説明

現像ローラ、並びにこれを用いた現像装置、プロセスカートリッジ及び画像形成装置

【課題】一成分現像方式において最適な電気特性をもつ現像ローラ、並びにこれを用いた現像装置、プロセスカートリッジ及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】導電性の芯金表面上に設けられた弾性体からなる基層と、基層上に設けられた表層の少なくとも二層構造からなる現像ローラにおいて、周波数を変えて交流電圧を印加したときの複素インピーダンスプロットが、二つのピークを有し、第一のピーク幅が10Ω以上10Ω以下、第一のピーク高さが10Ω以上10Ω以下であり、第二のピーク幅が10Ω以上10Ω以下、第二のピーク高さが10Ω以上10Ω以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1成分接触現像用の現像ローラ、並びにこれを用いた現像装置、プロセスカートリッジ及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真や静電記録等で採用される乾式現像方式には、トナー及びキャリアからなる二成分系現像剤を用いる方式と、キャリアを含まない一成分系現像剤を用いる方式とがある。前者の二成分現像方式は、比較的安定して良好な画像が得られるが、キャリアの劣化やトナーとキャリアとの混合比の変動等が発生しやすいことから長期間に亘って一定品質の画像が得られにくく、装置の維持管理性やコンパクト化に難点がある。そこで、こうした欠点を有しない後者の一成分系現像剤を用いる方式が注目されるようになっている。この一成分現像方式においては、トナー搬送部材たる現像ローラ上にトナーを保持し、保持されたトナーを規制部材によって押圧することでトナーの帯電・層厚の調整を行う。
【0003】
一成分現像方式に用いる現像ローラとして、特許文献1には、所定の周波数の交流電圧を印加した際の複素数インピーダンスプロットにおいて単一の曲線を描く導電性弾性ゴム部材を用いた現像ローラが提案されている。また、特許文献2には、電気抵抗値が10Ω以下のゴム基材からなる導電性基層と絶縁性表層とが形成され、基層と表層を含む全体での電気抵抗値が10Ω以下となる半導電性ゴム部材を用いた現像ローラが提案されている。特許文献3には、抵抗値が1010Ω・cm以下の半導電性弾性体層と、抵抗値が1010Ω・cm以下のポリウレタン樹脂からなる導電性表層とが形成される現像ローラが提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一成分現像方式においては、現像ローラ上のトナーが規制部材との間の規制部を通過する瞬間に所望の帯電レベルまで帯電が立ち上がり、且つ現像ローラ上のトナーが鏡像力によって確実に現像ローラ上に保持される必要がある。つまり、現像ローラには、電荷の移動をよりスムーズにしながら、一方ではある程度の絶縁性を有して電荷を保持するという電気特性が必要である。トナー帯電レベルや帯電立ち上がり性が低下しトナーの帯電量が不十分となる場合には、トナー供給先となる潜像担持体(感光体)の非画像部にトナーが付着し目的でない画像部を形成してしまう、いわゆる地汚れが発生する。また、鏡像力が低下した場合には現像ローラからのトナー飛散が発生する。しかしながら、従来の現像ローラは、このような一成分現像方式の特有の課題に対し十分対応できていないのが実情である。
【0005】
特許文献1に開示される現像ローラは、複素インピーダンスプロットにおいて単ピークを示すものであり、単層か同じ電気特性を有する複数層の場合である。このような現像ローラでは、帯電レベルと鏡像力によるトナー保持の両立が求められる一成分現像方式の特有の課題に対して十分対応できない。特許文献2に開示される現像ローラは、現像ローラ全体の抵抗が低くて基層の抵抗も低いことから、絶縁性表層は薄膜であることが予想される。しかし、表層の抵抗が1010〜1015Ω・cmと記載されており、表層の抵抗があまりに高いと、帯電レベルは高いものの、帯電立ち上がり性が低下してしまい、上述した一成分現像方式の特有の課題に対して十分対応できない。特許文献3に開示される現像ローラにおいては、半導電性弾性体層と導電性表層との間で電荷のやり取りは早くなると予想される。しかし、導電性表層の方が半導電性弾性体層に比べ抵抗が低い形態であるため、帯電レベル、鏡像力が低下してしまい、上述した一成分現像方式の特有の課題に対して十分対応できない。
【0006】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、一成分現像方式において最適な電気特性をもつ現像ローラ、並びにこれを用いた現像装置、プロセスカートリッジ及び画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、導電性の芯金表面上に設けられた弾性体からなる基層と、基層上に設けられた表層の少なくとも二層構造からなる現像ローラにおいて、周波数を変えて交流電圧を印加したときの複素インピーダンスプロットが、二つのピークを有し、第一のピーク幅が10Ω以上10Ω以下、第一のピーク高さが10Ω以上10Ω以下であり、第二のピーク幅が10Ω以上10Ω以下、第二のピーク高さが10Ω以上10Ω以下であることを特徴とするものである。
請求項2の発明は、請求項1又は2の現像ローラにおいて、上記第一のピーク幅をZsとし、上記第二のピーク幅をZbとしたとき、Zs>Zb且つ5000>Zs/Zb>50を満たすことを特徴とするものである。
請求項3の発明は、請求項1の現像ローラにおいて、上記基層を構成する材料が、ウレタンゴム、クロロピレンゴム、ブタジエンアクリロニトリル、エピクロロヒドリンゴムの少なくとも一種を含み、且つJIS―A硬度が40°以上50°以下であることを特徴とするものである。
請求項4の発明は、静電潜像を保持する静電潜像保持部材に対向配置される現像ローラと、該現像ローラ上に供給されたトナーの層厚を規制する規制部材とを有する現像装置において、上記現像ローラとして、請求項1、2、又は3の現像ローラを用いることを特徴とするものである。
請求項5の発明は、潜像を担持する潜像担持体と、該潜像担持体を均一に帯電する帯電手段、該潜像担持体上の潜像を現像する現像手段、該潜像担持体をクリーニングするクリーニング手段より選ばれる少なくとも1以上の手段とを一体に支持し、画像形成装置本体に対して着脱自在とされるプロセスカートリッジにおいて、該現像手段として、請求項4の現像装置を用いることを特徴とするものである。
請求項6の発明は、像担持体と、該像担持体上に形成された静電潜像を現像する現像手段、該像担持体上に形成されたトナー像を転写体に転写する転写手段とを備えた画像形成装置において、上記現像手段として、請求項4の現像装置を用いることを特徴とするものである。
複素インピーダンスプロットは、インピーダンスの実数成分を横軸に、虚数成分を縦軸にとって、この複素平面上に周波数変化にともなうインピーダンスの軌跡を取ったものである。ピーク幅は周波数成分に依存しない抵抗成分であり、ピーク高さは周波数成分に依存する容量成分を示している。本発明の現像ローラはこの複素インピーダンスプロットにおいて2つのピークを有し、第一のピーク幅とピーク高さが10〜10Ω、10〜10Ωであり、第二のピーク幅とピーク高さが10〜10Ω、10〜10Ωである。本発明の現像ローラは、抵抗成分が1桁以上異なる電気的な二層構造で、第一のピークに対応する半絶縁性の表層と、第二のピークに対応する半導電性の基層とを有し、且つ各層において抵抗成分に相応した高容量成分を得ていることになる。容量成分が大きいということは、帯電性能が高いということである。従来の一般的な現像ローラは、抵抗成分に対して容量成分が低いものと考えられる。
複素インピーダンスプロットにおいて、第一のピーク幅(抵抗成分)が10Ωを下回るとトナー帯電立ち上がり性は向上するがトナー帯電レベルが低下して地汚れが発生し、10Ωを超えると帯電立ち上がり性が低下してしまいやはり地汚れが発生してしまう。第1のピーク高さ(容量成分)が10Ωを下回ると帯電性能が低下しトナー帯電レベルが低下して地汚れが発生する。第一のピーク高さ(容量成分)は、cole−cole円弧則上、10Ωが上限値である。第二のピーク幅(抵抗成分)が10Ωを下回ると、導電性に近づくが材料の加工性を損ねると共に硬度が上昇してしまい製造上安定してつくることができない。第二のピーク幅(抵抗成分)が10Ωを超えると、鏡像力の発生スピードが遅くなりトナー飛散が増加してしまう。第2のピーク高さ(容量成分)が10Ωを下回ると、やはり製造上安定してつくることができない。第二のピーク高さ(容量成分)は、cole−cole円弧則上、10Ωが上限値である。以上の理由により、複素インピーダンスにおける2つのピークのピーク幅(抵抗成分)とピーク高さ(容量成分)を上記範囲に規定する。これにより、現像ローラ上のトナーを規制部を通過する瞬間に所望の帯電レベルまで帯電を立ち上げ、且つ現像ローラ上のトナーを鏡像力によって確実に現像ローラ上に保持することが可能となる。さらに、このように効率よくトナーを帯電することができるため、規制部材による規制圧力を低下させることができる。その結果、現像ローラへのストレスも低減され、現像ローラの長寿命化も図ることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、一成分現像方式において最適な電気特性をもつ現像ローラ、並びにこれを用いた現像装置、プロセスカートリッジ及び画像形成装置を提供することができるという優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態に係る現像装置の構成を示す構成図。
【図2】複素インピーダンスプロットの一例を示す特性図。
【図3】等価回路モデルを説明する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について説明する。図1は本実施形態に係る画像形成装置の要部構成を示す断面図である。この画像形成装置は、図1に示すように、像担持体たるドラム状の感光体1、感光体1上に形成された静電潜像を現像する現像装置2等を備えている。感光体1は、図中時計回り方向に回転駆動され、帯電ローラ3により一様に帯電せしめられる。そして、一様に帯電せしめられた感光体1は、図示しない光書込ユニットからの光ビームによって露光走査されて、画像情報に応じた静電潜像を担持する。この静電潜像は、現像装置2によってトナー像に現像される。そして、感光体1上に現像されたトナー像は、中間転写ベルト4上に転写され、図示しない転写部で記録媒体たる転写紙に転写される。転写後に感光体に付着している転写残トナーは、ドラムクリーニング装置5によって除去される。
【0011】
上記現像装置2は、トナーを収容するトナー収容室11と、トナー収容室11の下方に設けられたトナー供給室12から構成され、トナー供給室12の下部には、現像ローラ13と、現像ローラ13上のトナーを介して現像ローラ13に当接して設けられた規制部材14及び供給ローラ15が設けられる。現像ローラ13は感光体2に接触して配置され、図示しない高圧電源から所定の現像バイアスが印加される。トナー収容室11内にはトナー攪拌部材16が設けられ、反時計回りの方向で回転する。トナー攪拌部材16は軸方向において、その先端部が開口部17近傍を通過しない部分では、回転駆動によるトナー搬送面の面積を大きくしてあり、収容されたトナーを充分に流動させ攪拌する。また、その先端部が開口部17近傍を通過する部分では、回転駆動によるトナー搬送面の面積を小さくした形状をしてあり、過剰な量のトナーを開口部17へ導くことを防止している。開口部17近傍のトナーは、トナー攪拌部材16によって適度にほぐされ、自重によって開口部17を通過しトナー供給室12へと落下移動する。供給ローラ15の表面には空孔(セル)を有した構造の発泡材料が被覆されており、トナー供給室12内に運ばれてきたトナーを効率よく付着させて取り込むと共に、現像ローラ13との当接部での圧力集中によるトナー劣化を防止している。供給ローラ15には、現像バイアスに対してトナーの帯電極性と同方向にオフセットさせた値の供給バイアスが印加される。この供給バイアスは、現像ローラ13との当接部で予備帯電されたトナーを現像ローラ13に押し付ける方向に作用する。ただし、オフセットの方向はこれに限ったものではなく、トナーの種類によってはオフセットを0もしくはオフセットの方向を変えてもよい。供給ローラ15は反時計回りの方向に回転し、表面に付着させたトナーを現像ローラ13の表面に塗布供給する。
【0012】
現像ローラ13は反時計回りの方向に回転し、表面に保持したトナーを規制部材14及び感光体1との対向位置へと搬送する。規制部材14は、SUSやリン青銅等の金属板バネ材料を用い、自由端側を現像ローラ13表面に20〜50N/mの押圧力で当接させたもので、その押圧力下を通過したトナーを薄層化すると共に摩擦帯電によって電荷を付与する。さらに規制部材14には、摩擦帯電を補助する為に、現像バイアスに対してトナーの帯電極性と同方向にオフセットさせた値の規制バイアスが印加される。感光体1は時計回りの方向に回転しており、従って現像ローラ13表面は感光体1との対向位置において感光体1の進行方向と同方向に移動する。薄層化されたトナーは、現像ローラ13の回転によって感光体1との対向位置へ搬送され、現像ローラ13に印加された現像バイアスと感光体1上の静電潜像によって形成される潜像電界に応じて、感光体1表面に移動し現像される。感光体1上に現像されずに現像ローラ13上に残されたトナーが再びトナー供給室12内へと戻る部分には、封止シール18が現像ローラ13に当接して設けられ、トナーは現像装置2外部に漏れでないように封止される。
