説明

現像ローラ、現像装置および画像形成装置

【課題】NBRをベースとし、カーボンブラック添加により導電性を付与された弾性層を持つ現像ローラにおいて、低硬度かつ低抵抗で、感光体の汚染を発生させず、画像濃淡ムラや濃度低下がなく電子写真装置の高速化、画質の高品位化に対応出来る現像ローラを提供することにある。
【解決手段】該軸芯体の外周面に順次、弾性層、被覆層が形成された現像ローラとする際に、前記弾性層の主成分となるゴムとして、アクリロニトリル量31〜60質量%のNBRを使用し、DBP吸油量が80〜140ml/100gであるカーボンブラックと、質量平均分子量が2000〜12000の範囲にあるポリエステル系可塑剤が含有され、規定の範囲に選択されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンターあるいはファクシミリの受信装置など、電子写真方式を採用した装置に組み込まれる感光体に接触させて使用される現像ローラ、これを用いた現像装置、および画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複写機やファクシミリ、プリンター等の電子写真装置には、感光体を帯電させたり、静電潜像を顕像化するため、その目的にあった導電性(電気抵抗)を有する弾性ローラが一般に用いられている。
一成分現像方式の電子写真装置では、互いに圧接、または近接されている現像ローラから感光体(ドラム)へ現像剤(トナー)を移動させて静電潜像を顕像化し、現像が成される。このような電子写真装置に用いられる現像ローラは感光体と所定の接触幅をもって圧接、または近接したり、ブレード等によって薄層化された現像剤を担持するため、変形しやすく、かつ変形回復性に優れる必要がある。さらに、これらの現像ローラには画像ムラを発生させないために適度かつ均一な導電性を有することが要求される。
【0003】
これらの要求を満たすため、従来から、本発明に係る現像ローラには、導電性を付与したゴム材料からなる弾性体層を軸芯体の外周に形成したものなどが使用されている。現像ローラの弾性体層は、接触現像においては、感光体に対して所定の接触幅をもって圧接する必要があり、変形しやすく、同時に変形回復性(セット回復性)にも優れ、かつ半導電領域といわれる電気抵抗特性が求められる。良好な感光体表面への追従性を得るために低硬度化すると、感光体の汚染を発生させる場合がある。
【0004】
導電性を付与させる手段としては、導電性フィラー、具体的にはカーボンブラックを用いることがある。その場合、カーボンブラックの分散性制御が難しく、抵抗特性の安定性(環境依存性、電圧依存性)を十分に得ることが難しい。電子写真プロセスでは、画像の高画質化やフルカラー化に伴い、画像を形成する現像剤は粒径が微細化し、現像ローラの抵抗特性が非常にバラツキの小さいものが要求されている。例えば、柔軟でセット性に優れるシリコーンゴムを弾性体層に用いた現像ローラがあげられる。しかしながら、シリコーンゴム自体が比較的高価な材料である。
【0005】
さらには、外周に設ける被膜層との接着性を持たせるために、中間に接着層を設けたり、シリコーンゴム表面を処理する等の対応が必要であるため、現像ローラとしても相対的に高価なものである。よって、従来より安価な現像ローラの提供が望まれていた。現像ローラに用いられるゴム材料は多種多様に渡り検討されており、その目的に応じて使い分けられている。その中で、比較的安価であるアクリロニトリルブタジエンゴム(以下NBRと略記する)を使用する方法がある。
【0006】
従来、NBRで弾性層を形成した現像ローラ、また、NBR弾性層の外周面に被覆層を形成した現像ローラが検討されてきている。その中で、NBRは比較的硬度が高く、現像ローラとしての高度な機能を達成するために、低硬度化、感光体汚染の低減(抑制)、カーボンブラックの分散制御等の問題に対し、様々な試みがなされている。
【0007】
カーボンブラックを添加して抵抗を調整する場合には、均一な分散が難しく、また添加量によっては硬度上昇する問題があげられている。
【0008】
これに対し、例えば、誘電体層(弾性層に相当)の材質がNBRを主体としたものである現像剤担持体(現像ローラ)が開示されている。
【0009】
カーボンブラックのような配合剤を添加せずに、アクリロニトリルの含有量により誘電率を大幅に調整することが可能であり、弾性を高く保ち感光体の形態に合せて容易に現像剤担持体を弾性変形させ、適切な現像ニップ幅を確実に得ることが可能としている。(特許文献1)
また、NBR等に伝導性高分子物質を添加し、架橋剤としてパーオキサイドを利用することその伝導性高分子物質が三次元の網目構造を有することにより、抵抗の均一化、および低抵抗特性を維持、かつ弾性特性を保持する現像ローラが開示されている。(特許文献2)
また、カーボンブラックを添加した際の硬度上昇への対応として、NBRをベースとしカーボンブラック添加された弾性層を、ゴムのブレンドや発泡により低硬度化する検討されてきている。
例えば、NBRのようなエチレン性不飽和ニトリル−共役ジエン系の固体ゴムと、液状NBRのようなエチレン性不飽和ニトリル−共役ジエン系の液状ゴムとをブレンドすることにより、低硬度化かつ感光体汚染防止された半導電性ゴムロールが開示されている。(特許文献3)
また、弾性層をJIS−A硬度5〜25度の発泡体とすることで、感光体(ドラム)との適切なニップ幅を得易く、感光体の汚染も生じない現像ローラが開示されている。(特許文献4)
しかしながら、これらの現像ローラにおいては、添加されるカーボンブラックに関しては、特に検討されていない。
【特許文献1】特開昭62−143074公報
【特許文献2】特開2003−263021公報
【特許文献3】特登録3646754公報
【特許文献4】特開2000−242074公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
近年、電子写真装置に使用される現像ローラの要求性能は、電子写真装置の高速化、画質の高品位化に伴って、より高度なものとなってきており、さらなる向上が一層求められている。また、同時に低コストで安定した性能を有するものが求められている。
【0011】
特に、接触現像において感光体に対して所定の接触幅(ニップ巾)を得るための低硬度かつゴム弾性を持ち、半導電領域といわれる電気抵抗特性を合せ持つことが必要である。特に、その弾性層にNBRを用いた場合には、その弾性層に含まれる成分が、現像ローラ表面にブリードし難く、感光体の汚染を発生させないことが求められる。
【0012】
本発明はこのような現像ローラにおける課題を解決することを目的とするものである。特に、本発明の目的は、NBRをベースとし、カーボンブラック添加により導電性を付与された弾性層を持つ現像ローラにおいて、低硬度かつ低抵抗で、感光体の汚染を発生させず、画像濃淡ムラや濃度低下がなく電子写真装置の高速化、画質の高品位化に対応出来る現像ローラを得ることにある。
なお、現像ローラとは、電子写真方式による静電潜像を形成するための潜像担持体と、現像剤を薄膜状に担持しつつ該潜像担持体の表面に対向して当接もしくは圧接した状態で、前記現像剤を該潜像担持体に形成された静電潜像に供給して該静電潜像を現像するための弾性ローラである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、鋭意研究・検討を進めた。
【0014】
本発明に従えば、比較的で安価であるNBRをベースとし、カーボンブラック添加により導電性を付与された弾性層を用いた現像ローラでありながら、低硬度と低抵抗の性能を両立させ、かつブリード(オイルの移行)を抑え、感光体の汚染を防ぐことが出来る。
【0015】
本発明の現像ローラは、前記弾性層の主成分となるゴムとして、アクリロニトリル量31質量%以上、60質量%以下のNBRを使用し、DBP吸油量が80ml/100g以上、140ml/100g以下であるカーボンブラックと、質量平均分子量が2000以上、12000以下の範囲にあるポリエステル系可塑剤が含有されることを特徴とする。ここでDBPとはジブチルフタレートのことを示す。
【0016】
上記のようなアクリロニトリル含量31質量%以上60質量%以下のNBRとポリエステル系可塑剤の組合せの場合、所望とする低硬度と低抵抗を両立させ易くなる。しかしながら、アクリロニトリル含量が相対的に多くなると、電気抵抗の環境依存性が高くなっていく傾向があるため、カーボンブラックによる導電性付与を行い、さらにはその抵抗安定性を高める必要がある。上記のように導電性を付与するためにカーボンブラックを使用することにより、必要以上にゴム硬度を上げることなく、添加量を多くすることが可能であり、電気抵抗の環境依存性を低く抑えることが可能である。また、低硬度化のために添加されるポリエステル系可塑剤は、分子量が大きい方がブリードし難いが、同時に軟化作用も小さくなる。単純に添加量を増やすとブリードし易くなると共に高抵抗化する懸念がある。カーボンブラックを添加することにより、可塑剤のブリードを抑制し、かつ抵抗を低くすることが出来る。特に、上記のようなカーボンブラックは添加量が多めに出来るためにその効果が高い。
【0017】
