説明

特に加塩用の食品組成物

本発明は少なくとも1つのカリウム塩が有機カリウム塩である少なくとも2つのカリウム塩を含む組成物、特に加塩用組成物に関する。本発明はさらに、食品に該組成物を添加することからなる少なくとも一つの工程を含む食品を調製する方法に関する。最後に、本発明はさらに、加塩剤としての該組成物の使用方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は食品の分野に関し、最も特別には加塩用の組成物と、かかる組成物を添加する工程を含む食品の調製方法と、かかる組成物の使用方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
農産加工で使用される塩は、通常、95%を超える塩化ナトリウム(食塩)と、アンチケーキング(抗固化)剤および/またはヨウ素もしくはフッ素化化合物のような少数の賦形剤とを含む、蒸発塩である。
【0003】
しかしながら、塩化ナトリウムの過剰消費は、罹患率が上がり続けている多数の障害および疾病の原因である。
このため、塩化ナトリウムの過剰消費に関連する疾病を減らすために、塩化ナトリウムが少ない組成物が開発されている。
【0004】
一般に、先行技術の組成物ではナトリウムをカリウムに置き換えているが、その理由は高カリウム食の摂取によりいくつかの主な疾病(特に高血圧症、卒中、骨粗鬆症、腎石病および糖尿病)に対抗できるためである。
【0005】
しかしながら、先行技術の低塩化ナトリウム組成物の感覚刺激性は、塩化ナトリウム組成物より一般に劣っている。
さらに、これらの組成物は、製パンまたは農産加工業のための加塩剤としての特定の用途には十分には適していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、塩化ナトリウムが少ないが塩化ナトリウム組成物に近い十分な感覚刺激性を有する組成物を提唱することにより、上記問題の一部または全部を解決することにある。
【0007】
本発明の組成物は、製パンにおいて加塩剤として使用するのに特に適している。なぜなら、かかる組成物はパン生地の発酵時間を短縮できるとともに、パン生地の弾力性を増大でき、それによりパン生地の捏和を促進するためである。その上、農産加工業では、本発明の組成物は、特に食品の光沢および/または色の強さを増大させることができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、第1態様によれば、本発明の対象は、2つのカリウム塩のうちの少なくとも1つがカリウム有機塩である、少なくとも2つのカリウム塩を含む組成物である。
【0009】
詳細には、本発明の組成物は塩化ナトリウムを含まない。
本発明の組成物は、さらに塩化ナトリウムを含んでもよい。
本発明の組成物は、組成物の総重量に対して2重量%以下の塩化ナトリウム含量を含んでもよい。
【0010】
詳細には、本発明の組成物では、カリウム塩は、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、カリウム有機塩、塩化カリウム等のカリウム無機塩、およびそれらの混合物から成る群から選択することができる。
【0011】
本発明によれば、カリウム有機塩は、クエン酸カリウム、酒石酸カリウム、アジピン酸カリウム、コハク酸カリウム、グルタミン酸カリウム、およびリンゴ酸カリウムから成る群から選択することができ、好ましくはクエン酸カリウムである。
【0012】
詳細には、本発明の組成物は、組成物の総重量に対して50〜95重量%、好ましくは60〜80重量%の範囲のカリウム有機塩含量を含んでいる。
詳細には、本発明の組成物は、グルタミン酸、およびカルシウム塩、および/またはアンモニウム塩を含まない。
【0013】
第1実施形態によれば、本発明の組成物は、炭酸カリウムまたは重炭酸カリウムと、カリウム有機塩とを含む。
炭酸カリウムまたは重炭酸カリウムに対するカリウム有機塩の重量比は、1〜10、特に1.5〜7.5、特に2〜4、さらには3の範囲であってよい。
【0014】
第2実施形態によれば、本発明の組成物は、塩化カリウムと、カリウム有機塩と、炭酸ナトリウムまたは重炭酸カリウムとを含む。
炭酸ナトリウムまたは重炭酸カリウムに対するカリウム有機塩の重量比は、1〜10、特に1.5〜7.5、特に2〜4、さらには3の範囲であってよい。
【0015】
詳細には、本発明の組成物はさらにケイ酸を含む。
本発明の組成物は、ケイ酸を、組成物の総重量に対して0.05%〜5重量%の範囲、特に0.1〜2.5重量%の範囲、最も好ましくは0.2%〜1重量%の範囲で含んでよい。
【0016】
本発明の組成物は、食品に使用するのに特に適した種々の形式であってよい。詳細には、かかる組成物は粉末状である。
第2態様によれば、本発明の別の対象は、食品に本発明の組成物を添加することを含む少なくとも1つの工程を含む食品の調製方法である。
【0017】
詳細には、食品は、パン、調理済みの食事、スープ、ソース、ピザ、肉、調製食品(デリカテッセン)、および好ましくはパンから成る群から選択される。
第3態様によれば、本発明の別の対象は、加塩剤としての本発明の組成物の使用方法である。
【0018】
