説明

特に高圧放電灯などの外套管付き照明装置

本発明は、1.1.照明具を持つ第1体、1.2.該第1体を取り巻く第2体を有し、その際、1.3.該第2体がアルミノ(Al)珪酸塩ガラスで構成され、そしてその際に1.4.該アルミノ珪酸塩ガラスの1.4.1Tgが>600℃、好ましくは>650℃、より好ましくは>700℃、特に好ましくは>750℃であり、1.4.2.その熱膨張係数α(20℃〜300℃)が>0、好ましくは3≦α(20℃〜300℃)≦6、特に好ましくは3.5≦α(20℃〜300℃)≦5.5の範囲にある照明装置、好ましくは金属ハロゲン化物系高圧放電灯に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願では、§120USCに基づき、2006年2月1日に提出されたUS特許出願11/345,167の恩恵を請求する。本出願はUS11/345,167の後続出願である。US11/345,167の公開内容が全面的に本出願に採り入れられている。
【0002】
本発明は、照明具を持つ少なくとも1つの第1体および該第1体を取り巻く第2体を有する照明装置、特に高圧放電灯およびコンパクトな殊型金属ハロゲン化物系高圧放電灯に関する。
【背景技術】
【0003】
高圧放電灯の場合、第1体はイオン化可能な充填物の満たされた気密放電空間を形成している。その放電空間はバーナーとも称される。例えばWO2004/077490またはWO2005/033802に記述されているような現状技術に基づく高圧放電灯の放電空間は単一または複数の金属ハロゲン化物、水銀および希土類ハロゲン化物を含んでいる。これらは液状または固形状で室温にてバーナーに給入されるが、発火後には高圧および高温に支配されるため気状になる。
【0004】
第1体を取り巻き、好ましくはピストン桿の形態を取る第2体は、本来発光ユニットである第1体の熱封鎖に、および/または破損防止/爆発防止に、あるいは障害光線、特にUV光線からの構成材料および電灯構成体の保護に用いられる。
【0005】
高圧放電灯のバーナーは、フリントガラス(Kieselglas)または半透明セラミックス(例えば、Al、YAGセラミックス)製であり、1000℃までの、あるいはそれ以上のできる限り高い作業温度で適用される。作業温度が高ければ高いほど、色再現指数および効果が上り、電灯間の光の品質差はますます小さくなる。
【0006】
第1体と第2体間の空間は、断熱化のため、ほぼ、あるいは実質上完全に真空化されている。外套管とも言われる第2体には、UVのブロックのためUVブロッキング成分が組み込まれている。
【0007】
高圧放電灯、いわゆるHID灯の場合では、第2体、すなわち外套管における温度は300℃〜850℃である。これは、一連のファクタ、なかでもバーナーのホットスポットから外套管までの距離に依存する。それに相応して、ブッシング領域では、バーナーに直接隣接する外套管内部領域より低温である。バーナーの出力次第によるが、ホットスポットと外套管内壁間の距離が非常に接近している場合では、壁温度は800℃までの、あるいはそれ以上の温度に完全支配される可能性がある。
【0008】
上記のように、外套管は特に高いUVブロッキングにより優れているとされる。その場合、外套管によるブロッキングの対象は、特に光線UV−Cタイプ(約260nm)および光線UV−Bタイプ(約310nm)である。理想的にも、約360nmのUV−A光線も最大限の高率でブロッキングされる。大なり小なり不連続状態にあるこれらHg−UV線間の領域もできる限りブロック率を高めるべきである。ここでは、圧力下にある水銀または金属ハロゲン化物が幅広い放出帯を有しているからである。
【0009】
高圧放電灯の場合、第1体、すなわち、いわゆる放電空間構成用の材料としては、フリントガラスのほか、1100℃またはそれ以上の温度に対して耐久性のある半透明酸化アルミニウムも使用される。
【0010】
第2体、すなわち外套管の材料として現在使用されているのは、フリントガラスまたは多成分ガラスが圧倒的多数である。
WO2004/077490にはHID灯のことが記述されているが、その外套管の材料としては石英ガラス(Quarzglas)、硬質ガラスまたは軟質ガラスが挙げてある。しかし、WO2004/077490では硬質ガラスは詳しくは定義付けされていない。
【0011】
外套管用材料としてフリントガラスを使用するのは、UVブロッキング作用が十分でなく、材質上の欠点がある。フリントガラスのUVブロッキングは、好ましくは<1重量%の割合でのCeOの組み入れにより実現可能である。しかし、この場合は、硬質UV−C光線領域で現われる残透過という欠点がある。
