物質検知センサ
【課題】物質を優れた精度で、かつ、確実に検知することのできる、物質検知センサを提供する。
【解決手段】絶縁層2を、電極4および導電性層5が内側に向き、かつ、端子部6の膨出部10が外側に向くように、略円筒状に丸めるとともに、絶縁層2の重複領域20を厚み方向に重ねる。このガス検知センサ1では、絶縁層2に突出部を形成しないので、重複領域20におけるシール性を高めることができるとともに、絶縁層2の内側の電極4と電気的に接続される端子部6を、絶縁層2の外側に露出させることができる。そして、絶縁層2の内部に特定のガスを流し、特定のガスの漏出を防止しながら、端子部6から、1対の電極4間における導電性層5の電気抵抗値の変化を検知する。
【解決手段】絶縁層2を、電極4および導電性層5が内側に向き、かつ、端子部6の膨出部10が外側に向くように、略円筒状に丸めるとともに、絶縁層2の重複領域20を厚み方向に重ねる。このガス検知センサ1では、絶縁層2に突出部を形成しないので、重複領域20におけるシール性を高めることができるとともに、絶縁層2の内側の電極4と電気的に接続される端子部6を、絶縁層2の外側に露出させることができる。そして、絶縁層2の内部に特定のガスを流し、特定のガスの漏出を防止しながら、端子部6から、1対の電極4間における導電性層5の電気抵抗値の変化を検知する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物質検知センサ、詳しくは、主としてガスの種類や量を検知するための物質検知センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、気体や液体を検知する物質センサが種々の産業分野に用いられている。このような物質センサは、特定の気体や液体における定性分析や定量分析などに用いられている。
このような物質検知センサとしては、バッチ型やフローセル型があり、連続測定およびデータの再現性の観点から、バッチ型よりもフローセル型が好ましく用いられている。
【0003】
フローセル型の物質検知センサとして、例えば、円筒状のフレキシブル基板と、その内面に形成され、互いに間隔を隔てて対向配置される櫛形電極と、フレキシブル基板の内面に、櫛形電極を被覆するように形成されるガス感応膜とを備えるガスセンサが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。そして、このガスセンサでは、円筒状のフレキシブル基板内に、ガスを連続的に流しながら、ガスを検知するようにしている。
【0004】
より具体的には、特許文献1のガスセンサでは、フレキシブル基板に、互いに対向する両端部から外側に突出する2つの突出部が形成されており、各突出部の表面には、櫛形電極に連続するリード部が設けられている。
そして、特許文献1のガスセンサを形成するには、櫛形電極が積層された略平板状のフレキシブル基板を、櫛形電極が内側となるように、円筒状に丸めながら、フレキシブル基板の両端部を相互に突き合わせる。それと同時に、突出部とともにリード部を折り曲げて、それらを円筒の外側に突出させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−267879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のガスセンサでは、各突出部があるために、フレキシブル基板を円筒状に形成したときには、フレキシブル基板の両端部が単に突き合わされる。そのため、ガスセンサの測定時には、円筒状に形成したフレキシブル基板内を流れるガスが、フレキシブル基板の突き合わされた両端部において内側から外側に漏出し易くなる。
そのため、ガス検知の精度が低下し、さらには、ガスが微量である場合には、ガスそのものを検知できないという不具合がある。
【0007】
本発明の目的は、物質を優れた精度で、かつ、確実に検知することのできる、物質検知センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の物質検知センサは、少なくとも2つのビアホールが形成される絶縁層と、前記絶縁層の表面に、各前記ビアホールに対応して形成され、互いに間隔を隔てて対向配置される各電極と、前記絶縁層の表面に、各前記電極間にわたって形成され、特定の物質の種類および/または量に応じて、膨潤する割合が変化する導電性層と、前記絶縁層の裏面に露出するように、各前記ビアホール内に充填され、各前記電極と電気的に接続される端子部とを備えていることを特徴としている。
【0009】
この物質検知センサでは、絶縁層の裏面側において、端子部から1対の電極間の電気抵抗の変化を検知することができる。そのため、絶縁層を電極が内側または外側に向くように筒状に形成しても、端子部は、必ず電極と反対側の外側または内側に露出する。
その結果、突出部の形成を不要とすることができ、物質を優れた精度で検知することができる。
【0010】
また、本発明の物質検知センサでは、前記絶縁層は、筒状に形成されていることが好適であり、また、前記絶縁層は、前記絶縁層の両端部が厚み方向に重なるように、筒状に形成されていることが好適であり、さらに、各前記電極は、互いに対向する対向方向に直交する方向に沿って延びており、各前記電極の延びる方向と、前記絶縁層の筒の周方向とが、直交していることが好適である。
【0011】
この物質検知センサでは、絶縁層を筒状に形成するときに、絶縁層の両端部が重なっているので、重なり部分におけるシール性を高めて、検知物質の漏出をより一層有効に防止することができる。
さらに、この物質検知センサでは、電極が、絶縁層の筒の周方向に直交する方向に沿って延びている。そのため、電極は、絶縁層が筒状に成形される時の応力を受けにくいので、断線などの損傷を有効に防止することができる。
【0012】
その結果、物質をより一層優れた精度で検知することができる。
また、本発明の物質検知センサでは、前記電極は、前記導電性層に被覆されていることが好適である。
この物質検知センサでは、導電性層によって、電極が腐食性の物質に暴露されることを防止して、電極が劣化することを防止することができる。そのため、物質をより一層優れた精度で検知することができる。
【0013】
また、本発明の物質検知センサでは、前記絶縁層の裏面には、金属板が、前記端子部と重ならないように設けられていることが好適である。
この物質検知センサでは、金属板によって、絶縁層を筒状に成形した後における形状保持性を高めることができる。そのため、絶縁層の形状を確実に保持することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の物質検知センサでは、電気信号を取り出すための突出部の形成を不要とすることができ、物質を優れた精度で検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の物質検知センサの一実施形態であるガス検知センサの一部切欠斜視図を示す。
【図2】図1において、端子部に一致する位置でガス検知センサを切断したときの断面図を示す。
【図3】図1に示すガス検知センサを展開したときの平面図を示す。
【図4】図1に示すガス検知センサを展開したときの底面図を示す。
【図5】図3に示すガス検知センサのA−A線に沿う断面図を示す。
【図6】図3に示すガス検知センサのB−B線に沿う断面図を示す。
【図7】図5に示すガス検知センサの製造方法の工程図であり、(a)は、絶縁層を形成する工程、(b)は、電極および充填部を形成する工程、(c)は、膨出部を形成する工程、(d)は、導電性層を形成する工程を示す。
【図8】本発明の物質検知センサの他の実施形態のガス検知センサ(ランド部と、直線部の先端部および後端部とが導電性層から露出する態様)を展開したときの平面図を示す。
【図9】本発明の物質検知センサの他の実施形態のガス検知センサ(フレキシブル基板が略角筒状に形成され、絶縁層の裏面に金属板が設けられる態様)の一部切欠斜視図を示す。
【図10】図9において、端子部に一致する位置でガス検知センサを切断したときの断面図を示す。
【図11】図9において、直線部に一致する位置でガス検知センサを切断したときの断面図を示す。
【図12】本発明の物質検知センサの他の実施形態のガス検知センサ(電極および導電性層が絶縁層の外側に向く態様)の一部切欠斜視図を示す。
【図13】図12において、端子部に一致する位置でガス検知センサを切断したときの断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の物質検知センサの一実施形態であるガス検知センサの一部切欠斜視図、図2は、図1において、端子部に一致する位置でガス検知センサを切断したときの断面図、図3は、図1のガス検知センサを展開したときの平面図、図4は、図1のガス検知センサを展開したときの底面図、図5は、図3に示すガス検知センサのA−A線に沿う断面図、図6は、図3に示すガス検知センサのB−B線に沿う断面図、図7は、図5に示すガス検知センサの製造方法の工程図を示す。
【0017】
なお、図1では、電極4(後述)および端子部6(後述)の相対配置を明確に示すため、絶縁層2(後述)の一部と、導電性層5(後述)の一部とを切り欠き、さらに、後述する配線14および外部接続用端子部15を省略している。
図1および図2において、このガス検知センサ1は、平板シート形状の絶縁層2を略円筒状に形成することにより形成されており、内部に特定のガスを流して、その特定のガスの種類および/または量(濃度)について、定性分析および/または定量分析する。
【0018】
ガス検知センサ1は、図3および図4に示すように、絶縁層2に設けられる2つの検知ユニット13を備えている。
各検知ユニット13は、絶縁層2において、幅方向(後述する直線部8の幅方向であり、図3および図4における左右方向、以下同様。)において、互いに間隔を隔てて対向配置され、長手方向(幅方向に直交する方向であり、図3および図4における上下方向、以下同様。)に沿って延びるように、平面視略矩形状に区画されている。
【0019】
各検知ユニット13は、図5および図6に示すように、絶縁層2における各検知ユニット13を区画するユニット領域16と、ユニット領域16の表面に形成される電極4と、各ユニット領域16の表面に、電極4を被覆するように形成される導電性層5と、各ユニット領域16内および裏面に設けられる端子部6とを備えている。
各ユニット領域16には、2つのビアホール3が形成されている。
【0020】
各ビアホール3は、図3の破線および図4の破線で示すように、各ユニット領域16の先端部(長手方向一端部、以下同様)に形成され、幅方向に互いに間隔を隔てて配置されている。各ビアホール3は、絶縁層2の厚み方向を貫通するように、平面視略円形状に形成されている。
なお、各ユニット領域16は、後述するように、絶縁層2の先端部に外部接続用領域18、および、絶縁層2の幅方向両端部に重複領域20のマージン部分が、それぞれ確保されるように、区画されている。
【0021】
電極4は、各ビアホール3に対応するように形成されており、各ユニット領域16に1対設けられている。1対の電極4は、長手方向に延び、幅方向に間隔を隔てて対向配置されている。また、各電極4は、ランド部7と、直線部8とを連続して備えている。