ポリエステル系可塑剤のブリードを防ぐ作用は、使用するカーボンブラックのDBP吸油量(D)と、カーボンブラックの添加部数(Fc)の積と相関があり、上記のようにカーボンブラックを用いた場合には、硬度の上がり幅(補強性)に対して、ブリード低減の作用が大きくなる。すなわち、数式(1)の関係を満たすことにより、低硬度と低抵抗の両立と、ブリード低減を特徴とする。
【0018】
0.010 ≦ Fp / (Fc × D) ≦ 0.025 ・・・数式(1)
D:該弾性層中のカーボンブラックのDBP吸油量(ml/100g)
Fc:該弾性層中のゴム成分に対する、カーボンブラックの添加部数(質量部)
Fp:該弾性層中のゴム成分に対する、ポリエステル系可塑剤の添加部数(質量部)
さらには、Fp/(Fc×D)の値は、0.010以上、0.020以下であることが好ましい。
また、本発明の現像ローラは、前記弾性層の該NBRのアクリロニトリル量が36質量%以上、55質量%以下であることがより好ましい。
【0019】
また、本発明の現像ローラの前記弾性層に用いられる該ポリエステル系可塑剤としては、質量平均分子量が2000以上、12000以下の範囲にあることを特徴とするが、質量平均分子量が3500以上、10000以下であることがより好ましい。また、比較的高分子量化し易いアジピン酸エステル、アゼライン酸エステル、セバチン酸エステルであることがより好ましい。すなわち、ポリエステル系可塑剤を縮合する多塩基酸成分の原料として、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸を用いることを指し、
具体的には、化学式(1)〜化学式(3)の一つ以上の構造単位を含有することを特徴とすることが好ましい。
−CO−(CH24−CO− 化学式(1)
−CO−(CH27−CO− 化学式(2)
−CO−(CH28−CO− 化学式(3)
また、本発明の現像ローラの弾性層のゴムが、硫黄により架橋されていることが好ましい。硫黄架橋である場合、生産方法に制限が少なく、より安価で安定した生産方法を選択することが出来る。
また、本発明の現像ローラの弾性層のゴムに含まれるカーボンブラックが、数式(2)を満たすことが好ましい。
【0020】
0.005 ≦ D/N ≦ 0.014 ・・・数式(2)
D:該弾性層中のカーボンブラックのDBP吸油量(ml/100g)
N:該弾性層中のカーボンブラックの窒素比表面積(m2/g)
上記のカーボンブラックを用いることにより、良好な分散状態が得易く、かつ弾性層の硬度を必要以上に高くすることなく、ゴムに導電性を付与し易い。
さらには、D/Nの値は、0.010以上、0.014以下であることがより好ましい。
【0021】
また、本発明の現像ローラの被覆層は、架橋系ゴムであることが好ましく、特に架橋系ウレタンゴムであり、かつ該架橋系ウレタンゴムの25℃のトルエンによる膨潤度が150%以上、300%以下の範囲であることがより好ましい。本発明では、弾性層中に含まれる可塑剤等のブリードを抑制しているが使用環境によっては十分でなく、架橋系ゴムによる被膜層により、移行をより防ぐことが出来る。特に、ウレタンゴムを使用した場合には薄膜形成性、変形追従性、帯電付与性などの面から好ましい。また、該架橋系ウレタンゴムである場合にトルエンによる膨潤度を上記の範囲とすることで、ウレタンゴムの結晶化を促し、より安定したブリード抑制が得られる。
【0022】
また、本発明の現像装置においては、上記の現像ローラを備えることにより、画像濃淡ムラや濃度低下がなく電子写真装置の高速化、画質の高品位化に対応出来る現像装置となる。
【0023】
本発明者らは、上記の知見の通り、低硬度かつ低抵抗で、感光体の汚染を発生させない現像ローラ、そして、現像ローラとして使用した際に、画像濃淡ムラや濃度低下がなく電子写真装置の高速化、画質の高品位化に対応出来得る現像装置を見出し、本発明を完成するに至った。
【0024】
すなわち、本発明の現像ローラは、軸芯体と、該軸芯体の外周面に順次、弾性層、被覆層が形成された現像ローラであって、該弾性層がアクリロニトリル量31質量%以上、60質量%以下のNBR80質量%以上、100質量%以下を含むゴムからなり、該弾性層にカーボンブラックをゴム成分100質量部に対し10質量部以上、80質量部以下を含有し、単離した該カーボンブラックのDBP吸油量が80ml/100g以上、140ml/100g以下であり、該弾性層にポリエステル系可塑剤をゴム成分100質量部に対し20質量部以上、90質量部以下を含有し、抽出したポリエステル系可塑剤の質量平均分子量が2000以上、12000以下の範囲にあり、かつ数式(1)を満たすことを特徴とする現像ローラである。
【0025】
0.010 ≦ Fp / (Fc × D) ≦ 0.025 ・・・数式(1)
D:該弾性層中のカーボンブラックのDBP吸油量(ml/100g)
Fc:該弾性層中のゴム成分に対する、カーボンブラックの添加部数(質量部)
Fp:該弾性層中のゴム成分に対する、ポリエステル可塑剤の添加部数(質量部)
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、NBRをベースとし、カーボンブラック添加により導電性を付与された弾性層を持つ現像ローラにおいて、低硬度かつ低抵抗で、感光体の汚染を発生させず、画像濃淡ムラや濃度低下がなく電子写真装置の高速化、画質の高品位化に対応出来る現像ローラを得られる。
また、本発明の現像ローラを用いた現像装置において、感光体の汚染を発生させず、画像濃淡ムラや濃度低下がなく、高速化された電子写真装置においても、高品位化な画像を得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下に、本発明をより詳細に説明する。
【0028】
図1と図2に、本発明の現像ローラに関する構造の一例を模式的に図示する。図1、2に例示の現像ローラ1は、中心に軸芯体として、通常、金属などの導電性材料で形成される軸芯金11を有し、ローラ層として、軸芯金11の外周面上に弾性体層(基層)12が固定され、この弾性体層12の外周面に被覆層(表層)13を積層した構造を有する。ここでは、上記のような軸芯体の外周面に二層で構成されてなる現像ローラで説明する。
【0029】
軸芯体11としては、円柱状または中空円筒状の形状を有し、金属などの導電性材料で形成される軸芯体を用いることができる。また、かかる現像ローラが電気的なバイアスを印加して、あるいは、接地されて、使用される場合であっても、軸芯体全体を導電性材料で構成する代わりに、主体は、非導電性材料で形成し、その表面に所望の導電性を満足する導電性処理、例えば、良導性の被覆層による被覆を施した構造のものを用いることもできる。
【0030】
電子写真装置に利用される現像ローラは、電気的なバイアスを印加して、または、接地されて、使用されるのが一般的であるので、軸芯体を導電性の基体、所謂軸芯金11の形態とする。例えば、現像ローラでは、軸芯金11は、支持部材であることは勿論であるが、現像部材の電極として機能するものであり、例えば、アルミニウム,銅合金,ステンレス鋼等の金属または合金、あるいは、クロム,ニッケル等で鍍金処理を施した鉄、合成樹脂など、少なくともその外周面は、その上に形成されるゴム等の弾性層に所定の電圧を印加するに十分な導電性の材質で構成する。電子写真装置に利用される現像ローラにおいては、軸芯体である導電性基体の外径は、通常4〜10mmの範囲とされる。
【0031】
基層となる弾性体層12は柔軟性を有するものであり、原料主成分としてゴムを用いた成型体として形成したものを用いることができる。弾性体層12の原料主成分のゴムとしては、アクリロニトリル量31質量%以上、60質量%以下のNBRを用いる。アクリロニトリル量31質量%未満では、本発明のカーボンブラックを用いた場合に十分な導電性を得られず高抵抗となるか、安定した抵抗均一性が得られない。また、アクリロニトリル量60質量%を超えるものは、NBR自体のゴムとしての性能が不十分でなくなると共に、入手することが難しく、生産性などを含めてあまり実用的でない。より好ましくは、アクリロニトリル量が36〜55質量%の範囲である。この範囲である場合、弾性層の硬度を必要以上に上げることなく、所望の導電性を安定して得ることが出来る。
上記アクリロニトリル量31〜60質量%のNBRは主成分であり本発明における必須成分であり、ゴム成分に対して、80質量%以上、100質量%以下含有されている。ゴム成分とは、原料ゴムを指し、ゴム成型体とする際に利用される各種添加剤成分、例えば、架橋剤、触媒、分散促進剤など、各種の添加剤は含まない。つまり、アクリロニトリル量31〜60質量%のNBR以外に、他のゴムを0質量%以上、20質量%以下の範囲でブレンドすることが出来る。ブレンドするゴムとしては、特に制限はないが、ブレンド時の相容性などを考慮する必要はある。また、ブレンドすることが出来るゴムは、必要に応じて2種以上を組み合わせて用いてもよい。ブレンドするゴムとしては、例えば、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、シリコーンゴム、エピクロロヒドリンゴム、NBRの水素化物、多硫化ゴム、ウレタンゴム等のゴム材料から選択して用いることができる。