【0012】
軟質ガラスの使用は、確かにこの点では問題ないが、しかしデザイン自由度の制限および/または電灯出力の制限を惹起する。
【0013】
現状技術に基づくHID灯のもう1つの問題は、ブッシング領域である。前記のとおり、第1(内部)および/または第2(外部)電灯管はフリントガラスで構成されているので、ブッシングは、外から内へ見て、厚さ<100μmのMo箔に溶接されているW線またはMo線、さらには電灯内部、例えばW製放電電極に通じるW線またはNb線の別な溶接点から形成されている。
【0014】
厚さ<100μmのMo箔の使用は、ガラス/金属製ブッシングの領域における電圧をできる限り低く保つためには不可欠である。その場合実際の気密封鎖は、Mo箔と周辺ガラスとの数mmの接触面を通じて行われるので、極めて信頼度に欠けている。その上、この封鎖技術が最大電流量(約20〜25A)に制限を加えている。
【0015】
Mo箔の使用は、さらに下記の欠点を含んでいる。
【0016】
Mo箔はブッシングの溶接時に燃焼性向を見せる。したがって、現状技術では当溶接は保護気流内で、特にアルゴン雰囲気下で行われる。
【0017】
溶接された箔は作動中に酸化する性向がある。これが密封不良および電灯の故障に繋がることがある。
【0018】
箔が薄ければ、電灯へのエネルギー搬送が不十分にしかなし得ない。製造作業、すなわち金属部品の度重なる溶接が、労働およびコストに負担をかけており、その上、ブッシングシステムに空間的広がりがあるため、電灯全体のサイズが不都合にも非常に大きくなる。
【0019】
WO2004/077490には、これらの欠点を克服するため、および光源としてHID灯を持つ照明具のコンパクト性および/またはデザイン自由度を高めるため、外套管とブッシング導線との溶接の代わりに、フリットリングを通じて行われる、ブッシング導線を含むベースプレートへの外套管の接合のことが記述されている。それにより、>10mmの溶接ゾーンが、プレートの厚さによって予備設定される最小限度のサイズに縮小される。
【0020】
WO2004/077490に基づけば、ベースプレートはガラス、セラミックスまたはガラスセラミックスで構成することができる。外套管用材料としては、上記のとおり、「石英ガラス、軟質ガラスまたは硬質ガラス」が列挙される。フリットリングの材質については詳しくは述べられていない。WO2004/077490の欠点は、上記のとおり、外套管の材質が特定されていないことである。
【特許文献1】米国特許出願第11/345167号
【特許文献2】国際公開第2004/077490号
【特許文献3】国際公開第2005/033802号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明の課題は、高圧放電灯における現状技術の欠点を克服することにある。
【0022】
特に、内部第1体と外部第2体を持ち、第2体(外套管)が、好ましくは、フリットを通じて非無延性ベースプレートに接合されている、すなわち、外套管とブッシング導線自体との間には接触面がない照明装置のことを採り上げる。外套管の材料は、高い温度耐久性および0以外の熱膨張率を示すものとする。特にブッシングの領域では応力は極僅かしか発生してはならず、また前記の欠点は避けねばならない。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明によれば、上記課題は請求項1に記載の装置によって解決される。すなわち、第2体はアルミノ珪酸塩ガラス、例えば硬質ガラスで構成されている。アルミノ珪酸塩ガラスとしては、Tgが>600℃、好ましくは650℃、特に好ましくは700℃、理想的には>750℃、さらに好ましくは>770℃、最も好ましくは>790℃で、熱膨張係数α20/300が>0、好ましくは3≦α20/300≦6、特に好ましくは3.5≦α20/300≦5.5のものでなければならない。
【0024】
非常に好ましい実施形態の1つでは、第2体、すなわち外套管のアルミノ珪酸塩ガラスは硬質ガラスである。
【0025】
アルミノ珪酸塩ガラス組成物は、好ましくも、UV−C領域ではほぼ100%のブロッキングを示す。すなわち、約260nmの、好ましくは300nmまで含めた波長はすべて、室温でも作動温度でももはや厚さ1mmまたはそれ以上の外套管を透過することはない。
【0026】
特に好ましい場合では、作動中に、UV−B光線(310nm)の部類に入るすべての波長も、さらに好ましい場合ではその上320nmまでの波長もブロックされる。
【0027】
