説明

特にセンサ装置のための連結装置

特にセンサ装置のための連結装置であって、少なくとも1つの連行体(30)を備えており、該連行体(30)は、回転可能な軸と結合されるようになっており、該連行体(30)は、端面で、連行体歯列(24)を備えており、該連行体歯列(24)は、ロータ(28)に回転運動を伝達するために、該ロータ(28)のロータ歯列(22)と噛み合うようになっており、ロータ歯列(22)および連行体歯列(24)は、該ロータ歯列(22)と連行体歯列(24)とが噛み合うと自由空間(20)が形成されるように、形成されており、自由空間(20)が形成される際に、自由空間(20)において、ロータ歯列(22)と連行体歯列(24)とは、機械式に接触していない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項の上位概念に記載の、特にセンサ装置のための連結装置から出発する。
【0002】
背景技術
既にドイツ連邦共和国特許出願公開第450249号明細書から、同時に歯が噛み合う歯車伝動装置が公知である。両方の歯車対の歯車は、それぞれ噛合位置に関して相互にずらされており、1歯車対では、歯が噛合区間の開始部分に位置し、他方の歯車対では、歯が噛合区間の終了部分に位置する。歯車の間の汚れによって、不都合な軸方向の摺動が生じ得る。
【0003】
したがって本発明の課題は、前述の欠点を少なくとも軽減することである。この課題は、独立請求項の特徴部に記載の構成によって解決される。
【0004】
発明の利点
本発明による、独立請求項の特徴部に記載の構成を有する連結装置では、歯の尖端部と溝底との間の自由空間が、場合によっては生じる汚れを収容するために用いられる。さらに両方の連結部分、つまりロータと連行体との問題のない取付は、回転モーメント伝達のために取付過程の間に自己方向調整することによって達成される。このことは、とりわけロータ歯列もしくは連行体歯列の歯のフランクが回転軸線の垂線に対して所定の角度で軽く傾斜していることによって実現される。ロータを連行体に取り付ける際に、この傾斜によって、両方の連結エレメントが回転軸線に向かって自動的に方向調整され、この方向調整が助勢される。同時に必要な軸方向遊びが保証される。回転モーメントを吸収する側に掛かる軸方向の摺動力は回避される。
【0005】
有利な形態によれば、ロータおよび/または連行体は、ブシュ上に支承される。ブシュは、たとえばステンレス鋼から形成することができ、これに対してロータは、たとえば特に有利にはPOM(ポリオキシメチレン、ポリアセタールの群から成る)のように良好な滑り特性を有するプラスチックから形成してもよい。ロータを支承するためのブシュを用いると、連結装置は、特にオートバイにおいてセンサ装置に車輪回転数を伝達するために適している。したがってオートバイにおいて一般的なスペーサブシュを用いることができ、しかも別の大きな構造変化を必要としない。
【0006】
有利な形態によれば、ロータ歯列は、連行体歯列よりも軟性の材料から成っている。連行体は、通常、たとえばオートバイの前輪の回転軸と直に結合されている。エラーが生じた場合に回転軸のブロックを回避するために、記載した材料選択によって得られるが、ブロック時に歯列が落とされる。選択された材料硬度では、この歯列は、ロータの歯列であり、ロータは、通常センサと接続されている。このような構成によって、たとえばオートバイの前輪の引き続きの回転は中断されない。これによって交通安全性が高められる。
【0007】
別の有利な形態では、ロータは、磁界に影響を及ぼす装置、特に歯環を備えて形成されている。連結装置は、センサによって検出される回転数を伝達するのに特に良好に適している。歯環は、直にロータと結合することができ、直接的な結合によって、構成ユニットの簡単で経済的な製造が助勢される。
【0008】
有利な別の形態では、センサが、歯環に起因する磁界の変化を検出する。このためにセンサは、ブシュと結合されたハウジングに取り付けられている。これによって連結装置と共に極めてコンパクトなセンサ配置構造が実現される。
【0009】
有利な形態では、自由空間は、矩形に形成されている。簡単に形成されるこのような自由空間に、場合によっては生じる汚れを特に良好に収容することができ、しかも機能が損なわれることはない。
【0010】
有利な別の形態は、別の従属請求項および明細書から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】連結装置の組み込まれたセンサ装置を示す斜視図である。
【図2】連結装置と共に、図1に示したセンサ装置を、背面から示す図である。
【図3】連結装置の断面図である。
【図4】aは、ロータの一部を示す図であり、bは、aのA−A線に沿った断面図であり、cは、ロータの歯列の一部を示す図である。
【図5】ロータの全体を示す斜視図である。
【図6】取付状態で連結装置を示す拡大側面図である。
【0012】
発明を実施するための形態
以下に、特にセンサ装置のための連結装置の1形態を図示し、詳しく説明する。
【0013】
