物理量検出装置並びに物理量検出装置の制御方法、異常診断システム及び異常診断方法
【課題】より信頼性の高い異常診断が可能な物理量検出装置並びに物理量検出装置の制御方法、異常診断システム及び異常診断方法を提供すること。
【解決手段】角速度検出装置1(物理量検出装置の一例)は、検出電極に、角速度(物理量の一例)の大きさに応じた検出信号とともに駆動信号(方形波電圧信号22)に基づく振動の漏れ信号を発生させるジャイロセンサー素子100(物理量検出素子の一例)と、駆動信号を生成する駆動回路20と、駆動信号に同期した検波信号34に基づいて、検出信号と漏れ信号を含む被検波信号36に対して同期検波を行う同期検波回路350と、制御信号64に基づいて、同期検波により漏れ信号の少なくとも一部が出力されるように、被検波信号36に対する検波信号34の立ち上がり及び立ち下がりの少なくとも一方の相対的なタイミングを変更する位相変更回路352と、を含む。
【解決手段】角速度検出装置1(物理量検出装置の一例)は、検出電極に、角速度(物理量の一例)の大きさに応じた検出信号とともに駆動信号(方形波電圧信号22)に基づく振動の漏れ信号を発生させるジャイロセンサー素子100(物理量検出素子の一例)と、駆動信号を生成する駆動回路20と、駆動信号に同期した検波信号34に基づいて、検出信号と漏れ信号を含む被検波信号36に対して同期検波を行う同期検波回路350と、制御信号64に基づいて、同期検波により漏れ信号の少なくとも一部が出力されるように、被検波信号36に対する検波信号34の立ち上がり及び立ち下がりの少なくとも一方の相対的なタイミングを変更する位相変更回路352と、を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物理量検出装置並びに物理量検出装置の制御方法、異常診断システム及び異常診断方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、様々な物理量を検出する物理量検出装置が知られている。例えば、物理量として角速度を検出する角速度検出装置が知られており、角速度検出装置を搭載し、角速度検出装置により検出された角速度に基づいて所定の制御を行う様々な電子機器やシステムが広く利用されている。例えば、自動車の車両走行制御システムでは角速度検出装置により検出された角速度に基づいて、自動車の横滑りを防止する走行制御が行なわれている。
【0003】
これらの電子機器やシステムでは、角速度検出装置が故障すると誤った制御が行われるので、故障している場合には警告ランプを点灯する等の対策が行われており、角速度検出装置の故障診断を行うための種々の技術が提案されている。例えば、特許文献1では、振動子の検出手段からの少なくとも1つの出力信号にオフセット信号を重畳することにより、当該検出手段の断線や短絡を検出することができる自己診断回路を有する振動ジャイロ装置が提案されている。また、特許文献2では、プライマリーチェック時に、センサーエレメントに回転疑似信号等の検査信号を加えた状態での角速度出力の信号レベルに基づいて異常診断を行う角速度センサーの異常診断装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3520821号公報
【特許文献2】特開2001−304871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載された振動ジャイロ装置では、異常検出する手段として差動演算手段の前段にオフセット信号を発生させ、オフセット信号に起因する信号成分に基づいて検出手段の異常を検知している。しかし、この方法では差動増幅手段以降の回路異常については検出できるが、差動増幅手段以前の回路異常または、素子の異常を捕らえることはできなかった。
【0006】
一方、特許文献2に記載された角速度センサーの異常診断装置によれば、センサーエレメントに回転疑似信号等の検査信号を加えた状態での角速度出力の信号レベルに基づいて異常診断を行うので素子異常も検出可能とも考えられる。しかし、特許文献2に記載された角速度センサーの異常診断装置では、センサーエレメントに対して、通常の角速度検出時には存在しない回転疑似信号等の検査信号を入力しているため、通常の角速度検出時に発生する素子異常を厳密には検出することができず、信頼性に問題がある。
【0007】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明のいくつかの態様によれば、より信頼性の高い異常診断が可能な物理量検出装置並びに物理量検出装置の制御方法、異常診断システム及び異常診断方法を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明は、所定の物理量を検出する物理量検出装置であって、駆動電極と、検出電極と、を有し、前記駆動電極に供給される駆動信号に基づいて振動することにより、前記検出電極に、前記物理量の大きさに応じた検出信号とともに前記駆動信号に基づく振動の漏れ信号を発生させる物理量検出素子と、前記駆動信号を生成する駆動部と、前記駆動信号に同期した検波信号に基づいて、前記検出信号と前記漏れ信号を含む被検波信号に対して同期検波を行う同期検波部と、制御信号に基づいて、前記同期検波により前記漏れ信号の少なくとも一部が出力されるように、前記被検波信号に対する前記検波信号の立ち上がり及び立ち下がりの少なくとも一方の相対的なタイミングを変更するタイミング変更部と、を含むことを特徴とする。
【0009】
所定の物理量は、例えば、角速度、加速度、地磁気、圧力等である。
【0010】
タイミング変更部は、検波信号の立ち上がり及び立ち下がりの少なくとも一方のタイミングを変更することにより前記相対的なタイミングを変更するようにしてもよいし、被検波信号の立ち上がり及び立ち下がりの少なくとも一方のタイミングを変更することにより前記相対的なタイミングを変更するようにしてもよい。
【0011】
検波信号は、例えば方形波(矩形波)でも正弦波でもよく、立ち上がりとは検波信号が極小から極大まで変化する際に所定の閾値と一致するタイミングであり、立ち下がりとは検波信号が極大から極小まで変化する際に所定の閾値と一致するタイミングである。
【0012】
本発明では、被検波信号に対する検波信号の立ち上がり及び立ち下がりの少なくとも一方の相対的なタイミングを変更して同期検波することにより、漏れ信号の少なくとも一部が検出される。一方、物理量検出素子の振動状態が変動すれば検出信号の量と漏れ信号の量がともに変動する。従って、本発明によれば、同期検波部の出力信号に基づいて、回路異常だけでなく、素子異常についても診断することができる。
【0013】
また、本発明では、異常診断に漏れ信号を利用している。この漏れ信号は駆動振動の振動バランスによって発生するため、駆動振動の微妙な変化は漏れ信号にも現れる。コリオリ力を発生させる元となる駆動振動の変化を漏れ信号で検出することで、素子を含めた異常を異常診断時に確実に検出することができる。そのため、より信頼性の高い異常診断が可能である。
【0014】
(2)この物理量検出装置において、前記タイミング変更部は、前記制御信号に基づき、前記検波信号と前記被検波信号との位相差を変更するようにしてもよい。
【0015】
例えば、検波信号の位相を変更することにより検波信号と被検波信号との位相差を変更するようにしてもよいし、被検波信号の位相を変更することにより検波信号と被検波信号との位相差を変更するようにしてもよい。
【0016】
本発明では、タイミング変更部は、検波信号と被検波信号との位相差を変更することにより、被検波信号に対する検波信号の立ち上がり及び立ち下がりの少なくとも一方の相対的なタイミングを変更する。従って、本発明によれば、同期検波により漏れ信号の少なくとも一部が検出されるので、同期検波部の出力信号に基づいて、素子異常を診断することができる。
【0017】
(3)この物理量検出装置において、前記タイミング変更部は、前記制御信号に基づき、前記検波信号のデューティー比を変更するようにしてもよい。
【0018】
本発明では、タイミング変更部は、検波信号のデューティー比を変更することにより、被検波信号に対する検波信号の立ち上がり及び立ち下がりの少なくとも一方の相対的なタイミングを変更する。従って、本発明によれば、同期検波により漏れ信号の少なくとも一部が検出されるので、同期検波部の出力信号に基づいて、素子異常を診断することができる。
【0019】
(4)この物理量検出装置において、前記タイミング変更部は、前記相対的なタイミングの変更量が調整可能であるようにしてもよい。
【0020】
例えば、同期検波により検出される漏れ信号の量が所定量となるように当該相対的なタイミングの変更量をあらかじめ調整して不揮発性のメモリーに記憶させておいてもよい。
【0021】
一般に、製造ばらつき等により、物理量検出素子毎に、検出電極に発生する漏れ信号の大きさが異なる。本発明では、被検波信号に対する検波信号の立ち上がり及び立ち下がりの少なくとも一方の相対的なタイミングの変更量が調整可能であるので、物理量検出素子の特性に応じて、同期検波により検出される漏れ信号の量が一定になるように調整することができる。従って、本発明によれば、物理量検出素子の特性ばらつきの影響を低減させることができるので、異常診断の精度を向上させることができる。
【0022】
(5)この物理量検出装置は、前記同期検波部の出力信号に基づいて、当該物理量検出装置の異常の有無を判定する異常判定部を含むようにしてもよい。
【0023】
本発明によれば、異常判定部により当該物理量検出装置の異常の有無が判定されるので、異常判定部の出力信号をモニターすれば、当該物理量検出装置の異常の有無を直接的に認識することができる。
【0024】
(6)この物理量検出装置において、前記物理量は、角速度であってもよい。
【0025】
(7)本発明は、上記のいずれかの物理量検出装置と、当該物理量検出装置に前記制御信号を供給し、当該物理量検出装置が前記同期検波部の出力信号に基づいて生成した信号を受け取り、当該信号に基づいて当該物理量検出装置の異常を診断する異常診断装置と、を含むことを特徴とする物理量検出装置の異常診断システムである。
【0026】
本発明によれば、物理量検出装置の回路異常だけでなく素子異常についても診断することができるとともに、より信頼性の高い異常診断が可能である。
【0027】
(8)本発明は、駆動電極と、検出電極と、を有し、前記駆動電極に供給される駆動信号に基づいて振動することにより、前記検出電極に、所定の物理量の大きさに応じた検出信号とともに前記駆動信号に基づく振動の漏れ信号を発生させる物理量検出素子と、前記駆動信号を生成する駆動部と、前記駆動信号に同期した検波信号に基づいて、前記検出信号と前記漏れ信号を含む被検波信号に対して同期検波を行う同期検波部と、を含む物理量検出装置の制御方法であって、当該物理量検出装置に、前記漏れ信号の少なくとも一部が出力されるように、前記被検波信号に対する前記検波信号の立ち上がり及び立ち下がりの少なくとも一方の相対的なタイミングを変更して同期検波させるステップと、当該物理量検出装置に、前記同期検波部の出力信号に基づいて、前記漏れ信号に応じた信号を生成させるステップと、を含むことを特徴とする。
【0028】
本発明によれば、物理量検出装置の回路異常だけでなく素子異常についても診断することができるとともに、より信頼性の高い異常診断が可能である。
【0029】
(9)本発明は、駆動電極と、検出電極と、を有し、前記駆動電極に供給される駆動信号に基づいて振動することにより、前記検出電極に、所定の物理量の大きさに応じた検出信号とともに前記駆動信号に基づく振動の漏れ信号を発生させる物理量検出素子と、前記駆動信号を生成する駆動部と、前記駆動信号に同期した検波信号に基づいて、前記検出信号と前記漏れ信号を含む被検波信号に対して同期検波を行う同期検波部と、を含む物理量検出装置の制御方法であって、当該物理量検出装置に、前記漏れ信号の少なくとも一部が出力されるように、前記被検波信号に対する前記検波信号の立ち上がり及び立ち下がりの少なくとも一方の相対的なタイミングを変更して同期検波させるステップと、当該物理量検出装置に、前記同期検波部の出力信号に基づいて、当該物理量検出装置の異常の有無を判定させるステップと、を含むことを特徴とする。
【0030】
本発明によれば、物理量検出装置の回路異常だけでなく素子異常についても診断することができるとともに、より信頼性の高い異常診断が可能である。
【0031】
また、本発明によれば、異常判定部の出力信号をモニターすることにより、該物理量検出装置の素子異常を含む異常の有無を直接的に認識することができる。
【0032】
(10)本発明は、駆動電極と、検出電極と、を有し、前記駆動電極に供給される駆動信号に基づいて振動することにより、前記検出電極に、所定の物理量の大きさに応じた検出信号とともに前記駆動信号に基づく振動の漏れ信号を発生させる物理量検出素子と、前記駆動信号を生成する駆動部と、前記駆動信号に同期した検波信号に基づいて、前記検出信号と前記漏れ信号を含む被検波信号に対して同期検波を行う同期検波部と、を含む物理量検出装置の異常診断方法であって、当該物理量検出装置に、前記漏れ信号の少なくとも一部が出力されるように、前記被検波信号に対する前記検波信号の立ち上がり及び立ち下がりの少なくとも一方の相対的なタイミングを変更して同期検波させるステップと、当該物理量検出装置に、前記同期検波部の出力信号に基づいて、前記漏れ信号に応じた信号を生成させるステップと、前記漏れ信号に応じた信号に基づいて、当該物理量検出装置の異常を診断するステップと、を含むことを特徴とする。
【0033】
本発明によれば、物理量検出装置の回路異常だけでなく素子異常についても診断することができるとともに、より信頼性の高い異常診断が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】第1実施形態の角速度検出装置の構成について説明するための図。
【図2】ジャイロセンサー素子の振動片の平面図。
【図3】ジャイロセンサー素子の動作について説明するための図。
【図4】ジャイロセンサー素子の動作について説明するための図。
【図5】位相変更回路の構成の一例を示す図。
【図6】第1実施形態における角速度検出モード(通常動作時)で角速度検出装置が静止している時の信号波形の一例を示す図。
【図7】第1実施形態における角速度検出モード(通常動作時)で角速度検出装置に角速度が加わっている時の信号波形の一例を示す図。
【図8】第1実施形態における異常診断モードの信号波形の一例を示す図。
【図9】第2実施形態の角速度検出装置の構成について説明するための図。
【図10】デューティー比変更回路の構成の一例を示す図。
【図11】第2実施形態における異常診断モードの信号波形の一例を示す図。
【図12】第3実施形態の角速度検出装置の構成について説明するための図。
【図13】第1実施形態の異常診断システムの構成について説明するための図。
【図14】第1実施形態の異常診断方法のフローチャートの一例を示す図。
【図15】第2実施形態の異常診断システムの構成について説明するための図。