UV−C領域とは波長約260nmのUV光線、UV−B領域とは波長約310nmのUV光線およびUV−A領域とは波長約365nmのUV光線のことである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明に基づく照明装置では、電灯は電流ブッシングを含むプレートと外套管で構成されている。外套管とベースプレート間およびブッシング導線領域での応力を回避するため、ベースプレートおよび外套管の膨張係数α20/300は、好ましくは、ブッシング導線の金属の膨張係数α20/300と実質上同等にする。したがって、ブッシング導線の素材としては、下記の金属または合金のいずれかが好ましい。
タングステン
モリブデン
ニオブ金属
コバール合金および
モレツデンワノフ合金
【0029】
したがって、ベースプレートおよび外套管の膨張係数は、これら金属の熱膨張係数α20/300に基づき、好ましくも、本発明で規定する領域3.5≦α20/300≦5.5にある。この理由から、石英ガラスの使用は一般には不可能である。以上より、十分な効果のあるUV−Cブロッキングには、特に多成分ガラス、すなわち、後段では「Al珪酸塩ガラス」とも称しているアルミノ珪酸塩ガラスが適している。
【0030】
特に好ましい第1の実施形態では、Al珪酸塩ガラスは下記成分を含んでいる(酸化物ベースでの重量%)。
SiO 50〜66
0〜5.5
Al 10〜25
MgO 0〜7
CaO 0〜14
SrO 0〜8
BaO 0〜18
0〜2
ZrO 0〜3
TiO 0〜5
CeO 0〜5
MoO 0〜5
Fe 0〜5
WO 0〜5
Bi 0〜5
また別な好ましいAl珪酸塩ガラスは下記の成分を含んでいる。
SiO 50〜66
0〜5.5
Al 13〜25
MgO 0〜7
CaO 5〜14
SrO 0〜8
BaO 6〜18
0〜2
ZrO 0〜3
TiO 0〜5
CeO 0〜5
MoO 0〜5
Fe 0〜5
WO 0〜5
Bi 0〜5
さらに、本発明に基づくAl珪酸塩ガラスで下記成分を含むものもある。
SiO 50〜66
0〜<0.5
Al 14〜25
MgO 0〜7
CaO 5〜14
SrO 0〜8
BaO 6〜18
0〜2
ZrO 0〜3
そのほか、本発明に基づくAl珪酸塩ガラスで下記成分を含むものも好ましい。
SiO 58〜62
0〜5.5
Al 13.5〜17.5
MgO 0〜7
CaO 5.5〜14
SrO 0〜8
BaO 6〜10
ZrO 0〜2
【0031】
上記のAl珪酸塩ガラスは実質上アルカリを含んでいない。しかし、アルカリを含むAl珪酸塩も全く同様に然るべき形態で使用することができる。その場合では、ガラス組成は、例えば下記のとおりである(単位:重量%)。
SiO 50〜70
Al 17〜27
LiO >0〜5
NaO 0〜5
O 0〜5
MgO 0〜5
ZnO 0〜5
TiO 0〜5
ZrO 0〜5
Ta 0〜8
BaO 0〜5
SrO 0〜5
0〜10
Fe 0〜5
CeO 0〜5
Bi 0〜3
WO 0〜3
MoO 0〜3
および例えばSnO、CeO、SO、Cl、As、Sbなど0〜4重量%の常用清澄剤が使用される。
【0032】
アルカリ不含の適当な別種ガラスとして、下記組成のガラスがある(単位:重量%)。
SiO 35〜70、特に35〜60
Al 14〜40、特に16.5〜40
MgO 0〜20、好ましくは4〜20、特に6〜20
ZnO 0〜15、好ましくは0〜9、特に0〜4
TiO 0〜10、好ましくは1〜10
ZrO 0〜10、好ましくは1〜10
Ta 0〜8、好ましくは0〜2
BaO 0〜10、好ましくは0〜8
CaO 0〜<8、好ましくは0〜5、特に<0.1
SrO 0〜5、好ましくは0〜4
0〜10、好ましくは>4〜10
0〜10、好ましくは<4
Fe 0〜5
CeO 0〜5
Bi 0〜3
WO 0〜3
MoO 0〜3
および例えばSnO、CeO、SO、Cl、As、Sbなど0〜4重量%の常用清澄剤が使用される。
【0033】
本発明に基づく組成物は、適当なUVブロッカーの添加によりUVエッジが照準下で調整できる点が特に優れている。それにより、例えば波長領域約400nmでの透過を、現状技術によるHID灯の放射では現われることのあるブルーがかった光線が抑制されるように照準下で調整することも可能である。
【0034】
本発明に基づくAl珪酸塩ガラス、特に硬質ガラスの場合、FeまたはTiOのような酸化物、あるいは酸化モリブデン、酸化ニオブおよび/または酸化セリウムなど典型的なその他UVブロッカーの混合により、先ず最初にUVエッジをUVフリントガラスのエッジに近似するように調整することが可能である。そうすることにより、本発明に基づくAl珪酸塩ガラスは、好ましくも、TiO、CeO、Fe、WoO、ZrO、MoO、Bi、Nbおよび/またはTaで構成されるグループから選択された少なくとも1種類の金属酸化物を含むことになる。