【0013】
次に、本発明の特徴部となる現像ローラについて説明する。上記現像ローラ13は、金属の芯軸上にゴムやエラストマーの弾性体材料からなる基層が形成され、さらにその周囲にトナーと逆の極性に帯電しやすい材料からなる表面層が形成される。現像ローラの表面粗さはRaで0.3〜2.0μmに設定され、必要量のトナーが表面に保持される。
【0014】
ここで、現像ローラ13上のトナーには、現像ローラ13と規制部材14との間の規制部を通過する瞬間にトナーが所望のレベルまで帯電が立ち上がり、かつ現像ローラ13とトナー間の鏡像力によって確実にトナーを保持する電気特性が求められる。つまり、電荷の移動をよりスムーズにしながら、一方ではある程度の絶縁性により電荷を保つことが求められる。これらを達成するためには現像ローラ13として求められる電気特性は、複素インピーダンスのピーク形状で表現することができる。
【0015】
複素インピーダンスは周波数を変えながら交流を加えたときの現像ローラ13の応答を調べており、印加した交流電圧に対して位相のずれが無い応答と、π/2の位相のずれが有る応答とに分けられて測定される。この位相ずれのない応答をインピーダンスで表したものをZ’、ずれの有る応答をインピーダンスで現したものをZ’’と定義してX軸にZ’、Y軸にZ’’としてXYグラフにあらわしたものが複素インピーダンスプロットとなる。複素インピーダンスプロットは均質な絶縁体の場合、複素インピーダンスプロットで絶縁体抵抗Rを直径に持つ半円を描くことがcole−cole円弧則で明らかにされている。例えば、多層構造を有していても、表層と基層が電気特性的に同一とされる現像ローラにおいては、図2中点線で示すように、複素インピーダンスプロットは現像ローラの直流抵抗成分を直径とした一つの半円状のピークを描く。表層と基層が電気的に大きく異なる現像ローラにおいては、図2中実線で示すように、複素インピーダンスプロットは、2ピークを描く。一般的に抵抗が1桁以上異なると2ピークを有するプロットとなる。複素インピーダンスプロットは、ピークの幅と高さに分けて見ることができ、ピーク幅は実部、つまり周波数に依存しない成分である抵抗成分を示し、ピーク高さは虚部、つまり周波数に依存する成分である容量成分を示している。これまでは破壊試験を行ってもうまく測定することができなかった現像ローラの各層の電気特性を非破壊で定量可能な複素インピーダンス測定法を用いることで他社製品も含めて測定・比較ができるようになった。
【0016】
本実施形態に係る現像ローラ13は、周波数を変えながら交流電圧を印加したときの複素インピーダンスプロットが、二つのピークを有することを特徴とする。そして、第一のピーク幅とピーク高さが10〜10Ω、10〜10Ωであり、第二のピーク幅とピーク高さが10〜10Ω、10〜10Ωであることを特徴とする。つまり、上記現像ローラ13は、抵抗が1桁以上異なる2層構造で、半導電性の基層表面に半絶縁性の表層を設け、且つ各層において抵抗成分に相応した高容量成分を得ていることになる。従来の一般的な現像ローラは、容量成分を考慮して製造していないため、抵抗成分に対して容量成分が低いものであった。
【0017】
現像ローラ13として、この複素インピーダンスプロットのピークの幅と高さを考えると、ピーク幅が狭い、つまり直流抵抗成分が低いと鏡像力発生スピードが速くなり、ピーク幅が広いと鏡像力の発生が遅くなる。鏡像力の発生が遅いと、トナーの保持能力が低下し現像ローラからのトナー飛散が発生しやすくなる。また、ピーク高さが高い、つまり容量成分が大きいと帯電性能が高いということであり、ピーク高さが低いと帯電性能が低く感光体地汚れが発生しやすくなるということになる。
【0018】
具体的には、半絶縁性の表層の電気特性に相当する第一のピーク幅(抵抗成分)が10Ωを下回るとトナー帯電立ち上がり性は向上するがトナー帯電レベルが低下して地汚れが発生し、10Ωを超えると帯電立ち上がり性が低下してしまいやはり地汚れが発生してしまう。第1のピーク高さ(容量成分)が10Ωを下回ると荷電性能が低下しトナー帯電レベルが低下して地汚れが発生する。第一のピーク高さ(容量成分)は、cole−cole円弧則上、10Ωが上限値である。半導電性の基層の電気特性に相当する第二のピーク幅(抵抗成分)が10を下回ると、導電性に近づくが材料の加工性を損ねると共に硬度が上昇してしまい製造上安定してつくることができず、10Ωを超えると、鏡像力の発生スピードが遅くなりトナー飛散が増加してしまう。第2のピーク高さ(容量成分)が10Ωを下回ると、やはり製造上安定してつくることができない。第二のピーク高さ(容量成分)は、cole−cole円弧則上、10Ωが上限値である。以上の理由により、複素インピーダンスにおける2つのピークのピーク幅とピーク高さを上記範囲に規定する。
【0019】
また、上記現像ローラ13の複素インピーダンスプロットにおいては、第1のピーク幅をZs、第2のピーク幅をZbとする時、Zs>Zb、且つ5000>Zs/Zb>50であることを特徴とする。Zs<Zb、すなわち、表層抵抗<基層抵抗となると、鏡像力の低下によるトナー飛散、帯電レベルの低下による感光体地汚れ発生する。Zs/Zbが5000を上回るのは導電性ゴム基材を安定して作る点から難しく、50を下回るのは基層の導電性が担保されないため、鏡像力低下によりトナー保持性能が低下しトナー飛散が発生する。
【0020】
このように、複素インピーダンスプロットが上記条件を満たす電気特性をもつ現像ローラ13は、現像ローラ13上のトナーが規制部材14との間の規制部を通過する瞬間に所望の帯電レベルまで帯電が立ち上がり、且つ現像ローラ上のトナーが鏡像力によって確実に現像ローラ上に保持されることになる。さらに、このように効率のよくトナーを帯電することができるため、規制部材14による規制圧力を低下させることができる。その結果、現像ローラ13へのストレスも低減され、現像ローラ13の長寿命化も図ることができる。
【0021】
次に、現像ローラ13に用いる具体的な材料について説明する。上記現像ローラ13の芯軸に用いる金属としては、例えば、アルミ、SUS(ステンレス)、鉄等を用いることができる。SUSの場合、303、304、416等のステンレス、アルミの場合、A6063、A5056、A3003等の材質のアルミニウム等を用いることが出来る。
【0022】
上記現像ローラ13の基層に用いる弾性体材料としては、ウレタンゴム、クロロプレンゴム、ブタジエンアクリロニトリル、エピクロロヒドリンゴム、エチレンプロピレンゴム、天然ゴム、ブチルゴム、ニトリルゴム、ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、シリコーンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム等から選択される1種、及び、これらの2種以上の混合物を用いることができる。特にウレタンゴム、クロロプレンゴム、ブタジエンアクリロニトリル、エピクロロヒドリンゴムの少なくとも1種を含むことが好ましく、且つJISA―硬度で40°〜50°の硬度をもつ材料が好ましい。ウレタンゴム、クロロプレンゴム、ブタジエンアクリロニトリル、エピクロロヒドリンゴムは、ゴムとしての弾性安定性、耐薬品性、耐熱性、接触現像用現像ローラとして必要な低弾性領域における弾性確保、表面形状等の加工性等の点から好ましい。
【0023】
さらに、これら弾性体材料には、架橋してゴム状物質とするために、架橋剤、加硫剤を添加することができる。この場合、有機過酸化物架橋及び、硫黄架橋のいずれの場合でも、加硫助剤、加硫促進剤、加硫遅延剤等を用いることもできる。更にまた、上記以外にもゴム配合剤として一般に用いられている発泡剤、可塑剤、軟化剤、粘着付与剤、粘着防止剤、分離剤、離型剤、増量剤、着色剤等を、特性を損なわない範囲で添加することができる。
【0024】
また、上記現像ローラ13の表面層は、弾性層の周囲に、例えばディップ法、スプレーコート、ロールコート等の種々のコーティングを行うことで得られる。表面層としてはアクリル微粒子、ニグロシン系帯電制御材等の荷電制御粒子をイソシアネート、エポキシ、アルキルシロキサン等の架橋性高分子とアルコール、アミン、シラノール等の架橋材からなる架橋型高分子中に分散させることで得られる。
【0025】
ここで、現像ローラ13の基層及び表層の複素インピーダンスの調整について説明する。複素インピーダンスの抵抗成分は、カーボンブラック等の導電材の添加量、分散状態等で調整が可能である。導電材としては、粉体として、カーボンブラック、アセチレンブラック等の導電性カーボン、SAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、SRF、FT、MT等のゴム用カーボン、酸化処理等を施したカラー用カーボン、熱分解カーボン、インジウムドープ酸化スズ(ITO)、酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛、銅、銀、ゲルマニウム等の金属及び、金属酸化物、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン等の導電性ポリマー等を挙げることができる。また導電性付与剤として、イオン導電性物質もあり、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸リチウム、過塩素酸カルシウム、塩化リチウム等の無機イオン性導電物質、更に、変性脂肪酸ジメチルアンモニウムエトサルファート、ステアリン酸アンモニウムアセテート、ラウリルアンモニウムアセテート、オクタデシルトリメチルアンモニウム過塩素酸塩等の有機イオン性導電性物質がある。
【0026】
特に、以下のような方法で導電材の分散性向上を図ることでより均質で比較的高い抵抗状態を得ることができる。メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン等を現像ローラ13表面にスプレーまたは浸漬させ、ゴムを膨潤させることでカーボンブラックのストラクチャー等の導電材分散径をより小さくして微分散化させる。他には混練機で低温、高処理量等による高せん断シェア、ホモジナイザー等の分散機で高粘度、高回転等による高せん断シェアをかけても導電材の分散性を向上させることが可能である。
【0027】
複素インピーダンスの容量成分は、薄層化、チタン酸バリウム、フォルステライト、チタン酸ストロンチウム等の強誘電体等の添加、さらに導電材の微分散化等で高くすることが可能である。特に、膨潤による導電材分散性向上の際、塩化ナトリウム、塩化カリウム、酢酸ナトリウム等のアルカリ金属塩を微量含有させたものを用いるとゴム内部にアルカリ金属が少量含有されることでさらに電気的に均質なゴム材となりその結果抵抗に相応した高容量成分とすることが可能である。
【0028】
次に、本実施形態に係る現像装置2において用いられるトナーについて説明する。トナーは、トナー母体に外添剤としての無機微粒子を外添した構成からなる。トナー母体は、通常、樹脂(結着樹脂)、着色剤、帯電制御剤、離型剤(ワックス)、及びその他の添加剤を含有してなる。このトナーの母粒子を形成する方法は、公知の方法の中から適宜選択することができる。具体的には、懸濁重合法、乳化重合凝集法、溶解懸濁法等を用いてトナーの母粒子を形成する方法、接着性基材を生成しながら、トナーの母粒子を形成する方法、粉砕法等が挙げられる。本実施形態に係るトナーの製造方法としてはこれに制限されるものではないが、以下の製造方法により好適に製造される。有機溶媒中に少なくとも芳香族基含有ポリエステル骨格を有する結着樹脂、着色剤及び離型剤を溶解又は分散させた後、該溶解物又は分散物を水系媒体中に分散させ造粒する工程を少なくとも含むことからなる。より具体的には、以下の通りである。
【0029】
<造粒工程>
(有機溶媒)
芳香族基含有ポリエステル骨格を有する結着樹脂、着色剤及び離型剤を溶解又は分散させる有機溶媒としては、「POLYMER HANDBOOK」4th Edition,WILEY−INTERSCIENCEのVolume2,Section VII記載のHansen溶解度パラメーターが19.5以下となるものが好ましく沸点が100℃未満の揮発性であることが、後の溶剤除去が容易になる点から好ましい。このような有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等を単独あるいは2種以上組合せて用いることができる。特に、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル系、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒及び塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素が好ましい。ポリエステル樹脂、着色剤及び離型剤は同時に溶解又は分散させても良いが、通常それぞれ単独で溶解又は分散され、その際使用する有機溶媒はそれぞれ異なっていても同じでも良いが、後の溶媒処理を考慮すると同じ方が好ましい。
