出願日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】
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