説明

現像ローラ、現像ローラの製造方法、プロセスカートリッジ及び電子写真用画像形成装置

【課題】柔軟で画像耐久性に優れ、連続通電時の抵抗上昇が小さい高品位の現像ローラを提供すること、またはこのような現像ローラを用いた現像装置、プロセスカートリッジ及び画像形成装置を提供すること。
【解決手段】芯体の周囲に樹脂層を有し、その外周に表面層を有する現像ローラにおいて、該表面層が、a)バインダー樹脂成分、b)導電性微粒子、およびc)個数平均粒子径が60nm以上100nm以下であり、かつメタクリル酸メチル、スチレン、ウレタンのうち少なくとも1種からなる骨格を有するマイクロゲル、を含有することを特徴とする現像ローラとすることにより、柔軟で画像耐久性に優れ、連続通電時の抵抗上昇が小さく、現像ローラとして好適な導電性を示す高品位の現像ローラが得られる。また前記の現像ローラを用いることで高品位な現像装置、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンターあるいはファクシミリの受信装置の如き電子写真方式を採用した装置に組み込まれる、感光体に接触させて使用される現像ローラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を用いた複写機やファクシミリやプリンターにおいては、感光体が帯電手段により帯電され、レーザーにより静電潜像を形成する。次に、現像容器内のトナーがトナー塗布ローラ及びトナー規制部材により現像ローラ上に塗布され、感光体と現像ローラとの接触部でトナーによる現像が行われる。その後、感光体上のトナーは、転写手段により記録紙に転写され、熱と圧力により定着され、感光体上に残留したトナーはクリーニングブレードによって除かれる。
【0003】
非磁性一成分接触現像方式の電子写真用画像形成装置には、感光体を帯電させたり、静電潜像を現像するため、103〜1010Ω・cmの電気抵抗を有する弾性を有するローラが用いられている。非磁性一成分接触現像方式の電子写真用画像形成装置では、互いに圧接されている現像ローラから感光体(ドラム)へトナーを移動させて静電潜像を現像し、トナー像が形成される。このような電子写真用画像形成装置に用いられる現像ローラはより高いレベルの品質を満たすために、軸芯体上に樹脂層を有し、さらにその外周上に単層または複数の表面層を形成した構成の半導電性ローラが用いられる。
【0004】
このような半導電性ローラを形成する高分子弾性材料としては、ゴム弾性を有する高分子エラストマーや高分子フォームが用いられている。これらは、低硬度で、感光体や転写部材を汚染することがなく、かつトナーと融着しない特性を有することが求められる。そこで高分子エラストマーや高分子フォームを構成する材料としては固形ゴム加硫物やポリウレタン等が用いられている。具体的には、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、シリコーンゴム、エピクロルヒドリンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム等の固形ゴム加硫物や、ポリオール等の液状原料をイソシアネートにより硬化させたポリウレタン等である。これらの中で、ポリオールとポリイソシアネートを主原料として生成されるポリウレタンが一般的に使用される。これは導電材によっても電解質によっても導電性を付与することができ、電解質を液状原料に溶解して使用できる利点があり、必要に応じてフォームとすることもできるからである。
これらの材料からなる半導電性ローラにおいては、例えばカーボンブラック、金属酸化物等の導電性微粒子を混合することにより、ローラ抵抗を半導電域である105〜109Ωに調整される。
【0005】
特許文献1には、強導電性カーボンブラックおよび弱導電性カーボンブラックを併用することにより、著しい硬度の増大をもたらすことなく、中抵抗域の導電性ロールを得る方法が記載されている。
【特許文献1】特開平09−090714公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、複写機、プリンターあるいはファクシミリなど、電子写真方式を採用した装置に使用される現像ローラに必要とされる性能はより高度になっており、高画質化、省エネの観点から、より柔軟で低融点のトナーが用いられるようになっている。さらに安定した電気特性の発現や、前述したような高画質化と画像耐久性の両立のため、柔軟性を持った物性が特に要求されるようになっている。
【0007】
特許文献1は、比較的高い導電性(104〜108Ω・cm)が要求される場合、カーボンブラックの添加量を増やさなければならず、表面層が硬くなることがある。また連続通電によって、電気抵抗の増大(以下通電劣化)を引き起こすことがある。
【0008】
そこで、本発明の目的は、通電劣化が小さく、かつ適度な導電性と柔軟性を兼ね備えた高品位の現像ローラ及び該現像ローラの製造方法を提供すること、さらに前記現像ローラを用いたプロセスカートリッジ及び電子写真用画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは前記目的にかなう現像ローラを提供するため鋭意研究、検討を重ね、本発明に至った。すなわち本発明は、
芯体の外周面に樹脂層を有し、該樹脂層の外周面に表面層を有する現像ローラにおいて、該表面層が下記a)、b)およびc)を含有することを特徴とする現像ローラに関する:
a)バインダー樹脂成分、
b)導電性微粒子、
c)個数平均粒子径が60nm以上100nm以下であり、かつメタクリル酸メチル、スチレン、ウレタンのうち少なくとも1種からなる骨格を有するマイクロゲル。