【0030】
(芳香族基含有ポリエステル骨格を有する結着樹脂の溶解又は分散)
芳香族基含有ポリエステル骨格を有する結着樹脂の溶解又は分散液は、樹脂濃度が40%〜80%程度であることが好ましい。濃度が高すぎると溶解又は分散が困難になり、また粘度が高くなって扱いづらい。また、濃度が低すぎるとトナーの製造量が少なくなる。芳香族基含有ポリエステル骨格を有する結着樹脂に前記末端にイソシアネート基を有する変性ポリエステル樹脂を混合する場合は、同じ溶解又は分散液に混合しても良いし、別々に溶解又は分散液を作製しても良いが、それぞれの溶解度と粘度を考慮すると、別々の溶解又は分散液を作製する方が好ましい。
【0031】
(着色剤の溶解又は分散)
着色剤は単独で溶解又は分散しても良いし、前記ポリエステル樹脂の溶解又は分散液に混合しても良い。また必要に応じて、分散助剤やポリエステル樹脂を添加しても良いし、前記マスターバッチを用いても良い。
【0032】
(離型剤の溶解又は分散)
離型剤としてワックスを溶解又は分散する場合、ワックスが溶解しない有機溶媒を使用する場合は分散液として使用することになるが、分散液は一般的な方法で作製される。即ち、有機溶媒とワックスを混合し、ビーズミルの如き分散機で分散すれば良い。また、有機溶媒とワックスを混合した後、一度ワックスの融点まで加熱し、攪拌しながら冷却した後、ビーズミルの如き分散機で分散した方が、分散時間が短くて済むこともある。また、ワックスは複数種を混合して使用しても良いし、分散助剤やポリエステル樹脂を添加しても良い。
【0033】
(水系媒体)
用いる水系媒体としては、水単独でもよいが、水と混和可能な溶剤を併用することもできる。更には、上記油相で使用したHansen溶解度パラメーターが19.5以下の有機溶媒を混合してもよく、好ましくは水に対する飽和量付近の添加量が油相の乳化または分散安定性を高めることができる。混和可能な溶剤としては、アルコール(メタノール、イソプロパノール、エチレングリコール等)、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セルソルブ類(メチルセルソルブ等)、低級ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)等が挙げられる。トナー組成物100質量部に対する水系媒体の使用量は、通常50〜2000質量部、好ましくは100〜1000質量部である。50質量部未満ではトナー組成物の分散状態が悪く、所定の粒径のトナー粒子が得られない。また、2000質量部を超えると経済的でない。
【0034】
(無機分散剤及び有機樹脂微粒子)
上記水系媒体中に、前記トナー組成物の溶解物または分散物を分散させる際、無機分散剤または有機樹脂微粒子をあらかじめ水系媒体中に分散させておくことにより、粒度分布がシャープになるとともに分散が安定である点で好ましい。無機分散剤としては、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、コロイダルシリカ、ハイドロキシアパタイト等が用いられる。有機樹脂微粒子を形成する樹脂としては、水性分散体を形成しうる樹脂であれば、いかなる樹脂であっても使用でき、熱可塑性樹脂であっても熱硬化性樹脂であっても良いが、例えはビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ケイ素系樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、2種以上を併用しても差し支えない。このうち好ましいのは、微細球状樹脂粒子の水性分散体が得られやすいという観点からビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂及びそれらの併用である。
【0035】
(有機樹脂微粒子の水系への分散方法)
樹脂を有機樹脂微粒子の水性分散液にする方法は、特に限定されないが、以下の(a)〜(h)が挙げられる。
(a)ビニル系樹脂の場合において、モノマーを出発原料として、懸濁重合法、乳化重合法、シード重合法または分散重合法等の重合反応により、直接、樹脂微粒子の水性分散液を製造する方法。
(b)ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の重付加あるいは縮合系樹脂の場合において、前駆体(モノマー、オリゴマー等)またはその溶剤溶液を適当な分散剤存在下で水性媒体中に分散させ、その後に加熱したり、硬化剤を加えたりして硬化させて樹脂微粒子の水性分散体を製造する方法。
(c)ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の重付加あるいは縮合系樹脂の場合において、前駆体(モノマー、オリゴマー等)またはその溶剤溶液(液体であることが好ましい。加熱により液状化しても良い。)中に適当な乳化剤を溶解させた後、水を加えて転相乳化する方法。
(d)あらかじめ高分子化反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等いずれの重合反応様式であっても良い。)により作製した樹脂を機械回転式またはジェット式等の微粉砕機を用いて粉砕し、次いで、分級することによって樹脂微粒子を得た後、適当な分散剤存在下で水中に分散させる方法。
(e)あらかじめ高分子化反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等いずれの重合反応様式であっても良い。)により作製した樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液を、霧状に噴霧することにより樹脂微粒子を得た後、適当な分散剤存在下で水中に分散させる方法。
(f)あらかじめ高分子化反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等いずれの重合反応様式であっても良い。)により作製した樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液に溶剤を添加するか、またはあらかじめ溶剤に加熱溶解した樹脂溶液を冷却することにより樹脂微粒子を析出させ、次いで、溶剤を除去して樹脂微粒子を得た後、適当な分散剤存在下で水中に分散させる方法。
(g)あらかじめ高分子化反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等いずれの重合反応様式であっても良い。)により作製した樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液を、適当な分散剤存在下で水性媒体中に分散させ、これを加熱または減圧等によって溶剤を除去する方法。
(h)あらかじめ高分子化反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等いずれの重合反応様式であっても良い。)により作製した樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液中に適当な乳化剤を溶解させた後、水を加えて転相乳化する方法。
【0036】
(界面活性剤)
また、トナー組成物が含まれる油性相を水系媒体中に乳化、分散させるために、必要に応じて、界面活性剤等を用いることもできる。界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステル等の陰イオン界面活性剤、アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリン等のアミン塩型や、アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウム等の四級アンモニウム塩型の陽イオン界面活性剤、脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体等の非イオン界面活性剤、例えばアラニン、ドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ジ(オクチルアミノエチル)グリシンやN−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウムべタイン等の両性界面活性剤が挙げられる。
【0037】
また、フルオロアルキル基を有する界面活性剤を用いることにより、非常に少量でその効果をあげることができる。好ましく用いられるフルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤としては、炭素数2〜10のフルオロアルキルカルボン酸、及び、その金属塩、パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3−[ω−フルオロアルキル(C6〜C11)オキシ]−1−アルキル(C3〜C4)スルホン酸ナトリウム、3−[ω−フルオロアルカノイル(C6〜C8)−N−エチルアミノ]−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、フルオロアルキル(C11〜C20)カルボン酸及び金属塩、パーフルオロアルキルカルボン酸(C7〜C13)及びその金属塩、パーフルオロアルキル(C4〜C12)スルホン酸及びその金属塩、パーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミド、N−プロピル−N−(2−ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミド、パーフルオロアルキル(C6〜C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル(C6〜C10)−N−エチルスルホニルグリシン塩、モノパーフルオロアルキル(C6〜C16)エチルリン酸エステル等が挙げられる。また、カチオン性界面活性剤としては、フルオロアルキル基を有する脂肪族1級、2級もしくは2級アミン酸、パーフルオロアルキル(C6−C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩等の脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩等が挙げられる。
【0038】
(保護コロイド)
また、高分子系保護コロイドにより分散液滴を安定化させても良い。例えばアクリル酸、メタクリル酸、α−シアノアクリル酸、α−シアノメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸または無水マレイン酸等の酸類、あるいは水酸基を含有する(メタ)アクリル系単量体、例えばアクリル酸β−ヒドロキシエチル、メタクリル酸β−ヒドロキシエチル、アクリル酸β−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸β−ヒドロキシプロピル、アクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、ジエチレングリコールモノアクリル酸エステル、ジエチレングリコールモノメタクリル酸エステル、グリセリンモノアクリル酸エステル、グリセリンモノメタクリル酸エステル、N−メチロ−ルアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド等、ビニルアルコールまたはビニルアルコールとのエ一テル類、例えばビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテル等、またはビニルアルコールとカルボキシル基を含有する化合物のエステル類、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドあるいはこれらのメチロール化合物、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライド等の酸クロライド類、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、エチレンイミン等の窒素原子、またはその複素環を有するもの等のホモポリマーまたは共重合体、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシプロピレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシプロピレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンノニルフエニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルフェニルエステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエステル等のポリオキシエチレン系、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース類等が使用できる。なお、分散安定剤としてリン酸カルシウム塩等の酸、アルカリに溶解可能な物を用いた場合は、塩酸等の酸により、リン酸カルシウム塩を溶解した後、水洗する等の方法によって、微粒子からリン酸カルシウム塩を除去する。その他酵素による分解等の操作によっても除去できる。分散剤を使用した場合には、該分散剤がトナー粒子表面に残存したままとすることもできるが、洗浄除去するほうがトナーの帯電面から好ましい。