【図16】第2実施形態の異常診断方法のフローチャートの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0036】
1.物理量検出装置
以下では、物理量として角速度を検出する物理量検出装置(角速度検出装置)を例にとり説明するが、本発明は、角速度、加速度、地磁気、圧力等の様々な物理量のいずれかを検出することができる装置に適用可能である。
【0037】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態の角速度検出装置の構成について説明するための図である。
【0038】
第1実施形態の角速度検出装置1は、ジャイロセンサー素子100と角速度検出用IC10を含んで構成されている。
【0039】
ジャイロセンサー素子100(本発明における物理量検出素子の一例)は、駆動電極と検出電極が配置された振動片が不図示のパッケージに封止されて構成されている。一般的に、振動片のインピーダンスをできるだけ小さくして発振効率を高めるためにパッケージ内の気密性が確保されている。
【0040】
ジャイロセンサー素子100の振動片は、例えば、水晶(SiO2)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)等の圧電単結晶やジルコン酸チタン酸鉛(PZT)等の圧電セラミックスなどの圧電性材料を用いて構成してもよいし、シリコン半導体の表面の一部に、駆動電極に挟まれた酸化亜鉛(ZnO)、窒化アルミニウム(AlN)等の圧電薄膜を配置した構造であってもよい。
【0041】
また、この振動片は、例えば、T型の2つの駆動振動腕を有するいわゆるダブルT型であってもよいし、音叉型であってもよいし、三角柱、四角柱、円柱状等の形状の音片型であってもよい。
【0042】
本実施形態では、ジャイロセンサー素子100は、水晶を材料とするダブルT型の振動片により構成される。
【0043】
図2は、本実施形態のジャイロセンサー素子100の振動片の平面図である。
【0044】
本実施形態のジャイロセンサー素子100は、Zカットの水晶基板により形成されたダブルT型の振動片を有する。水晶を材料とする振動片は、温度変化に対する共振周波数の変動が極めて小さいので、角速度の検出精度を高めることができるという利点がある。なお、図2におけるX軸、Y軸、Z軸は水晶の軸を示す。
【0045】
図2に示すように、ジャイロセンサー素子100の振動片は、2つの駆動用基部104a、104bからそれぞれ駆動振動腕101a、101bが+Y軸方向及び−Y軸方向に延出している。駆動振動腕101aの側面及び上面にはそれぞれ駆動電極112及び113が形成されており、駆動振動腕101bの側面及び上面にはそれぞれ駆動電極113及び112が形成されている。駆動電極112、113は、それぞれ、図1に示した角速度検出用IC10の外部出力端子11、外部入力端子12を介して駆動回路20に接続される。
【0046】
駆動用基部104a、104bは、それぞれ−X軸方向と+X軸方向に延びる連結腕105a、105bを介して矩形状の検出用基部107に接続されている。
【0047】
検出振動腕102は、検出用基部107から+Y軸方向及び−Y軸方向に延出している。検出振動腕102の上面には検出電極114及び115が形成されており、検出振動腕102の側面には共通電極116が形成されている。検出電極114、115は、それぞれ、図1に示した角速度検出用IC10の外部入力端子13、14を介して検出回路30に接続される。また、共通電極116は接地される。
【0048】
駆動振動腕101a、101bの駆動電極112と駆動電極113との間に駆動信号として交流電圧が与えられると、図3に示すように、駆動振動腕101a、101bは逆圧電効果によって矢印Bのように、2本の駆動振動腕101a、101bの先端が互いに接近と離間を繰り返す屈曲振動(励振振動)をする。
【0049】
なお、本出願では、ジャイロセンサー素子に角速度がかかっていない状態で上述の屈曲振動(励振振動)するときの、各駆動振動腕における振動エネルギーの大きさ又は振動の振幅の大きさが2本の駆動振動腕で等しいとき、駆動振動腕の振動エネルギーのバランスがとれているという。
【0050】
ここで、ジャイロセンサー素子100の振動片にZ軸を回転軸とした角速度が加わると、駆動振動腕101a、101bは、矢印Bの屈曲振動の方向とZ軸の両方に垂直な方向にコリオリの力を得る。その結果、図4に示すように、連結腕105a、105bは矢印Cで示すような振動をする。そして、検出振動腕102は、連結腕105a、105bの振動(矢印C)に連動して矢印Dのように屈曲振動をする。
【0051】
また、駆動振動腕101a、101bの励振振動は、ジャイロセンサー素子の製造バラつきなどによって、駆動振動腕の振動エネルギーのバランスがくずれると、検出振動腕102には漏れ振動を発生させる。この漏れ振動は、コリオリの力に基づいた振動と同様に矢印Dに示す屈曲振動であるが、駆動信号とは同位相である。なお、コリオリ力に伴う振動は駆動振動とは90°ずれた位相である。
【0052】
そして、圧電効果によってこれらの屈曲振動に基づいた交流電荷が、検出振動腕102の検出電極114、115に発生する。ここで、コリオリの力に基づいて発生する交流電荷は、コリオリの力の大きさ(言い換えれば、ジャイロセンサー素子100に加わる角速度の大きさ)に応じて変化する。一方、漏れ振動に基づいて発生する交流電荷は、ジャイロセンサー素子100に加わる角速度の大きさに関係しない。
【0053】
なお、図2の構成では、振動片のバランスを良くするために、検出用基部107を中央に配置し、検出用基部107から+Y軸と−Y軸の両方向に検出振動腕102を延出させている。さらに、検出用基部107から+X軸と−X軸の両方向に連結腕105a、105bを延出させ、連結腕105a、105bのそれぞれから、+Y軸と−Y軸の両方向に駆動振動腕101a、101bを延出させている。
【0054】
また、駆動振動腕101a、101bの先端には、駆動振動腕101a、101bよりも幅の広い矩形状の錘部103が形成されている。駆動振動腕101a、101bの先端に錘部103を形成することにより、コリオリの力を大きくするとともに、所望の共振周波数を比較的短い振動腕で得ることができる。同様に、検出振動腕102の先端には、検出振動腕102よりも幅の広い錘部106が形成されている。検出振動腕102の先端に錘部106を形成することにより、検出電極114、115に発生する交流電荷を大きくすることができる。
【0055】
以上のようにして、ジャイロセンサー素子100は、Z軸を検出軸としてコリオリの力に基づく交流電荷(すなわち、検出信号)と、励振振動の漏れ振動に基づく交流電荷(すなわち、漏れ信号)とを検出電極114、115を介して出力する。
【0056】
ところで、ジャイロセンサー素子100に加わるコリオリ力Fcは次式(1)で計算される。
【0057】
【数1】
【0058】
式(1)において、mは等価質量、vは振動速度、Ωは角速度である。式(1)によると、角速度Ωが一定であっても、等価質量m又は振動速度vが変化すればコリオリ力もそれらに伴って変化する。従って、等価質量m又は振動速度vが変化することにより角速度の検出感度が変化することになる。ジャイロセンサー素子100の振動片が何らかの故障によっての振動状態が変化すると、駆動振動の等価質量m又は振動速度vが変化するので、検出感度が変化することになる。また同時に、漏れ信号のレベルも変化する。すなわち、漏れ信号のレベルと角速度の検出感度の間には相関がある。
【0059】
図1に戻り、角速度検出用IC10は、駆動回路20、検出回路30、基準電源回路40、メモリー50及び制御部60を含んで構成されている。
【0060】
駆動回路20は、I/V変換回路(電流電圧変換回路)210、AC増幅回路220及び振幅調整回路230を含んで構成されている。
【0061】
ジャイロセンサー素子100の振動片に流れた駆動電流は、I/V変換回路210によって交流電圧信号に変換される。
【0062】
I/V変換回路210から出力された交流電圧信号は、AC増幅回路220及び振幅調整回路230に入力される。AC増幅回路220は、入力された交流電圧信号を増幅し、所定の電圧値でクリップさせて方形波電圧信号22を出力する。振幅調整回路230は、I/V変換回路210が出力する交流電圧信号のレベルに応じて、方形波電圧信号22の振幅を変化させ、駆動電流が一定に保持するようにAC増幅回路220を制御する。
【0063】
方形波電圧信号22は、外部出力端子11を介してジャイロセンサー素子100の振動片の駆動電極112に供給される。このように、ジャイロセンサー素子100は図3に示すような所定の駆動振動を継続して励振している。また、駆動電流を一定に保つことにより、ジャイロセンサー素子100の駆動振動腕101a、101bは一定の振動速度を得ることができる。そのため、コリオリ力を発生させる元となる振動速度は一定となり、感度をより安定にすることができる。
【0064】
なお、駆動回路20は、本発明における駆動部として機能する。
【0065】
検出回路30は、チャージアンプ回路310、320、差動増幅回路330、AC増幅回路340、同期検波回路350、平滑回路360、可変増幅回路370、フィルター回路380及び位相変更回路352を含んで構成されている。
【0066】
チャージアンプ回路310には、外部入力端子13を介してジャイロセンサー素子100の振動片の検出電極114から検出信号と漏れ信号からなる交流電荷が入力される。
【0067】
同様に、チャージアンプ回路320には、外部入力端子14を介してジャイロセンサー素子100の振動片の検出電極115から検出信号と漏れ信号からなる交流電荷が入力される。
【0068】
このチャージアンプ回路310及び320は、それぞれ入力された交流電荷を基準電圧Vrefを基準とした交流電圧信号に変換する。なお、基準電圧Vrefは、基準電源回路40により、電源入力端子15から入力された外部電源に基づいて生成される。
【0069】
差動増幅回路330は、チャージアンプ回路310の出力信号とチャージアンプ回路320の出力信号を差動増幅する。差動増幅回路330は、同相成分を消去し、逆相成分を加算増幅するためのものである。
【0070】
AC増幅回路340は、差動増幅回路330の出力信号を増幅する。このAC増幅回路340の出力信号は、検出信号と漏れ信号が含まれており、被検波信号36として同期検波回路350に入力される。
【0071】
同期検波回路350は、被検波信号36に対して検波信号34により同期検波を行う。同期検波回路350は、例えば、検波信号34の電圧レベルが基準電圧Vrefよりも高い時はAC増幅回路340の出力信号を選択し、検波信号34の電圧レベルが基準電圧Vrefよりも低い時はAC増幅回路340の出力信号を基準電圧Vrefに対して反転した信号を選択するスイッチ回路として構成することができる。
【0072】
なお、同期検波回路350は、本発明における同期検波部として機能する。
【0073】
位相変更回路352は、制御信号64が第1の電位(以下、低電位とする)の時は方形波電圧信号22と同じ位相の検波信号34を生成し、制御信号64が第2の電位(以下、高電位とする)の時は方形波電圧信号22に対してメモリー50に記憶された位相変更量52に対応する位相差を有する検波信号34を生成する。
【0074】
位相変更回路352は、例えば、図5に示すように、遅延回路353とスイッチ回路354を用いて実現することができる。スイッチ回路354により、制御信号64が低電位の時は方形波電圧信号22が検波信号34として選択され、制御信号64が高電位の時は、遅延回路353により、位相変更量52に応じて方形波電圧信号22を遅延させた信号が検波信号34として選択される。
【0075】
なお、位相変更回路352は、本発明におけるタイミング変更部として機能する。
【0076】
制御部60は、角速度検出モード(通常動作時)では制御信号64を低電位に固定し、外部入力端子16を介して異常診断モード設定信号62が供給されると、制御信号64を高電位に固定する。この制御部60は、例えば、専用の論理回路や汎用のCPUによって実現することができる。
【0077】
同期検波回路350の出力信号は、平滑回路360で直流電圧信号に平滑化された後、可変増幅回路370に入力される。
【0078】
可変増幅回路370は、平滑回路360の出力信号(直流電圧信号)を、設定された増幅率(又は減衰率)で増幅(又は減衰)して検出感度を調整する。可変増幅回路370で増幅(又は減衰)された信号は、フィルター回路380に入力される。
【0079】
フィルター回路380は、可変増幅回路370の出力信号を使用に適した周波数帯域に制限する回路であり、角速度検出信号32を生成する。そして、角速度検出信号32は外部出力端子17を介して外部に出力される。
【0080】
次に、図1のZ点及びA点〜H点における信号波形の一例を示して、第1実施形態の角速度検出装置1の角速度検出モード(通常動作時)における動作についてより具体的に説明する。
【0081】
図6は、角速度検出装置1が静止している時の信号波形の一例を示す図である。図6において横軸は時間、縦軸は電圧を表す。
【0082】
図6において、角速度検出モード(通常動作時)であるので、制御信号64(Z点の信号)は低電位に固定されている。
【0083】
ジャイロセンサー素子100の振動片が振動している状態では、I/V変換回路210の出力(A点)には、ジャイロセンサー素子100の振動片の駆動電極113からフィードバックされた電流が変換された一定周波数の交流電圧が発生している。すなわち、I/V変換回路210の出力(A点)には、一定周波数の正弦波電圧信号が発生している。
【0084】
そして、AC増幅回路220の出力(B点)には、I/V変換回路210の出力信号(A点の信号)が増幅された、振幅が一定値Vcの方形波電圧信号が発生する。
【0085】
ジャイロセンサー素子100に角速度が加わっていない場合は、ジャイロセンサー素子100の振動片の検出電極114、115には角速度の検出信号は発生しないが、漏れ信号は発生する。
【0086】
ジャイロセンサー素子100の検出電極114及び115に発生した漏れ信号(交流電荷)は、それぞれチャージアンプ回路310及び320により、交流電圧信号に変換される。ここでは、チャージアンプ回路310と320から出力される交流電圧信号は逆相であるとしている。その結果、チャージアンプ回路310及び320の出力(C点及びD点)には、AC増幅回路220の出力信号(B点の信号)と同じ周波数の正弦波電圧信号が発生する。ここで、チャージアンプ回路310の出力信号(C点の信号)の位相は、AC増幅回路220の出力信号(B点の信号)に対して90°ずれている。また、チャージアンプ回路320の出力信号(D点の信号)の位相は、チャージアンプ回路310の出力信号(C点の信号)に対して逆位相である(180°ずれている)。
【0087】