各ランド部7は、図3の破線で示すように、平面視において、各ビアホール3を含むように配置され、略矩形状に形成されている。
【0022】
各直線部8は、長手方向に沿って互いに平行となるように、各ランド部7の後端から後側に向かって、長手方向に沿う直線状に延びている。
導電性層5は、各検知ユニット13において、各電極4間にわたって形成されており、より具体的には、各電極4を被覆するように配置され、平面視略矩形状に形成されている。
【0023】
導電性層5は、図5および図6に示すように、電極4の表面、つまり、電極4の上面、幅方向両側面および長手方向両側面(図5および図6において図示せず)を被覆するとともに、1対の電極4間および各電極4の周囲のユニット領域16の上面を被覆している。
端子部6は、各ビアホール3に対応して形成されており、各ユニット領域16に1対設けられている。各端子部6は、幅方向に間隔を隔てて対向配置されている。端子部6は、各ビアホール3に充填される充填部9と、充填部9からユニット領域16の裏面に膨出する膨出部10とを連続して備えている。
【0024】
充填部9は、ビアホール3に対応する形状に形成されており、具体的には、略円柱状に形成されている。充填部9の表面側(上端部)は、ランド部7の裏面と連続するように形成されている。これにより、各充填部9は、各電極4と電気的に接続されている。
膨出部10は、図4に示すように、底面視において、ビアホール3を含むように配置される略矩形状に形成されている。
【0025】
すなわち、膨出部10は、図5に示すように、充填部9の裏面と接続するように配置され、その裏面側(下端部)から、ビアホール3の周囲のユニット領域16の裏面を被覆するように、長手方向両側および幅方向両側に膨出するように形成されている。
また、このガス検知センサ1の絶縁層2の裏面には、図4に示すように、配線14と外部接続用端子部15とを一体的に備える外部接続用パターン17が設けられている。また、絶縁層2において、外部接続用パターン17が形成される領域は、外部接続用領域18して区画されている。
【0026】
外部接続用領域18は、ユニット領域16より先側において、絶縁層2の先端部に区画されている。
配線14は、外部接続用領域18の裏面において、各端子部6に対応して形成されている。
配線14は、後端が膨出部10の先端に接続され、先端が外部接続用端子部15の後端に接続されるように、引き回されている。
【0027】
外部接続用端子部15は、底面視略矩形状の角ランドとして形成されており、外部接続用領域18の裏面において、幅方向に互いに間隔を隔てて対向配置されている。より具体的には、外部接続用端子部15は、互いに近接(密接)するように、幅方向に並列配置されている。外部接続用端子部15には、電気抵抗検知器などの外部機器の接続端子(図示せず)が電気的に接続される。
【0028】
また、絶縁層2において、幅方向両端部が、絶縁層2を丸めるとき(後述)に重複する重複領域20として区画されている。
次に、このガス検知センサ1を製造する方法について、図7を参照して説明する。
まず、この方法では、図7(a)に示すように、ビアホール3が形成された絶縁層2を形成する。
【0029】
絶縁層2を形成する絶縁材料としては、例えば、液晶ポリマー(LCP;芳香族または脂肪族ジヒドロキシ化合物の重合体、芳香族または脂肪族ジカルボン酸の重合体、芳香族ヒドロキシカルボン酸の重合体、芳香族ジアミン、芳香族ヒドロキシアミンまたは芳香族アミノカルボン酸の重合体など)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルニトリル、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニリンサルファイド(PPS)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリ塩化ビニルなどの合成樹脂などが用いられる。これら絶縁材料は、単独使用または併用することができる。
【0030】
また、このような絶縁材料としては、好ましくは、吸水率、湿度膨張係数、熱膨張係数およびガス透過率が低い材料が用いられる。
また、好ましくは、液晶ポリマー、ポリエチレンテレフタレートまたはポリイミドが用いられる。液晶ポリマー、ポリエチレンテレフタレートおよびポリイミドは、吸水率やガス透過率(酸素透過率など)が低いため、雰囲気中の水蒸気の吸水により絶縁層2が膨潤することを防止でき、また、絶縁層2からガスや水蒸気が透過して、導電性層5に影響を与えることを防止できる。従って、そのような絶縁層2の膨潤に基づく誤検知や、絶縁層2の透過の影響に基づく誤検知を、防止することができる。
【0031】
絶縁層2を形成するには、例えば、まず、支持板19を用意する。
支持板19は、平板シート形状であって、例えば、PETなどの合成樹脂、例えば、ステンレス、42アロイなどの金属材料などからなる。支持板19の表面は、必要により、離型処理されてもよい。
次いで、支持板19の表面に、感光性の絶縁材料のワニスを塗布し乾燥して、皮膜を形成する。その後、皮膜を、フォトマスクを介して露光および現像して、ビアホール3が形成されたパターンで形成する。その後、皮膜を、加熱により硬化させることにより、支持板19の表面に、ビアホール3が形成された絶縁層2を形成する。
【0032】
また、支持板19の表面に、絶縁材料のワニスを塗布し乾燥して、加熱により硬化させることにより、平板シート形状の絶縁層2を形成する。その後、例えば、ドライエッチング、ウエットエッチングなどのエッチングにより、ビアホール3を形成することもできる。
また、予め、ビアホール3が形成された絶縁材料のシートを用意することもできる。
【0033】
このようにして形成される絶縁層2の寸法は、目的および用途により適宜選択され、幅方向長さが、例えば、5〜100mm、好ましくは、15〜50mmであり、長手方向長さが、例えば、5〜100mm、好ましくは、15〜50mmである。
また、各ビアホール3の内径(最大長さ)は、例えば、20〜1000μm、好ましくは、100〜500μmである。1対のビアホール3の間隔(幅方向における間隔)は、例えば、1〜30mm、好ましくは、2〜10mmである。
【0034】
絶縁層2の厚みは、例えば、5〜30μm、好ましくは、5〜25μmである。
次いで、この方法では、図7(b)に示すように、ユニット領域16の表面に、電極4および端子部6の充填部9を形成する。
電極4および充填部9を形成する導体材料としては、例えば、銅、ニッケル、金、錫、ロジウム、はんだ、またはこれらの合金などの導体材料が用いられ、好ましくは、導電性および加工性の観点から、銅が用いられる。
【0035】
電極4および充填部9は、例えば、アディティブ法、サブトラクティブ法、印刷法などの公知のパターンニング法によって、上記したパターンに形成する。好ましくは、アディティブ、印刷法などが用いられる。
アディティブ法では、例えば、まず、ユニット領域16(絶縁層2)の表面、ビアホール3の内側面およびビアホール3から露出する支持板19の表面に、図示しない導体薄膜(種膜)を形成する。導体薄膜を形成するには、スパッタリング、好ましくは、クロムスパッタリングおよび銅スパッタリングにより、クロム薄膜と銅薄膜とを順次積層する。導体薄膜の厚みは、例えば、5〜500nmである。
【0036】
次いで、この導体薄膜の表面に、電極4および充填部9のパターンと逆パターンでめっきレジストを形成した後、めっきレジストから露出する導体薄膜の表面に、電解めっきにより、電極4および充填部9を同時に形成する。
電解めっきでは、ビアホール3において、ビアホール3の下端(支持板19の表面に形成される導体薄膜の表面)から、厚み方向上方に向かって導体材料が析出するとともに、ビアホール3の側端(ビアホール3の内側面に形成される導体薄膜の表面)から、ビアホール3の中央に向かって導体材料が析出することにより、充填部9がビアホール3内に充填される。続いて、充填部9の上端およびユニット領域16の表面(上面)に形成される導体薄膜の表面から、厚み方向上方に向かって導体材料が析出することにより、電極4が上記したパターンで形成される。
【0037】
その後、めっきレジストおよびそのめっきレジストが積層されていた部分の導体薄膜を除去する。
印刷法では、例えば、上記した導体材料の微粒子を含むペーストを、各ユニット領域16の表面、ビアホール3の内側面、ビアホール3から露出する絶縁層2の表面に、上記したパターンでスクリーン印刷した後、焼結する。ペーストは、ビアホール3内に、ペーストが充填されるように印刷する。
【0038】
これにより、電極4および充填部9を同時に形成する。
このようにして形成される電極4の寸法は、目的および用途により適宜選択され、各ランド部7の幅(対向方向長さ)は、例えば、200〜1200μm、好ましくは、300〜700μmであり、各ランド部7の長手方向長さは、例えば、200〜1200μm、好ましくは、300〜700μmであり、1対のランド部7の間隔(対向方向における間隔)は、例えば、1〜30mm、好ましくは、2〜10mmである。
【0039】
また、各直線部8の長手方向長さは、例えば、4.5〜95mm、好ましくは、4.5〜45mmであり、各直線部8の幅は、例えば、10〜500μm、好ましくは、20〜300μmである。1対の直線部8の間隔(対向方向における間隔)は、例えば、1〜30mm、好ましくは、2〜10mmである。
電極4の厚みは、例えば、5〜30μm、好ましくは、5〜20μmである。
【0040】
次いで、必要により、図示しないが、電極4の表面に、保護層を形成する。
保護層を形成する材料としては、例えば、金などの金属材料が用いられる。保護層を、金属材料から形成すれば、検知する特定のガスが酸性ガスであっても、この保護層により、電極4の腐食を有効に防止することができる。
この保護層は、例えば、スパッタリング、例えば、無電解めっきや電解めっきなどのめっきなど、公知の薄膜形成法によって、電極4を被覆するように形成される。
【0041】
このようにして形成される保護層の厚みは、例えば、0.05〜3μm、好ましくは、0.5〜1.5μmである。
次いで、この方法では、図7(c)に示すように、まず、支持板19を除去し、その後、絶縁層2の裏面に、端子部6の膨出部10および外部接続用パターン17(図4参照。)を、上記したパターンで同時に形成する。
【0042】
支持板19は、例えば、剥離やエッチングなどにより除去する。
膨出部10および外部接続用パターン17を形成する導体材料としては、上記した電極4および充填部9を形成する導体材料と同様のものが用いられる。
膨出部10および外部接続用パターン17は、例えば、アディティブ法、サブトラクティブ法、印刷法などの公知のパターンニング法によって、上記したパターンに形成する。好ましくは、アディティブ、印刷法などが用いられる。
【0043】
アディティブ法では、例えば、まず、絶縁層2の裏面全面(ビアホール3から露出する充填部9の下端面を含む。)に、図示しない導体薄膜を形成する。導体薄膜は、上記と同様の方法により形成する。