【0039】
(分散の方法)
分散の方法としては特に限定されるものではないが、低速せん断式、高速せん断式、摩擦式、高圧ジェット式、超音波等の公知の設備が適用できる。分散体の粒径を2〜20μmにするために高速せん断式が好ましい。高速せん断式分散機を使用した場合、回転数は特に限定はないが、通常1000〜30000rpm、好ましくは5000〜20000rpmである。分散時の温度としては、通常、0〜150℃(加圧下)、好ましくは20〜80℃である。
【0040】
(脱溶)
得られた乳化分散体から有機溶剤を除去するために、公知の方法を使用することができる。例えば、常圧または減圧下で系全体を徐々に昇温し、液滴中の有機溶剤を完全に蒸発除去する方法を採用することができる。
【0041】
<伸長又は/及び架橋反応>
ウレタン又は/及びウレア基を有する変性されたポリエステル樹脂を導入する目的で、末端にイソシアネート基を有する変性ポリエステル樹脂及びこれと反応可能なアミン類を添加する場合は、水系媒体中にトナー組成物を分散する前に油相中でアミン類を混合しても良いし、水系媒体中にアミン類を加えても良い。上記反応に要する時間は、ポリエステルプレポリマーの有するイソシアネート基構造と、加えたアミン類との反応性により選択されるが、通常1分〜40時間、好ましくは1〜24時間である。反応温度は、通常、0〜150℃、好ましくは20〜98℃である。この反応は、前記微粒子付着工程の前に行っても良いし、微粒子付着工程中に同時進行させても良い。また、微粒子付着工程が終了してからでも良い。また、必要に応じて公知の触媒を使用することができる。
【0042】
(微粒子付着)
トナー特性をさらに向上させるためにトナー母体表面に樹脂微粒子を付着させて表面改質を行うことも出来る。表面改質材はポリエステル、スチレンアクリル等の公知の材料でよいが、帯電性向上の点からスチレンアクリルが望ましい。また、製造方法についても特に制限されるものではないが機械式打ち込み、熱式固着等の乾式法、熱式延展を行う湿式法等がある。
【0043】
<洗浄、乾燥工程>
水系媒体に分散されたトナー粒子を洗浄、乾燥する工程は、公知の技術が用いられる。即ち、遠心分離機、フィルタープレス等で固液分離した後、得られたトナーケーキを常温〜約40℃程度のイオン交換水に再分散させ、必要に応じて酸やアルカリでpH調整した後、再度固液分離するという工程を数回繰り返すことにより不純物や界面活性剤等を除去した後、気流乾燥機や循環乾燥機、減圧乾燥機、振動流動乾燥機等により乾燥することによってトナー粉末を得る。この際、遠心分離等でトナーの微粒子成分を取り除いても良いし、また、乾燥後に必要に応じて公知の分級機を用いて所望の粒径分布にすることができる。
【0044】
<外添処理>
得られた乾燥後のトナー粉体と前記帯電制御性微粒子、流動化剤微粒子等の異種粒子とともに混合したり、混合粉体に機械的衝撃力を与えたりすることによって表面で固定化、融合化させ、得られる複合体粒子の表面からの異種粒子の脱離を防止することができる。具体的手段としては、高速で回転する羽根によって混合物に衝撃力を加える方法、高速気流中に混合物を投入し、加速させ、粒子同士または複合化した粒子を適当な衝突板に衝突させる方法等がある。装置としては、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)、スーパーミキサー(カワタ社製)、オングミル(ホソカワミクロン社製)、ハイブリダイゼイションシステム(奈良機械製作所社製)、クリプトロンシステム(アーステクニカ社製)、自動乳鉢等があげられる。
【0045】
<トナーの材料>
油相用原料
(1)ポリエステル系樹脂
本実施形態に係るトナーで使用される結着樹脂には、ポリエステル骨格を有する樹脂、ビニル重合性基を含まないポリエステル系樹脂を用いることが好ましい。ポリエステル系樹脂としては、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマーとアミン類から得られるウレア結合及び/又はウレタン結合を有する所謂変性ポリエステル樹脂(以下、変性ポリエステル樹脂(A)という。)、及びウレア結合又はウレタン結合を有しないという意味での未変性ポリエステル樹脂(以下、未変性ポリエステル樹脂(C)という。)等公知のポリエステル系樹脂を用いることができ、単独または二種以上の樹脂を組み合わせてもよい。
【0046】
(2)変性ポリエステル樹脂
本実施形態に係るトナー用の結着樹脂の製造において、変性ポリエステル樹脂(A)の前駆体としてイソシアネート基を有するポリエステルプレポリマーを用いることが出来る。好ましくは、末端にイソシアネート基を有するポリエステルプレポリマーを用いることが出来る。また、複数個、特に3個以上のイソシアネート基を有するポリエステルプレポリマーを用いることが出来る。イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)としては、以下に例示するようなポリオール(1)とポリカルボン酸(2)の重縮合物で、且つ活性水素基を有するポリエステルをさらにポリイソシアネート(3)と反応させたポリエステル樹脂等が挙げられる。上記ポリエステルの有する活性水素基としては、水酸基(アルコール性水酸基及びフェノール性水酸基)、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基等が挙げられ、これらのうちアルコール性水酸基が特に好ましい活性水素基である。
【0047】
a)ポリオール
具体的なポリオール(1)としては、アルキレングリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等);アルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等);脂環式ジオール(1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA等);ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、3,3′−ジフルオロ−4,4′−ジヒドロキシビフェニル、等の4,4′−ジヒドロキシビフェニル類;ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1−フェニル−1,1−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジフルオロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン(別名:テトラフルオロビスフェノールA)、2,2−ビス(3−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン等のビス(ヒドロキシフェニル)アルカン類;ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)エーテル等のビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル類等);上記脂環式ジオールのアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等)付加物;上記ビスフェノール類のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等)付加物等が挙げられる。これらのうち好ましいポリオールとしては、炭素数2〜12のアルキレングリコール及びビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物であり、特に好ましいものはビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、及びこれと炭素数2〜12のアルキレングリコールとの併用である。更に、3〜8価またはそれ以上の多価脂肪族アルコール(グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等);3価以上のフェノール類(トリスフェノールPA、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等);上記3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。尚、上記ポリオールは1種類単独または2種以上の併用が可能で、上記に限定されるものでもない。
【0048】
b)ポリカルボン酸
具体的なポリカルボン酸(2)の例としては、アルキレンジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、セバシン酸等);アルケニレンジカルボン酸(マレイン酸、フマール酸等);芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、3−フルオロイソフタル酸、2−フルオロイソフタル酸、2−フルオロテレフタル酸、2,4,5,6−テトラフルオロイソフタル酸、2,3,5,6−テトラフルオロテレフタル酸、5−トリフルオロメチルイソフタル酸、2,2−ビス(4−カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ビフェニルジカルボン酸、3,3’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ビフェニルジカルボン酸、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−3,3’−ビフェニルジカルボン酸、ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸無水物等)等が挙げられる。これらのうち好ましいポリカルボン酸(2)としては、炭素数4〜20のアルケニレンジカルボン酸及び炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸である。さらに3価以上のポリカルボン酸としては、炭素数9〜20の芳香族ポリカルボン酸(トリメリット酸、ピロメリット酸等)、また上述のものの酸無水物または低級アルキルエステル(メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステル等)を用いてポリオール(1)と反応させてもよい。尚、上記ポリカルボン酸は1種類単独または2種以上の併用が可能で、上記に限定されるものではない。
【0049】
c)ポリオールとポリカルボン酸の比
ポリオール(1)とポリカルボン酸(2)の比率は、水酸基[OH]とカルボキシル基[COOH]の当量比[OH]/[COOH]として、通常2/1〜1/1、好ましくは1.5/1〜1/1、さらに好ましくは1.3/1〜1.02/1とすればよい。
【0050】
d)ポリイソシアネート
具体的なポリイソシアネート(3)としては、脂肪族ポリイソシアネート(テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート等);脂環式ポリイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネート等);芳香族ジイソシアネート(トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等);芳香脂肪族ジイソシアネート(α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等);イソシアヌレート類;前記ポリイソシアネートをフェノール誘導体、オキシム、カプロラクタム等でブロックしたもの;及びこれら2種以上の併用が挙げられる。
【0051】
e)イソシアネート基と水酸基の比
ポリイソシアネート(3)は、イソシアネート基[NCO]と、水酸基を有するポリエステルの水酸基[OH]の当量比[NCO]/[OH]として、通常5/1〜1/1、好ましくは4/1〜1.2/1、さらに好ましくは2.5/1〜1.5/1とすればよい。[NCO]/[OH]が5を超えると低温定着性が悪化する。[NCO]/[OH]が1未満では、変性ポリエステル中のウレア含量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。末端にイソシアネート基を有するプレポリマー(A)中のポリイソシアネート(3)構成成分の含有量は、通常0.5〜40質量%、好ましくは1〜30質量%、さらに好ましくは2〜20質量%である。0.5質量%未満では、耐ホットオフセット性が悪化するとともに、耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になる。また、40質量%を超えると低温定着性が悪化する。
【0052】
f)プレポリマー中のイソシアネート基の数