【0010】
また本発明は、芯体の周囲に樹脂層を有し、その外周に表面層を有する現像ローラの製造方法において、
該表面層が導電性微粒子を分散混合させた樹脂溶液に、マイクロゲルの有機溶媒分散体を混合せしめた後、該樹脂層表面に塗布して形成することを特徴とする現像ローラの製造方法である。
【0011】
また本発明は、トナーを収容する容器と現像ローラとを有し、潜像を担持する感光体にトナーを付与することにより潜像を可視化するための現像装置において、該現像ローラが上記の現像ローラであることを特徴とする現像装置に関する。
【0012】
また本発明は、少なくとも現像ローラが装着されてなり、電子写真用画像形成装置に着脱可能なプロセスカートリッジにおいて、該現像ローラが上記の現像ローラであることを特徴とするプロセスカートリッジに関する。
【0013】
さらに本発明は、潜像を担持する感光体に対向した状態でトナーを担持する現像ローラを備え、該現像ローラが前記感光体にトナーを付与することにより該潜像を現像する電子写真用画像形成装置において、
本発明にかかる上記現像ローラを具備することを特徴とする電子写真用画像形成装置に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、通電劣化が小さく、かつ適度な導電性と柔軟性を兼ね備えた高品位の現像ローラが得られる。また前記の現像ローラを用いることで高品位なプロセスカートリッジ、及び電子写真用画像形成装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の現像ローラ1は、図1及び2に示すように、円柱状または中空円筒状の導電性軸芯体2の外周面に樹脂層3が固定され、樹脂層3の外周面に表面層4が積層された導電性部材から構成される。
【0016】
導電性軸芯体2は、現像ローラ1の電極および支持部材として機能するもので、アルミニウム、銅合金、ステンレス鋼の如き金属または合金;クロム、又はニッケルで鍍金処理を施した鉄;導電性を有する合成樹脂の如き導電性の材質で構成される。導電性軸芯体2の外径は、通常4mm〜10mmの範囲とする。
【0017】
樹脂層3は、感光体表面に形成された静電潜像にトナーを過不足なく供給することができるように、適切なニップ幅とニップ圧をもって感光体に押圧されるような硬度や弾性を、現像ローラに付与するものである。樹脂層3は、通常ゴム材の成型体により形成される。上記ゴム材としては、従来より導電性ゴムローラに用いられている種々のゴム材を用いることができる。ゴム材に使用するゴムとしては、以下のものが挙げられる。エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(EPDM)、アクリルニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、シリコーンゴム、エピクロロヒドリンゴム、NBRの水素化物、ウレタンゴム。これらは単独であるいは2種以上を混合して用いることができる。この中でも、特にセット性能の観点からシリコーンゴムが好ましい。シリコーンゴムとしては、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルトリフルオロプロピルシロキサン、ポリメチルビニルシロキサン、ポリフェニルビニルシロキサン、これらポリシロキサンの共重合体が挙げられる。
【0018】
樹脂層3中には、導電性付与剤が含有されており、さらに非導電性充填剤、架橋剤、触媒の如き各種添加剤が適宜配合される。導電性付与剤としては、グラファイト、カーボンブラック、アルミニウム、銅の如き導電性金属;酸化亜鉛、酸化錫、酸化チタンの如き導電性金属酸化物の微粒子を用いることができる。このうち、カーボンブラックは比較的容易に入手でき、良好な帯電性が得られるので好ましい。非導電性充填剤としては、シリカ、石英粉末、酸化チタン、酸化亜鉛又は炭酸カルシウムが挙げられる。架橋剤としては、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン又はジクミルパーオキサイドが挙げられる。
【0019】
樹脂層3の体積抵抗率は、以下の方法で求めた値を採用することができる。
抵抗計として、超高抵抗計R8340A(アドバンテスト社製)を用い、以下の条件で測定を行う。
測定モード:プログラムモード5 (チャージ及びメジャー30秒、ディスチャージ10秒)
印加電圧:100(V)
試料箱:超高抵抗計測定用試料箱TR42(アドバンテスト社製)、主電極は口径10mm厚さ10mmの金属、ガードリング電極は内径20mm、外径26mm厚さ10mmの金属とする。
試験片:はじめに、該樹脂層2の材料を、樹脂層2の成形時と同じ条件で、樹脂層2と同じ厚さに硬化させた平板状のテストピースを作製する。次に、該テストピースから直径30mmの試験片を切り出す。切り出した試験片の片面には、その全面にPt−Pd蒸着を行うことで蒸着膜電極(裏面電極)を設け、もう一方の面には同じくPt−Pd蒸着膜により、直径15mmの主電極膜と、内径18mm、外径28mmのガードリング電極膜を同心状に設ける。なお、Pt−Pd蒸着膜は、マイルドスパッタE1030(日立製作所製)を用い、電流値15mAにて蒸着操作を2分間行って得る。蒸着操作を終了したものを測定サンプルとする。
【0020】
測定時には、口径10mmの主電極を口径15mmの主電極膜からはみ出さないように置く。また、内径20mmのガードリング電極を、内径18mmのガードリング電極膜からはみ出さないように、電極膜の上に置いて測定する。測定は、気温23℃、相対湿度50%の環境で行うが、測定に先立って、測定サンプルを、該環境に12時間以上放置しておく。
