説明

物理量検出回路およびそれを備える物理量センサ装置

【課題】デジタル物理量信号の検波精度を向上させる。
【解決手段】物理量センサ10は、外部から与えられた物理量に応じてセンサ信号S10を出力する。アナログ/デジタル変換器104は、アナログセンサ信号Ssncをデジタルセンサ信号Dsncに変換する。デジタルフィルタ100は、アナログ/デジタル変換器104からのデジタルセンサ信号Dsncのうち所定のカットオフ周波数よりも高い周波数成分を減衰させる。検波信号生成器105は、正弦波信号に対応するデジタル検波信号Ddetを生成する。乗算器106は、デジタルフィルタ100を通過したデジタルセンサ信号Dpsにデジタル検波信号Ddetを乗算する。これにより、デジタル物理量信号Dphyが検波される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、外部から与えられた物理量を検知する物理量センサに用いられる物理量検出回路およびそれを備える物理量センサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、物理量(例えば、角速度や加速度など)を検出可能な物理量センサ装置は、デジタルカメラの手ぶれ検出,移動体(航空機,自動車,ロボット,船舶など)の姿勢制御,ミサイルや宇宙船の誘導などの多種多様な技術分野において利用されている。
【0003】
一般的に、物理量センサ装置は、外部から与えられた物理量に応じてセンサ信号を出力する物理量センサと、物理量センサからのセンサ信号に基づいて物理量センサが検知した物理量を検出する物理量検出回路とを備える。
【0004】
近年、回路の微細化技術の発展により、物理量検出回路のデジタル化が進みつつある。特許第2728300号公報(特許文献1)には、デジタル回路によって構成された2軸角速度・加速度センサの信号処理回路が開示されている。この信号処理回路では、アナログ/デジタル変換回路がセンサからセンサ信号をデジタルセンサ信号に変換する一方で、正弦波信号発生回路がデジタル正弦波信号を生成し、デジタル乗算回路がデジタルセンサ信号とデジタル正弦波信号とを乗算する。これにより、物理量センサが検知した物理量に対応するデジタル物理量信号が得られる。
【0005】
また、特表2004−526942号公報(特許文献2)に開示された容量性センサ装置では、サンプリング周波数をアナログセンサ信号の搬送周波数の1/n(nは整数)としてアナログセンサ信号をアンダーサンプリングした後に、アナログ/デジタル変換を実行することにより、デジタル物理量信号を得ている。
【特許文献1】特許2728300号公報
【特許文献2】特表2004−526942号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、デジタルセンサ信号にノイズ成分が重畳されたまま検波処理を実行しているので、デジタル物理量信号を精度良く検出することが困難であった。同様に、特許文献2においても、アナログセンサ信号にノイズ成分が重畳されているので、デジタルセンサ信号を精度良く取得することが困難であった。
【0007】
そこで、この発明は、デジタルセンサ信号のノイズ成分を減衰させることによりデジタル物理量信号を精度良く検波することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の1つの局面に従うと、物理量検出回路は、外部から与えられた物理量に応じてセンサ信号を出力する物理量センサに用いられる物理量検出回路であって、上記センサ信号をデジタルセンサ信号に変換するアナログ/デジタル変換回路と、上記アナログ/デジタル変換回路によって得られたデジタルセンサ信号のうち所定のカットオフ周波数よりも高い周波数成分を減衰させるデジタルフィルタと、上記デジタルフィルタを通過したデジタルセンサ信号に正弦波信号に対応するデジタル検波信号を乗算して上記物理量に対応するデジタル物理量信号を検波する乗算回路とを備える。
【0009】
上記物理量検出回路では、検波処理が実行される前にデジタルセンサ信号のノイズ成分を減衰させることによりデジタル物理量信号の検波精度を向上させることができる。
【0010】
好ましくは、上記物理量検出回路は、上記デジタルフィルタと上記乗算回路との間に介在するダウンサンプリング処理回路をさらに備え、上記アナログ/デジタル変換回路は、上記センサ信号をオーバーサンプリングして上記デジタルセンサ信号に変換し、上記ダウンサンプリング処理回路は、上記デジタルフィルタからのデジタルセンサ信号のサンプリング周波数を減少させて上記乗算回路へ供給する。
【0011】