イソシアネート基を有するプレポリマー(A)中の1分子当たりに含有するイソシアネート基は、平均値で、1個以上、好ましくは、1.5〜3個、さらに好ましくは、1.8〜2.5個である。1分子当たり1個未満では、架橋及び/又は伸長後の変性ポリエステルの分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。
【0053】
g)架橋剤及び伸長剤
プレポリマーの架橋反応及び/又は伸長反応において、架橋剤及び/又は伸長剤として、アミン類を用いることができる。アミン類(B)としては、ジアミン(B1)、3価以上のポリアミン(B2)、アミノアルコール(B3)、アミノメルカプタン(B4)、アミノ酸(B5)、及び上記ジアミン(B1)乃至アミノ酸(B5)のアミノ基をブロックしたもの(B6)等が挙げられる。
ジアミン(B1)としては、芳香族ジアミン(フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’ジアミノジフェニルメタン、テトラフルオロ−p−キシリレンジアミン、テトラフルオロ−p−フェニレンジアミン等);脂環式ジアミン(4,4’−ジアミノ−3,3’ジメチルジシクロヘキシルメタン、ジアミンシクロヘキサン、イソホロンジアミン等);及び脂肪族ジアミン(エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ドデカフルオロヘキシレンジアミン、テトラコサフルオロドデシレンジアミン等)等が挙げられる。3価以上のポリアミン(B2)としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等が挙げられる。アミノアルコール(B3)としては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ヒドロキシエチルアニリン等が挙げられる。アミノメルカプタン(B4)としては、アミノエチルメルカプタン、アミノプロピルメルカプタン等が挙げられる。アミノ酸(B5)としては、アミノプロピオン酸、アミノカプロン酸等が挙げられる。前記ジアミン(B1)乃至アミノ酸(B5)のアミノ基をブロックしたもの(B6)としては、前記ジアミン(B1)乃至アミノ酸(B5)のアミン類とケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)から得られるケチミン化合物、オキサゾリン化合物等が挙げられる。これらアミン類(B)のうち特に好ましいものは、ジアミン(B1)及びジアミン(B1)と少量の3価以上のポリアミン(B2)の混合物である。
【0054】
h)停止剤
さらに、必要に応じて架橋及び/又伸長は停止剤を用いて反応終了後の変性ポリエステルの分子量を調整することができる。停止剤としては、モノアミン(ジエチルアミン、ジブチルアミン、ブチルアミン、ラウリルアミン等)、及びそれらをブロックしたもの(ケチミン化合物)等が挙げられる。
【0055】
i)アミノ基とイソシアネート基の比率
アミン類(B)とイソシアネート基の比率は、イソシアネート基を有するプレポリマー(A)中のイソシアネート基[NCO]と、アミン類(B)中のアミノ基[NHx]の当量比[NCO]/[NHx]として、1/2〜2/1、好ましくは1.5/1〜1/1.5、さらに好ましくは1.2/1〜1/1.2とすればよい。[NCO]/[NHx]が2より大きい、又は1/2未満では、ウレア変性ポリエステル(i)の分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。
【0056】
(3)未変性ポリエステル樹脂
本実施形態に係るトナーにおけるポリエステル骨格を有する樹脂、ポリエステル系樹脂としては、変性ポリエステル樹脂(A)単独使用だけでなく、この変性ポリエステル樹脂(A)と共に、変性されていない未変性ポリエステル樹脂(C)をトナーバインダー成分として含有させることが重要である。未変性ポリエステル樹脂(C)を併用することで、低温定着性及びフルカラー装置に用いた場合の光沢性が向上する。未変性ポリエステル樹脂(C)としては、変性ポリエステル樹脂(A)のポリエステル成分として説明したと同様なポリオール(1)とポリカルボン酸(2)との重縮合物等が挙げられ、好ましいものも変性ポリエステル樹脂(A)のポリエステル成分と同様である。ここで言う未変性ポリエステル樹脂(C)は、全くの無変性のポリエステル樹脂だけでなく、ウレア結合又はウレタン結合以外の化学結合で変性されているものも含んでいる。つまり、ウレア結合又はウレタン結合を含むポリエステル樹脂を変性ポリエステル樹脂(A)、変性されていてもウレア結合又はウレタン結合を含まないポリエステル樹脂を未変性ポリエステル樹脂(C)と呼んでいる。変性ポリエステル樹脂(A)と未変性ポリエステル樹脂(C)は少なくとも一部が相溶していることが低温定着性、耐ホットオフセット性の面で好ましい。従って、変性ポリエステル樹脂(A)のポリエステル成分と未変性ポリエステル樹脂(C)は類似の組成が好ましい。変性ポリエステル樹脂(A)を含有させる場合の変性ポリエステル樹脂(A)と未変性ポリエステル樹脂(C)の重量比は、通常5/95〜75/25、好ましくは10/90〜25/75、さらに好ましくは12/88〜25/75、特に好ましくは12/88〜22/78である。変性ポリエステル樹脂(A)の重量比が5%未満では、耐ホットオフセット性が悪化するとともに、耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になる。
【0057】
a)未変性ポリエステル樹脂の分子量
未変性ポリエステル樹脂(C)のピーク分子量は、通常1,000〜30,000、好ましくは1,500〜10,000、さらに好ましくは2,000〜8,000である。1,000未満では耐熱保存性が悪化し、30,000、時には10,000を超えると低温定着性が悪化する。未変性ポリエステル樹脂(C)の水酸基価は5以上であることが好ましく、さらに好ましくは10〜120、特に好ましくは20〜80である。5未満では、耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になる。未変性ポリエステル樹脂(C)の酸価は、通常0.5〜40、好ましくは5〜35である。酸価を持たせることで負帯電性となりやすい傾向がある。また、酸価及び水酸基価がそれぞれこの範囲を越えるものは、高温高湿度下、低温低湿度下の環境下において、環境の影響を受けやすく、画像の劣化を招きやすい。
【0058】
(4)着色剤
本実施形態に係る着色剤としては、公知の染料及び顔料が全て使用でき、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミュウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミュウムレッド、カドミュウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ポグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン及びそれらの混合物が使用できる。着色剤の含有量はトナーに対して通常1〜15重量%、好ましくは3〜10重量%である。
【0059】
a)着色剤のマスターバッチ化
本発明のトナーに用いる着色剤は、樹脂と複合化されたマスターバッチとして用いることもできる。マスターバッチの製造用、又はマスターバッチとともに混練されるバインダ樹脂としては、先にあげた変性ポリエステル樹脂、未変性ポリエステル樹脂の他にポリスチレン、ポリp−クロロスチレン、ポリビニルトルエン等のスチレン及びその置換体の重合体;スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体等のスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族叉は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックス等が挙げられ、これらは単独あるいは混合して使用できる。
【0060】
b)マスターバッチ作成方法
マスターバッチは、マスターバッチ用のバインダ樹脂と着色剤とを高せん断力をかけて混合、混練して得ることができる。この際、着色剤と樹脂の相互作用を高めるために、有機溶剤を用いることができる。また、フラッシング法と呼ばれる水を含んだ着色剤の水性ペーストをバインダ樹脂と有機溶剤とともに混合混練し、着色剤をバインダ樹脂側に移行させ、水分と有機溶剤成分を除去する。この方法は、着色剤のウエットケーキをそのまま用いることができるため乾燥する必要がなく、好ましく用いられる。混合混練するには3本ロールミル等の高せん断分散装置が好ましく用いられる。また、油相作成の際に溶媒への分散・溶解性を高める為に油相用有機溶媒の分散・溶解液(ウエットマスター)として調製して使用することもできる。
【0061】
(5)ワックス
本実施形態に係るトナーには、結着樹脂、着色剤とともにワックスを含有させることもできる。ワックスとしては、例えば「改訂 ワックスの性質と応用 第2版、府瀬川健蔵監修、(株)幸書房」等に記載の公知のものが使用でき、具体的なワックスとしては、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等のポリオレフィン類;パラフィンワックス、サゾールワックス等パラフィン類;トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18−オクタデカンジオールジステアレート、トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエート、ステアリン酸オクタデシル等の合成エステル類;カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等の天然植物系ワックス;モンタンワックス、オゾケライト、セレシン等の天然鉱物系ワックスやステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド系合成ワックスが挙げられる。これらのワックスのうちポリオレフィン類、パラフィン類、合成エステル類及びカルナウバワックス、ライスワックスが好ましく、単独または2種以上の組み合わせで用いることができる。
【0062】
トナー中のワックス含有量は、樹脂成分100質量%に対して2〜30質量%を含有させることが出来、好ましくは4〜15質量%である。トナー全量に対するワックス量が4%未満だと、定着時には定着部材表面でワックスがしみ出して定着部材にくっつかないようにしているが、ワックス量が少ないためワックス種によってはその離型効果十分に働かなくなり、ホットオフセットの余裕度がなくなることがある。一方、15質量%を超えると、ワックスは低温で溶融するため、熱エネルギー、機械エネルギーの影響を受けやすく、低融点ワックスを用いた場合等、例えば規制部での規制部材14への付着等で画像ノイズを発生させたりする場合がある。また、ワックスの示差走査熱量計(DSC)により測定される昇温時の吸熱ピークは、65〜115℃でトナーの低温定着が可能になるが、融点が65℃未満では流動性が悪くなり、115℃より高いと定着性が悪くなる傾向がある。
【0063】
a)ワックス分散剤
トナー粒子表面近傍にワックスを存在させるためには、ワックス分散剤で制御する。ワックス分散剤としては、トナーの乳化時には水に対し親和しにくく、重合反応生成物がワックスと非相溶性であるか又はワックスとの相溶性に乏しいトナー用バインダのためのモノマーが好ましく用いられ、ワックスに対し50〜200%加えて分散、重合させることによりトナー粒子内部から粒子表面近傍に存在するように制御することができる。親和しにくいトナー用バインダには、一般的なトナー用バインダのためのモノマーを用いることができる。具体的には、スチレン系モノマー[スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、p−アセトキシスチレン、ビニルトルエン、エチルスチレン、フェニルスチレン、ベンジルスチレン等]、不飽和カルボン酸のアルキル(炭素数1〜18)エステル[メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等]、ビニルエステル系モノマー[酢酸ビニル等]、ビニルエーテル系モノマー[ビニルメチルエーテル等]、ハロゲン元素含有ビニル系モノマー[塩化ビニル等]、ジエン系モノマー(ブタジエン、イソブチレン等)、(メタ)アクリロニトリル、シアノスチレン等不飽和ニトリル系モノマー及びこれらの併用が挙げられる。ワックスを湿式粉砕して微分散させる際にも、分散性を向上させるためにワックス分散剤を添加することが好ましい。このようなワックス分散剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。ワックス分散剤の選択の基本的考え方は、ワックスと親和性の高い部位と結着樹脂と親和性の高い部位を持った材料を用いればよい。例えば、ポリエチレンワックスにスチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体をグラフト化したもの等が好適に用いられる。このワックス分散剤のトナーに対する含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ワックスの全添加量100質量部に対し1〜200質量部が好ましい。