【0021】
以上の状態で、試験片の体積抵抗(Ω)を測定する。次に、測定した体積抵抗値をRM(Ω)、試験片の厚さをt(cm)とするとき、試験片の体積抵抗率RR(Ωcm)を、以下の式によって求める。
【0022】
RR(Ωcm)=π×0.75×0.75×RM(Ω)÷(4×t(cm))
導電性付与剤としてカーボンブラックを用いる場合は、ゴム材中のゴム100質量部に対して15質量部〜80質量部配合される。また、弾性層3の厚さは2.0mm〜6.0mmの範囲にあることが好ましく、3.0mm〜5.0mmの範囲にあることがより好ましい。
【0023】
表面層4に含有されるバインダー樹脂成分a)としては、具体的にはポリウレタン、ポリエステル、ポリエーテル、アクリル、エポキシ樹脂、メラミンの如きアミノ樹脂が挙げられる。ポリウレタン、メラミン架橋樹脂は皮膜の強度とトナー帯電性の観点から特に好ましく、中でも熱硬化性ポリエーテルポリウレタン、ポリエステルポリウレタンは現像ローラとして必要な柔軟性を合わせ持つため好適に用いられる。
【0024】
これらの熱硬化性ポリウレタン樹脂は、公知のポリエーテルポリオールや、ポリエステルポリオールとイソシアネート化合物との反応により得られる。
【0025】
ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールが挙げられる。またポリエステルポリオールとしては、以下のものを用いることができる。1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,4−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコールの如きジオール成分、トリメチロールプロパンの如きトリオール成分と、アジピン酸、無水フタル酸、テレフタル酸、ヘキサヒドロキシフタル酸等のジカルボン酸との縮合反応により得られるポリエステルポリオールが挙げられる。これらのポリオール成分は必要に応じてあらかじめ、2,4−トリレンジイソシアネート(TDI)、1,4ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)の如きイソシアネートにより鎖延長したプレポリマー等。
【0026】
これらのポリオール成分と反応させるイソシアネート化合物としては、以下のものを用いることができる。エチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)の如き脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、シクロヘキサン1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン1,4−ジイソシアネートの如き脂環式ポリイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)の如き芳香族イソシアネート及びこれらの共重合物や、そのブロック体等。
【0027】
表面層4に含有される導電性微粒子b)としては、導電付与性、補強性の観点からカーボンブラックが好ましい。
【0028】
該導電性微粒子の性状としては、一次粒子径18nm以上25nm以下、かつDBP吸油量が77ml/100g以上160ml/100g以下であるカーボンブラックであると、導電性、硬度、分散性のバランスが良好であり特に好ましい。導電性微粒子の含有率は、表面層を形成する樹脂成分100質量部に対して10質量%以上25質量%以下であることが好ましい。10質量%以下では、現像ローラとしての導電性を好ましい範囲にすることができない場合がある。また25質量%以上になるとカーボンブラックの補強性により表面層の硬度が高くなり、トナーに対してストレスを与え、フィルミングなど画像弊害を生じる場合がある。
【0029】
表面層4に含有されるマイクロゲルc)は、個数平均粒子径が60nm以上100nm以下であり、かつメタクリル酸メチル、スチレン、ウレタンのうち少なくとも1種からなる骨格を有することを特徴とする。
【0030】
なお本発明における「マイクロゲル」とは平均径が100nm以下の内部架橋された高分子微粒子を表す。マイクロゲルは、有機溶剤や水中に自己分散させることができる特徴を持つ。そのため表面層中でもマイクロゲル粒子同士が凝集しにくく均一に分散された状態で存在させることが可能である。連続的に現像ローラに通電させる時、表面層中でカーボンブラックが凝集し導電パスが遮断されるため、抵抗が増大し、ゴーストの発生など画像弊害を生じる場合がある。しかし均一に分散された状態で存在するマイクロゲル粒子を表面層4に含有させると、カーボンブラック等の導電性微粒子の移動、および凝集が抑制され、通電劣化を抑制する効果が得られるという予期せぬ効果を見出し、本発明に至った。
【0031】
マイクロゲルの個数平均粒子径は60nm以上100nm以下であることが特に好ましい。個数平均粒子径が60nm以下になると媒体中での分散安定性が低下する場合がある。また100nmを超える場合、通電劣化抑制効果が低下したり、表面の平滑性が低下する場合がある。
【0032】
マイクロゲルを構成する樹脂成分としては、メタクリル酸メチル、スチレン、ウレタンのうち少なくとも1種からなる骨格を有することが特に好ましい。メタクリル酸メチル、スチレン骨格を有するマイクロゲルは有機溶剤中での自己分散性が特に良好であり、ウレタン骨格を有するマイクロゲルは水やトルエン等の弱媒体に対して良好な分散性を示す。そのため塗料を塗布することにより表面層を形成する場合、表面層の膜中に良好な分散状態を保持でき、優れた通電劣化抑制効果が得られる。