次いで、この導体薄膜の裏面に、膨出部10および外部接続用パターン17のパターンと逆パターンでめっきレジストを形成した後、めっきレジストから露出する導体薄膜の裏面に、電解めっきにより、膨出部10および外部接続用パターン17を同時に形成する。
【0044】
その後、めっきレジストおよびそのめっきレジストが積層されていた部分の導体薄膜を除去する。
印刷法では、例えば、上記した導体材料の微粒子を含むペーストを、絶縁層2の裏面に、上記したパターンでスクリーン印刷した後、焼結する。
これにより、膨出部10および外部接続用パターン17を同時に形成する。これにより、端子部6が形成される。
【0045】
このようにして形成される膨出部10および外部接続用パターン17の寸法は、目的および用途により適宜選択され、各膨出部10の幅方向長さが、例えば、200〜1200μm、好ましくは、300〜700μmであり、各膨出部10の長手方向長さが、例えば、200〜1200μm、好ましくは、300〜700μmである。また、1対の膨出部10の間隔(対向方向における間隔)は、例えば、1〜30mm、好ましくは、2〜10mmである。
【0046】
各配線14の幅は、例えば、10〜500μm、好ましくは、20〜300μmであり、各配線14間の間隔は、例えば、1〜60mm、好ましくは、2〜20mmである。各外部接続用端子部15の幅は、例えば、200〜1200μm、好ましくは、300〜700μmであり、各外部接続用端子部15間の間隔は、例えば、0.1〜5mm、好ましくは、0.2〜3mmである。
【0047】
膨出部10および外部接続用パターン17の厚みは、例えば、5〜30μm、好ましくは、5〜20μmである。
次いで、この方法では、図7(d)に示すように、導電性層5を、各ユニット領域16の表面に、電極4を被覆するように形成する。
導電性層5は、導電性材料から形成され、この導電性材料は、例えば、導電性の導電性粒子と、特定のガスの種類や量(濃度)に応じて膨潤する非導電性物質との混合物から形成される。
【0048】
導電性粒子としては、例えば、有機導電体、無機導電体、または、有機/無機の混合導電体などが用いられる。
有機導電体としては、例えば、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアセチレンなどの導電性ポリマー、例えば、カーボンブラック、グラファイト、コークス、C60などの炭素質物質、例えば、テトラメチルパラフェニレンジアミンクロラニル、テトラシアノキノリノジメタン−アルカリ金属錯体、テトラチオフルバレン−ハロゲン錯体などの電荷移動錯体などが用いられる。
【0049】
無機導電体としては、例えば、銀、金、銅、白金などの金属、例えば、金銅合金などの、上記した金属の合金、例えば、ケイ素、ガリウムヒ素(GaAs)、インジウムリン(InP)、硫化モリブデン(MoS2)、酸化チタン(TiO2)などの高ドーピング半導体、例えば、酸化インジウム(In2O3)、酸化錫(SnO2)、酸化白金ナトリウム(NaxPt3O4)などの導電性金属酸化物、例えば、YBa2Cu3O7、Tl2Ba2Ca2Cu3O10などの超導電体などが用いられる。
【0050】
有機/無機の混合導電体としては、例えば、テトラシアノ−白金錯体、イリジウム−ハロカルボニル錯体、積層大環状錯体などが用いられる。
これら導電性粒子は、単独使用または併用することができる。
非導電性物質としては、例えば、主鎖炭素ポリマー、主鎖非環式複素原子ポリマー、主鎖複素環式ポリマーなどの非導電性有機ポリマーが用いられる。
【0051】
主鎖炭素ポリマーとしては、例えば、ポリジエン、ポリアルケン、ポリアクリル、ポリメタクリル、ポリビニルエーテル、ポリビニルチオエーテル、ポリビニルアルコール、ポリビニルケトン、ポリビニルハライド、ポリビニルニトリル、ポリビニルエステル、ポリスチレン、ポリ(α−メチルスチレン)、ポリアリーレン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニルなどが用いられる。
【0052】
主鎖非環式複素原子ポリマーとしては、例えば、ポリオキシド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアンハイドライド、ポリウレタン、ポリスルホネート、ポリシロキサン、ポリスルフィド、ポリチオエステル、ポリスルホン、ポリスルホンアミド、ポリアミド、ポリアミドアミン(ポリアミドアミンデンドリマー)、ポリユリア、ポリホスファゼン、ポリシラン、ポリシラザンなどが用いられる。
【0053】
主鎖複素環式ポリマーとしては、例えば、ポリ(フランテトラカルボン酸ジイミド)、ポリベンズオキサゾール、ポリオキサジアゾール、ポリベンゾチアジノフェノチアジン、ポリベンゾチアゾール、ポリピラジノキノキサリン、ポリピロメリトイミド(polypiromenitimides)、ポリキノキサリン、ポリベンズイミダゾール、ポリオキシンドール、ポリオキソイソインドリン、ポリジオキソイソインドリン、ポリトリアジン、ポリピリダジン、ポリピペラジン、ポリピリジン、ポリピペリジン、ポリトリアゾール、ポリピラゾール、ポリピロリジン、ポリカルボラン、ポリオキサビシクロノナン、ポリジベンゾフラン、ポリフタライド、ポリアセタール、ポリビニルピロリドン、ポリビスフェノール、または、その他の炭化水素などが用いられる。
【0054】
また、非導電性物質としては、例えば、ポリエステルアクリレートオリゴマーなどのオリゴマーを用いることもできる。
これら非導電性物質は、単独使用または併用することができる。
導電性層5を形成するには、例えば、超音波スプレー法による噴付、溶液キャスティング、エアスプレー法、ドロップなどのコーティング方法が用いられる。また、例えば、真空蒸着法、CVD法、プラズマ重合法、クラスターイオンビーム蒸着法、エピタキシャル成長法、ラングミュア・ブロジェット(LB)法などの薄膜製膜法なども用いられる。
【0055】
好ましくは、超音波スプレー法による噴付が用いられる。
超音波スプレー法による噴付では、有機溶剤、導電性粒子および非導電性物質(またはこれらの前駆物質(モノマー))を含む導電性成分含有液(溶液および/または懸濁液)を調製して、それを超音波スプレー法によって、各ユニット領域16の表面に噴き付ける。
【0056】
有機溶剤としては、沸点が、40〜120℃のものが好ましく、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコールなどのアルコール類、例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、例えば、塩化メチレンなどのハロゲン化炭化水素類、例えば、テトラヒドロフラン(THF)などのエーテル類、例えば、アセトニトリルなどのニトリル類などが用いられる。
【0057】
これら有機溶剤は、単独使用または併用することができる。
導電性成分含有液を、溶液として調製する場合には、有機溶剤として、導電性粒子および非導電性物質(またはこれらの前駆物質)を溶解できる有機溶剤(溶媒)を選択し、そのような有機溶剤と、導電性粒子および非導電性物質(またはこれらの前駆物質)とを配合して溶解させる。
【0058】
また、導電性成分含有液を、懸濁液として調製する場合には、有機溶剤として、導電性粒子を分散できる有機溶剤(分散媒)を選択し、そのような有機溶剤に、導電性粒子を懸濁させる。また、このような場合においては、例えば、強制攪拌機や超音波攪拌機などの公知の攪拌機により、導電性粒子を有機溶剤中に懸濁させる。
導電性成分含有液の調製における、成分の配合割合は、非導電性物質100重量部に対して、導電性粒子が、例えば、10〜50重量部、好ましくは、20〜35重量部、有機溶剤が、例えば、2000〜20000重量部、好ましくは、5000〜15000重量部である。
【0059】
また、導電性成分含有液には、必要により、触媒などの公知の添加剤を添加することができる。
また、このように調製される導電性成分含有液の粘度(25℃)は、例えば、1×10−4〜0.05Pa・s、好ましくは、5×10−4〜0.01Pa・sである。
超音波スプレー法は、超音波を用いたスプレーコーティング法であって、例えば、液体を、超音波振動によって、微細な粒径を有する液滴(霧状)として噴霧する。これにより、塗布液を、対象物に、均一かつ無駄なく塗布することができる。
【0060】
超音波スプレー法によって、導電性成分含有液をユニット領域16に対して噴き付ければ、導電性成分含有液が、微細な粒径の液滴として噴霧される。そのため、導電性成分含有液の液滴が、ユニット領域16に到達するまでに、導電性成分含有液中の有機溶剤が、蒸発する。そのため、超音波スプレー法によれば、導電性成分含有液の濡れ拡がりを抑制することができ、その結果、導電性材料(導電性粒子および非導電性物質)の凝集および/または偏在化を抑制することができる。
【0061】
超音波スプレー法による導電性成分含有液の噴き付けにおいて、超音波の周波数は、例えば、20〜150kHz、好ましくは、60〜120kHzである。超音波の周波数が上記の範囲にあれば、噴き付けられる導電性成分含有液を、エアスプレー法による液滴よりも、非常に微細な粒径とすることができる。
導電性成分含有液の粒径が微細であれば、導電性成分含有液を各ユニット領域16に、より均一に噴き付けることができ、そのため、得られる導電性層5の厚みを、より均一とすることができる。
【0062】
また、導電性成分含有液を各ユニット領域16に対応するパターンで噴き付けるためには、例えば、マスクを用いる。より具体的には、導電性成分含有液を噴き付ける前に、複数のユニット領域16に対応するパターンの開口部が形成されたマスクによって絶縁層2の表面を覆い、次いで、絶縁層2およびマスクの上方から、マスクの開口部から露出する絶縁層2および保護層に、導電性成分含有液を噴き付け、その後、マスクを除去する。これにより、導電性層5を形成する。
【0063】
また、導電性成分含有液は、例えば、常温(25℃程度)において噴き付ける。
上記のように形成された導電性層5には、必要により、ドーピング処理(例えば、ヨウ素への暴露処理)することにより、導電性を付与することもできる。
導電性層5の厚みは、例えば、0.01〜50μm、好ましくは、0.1〜20μm、さらに好ましくは、0.2〜10μmである。
【0064】
これにより、ユニット領域16、電極4、導電性層5および端子部6を備える各検知ユニット13と、外部接続用パターン17とを備えるガス検知センサ1を形成することができる。
その後、図1および図2に示すように、絶縁層2を丸めて、円筒状に形成する。
すなわち、絶縁層2を、電極4および導電性層5が内側に向き、かつ、端子部6の膨出部10が外側に向くように、略円筒状に丸める。
【0065】
また、電極4の長手方向、つまり、電極4の直線部8が延びる方向が、絶縁層2の筒の周方向と直交するように、絶縁層2を略円筒状に形成する。
また、絶縁層2を、重複領域20が厚み方向(円筒の径方向)に互いに重なるように、円筒状に形成する。2つの重複領域20間に、公知の接着剤層(図示せず)を介在させることにより、2つの重複領域20を接着させる。