【0064】
(2)ラジカル発生剤
水系媒体にはラジカル発生剤を添加する。水系媒体に添加するラジカル発生剤は、水系媒体に分散もしくは溶解するものであれば特に限定されない。単独又は2種以上の組み合わせ、更には酸化還元反応を利用した酸化剤と還元剤の組み合わせでもよい。ラジカル発生剤の添加量はトナー固形分に対してラジカル発生剤種や造粒温度によって調整されるものであるが、通常0.1〜20質量%、好ましくは0.5〜10質量%である。ラジカル発生剤としては、所謂重合開始剤として知られているものを用いることが出来る。例えば、「POLYMER HANDBOOK」4th Edition,WILEY−INTERSCIENCE のVolume 1,Section IIに記載されている重合開始剤が挙げられる。ラジカル発生剤は油相又は/及び水相に添加することが出来、油相に添加する場合は油溶性の重合開始剤を用いるのが好ましく水相に添加する場合は水溶性重合開始剤を添加するのが好ましい。
【0065】
油溶性重合開始剤の具体的例としては、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系またはジアゾ系重合開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンペルオキサイド、ジイソプロピルペルオキシカーボネート、クメンヒドロペルオキサイド、t−ブチルヒドロペルオキサイド、ジ−t−ブチルペルオキサイド、ジクミルペルオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキサイド、ラウロイルペルオキサイド、2,2−ビス−(4,4−t−ブチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、トリス−(t−ブチルペルオキシ)トリアジン等の過酸化物系重合開始剤や過酸化物を側鎖に有する高分子開始剤等を挙げることができる。
【0066】
水溶性重合開始剤の例としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジンジハイドロクロライド)、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]、4,4’−アゾビス(4−シアノワレリックアシド)アゾビスアミノジプロパン酢酸塩、アゾビスシアノ吉草酸及びその塩、過酸化水素等を挙げることができる。
【0067】
(3)無機分散剤
水系媒体中に、トナー組成物の溶解物または分散物を、無機分散剤又は樹脂微粒子の存在下で分散させる。無機分散剤としては、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、コロイダルシリカ、ハイドロキシアパタイト等が用いられる。分散剤を用いると、粒度分布がシャープになるとともに分散が安定である点で好ましい。
【0068】
(4)樹脂微粒子
本実施形態に係るトナーには、結着樹脂とは別に樹脂微粒子を添加することが好ましい。樹脂微粒子を形成する樹脂としては、水系媒体中で分散体を形成しうる樹脂であれば、いかなる樹脂であっても使用でき、微細球状樹脂粒子の分散体であることが好ましい。樹脂微粒子は、熱可塑性樹脂であっても熱硬化性樹脂であっても良いが、例えはビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ケイ素系樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、2種以上を併用しても差し支えない。このうち好ましいのは、微細球状樹脂粒子の分散体が得られやすいという観点からビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂及びそれらの併用である。以下にこれらの樹脂について説明する。
【0069】
a)ビニル系樹脂
ビニル系樹脂は、ビニル系モノマーを単独重合または共重合したポリマーである。ビニル系モノマーとしては、下記(a)〜(j)の化合物が例示される。
(a)ビニル系炭化水素
脂肪族ビニル系炭化水素:アルケン類、例えばエチレン、プロピレンレン、ブテン、イソブチレン、ぺンテン、ヘプテン、ジイソブチレン、オクテン、ドデセン、オクタデセン、前記以外のα一オレフィン等;アルカジエン類、例えばブタジエン、イソプレン、1,4−ペンタジエン、1,6−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン等。
脂環式ビニル系炭化水素:モノ−もしくはジ−シクロアルケン及びアルカジエン類、例えばシクロヘキセン、(ジ)シクロペンタジエン、ビニルシクロヘキセン、エチリデンビシクロヘプテン等;テルペン類、例えばピネン、リモネン、インデン等。
芳香族ビニル系炭化水素:スチレン及びそのハイドロカルビル(アルキル、シクロアルキル、アラルキル及び/またはアルケニル)置換体、例えばα−メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、フェニルスチレン、シクロヘキシルスチレン、ベンジルスチレン、クロチルベンゼン、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン、トリビニルベンゼン等;及びビニルナフタレン等。
(b)カルボキシル基含有ビニル系モノマー及びその塩
炭素数3〜30の不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸ならびにその無水物及びそのモノアルキル(炭素数1〜24)エステル、例えば(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸、フマル酸モノアルキルエステル、クロトン酸、イタコン酸、イタコン酸モノアルキルエステル、イタコン酸グリコールモノエーテル、シトラコン酸、シトラコン酸モノアルキルエステル、桂皮酸等のカルボキシル基含有ビニル系モノマー等。
(c)スルホン基含有ビニル系モノマー、ビニル系硫酸モノエステル化物及びこれらの塩
炭素数2〜14のアルケンスルホン酸、例えはビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、メチルビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸;及びその炭素数2〜24のアルキル誘導体、例えばα−メチルスチレンスルホン酸等;スルホ(ヒドロキシ)アルキル−(メタ)アクリレートもしくは(メタ)アクリルアミド、例えば、スルホプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロキシプロピルスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエタンスルホン酸、3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−(メタ)アクリルアミド−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、アルキル(炭素数3〜18)アリルスルホコハク酸、ポリ(n=2〜30)オキシアルキレン(エチレン、プロピレン、ブチレン:単独、ランダム、ブロックでもよい)モノ(メタ)アクリレートの硫酸エステル[ポリ(n=5〜15)オキシプロピレンモノメタクリレート硫酸エステル等]、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステル等。
(d)燐酸基含有ビニル系モノマー及びその塩
(メタ)アクリロイルオキシアルキル燐酸モノエステル、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリロイルホスフェート、フェニル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート、(メタ)アクリロイルオキシアルキル(炭素数1〜24)ホスホン酸類、例えば2−アクリロイルオキシエチルホスホン酸;ならびにそれらの塩等。
なお、上記(b)〜(d)の化合物の塩としては、例えばアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩等)、アンモニウム塩、アミン塩もしくは4級アンモニウム塩等が挙げられる。
(e)ヒドロキシル基含有ビニル系モノマー
ヒドロキシスチレン、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アリルアルコール、クロチルアルコール、イソクロチルアルコール、1−ブテン−3−オール、2−ブテン−1−オール、2−ブテン−1,4−ジオール、プロパルギルアルコール、2−ヒドロキシエチルプロペニルエーテル、庶糖アリルエーテル等。
(f)含窒素ビニル系モノマー
アミノ基含有ビニル系モノマー:アミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t−ブチルアミノエチルメタクリレート、N−アミノエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アリルアミン、モルホリノエチル(メタ)アクリレート、4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、クロチルアミン、N,N−ジメチルアミノスチレン、メチル−α−アセトアミノアクリレート、ビニルイミダゾール、N−ビニルピロ一ル、N−ビニルチオピロリドン、N−アリールフェニレンジアミン、アミノカルバゾール、アミノチアゾール、アミノインドール、アミノピロール、アミノイミダゾール、アミノメルカプトチアゾール等、及びこれらの塩等。アミド基含有ビニル系モノマー;(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−メチレン−ビス(メタ)アクリルアミド、桂皮酸アミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジベンジルアクリルアミド、メタクリルホルムアミド、N−メチル−N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン等。ニトリル基含有ビニル系モノマー:(メタ)アクリロニトリル、シアノスチレン、シアノアクリレ一ト等。4級アンモニウムカチオン基含有ビニル系モノマー:ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジアリルアミン等の3級アミン基含有ビニル系モノマーの4級化物(メチルクロライド、ジメチル硫酸、ベンジルクロライド、ジメチルカーボネート等の4級化剤を用いて4級化したもの)等。ニトロ基含有ビニル系モノマー:ニトロスチレン等。
(g)エポキシ基含有ビニル系モノマー
グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、p−ビニルフェニルフェニルオキサイド等。
(h)ビニルエステル、ビニル(チオ)エーテル、ビニルケトン、ビニルスルホン類
ビニルエステル;酢酸ビニル、ビニルブチレート、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ジアリルフタレート、ジアリルアジペート、イソプロペニルアセテート、ビニルメタクリレート、メチル−4−ビニルベンゾエート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ビニルメトキシアセテート、ビニルベンゾエート、エチル−α−エトキシアクリレート、炭素数1〜50のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート[メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート等]、ジアルキルフマレート(2個のアルキル基は、炭素数2〜8の、直鎖、分枝鎖もしくは脂環式の基である)、ジアルキルマレエート(2個のアルキル基は、炭素数2〜8の、直鎖、分枝鎖もしくは脂環式の基である)、ポリ(メタ)アリロキシアルカン類[ジアリロキシエタン、トリアリロキシエタン、テトラアリロキシエタン、テトラアリロキシプロパン、テトラアリロキシブタン、テトラメタアリロキシエタン等]等、ポリアルキレングリコール鎖を有するビニル系モノマー[ポリエチレングリコール(分子量300)モノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(分子量500)モノアクリレート、メチルアルコールエチレンオキサイド10モル付加物(メタ)アクリレート、ラウリルアルコールエチレンオキサイド30モル付加物(メタ)アクリレート等]、ポリ(メタ)アクリレート類[多価アルコール類のポリ(メタ)アクリレート:エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等]等。