【0035】
したがって、もし必要なら、照準下で白色光の品質に影響を与えることができるのが好ましい。放電体の放射スペクトルがブルー成分を過剰に含んでいる限りは、UVエッジのコントラストを通じて同様に照準下でイエロー固有色の調整をすることができる。これが過剰なブルー成分を完全濾過する。イエロー固有色によって、HID灯バーナーのブルー成分が補償され、従来型HID灯に比べて改善された白色印象が達成される。
【0036】
これに温度効果が加われば、この作用はますます有利に働くことになる。バーナー近くのHIDランプ内壁では温度が600℃〜850℃あるいはそれ以上になることがあり、それによってUVエッジはエネルギー減少方向に移行する。
【0037】
本発明の有利な実施形態の1つによれば、Al珪酸塩ガラスは室温〜700℃の温度領域では波長290nm以下の光については実質上完全にブロックする。「実質上完全にブロックする」とは、本発明の枠内では透過率<0.01のことを言う。温度約600℃で波長300nm以下、好ましくは310nm以下の光を実質上完全にブロックする、すなわち透過率が<0.01のAl珪酸塩ガラスを使用すればさらに有利な状態にすることができる。特に当該のAl珪酸塩ガラスでは、約400nmの波長に対しては0.5〜0.91の透過率が可能である。
【0038】
本発明に基づくさらに別な実施形態によれば、Al珪酸塩ガラスとしては、波長約400nm、600℃の条件で透過率が86%未満で、Feの含有量が>10ppm、好ましくは>100ppm、特に好ましくは>300ppmのものが選択される。
【0039】
UVブロッキング成分の含有比率を適切に変更し、同時に温度スライドを考慮することによってUVエッジを任意に調整することが可能である。そうすることで、その値次第では再現指数CRIおよび/または電灯の色温度に好影響をもたらす、波長400nmでの適切な透過率を求めることができる。
【0040】
電灯の再現指数はいわゆる演色性指数(CRI)である。演色性指数(CRI)は光線放射面の白色印象を表わしている。380nm〜780nmの波長に対して同レベルの強度を示すことで優れている最適放射スペクトルから構成成分が欠落すればするほど、あるいはスペクトルが不均質であればあるほど、客観的に白色度はますます劣ることになる。その場合では面は多少ともグレーがかって見える。
【0041】
CRI指数100とは、最適放射スペクトル、すなわち最適白色印象を持つ電灯のことを表わしている。
【0042】
既述のとおり、高圧放電灯(HID灯)の光は、現状技術では充填物質を最適化した場合でさえなおブルー味が明瞭に残ることがある。現在販売されている電灯は殆どがCRI指数90未満のものである。本発明に基づくガラスを使用すれば、高い温度安定性を持ち、同時に熱膨張係数がα20/300>0で、且つ十分なUVブロッキング作用を示す適当なドーパーの添加によってブルー化傾向を抑制または完全に補償することができるので、CRI指数>90、好ましくは>95を持つHID灯が得られる。
【0043】
Al珪酸塩ガラスを、既に説明した照明装置、特に金属ハロゲン化物系の高圧放電灯に使用することも本発明の対象である。但し、Al珪酸塩ガラスは上記組成の1つを有しているものとする。
【0044】
以下では本発明の典型的な例を、図面および実施例に基づき説明する。各図は以下のとおりである。
【0045】
図1aにはHID灯の概要図が、図1bには、例えばWO2004/077490に記述されているようなブッシング構成部付き別形式の製品が示されている。
【0046】
図1aには外套管1のほかに、Alバーナーとして形成することのできるバーナーシステム2も描かれている。当バーナーシステム2はニップル継手4に固定されている。バーナーシステムは、バーナーの放電空間を形成する、いわゆる第1体を包含している。ニップル継手4は、外套管内を支配するように真空が設定された後でのポンプ柄の融解時に形成される。かつてのいわゆる熔融箇所が、この場合は、例えばハロゲン灯のW螺旋体に比べて明かに大きな質量を有するバーナーシステム2の上部固定点として機能しているので、外套管内での固定が有利である。以上のほか、送入導線6と送出導線8も示されている。送入、送出導線6、8は、バーナーの保持には十分に堅固ではあるが、しかし送出導線8の延長部10が上方にあるニップル継手4のところに固定具を有していれば、バーナーのポジショニングにおける確実性および再現性がより高められる。
【0047】