チャージアンプ回路310及び320の出力信号(C点の信号及びD点の信号)は差動増幅回路330により差動増幅され、AC増幅回路340の出力(E点)には、チャージアンプ回路310の出力(C点)に発生する正弦波電圧信号と同じ周波数で同位相の正弦波電圧信号が発生する。AC増幅回路340の出力(E点)に発生するこの正弦波電圧信号は、ジャイロセンサー素子100の振動片の検出電極114、115に発生する漏れ信号に対応する信号である。
【0088】
AC増幅回路340の出力信号(E点の信号)は、同期検波回路350により検波信号34に基づいて同期検波される。ここで、制御信号64(Z点の信号)は低電位に固定されているため、検波信号34(位相変更回路352の出力信号(F点の信号))は、AC増幅回路220が出力する方形波電圧信号(B点の信号)と同じ位相の方形波電圧信号になる。
【0089】
ここで、AC増幅回路340の出力信号(E点の信号)と検波信号34(位相変更回路352の出力信号(F点の信号))は90°だけ位相がずれているので、同期検波回路350の出力信号(G点の信号)において、基準電圧Vrefよりも高い電圧の積分量と基準電圧Vrefよりも低い電圧の積分量が等しくなる。その結果、漏れ信号はキャンセルされ、フィルター回路380の出力(H点)には角速度が0であることを示す基準電圧Vrefの直流電圧信号が発生する。
【0090】
図7は、角速度検出装置1に角速度が加わっている時の信号波形の一例を示す図である。図7において横軸は時間、縦軸は電圧を表す。
【0091】
図7において、角速度検出モード(通常動作時)であるので、制御信号64(Z点の信号)は低電位に固定されている。
【0092】
A点及びB点の各信号波形は図6と同じであり、その説明を省略する。
【0093】
ジャイロセンサー素子100に角速度が加わると、ジャイロセンサー素子100の振動片の検出電極114、115には検出信号と漏れ信号が発生する。この検出信号のレベルはコリオリ力の大きさに応じて変化する。一方、漏れ信号は図6と同じ信号波形になり、キャンセルされる。そのため、図7では検出信号のみに着目した信号波形を示しており、以下の説明においても検出信号のみに着目して説明する。
【0094】
ジャイロセンサー素子100の振動片の検出電極114及び115に発生した検出信号(交流電荷)は、それぞれチャージアンプ回路310及び320により、交流電圧信号に変換される。その結果、チャージアンプ回路310及び320の出力(C点及びD点)には、AC増幅回路220の出力信号(B点の信号)と同じ周波数の正弦波電圧信号が発生する。ここで、チャージアンプ回路310の出力信号(C点の信号)の位相は、AC増幅回路220の出力信号(B点の信号)と同位相である。また、チャージアンプ回路320の出力信号(D点の信号)の位相は、チャージアンプ回路310の出力信号(C点の信号)に対して逆位相である(180°ずれている)。
【0095】
チャージアンプ回路310及び320の出力信号(C点の信号及びD点の信号)は差動増幅回路330により差動増幅され、AC増幅回路340の出力(E点)には、チャージアンプ回路310の出力(C点)に発生する正弦波電圧信号と同じ周波数で同位相の正弦波電圧信号が発生する。AC増幅回路340の出力(E点)に発生するこの正弦波電圧信号は、ジャイロセンサー素子100の検出電極114、115に発生する検出信号に対応する信号である。
【0096】
AC増幅回路340の出力信号(E点の信号)は、同期検波回路350により検波信号34に基づいて同期検波される。ここで、AC増幅回路340の出力信号(E点の信号)と検波信号34(位相変更回路352の出力信号(F点の信号))は同位相であるので、同期検波回路350の出力信号(G点の信号)は、AC増幅回路340の出力信号(E点の信号)が全波整流された信号となる。その結果、フィルター回路380の出力(H点)には、角速度の大きさに応じた電圧値V1の直流電圧信号(すなわち、角速度検出信号32)が発生する。
【0097】
なお、角速度検出装置1に図7と逆方向の角速度が加わった場合には、チャージアンプ回路310の出力信号(C点の信号)及びチャージアンプ回路320の出力信号(D点の信号)がともに基準電圧Vrefを中心として反転した波形になる。その結果、角速度検出信号32は、図7とは逆に基準電圧Vrefよりも低い電圧の信号になる。
【0098】
このようにして角速度検出装置1は角速度を検出することができる。そして、角速度検出信号32は、その電圧値がコリオリの力の大きさ(角速度の大きさ)に比例し、その極性が回転方向により決まるので、角速度検出信号32に基づいて角速度検出装置1に加えられた角速度を計算することができる。
【0099】
なお、角速度検出モード(通常動作時)では、仮に異常が発生していても、フィルター回路380の出力信号(H点の信号)の電圧値が検出可能範囲内の電圧値であれば、異常を検出することができない。異常は様々な要因で発生する。例えば、振動片の一部が破損した場合には、ジャイロセンサ素子の振動状態が変化するため、コリオリ力の元になる駆動振動が変化することで、異常となる。このような、ジャイロセンサー素子100に起因する異常の他に角速度検出用IC10の内部の回路に起因する異常も考えられる。例えば、断線や短絡等の回路故障、メモリー50に格納されたデータが壊れる等により、可変増幅回路370の増幅率(又は減衰率)の設定値が正常で無くなれば、異常となる。
【0100】
次に、図1のZ点及びA点〜H点における信号波形の一例を示して、第1実施形態の角速度検出装置1の異常診断モードにおける動作についてより具体的に説明する。
【0101】
図8は、異常診断モードにおける信号波形の一例を示す図である。図8において横軸は時間、縦軸は電圧を表す。また、図8において、角速度検出装置1は静止しているものとする。
【0102】
図8において、異常診断モードであるので、制御信号64(Z点の信号)は高電位に固定されている。角速度検出装置1は静止しているので、A点、B点、C点、D点、E点の各信号波形は図6と同じであり、その説明を省略する。
【0103】
AC増幅回路340の出力信号(E点の信号)は、同期検波回路350により検波信号34に基づいて同期検波される。ここで、制御信号64(Z点の信号)は高電位に固定されているため、検波信号34(位相変更回路352の出力信号(F点の信号))は、AC増幅回路220が出力する方形波電圧信号(B点の信号)に対して位相変更量52に応じた位相差(Δφとする)を有する方形波電圧信号になる。ここで、AC増幅回路340の出力信号(E点の信号)と検波信号34(位相変更回路352の出力信号(F点の信号))は90°−Δφだけ位相がずれているので、同期検波回路350の出力信号(G点の信号)において、基準電圧Vrefよりも高い電圧の積分量と基準電圧Vrefよりも低い電圧の積分量が一致せず、その差は漏れ信号のレベルに応じて変化する。その結果、フィルター回路380の出力(H点)には、漏れ信号のレベルと位相変更量52に応じた電圧値V2の直流電圧信号(角速度検出信号32)が発生する。
【0104】
以上説明したように、第1実施形態の角速度検出装置1では、位相変更回路352により、制御信号64が低電位(角速度検出モード(通常動作時))か高電位(異常診断モード)かによって、AC増幅回路340の出力信号(被検波信号36)に対する検波信号34の立ち上がり及び立ち下がりの相対的なタイミングが変更される。その結果、角速度検出信号32は、角速度検出モード(通常動作時)では漏れ信号がキャンセルされて角速度の大きさに応じた電圧値となり、異常診断モードでは漏れ信号のレベルに応じた電圧値となる。
【0105】
従って、第1実施形態の角速度検出装置1によれば、異常診断モードにおける角速度検出信号32の電圧値に基づいて、回路異常だけでなく素子異常についても外部から容易に判断することができる。
【0106】
また、第1実施形態の角速度検出装置1では、異常診断モードと角速度検出モード(通常動作時)でジャイロセンサー素子100の振動状態が変わらない。従って、第1実施形態の角速度検出装置1によれば、角速度検出モード(通常動作時)で発生する異常を異常診断モードでも確実に検出することができるので、より信頼性の高い異常診断が可能である。
【0107】
なお、漏れ信号が大きい場合、位相変更量52を小さくしなければ角速度検出信号32の電圧値が飽和してしまい、異常判定を行うことができなくなる。そのため、実際の設計においては、位相変更量52の精度を考慮し、差動増幅回路330の出力に流れる漏れ信号に基づく電流が外部出力端子11を介してジャイロセンサー素子100に流れる駆動電流の1%以下となるように調整するのが望ましい。
【0108】
本実施形態では、ジャイロセンサー素子100はダブルT型の振動片を用いて構成されている。そのため、レーザー加工等により、複数の駆動振動腕101aの先端の錘部103の質量に差をつけることにより、駆動振動腕101aの屈曲振動と駆動振動腕101bの屈曲振動をアンバランスにして所望のレベルの漏れ信号を積極的に発生させることが容易である。しかし、実際には、漏れ信号のレベルはジャイロセンサー素子毎にばらつく。そこで、例えば、角速度検出装置1の出荷検査時等において、制御信号64が低電位の時の角速度検出信号32が所定の電圧値となるように位相変更量52を調整し、不揮発性のメモリー50(例えば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory))に書き込んでおけばよい。
【0109】
なお、異常診断モードにおいて、角速度検出装置1に角速度が加われば、角速度検出信号32には、漏れ信号のレベルに応じた電圧値と角速度の大きさに応じた電圧値(角速度検出モードとは異なり、不正確な電圧値である)が重畳された電圧値となるため、異常の有無を判定することが難しい。従って、角速度検出装置1に角速度が加わっていない状態(例えば、静止している状態)で、異常診断モードに設定することが望ましい。例えば、本実施形態の角速度検出装置1が車両に搭載されている場合、当該車両のエンジン始動時のプライマリーチェックにおいて異常診断モードに設定すればよい。
【0110】
[第2実施形態]
図9は、第2実施形態の角速度検出装置の構成について説明するための図である。図9において、図1と同じ構成には同じ符号を付しており、その説明を省略又は簡略する。
【0111】
第2実施形態では、第1実施形態に対して位相変更回路352がデューティー比変更回路356に置き換えられている。
【0112】
デューティー比変更回路356は、制御信号64が低電位の時は、デューティー比が50%で方形波電圧信号22と同位相の検波信号34を生成し、制御信号64が高電位の時は方形波電圧信号22に対してメモリー50に記憶されたデューティー比変更量54に対応するデューティー比の検波信号34を生成する。
【0113】
デューティー比変更回路356は、例えば、図10に示すように、遅延回路357、スイッチ回路358及び論理和回路359を用いて実現することができる。スイッチ回路358により、制御信号64が低電位の時は接地電位が選択され、制御信号64が高電位の時は遅延回路357により方形波電圧信号22をデューティー比変更量54に応じて遅延させた信号が選択される。そして、論理和回路359により、方形波電圧信号22とスイッチ回路358の出力信号の論理和がとられて検波信号34が生成される。
【0114】
なお、デューティー比変更回路356は、本発明におけるタイミング変更部として機能する。
【0115】
制御信号64が低電位の時(角速度検出モード(通常動作時))は、デューティー比が50%の検波信号34と漏れ信号の位相差が90°になるので、漏れ信号がキャンセルされ、角速度検出信号32は角速度の大きさに応じた電圧値となる。
【0116】
一方、制御信号64が高電位の時(異常診断モード)は、検波信号34のデューティー比が50%ではなくなるため、角速度検出信号32は、漏れ信号のレベルに応じた電圧値と角速度の大きさに応じた電圧値が重畳された電圧値となる。ただし、角速度検出装置1に角速度が加わっていない状態(例えば、静止している状態)で異常診断モードに設定すれば、角速度が0なので、角速度検出信号32は漏れ信号のレベルに応じた電圧値となる。
【0117】
次に、図9のZ点及びA点〜H点における信号波形の一例を示して、第2実施形態の角速度検出装置1の異常診断モードにおける動作についてより具体的に説明する。なお、角速度検出モード(通常動作時)における信号波形は図6、図7に示した信号波形と同様であるためその説明を省略する。
【0118】
図11は、異常診断モードにおける信号波形の一例を示す図である。図11において横軸は時間、縦軸は電圧を表す。また、図11において、角速度検出装置1は静止しているものとする。
【0119】
図11において、異常診断モードであるので、制御信号64(Z点の信号)は高電位に固定されている。A点、B点、C点、D点、E点の各信号波形は図8と同じであるため、その説明を省略する。
【0120】
制御信号64(Z点の信号)は高電位に固定されているため、検波信号34(デューティー比変更回路356の出力信号(F点の信号))は、デューティー比変更量54に応じたデューティー比(50%でない)の方形波電圧信号になる。なお、本出願においてデューティー比は方形波のパルス幅を周期で割ったものに100[%]をかけたものとして表す。従って、同期検波回路350の出力信号(G点の信号)において、基準電圧Vrefよりも高い電圧の積分量と基準電圧Vrefよりも低い電圧の積分量が一致せず、その差は漏れ信号のレベルに応じて変化する。その結果、フィルター回路380の出力(H点)には、漏れ信号のレベルとデューティー比変更量54に応じた電圧値V3の直流電圧信号(角速度検出信号32)が発生する。
【0121】
以上説明したように、第2実施形態の角速度検出装置1では、デューティー比変更回路356により、制御信号64が低電位(角速度検出モード(通常動作時))か高電位(異常診断モード)かによって、AC増幅回路340の出力信号(被検波信号36)に対する検波信号34の立ち下がりの相対的なタイミングが変更される。その結果、角速度検出信号32は、角速度検出モード(通常動作時)では漏れ信号がキャンセルされて角速度の大きさに応じた電圧値となり、異常診断モードでは漏れ信号のレベルに応じた電圧値となる。
【0122】
従って、第2実施形態の角速度検出装置1によれば、異常診断モードにおける角速度検出信号32の電圧値に基づいて、回路異常だけでなく素子異常についても外部から容易に判断することができる。
【0123】
また、第2実施形態の角速度検出装置1では、第1実施形態と同様に、異常診断モードと角速度検出モード(通常動作時)でジャイロセンサー素子100の振動状態が変わらない。従って、第2実施形態の角速度検出装置1によれば、角速度検出モード(通常動作時)で発生する異常を異常診断モードでも確実に検出することができるので、より信頼性の高い異常診断が可能である。
【0124】
[第3実施形態]
図12は、第3実施形態の角速度検出装置の構成について説明するための図である。図12において、図1と同じ構成には同じ符号を付しており、その説明を省略又は簡略する。
【0125】
第3実施形態では、第1実施形態に対して異常判定回路70が追加されている。
【0126】