ケーブル12を介して接続可能なセンサ10は、ハウジング14に収容されている。ハウジング14は、ブシュ16と結合されている。図2から看取されるように、ブシュ16は、連行体30のための支承部として用いられ、つまり連行体30は、ブシュ16に対して回転することができる。連行体30は、概ね管状の部品として形成されていて、一方の側で、フランジによって画成されていて、他方の側で、連行体歯列24に移行している。連行体歯列24は、軸方向で三角形の形状を有している。連行体歯列24は、ロータ28のロータ歯列22に噛み合う。ロータ28も同様に管状に形成されていて、ブシュ16によって支承される。ブシュ16は、ロータ歯列22とは反対側で、ロータ28のためのストッパ38を備えている。ストッパ38は、フランジとして形成されている。ロータ28の中央部分に、半径方向外側に配置された円筒形の区分が設けられており、円筒形の区分に、歯環34が配置されている。歯環34は、概ねケージ状に形成されていて、規則的な間隔で周方向に開口を備えている。ブシュ16は、連行体30から遠い側で、ハウジング14と結合されている。ハウジング14の、円筒形の凹部には、センサ10が配置可能であり、センサ10は、組立状態で、歯環34の傍において、歯環34に起因する磁界変化を検出する。センサ10によって検出される磁界から、ロータ28、連行体30およびこれらと結合された軸が、定位置のセンサ10に対して運動する回転角または回転数が推測される。図2からも看取されるように、ハウジング14は、連結装置の軸方向全長にわたって延びていて、連行体30のフランジと大体において整合している。
【0014】
図4aには、ロータ28の歯列22を詳しく示した。ロータ歯列22は、軸方向で概ね三角形の尖端を成すように延びている。三角形の尖端部は、ロータ基体に向かって軸平行区分に移行しており、したがって軸平行区分は、純粋な三角形の歯列の代わりに、自由空間20を形成し、自由空間20は、いわゆる溝底と呼ばれる。自由空間20は、概ね矩形に形成されている。ロータ歯列22は、回転軸線に対して半径方向に、ロータ28の回転軸線の垂線に対して角度αで傾斜しており、これは図4bから看取される。図4bには、ロータ歯列22の、半径方向で対向する2つの歯のフランク29を断面図で示した。
【0015】
フランク29は、回転軸線の垂線に対して角度αで傾斜している。図4cに投影図で示した歯列22から看取されるように、ロータ歯列22の周は半径と共に減少している。ロータ28または連行体30に、凹部26が設けられている。
【0016】
図5の斜視図において、概ね管状に形成されたロータ28の全体を示した。ロータ28の内側部分で、軸方向にスリット状の2つの凹部26が延びている。凹部26に、汚れが堆積され得る。凹部26を介して、ロータ28およびブシュ16の支承部の潤滑を行うこともできる。
【0017】
図3および図6から看取されるように、ロータ歯列22は、連行体歯列24に噛み合う。連行体歯列24は、ロータ歯列22の三角形部分に正確に適合する。ロータ歯列22とは違い、連行体歯列24では、溝底もしくは矩形の自由空間20は設けられていない。その代わりに、連行体歯列24は、軸方向に純粋な三角形状を有している。角度αの傾斜は、相応に、連行体歯列24においても、ロータ28および連行体30の自己センタリングのためにみられる。連行体30の尖端部31は、自由空間20に位置するようになる、つまり、連行体24の尖端部31は、ロータ歯列22と機械式に直に接触しない。自由空間20で、ロータ歯列22と連行体歯列24との間に存在する汚れを集めることができ、汚れは、ロータ28および連行体30を取り付ける際に自由空間20に達する。
【0018】
少なくともロータ28と連行体30とから成る図示の連結装置は、有利にはオートバイにおいてセンサ装置によって検出するために回転運動を伝達するのに用いられる。したがって連行体30は、オートバイの前車軸と結合されている。たとえば前車軸またはその他の車軸の回転運動のパラメータは、望ましくはセンサ10によって検出される。このために連行体30によって取り出されるトルクは、連行体歯列24とロータ歯列22とを介してロータ28に伝達される。ロータ28は、歯環34を備えており、歯環34は、磁界に影響を及ぼす材料、たとえばステンレス鋼またはフェライト特殊鋼から成っている。歯環34は、ロータ28と共に回転する。歯環34に磁極を配置することも同様に良好であり、磁極の回転運動によって磁界が変化する。歯環34上に存在する磁極は、たとえば磁気プラスチックから成っていてよい。検出される磁界に基づいて、センサ12は、ロータ28の回転運動もしくは回転数を求めることができる。同様にセンサ12に磁界を形成する少なくとも1つの素子が設けられたセンサ原理も考えられ、その磁界は、歯環34によって、回転運動に応じた強磁性材料と非強磁性材料との交互配置(交番)によって変化される。
【0019】
ロータ28は、有利にはプラスチックから形成されており、プラスチックは極めて良好な滑り特性を有している。このためにたとえばポリオキシメチレン(POM)またはポリアセタールの群から成る別のプラスチックが適している。ロータ28はブシュ16上に支承されていて、したがってブシュ16に対して回転するので、良好な滑り特性が必要である。さらにロータ28の材料は、連行体30の材料よりも軟質に選択されている。連結装置がブロックされる場合、車輪が連行体30を引き続き運動させるので、ロータ28のブロックまたはロック(クランプ)に際して、ロータ歯列22は、連行体歯列24によってせん断されるようになる。これによって確実に車軸もしくは車輪のブロックを防止することができる。
【0020】
連行体30は、たとえば深絞り加工部分として、または鋼から形成されていて、したがってプラスチックから成るロータ28よりも高い強度を有している。ロータ28および連行体30の支承部として用いられるスペーサブシュ16は、たとえばステンレス鋼から形成されている。