【0033】
マイクロゲルのガラス転移温度(以下Tg)は10℃以上60℃以下であることが好ましい。10℃以下になると溶媒中での膨潤率が著しく高くなり、凝集や変形を生じる可能性がある。また60℃以上になると表面層の硬度が高くなり、フィルミングなど画像弊害を生じる場合がある。
【0034】
マイクロゲルの含有量は、表面層のバインダー樹脂成分a)に対して5.0質量部以上15.0質量部以下であることが好ましい。5.0質量部以下になると通電劣化抑制効果が充分得られない場合があり、また15.0質量部以上になると表面層の硬度を上昇させ、画像に影響を与える場合がある。
【0035】
またマイクロゲルは表面に水酸基、アミノ基などの官能基を持たせることが可能である。このようなバインダー樹脂成分と化学結合形成可能な官能基を有する場合、より高い通電劣化抑制効果が得られ、特に好ましい。
【0036】
マイクロゲルの溶媒に対する膨潤率は、メチルエチルケトンまたはトルエンに対して5.0%以上25.0%以下であることが好ましい。5.0%以下になると樹脂成分との親和性が低下し、表面層中での良好な分散性が低下する可能性がある。また25.0%以上になると溶媒中で凝集や変形を生じる可能性がある。
【0037】
なおマイクロゲルの膨潤率は以下のように求めることができる。乾燥マイクロゲルの粉体の場合は、一定体積(V1と略記する)の粒子を、メチルエチルケトンまたはトルエンに浸し、1時間後の膨潤体積(V2と略記する)をメスシリンダーなどを用いて測定し、V2/V1によって算出することができる。
【0038】
溶剤分散体の場合は、あらかじめ溶剤を減圧下留去した後、十分に乾燥したサンプルを作成し、上記方法と同様にして測定、算出することができる。
【0039】
マイクロゲルの個数基準における粒度分布の変動係数Cは、C≦1.4%(但し、C=(Sw/D)×100で表され、Swは粒子の個数基準粒径分布における標準偏差を示し、Dは粒子の個数平均粒径(μm)を示す)の粒度分布が好ましい。変動係数が1.4%を超えるとマイクロゲルの粒度分布が大きくなり、通電劣化抑制効果が低下する場合がある。
【0040】
現像ローラとして表面粗度が必要な場合は、表面層4に粗さ制御のための微粒子を添加してもよい。粗さ制御用微粒子としては、体積平均粒径が3μm〜20μmであることが好ましい。また、表面層に添加する粒子添加量が、表面層の樹脂固形分100質量部に対し、1質量部〜50質量部であることが好ましい。
【0041】
粗さ制御用微粒子には、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂の微粒子を用いることができる。
【0042】
現像ローラの製造における表面層4の形成は、導電性微粒子を分散混合させた樹脂溶液に、マイクロゲルの有機溶媒分散体を混合せしめた後、芯体の外周面に有する樹脂層表面に塗布する方法で行うことができる。具体的な方法としては特に限定されるものではないが、塗料によるスプレー、浸漬、又はロールコートが挙げられる。浸漬塗工は、特開昭57−5047号公報に記載されているような浸漬槽上端から塗料をオーバーフローさせる方法は、表面層を形成する方法として簡便で生産安定性に優れている。
【0043】
図4は浸漬塗工装置の概略図である。25は円筒形の浸漬槽であり、現像ローラ外径よりわずかに大きな内径を有し、現像ローラの軸方向の長さより大きな深さを有している。浸漬槽25の上縁外周には環状の液受け部が設けられており、撹拌タンク27と接続されている。また浸漬槽25の底部は撹拌タンク27と接続されている。
【0044】
撹拌タンク27の塗料は、液送ポンプ26によって浸漬槽25の底部に送り込まれる。浸漬槽の上端部からは、塗料がオーバーフローしており、浸漬槽25の上縁外周の液受け部を介して撹拌タンク27に戻る。弾性層3を設けた芯体2は昇降装置28に垂直に固定され、浸漬槽25中に浸漬し、引き上げることで表面層4を形成する。
【0045】
本発明のプロセスカートリッジ及び電子写真用画像形成装置は、上記本発明の現像ローラを有するものであれば、複写機、ファクシミリ、又はプリンターに限定されるものではない。
【0046】
本発明の現像ローラを搭載した本発明のプロセスカートリッジ及び電子写真用画像形成装置の一例としてプリンターを以下に説明する。図6において、現像装置10は、一成分トナーとして非磁性トナー8を収容した現像容器と、現像容器内の長手方向に延在する開口部に位置し感光体5と対向設置された、トナーを担持するための現像ローラ1とを備える。現像装置10は感光体5上の静電潜像を現像してトナー像を形成することで潜像を可視化する。
【0047】
プロセスカートリッジは、少なくとも本発明の現像ローラが装着されてなり、電子写真用画像形成装置に着脱可能な構成を有する。
【0048】
図3に示すように、プリンターには図示しない回転機構により回転される感光体5が備えられている。感光体5の周りには、感光体5の表面を所定の極性・電位に帯電させる帯電部材12と、帯電された感光体5の表面に画像露光を行って静電潜像を形成する、不図示の画像露光装置とが配置される。更に感光体5の周りには、形成された静電潜像上にトナーを付着させて現像する本発明の現像ローラ6を有する現像装置10が配置される。さらに、紙22にトナー像を転写した後、感光体5上をクリーニングする装置13が設けられる。
【0049】