上記物理量検出回路では、デジタル検波信号を構成する正弦波データの個数を少なくすることができるので、正弦波データを格納するための記憶領域を縮小することができるとともに、乗算回路の処理負担を軽減することができる。また、デジタル物理量信号のサンプリング周波数も減少するので、乗算回路の後段にデジタルフィルタを設ける場合、そのデジタルフィルタの回路規模および消費電力を低減することができる。
【0012】
好ましくは、上記物理量検出回路は、上記乗算回路からのデジタル物理量信号のサンプリング周波数を増加させるインターポレーションフィルタと、上記インターポレーションフィルタからのデジタル物理量信号をアナログ物理量信号に変換するデジタル/アナログ変換回路と、上記デジタル/アナログ変換回路によって得られたアナログ物理量信号のうち所定のカットオフ周波数よりも高い周波数成分を減衰させるアナログローパスフィルタとをさらに備える。
【0013】
上記物理量検出回路では、アナログ物理量信号を出力することができる。さらに、インターポレーションフィルタを設けることにより、アナログローパスフィルタの回路規模を低減することができる。
【0014】
好ましくは、上記デジタルフィルタのタップ係数は、変更可能である。
【0015】
上記物理量検出回路では、デジタルフィルタのタップ係数を変更することによってデジタルセンサ信号の位相を調整することができる。これにより、デジタルセンサ信号とデジタル検波信号との位相ずれを補正することができるので、デジタル物理量信号の検波精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、デジタル物理量信号を精度良く検波することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、この発明の実施の形態を図面を参照して詳しく説明する。なお、図中同一または相当部分には同一の符号を付しその説明は繰り返さない。
【0018】
(実施形態1)
図1は、この発明の実施形態1による物理量センサ装置の構成を示す。この物理量センサ装置は、物理量センサ10と、駆動回路11と、物理量検出回路12とを備える。
【0019】
〔物理量センサ〕
物理量センサ10は、所定周波数を有する駆動信号Sdrvが駆動回路11から供給されるとともに、外部から与えられた物理量(例えば、角速度,加速度など)に応じてセンサ信号S10を出力する。センサ信号S10の周波数は、駆動信号Sdrvの周波数に対応する。例えば、センサ信号S10の中心周波数(搬送周波数)は、駆動信号Sdrvの周波数に相当する。なお、ここでは、物理量センサ10は、音叉型角速度センサであるものとする。
【0020】
物理量センサ10は、音叉本体10aと、駆動用圧電素子Pdrvと、振動検出用圧電素子Poscと、角速度検出用圧電素子PDa,PDbとを有する。音叉本体10aは、それぞれが中央部で直角にねじられた一対の音叉片(駆動用・検出用)と、音叉片の各々の一端を連結する連結部と、回転軸となるように連結部に設けられた支持ピンとを有する。駆動用圧電素子Pdrvは、駆動回路11からの駆動信号Sdrvの周波数および振幅に応じて駆動用の音叉片を振動させる。これにより、駆動用の音叉片と検出用の音叉片とが互いに共振する。この音叉振動によって、振動検出用圧電素子Poscには、電荷が発生する(すなわち、振動信号Soscが発生する)。また、回転角速度が発生すると、角速度検出用圧電素子PDa,PDbには、回転角速度(コリオリ力)に応じた電荷が発生する(すなわち、センサ信号S10が発生する)。
【0021】
〔駆動回路〕
駆動回路11は、駆動信号Sdrvを物理量センサ10に供給する。また、駆動回路11は、物理量センサ10からの振動信号Soscに応じて駆動信号Sdrvの周波数および振幅を調整する。駆動回路11では、モニタアンプ11aは、物理量センサ10からの振動信号Soscを電圧に変換し、自動利得制御増幅器(AGC)11bは、駆動アンプ11cに供給される電圧が一定値になるように、自己の増幅利得を変化させる。駆動アンプ11cは、自動利得制御増幅器11bの出力に応じて駆動信号Sdrvの周波数および振幅を制御する。このように、振動信号Soscに応じて駆動信号Sdrvが調整されることにより、物理量センサ10の最大振動振幅および振動周波数が一定に保たれる。
【0022】
〔物理量検出回路〕
物理量検出回路12は、物理量センサ10からのセンサ信号S10に基づいて物理量センサ10が検知した物理量を検出する。物理量検出回路12は、波形整形回路101と、逓倍回路102と、入力アンプ103と、アナログ/デジタル変換器(A/D)104と、デジタルフィルタ100と、検波信号生成器105と、乗算器106と、デジタルフィルタ107とを含む。
【0023】