本発明では外套管1はAl珪酸塩ガラスで形成されている。Al珪酸塩ガラスの組成として可能な例が次表に記載されている。
【0048】
外套管1にバーナーシステムが装着された後に、続いて金属導線が取り付けられる。
【0049】
金属導線はブッシング構成部、いわゆるベースプレート50に収容される。
【0050】
外套管をブッシング導線と直接熔融させる代わりに、ここでは、外套管はブッシング導線68を含むベースプレート50にフリットリングを介して接合させる。それにより、熔融ゾーンは、ベースプレート50の厚さで決る最小限の質量に抑制される。
【0051】
外套管とベースプレート間で、およびブッシング導線領域で応力が発生するのを回避するために、ベースプレートと外套管の膨張係数α20/300はブッシング導線の素材金属の値と実質上同じにしてある。ブッシング導線6、8の素材としては、下記の金属または合金のうちのいずれか1つが好ましい。
タングステン
モリブデン
ニオブ金属
コバール合金および
モレツデンワノフ合金
【0052】
これら金属の熱膨張係数α20/300に基づけば、ベースプレートおよび外套管の膨張係数は3.5≦α20/300≦5.5の範囲にある。この理由から水晶ガラスの使用は不可能である。その不十分なUV−Cブロッキングも多成分ガラス、例えばAl珪酸塩ガラスにとっては有利な材料である。
【0053】
図2および3に示されたガラスは下記の組成および特性を有している。
【0054】
【表1】

【0055】
図2および3には実施例1、2、3および比較例V1、V2についての室温および600℃における透過曲線が描かれている。試料はすべて厚さ1mmである。
【0056】
V1は、膨張係数に関して適合性に欠けるため、本発明に基づく新しいHID灯コンセプトでは使用できない、Ceドーピング付きフリントガラスに相当する。UVエッジは良好であるが(ガラスが最大でも1.0%の透過性しか示さない最大波長:324nm)、しかしV1は260nmに対してなお透過性がある。
【0057】
V2はUVブロックのなされていないAl珪酸塩ガラスである。V1はUVブロッカーを含まないため(エッジの状況は、原料を介して持ち込まれた不純物にのみ依存する)、室温でも600℃でも290nmではなお透過性がある。
【0058】
実施例A1、A2およびA3は、比較によれば明かに良好である。Tiを含むガラスA1およびA2は、室温では295nmまたは305nmまでは全く透過性がない。Ce変形体A3は、さらにそれを越えて328nmまでは遮光性である。600℃の条件ではA1〜A3のガラスは最大310nmまでの波長にも、あるいはさらにそれ以上の波長に対しても透過性がない。本発明に基づくガラスはどのタイプも260nmでは遮光性であり、非常に有害なUV−C光線(260nm)は通さない。
【0059】
ガラスA1、A2およびA3は400nmではV1に対して比較可能な、または少し低レベルの透過性を示している。しかし、上で説明したとおり、バーナーユニットの放射が過度にブルー寄りである限り、これらは照準下で利用することができる。したがって波長400nmでは、Al珪酸塩ガラスにUVブロッキング性の物質を添加することにより、透過率を50〜91%の範囲にフリントガラスとの比較で可変的に調整することができる。
【0060】
但し、透過率が50%未満になると、イエロー固有色が強くなり過ぎ、延いては過度のフィルタ現象を招来する。
【0061】
他方、原料の綿密な選択によって400nmにおいても現状技術(UVブロックされたSiO)より良好な透過率を得ることができる。図5aおよび5bでは、図2のガラスA2の透過率データを基本組成の同じガラスA2bのデータと比較対照している。両者の違いはFe含量にある(A2:330ppm Fe、A2b:10ppm Fe)。それに応じて、後者はFe量豊富なタイプに比べ室温の場合も600℃の場合もエッジの峻度がより険しい。400nmでの透過率も高いが、しかし、カットオフまたはUVエッジについてはほぼ同レベルのままである。
【0062】
続いて、アルカリ含有Al珪酸塩ガラス(酸化物をベースとした重量%表示)について言えば、室温でも600℃でも同様に良好なUVエッジ、延いては透過曲線が認められた(実施例A4およびA5、図4参照)。当ガラスはFe成分の乏しい原料を熔融したもので、Fe含量はほぼ<10ppmである。
【0063】
【表2】

【0064】
【表3】

【0065】
実施例A4の透過曲線の峻度は、600℃では実施例V1の透過曲線とほぼ比較可能である。A5の透過曲線は、それどころか600℃ではV1とほぼ重なり合う。両実施例の場合、V1に比較して波長260nmでは有害なUV−C光線を完全にブロッキングし、しかもブッシング金属に適合する熱膨張率を持つという大きな利点も追加される。