紙22の搬送経路上には、転写されたトナー像を紙22上に定着させる定着装置15が配置される。
【実施例】
【0050】
以下に本発明に係る具体的な実施例及び比較例について示す。
【0051】
なお、本実施例中におけるマイクロゲルのTgの測定は、測定機器として示走査熱量計DSC8230L(リガク社製)を用いた。
【0052】
マイクロゲルの個数平均粒径は以下の方法により求められる値とすることができる。
【0053】
まず、表面層を現像ローラから切り出し、切り出した表面層から超薄切片を作製し、観察用のサンプルとする。具体的には、結切片作製装置(ライカマイクロシステムズ(株);Leica EM FCS)を使用し、−120℃以上−50℃の以下の雰囲気で、ダイヤモンドナイフ(商品名:Cryo dry 35°;ディアトーム社製)を用いて、厚み約50nmの超薄切片を作製する。作成した観察用サンプルをTEMで観察する。直接観察倍率は14万倍とする。撮影されたフィルムを2倍に拡大して現像し、最終的に、28万倍の写真を得る。
【0054】
該写真から、マイクロゲルの粒子500個を任意に選び出し、各々のマイクロゲル粒子の面積相当径を求める。なお、任意に選んだマイクロゲルの粒子が、隣接するマイクロゲルの粒子と重なり合いが多い場合は、そのマイクロゲルの粒子の面積相当径は求めず、他の粒子を選択する。任意の500個の粒子について、面積相当径を求め、500個の粒子の面積相当径の相加平均値の小数点第一位を四捨五入した値を、マイクロゲルの個数平均粒径Dとする。また得られた500個の面積相当径から標準偏差Swを算出し、(Sw/D)×100を変動係数Cとした。
【0055】
カーボンブラックの一次粒子径は以下の方法により求められる値とすることができる。
【0056】
まず前述のマイクロゲルの個数平均粒径測定と同様にして、表面層を現像ローラから切り出し、28万倍の写真を得る。
【0057】
該写真から、カーボンブラックの粒子500個を任意に選び出し、各々のカーボンブラック粒子について、その面積相当径(投影面積と等しい面積を持つ円の直径)を求める。なお、任意に選んだカーボンブラックの粒子が、隣接するカーボンブラックの粒子と重なり合いが多い場合は、そのカーボンブラックの粒子の面積相当径は求めず、他の粒子を選択する。隣接するカーボンブラックの粒子との重なり合いが多いか少ないかの判断について、図7を用いて説明する。図7において、中央のカーボンブラック粒子Yは、2つの隣接するカーボンブラック粒子XとZに接しているため、粒子Yの正確な輪郭は不明である。しかし、カーボンブラックは、アグリゲート(ストラクチャー)を形成しやすい物質であり、図7のように重なり合っている粒子がほとんどである。図8に示すように、粒子Yと粒子Xの輪郭線が交わる2点(A点、B点とする)を、直線で結ぶ。粒子Yと粒子Zについても同様に、C点、D点を求めて直線で結び、直線AB、曲線BC、直線CD、曲線DAで結ばれる閉平面を作る。線分ABの長さと線分CDの長さの和が、曲線ADの長さと曲線BCの長さの和の20%以下であるならば、粒子Yの面積として、輪郭線、直線AB、曲線BC、直線CD、曲線DAで結ばれる閉平面の面積を求め、その面積に等しい直径を持つ円の直径を算出する。算出された直径(単位:nm)の小数点第一位を四捨五入して、整数にした値を、粒子Yの面積相当径と定義する。直線ABの長さと直線CDの長さの和が、曲線ADの長さと曲線BCの長さの和の20%より大きい場合には、面積相当径の近似精度が悪くなるので、他の粒子を選択する。
【0058】
以上の手順で、任意の500個の粒子について、面積相当径を求め、500個の粒子の面積相当径の相加平均値の小数点第一位を四捨五入した値を、カーボンブラックの一次粒子径とする。
【0059】
現像ローラの抵抗値は、現像ローラを20℃、40%RH環境下にて、図5に示す抵抗測定機を用いて、1kgf荷重(芯金両端各500gf荷重)で圧接し、50V印加、ローラ回転数60rpmにて抵抗測定を行い、3秒間の平均値をローラ抵抗値とした。
【0060】
現像ローラの表面硬度は、マイクロゴム硬度計MD−1capa(高分子計器社製)にて、直径0.16mm押針を用い、気温25℃、相対湿度50%RH環境下、導電性樹脂層形成後の現像ローラの中央部、上端部、下端部3点を測定した平均値を用いた。
【0061】
(実施例1)
芯体2としてSUS304製の直径8mmの芯金にニッケルメッキを施し、さらにプライマ−〔DY35−051(商品名)、東レダウコーニングシリコーン社製〕を塗布、焼付けしたものを用いた。ついで、軸芯体2を金型に配置し、以下の組成での各成分を混合した付加型シリコーンゴム組成物を金型内に形成されたキャビティに注入した。
(付加型シリコーンゴム組成物)
・液状シリコーンゴム材料 100.0質量部
〔SE6724A/B(商品名)、東レ・ダウコーニングシリコーン社製〕
・カーボンブラック 35.0質量部
〔トーカブラック#7360SB(商品名、東海カーボン社製)〕
・シリカ粉体(耐熱性付与剤) 0.2質量部
・白金触媒(耐熱性付与剤) 0.1質量部
続いて、金型を加熱してシリコーンゴムを温度150℃、15分間加硫硬化し、脱型した後、さらに温度180℃、1時間加熱し硬化反応を完結させ、樹脂層3を軸芯体2の外周に設けた。
【0062】
最表面の樹脂層4の材料として、以下の組成での(A)乃至(C)の成分において、(A)を溶媒とし、成分(B)に成分(C)を段階的に混合した。その後、窒素雰囲気下80℃にて5時間反応させて重量平均分子量Mw=11000、水酸基価26のポリウレタンポリオールAを得た。
(A)メチルエチルケトン(MEK) 122.0質量部