上記のゴム材料に、すなわち、アクリロニトリル量31〜60質量%のNBRを80質量%以上、100質量%以下含むゴムに、種々の添加剤などを必要に応じて配合して弾性体層を成形することができる。添加剤としては、現像ローラの用途に合せて、弾性体層自体に要求される機能に必要な成分、例えば、導電剤、非導電性充填剤など、また、ゴム成型体とする際に利用される各種添加剤成分を用いる。各種添加成分は例えば、架橋剤、触媒、分散促進剤など、各種の添加剤を主成分のゴム材料に適宜配合することができる。これらの添加量も、目的とする用途において要求される特性などに応じて選択することができる。
【0032】
弾性体層に導電性を付与する目的に添加する、導電剤としては、カーボンブラックを必須成分とする。該弾性層から単離した該カーボンブラックのDBP吸油量が80ml/100g以上、140ml/100g以下となるカーボンブラックをゴム成分100質量部に対し10質量部以上、80質量部以下含有している。また、カーボンブラックのDBP吸油量、添加部数は、前述した数式(1)の関係を満たしている。
カーボンブラックのDBP吸油量は、カーボンブラック100g当たりのDBPの吸収量を示しており、カーボンブラックのストラクチャーの大小を判断する指標の1つである。カーボンブラックのストラクチャーはカーボンブラックの単位粒子が鎖状に連係してできるものであって、その大きさがカーボンブラックの電気伝導性を左右する。なお、本発明において、DBP吸油量は、JISK6217−4の規定に従って測定したものである。
該カーボンブラックのDBP吸油量が80ml/100g未満では、所望の導電性を得るために添加する量が多くなり必要以上の弾性層の硬度が高くなると共に、ゴム成分(アクリロニトリル量31〜60質量%のNBRを80〜100質量%含むゴム)中に均一に分散することが難しい。また140ml/100gを超える場合には、少ない添加量で所望の導電性が得られ易いが、カーボンブラック自体の添加量が少ないために抵抗安定性を得られ難くなると同時に、後述するポリエステル系可塑剤のブリードを十分に抑制出来ない。
【0033】
本発明に用いられるカーボンブラックは前記特性を備えるものであれば、市販品であっても、市販品を処理したものであっても、あるいは新規に製造されたものであっても、特に制限されない。例えば、オイルファーネスブラック、ガスファーネスブラック、チャンネルタイプのカーボンブラック、これらのカーボンブラックに対し酸化処理を施したもの等を挙げることができる。
また、前記カーボンブラックの添加量としては、前記弾性層を形成するゴム成分100質量部に対して、10質量部以上、80質量部以下であることが必要である。10質量部未満では、十分かつ安定した導電性を付与出来ず、80質量部を超える場合には、所望とするゴム弾性が得られなくなる。カーボンブラックの添加量として好ましい範囲としては、20〜60質量部である。この範囲では、必要以上に弾性層の硬度が上げることなく、所望の導電性を得ると同時に、後述するポリエステル系可塑剤のブリードを抑制し易い。
また、本発明の弾性層のゴムに含まれるカーボンブラックは、数式(2)を満たすことが好ましい。
【0034】
0.005 ≦ D/N ≦ 0.014 ・・・数式(2)
D:該弾性層中のカーボンブラックのDBP吸油量(mg/100g)
N:該弾性層中のカーボンブラックの窒素比表面積(m2/g)
窒素比表面積は、1g当たりに吸着する窒素量を示しており、カーボンブラックの比表面積、言い換えれば粒径に関係する数値である。DBP吸油量/窒素比表面積の比は、カーボンブラックの表面積当たりの吸油量を示し、ストラクチャーの発達度合いを示す指標であり、この比が大きいほど、ゴムの補強効果が大きく、またゴムの導電性を高める。なお、本発明において、DBP吸油量は、JISK6217−2の規定に従って測定したものである。
【0035】
ここで、本発明に用いられるカーボンブラックのDBP吸油量/窒素比表面積の比(D/N)が上記範囲にある場合には、弾性層の硬度を必要以上に高くすることなく、ゴムに導電性を付与することが可能である。数式(2)の項 D/Nが0.005ml/m2以上の場合には、弾性層中に均一にかつ十分に分散させることできる。数式(2)の項 D/Nが0.014ml/m2以下の場合には、補強性が適当で、弾性層の硬度を低く保つことができる。
導電性を付与し易い点では、D/Nの値は、0.010以上、0.014以下であることがより好ましい。この範囲であれば、低抵抗の現像ローラを得られ易くなる。
【0036】
本発明に用いられるカーボンブラックの平均粒径は、特に制限はないが、NBRへの分散性と導電付与性の点から、DBP吸油量/窒素比表面積比により制限される。
【0037】
導電剤としては、上記カーボンブラックの他に、グラファイト、アルミニウム、銅、錫、ステンレス鋼などの各種導電性金属、または合金、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化チタン、酸化錫―酸化アンチモン固溶体、酸化錫―酸化インジウム固溶体などの各種導電性金属酸化物、これらの導電性材料で被覆された絶縁性物質などの微粉末を用いることができるが、カーボンブラック単独の使用でも特に問題はない。
【0038】
主成分のゴム材料中に、カーボンブラックなどの微粉末状の導電剤を分散させる手段としては、従来から利用される手段、例えば、ロールニーダー、バンバリーミキサー、ボールミル、サンドグラインダー、ペイントシェーカーなどを、主成分のゴム材料に応じて適宜利用すればよい。
【0039】
その他、弾性体層に導電性を付与する手段として、導電剤とともに、導電性高分子化合物を添加する手法も利用できる。例えば、導電性高分子化合物としては、ホストポリマーとして、ポリアセチレン、ポリ(p−フェニレン)、ポリピロール、ポリチオフェニン、ポリ(p−フェニレンオキシド)、ポリ(p−フェニレンスルフィド)、ポリ(p−フェレンビニレン)、ポリ(2,6−ジメチルフェニレンオキサイド)、ポリ(ビスフェノールAカーボネート)、ポリビニルカルバゾール、ポリジアセチレン、ポリ(N−メチル−4−ビニルピリジン)、ポリアニリン、ポリキノリン、ポリ(フェニレンエーテルスルフォン)などを使用し、これらにドーパントして、AsF5、I2、Br2、SO3、Na、K、ClO4、FeCl3、F、Cl、Br、I、Kr等の各イオン、Li、TCNQ(7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン)等をドープしたものが利用できる。しかしながら、これらの化合物は比較的高価であり、必要以上に使用することはない。
【0040】
弾性体層に硬度を調整する目的で添加する可塑剤は、NBRとの相容性の点からポリエステル系に限定される。
【0041】
本発明におけるポリエステル系可塑剤としては、多塩基酸成分と多価アルコール成分とを、必要に応じて末端停止成分として、一価アルコール類および/または一塩基酸を用いて、縮合させることにより製造されるものがあげられる。
ポリエステル系可塑剤の一般的な主鎖構造は、例えば化学式(4)となる。
【0042】
−(CO−A−CO−O−B−O)n− 化学式(4)
ここでは、多塩基酸成分の例として二塩基酸(HOOC−A−COOH)と、多価アルコール成分の例として二価アルコール(HO−B−OH)をモデル的に示している。
【0043】
また、末端停止成分としてアルコールを用いた場合、一般的な構造式は、例えば化学式(5)となる。RO−(CO−A−CO−O−B−O)n−CO−A−CO−OR 化学式(5)
ここでは、一価アルコール(R−OH)として示している。
上記多塩基酸成分としては、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジカルボン酸等の脂肪族二塩基酸を主成分とするものがあげられ、この他に、少割合の、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族多塩基酸、あるいは、ブタントリカルボン酸、トリカルバリル酸、クエン酸等の脂肪族多塩基酸等を用いることもできる。
【0044】
上記多価アルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール等の脂肪族グリコールを主成分とするものがあげられ、その他、小割合のグリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールを用いることもできる。
【0045】
また、上記末端停止成分としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、第二ブタノール、イソブタノール、ヘキサノール、イソヘキサノール、ヘプタノール、イソヘプタノール、オクタノール、イソオクタノール、2−エチルヘキサノール、イソノニルアルコール、イソデカノール、イソウンデカノール、イソトリデシルアルコール、ベンジルアルコール等の脂肪族一価アルコール及び酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、オクチル酸、2−エチルヘキシル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸等の脂肪族一塩基酸があげられる。
【0046】