波形整形回路101は、駆動信号Sdrvを方形波に変換し、基準クロックCKrefとして出力する。例えば、波形整形回路101は、コンパレータやインバータによって構成される。基準クロックCKrefの周波数は、駆動信号Sdrvの周波数(すなわち、センサ信号S10の周波数)と実質的に同一である。
【0024】
逓倍回路102は、波形整形回路101からの基準クロックCKrefを逓倍し、基準クロックCKrefの周波数よりも高い周波数(ここでは、基準クロックCKrefの周波数の2倍以上の周波数)を有する動作クロックCKaを生成する。例えば、逓倍回路102はPLL(Phase Locked Loop)によって構成される。
【0025】
入力アンプ103は、物理量センサ10からのセンサ信号S10を電圧に変換し、アナログセンサ信号Ssncとして出力する。
【0026】
アナログ/デジタル変換器104は、逓倍回路102からの動作クロックCKaに同期してアナログセンサ信号Ssncをサンプリングし、サンプリングしたアナログ値(振幅値)をデジタル値に変換する。すなわち、アナログ/デジタル変換器104は、アナログセンサ信号Ssncをオーバーサンプリングする。このようにして、アナログセンサ信号Ssncは、複数のデジタル値によって構成されたデジタルセンサ信号Dsncに変換される。
【0027】
デジタルフィルタ100は、逓倍回路102からの動作クロックCKaに同期して動作し、アナログ/デジタル変換器104からのデジタルセンサ信号Dsncのうち所定のカットオフ周波数よりも高い周波数成分を減衰させ、低周波数成分をデジタルセンサ信号Dpsとして出力する。例えば、デジタルフィルタ100は、IIR(Infinite Impulse Response)型デジタルフィルタや、FIR(Finite Impulse Response)型デジタルフィルタである。デジタルフィルタ100の周波数特性(例えば、カットオフ周波数)および位相特性は、デジタルフィルタ100のタップ係数によって定められる。
【0028】
検波信号生成器105は、逓倍回路102からの動作クロックCKaに同期して動作し、波形整形回路101からの基準クロックCKrefの遷移エッジ(ここでは、立ち上がりエッジ)に応答して正弦波信号に対応するデジタル検波信号Ddetを生成する。デジタル検波信号Ddetは、複数の正弦波データによって構成される。複数の正弦波データは、それぞれ、所定クロック(例えば、動作クロックCKa)に同期して所定周波数の正弦波信号(例えば、駆動信号Sdrv)をサンプリングすることによって得られる複数のアナログ値(振幅値)に対応する(図2参照)。例えば、複数の正弦波データは、正弦関数で表現される理想的な振幅値を示す。
【0029】
乗算器106は、デジタルフィルタ100からのデジタルセンサ信号Dpsに検波信号生成器105によって生成されたデジタル検波信号Ddetを乗算する。これにより、デジタル物理量信号Dphy(物理量センサ10が検知した物理量に対応する信号)が検波される。
【0030】
デジタルフィルタ107は、逓倍回路102からの動作クロックCKaに同期して動作し、ノイズ除去等のために乗算器106によって検波されたデジタル物理量信号Dphyのうち低周波数成分のみをデジタル物理量信号D12として通過させる。
【0031】
〔動作〕
次に、図2を参照しつつ、図1に示した物理量検出回路12による動作について説明する。
【0032】
波形整形回路101は、駆動信号Sdrvを基準クロックCKrefに変換し、逓倍回路102は、基準クロックCKrefに基づいて動作クロックCKaを生成する。
【0033】
アナログ/デジタル変換器104は、動作クロックCKaに同期してアナログセンサ信号Ssncをデジタル値P0,P1,P2,・・・・に変換する。デジタルフィルタ100は、デジタルセンサ信号Dsncにフィルタリング処理を施し、デジタルセンサ信号Dsncのデジタル値P0,P1,P2,・・・・をデジタル値Q0,Q1,Q2,・・・・に変換する。このようにして、デジタルセンサ信号Dsncのノイズ成分を減衰させる。
【0034】
検波信号生成器105は、基準クロックCKrefの遷移エッジに応答して正弦波データD0,D1,D2,・・・を順番に出力する。乗算器106は、デジタル値Q0,Q1,Q2,・・・・に正弦波データD0,D1,D2,・・・・を乗算する。
【0035】
以上のように、検波処理が実行される前にデジタルセンサ信号Dsncのノイズ成分を減衰させることにより、デジタル物理量信号の検波精度を向上させることができる。
【0036】
(実施形態2)