【0066】
絶縁層2の筒の内径は、目的および用途により適宜選択され、例えば、1.55〜31.5mm、好ましくは、4.5〜15.5mmである。
これにより、略円筒状に形成されたガス検知センサ1を製造する。
次に、このガス検知センサ1を、フローセル型のガス検知センサとして用いて、特定のガスを連続的に検知する方法について説明する。
【0067】
まず、この方法では、外部接続用端子部15に、電気抵抗検知器(図示せず)の接続端子を接続させる。
次いで、この方法では、ガス検知センサ1の内側に、特定のガスを連続的に流す。
ガス検知センサ1の内側に流される特定のガスは、特に限定されず、例えば、アルカン、アルケン、アルキン、アレン、アルコール、エーテル、ケトン、アルデヒド、カルボニル、カルバニオンなどの有機物質、上記した有機物質の誘導体(例えば、ハロゲン化誘導体など)、糖などの生化学分子、イソプレンおよびイソプレノイド、脂肪酸および脂肪酸の誘導体などの化学物質が挙げられる。
【0068】
その後、この方法では、電気抵抗検知器によって、各検知ユニット13における1対の電極4間の電気抵抗を検知する。より具体的には、特定のガスが、各導電性層(導電性材料)5の非導電性物質と接触したときに、この非導電性物質が、特定のガスを吸収または吸着して、特定のガスの種類および/または量(濃度)に応じて、膨潤する。そうすると、各導電性層5も膨潤し、これによって、導電性層5の、1対の電極4間における電気抵抗値が変化する。そして、この電気抵抗値の変化を、端子部6を介して、電気抵抗検知器が検知する。
【0069】
そして、検知された電気抵抗値の変化から、所定のライブラリを有する図示しないコンピュータの解析によって、特定のガスの種類および/または量(濃度)について、定性分析および/または定量分析される。
なお、このような電気抵抗値の変化の解析および分析については、特表平11−503231号公報や米国特許5571401号明細書の記載に準拠して、実施することができる。
【0070】
なお、上記した説明では、絶縁層2の対向(幅)方向両端部、つまり、重複領域20が厚み方向に重なるように、絶縁層2を筒状に形成しているが、例えば、図示しないが、絶縁層2の対向方向両端部の端面が、円筒の周方向において、互いに突き合わさせるように、絶縁層2を筒状に形成することもできる。
なお、この場合には、接着剤層を、絶縁層2の対向方向両端部の端面の間に介在させる。絶縁層2の対向方向両端部の端面を、円筒の周方向において、互いに突き合わせることにより、絶縁層2に重複領域20を形成する必要がなく、絶縁層2の表面におけるスペースの自由度を高めて、ユニット領域16の面積をより十分確保することができ、これにより、ガス検知の精度を向上させることができる。
【0071】
好ましくは、図1および図2に示すように、絶縁層2の重複領域20が厚み方向に重なるように、絶縁層2を筒状に形成する。
これにより、重複領域20が厚み方向に重なっているので、重複領域20におけるシール性を高めて、ガスの漏出をより一層有効に防止することができる。
また、このガス検知センサ1では、絶縁層2を、電極4が内側に向くように筒状に形成しても、端子部6は、必ず電極4と反対側の外側に露出する。そのため、突出部を形成することなく、絶縁層2の裏面側、つまり、絶縁層2の外側において、電気抵抗検知器が、端子部6から、外部接続用端子部15および配線14を介して、1対の電極4間における電気抵抗値の変化を検知することができる。
【0072】
その結果、突出部の形成を不要とすることができ、特定のガスを優れた精度で検知することができる。
また、上記した図1の説明では、電極4の直線部8の延びる方向が、絶縁層2の筒の周方向と直交するように、絶縁層2を略円筒状に形成しているが、例えば、図示しないが、電極4の直線部8の延びる方向が、絶縁層2の筒の周方向に沿うように、絶縁層2を略円筒状に形成することもできる。
【0073】
好ましくは、直線部8が延びる方向が、絶縁層2の筒の周方向と直交するように、絶縁層2を略円筒状に形成する。そのため、直線部8は、絶縁層2が筒状に成形されて湾曲する時の応力を受けにくいので、断線などの損傷を有効に防止することができる。
その結果、特定のガスをより一層優れた精度で検知することができる。
図8は、本発明の物質検知センサの他の実施形態のガス検知センサ(ランド部と、直線部の先端部および後端部とが導電性層から露出する態様)を展開したときの平面図、図9は、本発明の物質検知センサの他の実施形態のガス検知センサ(フレキシブル基板が略角筒状に形成され、絶縁層の裏面に金属板が設けられる態様)の一部切欠斜視図、図10は、図9において、端子部に一致する位置でガス検知センサを切断したときの断面図、図11は、図9において、直線部に一致する位置でガス検知センサを切断したときの断面図、図12は、本発明の物質検知センサの他の実施形態のガス検知センサ(電極および導電性層が絶縁層の外側に向く態様)の一部切欠斜視図、図13は、図12において、端子部に一致する位置でガス検知センサを切断したときの断面図を示す。
【0074】
なお、上記した部材に対応する部材については、以降の各図面において同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
上記した図3の説明では、各導電性層5を、1対の電極4すべてを被覆するように形成しているが、例えば、図8に示すように、1対の電極4の一部を露出させるように形成することもできる。
【0075】
図8において、ランド部7と、直線部8の先端部および後端部とは、導電性層5から露出している。
好ましくは、図3に示すように、各導電性層5を、1対の電極4すべてを被覆するように形成する。これにより、電極4が酸性や腐食性のガスなどに暴露されず、電極4が酸化や腐食することを防止でき、導電性層5が電極4をガスから保護することができる。その結果、優れた耐久性を確保して、接続信頼性を向上させることができる。
【0076】
また、図9および図11に示すように、絶縁層2の裏面に、金属板30をさらに形成することもできる。
金属板30を形成する金属材料としては、上記した支持板19の金属材料と同様のものが用いられる。
図9および図11に示すように、金属板30は、絶縁層2の裏面において、端子部6と重ならないように、つまり、端子部6を除く領域に形成されている。詳しくは、金属板30は、ランド部7の後側に間隔を隔てて対向配置され、絶縁層2の幅方向にわたって形成されている。
【0077】
絶縁層2の裏面に金属板30が形成されたガス検知センサ1を製造するには、例えば、図7(d)に示す絶縁層2の裏面に、金属板30を、公知の接着剤層を介して積層する。あるいは、図7(a)に示す支持板19に代えて、金属板30を用い、また、図7(d)における支持板19の除去において、充填部9(端子部6)およびその周辺の金属板30のみを除去することにより、金属板30を形成することもできる(図10参照。)。
【0078】
また、上記した図1および図2の説明では、絶縁層2を、略円筒状に形成したが、例えば、図9〜図11に示すように、略角筒状に形成することもできる。
図9において、絶縁層2は、略四角筒状に形成されている。
また、各ユニット領域16は、絶縁層2の四角筒における連続する2つの平坦部にわたって形成されている。
【0079】
また、各電極4および各端子部6は、各ユニット領域16における各平坦部の幅方向途中(中央)に形成されている。
また、各導電性層5は、各ユニット領域16における2つの平坦部に跨るように形成されている。
このガス検知センサ1を得るには、例えば、絶縁層2を、4つの角部が、長手方向に沿い、幅方向(周方向)に互いに間隔を隔てて形成されるように、折曲加工する。
【0080】
絶縁層2を略角筒状に形成するときに、絶縁層2の裏面に金属板30が設けられている場合には、絶縁層2を折曲加工した後における各角部の形状保持性を高めることができる。そのため、絶縁層2の形状を確実に保持することができる。
また、上記した図2の説明では、絶縁層2を、電極4および導電性層5が内側に向き、かつ、端子部6の膨出部10が外側に向くように、略円筒状に丸めているが、例えば、図12および図13に示すように、電極4および導電性層5が外側に向き、かつ、端子部6の膨出部10が内側に向くように、略円筒状に丸めることもできる。
【0081】
この場合には、図12および図13に示すように、検知センサ1において、絶縁層2の外側に、絶縁層2の筒を囲む外筒22を設ける。
外筒22は、絶縁層2の筒が延びる方向に沿って延びる略円筒状であり、電極4および導電性層5の外側(径方向外側)に間隔を隔てて対向配置されている。外筒22を形成する材料は、特に限定されず、例えば、ガス透過率が低い材料が用いられる。
【0082】
外筒22と絶縁層2との間隔は、例えば、0.5〜50mm、好ましくは、5〜20mmである。
そして、このガス検知センサ1を用いて、特定のガスを連続的に検知するには、まず、絶縁層2と外筒22との間に、特定のガスを連続的に流す。その後、上記と同様にして、電気抵抗検知器により、1対の電極4間における電気抵抗値の変化を検知する。
【0083】
また、上記した図3の説明では、絶縁層2において、検知ユニット13を、2つ設けたが、その数は特に限定されず、例えば、1つ、あるいは、3つ以上の複数、設けることもできる。好ましくは、複数(2つ以上)設ける。これにより、検知できる特定のガスの種類を拡大させることができ、また、特定のガスの量(濃度)を、より一層精度よく検知することができる。
【0084】
また、上記した図3および図4のガス検知センサ1において、ビアホール3を、略円形状に形成しているが、その形状は特に限定されず、例えば、略矩形状などの多角形状に形成することができる。
また、上記した図3および図4のガス検知センサ1において、ランド部7および/または膨出部10を略円形状に形成しているが、それらの形状は特に限定されず、例えば、略円形状、例えば、矩形状を除く多角形状に形成することもできる。
【符号の説明】
【0085】
1 ガス検知センサ
2 絶縁層
3 ビアホール
4 電極
5 導電性層
6 端子部
30 金属板
【技術分野】
【0001】
本発明は、物質検知センサ、詳しくは、主としてガスの種類や量を検知するための物質検知センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、気体や液体を検知する物質センサが種々の産業分野に用いられている。このような物質センサは、特定の気体や液体における定性分析や定量分析などに用いられている。
このような物質検知センサとしては、バッチ型やフローセル型があり、連続測定およびデータの再現性の観点から、バッチ型よりもフローセル型が好ましく用いられている。
【0003】
フローセル型の物質検知センサとして、例えば、円筒状のフレキシブル基板と、その内面に形成され、互いに間隔を隔てて対向配置される櫛形電極と、フレキシブル基板の内面に、櫛形電極を被覆するように形成されるガス感応膜とを備えるガスセンサが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。そして、このガスセンサでは、円筒状のフレキシブル基板内に、ガスを連続的に流しながら、ガスを検知するようにしている。