上記ポリエステル系可塑剤の製造の際に用いられる上記各成分の比は、用いる成分の種類及び目的とするポリエステル系可塑剤の特性、分子量等により変化するが、一般には、多価カルボン酸成分10〜80質量%、多価アルコール成分10〜80質量%、末端停止成分0〜50質量%の比率で用いられる。
【0047】
上記にあげたポリエステル系可塑剤の中でも、化学式(1)〜化学式(3)の一つ以上の構造単位を含有するものが、比較的分子量を大きくし易い点より好ましい。
本発明における“構造単位”とは、多塩基酸成分(例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジカルボン酸等の脂肪族二塩基酸)由来の構成単位である。
例えば、上述の化学式(4)、化学式(5)における、−CO−A−CO−の部分が相当する。
化学式(1)、化学式(2)、化学式(3)を持つ可塑剤の例としては、アジピン酸と1,4−ブタンジオールを縮合しオクタノ−ルで末端停止したもの、アジピン酸と1,4−ブタンジオールを縮合しイソノニルアルコールで末端停止したもの、アゼライン酸と1,5−ペンタンジオールを縮合しオクタノ−ルで末端停止したもの、セバシン酸と1,4−ブタンジオールを縮合しブチルで末端停止したもの等があり、市販されている製品の中から本発明に合ったものを選択することも可能である。
本発明における抽出したポリエステル系可塑剤の質量平均分子量は2000以上、12000以下の範囲である。質量平均分子量が2000未満では、ブリードし易く、感光体の汚染等への懸念が大きくなる。質量平均分子量が12000を超えるものでは、可塑剤としての効果を得るのに添加量と増やす必要があり、弾性層の硬度を柔軟化することが難しい。さらには、質量平均分子量が3500以上、10000以下の範囲にあることが好ましい。この範囲では、弾性層の硬度を柔軟化させ、所望の導電性を得ると同時に、前述のNBR、カーボンブラックとの組合せにより、ポリエステル系可塑剤のブリードを抑制し易くすることが出来る。
本発明におけるポリエステル系可塑剤は、ゴム成分100質量部に対し20質量部以上、90質量部以下を含有する。ゴム成分100質量部に対し20質量部未満である場合には、添加による効果を安定して得ることが難しい。逆にゴム成分100質量部に対し90質量部を超える場合には、本発明の創意工夫を用いた場合にも、ポリエステル系可塑剤のブリードによる問題を解消することが難しい。
本発明におけるカーボンブラックのDBP吸油量、添加部数、およびポリエステル系可塑剤の添加部数は、数式(1)の関係を満たしている。
【0048】
0.010 ≦ Fp / (Fc × D) ≦ 0.025 ・・・数式(1)
D:該弾性層中のカーボンブラックのDBP吸油量(ml/100g)
Fc:該弾性層中のゴム成分に対する、カーボンブラックの添加部数(質量部)
Fp:該弾性層中のゴム成分に対する、ポリエステル系可塑剤の添加部数(質量部)
数式(1)を満たさない場合は以下の不具合ある。数式(1)中の項 Fp/(Fc×D)の値が0.010未満では、カーボンブラック添加量が、ポリエステル系可塑剤の添加量に対して相対的に多くなり、弾性層が硬くなり十分な弾性を示さなくなる。数式(1)中の項 Fp/(Fc×D)の値が0.025超える場合には、ポリエステル系可塑剤の添加量が、カーボンブラック添加量に対して相対的に多くなり、ブリードし易く、感光体の汚染等を完全に防ぐことが難しい。
所望する硬度に合せ、ポリエステル系可塑剤の添加部数を調整すればよいが、ブリード低減の作用の点からすると、Fp/(Fc×D)の値は、0.010以上、0.020以下であることが好ましい。
この範囲であれば、よりブリード低減の効果を得られ易くなる。
【0049】
ゴム成型体中に添加可能な非導電性充填剤としては、珪藻土、石英粉末、乾式シリカ、湿式シリカ、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミノケイ酸、炭酸カルシウム等を挙げることができる。
【0050】
本発明のNBR、またはそのゴム組成物から得られる加硫物は、通常の場合、一般のゴムを加硫するときと同様に、未加硫の配合ゴムを一度調製し、次いでこの配合ゴムを意図する形状に成形したのち、加硫を行うことにより製造される。ここで、加硫剤としては、有機過酸化物、硫黄、硫黄化合物、含硫黄有機加硫剤、トリアジン系化合物などが用いられるが、特に硫黄、硫黄化合物の使用が好ましい。
上記有機過酸化物としては、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジ−メチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジ−メチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシ−イソプロピル)ベンゼン、t−ブチルパーオキシ−イソプロピルカーボネート、アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、イソブチルパーオキサイド、ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−アリルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、ジ(メトキシイソプロピル)パーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、t−ヘキシルパーオキシネオヘキサネート、ジ(3−メチル−3−メチロキシブチル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカネート、t−ヘキシルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシネオヘキサネート、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、3,3,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、クミルパーオキシオクテート、アセチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ(2−エチルヘキサネート)、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、t−ブチルパーオキシマレイックアシッド、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシ3,3,5−トリメチルヘキサネート、シクロヘキサノンパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアリルカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、ジ−t−ブチルジパーオキシイソフタレート、メチルエチルケトンパーオキサイド、α,α′−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ヘキサン、ジ−イソプロピルベンゼン−ヒドロパーオキサイド、p−メンタンヒドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイドなどが挙げられる。
また、硫黄系加硫剤(硫黄・硫黄化合物)としては、粉末硫黄、硫黄華、高分散性硫黄、不溶性硫黄、沈降硫黄、表面処理硫黄、コロイド硫黄、塩化硫黄、一塩化硫黄、二塩化硫黄などが挙げられる。また、含硫黄有機加硫剤としては、モルホリンジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィド類、チウラムジスルフィド、N,N′−ジチオ−ビス(ヘキサヒドロ−2H−アゼピノン−2)、2−(4′−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾールなどが挙げられる。さらに、トリアジン系化合物としては、2,4,6−トリメルカプト−S−トリアジン、2−ジ−n−ブチルアミノ−4,6−ジメルカプト−S−トリアジンなどが挙げられる。以上の加硫剤は、1種単独で、あるいは2種以上を併用することができる。
【0051】
これらの加硫剤の配合量は、ゴム成分100質量部に対し、通常、0.1〜15質量部、好ましくは0.5〜10質量部である。
【0052】
なお、加硫剤として、有機過酸化物を使用する場合には、有機過酸化物と併用して、硫黄、p−キノンジオキシム、p−ベンゾキノンジオキシム、p,p′−ジベンゾイルキノンジオキシム、N−メチル−N′−4−ジニトロアニリン、N,N′−m−フェニレンジマレイミド、ジペンタメチレンチウラムペンタスルフィド、ジニトロソベンゼン、ジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアジンチオール、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エリスリトールテトラメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ジアリルメラミン、トリメタクリレート、ジメタクリレート、ジビニルアジペート、ビニルブチラート、ビニルステアレート、液状ポリブタジエンゴム、液状ポリイソプレンゴム、液状スチレン−ブタジエンゴム、液状アクリロニトリル−ブタジエンゴム、マグネシウムジアクリレート、カルシウムジアクリレート、アルミニウムアクリレート、亜鉛アクリレート、スタナスアクリレート、メタクリル酸亜鉛、メタクリル酸マグネシウム、ジメタクリル酸亜鉛などの共架橋剤を配合することができる。これらの共架橋剤は、1種単独で、あるいは2種以上を併用することができる。共架橋剤の配合量は、ゴム成分100質量部に対し、通常、0.5〜20質量部である。