【0021】
ロータ28または連行体30に、凹部26を設けることができる。凹部26に、汚れが堆積し得る。凹部26を介して、支承部の潤滑を行うこともできる。内側で下向きに延びる上方のフランク29に基づいて、ロータ28および連行体30は、簡単に正確な位置に取り付けることができる。回転軸線の垂線に対して角度αで傾斜した歯のフランク29は、中心点に対する自己センタリングを保証する。さらに尖端を成して先細に延びる歯列22,24は、取付エラーのない接合を助勢する。このような観点で、特に有利には、少なくとも1つの歯列22,24は尖端部を有しており、尖端部は、対向歯列を、所望の噛合位置に軸方向で案内する。
【0022】
連結装置の重要な思想によれば、ロータ歯列22と連行体歯列24との間に自由空間20が形成されている。自由空間は、別の幾何学形状の歯列22,24によって形成してもよい。したがってロータ歯列22の幾何学形状と連行体歯列24の幾何学形状とは、交換することもでき、つまり溝底は、連行体歯列の適切な構成によって形成されることになる。
【0023】
センサ装置のための連結装置の製造は、有利には、先ずブシュ16がインサートとして射出成形により被覆されて行われる。射出成形法によって、ハウジング14が形成され、ハウジング14はブシュ16と結合されている。ハウジング14には、通常プラスチックとしてポリアミド66(PA66)が用いられる。次いでロータ30がブシュ16上に取り付けられる。次いでセンサ10がハウジング14内にねじ止めされる。最後にロータ28と連行体30とが相互結合される。
【0024】
記載したセンサ装置のための連結装置は、特にオートバイにおいて回転数を検出するのに適している。しかしながら利用範囲は、これに制限されるものではない。原則として、記載した連結装置は、任意の可動軸の連結および回転数を評価するために用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特にセンサ装置のための連結装置であって、
少なくとも1つの連行体(30)を備えており、該連行体(30)は、回転可能な軸と結合されるようになっており、該連行体(30)は、端面で、連行体歯列(24)を備えており、該連行体歯列(24)は、ロータ(28)に回転運動を伝達するために、該ロータ(28)のロータ歯列(22)と噛み合うようになっている、連結装置において、
ロータ歯列(22)および連行体歯列(24)は、該ロータ歯列(22)と連行体歯列(24)とが噛み合うと自由空間(20)が形成されるように、形成されており、自由空間(20)が形成される際に、自由空間(20)において、ロータ歯列(22)と連行体歯列(24)とは、機械式に接触していないことを特徴とする、連結装置。
【請求項2】
ロータ歯列(22)および/または連行体歯列(24)は、尖端を成すように先細に延びていて、有利には三角形に形成されている、請求項1記載の連結装置。
【請求項3】
自由空間(20)は、噛み合った状態で、尖端を成すように先細に延びる少なくとも1つの歯列(22,24)の少なくとも1つの尖端部(31)を包囲する、請求項1または2記載の連結装置。
【請求項4】
ロータ(28)および/または連行体(30)は、管状に形成されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の連結装置。
【請求項5】
ロータ歯列(22)および/または連行体歯列(24)の上方の少なくとも1つのフランク(29)が、ロータ(28)回転軸線の垂線に対して角度αでロータ(28)の回転軸線に向かって傾斜している、請求項1から4までのいずれか1項記載の連結装置。
【請求項6】
ロータ(28)および/または連行体(30)は、ブシュ(16)上に支承されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の連結装置。
【請求項7】
ロータ歯列(22)は、連行体歯列(24)よりも軟性の材料から形成されている、請求項1から6までのいずれか1項記載の連結装置。
【請求項8】
ロータ(28)は、磁界に影響を及ぼす装置、有利には歯環(34)を備えている、請求項1から7までのいずれか1項記載の連結装置。
【請求項9】
センサ(10)が設けられており、該センサ(10)は、連行体(30)の回転数を検出するために磁界の変化を検出する、請求項1から8までのいずれか1項記載の連結装置。
【請求項10】
ロータ(28)および/またはブシュ(16)は、少なくとも1つの凹部(26)を備えている、請求項1から9までのいずれか1項記載の連結装置。
【請求項11】
自由空間(20)は、溝状に、有利には矩形に形成されている、請求項1から10までのいずれか1項記載の連結装置。
【請求項12】
ブシュ(16)は、ハウジング(14)と結合されている、請求項1から11までのいずれか1項記載の連結装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−538225(P2010−538225A)
【公表日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−523449(P2010−523449)
【出願日】平成20年7月7日(2008.7.7)
【国際出願番号】PCT/EP2008/058772
【国際公開番号】WO2009/030543
【国際公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】