【0066】
勿論、実施例4および5に基づく組成の温度安定性は、実施例1〜3に基づく組成の場合に比べ減退する。しかし、690℃のTgは指定用途にはなお十分な安定性を示す。
【0067】
モデル作動温度600℃における電灯全体の色特性に及ぼす外套管ガラスの透過性の影響については図6に図解されている。電灯色は、バーナー一次放射の外套管フィルタ機能による畳込みにより得られる。
【0068】
いわゆるCIELab色度図では、UVブロックされたSiO(比較例V1)と実施例A3間に差が認められる。実施例A3では色の位置が理想白色点の方向により近づいているので、その点では有利である。CIE系(COMMISSION INTERNATIONALE DEL’ECLAIRAGE=国際照明委員会、www.cie.co.at/cie参照)の大きさ表示では、特性値C(色彩、彩度)が1単位小さい。その場合好ましくもCRI(演色性)に殆ど変化がないのに、色温度CCTの低下しているのが有利である。要するに、電灯のブルー寄り光線は外套管素材のイエローフィルタ作用により緩和される。
【0069】
【表4】

【0070】
本発明の有利な実施形態および改良形態は、従属請求項および前記実施例から見て取れる。実施例および添付図面は本発明の教示内容を具体的に示しているが、本発明をそれらに制限するものではない。上記明細書には多数の変形体が記述されており、一連の変更可能性は当業者には容易に推測可能であり、添付の請求項の保護範囲を逸脱するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1a】HID灯の外套管を形成する第2体を持つHID灯を示す図である。
【0072】
【図1b】HID灯の外套管を形成する第2体を持つHID灯を示す図である。
【0073】
【図2】実施例A1、A2、A3(ドーパーの添加されたアルカリ不含のAl珪酸塩ガラス)、比較例V1(Ceのドーピングされたフリントガラス)およびV2(ドーパー無添加のAl珪酸塩ガラス)についての室温における透過曲線を示す図である。
【0074】
【図3】実施例A1、A2、A3および比較例V1、V2についての600℃における透過曲線を示す図である。
【0075】
【図4】実施例A4、A5(ドーピングされたアルカリ含有Al珪酸塩ガラス)および比較例V1(Ceのドーピングされたフリントガラス)についてのそれぞれ室温および600℃における透過曲線を示す図である。
【0076】
【図5a】図1と図2のガラスと同一基本組成を持つガラスA2bとの室温(5a)および600℃(5b)における透過データの比較を表わす図である。但し、Fe含量には差がある(A2:330ppm、A2b:10ppm Fe)。
【0077】
【図5b】図1と図2のガラスと同一基本組成を持つガラスA2bとの室温(5a)および600℃(5b)における透過データの比較を表わす図である。但し、Fe含量には差がある(A2:330ppm、A2b:10ppm Fe)。
【0078】
【図6】a)比較例V1とb)実施例A2のそれぞれ600℃における外套管使用下での電灯のCIELab色度図における色のポジションを示す図である。
【図1A】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
1.1. 照明具を持つ第1体
1.2. 該第1体を取り巻く第2体を有し、その際に
1.3. 該第2体がAl珪酸塩ガラスから成っていて、そしてその際に
1.4. 該Al珪酸塩ガラスの
1.4.1. Tgが>600℃、好ましくは>650℃、より好ましくは>700℃、特に好ましくは>750℃であり、
1.4.2. 熱膨張係数α(20℃〜300℃)が>0、好ましくは3≦α(20℃〜300℃)≦6、特に好ましくは3.5≦α(20℃〜300℃)≦5.5の範囲にある照明装置、好ましくは金属ハロゲン化物系高圧放電灯。
【請求項2】
前記電灯が電流ブッシングを含むプレートおよび外套管から構成されている、請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記Al珪酸塩ガラスが下記の組成(酸化物ベースでの重量%)、すなわち、
SiO 50〜66
0〜5.5
Al 10〜25
MgO 0〜7
CaO 0〜14
SrO 0〜8
BaO 0〜18
0〜2
ZrO 0〜3
TiO 0〜5
CeO 0〜5
MoO 0〜5
Fe 0〜5
WO 0〜5
Bi 0〜5
を有する請求項1または2のいずれかに記載の照明装置。