(B)ポリテトラメチレングリコール 100.0質量部
(商品名;PTG1000SN、保土谷化学社製)
(C)鎖延長用イソシアネート化合物 22.2質量部
(商品名;コスモネートMDI、三井武田ケミカル社製)
次にポリウレタンポリオールAを100.0質量部に対し、以下の組成での2つの成分を撹拌混合し、総固形分比30質量%になるようにMEKに溶解、混合の後、サンドミルにて均一に分散し、樹脂層形成用樹脂溶液1を得た。
・コロネート2521(商品名、日本ポリウレタン工業社製) 26.2質量部
・カーボンブラックSUNBLACKX15(商品名、旭カーボン社製) 15.5質量部
さらに表1に記載のマイクロゲルMEK分散体A(S-1200、日本ペイント社製、固形分20質量%)16.5質量部を撹拌モーターにより撹拌しながら徐々に加え、さらに撹拌モーターにより5分間混合撹拌して表面層形成用塗料1を得た。
【0063】
さらに、この分散液を粘度7cps〜10cpsにMEKで希釈後、前記弾性層上に浸漬塗工した後乾燥させ、温度150℃にて1時間加熱処理することで弾性層外周に膜厚約10μmの表面層を設け、実施例1の現像ローラを得た。前述の方法で測定した現像ローラの表面硬度は37.0であった。
【0064】
(実施例2)
マイクロゲル分散体Aをマイクロゲル分散体B(S-0597、日本ペイント社製、固形分25質量%)に変更し、添加量を26.4質量部に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例2の現像ローラを得た。
【0065】
(実施例3)
マイクロゲル分散体Aをマイクロゲル分散体C(S-1500、日本ペイント社製、固形分25質量%)に変更し、添加量を26.4質量部に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例3の現像ローラを得た。
【0066】
(実施例4)
マイクロゲル分散体Aをマイクロゲル分散体D(S-5004、日本ペイント社製、固形分20質量%)に変更し、添加量を33.1質量部に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例4の現像ローラを得た。
【0067】
(実施例5)
マイクロゲル分散体Aをマイクロゲル分散体E(NAP SERIES、綜研化学社製、固形分10質量%)に変更し、添加量を66.0質量部に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例5の現像ローラを得た。
【0068】
(実施例6)
マイクロゲル分散体Eの添加量を13.2質量部に変更した以外は実施例5と同様にして、実施例6の現像ローラを得た。
【0069】
(実施例7)
マイクロゲル分散体Eの添加量を99.9質量部に変更した以外は実施例5と同様にして、実施例7の現像ローラを得た。
【0070】
(実施例8)
マイクロゲル分散体Eの添加量を132.0質量部に変更した以外は実施例5と同様にして、実施例8の現像ローラを得た。
【0071】
(実施例9)
マイクロゲル分散体AをマイクロゲルMEK分散体F(NAP SERIES、綜研化学社製、固形分10質量%)に変更した以外は実施例5と同様にして、実施例9の現像ローラを得た。
【0072】
(実施例10)
以下の組成での(D)乃至(F)の各成分をフラスコに仕込み、窒素雰囲気下に攪拌しながら120℃に昇温し、30分間保持した後にオクテン酸スズの0.1質量部を加えた。さらに1時間後、80℃に降温してMEKの500.0質量部とジメチロールプロピオン酸の20.0質量部を加え、75℃に5時間保持して反応させた。
(D)プラクセル212(商品名、ダイセル化学工業社製) 122.0質量部
(E)デスモフェン1140(商品名、住化バイエルウレタン社製) 67.0質量部
(F)イソホロンジイソシアネート 166.0質量部
続いて、このプレポリマーの200.0質量部をMEKの100.0質量部で希釈し、よく攪拌しながらトリエチルアミンの4.5質量部と水の400.0質量部とからなる水溶液に徐々に投入した。その後さらに2.0質量部のジエチレンテトラミンを20質量部の水に溶かした水溶液を徐々に投入した。次に油浴上で70℃に1時間保持したのち、減圧蒸留下MEKを留去し、ウレタン水分散体が得られた。
【0073】
水と溶剤とを分離還流させるコンデンサーおよび受け器を備えたフラスコに前記ウレタン水分散体200.0質量部およびトルエンの500.0質量部を投入した。続いて、液面下を窒素を注入しながら100°Cに昇温して水とトルエンを共沸させると同時に冷却液は受け器で分離し、トルエンをフラスコ内に還流させて水を系外に分離除去した。ウレタンマイクロゲルのトルエン分散体G(固形分20%)が得られた。
【0074】
マイクロゲル分散体Aをマイクロゲル分散体Gに変更した以外は実施例2と同様にして、実施例10の現像ローラを得た。
【0075】
(実施例11)
カーボンブラックをColor Black S160(商品名、デグサジャパン社製)に変更した以外は実施例5と同様にして、実施例11の現像ローラを得た。
【0076】
(実施例12)
カーボンブラックをSpecial Black6(商品名、デグサジャパン社製)に変更した以外は実施例5と同様にして、実施例12の現像ローラを得た。
【0077】
(実施例13)
カーボンブラックをSUNBLACKX55(商品名、旭カーボン社製)に変更した以外は実施例5と同様にして、実施例13の現像ローラを得た。
【0078】
(実施例14)