【0053】
また、加硫剤として、硫黄系加硫剤を使用する場合には、加硫促進剤を使用することができる。このような加硫促進剤としては、例えば、ヘキサメチレンテトラミン、アセトアルデヒド・アンモニアなどのなどのアルデヒドアンモニア類;n−ブチルアルデヒド−アニリン縮合物、ブチルアルデヒド−モノブチルアミン縮合品、ヘプトアルデヒド−アニリン縮合物、トリクロトニリデン・テトラミン縮合物などのアルデヒドアミン類;ジフェニルグアニジン、ジ−o−トリルグアニジン、オルト・トリル・ビグアニド、ジカテコール・ほう酸のジオルト・トリル・グアニジン塩などのグアニジン塩類;2−メルカプトイミダゾリンなどのイミダゾリン類;2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトチアゾリン、ジベンゾチアジル・ジスルフィド、2−メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩、2−メルカプトベンゾチアゾールのナトリウム塩、2−メルカプトベンゾチアゾールのシクロヘキシルアミン塩、2−(2,4−ジニトロフェニルチオ)ベンゾチアゾール、2−(N,N−ジエチルチオ・カルバモイルチオ)ベンゾチアゾール、2−(4′−モルホリノ・ジチオ)ベンゾチアゾール、4−モルホリノ−2−ベンゾテアジル・ジスルフィドなどのチアゾール類;N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾール・スルフェンアミド、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアジル・スルフェンアミド、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアジル・スルフェンアミド、N,N−ジイソプロピル−2−ベンゾチアジル・スルフェンアミド、N−t−ブチル−2−ベンゾチアジル・スルフェンアミドなどのスルフェンアミド類;チオカルバニド、エチレン・チオ尿素(2−メルカプトイミダゾリン)、ジエチル・チオ尿素、ジブチル・チオ尿素、混合アルキルチオ尿素、トリルメチルチオ尿素、ジラウリルチオ尿素などのチオ尿素類;ジメチル・ジチオカルバミン酸ナトリウム、ジエチル・ジチオカルバミン酸ナトリウム、ジ−n−ブチル・カルバミンン酸ナトリウム、ジメチル・ジチオカルバミン酸鉛、ジアミル・ジチオカルバミン酸鉛、ジアミル・ジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチル・ジチオカルバミン酸亜鉛、ジ−n−ブチル・ジチオカルバミン酸亜鉛、ジベンジル・ジチオカルバミン酸亜鉛、N−ペンタメチレン・ジチオカルバミン酸亜鉛、エチルフェニル・ジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチル・ジチオカルバミン酸セレン、ジエチル・ジチオカルバミン酸セレン、ジエチル・ジチオカルバミン酸テルル、ジエチル・ジチオカルバミン酸カドミウム、ジメチル・ジチオカルバミン酸銅、ジメチル・ジチオカルバミン酸鉄、ジメチル・ジチオカルバミン酸ビスマス、ジメチル・ジチオカルバミン酸ピペリジン、メチルペンタメチレン・ジチオカルバミン酸ピペコリン、活性化ジチオカルバメートなどのジチオカルバミン酸塩類;テトラメチルチウラム・モノスルフィド、テトラメチルチウラム・ジスルフィド、活性テトラメチルチウラム・ジスルフィド、テトラエチルチウラム・ジスルフィド、テトラブチルチウラム・ジスルフィド、N,N′−ジメチル−N,N′−ジフェニルチウラム・ジスルフィド、ジペンタメチレンチウラム・ジスルフィド、ジペンタメチレンチウラム・テトラスルフィド、混合アルキル・チウラム・ジスルフィドなどのチウラム類;イソプロピル・キサントゲン酸ナトリウム、イソプロピル・キサントゲン酸亜鉛、ブチル・キサントゲン酸亜鉛などのザンテート類;4,4′−ジチオジモルホリン、アミノジアルキルジチオホスフェート、亜鉛−o,o−n−ブチル・ホスホロジチオエート、3−メルカプトイミダゾリン−チオン−2、チオグリコール酸エステルなどが挙げられる。これらの加硫促進剤は、1種単独で、あるいは2種以上を併用することができる。加硫促進剤の配合量は、ゴム成分100質量部に対し、通常、0.1〜20質量部、好ましくは0.2〜10質量部である。
【0054】
また、上記加硫剤および加硫促進剤に加え、必要に応じて、加硫促進助剤を添加することもできる。このような加硫促進助剤としては、例えば、酸化マグネシウム、亜鉛華、活性亜鉛華、表面処理亜鉛華、炭酸亜鉛、複合亜鉛華、複合活性亜鉛華、表面処理酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、極微細水酸化カルシウム、一酸化鉛、リサージ、鉛丹、鉛白などの金属酸化物;ステアリン酸、オレイン酸、ラウリル酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸ナトリウムなどの有機酸(塩)類などが挙げられ、特に亜鉛華、ステアリン酸が好ましい。これらの加硫促進助剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。加硫促進助剤の配合量は、ゴム成分100質量部に対し、通常、0.5〜20質量部である。
【0055】
本発明のゴム組成物には、他に紫外線吸収剤、光安定剤、難燃剤、帯電防止剤、導電性可塑剤、液状ゴム、官能基含有オリゴマー、着色剤、耐油性向上剤、発泡剤、スコーチ防止剤、粘着付与剤、奪水剤、活性剤、ワックス、カップリング剤、素練り促進剤、抗菌剤、発泡助剤、加工助剤などを配合できる。
【0056】
本発明のNBRを用いたゴム組成物を調製する際には、従来から公知の混練機、押出機、加硫装置などを用いることができる。本発明のNBRと混合される他のポリマーや、充填剤、可塑剤、加硫剤などの配合方法、配合順序としては特に限定されないが、例えば、バンバリーミキサーなどを用いて、変性エチレン系共重合ゴム、充填剤、軟化剤などを混合したのち、ロールなどを用いて加硫剤などを加える方法が挙げられる。
【0057】
なお、現像ローラと感光体に圧接して使用する場合には、当接する際に均一なニップ幅を確保し、かつ、好適なセット回復性を満たすためには、弾性体層の厚さは、好ましくは、0.5mm以上、より好ましくは、1.0mm以上とすることが望ましい。
なお、作製される弾性ローラの外径精度を損なわない限り、弾性体層の厚さに特に制限はないものの、一般に、弾性体層の厚さを過度に厚くすると、ゴム成型体の作製コストを適正な範囲に抑えることが難しくなる。これらの実用上の制約を考慮すると、弾性体層の厚さは、好ましくは6.0mm以下、より好ましくは5.0mm以下とすることが望ましい。従って、弾性体層の厚さは、0.5〜6.0mmの範囲に選択する構成とすることが望ましく、1.0〜5.0mmの範囲に選択する構成とすることがより望ましい。また、弾性体層の厚さは、その硬度に応じて適宜選択されるものである。
【0058】
弾性体層12の硬度(Asker−C)は、10〜70°の範囲に選択する。該硬度(Asker−C)が、10°以上では、適当なゴム弾性が得られ、一方、70°以下では、適切なニップ幅を得ることができる。より好ましくは、弾性体層を形成するゴム成型体の硬度(Asker−C)は、15〜55°の範囲に選択することが望ましい。
【0059】
前述の通り、弾性体層12の外周面に被覆層(表層)13が積層されている。
本発明において、表層となる被覆層13を形成する成分としては、特に限定されるものではないが、自己膜補強性、トナー帯電性等の観点から特にポリアミド樹脂やウレタン樹脂、またはウレア樹脂等が好ましく用いられる。弾性層12に添加されたポリエステル系可塑剤等のブリードを抑制する作用を、被覆層13に持たせる点から、架橋系ゴムであることが好ましい。
【0060】
特に、架橋系ウレタン樹脂である場合には、25℃のトルエンによる膨潤度は、150%以上、300%以下の範囲にあることが好ましい。25℃トルエンによる膨潤度が150質量%以上あれば、被覆層13が硬くなり過ぎないで弾性層12への変形追従性が十分であると共に、冷・熱の繰返し温度履歴を受けたときでも内部応力が増大しないので劣化し難い。また、25℃トルエンによる膨潤度が300質量%以下であれば、被覆層13によるブリード抑制の作用が得られる。さらには、該架橋系ウレタン樹脂の25℃トルエンによる膨潤度が、190〜260質量%の範囲ある場合、適度な可撓性とブリード抑制の点で優れ、より好ましい。
【0061】