【請求項4】
前記Al珪酸塩ガラスが下記の成分、すなわち、
SiO 50〜66
0〜5.5
Al 13〜25
MgO 0〜7
CaO 5〜14
SrO 0〜8
BaO 6〜18
0〜2
ZrO 0〜3
TiO 0〜5
CeO 0〜5
MoO 0〜5
Fe 0〜5
WO 0〜5
Bi 0〜5
を有する請求項1または2のいずれかに記載の照明装置。
【請求項5】
前記Al珪酸塩ガラスが下記の成分、すなわち、
SiO 50〜66
0〜<0.5
Al 14〜25
MgO 0〜7
CaO 5〜14
SrO 0〜8
BaO 6〜18
0〜2
ZrO 0〜3
を有する請求項1または2のいずれかに記載の照明装置。
【請求項6】
前記Al珪酸塩ガラスが下記の成分、すなわち、
SiO 58〜62
0〜5.5
Al 13.5〜17.5
MgO 0〜7
CaO 5.5〜14
SrO 0〜8
BaO 6〜10
ZrO 0〜2
を有する請求項1または2のいずれかに記載の照明装置。
【請求項7】
前記第2体が、下記の成分(単位:重量%)、すなわち、
SiO 50〜70
Al 17〜27
LiO 0〜5
NaO 0〜5
O 0〜5
MgO 0〜5
ZnO 0〜5
TiO 0〜5
ZrO 0〜5
Ta 0〜5
BaO 0〜5
SrO 0〜5
0〜5
Fe 0〜5
CeO 0〜5
Bi 0〜5
WO 0〜5
MoO 0〜5
を含むAl珪酸塩ガラスから成り、加えて常用の清澄剤、例えばSnO、CeO、SO、Cl、As、Sbなどが0〜4重量%の量で添加されている、請求項1または2のいずれかに記載の照明装置。
【請求項8】
前記第2体が、下記の成分(単位:重量%)、すなわち、
SiO 35〜70、特に35〜60
Al 14〜40、特に16.5〜40
MgO 0〜20、好ましくは4〜20、特に6〜20
ZnO 0〜15、好ましくは0〜9、特に0〜4
TiO 0〜10、好ましくは1〜10
ZrO 0〜10、好ましくは1〜10
Ta 0〜8、好ましくは0〜2
BaO 0〜10、好ましくは0〜8
CaO 0〜<8、好ましくは0〜5、特に<0.1
SrO 0〜5、好ましくは0〜4
0〜10、好ましくは>4〜10
0〜10、好ましくは<4
Fe 0〜5
CeO 0〜5
Bi 0〜3
WO 0〜3
MoO 0〜3
を含むAl珪酸塩ガラスから成り、加えて常用の清澄剤、例えばSnO、CeO、SO、Cl、As、Sbなどが0〜4重量%の量で添加されている、請求項1または2のいずれかに記載の照明装置。
【請求項9】
前記Al珪酸塩ガラスが、TiO、CeO、Fe、WO、ZrO、MoO、Bi、Nbおよび/またはTaで構成されるグループから選択された少なくとも1種類の金属酸化物を含んでいる、前記請求項1から8のうちの少なくとも一項に記載の照明装置。
【請求項10】
少なくとも一種類の金属酸化物が、それぞれ>0〜8重量%、好ましくは>0〜6重量%の量で、特に好ましくは最大5重量%含まれている、請求項9に記載の照明装置。
【請求項11】
前記Al珪酸塩ガラスが、少なくとも0.5重量%のTiO、CeO、Fe、WO、ZrO、MoO、Bi、Nbおよび/またはTaを含んでいる、前記請求項1から10のうちの少なくとも一項に記載の照明装置。
【請求項12】
前記Al珪酸塩ガラスが、SbおよびAsを最大限1重量%の量で含んでいる、前記請求項1から11のうちの少なくとも一項に記載の照明装置。
【請求項13】
前記Al珪酸塩ガラスが、0〜1重量%のClおよび/または0〜3重量%のSOを含んでいる、前記請求項1から12のうちの少なくとも一項に記載の照明装置。
【請求項14】
前記Al珪酸塩ガラスのアルカリ土類含有量が、11.6〜29.0重量%である、前記請求項3から6のうちの少なくとも一項に記載の照明装置。
【請求項15】
前記Al珪酸塩ガラスが10重量%を越えるBaOを含んでいる、請求項5に記載の照明装置。
【請求項16】
前記Al珪酸塩ガラスが少なくとも0.5重量%のMgOを含んでいる、請求項5に記載の照明装置。
【請求項17】
前記Al珪酸塩ガラスが少なくとも0.005重量%のCeOを含んでいる、前記請求項1から16のうちの少なくとも一項に記載の照明装置。
【請求項18】
前記第1体がフリントガラスまたは半透明セラミックスで構成されている、前記請求項1から17のうちの少なくとも一項に記載の照明装置。
【請求項19】
前記第2体が金属ハロゲン化物系高圧放電灯の外套管である、前記請求項1から18のうちの少なくとも一項に記載の照明装置。
【請求項20】
前記第2体が金属ハロゲン化物系高圧放電灯の爆発防護体である、前記請求項1から19のうちの少なくとも一項に記載の照明装置。
【請求項21】