カーボンブラックをSpecial Black350(商品名、デグサジャパン社製)に変更した以外は実施例5と同様にして、実施例14の現像ローラを得た。
【0079】
(実施例15)
カーボンブラックをPrintex L6(商品名、デグサジャパン社製)に変更した以外は実施例5と同様にして、実施例15の現像ローラを得た。
【0080】
(実施例16)
カーボンブラックSUNBLACKX15(商品名、旭カーボン社製)の配合量を3.6質量部に変更した以外は実施例5と同様にして、実施例16の現像ローラを得た。
【0081】
(実施例17)
カーボンブラックSUNBLACKX15(商品名、旭カーボン社製)の配合量を7.5質量部に変更した以外は実施例5と同様にして、実施例17の現像ローラを得た。
【0082】
(実施例18)
カーボンブラックSUNBLACKX15(商品名、旭カーボン社製)の配合量を18.6質量部に変更した以外は実施例5と同様にして、実施例18の現像ローラを得た。
【0083】
(実施例19)
カーボンブラックSUNBLACKX15(商品名、旭カーボン社製)の配合量を21.8質量部に変更した以外は実施例5と同様にして、実施例19の現像ローラを得た。
【0084】
(比較例1)
マイクロゲルを添加しないこと以外は実施例1と同様にして、比較例1の現像ローラを得た。
【0085】
(比較例2)
マイクロゲル分散体Bをマイクロゲル分散体H(S-0597、日本ペイント社製)に変更した以外は実施例2と同様にして、比較例2の現像ローラを得た。
【0086】
(比較例3)
マイクロゲル分散体Bをマイクロゲル分散体I(S-4000、日本ペイント社製)に変更した以外は実施例2と同様にして、比較例3の現像ローラを得た。
【0087】
(比較例4)
マイクロゲルBをNBRゴム粒子J(VP−401、北京化学研究所製)に変更した以外は実施例2と同様にして、比較例4の現像ローラを得た。
【0088】
(比較例5)
マイクロゲルBをSBRゴム粒子K(VP−121、北京化学研究所製)に変更した以外は実施例2と同様にして、比較例5の現像ローラを得た。
【0089】
(比較例6)
マイクロゲルBを微粒子硫酸バリウムBF−21(商品名、堺化学工業社製)に変更した以外は実施例2と同様にして、比較例6の現像ローラを得た。
【0090】
(比較例7)
マイクロゲルBを微粒子酸化チタンTTO−55(商品名、石原産業社製)に変更した以外は実施例2と同様にして、比較例7の現像ローラを得た。
【0091】
以上のようにして得られた実施例1〜19及び比較例1〜7の現像ローラの表面硬度を測定した。
【0092】
ローラ外観を以下の基準で評価した。
A:外観上、光沢の低下および肌荒れが認められない。
B:極軽微な光沢の低下が認められる。
C:顕著な光沢の低下や肌荒れが認められる。
【0093】
また得られた各塗料を密閉ガラス瓶中で20℃、2日間静置した後、安定性を以下の基準で評価した。
A:ガラス瓶底部に沈降成分が認められない。
B:ガラス瓶底部に沈降成分が認められるが、撹拌により容易に消失する。
C:ガラス瓶底部に沈降成分が認められ、撹拌しても消失しない。
【0094】
連続通電時の抵抗上昇(通電劣化)の測定は次のように行った。20℃、40%RH環境下にて、図5に示す抵抗測定機を用いて、1kgf荷重(芯金両端各500gf荷重)で圧接し、ローラ回転数60rpmにて100V印加、1時間通電したとき、(通電後の抵抗値/初期の抵抗値)を通電劣化の指標とした。通電劣化の目安としては2.00以下が好ましく、1.50以下がより好ましい。
【0095】
次に得られた現像ローラについて、画像耐久性の評価を行った。画像耐久性の評価は、図3のような構成を有するキヤノン製レーザービームプリンタ(商品名:LBP5500)の改造機に本実施例及び比較例の現像ローラを装填し、評価を行った。画像耐久性の評価としては、フィルミング量、ゴーストの評価を行った。
【0096】
まず、気温23℃、相対湿度55%RHの環境下、非磁性一成分ブラックトナーで印字率2%にて10000枚連続印刷した。その後、画像パターンとして、1枚内で先端部に15mm角のベタ黒、その後全面ハーフトーンの画像を印字し、ハーフトーン部分に現れる現像ローラ周期の濃度ムラを目視評価し、ゴーストを以下の基準で評価した。
A:ゴーストが全く認められない。
B:極軽微なゴーストが認められる。
C:顕著なゴーストが認められる。
【0097】
さらに画像耐久試験後の現像ローラを取り出し、表面のトナーを除去し、光学顕微鏡にて現像ローラ表面のフィルミング状態を観察し、以下の基準でフィルミングを評価した。
A:ローラ表面にフィルミングが全く認められない。
B:ローラ表面に極軽微なフィルミングが認められる。
C:ローラ表面に顕著なフィルミングが認められる。
【0098】
以上の結果を表1〜3に示す。
【0099】
【表1】

【0100】
【表2】

【0101】
【表3】

【0102】
実施例1〜19では、個数平均粒子径が60nm以上100nm以下であり、かつメタクリル酸メチル、スチレン、ウレタンのうち少なくとも1種からなる骨格を有するマイクロゲルを表面層中に含有している。そのため、現像ローラの導電性と耐通電劣化性、柔軟性に優れる高品質の現像ローラとなっている。また特に水酸基を含有しないアクリル樹脂を含む実施例7〜9の現像ローラは柔軟性と他の品質を高い次元で両立している。
【0103】
それに対しマイクロゲルを含有しない比較例1や、個数平均粒子径が100nmを超える比較例3、ゴムや無機化合物微粉体を含有する比較例4〜7は、通電後の抵抗増大が認められる(通電劣化が大きい)。またマイクロゲルの粒子径が50nm未満である比較例2、及び比較例4〜7は塗料が経時で分離沈降したり、粒子成分の凝集などが認められた。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明の現像ローラの一例を示す概念図である。