異常判定回路70は、制御信号64が低電位の時(角速度検出モード(通常動作時))は第1の電位(例えば低電位)の異常判定信号72を生成する。一方、制御信号64が高電位の時(異常診断モード)は、異常判定回路70は、角速度検出信号32の電圧値が正常範囲が否かを判定し、正常であれば第1の電位(例えば低電位)、異常であれば第2の電位(例えば高電位)の異常判定信号72を生成する。そして、異常判定信号72は外部出力端子18を介して外部に出力される。
【0127】
なお、異常判定回路70は、本発明における異常判定部として機能する。
【0128】
なお、図12に示した構成では、図1に示した第1実施形態の構成に対して異常判定回路70を追加しているが、図9に示した第2実施形態の構成に対して、図12と同様に異常判定回路70を追加してもよい。
【0129】
第3実施形態の角速度検出装置1によれば、角速度検出装置1を静止させた状態で異常診断モードに設定して異常判定信号72をモニターすれば、角速度検出装置1の素子異常を含む異常の有無を外部から直接的に認識することができる。従って、角速度検出信号32の電圧値に基づいて角速度検出装置1の異常の有無を判断する場合と比較して、外部装置の負荷を低減することができる。
【0130】
2.物理量検出装置の異常診断システム及び異常診断方法
以下では、物理量として角速度を検出する物理量検出装置(角速度検出装置)の異常診断システム及び異常診断方法を例にとり説明するが、本発明は、角速度、加速度、地磁気、圧力等の様々な物理量のいずれかを検出することができる装置の異常診断システム及び異常診断方法に適用可能である。
【0131】
[第1実施形態]
図13は、第1実施形態の角速度検出装置の異常診断システムの構成の一例を示す図である。
【0132】
図13に示すように、第1実施形態の異常診断システム1000は、角速度検出装置1とマイクロコンピューター2を含んで構成されている。
【0133】
角速度検出装置1は、例えば、図1に示した第1実施形態の角速度検出装置や、図9に示した第2実施形態の角速度検出装置である。
【0134】
マイクロコンピューター2は、角速度検出装置1の外部入力端子16に異常診断モード設定信号62を供給し、外部入力端子17から出力される角速度検出信号32に基づいて異常の有無を判定し、異常判定信号4を出力する。すなわち、マイクロコンピューター2は、本発明における異常診断装置として機能する。そして、異常判定信号4は、例えば、不図示の表示装置に入力されて角速度検出装置1が異常であれば警告表示される。
【0135】
なお、マイクロコンピューター2は、異常診断を実施しない時は、角速度検出信号32に基づいて所定の演算を行うようにしてもよい。例えば、マイクロコンピューター2は、角速度検出信号32の電圧値を積分することにより角速度検出装置1が搭載された移動体の角度を計算し、不図示の速度センサーから得た速度情報と組み合わせて現在の位置を計算するようにしてもよい。
【0136】
図14は、図13に示した異常診断システム1000による角速度検出装置の異常診断のフローチャートの一例を示す図である。
【0137】
図14に示すように、異常診断開始イベントが発生すると(ステップS10でYesの場合)、マイクロコンピューター2は、角速度検出装置1の外部入力端子16に異常診断モード設定信号62を供給する(ステップ20)。異常診断開始イベントは、角速度検出装置1に角速度が加わっていない状態(例えば、静止している状態)、例えば、角速度検出装置1が車両に搭載されているのであれば、当該車両のエンジン始動時等に発生するようにしてもよい。
【0138】
角速度検出装置1は、異常診断モード設定信号62を受け取ると、前述した位相変更回路352又はデューティー比変更回路356により、検波信号34の位相又はデューティー比を変更して同期検波し、漏れ信号の少なくとも一部を検出する(ステップS30)。
【0139】
そして、角速度検出装置1は、前述したように、同期検波回路350の出力信号に基づいて、漏れ信号のレベルに応じた電圧値の角速度検出信号32を出力する(ステップS40)。
【0140】
そして、マイクロコンピューター2は、角速度検出信号32を受け取って角速度検出装置1の異常を診断し、異常判定信号4を出力する(ステップS50)。例えば、マイクロコンピューター2は、角速度検出信号32の電圧値が正常範囲が否かを判定し、正常であれば第1の電位(例えば低電位)、異常であれば第2の電位(例えば高電位)の異常判定信号4を出力する。
【0141】
第1実施形態の異常診断システム1000は、前述した第1実施形態又は第2実施形態の角速度検出装置1を用いることにより、より信頼性の高い異常診断が可能である。
【0142】
[第2実施形態]
図15は、第2実施形態の角速度検出装置の異常診断システムの構成の一例を示す図である。
【0143】
図15に示すように、第2実施形態の異常診断システム1000は、角速度検出装置1とマイクロコンピューター2を含んで構成されている。
【0144】
角速度検出装置1は、例えば、図12に示した第3実施形態の角速度検出装置である。
【0145】
マイクロコンピューター2は、角速度検出装置1の外部入力端子16に異常診断モード設定信号62を供給し、角速度検出装置1は、異常診断モード設定信号62を受け取り、外部出力端子18から異常判定信号72を出力する。異常判定信号72は、例えば、不図示の表示装置に入力されて角速度検出装置1が異常であれば警告表示される。
【0146】
なお、マイクロコンピューター2は、角速度検出装置1が外部出力端子17から出力する角速度検出信号32を受け取って所定の演算を行うようにしてもよい。さらに、マイクロコンピューター2は、異常判定信号72を受け取り、角速度検出装置1が異常であれば角速度検出信号32に基づく演算を行わないようにしてもよい。
【0147】
図16は、図15に示した異常診断システム1000による角速度検出装置の異常診断のフローチャートの一例を示す図である。
【0148】
図16のフローチャートのステップS110、S120、S130の処理は、それぞれ図14のフローチャートのステップS10、S20、S30の処理と同じであるため、説明を省略する。
【0149】
ステップS110、S120、S130の処理により、角速度検出装置1において、同期検波により漏れ信号の少なくとも一部が検出される。
【0150】
そして、角速度検出装置1は、前述したように、同期検波回路350の出力信号に基づいて、異常判定信号72を生成し、外部出力端子18から出力する。
【0151】
第2実施形態の異常診断システム1000は、前述した第3実施形態の角速度検出装置1を用いることにより、より信頼性の高い異常診断が可能である。さらに、マイクロコンピューター2は、異常判定信号72により、角速度検出装置1の異常の有無を直接的に認識することができるので、マイクロコンピューター2の負荷を低減することができる。
【0152】
なお、本発明は本実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0153】
例えば、第1実施形態の角速度検出装置1では、図1に示したように、検波信号34の位相を変更することにより、AC増幅回路340の出力信号(被検波信号36)に対する検波信号34の立ち上がり及び立ち下がりの相対的なタイミングが変更されているが、差動増幅回路330の出力信号やAC増幅回路340の出力信号の位相を変更することにより、AC増幅回路340の出力信号(被検波信号36)に対する検波信号34の立ち上がり及び立ち下がりの相対的なタイミングを変更するように構成してもよい。
【0154】
また、例えば、第2実施形態の角速度検出装置1では、図9に示したように、検波信号34のデューティー比を変更することにより、AC増幅回路340の出力信号(被検波信号36)に対する検波信号34の立ち下がりの相対的なタイミングが変更されているが、検波信号34の立ち上がりの相対的なタイミングを変更するように構成してもよい。
【0155】
また、例えば、第1実施形態〜第3実施形態の角速度検出装置1において、位相変更回路352とデューティー比変更回路356を直列に接続して検波信号34の位相とデューティー比の両方を変更することにより、AC増幅回路340の出力信号(被検波信号36)に対する検波信号34の立ち上がり及び立ち下がりの少なくとも一方の相対的なタイミングを変更するようにしてもよい。
【0156】
また、例えば、第1実施形態又は第3実施形態の角速度検出装置1において、AC増幅回路220は、方形波電圧信号22を出力するようにしているが、例えば、正弦波電圧信号を出力するようにしてもよい。その場合、同期検波回路350は、正弦波の検波信号34により同期検波を行う構成に変更すればよい。
【0157】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0158】
1 角速度検出装置、2 マイクロコンピューター、4 異常判定信号、10 角速度検出用IC、11 外部出力端子、12〜16 外部入力端子、17〜18 外部出力端子、20 駆動回路、22 方形波電圧信号、30 検出回路、32 角速度検出信号、34 検波信号、36 被検波信号、40 基準電源回路、50 メモリー、52 位相変更量、54 デューティー比変更量、60 制御部、62 異常診断モード設定信号、64 制御信号、70 異常判定回路、72 異常判定信号、100 ジャイロセンサー素子、101a〜101b 駆動振動腕、102 検出振動腕、103 錘部、104a〜104b 駆動用基部、105a〜105b 連結腕、106 錘部、107 検出用基部、112〜113 駆動電極、114〜115 検出電極、116 共通電極、210 I/V変換回路(電流電圧変換回路)、220 AC増幅回路、230 振幅調整回路、310 チャージアンプ回路、320 チャージアンプ回路、330 差動増幅回路、340 AC増幅回路、350 同期検波回路、352 位相変更回路、353 遅延回路、354 スイッチ回路、356 デューティー比変更回路、357 遅延回路、358 スイッチ回路、359 論理和回路、360 平滑回路、370 可変増幅回路、380 フィルター回路、1000 異常診断システム
【技術分野】
【0001】
本発明は、物理量検出装置並びに物理量検出装置の制御方法、異常診断システム及び異常診断方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、様々な物理量を検出する物理量検出装置が知られている。例えば、物理量として角速度を検出する角速度検出装置が知られており、角速度検出装置を搭載し、角速度検出装置により検出された角速度に基づいて所定の制御を行う様々な電子機器やシステムが広く利用されている。例えば、自動車の車両走行制御システムでは角速度検出装置により検出された角速度に基づいて、自動車の横滑りを防止する走行制御が行なわれている。
【0003】
これらの電子機器やシステムでは、角速度検出装置が故障すると誤った制御が行われるので、故障している場合には警告ランプを点灯する等の対策が行われており、角速度検出装置の故障診断を行うための種々の技術が提案されている。例えば、特許文献1では、振動子の検出手段からの少なくとも1つの出力信号にオフセット信号を重畳することにより、当該検出手段の断線や短絡を検出することができる自己診断回路を有する振動ジャイロ装置が提案されている。また、特許文献2では、プライマリーチェック時に、センサーエレメントに回転疑似信号等の検査信号を加えた状態での角速度出力の信号レベルに基づいて異常診断を行う角速度センサーの異常診断装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3520821号公報
【特許文献2】特開2001−304871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載された振動ジャイロ装置では、異常検出する手段として差動演算手段の前段にオフセット信号を発生させ、オフセット信号に起因する信号成分に基づいて検出手段の異常を検知している。しかし、この方法では差動増幅手段以降の回路異常については検出できるが、差動増幅手段以前の回路異常または、素子の異常を捕らえることはできなかった。
【0006】
一方、特許文献2に記載された角速度センサーの異常診断装置によれば、センサーエレメントに回転疑似信号等の検査信号を加えた状態での角速度出力の信号レベルに基づいて異常診断を行うので素子異常も検出可能とも考えられる。しかし、特許文献2に記載された角速度センサーの異常診断装置では、センサーエレメントに対して、通常の角速度検出時には存在しない回転疑似信号等の検査信号を入力しているため、通常の角速度検出時に発生する素子異常を厳密には検出することができず、信頼性に問題がある。
【0007】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明のいくつかの態様によれば、より信頼性の高い異常診断が可能な物理量検出装置並びに物理量検出装置の制御方法、異常診断システム及び異常診断方法を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明は、所定の物理量を検出する物理量検出装置であって、駆動電極と、検出電極と、を有し、前記駆動電極に供給される駆動信号に基づいて振動することにより、前記検出電極に、前記物理量の大きさに応じた検出信号とともに前記駆動信号に基づく振動の漏れ信号を発生させる物理量検出素子と、前記駆動信号を生成する駆動部と、前記駆動信号に同期した検波信号に基づいて、前記検出信号と前記漏れ信号を含む被検波信号に対して同期検波を行う同期検波部と、制御信号に基づいて、前記同期検波により前記漏れ信号の少なくとも一部が出力されるように、前記被検波信号に対する前記検波信号の立ち上がり及び立ち下がりの少なくとも一方の相対的なタイミングを変更するタイミング変更部と、を含むことを特徴とする。
【0009】
所定の物理量は、例えば、角速度、加速度、地磁気、圧力等である。
【0010】
タイミング変更部は、検波信号の立ち上がり及び立ち下がりの少なくとも一方のタイミングを変更することにより前記相対的なタイミングを変更するようにしてもよいし、被検波信号の立ち上がり及び立ち下がりの少なくとも一方のタイミングを変更することにより前記相対的なタイミングを変更するようにしてもよい。
【0011】
検波信号は、例えば方形波(矩形波)でも正弦波でもよく、立ち上がりとは検波信号が極小から極大まで変化する際に所定の閾値と一致するタイミングであり、立ち下がりとは検波信号が極大から極小まで変化する際に所定の閾値と一致するタイミングである。
【0012】
本発明では、被検波信号に対する検波信号の立ち上がり及び立ち下がりの少なくとも一方の相対的なタイミングを変更して同期検波することにより、漏れ信号の少なくとも一部が検出される。一方、物理量検出素子の振動状態が変動すれば検出信号の量と漏れ信号の量がともに変動する。従って、本発明によれば、同期検波部の出力信号に基づいて、回路異常だけでなく、素子異常についても診断することができる。
【0013】