ウレタン樹脂としては、例えばカーボンブラックをポリウレタンプレポリマー中に配合し、プレポリマーを架橋反応させる方法で得たものや、ポリオールに導電性材料を配合し、このポリオールをワン・ショット法にてポリイソシアネー卜と反応させる方法で得たものなどがあげられる。
【0062】
この場合、ポリウレタンを得る際に用いられるポリヒドロキシル化合物としては、一般の軟質ポリウレタンフォームやウレタンエラストマー製造に用いられるポリオール、例えば、末端にポリヒドロキシル基を有するポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、及び両者の共重合物であるポリエーテルポリエステルポリオールが挙げられるほか、ポリブタジエンポリオールやポリイソプレンポリオール等のポリオレフィンポリオール、ポリオール中でエチレン性不飽和単量体を重合させて得られる所謂ポリマーポリオール等の一般的なポリオールを使用することができる。
【0063】
また、イソシアネート化合物としては、同様に一般的な軟質ポリウレタンフォームやウレタンエラストマー製造に使用されるポリイソシアネート、即ち、トリレンジイソシアネート(TDI)、粗製TDI、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、粗製MDI、炭素数2〜18の脂肪族ポリイソシアネート、炭素数4〜15の脂環式ポリイソシアネート及びこれらポリイソシアネートの混合物や変性物、例えば部分的にポリオール類と反応させて得られるプレポリマー等が用いられる。
【0064】
ウレタン樹脂としてはポリイソシアネートを含む、1液型や2液型が挙げられ、必要に応じてエポキシ樹脂やメラミン樹脂を架橋剤として用いても良い。
【0065】
ポリアミド樹脂としては、ポリアミド6,6・6,6・10,6・12,11,12,12・12及びそれらのポリアミドの異種モノマー間の重縮合から得られるポリアミドなどである。作業性の面からアルコール可溶性のものが好んで用いられている。例えばポリアミドの3元共重合体や4元共重合体の分子量を調整したもの、またはポリアミド6やポリアミド12をメトキシメチル化し、アルコールや水に可溶性としたものがあげられる。
【0066】
ウレタン樹脂や、ポリアミド樹脂、および他の変性樹脂の1種又は2種以上を混合して用いることもでき、現像を行うシステムに応じて適宜選択して用いることにより、その現像システムに適したトナー帯電量を得ることができる。
【0067】
更に、表層としての被覆層13を成膜性よく形成するために、弾性ローラの個別的な用途に合せて、被覆層自体に要求される機能に必要な成分、例えば、導電剤、非導電性充填剤などが添加できる。また、弾性層12の外周に成膜積層する際に利用される各種添加剤成分、例えば、架橋剤、触媒、分散促進剤など、各種の添加剤を主成分の樹脂材料に適宜配合することができる。なお、導電剤、非導電性充填剤などの添加剤は、先に弾性体層に含有可能な添加剤として例示したものなどから、主成分の樹脂材料に応じて、適宜選択することができる。また、その添加量は、形成される被覆層の特性を本発明の効果を発揮する範囲内に維持する限り、添加目的に応じて、適宜選択することができる。
【0068】
前記カーボンブラック成分の添加量としては、前記被覆層を形成するゴム100質量部に対して、10〜50質量部であることが好ましい。弾性層12に用いる場合と異なり、薄膜となることの多い被覆層13においては、カーボンブラックの種類や、ベースとなる樹脂(ゴム)の種類にもよるが比較的多く添加することが出来る。例えば、ウレタン樹脂をベースとした場合には、15〜50質量部であることが好ましい。更には、20〜40質量部であることがより好ましい。ここでカーボンブラックの質量百分率を求める際の、「樹脂成分」とは、ウレタン樹脂のポリオール、ジイソシアネート、他樹脂とのブレンドの場合は、その樹脂やそのモノマー成分、硬化剤成分、架橋剤成分などの樹脂そのものやそれを構成する成分で被覆層の被膜形成成分として主体をなす成分を基準とし、導電剤、非導電性充填剤などの添加剤は、含まないものとする。
【0069】
被覆層13の弾性率は、被膜性、耐久性が実用上得られれば、特に制限されることはない。被覆層13は、弾性体層12の変形に対する高い追従性を示すことが望まれ、従って、被覆層を形成する膜体の硬度および弾性率は低い方が好ましい。
【0070】
なお、被覆層13の厚さは、十分な耐摩耗性を確保するために、2μm以上に選択することが好ましい。一方、現像ローラでは、導電性を有する弾性ローラとされ、その際、均一な導電性を実現するために、被覆層の厚さは、100μm以下に留めることが好ましい。また、被覆層の厚さが、2μm以上であれば、弾性体層表面に所望の薄い膜厚では均一に塗布・形成することが容易であり、一方、被覆層の硬度は、弾性体層の硬度より相対的に高い場合でも、100μm以下の膜厚とすれば、現像ローラ全体の変形性に対する影響が大きくならず好ましい。また、被覆層の厚さは、上記の範囲でその硬度等に応じて適宜選択されればよい。例えば、ウレタン樹脂をベースとした場合には、5〜25μmの範囲の膜厚がより好ましい。この範囲であれば、耐摩耗性がり、硬度への影響小さく、かつ樹脂層自体が設け易いなどの利点が多い。本発明の被覆層の厚さは、ローラより切り出したサンプルにより、断面を光学顕微鏡等により観察することにより測定し求めたものである。
【0071】
被覆層13の形成には、膜体の原料となるポリマー原料を液状または溶液状として、弾性体層表面に塗布し、その後、膜体とする方法を利用することができる。この膜体原料の塗布方法は、特に限定されないが、エアスプレー、ロールコート、カーテンコート、ディッピング等の方法により、樹脂原料を所望の厚さで、弾性体層表面に均一に塗布する。その後、膜体とするため、必要に応じ、加熱処理を行なう場合がある。
【0072】
以上、弾性体層12及び被覆層13を軸芯体11上にこの順に積層した2層構造の現像ローラについて説明したが、本発明にかかる現像ローラにおける軸芯体外周上の層構成は3層以上の多層構成を有するものであってもよい。例えば、弾性体層12と被覆層13の間に、別の層を設けた現像ローラや、弾性体層12自体が複数の層で構成される現像ローラがあげられる。どのような構成においても、本発明の効果が得られれば問題はない。
なお、本発明において用いた数値は、以下の方法に従って測定した。
【0073】
<DBP吸油量>
JISK6217−4の規定に従って測定したものである。
【0074】
<窒素比表面積>
JISK6217−2の規定に従って測定したものである。
【0075】
<質量平均分子量>
GPCカラム「TSKgel SurperHM−M」(商品名、東ソー株式会社製)2本を直列につないだ高速液体クロマトグラフ分析装置「HLC−8120GPC」(商品名、東ソー株式会社製)を用い、溶媒にテトラヒドロフラン(THF)、温度40℃、流速0.6ml/min、RI(屈折率)検出器の測定条件下において、測定サンプルを0.1質量%のTHF溶液として測定した。検量線作成用の標準試料として数種の単分散標準ポリスチレン(東ソー株式会社製)を用いて検量線の作成を行い、これを基に得られた測定サンプルの保持時間から質量平均分子量を求めた。
【0076】
<トルエンによる膨潤度>
厚さ50〜500μmのフィルムまたはシートを、縦5mm×横20mmの試料として切り出し、25℃トルエン50ml中に浸漬する。そして24時間毎にトルエンを含んだ試料の質量を測定する。24時間を隔てて測定した2つの測定値の差が、試料質量の1%以下となつた時の、その試料質量W(g)とする。 次いでその試料を風乾したのち、120℃で3時間乾燥してトルエンを除き、質量Wo(g))を測定する。この時、 W/Wo(%)を膨潤度として算出した。すなわち、まったく膨潤しないもので100%である。
【0077】
以上に説明した様に、本発明の現像ローラは、低硬度かつ低抵抗で、感光体の汚染を発生させ難い現像ローラとしたものとなる。この利点から、電子写真装置等における現像ローラとして用いた場合には、感光体の汚染を発生させず、画像濃淡ムラや濃度低下がなく、高速化された電子写真装置においても、高品位化な画像を得ることが可能である。
【0078】
図3は、本発明の現像ローラとして用いた現像装置、および画像形成装置の概略構成を示す断面図である。
【0079】
この画像形成装置では、潜像担持体としての感光ドラム21が矢印A方向に回転し、感光ドラム21を帯電処理するための帯電装置22によってそこを通過した感光ドラム21の領域が一様に帯電される。更にこの帯電領域において、静電潜像を書き込む露光手段であるレーザー光23により、その表面に静電潜像が形成される。静電潜像は、感光ドラム21に対して近接配置され、画像形成装置本体に対し着脱可能なプロセスカートリッジ24(図示せず)に保持される現像装置2によって現像剤たるトナーを付与されることにより現像され、トナー像として可視化(顕在化)される。
【0080】