【図2】本発明の現像ローラの一例の断面を示す概念図である。
【図3】本発明の電子写真用画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【図4】液循環型浸漬塗工装置の一例を示す概念図である。
【図5】抵抗測定の一例を示す概念図である。
【図6】本発明のプロセスカートリッジの一例を示す概略構成図である。
【図7】本発明の現像ローラの表面層のカーボンブラック粒子の面積相当径を求める説明図である。
【図8】本発明の現像ローラの表面層のカーボンブラック粒子の面積相当径を求める説明図である。
【符号の説明】
【0105】
1:現像ローラ
2:導電性軸芯体
3:樹脂層
4:表面層
5:感光体
6:クリーニング部材
7:トナー供給ローラ
8:トナー
9:規制ブレード
10:現像装置
11:レーザー光
12:帯電部材
13:クリーニング装置
14:クリーニング用帯電装置
15:定着装置
16:駆動ローラ
17:転写ローラ
18:バイアス電源
19:テンションローラー
20:転写搬送ベルト
21:従動ローラ
22:紙
23:給紙ローラ
24:吸着ローラ
25:浸漬槽
26:液送ポンプ
27:撹拌タンク
28:昇降装置
29:基準抵抗
30:金属ドラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯体の外周面に樹脂層を有し、該樹脂層の外周面に表面層を有する現像ローラにおいて、該表面層が下記a)、b)およびc)を含有することを特徴とする現像ローラ。
a) バインダー樹脂成分
b) 導電性微粒子
c) 個数平均粒子径が60nm以上100nm以下であり、かつメタクリル酸メチル、スチレン、ウレタンのうち少なくとも1種からなる骨格を有するマイクロゲル
【請求項2】
該マイクロゲルのガラス転移温度が10℃以上60℃以下であることを特徴とする請求項1記載の現像ローラ。
【請求項3】
該マイクロゲルの含有量が該表面層に対して5.0質量部以上15.0質量部以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の現像ローラ。
【請求項4】
該マイクロゲルが該バインダー樹脂成分と化学結合していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の現像ローラ。
【請求項5】
該マイクロゲルのメチルエチルケトンまたはトルエンに対する膨潤率が5.0%以上25.0%以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の現像ローラ。
【請求項6】
該マイクロゲルの個数基準における粒度分布の変動係数Cが、C≦1.4%(但し、C=(Sw/D)×100で表され、Swは粒子の個数基準粒径分布における標準偏差を示し、Dは粒子の個数平均粒径(μm)を示す。)であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の現像ローラ。
【請求項7】
該導電性微粒子が一次粒子径18nm以上25nm以下、かつDBP吸油量が77ml/100g以上160ml/100g以下のカーボンブラックであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の現像ローラ。
【請求項8】
該導電性微粒子の含有率が該バインダー樹脂成分に対して10質量%以上25質量%以下であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の現像ローラ。
【請求項9】
芯体の外周面に樹脂層を有し、該樹脂層の外周面に表面層を有する現像ローラの製造方法において、
該表面層が導電性微粒子を分散混合させた樹脂溶液に、マイクロゲルの有機溶媒分散体を混合せしめた後、該樹脂層の表面に塗布して形成することを特徴とする現像ローラの製造方法。
【請求項10】
トナーを収容する容器と、トナーを担持するための現像ローラとを有し、潜像を担持する感光体にトナーを付与することにより潜像を可視化するための現像装置において、
該現像ローラが請求項1乃至8のいずれかに記載の現像ローラであることを特徴とする現像装置。
【請求項11】
少なくとも現像ローラが装着されてなり、電子写真用画像形成装置に着脱可能なプロセスカートリッジにおいて、
該現像ローラとして請求項1乃至8のいずれかに記載の現像ローラを用いることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項12】
潜像を担持する感光体に対向した状態でトナーを担持する現像ローラを備え、該現像ローラが前記感光体にトナーを付与することにより該潜像を現像する電子写真用画像形成装置において、
請求項1乃至8のいずれかに記載の現像ローラを具備することを特徴とする電子写真用画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−122352(P2010−122352A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−294329(P2008−294329)
【出願日】平成20年11月18日(2008.11.18)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】