また、本発明では、異常診断に漏れ信号を利用している。この漏れ信号は駆動振動の振動バランスによって発生するため、駆動振動の微妙な変化は漏れ信号にも現れる。コリオリ力を発生させる元となる駆動振動の変化を漏れ信号で検出することで、素子を含めた異常を異常診断時に確実に検出することができる。そのため、より信頼性の高い異常診断が可能である。
【0014】
(2)この物理量検出装置において、前記タイミング変更部は、前記制御信号に基づき、前記検波信号と前記被検波信号との位相差を変更するようにしてもよい。
【0015】
例えば、検波信号の位相を変更することにより検波信号と被検波信号との位相差を変更するようにしてもよいし、被検波信号の位相を変更することにより検波信号と被検波信号との位相差を変更するようにしてもよい。
【0016】
本発明では、タイミング変更部は、検波信号と被検波信号との位相差を変更することにより、被検波信号に対する検波信号の立ち上がり及び立ち下がりの少なくとも一方の相対的なタイミングを変更する。従って、本発明によれば、同期検波により漏れ信号の少なくとも一部が検出されるので、同期検波部の出力信号に基づいて、素子異常を診断することができる。
【0017】
(3)この物理量検出装置において、前記タイミング変更部は、前記制御信号に基づき、前記検波信号のデューティー比を変更するようにしてもよい。
【0018】
本発明では、タイミング変更部は、検波信号のデューティー比を変更することにより、被検波信号に対する検波信号の立ち上がり及び立ち下がりの少なくとも一方の相対的なタイミングを変更する。従って、本発明によれば、同期検波により漏れ信号の少なくとも一部が検出されるので、同期検波部の出力信号に基づいて、素子異常を診断することができる。
【0019】
(4)この物理量検出装置において、前記タイミング変更部は、前記相対的なタイミングの変更量が調整可能であるようにしてもよい。
【0020】
例えば、同期検波により検出される漏れ信号の量が所定量となるように当該相対的なタイミングの変更量をあらかじめ調整して不揮発性のメモリーに記憶させておいてもよい。
【0021】
一般に、製造ばらつき等により、物理量検出素子毎に、検出電極に発生する漏れ信号の大きさが異なる。本発明では、被検波信号に対する検波信号の立ち上がり及び立ち下がりの少なくとも一方の相対的なタイミングの変更量が調整可能であるので、物理量検出素子の特性に応じて、同期検波により検出される漏れ信号の量が一定になるように調整することができる。従って、本発明によれば、物理量検出素子の特性ばらつきの影響を低減させることができるので、異常診断の精度を向上させることができる。
【0022】
(5)この物理量検出装置は、前記同期検波部の出力信号に基づいて、当該物理量検出装置の異常の有無を判定する異常判定部を含むようにしてもよい。
【0023】
本発明によれば、異常判定部により当該物理量検出装置の異常の有無が判定されるので、異常判定部の出力信号をモニターすれば、当該物理量検出装置の異常の有無を直接的に認識することができる。
【0024】
(6)この物理量検出装置において、前記物理量は、角速度であってもよい。
【0025】
(7)本発明は、上記のいずれかの物理量検出装置と、当該物理量検出装置に前記制御信号を供給し、当該物理量検出装置が前記同期検波部の出力信号に基づいて生成した信号を受け取り、当該信号に基づいて当該物理量検出装置の異常を診断する異常診断装置と、を含むことを特徴とする物理量検出装置の異常診断システムである。
【0026】
本発明によれば、物理量検出装置の回路異常だけでなく素子異常についても診断することができるとともに、より信頼性の高い異常診断が可能である。
【0027】
(8)本発明は、駆動電極と、検出電極と、を有し、前記駆動電極に供給される駆動信号に基づいて振動することにより、前記検出電極に、所定の物理量の大きさに応じた検出信号とともに前記駆動信号に基づく振動の漏れ信号を発生させる物理量検出素子と、前記駆動信号を生成する駆動部と、前記駆動信号に同期した検波信号に基づいて、前記検出信号と前記漏れ信号を含む被検波信号に対して同期検波を行う同期検波部と、を含む物理量検出装置の制御方法であって、当該物理量検出装置に、前記漏れ信号の少なくとも一部が出力されるように、前記被検波信号に対する前記検波信号の立ち上がり及び立ち下がりの少なくとも一方の相対的なタイミングを変更して同期検波させるステップと、当該物理量検出装置に、前記同期検波部の出力信号に基づいて、前記漏れ信号に応じた信号を生成させるステップと、を含むことを特徴とする。
【0028】
本発明によれば、物理量検出装置の回路異常だけでなく素子異常についても診断することができるとともに、より信頼性の高い異常診断が可能である。
【0029】
(9)本発明は、駆動電極と、検出電極と、を有し、前記駆動電極に供給される駆動信号に基づいて振動することにより、前記検出電極に、所定の物理量の大きさに応じた検出信号とともに前記駆動信号に基づく振動の漏れ信号を発生させる物理量検出素子と、前記駆動信号を生成する駆動部と、前記駆動信号に同期した検波信号に基づいて、前記検出信号と前記漏れ信号を含む被検波信号に対して同期検波を行う同期検波部と、を含む物理量検出装置の制御方法であって、当該物理量検出装置に、前記漏れ信号の少なくとも一部が出力されるように、前記被検波信号に対する前記検波信号の立ち上がり及び立ち下がりの少なくとも一方の相対的なタイミングを変更して同期検波させるステップと、当該物理量検出装置に、前記同期検波部の出力信号に基づいて、当該物理量検出装置の異常の有無を判定させるステップと、を含むことを特徴とする。
【0030】
本発明によれば、物理量検出装置の回路異常だけでなく素子異常についても診断することができるとともに、より信頼性の高い異常診断が可能である。
【0031】
また、本発明によれば、異常判定部の出力信号をモニターすることにより、該物理量検出装置の素子異常を含む異常の有無を直接的に認識することができる。
【0032】
(10)本発明は、駆動電極と、検出電極と、を有し、前記駆動電極に供給される駆動信号に基づいて振動することにより、前記検出電極に、所定の物理量の大きさに応じた検出信号とともに前記駆動信号に基づく振動の漏れ信号を発生させる物理量検出素子と、前記駆動信号を生成する駆動部と、前記駆動信号に同期した検波信号に基づいて、前記検出信号と前記漏れ信号を含む被検波信号に対して同期検波を行う同期検波部と、を含む物理量検出装置の異常診断方法であって、当該物理量検出装置に、前記漏れ信号の少なくとも一部が出力されるように、前記被検波信号に対する前記検波信号の立ち上がり及び立ち下がりの少なくとも一方の相対的なタイミングを変更して同期検波させるステップと、当該物理量検出装置に、前記同期検波部の出力信号に基づいて、前記漏れ信号に応じた信号を生成させるステップと、前記漏れ信号に応じた信号に基づいて、当該物理量検出装置の異常を診断するステップと、を含むことを特徴とする。
【0033】
本発明によれば、物理量検出装置の回路異常だけでなく素子異常についても診断することができるとともに、より信頼性の高い異常診断が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】第1実施形態の角速度検出装置の構成について説明するための図。
【図2】ジャイロセンサー素子の振動片の平面図。
【図3】ジャイロセンサー素子の動作について説明するための図。
【図4】ジャイロセンサー素子の動作について説明するための図。
【図5】位相変更回路の構成の一例を示す図。
【図6】第1実施形態における角速度検出モード(通常動作時)で角速度検出装置が静止している時の信号波形の一例を示す図。
【図7】第1実施形態における角速度検出モード(通常動作時)で角速度検出装置に角速度が加わっている時の信号波形の一例を示す図。
【図8】第1実施形態における異常診断モードの信号波形の一例を示す図。
【図9】第2実施形態の角速度検出装置の構成について説明するための図。
【図10】デューティー比変更回路の構成の一例を示す図。
【図11】第2実施形態における異常診断モードの信号波形の一例を示す図。
【図12】第3実施形態の角速度検出装置の構成について説明するための図。
【図13】第1実施形態の異常診断システムの構成について説明するための図。
【図14】第1実施形態の異常診断方法のフローチャートの一例を示す図。
【図15】第2実施形態の異常診断システムの構成について説明するための図。
【図16】第2実施形態の異常診断方法のフローチャートの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0036】
1.物理量検出装置
以下では、物理量として角速度を検出する物理量検出装置(角速度検出装置)を例にとり説明するが、本発明は、角速度、加速度、地磁気、圧力等の様々な物理量のいずれかを検出することができる装置に適用可能である。
【0037】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態の角速度検出装置の構成について説明するための図である。
【0038】
第1実施形態の角速度検出装置1は、ジャイロセンサー素子100と角速度検出用IC10を含んで構成されている。
【0039】
ジャイロセンサー素子100(本発明における物理量検出素子の一例)は、駆動電極と検出電極が配置された振動片が不図示のパッケージに封止されて構成されている。一般的に、振動片のインピーダンスをできるだけ小さくして発振効率を高めるためにパッケージ内の気密性が確保されている。
【0040】
ジャイロセンサー素子100の振動片は、例えば、水晶(SiO2)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)等の圧電単結晶やジルコン酸チタン酸鉛(PZT)等の圧電セラミックスなどの圧電性材料を用いて構成してもよいし、シリコン半導体の表面の一部に、駆動電極に挟まれた酸化亜鉛(ZnO)、窒化アルミニウム(AlN)等の圧電薄膜を配置した構造であってもよい。
【0041】
また、この振動片は、例えば、T型の2つの駆動振動腕を有するいわゆるダブルT型であってもよいし、音叉型であってもよいし、三角柱、四角柱、円柱状等の形状の音片型であってもよい。
【0042】
本実施形態では、ジャイロセンサー素子100は、水晶を材料とするダブルT型の振動片により構成される。
【0043】
図2は、本実施形態のジャイロセンサー素子100の振動片の平面図である。
【0044】
本実施形態のジャイロセンサー素子100は、Zカットの水晶基板により形成されたダブルT型の振動片を有する。水晶を材料とする振動片は、温度変化に対する共振周波数の変動が極めて小さいので、角速度の検出精度を高めることができるという利点がある。なお、図2におけるX軸、Y軸、Z軸は水晶の軸を示す。
【0045】
図2に示すように、ジャイロセンサー素子100の振動片は、2つの駆動用基部104a、104bからそれぞれ駆動振動腕101a、101bが+Y軸方向及び−Y軸方向に延出している。駆動振動腕101aの側面及び上面にはそれぞれ駆動電極112及び113が形成されており、駆動振動腕101bの側面及び上面にはそれぞれ駆動電極113及び112が形成されている。駆動電極112、113は、それぞれ、図1に示した角速度検出用IC10の外部出力端子11、外部入力端子12を介して駆動回路20に接続される。
【0046】
駆動用基部104a、104bは、それぞれ−X軸方向と+X軸方向に延びる連結腕105a、105bを介して矩形状の検出用基部107に接続されている。
【0047】
検出振動腕102は、検出用基部107から+Y軸方向及び−Y軸方向に延出している。検出振動腕102の上面には検出電極114及び115が形成されており、検出振動腕102の側面には共通電極116が形成されている。検出電極114、115は、それぞれ、図1に示した角速度検出用IC10の外部入力端子13、14を介して検出回路30に接続される。また、共通電極116は接地される。
【0048】
駆動振動腕101a、101bの駆動電極112と駆動電極113との間に駆動信号として交流電圧が与えられると、図3に示すように、駆動振動腕101a、101bは逆圧電効果によって矢印Bのように、2本の駆動振動腕101a、101bの先端が互いに接近と離間を繰り返す屈曲振動(励振振動)をする。
【0049】
なお、本出願では、ジャイロセンサー素子に角速度がかかっていない状態で上述の屈曲振動(励振振動)するときの、各駆動振動腕における振動エネルギーの大きさ又は振動の振幅の大きさが2本の駆動振動腕で等しいとき、駆動振動腕の振動エネルギーのバランスがとれているという。
【0050】
ここで、ジャイロセンサー素子100の振動片にZ軸を回転軸とした角速度が加わると、駆動振動腕101a、101bは、矢印Bの屈曲振動の方向とZ軸の両方に垂直な方向にコリオリの力を得る。その結果、図4に示すように、連結腕105a、105bは矢印Cで示すような振動をする。そして、検出振動腕102は、連結腕105a、105bの振動(矢印C)に連動して矢印Dのように屈曲振動をする。
【0051】
また、駆動振動腕101a、101bの励振振動は、ジャイロセンサー素子の製造バラつきなどによって、駆動振動腕の振動エネルギーのバランスがくずれると、検出振動腕102には漏れ振動を発生させる。この漏れ振動は、コリオリの力に基づいた振動と同様に矢印Dに示す屈曲振動であるが、駆動信号とは同位相である。なお、コリオリ力に伴う振動は駆動振動とは90°ずれた位相である。
【0052】
そして、圧電効果によってこれらの屈曲振動に基づいた交流電荷が、検出振動腕102の検出電極114、115に発生する。ここで、コリオリの力に基づいて発生する交流電荷は、コリオリの力の大きさ(言い換えれば、ジャイロセンサー素子100に加わる角速度の大きさ)に応じて変化する。一方、漏れ振動に基づいて発生する交流電荷は、ジャイロセンサー素子100に加わる角速度の大きさに関係しない。
【0053】
なお、図2の構成では、振動片のバランスを良くするために、検出用基部107を中央に配置し、検出用基部107から+Y軸と−Y軸の両方向に検出振動腕102を延出させている。さらに、検出用基部107から+X軸と−X軸の両方向に連結腕105a、105bを延出させ、連結腕105a、105bのそれぞれから、+Y軸と−Y軸の両方向に駆動振動腕101a、101bを延出させている。
【0054】
また、駆動振動腕101a、101bの先端には、駆動振動腕101a、101bよりも幅の広い矩形状の錘部103が形成されている。駆動振動腕101a、101bの先端に錘部103を形成することにより、コリオリの力を大きくするとともに、所望の共振周波数を比較的短い振動腕で得ることができる。同様に、検出振動腕102の先端には、検出振動腕102よりも幅の広い錘部106が形成されている。検出振動腕102の先端に錘部106を形成することにより、検出電極114、115に発生する交流電荷を大きくすることができる。
【0055】
以上のようにして、ジャイロセンサー素子100は、Z軸を検出軸としてコリオリの力に基づく交流電荷(すなわち、検出信号)と、励振振動の漏れ振動に基づく交流電荷(すなわち、漏れ信号)とを検出電極114、115を介して出力する。