現像には、露光部にトナー像を形成するいわゆる反転現像などの方式が利用できる。可視化された感光ドラム21上のトナー像(画像)は、転写ローラ29によって紙などの転写紙33に転写される。トナー像を転写された紙33は、定着装置32により定着処理され、装置外に排紙されプリント動作が終了する。転写ローラ33は、感光ドラム21のトナー像を保持する領域に、転写紙33をその裏面から押当てて、トナー像を転写紙の表面に転写させるもので、感光ドラムのトナー像を保持する領域と逆に帯電していることで、トナー像の転写が促進される。転写紙33の感光ドラム21の表面への押し当ては、感光ドラム21と転写ローラ29とが接触している部分に、これらの回転に伴って、転写紙33が自動的に挿入されることにより達成される。
【0081】
一方、転写されずに感光ドラム上21上に残存した転写残トナーはクリーニングブレード30により掻き取られ廃トナー容器31に収納され、クリーニングされた感光ドラム21に対して上記のプロセスを繰り返すことで、同一画像のコピーや、新たな画像の転写を行なうことができる。
【0082】
図示した例では、現像装置2は、一成分現像剤として非磁性トナー28を収容した現像装置34と、現像容器34内の長手方向に延在する開口部に位置し感光ドラム21と対向設置された現像剤担持体としての現像ローラ25とを備え、感光ドラム21上の静電潜像を現像して可視化するようになっている。
【0083】
尚、現像ローラ25は感光ドラム21と当接幅をもって接触している。現像装置2においては、弾性を有する補助ローラ26が、現像容器34内で、弾性ブレード27の現像ローラ25表面との当接部に対し現像ローラ25回転方向上流側に当接され、かつ、回転可能に支持されている。補助ローラ26の構造としては、発泡骨格状スポンジ構造や芯金上にレーヨン、ナイロン等の繊維を植毛したファーブラシ構造のものが、現像ローラ25へのトナー28供給および未現像トナーの剥ぎ取りの点から好ましい。本実施形態においては、軸芯体上にポリウレタンフォームを設けた直径16mmの補助ローラ26を用いた。
【0084】
この補助ローラ26の現像ローラ25に対する当接幅としては、1〜8mmが有効であり、また、現像ローラ25に対してその当接部において相対速度をもたせることが好ましい。本実施形態においては、当接幅を3mmに設定し、補助ローラ26の周速として現像動作時に50mm/s(現像ローラ25との相対速度は130mm/s)となるように駆動手段(図示せず)により所定タイミングで回転駆動させている。
【実施例】
【0085】
以下に、実施例を示し、本発明をより具体的に説明する。ここでは、上記のような軸芯体の外周面に二層で構成されてなる現像ローラにおいて説明する。これら実施例は、本発明における最良の実施形態の一例ではあるものの、本発明は、実施例によって、何ら限定されるものではない。実施例に示す手法で作製される現像ローラは、その用途において、電子写真装置等で使用される現像ローラとして好適に使用できる。
【0086】
[実施例1]現像ローラ1
軸芯体としてニッケル鍍金を施したSUS製の芯金(φ8mm)の外周面に、さらに接着剤(プライマー)を塗布、焼き付けしたものを用いた。
NBR「JSR N230H」(商品名、JSR社製)〔以下、ゴムAとする〕100質量部、酸化亜鉛5質量部、ステアリン酸2質量部、炭酸カルシウム30質量部、2−メルカプトベンズイミダゾール(MB)0.5質量部、カーボンブラック「トーカブラック#7360SB」(商品名、東海カーボン社製)〔以下、カーボンブラックIとする〕60質量部、ポリエステル系可塑剤「ポリサイザーW−4000」(商品名、大日本インキ社製)〔以下、可塑剤Pとする〕80質量部を、50℃に調節した密閉型ミキサーにて10分間混練して、原料コンパウンドを調製した。
【0087】
この原料コンパウンドに、ゴム分(実施例1においては、ゴムA100質量部)に対して分散性硫黄「Sulfax 200S」(商品名、鶴見化学工業社製、純度99.5%)1.2質量部、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド「ノクセラーDM」(商品名、大内新興化学社製)1質量部、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド「ノクセラーTRA」(商品名、大内新興化学社製)1質量部、テトラメチルチウラムモノスルフィド「ノクセラーTS」(商品名、大内新興化学社製)0.5質量部を添加し、20℃に冷却した二本ロール機にて10分間混練して、弾性体層用コンパウンドを得た。
【0088】
この弾性体用コンパウンドを押出し成形によってチューブ状に成形し、蒸気加硫によって一次加硫を130℃で30分間行い、さらに電気炉によって二次加硫を140℃で30分間行ない、ゴム製チューブを得た。このチューブを切断した後、軸芯体としてニッケル鍍金を施したSUS製の芯金(φ8mm)を圧入し、表面を研磨してφ16mmの弾性ローラを得た。
【0089】
次に、ポリオール「ニッポラン5033」(商品名、日本ポリウレタン工業社製)の固形分100質量部に対し、硬化剤としてイソシアネート「コロネートL」(商品名、日本ポリウレタン工業社製)の固形分10質量部、導電剤としてカーボンブラック「MA11」(商品名、三菱化学社製)を22質量部添加し、メチルエチルケトンを主溶剤として用い、十分に撹拌して、均一な固形分11%の有機溶剤混合溶液となるよう調整した。この塗料溶液中に、上記弾性ローラを浸漬してコーティングした後、引上げて乾燥させ、145℃にて30分間加熱処理することで、厚さ約20μmの表面層〔以下、被覆層Vとする〕を弾性体層の外周に設けた現像ローラ1を作製した。
【0090】
[実施例2]現像ローラ2
弾性層に用いるゴム成分を、NBR「JSR N224SH」(商品名、JSR社製)〔以下、ゴムBとする〕に変更し、100質量部とした以外は実施例1と同様にして現像ローラ2を作製した。
【0091】
[実施例3]現像ローラ3
弾性層に用いるゴム成分を、NBR「JSR N222L」(商品名、JSR社製)〔以下、ゴムCとする〕に変更し、100質量部とした以外は実施例1と同様にして現像ローラ3を作製した。
【0092】
[実施例4]現像ローラ4
弾性層に用いるゴム成分を、NBR「Nipol DN002」(商品名、日本ゼオン社製)〔以下、ゴムDとする〕に変更し、100質量部とした以外は実施例1と同様にして現像ローラ4を作製した。
【0093】
[実施例5]現像ローラ5
弾性層に用いるゴム成分を、NBR「Nipol DN003」(商品名、日本ゼオン社製)〔以下、ゴムEとする〕85質量部と、エピクロルヒドリンゴム「エピクロマー H」(商品名、ダイソー社製)〔以下、ゴムHとする〕15質量部との混合物とした以外は実施例1と同様にして現像ローラ5を作製した。
【0094】
[実施例6]現像ローラ6
弾性層に用いるゴム成分として、ゴムCを100質量部とし、カーボンブラックを、「トーカブラック#7350」(商品名、東海カーボン社製)〔以下、カーボンブラックJとする〕とし、添加量を40質量部に変更した以外は実施例1と同様にして現像ローラ6を作製した。
【0095】
[実施例7]現像ローラ7
弾性層に用いるゴム成分として、ゴムBを100質量部とし、カーボンブラックを、「Raven 820」(商品名、Columbian Chemicals Company製)〔以下、カーボンブラックKとする〕とし、添加量を40質量部に変更した以外は実施例1と同様にして現像ローラ7を作製した。
【0096】
[実施例8]現像ローラ8
弾性層に用いるゴム成分として、ゴムCを100質量部とし、カーボンブラックとして、カーボンブラックKを35質量部に変更した以外は実施例1と同様にして現像ローラ8を作製した。
【0097】
[実施例9]現像ローラ9
弾性層に用いるゴム成分として、ゴムDを100質量部とし、カーボンブラックとして、カーボンブラックKを30質量部に変更した以外は実施例1と同様にして現像ローラ9を作製した。
【0098】
[実施例10]現像ローラ10
弾性層に用いるゴム成分として、ゴムCを100質量部とし、カーボンブラックIの添加量を15質量部に変更し、可塑剤Pの添加量を30質量部に変更した以外は実施例1と同様にして現像ローラ10を作製した。
【0099】
[実施例11]現像ローラ11
弾性層に用いるゴム成分として、ゴムCを100質量部とし、カーボンブラックIの添加量を75質量部に変更した以外は実施例1と同様にして現像ローラ11を作製した。
【0100】
[実施例12]現像ローラ12
弾性層に用いるゴム成分として、ゴムCを100質量部とし、可塑剤をポリエステル系可塑剤「ポリサイザーW−2300」(商品名、大日本インキ社製)〔以下、可塑剤Qとする〕に変更し、添加量を50質量部とした以外は実施例1と同様にして現像ローラ12を作製した。
【0101】
[実施例13]現像ローラ13
弾性層に用いるゴム成分として、ゴムCを100質量部とし、カーボンブラックIの添加量を35質量部に変更し、可塑剤をポリエステル系可塑剤「ポリサイザーP−202」(商品名、大日本インキ社製)〔以下、可塑剤Rとする〕に変更し、添加量を70質量部とした以外は実施例1と同様にして現像ローラ13を作製した。
【0102】
[実施例14]現像ローラ14
弾性層に用いるゴム成分として、ゴムCを100質量部とし、カーボンブラックIの添加量を15質量部に変更し、可塑剤Pの添加量を20質量部とした以外は実施例1と同様にして現像ローラ14を作製した。
【0103】
[実施例15]現像ローラ15