一般的に、デジタルフィルタのカットオフ周波数とデジタルフィルタに供給されるデジタル信号のサンプリング周波数との差が大きい程、デジタルフィルタを構成するタップの数を多くする必要がある。そのため、デジタルフィルタに供給されるデジタル信号のサンプリング周波数を低くすることが好ましい。
【0037】
図3は、この発明の実施形態2による物理量センサ装置の構成を示す。この物理量センサ装置は、図1に示した物理量検出回路12に代えて、物理量検出回路22を備える。物理量検出回路22は、図1に示した構成に加えて、分周回路102bと、ダウンサンプリング処理回路200とを備える。その他の構成は、図1と同様である。
【0038】
分周回路102bは、逓倍回路102からの動作クロックCKaを分周し、動作クロックCKaの周波数よりも低い周波数を有する動作クロックCKbを生成する。
【0039】
ダウンサンプリング処理回路200は、逓倍回路102からの動作クロックCKaに同期して動作し、デジタルフィルタ100からのデジタルセンサ信号Dpsに対してダウンサンプリング処理(デジタル値の間引きなど)を実行し、動作クロックCKaに対応するデジタルセンサ信号Dpsを動作クロックCKbに対応するデジタルセンサ信号Ddcに変換する。すなわち、ダウンサンプリング処理回路200は、デジタルセンサ信号Dpsのサンプリング周波数を減少させる。
【0040】
検波信号生成器105およびデジタルフィルタ107は、分周回路102bからの動作クロックCKbに同期して動作する。乗算器106は、ダウンサンプリング処理回路200からのデジタルセンサ信号Ddcにデジタル検波信号Ddetを乗算する。
【0041】
例えば、図4のように、ダウンサンプリング処理回路200は、デジタルフィルタ100を通過したデジタルセンサ信号Dpsからデジタル値Q1,Q3,Q5,・・・・を間引きして、デジタルセンサ信号Ddcを生成する。検波信号生成器105は、基準クロックCKrefの遷移エッジに応答して、正弦波データD0,D2,D4,・・・・を順番に出力する。乗算器106は、デジタル値Q0,Q2,Q4,・・・・に正弦波データD0,D2,D4,・・・・を乗算する。
【0042】
以上のように、ダウンサンプリング処理回路200によってデジタルセンサ信号Dpsのサンプリング周波数を減少させることにより、デジタルフィルタ107に供給されるデジタル物理量信号Dphyのサンプリング周波数も減少させることができる。これにより、図1に示した物理量検出回路12よりも、デジタルフィルタ107の回路規模および消費電力を低減することができる。
【0043】
さらに、デジタル検波信号Ddetを構成する正弦波データの個数を少なくすることができるので、正弦波データを格納するための記憶領域(例えば、図示されていないメモリ)を縮小することができるとともに、乗算器106の処理負担を軽減することができる。
【0044】
(実施形態3)
図5は、この発明の実施形態3による物理量センサ装置の構成を示す。この物理量センサ装置は、図3に示した物理量検出回路22に代えて、物理量検出回路32を備える。物理量検出回路32は、図3に示した構成に加えて、インターポレーションフィルタ301と、デジタル/アナログ変換器(D/A)302と、アナログローパスフィルタ303とを含む。その他の構成は、図3と同様である。
【0045】
インターポレーションフィルタ301は、逓倍回路102からの動作クロックCKaに同期して動作し、デジタルフィルタ107からのデジタル物理量信号D12にインターポレーション処理(デジタル値の補間や直線近似など)を実行し、動作クロックCKbに対応するデジタル物理量信号D12を動作クロックCKaに対応するデジタル物理量信号に変換する。すなわち、インターポレーションフィルタ301は、デジタル物理量信号D12のサンプリング周波数を増加させる。なお、ここでは、インターポレーションフィルタ301におけるアップサンプリング比は、ダウンサンプリング処理回路200におけるダウンサンプリング比に対応するものとする。例えば、ダウンサンプリング比が“128:2”である場合、アップサンプリング比は“2:128”である。
【0046】
デジタル/アナログ変換器302は、動作クロックCKaに同期して動作し、インターポレーションフィルタ301からのデジタル物理量信号をアナログ物理量信号Sphyに変換する。
【0047】
アナログローパスフィルタ303は、デジタル/アナログ変換器302からのアナログ物理量信号Sphyのうち所定のカットオフ周波数よりも高い周波数成分を減衰させ、低周波成分をアナログ物理量信号S32として出力する。
【0048】