最後に、第4の態様によれば、発明の別の対象は、塩化ナトリウム代用品としての本発明の組成物の使用方法である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の組成物を例示の目的で以下に示す。
以下の実施例は考えられる3つの混合物を示す。
1)混合物1、以下を含む。
【0020】
−60重量% クエン酸カリウム;
−20重量% NaHCO
−19.8重量% KCl;および
−0.2重量% SiO
【0021】
2)混合物2、以下を含む:
−75重量% クエン酸カリウム;および
−25重量% KHCO
【0022】
3)混合物3、以下を含む:
−60重量% クエン酸カリウム;
−20重量% NaHCO
−19.8重量% KHCO;および
−0.2重量% SiO
【0023】
様々な食品中の塩化ナトリウムの代用品として本発明の組成物を使用した例を、以下に示す。
ある使用態様では、混合物1〜3が、塩化ナトリウムの少なくとも一部と置換されるように、塩化ナトリウムに対して種々の割合で組み込まれる。
【0024】
別の使用態様では、混合物1〜3が、18%〜70%の範囲の割合で塩化ナトリウムと置換される。
以下の表は、組成物の総重量に対する混合物1〜3の種々の化合物の割合を、かかる混合物のうちの1つによる塩化ナトリウムの置換割合に基づいて重量パーセントで示したものである。
【0025】
【表1】

【0026】
本発明の組成物は従来のベーカリーや商用の製パン業において有利に使用される。
一方で商用ベーカリーにおいて行った試験と、他方で製パン工場において行った試験とを、製パンの点における本発明の組成物の驚くべき効果を示すために以下に提供する。
【0027】
職人によるベーカリーでは、「試験用の」であるバケットパンを調製する方法は以下の工程を含む:
a)約6分間、スパイラルミキサで以下の成分を混合する:
3リットル 水;
5kg 小麦粉(T55+15gの全粒粉);
2kg パン種発酵液;
50g イースト;
50g バター;
小麦粉1g当たり20gの加塩用組成物(つまり100g)
b)そのようにして製造した混合物を、約1時間および30分間、室温でひとまとめにしてやすませる。この工程により1次発酵が行われ、風味が出てくる。
【0028】
c)混合物を等重量のボールに分割する。
d)生地を20分間、中間プルーフィングする。
e)ボールをバケット形に成型する。
【0029】
f)バケットを室温で1時間やすませ、2次発酵を行う。
g)パケットを焼く。
パン製造における、およびその感覚刺激性における本発明の組成物の影響を試験するために、対照バケットを小麦粉1kg当たり18gの塩化ナトリウムを用いて調製した。また、「試験用」バケットは小麦粉1kg当たり本発明の組成物20gを用いて調製し、これに関し、塩化ナトリウムを混合物1につき総重量の30%、50%および70%で置換する。
【0030】
本発明の組成物を用いた結果、「試験用」バケットは対照バケットよりも発酵が早い。したがって、対照バケットでは室温で1時間やすませても程度の低い発酵しか得られないので、「試験用」バケットと似た発酵の程度を得るために約15°という制御温度下で一晩やすませておく。従って、本発明の組成物の使用により、調製時間を短縮することが可能である。
【0031】
丸める動作中、「試験用」バケット生地は対照バケット生地と比較すると緩いが、生地の中間プルーフィング後、生地の物理的性質に顕著な違いは観察されなかった。
さらに、ベーキング後、「試験用」バケットは対照バケットと同様な外観を有し、高品質のバケットのしるしである光沢のある不規則な小室を有する。
【0032】
消費者による本発明の組成物の許容性を決定するために、感覚試験を行なった。その結果、味の点で、本発明の組成物による塩化ナトリウムの置換は満足のいくものであることが示されている。実際のところ、試験した対象者のうちの40%近くは、対照バケットとの違いを区別することができていないが、塩化ナトリウムが50%置換されると塩っぽい感覚の不足が感じられ始め、塩化ナトリウムが70%置換されるとバケットが味気ないことという知見が得られている。
【0033】
製パンに対する本発明の組成物の使用の影響の研究を終えるために、商用の製パン規模での実験的試験を行った。試験対象のパンは、対照パンT1およびT2は小麦粉1kg当たり塩化ナトリウムを18gおよび22g用いて調製し、「試験用」パンE1、E2、E3は混合物1当たり22gの本発明の組成物を用いて調製し、塩化ナトリウムを18%、
32%および50%だけ置換した。
【0034】
これらの研究は、本発明の組成物の使用によって、発酵時間を短縮でき、したがって製造コストを低減できることを確認している。
さらに、生地を捏和している間の、生地の混ざり具合、弾力性および延性を評価し、以下の結果が観察された:
−生地の混ざり具合はパンT1、T2およびE1で同一である。
【0035】
−パンE1、E2およびE3は、T1およびT2よりかなり大きいコンシステンシーを有している。
−捏和中の弾力性の程度は、T1およびT2よりE1で大きい。
【0036】
−E1とT1の延性の程度は同様であるが、T2より低い。
−生地の粘着性は、T1、T2、E1、E2およびE3で同一である。
