説明

状態復帰可能な刺繍ミシン

【課題】状態復帰可能な刺繍ミシンを提供する。
【解決手段】電源からの電力の供給を受けて駆動する刺繍ミシンであって、
少なくとも該電力の供給が断たれる直前の刺繍縫いの縫い目位置とミシンの状態を記憶し、該電力が断たれた後も該刺繍縫いの縫い目位置と状態とを保存するための手段と、次の電源オンの再開にあたって、前記保存するための手段に保存されたミシンの刺繍縫いの縫い目位置と状態を読み込んで、ミシンを保存された状態に復帰させる手段と、を備えたこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、状態復帰可能な刺繍ミシンに関する。
【背景技術】
【0002】
電動ミシンにおいては、通常電源スイッチの他に始動/停止スイッチやスピードコントローラを設けて、この操作によりミシンの始動/停止を行っている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、近年刺繍縫いが可能なミシン等が普及しつつあり、刺繍途中に作業を中断するために電源をオフすると、リセットがかかり、再始動の際に中断した位置から刺繍縫い作業を再開することができないため、電源をオフして作業を中断することは不可能であった。
本発明は上記従来技術の欠点を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために、本発明の状態復帰可能な刺繍ミシンは、
電源からの電力の供給を受けて駆動する刺繍ミシンであって、X−Y移動機構のX−Y方向位置による縫い目位置を逐次保存した状態とする状態保存であって、少なくとも該電力の供給が断たれる直前の刺繍縫いの縫い目位置とミシンの状態を記憶し、該電力が断たれた後も該刺繍縫いの縫い目位置と状態とを保存するための手段と、次の電源オンの再開にあたって、前記保存するための手段に保存されたミシンの刺繍縫いの縫い目位置と状態を読み込んで、ミシンを保存された状態に復帰させる手段と、を備えたことを特徴とする状態復帰可能な刺繍ミシンとすることで課題を解決した。
また本発明は、ミシンの近傍における操作者の不存在を検知するための手段と、
前記検知するための手段により操作者の不存在が所定時間検知された時、前記電源の供給をオフとするための手段と、を更に備えるようにすることで課題を解決した。
また本発明は、ミシンの操作が所定時間以上行われなかったことを検出するための手段を更に備え、該検出するための手段により所定時間以上操作が行われなかったことを検出した時、前記電源の供給をオフとするための手段と、を更に備えるようにすることで課題を解決した。
【発明の効果】
【0005】
本発明の状態復帰可能なミシンによれば、電源をオフとした時のミシンの状態を記憶し、これを読み込んで状態復帰を行うことができるから、電源をオフとすることにより安全に作業の中断が行え、再開にあたっては保存中にの縫い目位置及び状態に復帰することが行える。また、停電等の電源オフの事故に対応することが可能である等の効果がある。
そして本発明では、X−Y移動機構のX−Y方向位置による縫い目位置を逐次保存した状態とする状態保存であって、少なくとも該電力の供給が断たれる直前の刺繍縫いの縫い目位置とミシンの状態を記憶し、該電力が断たれた後も該刺繍縫いの縫い目位置と状態とを保存するための手段を備えることにより、正確な最終位置に復帰させることができ、電源スイッチ5による電源オフによっても、安全に作業を中断/再開することが可能になる。また、停電や電源コードの外れ等の事故があっても、ミシンの状態復帰が可能であり、更に作業を中断し、電源を切ってミシンを移動することなども可能になる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
X−Y移動機構のX−Y方向位置による縫い目位置を逐次保存した状態とする状態保存であって、少なくとも該電力の供給が断たれる直前の刺繍縫いの縫い目位置とミシンの状態を記憶し、該電力が断たれた後も該刺繍縫いの縫い目位置と状態とを保存するための手段と、次の電源オンの再開にあたって、前記保存するための手段に保存されたミシンの刺繍縫いの縫い目位置と状態を読み込んで、ミシンを保存された状態に復帰させる手段と、を備えることにより、電源をオフとすることにより電力の供給が断たれる直前の刺繍縫いの縫い目位置とミシンの状態を記憶し、次の電源オンの再開にあたって、前記保存するための手段に保存されたミシンの刺繍縫いの縫い目位置と状態を読み込んで復帰する。
【実施例】
【0007】
以下本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1において、中央演算処理装置1はマイクロコンピュータを主体に構成されており、ミシン全体の制御を行っている。即ち、始動/停止スイッチ2からの指令によりミシンモータ駆動回路20を介して縫い目形成機構21を駆動し、縫いを実行させるようになっている。始動/停止スイッチ2に換えて速度コントローラを用いることも可能である。