【0004】
より具体的には、特許文献1のガスセンサでは、フレキシブル基板に、互いに対向する両端部から外側に突出する2つの突出部が形成されており、各突出部の表面には、櫛形電極に連続するリード部が設けられている。
そして、特許文献1のガスセンサを形成するには、櫛形電極が積層された略平板状のフレキシブル基板を、櫛形電極が内側となるように、円筒状に丸めながら、フレキシブル基板の両端部を相互に突き合わせる。それと同時に、突出部とともにリード部を折り曲げて、それらを円筒の外側に突出させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−267879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のガスセンサでは、各突出部があるために、フレキシブル基板を円筒状に形成したときには、フレキシブル基板の両端部が単に突き合わされる。そのため、ガスセンサの測定時には、円筒状に形成したフレキシブル基板内を流れるガスが、フレキシブル基板の突き合わされた両端部において内側から外側に漏出し易くなる。
そのため、ガス検知の精度が低下し、さらには、ガスが微量である場合には、ガスそのものを検知できないという不具合がある。
【0007】
本発明の目的は、物質を優れた精度で、かつ、確実に検知することのできる、物質検知センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の物質検知センサは、少なくとも2つのビアホールが形成される絶縁層と、前記絶縁層の表面に、各前記ビアホールに対応して形成され、互いに間隔を隔てて対向配置される各電極と、前記絶縁層の表面に、各前記電極間にわたって形成され、特定の物質の種類および/または量に応じて、膨潤する割合が変化する導電性層と、前記絶縁層の裏面に露出するように、各前記ビアホール内に充填され、各前記電極と電気的に接続される端子部とを備えていることを特徴としている。
【0009】
この物質検知センサでは、絶縁層の裏面側において、端子部から1対の電極間の電気抵抗の変化を検知することができる。そのため、絶縁層を電極が内側または外側に向くように筒状に形成しても、端子部は、必ず電極と反対側の外側または内側に露出する。
その結果、突出部の形成を不要とすることができ、物質を優れた精度で検知することができる。
【0010】
また、本発明の物質検知センサでは、前記絶縁層は、筒状に形成されていることが好適であり、また、前記絶縁層は、前記絶縁層の両端部が厚み方向に重なるように、筒状に形成されていることが好適であり、さらに、各前記電極は、互いに対向する対向方向に直交する方向に沿って延びており、各前記電極の延びる方向と、前記絶縁層の筒の周方向とが、直交していることが好適である。
【0011】
この物質検知センサでは、絶縁層を筒状に形成するときに、絶縁層の両端部が重なっているので、重なり部分におけるシール性を高めて、検知物質の漏出をより一層有効に防止することができる。
さらに、この物質検知センサでは、電極が、絶縁層の筒の周方向に直交する方向に沿って延びている。そのため、電極は、絶縁層が筒状に成形される時の応力を受けにくいので、断線などの損傷を有効に防止することができる。
【0012】
その結果、物質をより一層優れた精度で検知することができる。
また、本発明の物質検知センサでは、前記電極は、前記導電性層に被覆されていることが好適である。
この物質検知センサでは、導電性層によって、電極が腐食性の物質に暴露されることを防止して、電極が劣化することを防止することができる。そのため、物質をより一層優れた精度で検知することができる。
【0013】
また、本発明の物質検知センサでは、前記絶縁層の裏面には、金属板が、前記端子部と重ならないように設けられていることが好適である。
この物質検知センサでは、金属板によって、絶縁層を筒状に成形した後における形状保持性を高めることができる。そのため、絶縁層の形状を確実に保持することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の物質検知センサでは、電気信号を取り出すための突出部の形成を不要とすることができ、物質を優れた精度で検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の物質検知センサの一実施形態であるガス検知センサの一部切欠斜視図を示す。
【図2】図1において、端子部に一致する位置でガス検知センサを切断したときの断面図を示す。
【図3】図1に示すガス検知センサを展開したときの平面図を示す。
【図4】図1に示すガス検知センサを展開したときの底面図を示す。
【図5】図3に示すガス検知センサのA−A線に沿う断面図を示す。
【図6】図3に示すガス検知センサのB−B線に沿う断面図を示す。
【図7】図5に示すガス検知センサの製造方法の工程図であり、(a)は、絶縁層を形成する工程、(b)は、電極および充填部を形成する工程、(c)は、膨出部を形成する工程、(d)は、導電性層を形成する工程を示す。
【図8】本発明の物質検知センサの他の実施形態のガス検知センサ(ランド部と、直線部の先端部および後端部とが導電性層から露出する態様)を展開したときの平面図を示す。
【図9】本発明の物質検知センサの他の実施形態のガス検知センサ(フレキシブル基板が略角筒状に形成され、絶縁層の裏面に金属板が設けられる態様)の一部切欠斜視図を示す。
【図10】図9において、端子部に一致する位置でガス検知センサを切断したときの断面図を示す。
【図11】図9において、直線部に一致する位置でガス検知センサを切断したときの断面図を示す。
【図12】本発明の物質検知センサの他の実施形態のガス検知センサ(電極および導電性層が絶縁層の外側に向く態様)の一部切欠斜視図を示す。
【図13】図12において、端子部に一致する位置でガス検知センサを切断したときの断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の物質検知センサの一実施形態であるガス検知センサの一部切欠斜視図、図2は、図1において、端子部に一致する位置でガス検知センサを切断したときの断面図、図3は、図1のガス検知センサを展開したときの平面図、図4は、図1のガス検知センサを展開したときの底面図、図5は、図3に示すガス検知センサのA−A線に沿う断面図、図6は、図3に示すガス検知センサのB−B線に沿う断面図、図7は、図5に示すガス検知センサの製造方法の工程図を示す。
【0017】
なお、図1では、電極4(後述)および端子部6(後述)の相対配置を明確に示すため、絶縁層2(後述)の一部と、導電性層5(後述)の一部とを切り欠き、さらに、後述する配線14および外部接続用端子部15を省略している。
図1および図2において、このガス検知センサ1は、平板シート形状の絶縁層2を略円筒状に形成することにより形成されており、内部に特定のガスを流して、その特定のガスの種類および/または量(濃度)について、定性分析および/または定量分析する。
【0018】
ガス検知センサ1は、図3および図4に示すように、絶縁層2に設けられる2つの検知ユニット13を備えている。
各検知ユニット13は、絶縁層2において、幅方向(後述する直線部8の幅方向であり、図3および図4における左右方向、以下同様。)において、互いに間隔を隔てて対向配置され、長手方向(幅方向に直交する方向であり、図3および図4における上下方向、以下同様。)に沿って延びるように、平面視略矩形状に区画されている。
【0019】
各検知ユニット13は、図5および図6に示すように、絶縁層2における各検知ユニット13を区画するユニット領域16と、ユニット領域16の表面に形成される電極4と、各ユニット領域16の表面に、電極4を被覆するように形成される導電性層5と、各ユニット領域16内および裏面に設けられる端子部6とを備えている。
各ユニット領域16には、2つのビアホール3が形成されている。
【0020】
各ビアホール3は、図3の破線および図4の破線で示すように、各ユニット領域16の先端部(長手方向一端部、以下同様)に形成され、幅方向に互いに間隔を隔てて配置されている。各ビアホール3は、絶縁層2の厚み方向を貫通するように、平面視略円形状に形成されている。
なお、各ユニット領域16は、後述するように、絶縁層2の先端部に外部接続用領域18、および、絶縁層2の幅方向両端部に重複領域20のマージン部分が、それぞれ確保されるように、区画されている。
【0021】
電極4は、各ビアホール3に対応するように形成されており、各ユニット領域16に1対設けられている。1対の電極4は、長手方向に延び、幅方向に間隔を隔てて対向配置されている。また、各電極4は、ランド部7と、直線部8とを連続して備えている。
各ランド部7は、図3の破線で示すように、平面視において、各ビアホール3を含むように配置され、略矩形状に形成されている。
【0022】
各直線部8は、長手方向に沿って互いに平行となるように、各ランド部7の後端から後側に向かって、長手方向に沿う直線状に延びている。
導電性層5は、各検知ユニット13において、各電極4間にわたって形成されており、より具体的には、各電極4を被覆するように配置され、平面視略矩形状に形成されている。
【0023】
導電性層5は、図5および図6に示すように、電極4の表面、つまり、電極4の上面、幅方向両側面および長手方向両側面(図5および図6において図示せず)を被覆するとともに、1対の電極4間および各電極4の周囲のユニット領域16の上面を被覆している。
端子部6は、各ビアホール3に対応して形成されており、各ユニット領域16に1対設けられている。各端子部6は、幅方向に間隔を隔てて対向配置されている。端子部6は、各ビアホール3に充填される充填部9と、充填部9からユニット領域16の裏面に膨出する膨出部10とを連続して備えている。
【0024】
充填部9は、ビアホール3に対応する形状に形成されており、具体的には、略円柱状に形成されている。充填部9の表面側(上端部)は、ランド部7の裏面と連続するように形成されている。これにより、各充填部9は、各電極4と電気的に接続されている。
膨出部10は、図4に示すように、底面視において、ビアホール3を含むように配置される略矩形状に形成されている。
【0025】
すなわち、膨出部10は、図5に示すように、充填部9の裏面と接続するように配置され、その裏面側(下端部)から、ビアホール3の周囲のユニット領域16の裏面を被覆するように、長手方向両側および幅方向両側に膨出するように形成されている。
また、このガス検知センサ1の絶縁層2の裏面には、図4に示すように、配線14と外部接続用端子部15とを一体的に備える外部接続用パターン17が設けられている。また、絶縁層2において、外部接続用パターン17が形成される領域は、外部接続用領域18して区画されている。
【0026】
外部接続用領域18は、ユニット領域16より先側において、絶縁層2の先端部に区画されている。
配線14は、外部接続用領域18の裏面において、各端子部6に対応して形成されている。