【0056】
ところで、ジャイロセンサー素子100に加わるコリオリ力Fcは次式(1)で計算される。
【0057】
【数1】
【0058】
式(1)において、mは等価質量、vは振動速度、Ωは角速度である。式(1)によると、角速度Ωが一定であっても、等価質量m又は振動速度vが変化すればコリオリ力もそれらに伴って変化する。従って、等価質量m又は振動速度vが変化することにより角速度の検出感度が変化することになる。ジャイロセンサー素子100の振動片が何らかの故障によっての振動状態が変化すると、駆動振動の等価質量m又は振動速度vが変化するので、検出感度が変化することになる。また同時に、漏れ信号のレベルも変化する。すなわち、漏れ信号のレベルと角速度の検出感度の間には相関がある。
【0059】
図1に戻り、角速度検出用IC10は、駆動回路20、検出回路30、基準電源回路40、メモリー50及び制御部60を含んで構成されている。
【0060】
駆動回路20は、I/V変換回路(電流電圧変換回路)210、AC増幅回路220及び振幅調整回路230を含んで構成されている。
【0061】
ジャイロセンサー素子100の振動片に流れた駆動電流は、I/V変換回路210によって交流電圧信号に変換される。
【0062】
I/V変換回路210から出力された交流電圧信号は、AC増幅回路220及び振幅調整回路230に入力される。AC増幅回路220は、入力された交流電圧信号を増幅し、所定の電圧値でクリップさせて方形波電圧信号22を出力する。振幅調整回路230は、I/V変換回路210が出力する交流電圧信号のレベルに応じて、方形波電圧信号22の振幅を変化させ、駆動電流が一定に保持するようにAC増幅回路220を制御する。
【0063】
方形波電圧信号22は、外部出力端子11を介してジャイロセンサー素子100の振動片の駆動電極112に供給される。このように、ジャイロセンサー素子100は図3に示すような所定の駆動振動を継続して励振している。また、駆動電流を一定に保つことにより、ジャイロセンサー素子100の駆動振動腕101a、101bは一定の振動速度を得ることができる。そのため、コリオリ力を発生させる元となる振動速度は一定となり、感度をより安定にすることができる。
【0064】
なお、駆動回路20は、本発明における駆動部として機能する。
【0065】
検出回路30は、チャージアンプ回路310、320、差動増幅回路330、AC増幅回路340、同期検波回路350、平滑回路360、可変増幅回路370、フィルター回路380及び位相変更回路352を含んで構成されている。
【0066】
チャージアンプ回路310には、外部入力端子13を介してジャイロセンサー素子100の振動片の検出電極114から検出信号と漏れ信号からなる交流電荷が入力される。
【0067】
同様に、チャージアンプ回路320には、外部入力端子14を介してジャイロセンサー素子100の振動片の検出電極115から検出信号と漏れ信号からなる交流電荷が入力される。
【0068】
このチャージアンプ回路310及び320は、それぞれ入力された交流電荷を基準電圧Vrefを基準とした交流電圧信号に変換する。なお、基準電圧Vrefは、基準電源回路40により、電源入力端子15から入力された外部電源に基づいて生成される。
【0069】
差動増幅回路330は、チャージアンプ回路310の出力信号とチャージアンプ回路320の出力信号を差動増幅する。差動増幅回路330は、同相成分を消去し、逆相成分を加算増幅するためのものである。
【0070】
AC増幅回路340は、差動増幅回路330の出力信号を増幅する。このAC増幅回路340の出力信号は、検出信号と漏れ信号が含まれており、被検波信号36として同期検波回路350に入力される。
【0071】
同期検波回路350は、被検波信号36に対して検波信号34により同期検波を行う。同期検波回路350は、例えば、検波信号34の電圧レベルが基準電圧Vrefよりも高い時はAC増幅回路340の出力信号を選択し、検波信号34の電圧レベルが基準電圧Vrefよりも低い時はAC増幅回路340の出力信号を基準電圧Vrefに対して反転した信号を選択するスイッチ回路として構成することができる。
【0072】
なお、同期検波回路350は、本発明における同期検波部として機能する。
【0073】
位相変更回路352は、制御信号64が第1の電位(以下、低電位とする)の時は方形波電圧信号22と同じ位相の検波信号34を生成し、制御信号64が第2の電位(以下、高電位とする)の時は方形波電圧信号22に対してメモリー50に記憶された位相変更量52に対応する位相差を有する検波信号34を生成する。
【0074】
位相変更回路352は、例えば、図5に示すように、遅延回路353とスイッチ回路354を用いて実現することができる。スイッチ回路354により、制御信号64が低電位の時は方形波電圧信号22が検波信号34として選択され、制御信号64が高電位の時は、遅延回路353により、位相変更量52に応じて方形波電圧信号22を遅延させた信号が検波信号34として選択される。
【0075】
なお、位相変更回路352は、本発明におけるタイミング変更部として機能する。
【0076】
制御部60は、角速度検出モード(通常動作時)では制御信号64を低電位に固定し、外部入力端子16を介して異常診断モード設定信号62が供給されると、制御信号64を高電位に固定する。この制御部60は、例えば、専用の論理回路や汎用のCPUによって実現することができる。
【0077】
同期検波回路350の出力信号は、平滑回路360で直流電圧信号に平滑化された後、可変増幅回路370に入力される。
【0078】
可変増幅回路370は、平滑回路360の出力信号(直流電圧信号)を、設定された増幅率(又は減衰率)で増幅(又は減衰)して検出感度を調整する。可変増幅回路370で増幅(又は減衰)された信号は、フィルター回路380に入力される。
【0079】
フィルター回路380は、可変増幅回路370の出力信号を使用に適した周波数帯域に制限する回路であり、角速度検出信号32を生成する。そして、角速度検出信号32は外部出力端子17を介して外部に出力される。
【0080】
次に、図1のZ点及びA点〜H点における信号波形の一例を示して、第1実施形態の角速度検出装置1の角速度検出モード(通常動作時)における動作についてより具体的に説明する。
【0081】
図6は、角速度検出装置1が静止している時の信号波形の一例を示す図である。図6において横軸は時間、縦軸は電圧を表す。
【0082】
図6において、角速度検出モード(通常動作時)であるので、制御信号64(Z点の信号)は低電位に固定されている。
【0083】
ジャイロセンサー素子100の振動片が振動している状態では、I/V変換回路210の出力(A点)には、ジャイロセンサー素子100の振動片の駆動電極113からフィードバックされた電流が変換された一定周波数の交流電圧が発生している。すなわち、I/V変換回路210の出力(A点)には、一定周波数の正弦波電圧信号が発生している。
【0084】
そして、AC増幅回路220の出力(B点)には、I/V変換回路210の出力信号(A点の信号)が増幅された、振幅が一定値Vcの方形波電圧信号が発生する。
【0085】
ジャイロセンサー素子100に角速度が加わっていない場合は、ジャイロセンサー素子100の振動片の検出電極114、115には角速度の検出信号は発生しないが、漏れ信号は発生する。
【0086】
ジャイロセンサー素子100の検出電極114及び115に発生した漏れ信号(交流電荷)は、それぞれチャージアンプ回路310及び320により、交流電圧信号に変換される。ここでは、チャージアンプ回路310と320から出力される交流電圧信号は逆相であるとしている。その結果、チャージアンプ回路310及び320の出力(C点及びD点)には、AC増幅回路220の出力信号(B点の信号)と同じ周波数の正弦波電圧信号が発生する。ここで、チャージアンプ回路310の出力信号(C点の信号)の位相は、AC増幅回路220の出力信号(B点の信号)に対して90°ずれている。また、チャージアンプ回路320の出力信号(D点の信号)の位相は、チャージアンプ回路310の出力信号(C点の信号)に対して逆位相である(180°ずれている)。
【0087】
チャージアンプ回路310及び320の出力信号(C点の信号及びD点の信号)は差動増幅回路330により差動増幅され、AC増幅回路340の出力(E点)には、チャージアンプ回路310の出力(C点)に発生する正弦波電圧信号と同じ周波数で同位相の正弦波電圧信号が発生する。AC増幅回路340の出力(E点)に発生するこの正弦波電圧信号は、ジャイロセンサー素子100の振動片の検出電極114、115に発生する漏れ信号に対応する信号である。
【0088】
AC増幅回路340の出力信号(E点の信号)は、同期検波回路350により検波信号34に基づいて同期検波される。ここで、制御信号64(Z点の信号)は低電位に固定されているため、検波信号34(位相変更回路352の出力信号(F点の信号))は、AC増幅回路220が出力する方形波電圧信号(B点の信号)と同じ位相の方形波電圧信号になる。
【0089】
ここで、AC増幅回路340の出力信号(E点の信号)と検波信号34(位相変更回路352の出力信号(F点の信号))は90°だけ位相がずれているので、同期検波回路350の出力信号(G点の信号)において、基準電圧Vrefよりも高い電圧の積分量と基準電圧Vrefよりも低い電圧の積分量が等しくなる。その結果、漏れ信号はキャンセルされ、フィルター回路380の出力(H点)には角速度が0であることを示す基準電圧Vrefの直流電圧信号が発生する。
【0090】
図7は、角速度検出装置1に角速度が加わっている時の信号波形の一例を示す図である。図7において横軸は時間、縦軸は電圧を表す。
【0091】
図7において、角速度検出モード(通常動作時)であるので、制御信号64(Z点の信号)は低電位に固定されている。
【0092】
A点及びB点の各信号波形は図6と同じであり、その説明を省略する。
【0093】
ジャイロセンサー素子100に角速度が加わると、ジャイロセンサー素子100の振動片の検出電極114、115には検出信号と漏れ信号が発生する。この検出信号のレベルはコリオリ力の大きさに応じて変化する。一方、漏れ信号は図6と同じ信号波形になり、キャンセルされる。そのため、図7では検出信号のみに着目した信号波形を示しており、以下の説明においても検出信号のみに着目して説明する。
【0094】
ジャイロセンサー素子100の振動片の検出電極114及び115に発生した検出信号(交流電荷)は、それぞれチャージアンプ回路310及び320により、交流電圧信号に変換される。その結果、チャージアンプ回路310及び320の出力(C点及びD点)には、AC増幅回路220の出力信号(B点の信号)と同じ周波数の正弦波電圧信号が発生する。ここで、チャージアンプ回路310の出力信号(C点の信号)の位相は、AC増幅回路220の出力信号(B点の信号)と同位相である。また、チャージアンプ回路320の出力信号(D点の信号)の位相は、チャージアンプ回路310の出力信号(C点の信号)に対して逆位相である(180°ずれている)。
【0095】
チャージアンプ回路310及び320の出力信号(C点の信号及びD点の信号)は差動増幅回路330により差動増幅され、AC増幅回路340の出力(E点)には、チャージアンプ回路310の出力(C点)に発生する正弦波電圧信号と同じ周波数で同位相の正弦波電圧信号が発生する。AC増幅回路340の出力(E点)に発生するこの正弦波電圧信号は、ジャイロセンサー素子100の検出電極114、115に発生する検出信号に対応する信号である。
【0096】
AC増幅回路340の出力信号(E点の信号)は、同期検波回路350により検波信号34に基づいて同期検波される。ここで、AC増幅回路340の出力信号(E点の信号)と検波信号34(位相変更回路352の出力信号(F点の信号))は同位相であるので、同期検波回路350の出力信号(G点の信号)は、AC増幅回路340の出力信号(E点の信号)が全波整流された信号となる。その結果、フィルター回路380の出力(H点)には、角速度の大きさに応じた電圧値V1の直流電圧信号(すなわち、角速度検出信号32)が発生する。
【0097】
なお、角速度検出装置1に図7と逆方向の角速度が加わった場合には、チャージアンプ回路310の出力信号(C点の信号)及びチャージアンプ回路320の出力信号(D点の信号)がともに基準電圧Vrefを中心として反転した波形になる。その結果、角速度検出信号32は、図7とは逆に基準電圧Vrefよりも低い電圧の信号になる。
【0098】
このようにして角速度検出装置1は角速度を検出することができる。そして、角速度検出信号32は、その電圧値がコリオリの力の大きさ(角速度の大きさ)に比例し、その極性が回転方向により決まるので、角速度検出信号32に基づいて角速度検出装置1に加えられた角速度を計算することができる。
【0099】
なお、角速度検出モード(通常動作時)では、仮に異常が発生していても、フィルター回路380の出力信号(H点の信号)の電圧値が検出可能範囲内の電圧値であれば、異常を検出することができない。異常は様々な要因で発生する。例えば、振動片の一部が破損した場合には、ジャイロセンサ素子の振動状態が変化するため、コリオリ力の元になる駆動振動が変化することで、異常となる。このような、ジャイロセンサー素子100に起因する異常の他に角速度検出用IC10の内部の回路に起因する異常も考えられる。例えば、断線や短絡等の回路故障、メモリー50に格納されたデータが壊れる等により、可変増幅回路370の増幅率(又は減衰率)の設定値が正常で無くなれば、異常となる。
【0100】
次に、図1のZ点及びA点〜H点における信号波形の一例を示して、第1実施形態の角速度検出装置1の異常診断モードにおける動作についてより具体的に説明する。
【0101】
図8は、異常診断モードにおける信号波形の一例を示す図である。図8において横軸は時間、縦軸は電圧を表す。また、図8において、角速度検出装置1は静止しているものとする。
【0102】
図8において、異常診断モードであるので、制御信号64(Z点の信号)は高電位に固定されている。角速度検出装置1は静止しているので、A点、B点、C点、D点、E点の各信号波形は図6と同じであり、その説明を省略する。
【0103】
AC増幅回路340の出力信号(E点の信号)は、同期検波回路350により検波信号34に基づいて同期検波される。ここで、制御信号64(Z点の信号)は高電位に固定されているため、検波信号34(位相変更回路352の出力信号(F点の信号))は、AC増幅回路220が出力する方形波電圧信号(B点の信号)に対して位相変更量52に応じた位相差(Δφとする)を有する方形波電圧信号になる。ここで、AC増幅回路340の出力信号(E点の信号)と検波信号34(位相変更回路352の出力信号(F点の信号))は90°−Δφだけ位相がずれているので、同期検波回路350の出力信号(G点の信号)において、基準電圧Vrefよりも高い電圧の積分量と基準電圧Vrefよりも低い電圧の積分量が一致せず、その差は漏れ信号のレベルに応じて変化する。その結果、フィルター回路380の出力(H点)には、漏れ信号のレベルと位相変更量52に応じた電圧値V2の直流電圧信号(角速度検出信号32)が発生する。