従って、発明の組成物は生地の弾力性を増大させることが注目される。そのため、捏和(生地に弾力性と可撓性を与える動作)が促進される。
【0037】
生地ピース成型とも呼ばれる成型動作中に、弾力性と延性を同様に評価する。生地の弾力性が使用される加塩剤によって変化するという知見が得られている。実際、E1の弾力性はT1より大きく、T1の弾力性はT2より大きい。さらに、パンT1およびT2に関しては成型中の延性は捏和中に測定された延性と同じであるが、パンE1に関しては成型中の延性は捏和と成型の間で減少する。
【0038】
パンT1およびE1については、生地の弾力性は捏和と成型の間で変化しなかったが、パンT2では生地の弾力性が減少した。
パンを焼くと、パンE1とT1ではブレードの切れ目が同一であるが、パンT2では少ないことが観察される。さらに、パンの体積がパンT1ではわずかに大きい。
【0039】
さらに、パンE1の味はパンT1とパンT2の中間であり、パンE2とE3の味は塩化カリウムの存在により説明可能な、わずかに金属の後味がするという知見が得られている。従って、本発明の1実施形態では、加塩用組成物は塩化カリウムを含まない。
【0040】
本発明の組成物は、同様に、家畜肉、トマトソース、ベシャメルソース、ピザまたはハムのための加塩剤として農産加工業において使用することができる。
2本発明の組成物の、圧倒的な塩味と後味とに対する影響は、塩化ナトリウムの置換率が50%よりも大きい混合物1でのみ現われる。
【0041】
さらに、色試験によれば、本発明の組成物の使用によって、より光沢があり、および/またはより着色が強い製品を得ることができることが実証された。詳細には、本発明の組成物の使用により生産されたベシャメルソースは、より黄色くてより光沢がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸カリウムまたは重炭酸カリウムと、カリウム有機塩とから成る組成物。
【請求項2】
炭酸カリウムまたは重炭酸カリウムに対する有機塩の重量比が、1〜10、特に1.5〜7.5、特に2〜4、または3の範囲の値から選択されることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
塩化カリウムと、カリウム有機塩と、炭酸ナトリウムまたは重炭酸ナトリウムとを含む組成物。
【請求項4】
炭酸カリウムまたは重炭酸カリウムに対するカリウム有機塩の比が、1〜10、特に1.5〜7.5、特に2〜4、または3の範囲の値から選択されることを特徴とする請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
組成物の総重量に対して2重量%以下の塩化ナトリウム含量をさらに含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の組成物、
【請求項6】
カリウム有機塩が、クエン酸カリウム、酒石酸カリウム、アジピン酸カリウム、コハク酸カリウム、グルタミン酸カリウムおよびリンゴ酸カリウムから成る群から選択され、特にクエン酸カリウムであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
組成物の総重量に対して50〜95重量%、好ましくは60〜80重量%の範囲のカリウム有機塩含量を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
グルタミン酸、カルシウム塩およびアンモニウム塩のうちの少なくとも一つを含まないことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
さらにケイ酸を含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
食品を調製する方法であって、
食品への請求項1〜9のいずれかに記載の組成物を食品に添加することを含む少なくとも1つの工程を含む方法。
【請求項11】
食品が、パン、調理済みの食事、スープ、ソース、ピザ、肉、調製食品、および好ましくはパンから選択されることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
加塩剤としての請求項1〜9のいずれかに記載の組成物の使用方法。
【請求項13】
食塩代用品としての請求項1〜9のいずれかに記載の組成物に使用方法。

【公表番号】特表2010−506579(P2010−506579A)
【公表日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−532862(P2009−532862)
【出願日】平成19年10月16日(2007.10.16)
【国際出願番号】PCT/FR2007/052164
【国際公開番号】WO2008/050040
【国際公開日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(509111353)ニュートラシューティクス ディベロップメント アンド サービシズ (1)
【氏名又は名称原語表記】NUTRACEUTICS DEVELOPMENT AND SERVICES
【Fターム(参考)】