図6のように、デジタル/アナログ変換器302によって得られるアナログ物理量信号Sphyには、デジタル/アナログ変換器302に供給されるデジタル物理量信号のサンプリング周波数fspの整数倍の周波数を有するイメージ信号が含まれている。そのため、アナログローパスフィルタ303のカットオフ周波数fcaとデジタル/アナログ変換器302に供給されるデジタル物理量信号のサンプリング周波数fspとの差が小さい程、アナログローパスフィルタ303の減衰特性を急峻にする(アナログローパスフィルタ303の減衰傾度を大きくする)ためにアナログローパスフィルタ303の次数を高くする必要がある。一方、この実施形態による物理量検出回路32では、インターポレーションフィルタ301によってデジタル物理量信号のサンプリング周波数fspを増加させるので、アナログローパスフィルタ303の負担を軽減することができ、その結果、アナログローパスフィルタ303の回路規模を低減することができる。
【0049】
以上のように、デジタル物理量信号D12だけでなくアナログ物理量信号S32も出力することができる。さらに、インターポレーションフィルタ301を設けることにより、アナログローパスフィルタ303の回路規模を低減することができる。
【0050】
なお、インターポレーションフィルタ301におけるアップサンプリング比は、ダウンサンプリング処理回路200におけるダウンサンプリング比に対応していなくても良い。
また、物理量検出回路32は、ダウンサンプリング処理回路200を備えていなくても良い。
【0051】
(実施形態4)
図7は、この発明の実施形態4による物理量センサ装置の構成を示す。この物理量センサ装置は、図3に示した物理量検出回路22に代えて、物理量検出回路42を備える。物理量検出回路42は、図3に示したデジタルフィルタ100に代えて、デジタルフィルタ400を含む。その他の構成は、図3と同様である。
【0052】
デジタルフィルタ400は、逓倍回路102からの動作クロックCKaに同期して動作し、アナログ/デジタル変換器104からのデジタルセンサ信号Dsncのうち所定のカットオフ周波数よりも高い周波数成分を減衰させ、低周波数成分をデジタルセンサ信号Dpsとして出力する。また、デジタルフィルタ400のタップ係数は、外部制御CTRLによって変更可能である。すなわち、デジタルフィルタ400の周波数特性および位相特性は、外部制御CTRLによって変更可能である。
【0053】
次に、図8を参照しつつ、図7に示したデジタルフィルタ400の特性変化について説明する。なお、“fref”は、基準クロックCKrefの周波数(すなわち、センサ信号S10の中心周波数)を示す。
【0054】
デジタルフィルタ400のカットオフ周波数が“fc0”から“fc1”に増加するようにデジタルフィルタ400のタップ係数を変更すると、デジタルフィルタ400における位相進み量は、“Z0”から“Z1”に減少する。このように、デジタルフィルタ400のタップ係数の変化に応じて、デジタルフィルタ400における位相進み量も変化する。
【0055】
以上のように、デジタルフィルタ400における位相進み量を変更することによって、デジタルセンサ信号Dpsの位相を調整することができる。これにより、デジタルセンサ信号Dpsとデジタル検波信号Ddetとの位相ずれを補正することができるので、デジタル物理量信号の検波精度を向上させることができる。
【0056】
なお、物理量検出回路42は、ダウンサンプリング処理回路200を備えていなくても良い。また、物理量検出回路42は、図5に示したインターポレーションフィルタ301,デジタル/アナログ変換器302,アナログローパスフィルタ303をさらに備えていても良い。
【0057】
(その他の実施形態)
なお、以上の各実施形態において、デジタルフィルタ100,107,400は、デジタルローパスフィルタであっても良いし、デジタルバンドパスフィルタであっても良い。
【0058】
また、物理量センサ10は、音叉型に限らず、円柱型,正三角柱型,正四角柱型,リング型や、その他の形状であっても良い。また、図9のように、物理量センサ10は、静電容量式加速度センサであっても良い。物理量センサ10は、固定部10bと、可動部10cと、可動電極Pma,Pmbと、検出電極Pfa,Pfbと、差動増幅器10dとを有する。可動部10cは、加速度に応じて変位するように固定部10bに連結される。可動電極Pma,Pmbは、可動部10cに配置される。検出電極Pfa,Pfbは、それぞれ、可動電極Pma,Pmbに対向するように、固定部10bに配置される。すなわち、可動電極Pma,検出電極Pfaによって容量素子Caが構成され、可動電極Pmb,検出電極Pfbによって容量素子Cbが構成される。また、容量素子Ca,Cbには、それぞれ、発振回路11dからの駆動信号Sdrvが供給される。差動増幅器10dは、検出電極Pfa,Pfbのそれぞれに発生する電荷量の差に対応するセンサ信号S10を出力する。加速度が発生すると、可動部10cの変位に起因して容量素子Caの静電容量および容量素子Cbの静電容量のうち一方が増加し他方が減少する。これにより、検出電極Pfa,Pfbのそれぞれにおける電荷量に差が生じ、この差に対応するセンサ信号S10が出力される。