ビニル(チオ)エーテル;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテル、ヒニルブチルエーテル、ビニル−2−エチルヘキシルエーテル、ビニルフェニルエーテル、ビニル−2−メトキシエチルエーテル、メトキシブタジエン、ビニル−2−ブトキシエチルエーテル、3,4−ジヒドロ−1,2−ピラン、2−ブトキシ−2’−ビニロキシジエチルエーテル、ビニル−2−エチルメルカプトエチルエーテル、アセトキシスチレン、フェノキシスチレン等。
ビニルケトン;ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルフェニルケトン等。
ビニルスルホン;ジビニルサルファイド、p−ビニルジフェニルサルファイド、ビニルエチルサルファイド、ビニルエチルスルフォン、ジビニルスルフォン、ジビニルスルフォキサイド等。
(i)その他のビニル系モノマー
イソシアナートエチル(メタ)アクリレート、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート等。
(j)フッ素原子元素含有ビニル系モノマー
4−フルオロスチレン、2,3,5,6−テトラフルオロスチレン、ペンタフルオロフェニル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロベンジル(メタ)アクリレート、ペルフルオロシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ペルフルオロシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,4H−ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチル(メタ)アクリレート、ペルフルオロオクチル(メタ)アクリレート、2−ペルフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレート、トリヒドロペルフルオロウンデシル(メタ)アクリレート、ペルフルオロノルボニルメチル(メタ)アクリレート、1H−ペルフルオロイソボルニル(メタ)アクリレート2−(N−ブチルペルフルオロオクタンスルホンアミド)エチル(メタ)アクリレート、2−(N−エチルペルフルオロオクタンスルホンアミド)エチル(メタ)アクリレート、及びα−フルオロアクリル酸から誘導された対応する化合物等。ビス−ヘキサフルオロイソプロピルイタコネート、ビス−ヘキサフルオロイソプロピルマレエート、ビス−ペルフルオロオクチルイタコネート、ビス−ペルフルオロオクチルマレエート、ビス−トリフルオロエチルイタコネート及びビス−トリフルオロエチルマレエート等。ビニルヘプタフルオロブチレート、ビニルペルフルオロヘプタノエート、ビニルペルフルオロノナノエート及びビニルペルフルオロオクタノエート等。
【0070】
b)ビニル系共重合体
ビニル系モノマーの共重合体としては、上記(a)〜(j)の化合物のうち任意のモノマー同士を、2つまたはそれ以上の種類を、任意の割合で共重合したポリマーが挙げられるが、例えばスチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、(メタ)アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸、ジビニルベンゼン共重合体、スチレン−スチレンスルホン酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。樹脂微粒子にフッ素を導入する場合は、上記(a)〜(j)の化合物のうちの任意のモノマー1つまたはそれ以上の種類を任意の割合で共重合させる。
【0071】
c)ビニル系樹脂のモノマー比
上記樹脂は、上記分散体中で樹脂微粒子を形成させるため、少なくとも分散体を形成する条件下で水に完全に溶解していないことが必要である。そのため、ビニル系樹脂が共重合体である場合には、ビニル系樹脂を構成する疎水性モノマーと親水性モノマーの比率は、選ばれるモノマーの種類にもよるが、一般に疎水性モノマーが10%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましい。疎水性モノマーの比率が、10%以下になるとビニル系樹脂が水溶性になり、トナーの粒径均一性が損なわれる。ここで、親水性モノマーとは水に任意の割合で溶解するモノマーをいい、疎水性モノマーとは、それ以外のモノマー(実質的に水と均一相になっていないモノマー)をいう。
【0072】
<トナー流動化剤>
トナーの流動性や現像性を補助するための流動化剤としては、無機微粒子を好ましく用いることができる。この無機微粒子の一次粒子径は、5μm〜100μmであることが好ましく、特に5μm〜50μmであることが好ましい。この無機微粒子の使用割合は、トナーの0.1〜5.0質量%であることが好ましく、特に0.5〜3.0質量%であることが好ましい.無機微粒子の具体例としては、例えばシリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ペンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素等を挙げることができる。
【0073】
次に、本発明を実施例によってさらに具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。まず、各実施例1乃至6及び比較例1乃至3の現像ローラの作製方法について説明する。
【0074】
[実施例1]
直径6mmのSUS製芯金の周囲に、下記の組成からなるNBRゴムをクロス押出成形後、150℃/50分の蒸気加硫を行った。その後、外径研削により、直径12mmに調整することで3mm厚の弾性基層を得た。
(基層の組成)
NBRゴム(日本ゼオン社製、商品名;DN401) ・・・100重量部
カーボンブラック(ケッチェンブラックインターナショナル社製、商品名;ケッチェンブラックEC) ・・・ 7重量部
炭酸カルシウム ・・・ 5重量部
加硫促進剤 ・・・ 2重量部
加硫剤(イオウ) ・・・ 1重量部
このNBR弾性層表面に表層として、アクリルポリオール(大橋化学社製、商品名;RX−2A)80重量部、ポリイソシアネート(日本ポリウレタン社製、商品名;コロネートL)20重量部、カーボンブラック(東海カーボン社製、商品名;トーカブラック#7360SB)20部をメチルエチルケトンで溶解させた固形分10%溶液からなる表面処理液をスプレーコートによって塗布し、150℃1時間の焼成を行った。これを25℃0.02%の塩化ナトリウム/エチルアルコール溶液に30秒浸漬させた後、乾燥させて現像ローラ(実施例1)を得た。
【0075】
[実施例2]
表層材の添加材としてチタン酸バリウム3部を新たに追加、カーボンブラック(ケッチェンブラックインターナショナル社製、商品名;ケッチェンブラックEC)を10重量部添加した。また、表面処理材として、塩化ナトリウム0.02%ではなく塩化カリウム0.04%を用いたこと以外は実施例1と同様にして現像ローラ(実施例2)を得た。
【0076】
[実施例3]
直径6mmのSUS製芯金の周囲に弾性基層として下記の組成からなるエピクロルヒドリンゴムをクロス押出成型後、160℃1時間で加熱加硫を行う以外は現像ローラ2と同様の表面処理を行い現像ローラ(実施例3)を得た。
(基層の組成)
エピクロルヒドリンゴム(日本ゼオン社製、商品名;3106)・・100重量部カーボンブラック(ケッチェンブラックインターナショナル社製、商品名;ケッチェンブラックEC) ・・・15重量部炭酸カルシウム ・・・ 7重量部
加硫促進剤 ・・・ 3重量部
イオウ ・・・ 1重量部
【0077】
[実施例4]
基層材に添加するカーボンブラック(商品名;ケッチェンブラックEC)を3重量部にする以外は実施例2と同様にして現像ローラ(実施例4)を得た。
【0078】
[実施例5]
予め接着剤を塗布した直径6mmのSUSの芯軸の周囲に下記の組成からなるウレタンエラストマー組成物を1ショット法にて被覆してウレタンエラストマー層を形成した。このウレタンエラストマー層を外径研削にて直径12mmとすることにより、3mm厚のウレタン弾性基層を得た以外は実施例2と同様にして現像ローラ(実施例5)を得た。
(基層の組成)
ポリエーテル系ポリオール(日本ポリウレタン工業社製、商品名;コロネートL) ・・・・100重量部
カーボンブラック(商品名:ケッチェンブラックEC) ・・・ 10重量部
ジフェニルメタンジイソシアネート ・・・ 25重量部
【0079】
[実施例6]
基層材に添加するカーボンブラック(商品名;ケッチェンブラックEC)の添加量を20重量部にする以外は実施例3と同様にして現像ローラ(実施例6)を得た。
【0080】
[比較例1]
直径6mmのSUS製芯金の周囲にカーボンブラック(商品名;ケッチェンブラックEC)3重量部を配合した未硬化の液状シリコーンゴム(信越化学工業社製、商品名;KE−951U)を充填した後、加熱炉により160℃で50分間加熱硬化させた。その後、外径研削にて直径12mmとすることにより、3mm厚のシリコーンゴムからなる基層を得た。この基層上に、ポリイソシアネート(日本ポリウレタン社製、商品名;コロネートL)20重量部、カーボンブラック(東海カーボン社製、商品名;トーカブラック#7360SB)10重量部をメチルエチルケトンで溶解させた固形分10%溶液からなる表面処理液をスプレーコートによって塗布し、150℃1時間の焼成を行い現像ローラ(比較例1)を得た。
【0081】
[比較例2]
表層材に添加するカーボンブラックの添加量を1重量部にする以外は実施例2と同様にして現像ローラ(比較例2)を得た。
【0082】
[比較例3]
基層に添加するカーボンブラック(商品名;ケッチェンブラックEC)の添加量を1重量部にする以外は比較例1と同様にして現像ローラ(比較例3)を得た。
【0083】
次に、上記実施例及び比較例で使用するトナーの作製方法について説明する。
<顔料・ワックス分散液(油相)の作製>
撹拌棒及び温度計をセットした容器に、下記に示す[ポリエステル1]378重量部、パラフィンワックス(HNP9)120重量部、酢酸エチル1450重量部を仕込み、撹拌下80℃に昇温し、80℃のまま5時間保持した後、1時間で30℃に冷却した。次いで容器に[マスターバッチ1]500重量部、酢酸エチル500重量部を仕込み、1時間混合し[原料溶解液1]を得た。この[原料溶解液1]1500部を容器に移し、ビーズミル(アイメックス社製;ウルトラビスコミル)を用いて、送液速度1kg/hr、ディスク周速度6m/秒、0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填、3パスの条件で、カーボンブラック、ワックスの分散を行った。次いで、[ポリエステル1]の65%酢酸エチル溶液655重量部加え、上記条件のビーズミルで1パスし、[顔料・ワックス分散液1]を得た。[顔料・ワックス分散液1]の固形分濃度(130℃、30分)が50%となるように酢酸エチルを加えて調整した。
【0084】
(ポリエステル1の合成方法)
以下の材料を反応容器中に入れ、常圧220℃7時間反応させて10〜15mmHgの減圧で5時間反応させた後、無水トリメリット酸を46重量部入れて常圧180℃2時間反応させてポリエステル1を得た。
ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物 ・・・553重量部
ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物 ・・・196重量部
テレフタル酸 ・・・220重量部
アジピン酸 ・・・ 45重量部
ジブチルチンオキサイド ・・・ 2重量部
【0085】
<水相の調製>
イオン交換水953重量部、分散安定用の有機樹脂微粒子(スチレン−メタクリル酸−アクリル酸ブチル−メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩の共重合体)の25wt%水性分散液88重量部、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの48.5%水溶液(エレミノールMON−7:三洋化成工業製)90重量部、酢酸エチル113重量部を混合撹拌し、乳白色の液体を得た。これを[水相1]とする。
【0086】
<乳化工程>
[顔料・ワックス分散液1]967重量部、層状無機鉱物(Southern Clay Products社製、商品名;クレイトンAPA)を2%(トナー固形分換算)添加し、アミン類としてイソホロンジアミン6重量部、TKホモミキサー(特殊機化社製)で5,000rpmにて1分間混合した。その後、下記に示す[プレポリマー1]137重量部を加えTKホモミキサーで回転数5,000rpmにて1分間混合した後、[水相1]1200重量部を加え、TKホモミキサーで回転数8,000〜13,000rpmで調整しながら20分間混合し[乳化スラリー1]を得た。
【0087】
(プレポリマー1の合成方法)
反応容器中に、以下の材料を入れ、常圧220℃7時間反応させて10〜15mmHgの減圧で5時間反応させプレポリマー1を得た。
ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物 ・・・682重量部
ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物 ・・・ 81重量部
テレフタル酸 ・・・283重量部
無水トリメリット酸 ・・・ 22重量部
ジブチルチンオキサイド ・・・ 2重量部
【0088】
<脱溶剤>
撹拌機及び温度計をセットした容器に、[乳化スラリー1]を投入し、30℃で8時間脱溶剤を行い、[分散スラリー1]を得た。
【0089】
<微粒子付着工程>
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、ドデシル硫酸ナトリウム1.6重量部、イオン交換水492重量部を入れ、80℃に加熱した後、過硫酸カリウム2.5重量部をイオン交換水100重量部に溶解したものを加えた。その15分後にスチレンモノマー152重量部、ブチルアクリレート38重量部、メタクリル酸10重量部、n−オクチルメルカプタン3.5重量部の混合液を90分かけて滴下し、その後さらに60分80℃に保った。その後冷却して、[ビニル系共重合樹脂微粒子V−1]の分散液を得た。この分散液の固形分濃度を測定すると25%であった。また、微粒子の平均粒径は50nmであった。分散液を少量シャーレに取り、分散媒を蒸発させて得た固形物を測定したところ、数平均分子量11000、重量平均分子量18000、Tg65℃であった。前記[分散スラリー1]に、ビニル系共重合樹脂微粒子の分散液を252重量部加え、65℃まで30分かけて加熱した。イオン交換水10重量部に塩化マグネシウム6水和物10重量部を溶解した液を少量ずつ加えながら65℃に保ち、微粒子がほぼ全量付着したことを確認後、塩酸水溶液を加えてpH5に調整した後、80℃に加熱した。2時間後冷却し、[分散スラリー1−2]を得た。
【0090】
<洗浄から乾燥>
[分散スラリー1−2]100重量部を減圧濾過した後、
(1):濾過ケーキにイオン交換水100重量部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後濾過した。
(2):(1)の濾過ケーキにイオン交換水900重量部を加え、超音波振動を付与してTKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで30分間)した後、減圧濾過した。リスラリー液の電気伝導度が10μC/cm以下となるようにこの操作を繰り返した。
(3):(2)のリスラリー液のpHが4となる様に10%塩酸を加え、そのままスリーワンモーターで攪拌30分後濾過した。
(4):(3)の濾過ケーキにイオン交換水100重量部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後濾過した。リスラリー液の電気伝導度が10μC/cm以下となるようにこの操作を繰り返し[濾過ケーキ1]を得た。この[濾過ケーキ1]を循風乾燥機にて45℃で48時間乾燥し、目開き75μmメッシュで篩い、[トナー母体1]を得た。この[トナー母体1]の体積平均粒径(Dv)は5.0μm、個数平均粒径(Dp)は4.8μmで、Dv/Dpは1.04、平均円形度は0.980であった。ついで、この[トナー母体1]100重量部に疎水性シリカ1.5重量部をヘンシェルミキサーにて混合して、トナーを得た。
【0091】
次に、上記現像ローラ(実施例1〜6、比較例1〜3)の電気特性を評価するために、現像ローラの複素インピーダンスをソーラトロン社製の誘電体測定システム126096W型で測定した。現像ローラ芯金とローラ表面に電極を取り付け、ローラ表面の電極に荷重を加え0.3mm押し込んだ状態で測定開始する。出力Vppが1Vで周波数を1M〜1mHzまで変化させて複素インピーダンスプロットを取る。印加した交流電圧に対しての位相のずれがない応答を実部インピーダンスとしてX軸、π/2の位相のずれがある応答を虚部インピーダンスとしてY軸にして得られるグラフが複素インピーダンスプロットとなる。
【0092】
複素インピーダンスプロットにおけるピーク幅とピーク高さは、ソーラトロン社製波形解析ソフトウェアZPLOTを用い、以下の方法によりそれぞれ導出する。
(1)等価回路モデルとして、図3に示すように、RC並列回路をシリアルに並べたものを作成する。図3中、Rsは計測回路抵抗である。
(2)等価回路の各R成分とC成分に仮の値を記入する。(仮の値なのでおよその値でよい。例えば本発明の場合、R成分は10、C成分は10−9前後を入力してみる)
(3)解析するデータ範囲を指定し(周波数に応じたデータとなっているので周波数範囲を指定する)フィッティングを開始する。
(4)フィッティング後の計算値が仮の値を入れたセルに表示、さらにグラフ上にフィッティング後の計算値を元にしたフィッティングカーブが表示されるので生データを見合わせて重なっているなら終了する。ここで、R成分がピーク幅となる。ピーク高さはコールコールプロットから直接読み取る。両データが重なっていない場合は仮の値を半桁程度変えて再度計算する。
【0093】
次に、上記現像ローラ(実施例1〜6、比較例1〜3)をリコー社製カラーレーザープリンターIPSIO C220に組み込み、画像評価を行った。評価項目と評価基準を以下に示す。その結果を表1に示す。
(1)感光体地汚れ:5%イールド画像を連続で2000枚ランニング後、HH環境(35℃、85%RH)で黒べた現像後の白べた現像時の感光体上のトナー付着量を測定する。トナー付着量が0.01g/m以下の場合には◎とし、0.03g/m以下の場合には○とし、0.07g/m2以下の場合には△とし、0.08g/m以上の場合には×とする。
(2)トナー飛散:5%イールド画像を連続で2000枚ランニング後、HH環境(35℃、85%RH)で同じモードでランニング時の規制部材下側(回転方向に対して下手側)へのトナー付着量を測定する。トナー付着量が0.1g以下の場合には◎とし、0.3g以下の場合には○とし、0.7g以下の場合には△とし、0.8g以上の場合には×とする。
【表1】

【0094】
表1の結果から、現像ローラ(実施例1〜6)を用いたプリンタにおいては、概ね良好な品質の画像を得ることができたことがわかる。これら現像ローラ(実施例1〜6)は、第一のピーク幅とピーク高さが10〜10Ω、10〜10Ωであり、且つ第二のピーク幅とピーク高さが10〜10Ω、10〜10Ωの範囲内にある。また、特に、第1のピーク幅をZs、第2のピーク幅をZbとする時、5000>Zs/Zb>50である現像ローラ(実施例2,3,5,6)においては、高品質な画像を得ることができたことがわかる。一方、ピーク幅とピーク高さが上記範囲から外れた現像ローラ(比較例1〜3)においては、帯電レベルの低下による感光体地汚れ発生や、鏡像力の低下によるトナー飛散が見られた。
【0095】
以上、本実施形態に係る現像ローラによれば、複素インピーダンスプロットにおいて2つのピークを有し、第一のピーク幅とピーク高さが10〜10Ω、10〜10Ωであり、第二のピーク幅とピーク高さが10〜10Ω、10〜10Ωの範囲内に調整されている。その結果、現像ローラ13上のトナーを規制部材14を通過する瞬間に所望の帯電レベルまで帯電を立ち上げ、且つ現像ローラ13上のトナーを鏡像力によって確実に現像ローラ13上に保持することが可能となる。さらに、このように効率よくトナーを帯電することができるため、規制部材14による規制圧力を低下させることができ、現像ローラ13へのストレスも低減され、現像ローラ13の長寿命化も図ることができる。
また、本実施形態に係る現像ローラ13によれば、複素インピーダンスプロットにおいて、第1のピーク幅をZs、第2のピーク幅をZbとする時、Zs>Zb、且つ5000>Zs/Zb>50である。これにより、上記効果を確実に得ることができる。
また、本実施形態に係る現像ローラ13によれば、基層を構成する材料が、ウレタンゴム、クロロプレンゴム、ブタジエンアクリロニトリル、エピクロロヒドリンゴムの少なくとも1種を含み、且つJISA―硬度で40°〜50°の硬度をもつ。これらゴム種を用いることは、ゴムとしての弾性安定性、耐薬品性、耐熱性、接触現像用現像ローラとして必要な低弾性領域における弾性確保、表面形状等の加工性等の点から好ましい。
また、本実施形態に係る現像装置2によれば、上記現像ローラ13を用いていることから、感光体地汚れやトナー飛散の発生が抑制され、高品質な画像を安定して得ることができる。
なお、本実施形態に係る現像ローラ13は、芯金上に基層及び表層の2層が形成される2層構成であったが、本発明は必ずしも2層構成に限定されるものではない。複素インピーダンスプロットにおいて2ピークを有する電気特性をもつ層構成でればよく、例えば、基層と表層の間に中間層を形成するような多層構成であってもよい。表層と基層の機械的接着力が弱いもの、又は硬度が大きく異なるものについては、可擣性を持たすために中間層を設けるとよい。中間層は、コーティング→焼成といった表層と変わらない製法で形成することができる。中間層用材料としては、例えば、NBR、水素添加アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)、ポリウレタン系エラストマー、CR、天然ゴム、BR、IIR等があげられ、使用目的に応じて適宜選定することができる。
また、本実施形態に係る現像装置は、感光体上のトナー像を一旦中間転写体に転写し、その後中間転写体上のトナー像を転写紙に転写する画像形成装置の他に、図示しないが、感光体上に形成したトナー像を転写紙に直接転写する画像形成装置等にも搭載することができる。また、ひとつの感光体及びひとつの現像装置を有するモノクロ画像形成装置であっても、一つの感光体上に各色毎のトナー像を順次形成し、感光体上の各色トナー像を順次中間転写体又は転写紙に重ね合わせて転写するカラー画像形成装置であってもよい。また例えば、感光体を含む画像形成ユニットを複数組並べて配置し、各画像形成ユニットの感光体上に互いに異なる色のトナー像を形成し、各感光体上のトナー像を中間転写体又は転写紙に重ね合わせて転写するタンデム型のカラー画像形成装置であってもよい。
【符号の説明】
【0096】
1 感光体
2 現像装置
3 帯電ローラ
4 中間転写ベルト
5 クリーニング装置
11 トナー収容室
12 トナー供給室
13 現像ローラ
14 規制部材
15 供給ローラ
16 トナー攪拌部材
17 開口部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0097】
【特許文献1】特開2008−33308号公報
【特許文献2】特開2007−286236号公報
【特許文献3】特許2703922号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性の芯金表面上に設けられた弾性体からなる基層と、基層上に設けられた表層の少なくとも二層構造からなる現像ローラにおいて、
周波数を変えて交流電圧を印加したときの複素インピーダンスプロットが、二つのピークを有し、第一のピーク幅が10Ω以上10Ω以下、第一のピーク高さが10Ω以上10Ω以下であり、第二のピーク幅が10Ω以上10Ω以下、第二のピーク高さが10Ω以上10Ω以下であることを特徴とする現像ローラ。
【請求項2】
請求項1の現像ローラにおいて、
上記第一のピーク幅をZsとし、上記第二のピーク幅をZbとしたとき、Zs>Zb且つ5000>Zs/Zb>50を満たすことを特徴とする現像ローラ。
【請求項3】
請求項1又は2の現像ローラにおいて、
上記基層を構成する材料が、ウレタンゴム、クロロピレンゴム、ブタジエンアクリロニトリル、エピクロロヒドリンゴムの少なくとも一種を含み、且つJIS―A硬度が40°以上50°以下であることを特徴とする現像ローラ。
【請求項4】
静電潜像を保持する静電潜像保持部材に対向配置される現像ローラと、該現像ローラ上に供給されたトナーの層厚を規制する規制部材とを有する現像装置において、
上記現像ローラとして、請求項1、2、又は3の現像ローラを用いることを特徴とする現像装置。
【請求項5】
潜像を担持する潜像担持体と、該潜像担持体を均一に帯電する帯電手段、該潜像担持体上の潜像を現像する現像手段、該潜像担持体をクリーニングするクリーニング手段より選ばれる少なくとも1以上の手段とを一体に支持し、画像形成装置本体に対して着脱自在とされるプロセスカートリッジにおいて、
該現像手段として、請求項4の現像装置を用いることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項6】
像担持体と、該像担持体上に形成された静電潜像を現像する現像手段、該像担持体上に形成されたトナー像を転写体に転写する転写手段とを備えた画像形成装置において、
上記現像手段として、請求項4の現像装置を用いることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−266512(P2010−266512A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−115332(P2009−115332)
【出願日】平成21年5月12日(2009.5.12)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】