このミシンは刺繍縫い可能なミシンになっており、中央演算処理装置1はX−Yモータ駆動回路22を介してX方向モータ23とY方向モータ24を制御し、X−Y移動機構25を制御するようになっている。X−Y移動機構25には布等の刺繍対象物を保持した刺繍枠が設けられており、この刺繍枠をX−Y方向に移動させて刺繍縫いを実行させるようになっている。
模様データ記憶装置12には種々の模様データが記憶されており、模様選択釦11により所望の模様を選択して刺繍縫いを実行させることが出来るようになっている。
【0008】
このミシンには、安全スイッチ3が設けられており、この安全スイッチ3を操作することにより安全モード設定装置4を稼働し、ミシンの動作を禁止して安全モードとすることができるようになっている。この安全モードは、操作者による動作指令を受け付けないようにするものであり、電源等を切断することを意味しない。そして、少なくとも始動/停止スイッチ2による始動の指令を受け付けないようにし、ミシンを動作させないようにする。また、コントローラを用いているミシンにおいてはコントローラの操作による指令を受け付けないようにする。これにより、ミシンの始動を禁止することが可能になる。
その他の機能については、必要に応じて動作禁止としても良いし、或いは特定の機能については安全モードにおいても動作可能とすることも可能である。
安全スイッチ3が操作されてオンになると、安全モード設定装置4は停止検出装置10からの信号によりミシンが停止していることを確認した上で、安全モードに設定するようになっている。安全モードが設定されると中央演算処理装置1は表示制御装置8を介して表示装置9に安全モードが設定されている旨の表示を行う。
そして、次に安全スイッチ3が操作されてオフになると、安全モード設定装置4は該安全モードを解除して、操作を受け付け、通常の動作を可能にするようになっている。
なお安全モードの解除を簡単に子供等が行えないようにすることにより、安全性を向上することができる。たとえば、複数のスイッチの操作や、暗号の入力等により初めて安全モードを解除するようにしても良い。
【0009】
この実施形態では更に状態保存装置7を備えており、この状態保存装置7に格納された状態を中央演算処理装置1に読み込ませるために操作される保存状態読込みスイッチ6を備えている。保存状態読込みスイッチ6の操作があると中央演算処理装置1は状態保存装置7に保存された状態を読み込んで、該状態にミシンを復帰させることができるようになっている。
これにより、電源スイッチ5により電源がオフになった時、その直前の状態が状態保存装置7に保存されることになり、次に電源をオンとして保存状態読込みスイッチ6により状態保存装置7から保存状態を読み込むことにより、元の状態にミシンを復帰させることができる。
状態保存装置7による保存される状態は必要に応じて任意のもので良いが、典型的にはX方向モータ23とY方向モータ24により駆動されるX−Y移動機構25のX−Y方向位置を保存することにより、電源オフによる刺繍の中断/再開が可能になる。
【0010】
状態保存装置7はこの実施形態では、逐次状態を保存するようになっているが、たとえば電源スイッチ5の操作により電源が切られる時にのみ、その直前の状態を保存するように構成することも可能である。
以上の構成により、電源スイッチ5により電源をオフとして、始動/停止スイッチ2の操作による始動禁止状態としても、再び電源スイッチ5により電源をオンとすれば、電源オフ直前の状態にミシンを復帰させることが可能になる。そのため、刺繍の中断等も電源スイッチ5オフにより行うことが出来るようになる。更に、電源コードが外れたり、停電などが生じても元の状態に復帰することができる。また、電源コードを外してミシンを移動した後、中断した作業を再開できる等の利点がある。
【0011】
なお、上記実施形態では安全スイッチ3と安全モード設定装置4による安全モードの設定を行う構成と、保存状態読込みスイッチ6と状態保存装置7による状態記憶/復帰機能とを両方設けてあるが、どちらか一方を設けるように構成することも可能であり、どちらか一方を設ければ安全な状態で作業中断が可能になる。
【0012】
なお、近接スイッチ等をミシンに設け、操作者が一定時間以上存在しないことを確認したら、自動的に安全モード設定装置4をオン或いは電源をオフとするように構成することも可能である。更にその後操作者が戻ったことを検知して安全モード設定装置4を自動的にオフとすることも可能である。但し電源の場合には手動により電源スイッチ5オンとすることが望ましい。
【0013】
更に、所定時間以上ミシンの操作がなかったことを検知して、安全モード設定装置4をオンとし、或いは電源をオフとするように構成することも可能であり、他に種々の構成を付加することが出来る。
【0014】
図2により動作を説明する。
電源コードが接続され、電源スイッチ5により電源オンとされると(ステップS1)、中央演算処理装置1は保存状態読込みスイッチ6の操作をチェックし(ステップS2)、保存状態読込みスイッチ6がオンとされていれば、状態保存装置7に記憶されている前回電源オフ時のミシンの状態を読み込み、該状態にミシンを復帰させる(ステップS3)。これにより例えばX−Y移動機構25が稼働し、前回電源オフ時の状態にX−Y方向に移動する。