配線14は、後端が膨出部10の先端に接続され、先端が外部接続用端子部15の後端に接続されるように、引き回されている。
【0027】
外部接続用端子部15は、底面視略矩形状の角ランドとして形成されており、外部接続用領域18の裏面において、幅方向に互いに間隔を隔てて対向配置されている。より具体的には、外部接続用端子部15は、互いに近接(密接)するように、幅方向に並列配置されている。外部接続用端子部15には、電気抵抗検知器などの外部機器の接続端子(図示せず)が電気的に接続される。
【0028】
また、絶縁層2において、幅方向両端部が、絶縁層2を丸めるとき(後述)に重複する重複領域20として区画されている。
次に、このガス検知センサ1を製造する方法について、図7を参照して説明する。
まず、この方法では、図7(a)に示すように、ビアホール3が形成された絶縁層2を形成する。
【0029】
絶縁層2を形成する絶縁材料としては、例えば、液晶ポリマー(LCP;芳香族または脂肪族ジヒドロキシ化合物の重合体、芳香族または脂肪族ジカルボン酸の重合体、芳香族ヒドロキシカルボン酸の重合体、芳香族ジアミン、芳香族ヒドロキシアミンまたは芳香族アミノカルボン酸の重合体など)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルニトリル、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニリンサルファイド(PPS)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリ塩化ビニルなどの合成樹脂などが用いられる。これら絶縁材料は、単独使用または併用することができる。
【0030】
また、このような絶縁材料としては、好ましくは、吸水率、湿度膨張係数、熱膨張係数およびガス透過率が低い材料が用いられる。
また、好ましくは、液晶ポリマー、ポリエチレンテレフタレートまたはポリイミドが用いられる。液晶ポリマー、ポリエチレンテレフタレートおよびポリイミドは、吸水率やガス透過率(酸素透過率など)が低いため、雰囲気中の水蒸気の吸水により絶縁層2が膨潤することを防止でき、また、絶縁層2からガスや水蒸気が透過して、導電性層5に影響を与えることを防止できる。従って、そのような絶縁層2の膨潤に基づく誤検知や、絶縁層2の透過の影響に基づく誤検知を、防止することができる。
【0031】
絶縁層2を形成するには、例えば、まず、支持板19を用意する。
支持板19は、平板シート形状であって、例えば、PETなどの合成樹脂、例えば、ステンレス、42アロイなどの金属材料などからなる。支持板19の表面は、必要により、離型処理されてもよい。
次いで、支持板19の表面に、感光性の絶縁材料のワニスを塗布し乾燥して、皮膜を形成する。その後、皮膜を、フォトマスクを介して露光および現像して、ビアホール3が形成されたパターンで形成する。その後、皮膜を、加熱により硬化させることにより、支持板19の表面に、ビアホール3が形成された絶縁層2を形成する。
【0032】
また、支持板19の表面に、絶縁材料のワニスを塗布し乾燥して、加熱により硬化させることにより、平板シート形状の絶縁層2を形成する。その後、例えば、ドライエッチング、ウエットエッチングなどのエッチングにより、ビアホール3を形成することもできる。
また、予め、ビアホール3が形成された絶縁材料のシートを用意することもできる。
【0033】
このようにして形成される絶縁層2の寸法は、目的および用途により適宜選択され、幅方向長さが、例えば、5〜100mm、好ましくは、15〜50mmであり、長手方向長さが、例えば、5〜100mm、好ましくは、15〜50mmである。
また、各ビアホール3の内径(最大長さ)は、例えば、20〜1000μm、好ましくは、100〜500μmである。1対のビアホール3の間隔(幅方向における間隔)は、例えば、1〜30mm、好ましくは、2〜10mmである。
【0034】
絶縁層2の厚みは、例えば、5〜30μm、好ましくは、5〜25μmである。
次いで、この方法では、図7(b)に示すように、ユニット領域16の表面に、電極4および端子部6の充填部9を形成する。
電極4および充填部9を形成する導体材料としては、例えば、銅、ニッケル、金、錫、ロジウム、はんだ、またはこれらの合金などの導体材料が用いられ、好ましくは、導電性および加工性の観点から、銅が用いられる。
【0035】
電極4および充填部9は、例えば、アディティブ法、サブトラクティブ法、印刷法などの公知のパターンニング法によって、上記したパターンに形成する。好ましくは、アディティブ、印刷法などが用いられる。
アディティブ法では、例えば、まず、ユニット領域16(絶縁層2)の表面、ビアホール3の内側面およびビアホール3から露出する支持板19の表面に、図示しない導体薄膜(種膜)を形成する。導体薄膜を形成するには、スパッタリング、好ましくは、クロムスパッタリングおよび銅スパッタリングにより、クロム薄膜と銅薄膜とを順次積層する。導体薄膜の厚みは、例えば、5〜500nmである。
【0036】
次いで、この導体薄膜の表面に、電極4および充填部9のパターンと逆パターンでめっきレジストを形成した後、めっきレジストから露出する導体薄膜の表面に、電解めっきにより、電極4および充填部9を同時に形成する。
電解めっきでは、ビアホール3において、ビアホール3の下端(支持板19の表面に形成される導体薄膜の表面)から、厚み方向上方に向かって導体材料が析出するとともに、ビアホール3の側端(ビアホール3の内側面に形成される導体薄膜の表面)から、ビアホール3の中央に向かって導体材料が析出することにより、充填部9がビアホール3内に充填される。続いて、充填部9の上端およびユニット領域16の表面(上面)に形成される導体薄膜の表面から、厚み方向上方に向かって導体材料が析出することにより、電極4が上記したパターンで形成される。
【0037】
その後、めっきレジストおよびそのめっきレジストが積層されていた部分の導体薄膜を除去する。
印刷法では、例えば、上記した導体材料の微粒子を含むペーストを、各ユニット領域16の表面、ビアホール3の内側面、ビアホール3から露出する絶縁層2の表面に、上記したパターンでスクリーン印刷した後、焼結する。ペーストは、ビアホール3内に、ペーストが充填されるように印刷する。
【0038】
これにより、電極4および充填部9を同時に形成する。
このようにして形成される電極4の寸法は、目的および用途により適宜選択され、各ランド部7の幅(対向方向長さ)は、例えば、200〜1200μm、好ましくは、300〜700μmであり、各ランド部7の長手方向長さは、例えば、200〜1200μm、好ましくは、300〜700μmであり、1対のランド部7の間隔(対向方向における間隔)は、例えば、1〜30mm、好ましくは、2〜10mmである。
【0039】
また、各直線部8の長手方向長さは、例えば、4.5〜95mm、好ましくは、4.5〜45mmであり、各直線部8の幅は、例えば、10〜500μm、好ましくは、20〜300μmである。1対の直線部8の間隔(対向方向における間隔)は、例えば、1〜30mm、好ましくは、2〜10mmである。
電極4の厚みは、例えば、5〜30μm、好ましくは、5〜20μmである。
【0040】
次いで、必要により、図示しないが、電極4の表面に、保護層を形成する。
保護層を形成する材料としては、例えば、金などの金属材料が用いられる。保護層を、金属材料から形成すれば、検知する特定のガスが酸性ガスであっても、この保護層により、電極4の腐食を有効に防止することができる。
この保護層は、例えば、スパッタリング、例えば、無電解めっきや電解めっきなどのめっきなど、公知の薄膜形成法によって、電極4を被覆するように形成される。
【0041】
このようにして形成される保護層の厚みは、例えば、0.05〜3μm、好ましくは、0.5〜1.5μmである。
次いで、この方法では、図7(c)に示すように、まず、支持板19を除去し、その後、絶縁層2の裏面に、端子部6の膨出部10および外部接続用パターン17(図4参照。)を、上記したパターンで同時に形成する。
【0042】
支持板19は、例えば、剥離やエッチングなどにより除去する。
膨出部10および外部接続用パターン17を形成する導体材料としては、上記した電極4および充填部9を形成する導体材料と同様のものが用いられる。
膨出部10および外部接続用パターン17は、例えば、アディティブ法、サブトラクティブ法、印刷法などの公知のパターンニング法によって、上記したパターンに形成する。好ましくは、アディティブ、印刷法などが用いられる。
【0043】
アディティブ法では、例えば、まず、絶縁層2の裏面全面(ビアホール3から露出する充填部9の下端面を含む。)に、図示しない導体薄膜を形成する。導体薄膜は、上記と同様の方法により形成する。
次いで、この導体薄膜の裏面に、膨出部10および外部接続用パターン17のパターンと逆パターンでめっきレジストを形成した後、めっきレジストから露出する導体薄膜の裏面に、電解めっきにより、膨出部10および外部接続用パターン17を同時に形成する。
【0044】
その後、めっきレジストおよびそのめっきレジストが積層されていた部分の導体薄膜を除去する。
印刷法では、例えば、上記した導体材料の微粒子を含むペーストを、絶縁層2の裏面に、上記したパターンでスクリーン印刷した後、焼結する。
これにより、膨出部10および外部接続用パターン17を同時に形成する。これにより、端子部6が形成される。
【0045】
このようにして形成される膨出部10および外部接続用パターン17の寸法は、目的および用途により適宜選択され、各膨出部10の幅方向長さが、例えば、200〜1200μm、好ましくは、300〜700μmであり、各膨出部10の長手方向長さが、例えば、200〜1200μm、好ましくは、300〜700μmである。また、1対の膨出部10の間隔(対向方向における間隔)は、例えば、1〜30mm、好ましくは、2〜10mmである。
【0046】
各配線14の幅は、例えば、10〜500μm、好ましくは、20〜300μmであり、各配線14間の間隔は、例えば、1〜60mm、好ましくは、2〜20mmである。各外部接続用端子部15の幅は、例えば、200〜1200μm、好ましくは、300〜700μmであり、各外部接続用端子部15間の間隔は、例えば、0.1〜5mm、好ましくは、0.2〜3mmである。
【0047】
膨出部10および外部接続用パターン17の厚みは、例えば、5〜30μm、好ましくは、5〜20μmである。
次いで、この方法では、図7(d)に示すように、導電性層5を、各ユニット領域16の表面に、電極4を被覆するように形成する。
導電性層5は、導電性材料から形成され、この導電性材料は、例えば、導電性の導電性粒子と、特定のガスの種類や量(濃度)に応じて膨潤する非導電性物質との混合物から形成される。
【0048】
導電性粒子としては、例えば、有機導電体、無機導電体、または、有機/無機の混合導電体などが用いられる。
有機導電体としては、例えば、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアセチレンなどの導電性ポリマー、例えば、カーボンブラック、グラファイト、コークス、C60などの炭素質物質、例えば、テトラメチルパラフェニレンジアミンクロラニル、テトラシアノキノリノジメタン−アルカリ金属錯体、テトラチオフルバレン−ハロゲン錯体などの電荷移動錯体などが用いられる。