前記照明装置が金属製給電体を有している、前記請求項1から19のうちの少なくとも一項に記載の照明装置。
【請求項22】
前記金属が下記材質、すなわち
タングステン
モリブデン
ニオブ金属
コバール合金または
モレクデンワナール合金
のうちの一種または数種を含む、請求項21に記載の照明装置
【請求項23】
前記照明装置が、前記第2体に取り付けられた、特に接合されたブッシング構成部を有していて、そこに前記照明装置用の給電体が通されている、前記請求項1から22のうちの少なくとも一項に記載の照明装置。
【請求項24】
前記ブッシング構成部がプレート形態である、請求項23に記載の照明装置。
【請求項25】
前記ブッシング構成部が、少なくとも1つの、特に金属構成部形態で給電体を通過させる少なくとも1つの領域を有していて、前記ブッシング構成部が、少なくとも金属構成部が通過する領域では、前記金属構成部の熱膨張係数と実質上等しい熱膨張係数の材質から成っている、請求項23または24に記載の照明装置。
【請求項26】
前記金属構成部が下記材質、すなわち
タングステン
モリブデン
ニオブ金属
コバール合金または
モレクデンワナール合金
のうちの一種または数種を含む、請求項25に記載の照明装置。
【請求項27】
前記第1体が放電空間であり、該放電空間にはドーピング可能な充填物、特に水銀および/または希土類イオンおよび/またはハロゲンおよび/またはキセノンなどの放電物質が充填されている、前記請求項1から26のうちの少なくとも一項に記載の照明装置。
【請求項28】
前記放電空間が充填気体を有していて、該充填気体が200バールまでの圧力下または200バールを越える圧力下に置かれている、請求項26または27に記載の照明装置。
【請求項29】
前記Al珪酸塩ガラスが、室温〜700℃の温度領域では波長290nm以下の光を実質上完全にブロックする(透過率<0.01)、前記請求項1から28のうちの少なくとも一項に記載の照明装置。
【請求項30】
前記Al珪酸塩ガラスが、約600℃の温度では波長300nm以下、好ましくは310nm以下の光を実質上完全にブロックする(透過率<0.01)、前記請求項1から29のうちの少なくとも一項に記載の照明装置。
【請求項31】
前記Al珪酸塩ガラスが、約400nmの波長では0.5〜0.91の透過率を示す、前記請求項1から30のうちの少なくとも一項に記載の照明装置。
【請求項32】
前記Al珪酸塩ガラスが、約400nmの波長および600℃の温度では86%未満の透過率および>10ppm、好ましくは>100ppm特に>300ppmのFe含有量を示す、前記請求項1から31のうちの少なくとも一項に記載の照明装置。
【請求項33】
請求項3から17のうちのいずれか一項に記載の組成を持つAl珪酸塩ガラスの照明装置、特に金属ハロゲン化物系高圧放電灯への使用。
【請求項34】
前記照明装置が
1.1. 照明具を持つ第1体、
1.2. 該第1体を取り巻く第2体、その際
1.3. 該第2体がAl珪酸塩ガラスから成っていること
を特徴とする、請求項33に記載のAl珪酸塩ガラスの使用。
【請求項35】
前記Al珪酸塩ガラスのTgが>600℃、好ましくは>650℃、より好ましくは>700℃、特に好ましくは>750℃で、熱膨張係数α(20℃〜300℃)が>0、好ましくは3≦α(20℃〜300℃)≦6、特に好ましくは3.5≦α(20℃〜300℃)≦5.5の範囲にあることを特徴とする、請求項33または34に記載のAl珪酸塩ガラスの使用。
【請求項36】
請求項33から35のうちのいずれか一項に記載のAl珪酸塩ガラスの、請求項2または18から32のうちのいずれか一項に記載の照明装置への使用。

【図1b】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−543022(P2008−543022A)
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−515082(P2008−515082)
【出願日】平成18年5月22日(2006.5.22)
【国際出願番号】PCT/EP2006/004840
【国際公開番号】WO2006/131202
【国際公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(504299782)ショット アクチエンゲゼルシャフト (346)
【氏名又は名称原語表記】Schott AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr.10,D−55122 Mainz,Germany
【Fターム(参考)】