次に始動/停止スイッチ2がオンとなると(ステップS4)、中央演算処理装置1はミシンモータ駆動回路20及びX−Yモータ駆動回路22を稼働させ(ステップS5)、以後通常の動作を実行し、種々の操作指令を受け付け、これの処理を行う(ステップS6)。そして中央演算処理装置1はミシンの状態を逐次状態保存装置7に記憶保存する(ステップS7)。この動作は始動/停止スイッチ2オフによる停止指令があるまで継続する。
停止指令があると(ステップS8)、安全スイッチ3がオンか否か確認し(ステップS9)、安全スイッチ3がオンでなければ、ステップS13に飛ぶ。安全スイッチ3がオンであれば、停止検出装置10からの信号によりミシンの停止を確認し(ステップS10)、安全モード設定装置4により安全モードを設定し、始動/停止スイッチ2等の操作指令を受け付けない状態となる。また安全モードが設定されたことが表示装置9に表示される(ステップS11)。
次に中央演算処理装置1は安全スイッチ3がオフされたか否か確認し(ステップS12)、オフされていれば電源スイッチ5がオフにされたか否かを確認する(ステップS13)。電源オフになれば動作を終了する。この時のミシンの状態は状態保存装置7に記憶保存され、次の電源オンの時に必要に応じて読み込まれる。
電源がオフでなければ、ステップS4に戻り、始動/停止スイッチ2の操作待ちの状態になる。
【0015】
以上説明した実施形態によれば、安全スイッチ3を操作して安全モード設定装置4により安全モードを設定でき、この安全モードでは少なくとも始動/停止スイッチ2の操作指令を受け付けないため、子供等がミシンを始動させることが出来なくなる。そのため、操作者が作業を中断してミシンを離れること等が可能になり、再度作業を開始する際には中断した時の状態から作業を開始できる。そのため、刺繍縫いなどの途中において、安全モードを設定して作業を中断することも可能になる。
また、状態保存装置7によりミシンの状態を記憶しているため、電源がオフされてもその時点のミシンの状態を保存状態読込みスイッチ6により読み込み復帰させることが出来るから、電源スイッチ5による電源オフによっても、安全に作業を中断/再開することが可能になる。また、停電や電源コードの外れ等の事故があっても、ミシンの状態復帰が可能であり、更に作業を中断し、電源を切ってミシンを移動することなども可能になる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態を示す機能ブロック図。
【図2】本発明の一実施形態の動作を示すフローチャート図。
【符号の説明】
【0017】
1…中央演算処理装置
2…始動/停止スイッチ
3…安全スイッチ
4…安全モード設定装置
5…電源スイッチ
6…保存状態読込みスイッチ
7…状態保存装置
8…表示制御装置
9…表示装置
10…停止検出装置
11…模様選択釦
12…模様データ記憶装置
13…一時記憶装置
20…ミシンモータ駆動回路
21…縫い目形成機構
22…X−Yモータ駆動回路
23…X方向モータ
24…Y方向モータ
25…X−Y移動機構。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源からの電力の供給を受けて駆動する刺繍ミシンであって、
X−Y移動機構のX−Y方向位置による縫い目位置を逐次保存した状態とする状態保存であって、少なくとも該電力の供給が断たれる直前の刺繍縫いの縫い目位置とミシンの状態を記憶し、該電力が断たれた後も該刺繍縫いの縫い目位置と状態とを保存するための手段と、
次の電源オンの再開にあたって、前記保存するための手段に保存されたミシンの刺繍縫いの縫い目位置と状態を読み込んで、ミシンを保存された状態に復帰させる手段と、
を備えたことを特徴とする状態復帰可能な刺繍ミシン。
【請求項2】
ミシンの近傍における操作者の不存在を検知するための手段と、
前記検知するための手段により操作者の不存在が所定時間検知された時、前記電源の供給をオフとするための手段と、
を更に備えた請求項1に記載の状態復帰可能な刺繍ミシン。
【請求項3】
ミシンの操作が所定時間以上行われなかったことを検出するための手段を更に備え、
該検出するための手段により所定時間以上操作が行われなかったことを検出した時、前記電源の供給をオフとするための手段と、
を更に備えた請求項1に記載の状態復帰可能な刺繍ミシン。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−125444(P2007−125444A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−42585(P2007−42585)
【出願日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【分割の表示】特願平8−293137の分割
【原出願日】平成8年10月16日(1996.10.16)
【出願人】(000002244)蛇の目ミシン工業株式会社 (79)
【Fターム(参考)】