【0049】
無機導電体としては、例えば、銀、金、銅、白金などの金属、例えば、金銅合金などの、上記した金属の合金、例えば、ケイ素、ガリウムヒ素(GaAs)、インジウムリン(InP)、硫化モリブデン(MoS2)、酸化チタン(TiO2)などの高ドーピング半導体、例えば、酸化インジウム(In2O3)、酸化錫(SnO2)、酸化白金ナトリウム(NaxPt3O4)などの導電性金属酸化物、例えば、YBa2Cu3O7、Tl2Ba2Ca2Cu3O10などの超導電体などが用いられる。
【0050】
有機/無機の混合導電体としては、例えば、テトラシアノ−白金錯体、イリジウム−ハロカルボニル錯体、積層大環状錯体などが用いられる。
これら導電性粒子は、単独使用または併用することができる。
非導電性物質としては、例えば、主鎖炭素ポリマー、主鎖非環式複素原子ポリマー、主鎖複素環式ポリマーなどの非導電性有機ポリマーが用いられる。
【0051】
主鎖炭素ポリマーとしては、例えば、ポリジエン、ポリアルケン、ポリアクリル、ポリメタクリル、ポリビニルエーテル、ポリビニルチオエーテル、ポリビニルアルコール、ポリビニルケトン、ポリビニルハライド、ポリビニルニトリル、ポリビニルエステル、ポリスチレン、ポリ(α−メチルスチレン)、ポリアリーレン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニルなどが用いられる。
【0052】
主鎖非環式複素原子ポリマーとしては、例えば、ポリオキシド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアンハイドライド、ポリウレタン、ポリスルホネート、ポリシロキサン、ポリスルフィド、ポリチオエステル、ポリスルホン、ポリスルホンアミド、ポリアミド、ポリアミドアミン(ポリアミドアミンデンドリマー)、ポリユリア、ポリホスファゼン、ポリシラン、ポリシラザンなどが用いられる。
【0053】
主鎖複素環式ポリマーとしては、例えば、ポリ(フランテトラカルボン酸ジイミド)、ポリベンズオキサゾール、ポリオキサジアゾール、ポリベンゾチアジノフェノチアジン、ポリベンゾチアゾール、ポリピラジノキノキサリン、ポリピロメリトイミド(polypiromenitimides)、ポリキノキサリン、ポリベンズイミダゾール、ポリオキシンドール、ポリオキソイソインドリン、ポリジオキソイソインドリン、ポリトリアジン、ポリピリダジン、ポリピペラジン、ポリピリジン、ポリピペリジン、ポリトリアゾール、ポリピラゾール、ポリピロリジン、ポリカルボラン、ポリオキサビシクロノナン、ポリジベンゾフラン、ポリフタライド、ポリアセタール、ポリビニルピロリドン、ポリビスフェノール、または、その他の炭化水素などが用いられる。
【0054】
また、非導電性物質としては、例えば、ポリエステルアクリレートオリゴマーなどのオリゴマーを用いることもできる。
これら非導電性物質は、単独使用または併用することができる。
導電性層5を形成するには、例えば、超音波スプレー法による噴付、溶液キャスティング、エアスプレー法、ドロップなどのコーティング方法が用いられる。また、例えば、真空蒸着法、CVD法、プラズマ重合法、クラスターイオンビーム蒸着法、エピタキシャル成長法、ラングミュア・ブロジェット(LB)法などの薄膜製膜法なども用いられる。
【0055】
好ましくは、超音波スプレー法による噴付が用いられる。
超音波スプレー法による噴付では、有機溶剤、導電性粒子および非導電性物質(またはこれらの前駆物質(モノマー))を含む導電性成分含有液(溶液および/または懸濁液)を調製して、それを超音波スプレー法によって、各ユニット領域16の表面に噴き付ける。
【0056】
有機溶剤としては、沸点が、40〜120℃のものが好ましく、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコールなどのアルコール類、例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、例えば、塩化メチレンなどのハロゲン化炭化水素類、例えば、テトラヒドロフラン(THF)などのエーテル類、例えば、アセトニトリルなどのニトリル類などが用いられる。
【0057】
これら有機溶剤は、単独使用または併用することができる。
導電性成分含有液を、溶液として調製する場合には、有機溶剤として、導電性粒子および非導電性物質(またはこれらの前駆物質)を溶解できる有機溶剤(溶媒)を選択し、そのような有機溶剤と、導電性粒子および非導電性物質(またはこれらの前駆物質)とを配合して溶解させる。
【0058】
また、導電性成分含有液を、懸濁液として調製する場合には、有機溶剤として、導電性粒子を分散できる有機溶剤(分散媒)を選択し、そのような有機溶剤に、導電性粒子を懸濁させる。また、このような場合においては、例えば、強制攪拌機や超音波攪拌機などの公知の攪拌機により、導電性粒子を有機溶剤中に懸濁させる。
導電性成分含有液の調製における、成分の配合割合は、非導電性物質100重量部に対して、導電性粒子が、例えば、10〜50重量部、好ましくは、20〜35重量部、有機溶剤が、例えば、2000〜20000重量部、好ましくは、5000〜15000重量部である。
【0059】
また、導電性成分含有液には、必要により、触媒などの公知の添加剤を添加することができる。
また、このように調製される導電性成分含有液の粘度(25℃)は、例えば、1×10−4〜0.05Pa・s、好ましくは、5×10−4〜0.01Pa・sである。
超音波スプレー法は、超音波を用いたスプレーコーティング法であって、例えば、液体を、超音波振動によって、微細な粒径を有する液滴(霧状)として噴霧する。これにより、塗布液を、対象物に、均一かつ無駄なく塗布することができる。
【0060】
超音波スプレー法によって、導電性成分含有液をユニット領域16に対して噴き付ければ、導電性成分含有液が、微細な粒径の液滴として噴霧される。そのため、導電性成分含有液の液滴が、ユニット領域16に到達するまでに、導電性成分含有液中の有機溶剤が、蒸発する。そのため、超音波スプレー法によれば、導電性成分含有液の濡れ拡がりを抑制することができ、その結果、導電性材料(導電性粒子および非導電性物質)の凝集および/または偏在化を抑制することができる。
【0061】
超音波スプレー法による導電性成分含有液の噴き付けにおいて、超音波の周波数は、例えば、20〜150kHz、好ましくは、60〜120kHzである。超音波の周波数が上記の範囲にあれば、噴き付けられる導電性成分含有液を、エアスプレー法による液滴よりも、非常に微細な粒径とすることができる。
導電性成分含有液の粒径が微細であれば、導電性成分含有液を各ユニット領域16に、より均一に噴き付けることができ、そのため、得られる導電性層5の厚みを、より均一とすることができる。
【0062】
また、導電性成分含有液を各ユニット領域16に対応するパターンで噴き付けるためには、例えば、マスクを用いる。より具体的には、導電性成分含有液を噴き付ける前に、複数のユニット領域16に対応するパターンの開口部が形成されたマスクによって絶縁層2の表面を覆い、次いで、絶縁層2およびマスクの上方から、マスクの開口部から露出する絶縁層2および保護層に、導電性成分含有液を噴き付け、その後、マスクを除去する。これにより、導電性層5を形成する。
【0063】
また、導電性成分含有液は、例えば、常温(25℃程度)において噴き付ける。
上記のように形成された導電性層5には、必要により、ドーピング処理(例えば、ヨウ素への暴露処理)することにより、導電性を付与することもできる。
導電性層5の厚みは、例えば、0.01〜50μm、好ましくは、0.1〜20μm、さらに好ましくは、0.2〜10μmである。
【0064】
これにより、ユニット領域16、電極4、導電性層5および端子部6を備える各検知ユニット13と、外部接続用パターン17とを備えるガス検知センサ1を形成することができる。
その後、図1および図2に示すように、絶縁層2を丸めて、円筒状に形成する。
すなわち、絶縁層2を、電極4および導電性層5が内側に向き、かつ、端子部6の膨出部10が外側に向くように、略円筒状に丸める。
【0065】
また、電極4の長手方向、つまり、電極4の直線部8が延びる方向が、絶縁層2の筒の周方向と直交するように、絶縁層2を略円筒状に形成する。
また、絶縁層2を、重複領域20が厚み方向(円筒の径方向)に互いに重なるように、円筒状に形成する。2つの重複領域20間に、公知の接着剤層(図示せず)を介在させることにより、2つの重複領域20を接着させる。
【0066】
絶縁層2の筒の内径は、目的および用途により適宜選択され、例えば、1.55〜31.5mm、好ましくは、4.5〜15.5mmである。
これにより、略円筒状に形成されたガス検知センサ1を製造する。
次に、このガス検知センサ1を、フローセル型のガス検知センサとして用いて、特定のガスを連続的に検知する方法について説明する。
【0067】
まず、この方法では、外部接続用端子部15に、電気抵抗検知器(図示せず)の接続端子を接続させる。
次いで、この方法では、ガス検知センサ1の内側に、特定のガスを連続的に流す。
ガス検知センサ1の内側に流される特定のガスは、特に限定されず、例えば、アルカン、アルケン、アルキン、アレン、アルコール、エーテル、ケトン、アルデヒド、カルボニル、カルバニオンなどの有機物質、上記した有機物質の誘導体(例えば、ハロゲン化誘導体など)、糖などの生化学分子、イソプレンおよびイソプレノイド、脂肪酸および脂肪酸の誘導体などの化学物質が挙げられる。
【0068】
その後、この方法では、電気抵抗検知器によって、各検知ユニット13における1対の電極4間の電気抵抗を検知する。より具体的には、特定のガスが、各導電性層(導電性材料)5の非導電性物質と接触したときに、この非導電性物質が、特定のガスを吸収または吸着して、特定のガスの種類および/または量(濃度)に応じて、膨潤する。そうすると、各導電性層5も膨潤し、これによって、導電性層5の、1対の電極4間における電気抵抗値が変化する。そして、この電気抵抗値の変化を、端子部6を介して、電気抵抗検知器が検知する。
【0069】
そして、検知された電気抵抗値の変化から、所定のライブラリを有する図示しないコンピュータの解析によって、特定のガスの種類および/または量(濃度)について、定性分析および/または定量分析される。
なお、このような電気抵抗値の変化の解析および分析については、特表平11−503231号公報や米国特許5571401号明細書の記載に準拠して、実施することができる。
【0070】
なお、上記した説明では、絶縁層2の対向(幅)方向両端部、つまり、重複領域20が厚み方向に重なるように、絶縁層2を筒状に形成しているが、例えば、図示しないが、絶縁層2の対向方向両端部の端面が、円筒の周方向において、互いに突き合わさせるように、絶縁層2を筒状に形成することもできる。