【0104】
以上説明したように、第1実施形態の角速度検出装置1では、位相変更回路352により、制御信号64が低電位(角速度検出モード(通常動作時))か高電位(異常診断モード)かによって、AC増幅回路340の出力信号(被検波信号36)に対する検波信号34の立ち上がり及び立ち下がりの相対的なタイミングが変更される。その結果、角速度検出信号32は、角速度検出モード(通常動作時)では漏れ信号がキャンセルされて角速度の大きさに応じた電圧値となり、異常診断モードでは漏れ信号のレベルに応じた電圧値となる。
【0105】
従って、第1実施形態の角速度検出装置1によれば、異常診断モードにおける角速度検出信号32の電圧値に基づいて、回路異常だけでなく素子異常についても外部から容易に判断することができる。
【0106】
また、第1実施形態の角速度検出装置1では、異常診断モードと角速度検出モード(通常動作時)でジャイロセンサー素子100の振動状態が変わらない。従って、第1実施形態の角速度検出装置1によれば、角速度検出モード(通常動作時)で発生する異常を異常診断モードでも確実に検出することができるので、より信頼性の高い異常診断が可能である。
【0107】
なお、漏れ信号が大きい場合、位相変更量52を小さくしなければ角速度検出信号32の電圧値が飽和してしまい、異常判定を行うことができなくなる。そのため、実際の設計においては、位相変更量52の精度を考慮し、差動増幅回路330の出力に流れる漏れ信号に基づく電流が外部出力端子11を介してジャイロセンサー素子100に流れる駆動電流の1%以下となるように調整するのが望ましい。
【0108】
本実施形態では、ジャイロセンサー素子100はダブルT型の振動片を用いて構成されている。そのため、レーザー加工等により、複数の駆動振動腕101aの先端の錘部103の質量に差をつけることにより、駆動振動腕101aの屈曲振動と駆動振動腕101bの屈曲振動をアンバランスにして所望のレベルの漏れ信号を積極的に発生させることが容易である。しかし、実際には、漏れ信号のレベルはジャイロセンサー素子毎にばらつく。そこで、例えば、角速度検出装置1の出荷検査時等において、制御信号64が低電位の時の角速度検出信号32が所定の電圧値となるように位相変更量52を調整し、不揮発性のメモリー50(例えば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory))に書き込んでおけばよい。
【0109】
なお、異常診断モードにおいて、角速度検出装置1に角速度が加われば、角速度検出信号32には、漏れ信号のレベルに応じた電圧値と角速度の大きさに応じた電圧値(角速度検出モードとは異なり、不正確な電圧値である)が重畳された電圧値となるため、異常の有無を判定することが難しい。従って、角速度検出装置1に角速度が加わっていない状態(例えば、静止している状態)で、異常診断モードに設定することが望ましい。例えば、本実施形態の角速度検出装置1が車両に搭載されている場合、当該車両のエンジン始動時のプライマリーチェックにおいて異常診断モードに設定すればよい。
【0110】
[第2実施形態]
図9は、第2実施形態の角速度検出装置の構成について説明するための図である。図9において、図1と同じ構成には同じ符号を付しており、その説明を省略又は簡略する。
【0111】
第2実施形態では、第1実施形態に対して位相変更回路352がデューティー比変更回路356に置き換えられている。
【0112】
デューティー比変更回路356は、制御信号64が低電位の時は、デューティー比が50%で方形波電圧信号22と同位相の検波信号34を生成し、制御信号64が高電位の時は方形波電圧信号22に対してメモリー50に記憶されたデューティー比変更量54に対応するデューティー比の検波信号34を生成する。
【0113】
デューティー比変更回路356は、例えば、図10に示すように、遅延回路357、スイッチ回路358及び論理和回路359を用いて実現することができる。スイッチ回路358により、制御信号64が低電位の時は接地電位が選択され、制御信号64が高電位の時は遅延回路357により方形波電圧信号22をデューティー比変更量54に応じて遅延させた信号が選択される。そして、論理和回路359により、方形波電圧信号22とスイッチ回路358の出力信号の論理和がとられて検波信号34が生成される。
【0114】
なお、デューティー比変更回路356は、本発明におけるタイミング変更部として機能する。
【0115】
制御信号64が低電位の時(角速度検出モード(通常動作時))は、デューティー比が50%の検波信号34と漏れ信号の位相差が90°になるので、漏れ信号がキャンセルされ、角速度検出信号32は角速度の大きさに応じた電圧値となる。
【0116】
一方、制御信号64が高電位の時(異常診断モード)は、検波信号34のデューティー比が50%ではなくなるため、角速度検出信号32は、漏れ信号のレベルに応じた電圧値と角速度の大きさに応じた電圧値が重畳された電圧値となる。ただし、角速度検出装置1に角速度が加わっていない状態(例えば、静止している状態)で異常診断モードに設定すれば、角速度が0なので、角速度検出信号32は漏れ信号のレベルに応じた電圧値となる。
【0117】
次に、図9のZ点及びA点〜H点における信号波形の一例を示して、第2実施形態の角速度検出装置1の異常診断モードにおける動作についてより具体的に説明する。なお、角速度検出モード(通常動作時)における信号波形は図6、図7に示した信号波形と同様であるためその説明を省略する。
【0118】
図11は、異常診断モードにおける信号波形の一例を示す図である。図11において横軸は時間、縦軸は電圧を表す。また、図11において、角速度検出装置1は静止しているものとする。
【0119】
図11において、異常診断モードであるので、制御信号64(Z点の信号)は高電位に固定されている。A点、B点、C点、D点、E点の各信号波形は図8と同じであるため、その説明を省略する。
【0120】
制御信号64(Z点の信号)は高電位に固定されているため、検波信号34(デューティー比変更回路356の出力信号(F点の信号))は、デューティー比変更量54に応じたデューティー比(50%でない)の方形波電圧信号になる。なお、本出願においてデューティー比は方形波のパルス幅を周期で割ったものに100[%]をかけたものとして表す。従って、同期検波回路350の出力信号(G点の信号)において、基準電圧Vrefよりも高い電圧の積分量と基準電圧Vrefよりも低い電圧の積分量が一致せず、その差は漏れ信号のレベルに応じて変化する。その結果、フィルター回路380の出力(H点)には、漏れ信号のレベルとデューティー比変更量54に応じた電圧値V3の直流電圧信号(角速度検出信号32)が発生する。
【0121】
以上説明したように、第2実施形態の角速度検出装置1では、デューティー比変更回路356により、制御信号64が低電位(角速度検出モード(通常動作時))か高電位(異常診断モード)かによって、AC増幅回路340の出力信号(被検波信号36)に対する検波信号34の立ち下がりの相対的なタイミングが変更される。その結果、角速度検出信号32は、角速度検出モード(通常動作時)では漏れ信号がキャンセルされて角速度の大きさに応じた電圧値となり、異常診断モードでは漏れ信号のレベルに応じた電圧値となる。
【0122】
従って、第2実施形態の角速度検出装置1によれば、異常診断モードにおける角速度検出信号32の電圧値に基づいて、回路異常だけでなく素子異常についても外部から容易に判断することができる。
【0123】
また、第2実施形態の角速度検出装置1では、第1実施形態と同様に、異常診断モードと角速度検出モード(通常動作時)でジャイロセンサー素子100の振動状態が変わらない。従って、第2実施形態の角速度検出装置1によれば、角速度検出モード(通常動作時)で発生する異常を異常診断モードでも確実に検出することができるので、より信頼性の高い異常診断が可能である。
【0124】
[第3実施形態]
図12は、第3実施形態の角速度検出装置の構成について説明するための図である。図12において、図1と同じ構成には同じ符号を付しており、その説明を省略又は簡略する。
【0125】
第3実施形態では、第1実施形態に対して異常判定回路70が追加されている。
【0126】
異常判定回路70は、制御信号64が低電位の時(角速度検出モード(通常動作時))は第1の電位(例えば低電位)の異常判定信号72を生成する。一方、制御信号64が高電位の時(異常診断モード)は、異常判定回路70は、角速度検出信号32の電圧値が正常範囲が否かを判定し、正常であれば第1の電位(例えば低電位)、異常であれば第2の電位(例えば高電位)の異常判定信号72を生成する。そして、異常判定信号72は外部出力端子18を介して外部に出力される。
【0127】
なお、異常判定回路70は、本発明における異常判定部として機能する。
【0128】
なお、図12に示した構成では、図1に示した第1実施形態の構成に対して異常判定回路70を追加しているが、図9に示した第2実施形態の構成に対して、図12と同様に異常判定回路70を追加してもよい。
【0129】
第3実施形態の角速度検出装置1によれば、角速度検出装置1を静止させた状態で異常診断モードに設定して異常判定信号72をモニターすれば、角速度検出装置1の素子異常を含む異常の有無を外部から直接的に認識することができる。従って、角速度検出信号32の電圧値に基づいて角速度検出装置1の異常の有無を判断する場合と比較して、外部装置の負荷を低減することができる。
【0130】
2.物理量検出装置の異常診断システム及び異常診断方法
以下では、物理量として角速度を検出する物理量検出装置(角速度検出装置)の異常診断システム及び異常診断方法を例にとり説明するが、本発明は、角速度、加速度、地磁気、圧力等の様々な物理量のいずれかを検出することができる装置の異常診断システム及び異常診断方法に適用可能である。
【0131】
[第1実施形態]
図13は、第1実施形態の角速度検出装置の異常診断システムの構成の一例を示す図である。
【0132】
図13に示すように、第1実施形態の異常診断システム1000は、角速度検出装置1とマイクロコンピューター2を含んで構成されている。
【0133】
角速度検出装置1は、例えば、図1に示した第1実施形態の角速度検出装置や、図9に示した第2実施形態の角速度検出装置である。
【0134】
マイクロコンピューター2は、角速度検出装置1の外部入力端子16に異常診断モード設定信号62を供給し、外部入力端子17から出力される角速度検出信号32に基づいて異常の有無を判定し、異常判定信号4を出力する。すなわち、マイクロコンピューター2は、本発明における異常診断装置として機能する。そして、異常判定信号4は、例えば、不図示の表示装置に入力されて角速度検出装置1が異常であれば警告表示される。
【0135】
なお、マイクロコンピューター2は、異常診断を実施しない時は、角速度検出信号32に基づいて所定の演算を行うようにしてもよい。例えば、マイクロコンピューター2は、角速度検出信号32の電圧値を積分することにより角速度検出装置1が搭載された移動体の角度を計算し、不図示の速度センサーから得た速度情報と組み合わせて現在の位置を計算するようにしてもよい。
【0136】
図14は、図13に示した異常診断システム1000による角速度検出装置の異常診断のフローチャートの一例を示す図である。
【0137】
図14に示すように、異常診断開始イベントが発生すると(ステップS10でYesの場合)、マイクロコンピューター2は、角速度検出装置1の外部入力端子16に異常診断モード設定信号62を供給する(ステップ20)。異常診断開始イベントは、角速度検出装置1に角速度が加わっていない状態(例えば、静止している状態)、例えば、角速度検出装置1が車両に搭載されているのであれば、当該車両のエンジン始動時等に発生するようにしてもよい。
【0138】
角速度検出装置1は、異常診断モード設定信号62を受け取ると、前述した位相変更回路352又はデューティー比変更回路356により、検波信号34の位相又はデューティー比を変更して同期検波し、漏れ信号の少なくとも一部を検出する(ステップS30)。
【0139】
そして、角速度検出装置1は、前述したように、同期検波回路350の出力信号に基づいて、漏れ信号のレベルに応じた電圧値の角速度検出信号32を出力する(ステップS40)。
【0140】
そして、マイクロコンピューター2は、角速度検出信号32を受け取って角速度検出装置1の異常を診断し、異常判定信号4を出力する(ステップS50)。例えば、マイクロコンピューター2は、角速度検出信号32の電圧値が正常範囲が否かを判定し、正常であれば第1の電位(例えば低電位)、異常であれば第2の電位(例えば高電位)の異常判定信号4を出力する。
【0141】
第1実施形態の異常診断システム1000は、前述した第1実施形態又は第2実施形態の角速度検出装置1を用いることにより、より信頼性の高い異常診断が可能である。
【0142】
[第2実施形態]
図15は、第2実施形態の角速度検出装置の異常診断システムの構成の一例を示す図である。
【0143】
図15に示すように、第2実施形態の異常診断システム1000は、角速度検出装置1とマイクロコンピューター2を含んで構成されている。
【0144】
角速度検出装置1は、例えば、図12に示した第3実施形態の角速度検出装置である。
【0145】
マイクロコンピューター2は、角速度検出装置1の外部入力端子16に異常診断モード設定信号62を供給し、角速度検出装置1は、異常診断モード設定信号62を受け取り、外部出力端子18から異常判定信号72を出力する。異常判定信号72は、例えば、不図示の表示装置に入力されて角速度検出装置1が異常であれば警告表示される。
【0146】
なお、マイクロコンピューター2は、角速度検出装置1が外部出力端子17から出力する角速度検出信号32を受け取って所定の演算を行うようにしてもよい。さらに、マイクロコンピューター2は、異常判定信号72を受け取り、角速度検出装置1が異常であれば角速度検出信号32に基づく演算を行わないようにしてもよい。
【0147】
図16は、図15に示した異常診断システム1000による角速度検出装置の異常診断のフローチャートの一例を示す図である。
【0148】
図16のフローチャートのステップS110、S120、S130の処理は、それぞれ図14のフローチャートのステップS10、S20、S30の処理と同じであるため、説明を省略する。
【0149】
ステップS110、S120、S130の処理により、角速度検出装置1において、同期検波により漏れ信号の少なくとも一部が検出される。
【0150】
そして、角速度検出装置1は、前述したように、同期検波回路350の出力信号に基づいて、異常判定信号72を生成し、外部出力端子18から出力する。
【0151】
第2実施形態の異常診断システム1000は、前述した第3実施形態の角速度検出装置1を用いることにより、より信頼性の高い異常診断が可能である。さらに、マイクロコンピューター2は、異常判定信号72により、角速度検出装置1の異常の有無を直接的に認識することができるので、マイクロコンピューター2の負荷を低減することができる。