【産業上の利用可能性】
【0059】
この発明は、デジタル物理量信号を精度良く検波することができるので、移動体,携帯電話,デジタルカメラ,ゲーム機などに用いられる物理量センサ(例えば、音叉型角速度センサや静電容量式加速度センサなど)に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】この発明の実施形態1による物理量センサ装置の構成を示すブロック図。
【図2】図1に示した物理量検出回路による動作について説明するためのタイミングチャート。
【図3】この発明の実施形態2による物理量センサ装置の構成を示すブロック図。
【図4】図3に示した物理量検出回路による動作について説明するためのタイミングチャート。
【図5】この発明の実施形態3による物理量センサ装置の構成を示すブロック図。
【図6】図5に示したデジタル/アナログ変換器によって得られるアナログ物理量信号について説明するための周波数分布図。
【図7】この発明の実施形態4による物理量センサ装置の構成を示すブロック図。
【図8】図6に示したデジタルフィルタの周波数特性および位相特性について説明するための図。
【図9】物理量センサの変形例を示すブロック図。
【符号の説明】
【0061】
10 物理量センサ
11 駆動回路
12,22,32,42 物理量検出回路
101 波形整形回路
102 逓倍回路
103 入力アンプ
104 アナログ/デジタル変換器
105 検波信号生成器
106 乗算器
107 デジタルフィルタ
100 デジタルフィルタ
102b 分周回路
200 ダウンサンプリング処理回路
301 インターポレーションフィルタ
302 デジタル/アナログ変換器
303 アナログローパスフィルタ
400 デジタルフィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から与えられた物理量に応じてセンサ信号を出力する物理量センサに用いられる物理量検出回路であって、
前記センサ信号をデジタルセンサ信号に変換するアナログ/デジタル変換回路と、
前記アナログ/デジタル変換回路によって得られたデジタルセンサ信号のうち所定のカットオフ周波数よりも高い周波数成分を減衰させるデジタルフィルタと、
前記デジタルフィルタを通過したデジタルセンサ信号に正弦波信号に対応するデジタル検波信号を乗算して前記物理量に対応するデジタル物理量信号を検波する乗算回路とを備える
ことを特徴とする物理量検出回路。
【請求項2】
請求項1において、
前記デジタルフィルタと前記乗算回路との間に介在するダウンサンプリング処理回路をさらに備え、
前記アナログ/デジタル変換回路は、前記センサ信号をオーバーサンプリングして前記デジタルセンサ信号に変換し、
前記ダウンサンプリング処理回路は、前記デジタルフィルタからのデジタルセンサ信号のサンプリング周波数を減少させて前記乗算回路へ供給する
ことを特徴とする物理量検出回路。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記乗算回路からのデジタル物理量信号のサンプリング周波数を増加させるインターポレーションフィルタと、
前記インターポレーションフィルタからのデジタル物理量信号をアナログ物理量信号に変換するデジタル/アナログ変換回路と、
前記デジタル/アナログ変換回路によって得られたアナログ物理量信号のうち所定のカットオフ周波数よりも高い周波数成分を減衰させるアナログローパスフィルタとをさらに備える
ことを特徴とする物理量検出回路。
【請求項4】
請求項1,2,3のいずれか1項において、
前記デジタルフィルタのタップ係数は、変更可能である
ことを特徴とする物理量検出回路。
【請求項5】
請求項1,2,3,4のいずれか1項に記載の物理量検出回路と、
前記物理量センサと、
所定周波数を有する駆動信号を前記物理量センサに供給する駆動回路とを備え、
前記センサ信号の周波数は、前記駆動信号の周波数に対応する
ことを特徴とする物理量センサ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−258009(P2009−258009A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−109215(P2008−109215)
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】