なお、この場合には、接着剤層を、絶縁層2の対向方向両端部の端面の間に介在させる。絶縁層2の対向方向両端部の端面を、円筒の周方向において、互いに突き合わせることにより、絶縁層2に重複領域20を形成する必要がなく、絶縁層2の表面におけるスペースの自由度を高めて、ユニット領域16の面積をより十分確保することができ、これにより、ガス検知の精度を向上させることができる。
【0071】
好ましくは、図1および図2に示すように、絶縁層2の重複領域20が厚み方向に重なるように、絶縁層2を筒状に形成する。
これにより、重複領域20が厚み方向に重なっているので、重複領域20におけるシール性を高めて、ガスの漏出をより一層有効に防止することができる。
また、このガス検知センサ1では、絶縁層2を、電極4が内側に向くように筒状に形成しても、端子部6は、必ず電極4と反対側の外側に露出する。そのため、突出部を形成することなく、絶縁層2の裏面側、つまり、絶縁層2の外側において、電気抵抗検知器が、端子部6から、外部接続用端子部15および配線14を介して、1対の電極4間における電気抵抗値の変化を検知することができる。
【0072】
その結果、突出部の形成を不要とすることができ、特定のガスを優れた精度で検知することができる。
また、上記した図1の説明では、電極4の直線部8の延びる方向が、絶縁層2の筒の周方向と直交するように、絶縁層2を略円筒状に形成しているが、例えば、図示しないが、電極4の直線部8の延びる方向が、絶縁層2の筒の周方向に沿うように、絶縁層2を略円筒状に形成することもできる。
【0073】
好ましくは、直線部8が延びる方向が、絶縁層2の筒の周方向と直交するように、絶縁層2を略円筒状に形成する。そのため、直線部8は、絶縁層2が筒状に成形されて湾曲する時の応力を受けにくいので、断線などの損傷を有効に防止することができる。
その結果、特定のガスをより一層優れた精度で検知することができる。
図8は、本発明の物質検知センサの他の実施形態のガス検知センサ(ランド部と、直線部の先端部および後端部とが導電性層から露出する態様)を展開したときの平面図、図9は、本発明の物質検知センサの他の実施形態のガス検知センサ(フレキシブル基板が略角筒状に形成され、絶縁層の裏面に金属板が設けられる態様)の一部切欠斜視図、図10は、図9において、端子部に一致する位置でガス検知センサを切断したときの断面図、図11は、図9において、直線部に一致する位置でガス検知センサを切断したときの断面図、図12は、本発明の物質検知センサの他の実施形態のガス検知センサ(電極および導電性層が絶縁層の外側に向く態様)の一部切欠斜視図、図13は、図12において、端子部に一致する位置でガス検知センサを切断したときの断面図を示す。
【0074】
なお、上記した部材に対応する部材については、以降の各図面において同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
上記した図3の説明では、各導電性層5を、1対の電極4すべてを被覆するように形成しているが、例えば、図8に示すように、1対の電極4の一部を露出させるように形成することもできる。
【0075】
図8において、ランド部7と、直線部8の先端部および後端部とは、導電性層5から露出している。
好ましくは、図3に示すように、各導電性層5を、1対の電極4すべてを被覆するように形成する。これにより、電極4が酸性や腐食性のガスなどに暴露されず、電極4が酸化や腐食することを防止でき、導電性層5が電極4をガスから保護することができる。その結果、優れた耐久性を確保して、接続信頼性を向上させることができる。
【0076】
また、図9および図11に示すように、絶縁層2の裏面に、金属板30をさらに形成することもできる。
金属板30を形成する金属材料としては、上記した支持板19の金属材料と同様のものが用いられる。
図9および図11に示すように、金属板30は、絶縁層2の裏面において、端子部6と重ならないように、つまり、端子部6を除く領域に形成されている。詳しくは、金属板30は、ランド部7の後側に間隔を隔てて対向配置され、絶縁層2の幅方向にわたって形成されている。
【0077】
絶縁層2の裏面に金属板30が形成されたガス検知センサ1を製造するには、例えば、図7(d)に示す絶縁層2の裏面に、金属板30を、公知の接着剤層を介して積層する。あるいは、図7(a)に示す支持板19に代えて、金属板30を用い、また、図7(d)における支持板19の除去において、充填部9(端子部6)およびその周辺の金属板30のみを除去することにより、金属板30を形成することもできる(図10参照。)。
【0078】
また、上記した図1および図2の説明では、絶縁層2を、略円筒状に形成したが、例えば、図9〜図11に示すように、略角筒状に形成することもできる。
図9において、絶縁層2は、略四角筒状に形成されている。
また、各ユニット領域16は、絶縁層2の四角筒における連続する2つの平坦部にわたって形成されている。
【0079】
また、各電極4および各端子部6は、各ユニット領域16における各平坦部の幅方向途中(中央)に形成されている。
また、各導電性層5は、各ユニット領域16における2つの平坦部に跨るように形成されている。
このガス検知センサ1を得るには、例えば、絶縁層2を、4つの角部が、長手方向に沿い、幅方向(周方向)に互いに間隔を隔てて形成されるように、折曲加工する。
【0080】
絶縁層2を略角筒状に形成するときに、絶縁層2の裏面に金属板30が設けられている場合には、絶縁層2を折曲加工した後における各角部の形状保持性を高めることができる。そのため、絶縁層2の形状を確実に保持することができる。
また、上記した図2の説明では、絶縁層2を、電極4および導電性層5が内側に向き、かつ、端子部6の膨出部10が外側に向くように、略円筒状に丸めているが、例えば、図12および図13に示すように、電極4および導電性層5が外側に向き、かつ、端子部6の膨出部10が内側に向くように、略円筒状に丸めることもできる。
【0081】
この場合には、図12および図13に示すように、検知センサ1において、絶縁層2の外側に、絶縁層2の筒を囲む外筒22を設ける。
外筒22は、絶縁層2の筒が延びる方向に沿って延びる略円筒状であり、電極4および導電性層5の外側(径方向外側)に間隔を隔てて対向配置されている。外筒22を形成する材料は、特に限定されず、例えば、ガス透過率が低い材料が用いられる。
【0082】
外筒22と絶縁層2との間隔は、例えば、0.5〜50mm、好ましくは、5〜20mmである。
そして、このガス検知センサ1を用いて、特定のガスを連続的に検知するには、まず、絶縁層2と外筒22との間に、特定のガスを連続的に流す。その後、上記と同様にして、電気抵抗検知器により、1対の電極4間における電気抵抗値の変化を検知する。
【0083】
また、上記した図3の説明では、絶縁層2において、検知ユニット13を、2つ設けたが、その数は特に限定されず、例えば、1つ、あるいは、3つ以上の複数、設けることもできる。好ましくは、複数(2つ以上)設ける。これにより、検知できる特定のガスの種類を拡大させることができ、また、特定のガスの量(濃度)を、より一層精度よく検知することができる。
【0084】
また、上記した図3および図4のガス検知センサ1において、ビアホール3を、略円形状に形成しているが、その形状は特に限定されず、例えば、略矩形状などの多角形状に形成することができる。
また、上記した図3および図4のガス検知センサ1において、ランド部7および/または膨出部10を略円形状に形成しているが、それらの形状は特に限定されず、例えば、略円形状、例えば、矩形状を除く多角形状に形成することもできる。
【符号の説明】
【0085】
1 ガス検知センサ
2 絶縁層
3 ビアホール
4 電極
5 導電性層
6 端子部
30 金属板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つのビアホールが形成される絶縁層と、
前記絶縁層の表面に、各前記ビアホールに対応して形成され、互いに間隔を隔てて対向配置される各電極と、
前記絶縁層の表面に、各前記電極間にわたって形成され、特定の物質の種類および/または量に応じて、膨潤する割合が変化する導電性層と、
前記絶縁層の裏面に露出するように、各前記ビアホール内に充填され、各前記電極と電気的に接続される端子部と
を備えていることを特徴とする、物質検知センサ。
【請求項2】
前記絶縁層は、筒状に形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の物質検知センサ。
【請求項3】
前記絶縁層は、前記絶縁層の両端部が厚み方向に重なるように、筒状に形成されていることを特徴とする、請求項2に記載の物質検知センサ。
【請求項4】
各前記電極は、互いに対向する対向方向に直交する方向に沿って延びており、
各前記電極の延びる方向と、前記絶縁層の筒の周方向とが、直交していることを特徴とする、請求項2または3に記載の物質検知センサ。
【請求項5】
前記電極は、前記導電性層に被覆されていることを特徴する、請求項1〜4のいずれかに記載の物質検知センサ。
【請求項6】
前記絶縁層の裏面には、金属板が、前記端子部と重ならないように設けられていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の物質検知センサ。
【請求項1】
少なくとも2つのビアホールが形成される絶縁層と、
前記絶縁層の表面に、各前記ビアホールに対応して形成され、互いに間隔を隔てて対向配置される各電極と、
前記絶縁層の表面に、各前記電極間にわたって形成され、特定の物質の種類および/または量に応じて、膨潤する割合が変化する導電性層と、
前記絶縁層の裏面に露出するように、各前記ビアホール内に充填され、各前記電極と電気的に接続される端子部と
を備えていることを特徴とする、物質検知センサ。
【請求項2】
前記絶縁層は、筒状に形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の物質検知センサ。
【請求項3】
前記絶縁層は、前記絶縁層の両端部が厚み方向に重なるように、筒状に形成されていることを特徴とする、請求項2に記載の物質検知センサ。
【請求項4】
各前記電極は、互いに対向する対向方向に直交する方向に沿って延びており、
各前記電極の延びる方向と、前記絶縁層の筒の周方向とが、直交していることを特徴とする、請求項2または3に記載の物質検知センサ。
【請求項5】
前記電極は、前記導電性層に被覆されていることを特徴する、請求項1〜4のいずれかに記載の物質検知センサ。
【請求項6】
前記絶縁層の裏面には、金属板が、前記端子部と重ならないように設けられていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の物質検知センサ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−249692(P2010−249692A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−100090(P2009−100090)
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]