【0152】
なお、本発明は本実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0153】
例えば、第1実施形態の角速度検出装置1では、図1に示したように、検波信号34の位相を変更することにより、AC増幅回路340の出力信号(被検波信号36)に対する検波信号34の立ち上がり及び立ち下がりの相対的なタイミングが変更されているが、差動増幅回路330の出力信号やAC増幅回路340の出力信号の位相を変更することにより、AC増幅回路340の出力信号(被検波信号36)に対する検波信号34の立ち上がり及び立ち下がりの相対的なタイミングを変更するように構成してもよい。
【0154】
また、例えば、第2実施形態の角速度検出装置1では、図9に示したように、検波信号34のデューティー比を変更することにより、AC増幅回路340の出力信号(被検波信号36)に対する検波信号34の立ち下がりの相対的なタイミングが変更されているが、検波信号34の立ち上がりの相対的なタイミングを変更するように構成してもよい。
【0155】
また、例えば、第1実施形態〜第3実施形態の角速度検出装置1において、位相変更回路352とデューティー比変更回路356を直列に接続して検波信号34の位相とデューティー比の両方を変更することにより、AC増幅回路340の出力信号(被検波信号36)に対する検波信号34の立ち上がり及び立ち下がりの少なくとも一方の相対的なタイミングを変更するようにしてもよい。
【0156】
また、例えば、第1実施形態又は第3実施形態の角速度検出装置1において、AC増幅回路220は、方形波電圧信号22を出力するようにしているが、例えば、正弦波電圧信号を出力するようにしてもよい。その場合、同期検波回路350は、正弦波の検波信号34により同期検波を行う構成に変更すればよい。
【0157】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0158】
1 角速度検出装置、2 マイクロコンピューター、4 異常判定信号、10 角速度検出用IC、11 外部出力端子、12〜16 外部入力端子、17〜18 外部出力端子、20 駆動回路、22 方形波電圧信号、30 検出回路、32 角速度検出信号、34 検波信号、36 被検波信号、40 基準電源回路、50 メモリー、52 位相変更量、54 デューティー比変更量、60 制御部、62 異常診断モード設定信号、64 制御信号、70 異常判定回路、72 異常判定信号、100 ジャイロセンサー素子、101a〜101b 駆動振動腕、102 検出振動腕、103 錘部、104a〜104b 駆動用基部、105a〜105b 連結腕、106 錘部、107 検出用基部、112〜113 駆動電極、114〜115 検出電極、116 共通電極、210 I/V変換回路(電流電圧変換回路)、220 AC増幅回路、230 振幅調整回路、310 チャージアンプ回路、320 チャージアンプ回路、330 差動増幅回路、340 AC増幅回路、350 同期検波回路、352 位相変更回路、353 遅延回路、354 スイッチ回路、356 デューティー比変更回路、357 遅延回路、358 スイッチ回路、359 論理和回路、360 平滑回路、370 可変増幅回路、380 フィルター回路、1000 異常診断システム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の物理量を検出する物理量検出装置であって、
駆動電極と、検出電極と、を有し、前記駆動電極に供給される駆動信号に基づいて振動することにより、前記検出電極に、前記物理量の大きさに応じた検出信号とともに前記駆動信号に基づく振動の漏れ信号を発生させる物理量検出素子と、
前記駆動信号を生成する駆動部と、
前記駆動信号に同期した検波信号に基づいて、前記検出信号と前記漏れ信号を含む被検波信号に対して同期検波を行う同期検波部と、
制御信号に基づいて、同期検波により前記漏れ信号の少なくとも一部が出力されるように、前記被検波信号に対する前記検波信号の立ち上がり及び立ち下がりの少なくとも一方の相対的なタイミングを変更するタイミング変更部と、を含むことを特徴とする物理量検出装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記タイミング変更部は、
前記制御信号に基づき、前記検波信号と前記被検波信号との位相差を変更することを特徴とする物理量検出装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記タイミング変更部は、
前記制御信号に基づき、前記検波信号のデューティー比を変更することを特徴とする物理量検出装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかにおいて、
前記タイミング変更部は、
前記相対的なタイミングの変更量が調整可能であることを特徴とする物理量検出装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかにおいて、
前記同期検波部の出力信号に基づいて、当該物理量検出装置の異常の有無を判定する異常判定部を含むことを特徴とする物理量検出装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかにおいて、
前記物理量は、角速度であることを特徴とする物理量検出装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の物理量検出装置と、
当該物理量検出装置に前記制御信号を供給し、当該物理量検出装置が前記同期検波部の出力信号に基づいて生成した信号を受け取り、当該信号に基づいて当該物理量検出装置の異常を診断する異常診断装置と、を含むことを特徴とする物理量検出装置の異常診断システム。
【請求項8】
駆動電極と、検出電極と、を有し、前記駆動電極に供給される駆動信号に基づいて振動することにより、前記検出電極に、所定の物理量の大きさに応じた検出信号とともに前記駆動信号に基づく振動の漏れ信号を発生させる物理量検出素子と、前記駆動信号を生成する駆動部と、前記駆動信号に同期した検波信号に基づいて、前記検出信号と前記漏れ信号を含む被検波信号に対して同期検波を行う同期検波部と、を含む物理量検出装置の制御方法であって、
当該物理量検出装置に、前記漏れ信号の少なくとも一部が出力されるように、前記被検波信号に対する前記検波信号の立ち上がり及び立ち下がりの少なくとも一方の相対的なタイミングを変更して同期検波させるステップと、
当該物理量検出装置に、前記同期検波部の出力信号に基づいて、前記漏れ信号に応じた信号を生成させるステップと、を含むことを特徴とする物理量検出装置の制御方法。
【請求項9】
駆動電極と、検出電極と、を有し、前記駆動電極に供給される駆動信号に基づいて振動することにより、前記検出電極に、所定の物理量の大きさに応じた検出信号とともに前記駆動信号に基づく振動の漏れ信号を発生させる物理量検出素子と、前記駆動信号を生成する駆動部と、前記駆動信号に同期した検波信号に基づいて、前記検出信号と前記漏れ信号を含む被検波信号に対して同期検波を行う同期検波部と、を含む物理量検出装置の制御方法であって、
当該物理量検出装置に、前記漏れ信号の少なくとも一部が出力されるように、前記被検波信号に対する前記検波信号の立ち上がり及び立ち下がりの少なくとも一方の相対的なタイミングを変更して同期検波させるステップと、
当該物理量検出装置に、前記同期検波部の出力信号に基づいて、当該物理量検出装置の異常の有無を判定させるステップと、を含むことを特徴とする物理量検出装置の制御方法。
【請求項10】
駆動電極と、検出電極と、を有し、前記駆動電極に供給される駆動信号に基づいて振動することにより、前記検出電極に、所定の物理量の大きさに応じた検出信号とともに前記駆動信号に基づく振動の漏れ信号を発生させる物理量検出素子と、前記駆動信号を生成する駆動部と、前記駆動信号に同期した検波信号に基づいて、前記検出信号と前記漏れ信号を含む被検波信号に対して同期検波を行う同期検波部と、を含む物理量検出装置の異常診断方法であって、
当該物理量検出装置に、前記漏れ信号の少なくとも一部が出力されるように、前記被検波信号に対する前記検波信号の立ち上がり及び立ち下がりの少なくとも一方の相対的なタイミングを変更して同期検波させるステップと、
当該物理量検出装置に、前記同期検波部の出力信号に基づいて、前記漏れ信号に応じた信号を生成させるステップと、
前記漏れ信号に応じた信号に基づいて、当該物理量検出装置の異常を診断するステップと、を含むことを特徴とする物理量検出装置の異常診断方法。
【請求項1】
所定の物理量を検出する物理量検出装置であって、
駆動電極と、検出電極と、を有し、前記駆動電極に供給される駆動信号に基づいて振動することにより、前記検出電極に、前記物理量の大きさに応じた検出信号とともに前記駆動信号に基づく振動の漏れ信号を発生させる物理量検出素子と、
前記駆動信号を生成する駆動部と、
前記駆動信号に同期した検波信号に基づいて、前記検出信号と前記漏れ信号を含む被検波信号に対して同期検波を行う同期検波部と、
制御信号に基づいて、同期検波により前記漏れ信号の少なくとも一部が出力されるように、前記被検波信号に対する前記検波信号の立ち上がり及び立ち下がりの少なくとも一方の相対的なタイミングを変更するタイミング変更部と、を含むことを特徴とする物理量検出装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記タイミング変更部は、
前記制御信号に基づき、前記検波信号と前記被検波信号との位相差を変更することを特徴とする物理量検出装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記タイミング変更部は、
前記制御信号に基づき、前記検波信号のデューティー比を変更することを特徴とする物理量検出装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかにおいて、
前記タイミング変更部は、
前記相対的なタイミングの変更量が調整可能であることを特徴とする物理量検出装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかにおいて、
前記同期検波部の出力信号に基づいて、当該物理量検出装置の異常の有無を判定する異常判定部を含むことを特徴とする物理量検出装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかにおいて、
前記物理量は、角速度であることを特徴とする物理量検出装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の物理量検出装置と、
当該物理量検出装置に前記制御信号を供給し、当該物理量検出装置が前記同期検波部の出力信号に基づいて生成した信号を受け取り、当該信号に基づいて当該物理量検出装置の異常を診断する異常診断装置と、を含むことを特徴とする物理量検出装置の異常診断システム。
【請求項8】
駆動電極と、検出電極と、を有し、前記駆動電極に供給される駆動信号に基づいて振動することにより、前記検出電極に、所定の物理量の大きさに応じた検出信号とともに前記駆動信号に基づく振動の漏れ信号を発生させる物理量検出素子と、前記駆動信号を生成する駆動部と、前記駆動信号に同期した検波信号に基づいて、前記検出信号と前記漏れ信号を含む被検波信号に対して同期検波を行う同期検波部と、を含む物理量検出装置の制御方法であって、
当該物理量検出装置に、前記漏れ信号の少なくとも一部が出力されるように、前記被検波信号に対する前記検波信号の立ち上がり及び立ち下がりの少なくとも一方の相対的なタイミングを変更して同期検波させるステップと、
当該物理量検出装置に、前記同期検波部の出力信号に基づいて、前記漏れ信号に応じた信号を生成させるステップと、を含むことを特徴とする物理量検出装置の制御方法。
【請求項9】
駆動電極と、検出電極と、を有し、前記駆動電極に供給される駆動信号に基づいて振動することにより、前記検出電極に、所定の物理量の大きさに応じた検出信号とともに前記駆動信号に基づく振動の漏れ信号を発生させる物理量検出素子と、前記駆動信号を生成する駆動部と、前記駆動信号に同期した検波信号に基づいて、前記検出信号と前記漏れ信号を含む被検波信号に対して同期検波を行う同期検波部と、を含む物理量検出装置の制御方法であって、
当該物理量検出装置に、前記漏れ信号の少なくとも一部が出力されるように、前記被検波信号に対する前記検波信号の立ち上がり及び立ち下がりの少なくとも一方の相対的なタイミングを変更して同期検波させるステップと、
当該物理量検出装置に、前記同期検波部の出力信号に基づいて、当該物理量検出装置の異常の有無を判定させるステップと、を含むことを特徴とする物理量検出装置の制御方法。
【請求項10】
駆動電極と、検出電極と、を有し、前記駆動電極に供給される駆動信号に基づいて振動することにより、前記検出電極に、所定の物理量の大きさに応じた検出信号とともに前記駆動信号に基づく振動の漏れ信号を発生させる物理量検出素子と、前記駆動信号を生成する駆動部と、前記駆動信号に同期した検波信号に基づいて、前記検出信号と前記漏れ信号を含む被検波信号に対して同期検波を行う同期検波部と、を含む物理量検出装置の異常診断方法であって、
当該物理量検出装置に、前記漏れ信号の少なくとも一部が出力されるように、前記被検波信号に対する前記検波信号の立ち上がり及び立ち下がりの少なくとも一方の相対的なタイミングを変更して同期検波させるステップと、
当該物理量検出装置に、前記同期検波部の出力信号に基づいて、前記漏れ信号に応じた信号を生成させるステップと、
前記漏れ信号に応じた信号に基づいて、当該物理量検出装置の異常を診断するステップと、を含むことを特徴とする物理量検出装置の異常診断方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2010−286368(P2010−286368A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−140700(P2009−140700)
【出願日】平成21年6月12日(2009.6.12)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【出願人】(390009667)セイコーNPC株式会社 (161)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月12日(2009.6.12)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【出願人】(390009667)セイコーNPC株式会社 (161)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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