弾性層に用いるゴム成分として、ゴムCを100質量部とし、カーボンブラックIの添加量を75質量部に変更し、可塑剤Pの添加量を90質量部とした以外は実施例1と同様にして現像ローラ15を作製した。
【0104】
[実施例16]現像ローラ16
弾性層に用いるゴム成分として、ゴムCを100質量部とし、可塑剤をポリエステル系可塑剤「可塑剤S」に変更し、添加量を80質量部とした以外は実施例1と同様にして現像ローラ16を作製した。
なお、可塑剤Sは、多塩基酸成分としてアゼライン酸、多価アルコール成分として1,5−ペンタンジオールを用いて縮合させ、末端停止成分としてオクタノ−ルを用いて反応を終結させ、質量平均分子量6000のものを作成したものを用いた。
【0105】
[実施例17]現像ローラ17
原料コンパウンドは実施例1と同じものを作成し、そのゴム分(ゴムA100質量部)に対して、「パーヘキシン25B−40」(商品名、日本油脂社製商品名;40%品)7.5質量部、トリアリルイソシアヌレート「TAIC」(商品名、日本化成社製)3質量部を添加し、20℃に冷却した二本ロール機にて10分間混練して、弾性体層用コンパウンドを得た。この弾性体用コンパウンドを用いた以外は、実施例1と同様にして現像ローラ17を作製した。
【0106】
[実施例18]現像ローラ18
表面層として、アルコール可溶性ポリアミド樹脂「アミランCM8000」(商品名、東レ社製)100質量部に対し、導電剤としカーボンブラック「MA11」(商品名、三菱化学社製)を22質量部添加し、メタノールを主溶剤として用い、十分に撹拌して、均一な固形分18%の有機溶剤混合溶液となるよう調整した。この塗料溶液中に、上記弾性ローラを浸漬してコーティングした後、引上げて乾燥させ、85℃にて30分間加熱処理することで、約15μmの表面層〔以下、被覆層Wとする〕を弾性体層の外周に設けた以外は、実施例1と同様にして現像ローラ18を作製した。
【0107】
[実施例19]現像ローラ19
表面層として、ポリオール「ニッポラン5230」(商品名、日本ポリウレタン工業社製)の固形分100質量部に対し、導電剤としてカーボンブラック「MA11」(商品名、三菱化学社製)を22質量部添加し、メチルエチルケトンを主溶剤として用い、十分に撹拌して、均一な固形分10%の有機溶剤混合溶液となるよう調整した。この塗料溶液中に、上記弾性ローラを浸漬してコーティングした後、引上げて乾燥させ、130℃にて30分間加熱処理することで、厚さ約20μmの表面層〔以下、被覆層Xとする〕を弾性体層の外周に設けた以外は、実施例1と同様にして現像ローラ19を作製した。
【0108】
[実施例20]現像ローラ20
表面層として、ポリオール「ニッポラン5196」(商品名、日本ポリウレタン工業社製)の固形分100質量部に対し、硬化剤としてイソシアネート「コロネートL」(商品名、日本ポリウレタン工業社製)の固形分4質量部、導電剤としてカーボンブラック「MA11」(商品名、三菱化学社製)を22質量部添加し、メチルエチルケトンを主溶剤として用い、十分に撹拌して、均一な固形分10%の有機溶剤混合溶液となるよう調整した。この塗料溶液中に、上記弾性ローラを浸漬してコーティングした後、引上げて乾燥させ、145℃にて30分間加熱処理することで、約18μmの表面層〔以下、被覆層Yとする〕を弾性体層の外周に設けた以外は、実施例1と同様にして現像ローラ20を作製した。
【0109】
[実施例21]現像ローラ21
表面層として、ポリオール「ニッポラン5025」(商品名、日本ポリウレタン工業社製)の固形分100質量部に対し、硬化剤としてイソシアネート「コロネートL」(商品名、日本ポリウレタン工業社製)の固形分6質量部、導電剤としてカーボンブラック「MA11」(商品名、三菱化学社製)を22質量部添加し、メチルエチルケトンを主溶剤として用い、十分に撹拌して、均一な固形分12%の有機溶剤混合溶液となるよう調整した。この塗料溶液中に、上記弾性ローラを浸漬してコーティングした後、引上げて乾燥させ、145℃にて30分間加熱処理することで、厚さ約20μmの表面層〔以下、被覆層Zとする〕を弾性体層の外周に設けた以外は、実施例1と同様にして現像ローラ21を作製した。
【0110】
[比較例1]現像ローラ22
弾性層に用いるゴム成分を、NBR「Nipol DN401」(商品名、日本ゼオン社製)〔以下、ゴムFとする〕に変更し、100質量部とした以外は実施例1と同様にして現像ローラ22を作製した。
【0111】
[比較例2]現像ローラ23
弾性層に用いるゴム成分を、NBR「Nipol 1043」(商品名、日本ゼオン社製)〔以下、ゴムFとする〕に変更し、100質量部とした以外は実施例1と同様にして現像ローラ23を作製した。
【0112】
[比較例3]現像ローラ24
弾性層に用いるゴム成分を、ゴムE 50質量部と、ゴムH 50質量部との混合物とした以外は実施例1と同様にして現像ローラ24を作製した。
【0113】
[比較例4]現像ローラ25
弾性層に用いるゴム成分として、ゴムCを100質量部とし、カーボンブラックを、「#45L」(商品名、三菱化学社製)〔以下、カーボンブラックLとする〕に変更し、添加量を75質量部に変更した以外は実施例1と同様にして現像ローラ25を作製した。
[比較例5]現像ローラ26
弾性層に用いるゴム成分として、ゴムCを100質量部とし、カーボンブラックを、「#44」(商品名、三菱化学社製)〔以下、カーボンブラックMとする〕に変更し、添加量を60質量部に変更した以外は実施例1と同様にして現像ローラ26を作製した。
【0114】
[比較例6]現像ローラ27
弾性層に用いるゴム成分として、ゴムCを100質量部とし、カーボンブラックを、「Vulcan XC72」(商品名、キャボット・スペシャルティ・ケミカルズ・インク製)〔以下、カーボンブラックNとする〕に変更し、添加量を20質量部に変更した以外は実施例1と同様にして現像ローラ27を作製した。
【0115】
[比較例7]現像ローラ28
弾性層に用いるゴム成分として、ゴムCを100質量部とし、カーボンブラックを、「ケッチェンブラックEC」(商品名、ケッチェン・ブラック・インターナショナル社製)〔以下、カーボンブラックOとする〕に変更し、添加量を20質量部に変更した以外は実施例1と同様にして現像ローラ28を作製した。
【0116】
[比較例8]現像ローラ29
弾性層に用いるゴム成分として、ゴムCを100質量部とし、カーボンブラックIの添加量を8質量部に変更した以外は実施例1と同様にして現像ローラ29を作製した。
【0117】
[比較例9]現像ローラ30
弾性層に用いるゴム成分として、ゴムCを100質量部とし、カーボンブラックIの添加量を90質量部に変更した以外は実施例1と同様にして現像ローラ30を作製した。
【0118】
[比較例10]現像ローラ31
弾性層に用いるゴム成分として、ゴムCを100質量部とし、可塑剤をエポキシ系可塑剤「エポサイザーW−109EL」(商品名、大日本インキ社製)〔以下、可塑剤Tとする〕に変更し、添加量を80質量部とした以外は実施例1と同様にして現像ローラ31を作製した。
【0119】
[比較例11]現像ローラ32
弾性層に用いるゴム成分として、ゴムCを100質量部とし、可塑剤をポリエステル系可塑剤「ポリサイザーW−1600」(商品名、大日本インキ社製)〔以下、可塑剤Uとする〕に変更し、添加量を50質量部とした以外は実施例1と同様にして現像ローラ32を作製した。
【0120】
[比較例12]現像ローラ33
弾性層に用いるゴム成分として、ゴムCを100質量部とし、可塑剤Pの添加なしとした以外は実施例1と同様にして現像ローラ33を作製した。
【0121】
[比較例13]現像ローラ34
弾性層に用いるゴム成分として、ゴムCを100質量部とし、可塑剤Pの添加量を120質量部に変更した以外は実施例1と同様にして現像ローラ34を作製した。
【0122】
[比較例14]現像ローラ35
弾性層に用いるゴム成分として、ゴムCを100質量部とし、可塑剤を可塑剤Qに変更し、その添加量を20質量部に変更した以外は実施例1と同様にして現像ローラ35を作製した。
【0123】
[比較例15]現像ローラ36
弾性層に用いるゴム成分として、ゴムCを100質量部とし、カーボンブラックIの添加量を30質量部に変更し、可塑剤を可塑剤Qに変更し、その添加量を80質量部とした以外は実施例1と同様にして現像ローラ36を作製した。
ゴムA〜Gのアクリロニトリル量を、表1に示した。なお、ゴムHはエピクロルヒドリンゴムでありアクリロニトリルは含有していない。
【0124】
カーボンブラックI〜Oの、DBP吸油量(Dとする)、窒素比表面積(Nとする)、およびD/N値を表2に示した。
【0125】
可塑剤P〜S、Uの質量平均分子量、およびその繰り返し単位の主成分を、表3に示した。
なお、可塑剤Tはポリエステル系可塑剤ではない。
【0126】
被覆層V、Y,Zのトルエンによる膨潤度の値を表4に示した。被覆層W,Xは架橋されておらず、トルエンの浸漬した際は溶解する。
また、実施例1〜21、比較例1〜15に相当する現像ローラ1〜36の弾性層および被覆層の組合せを、表5に示した。
【0127】
作成した現像ローラ1〜36につき、以下の評価を行った。
【0128】
[特性の評価]
<硬度(ニップ巾)>
Φ30mm相当の曲面を有する長さ300mmの半円柱状のガラスを用いて、現像ローラの軸芯体に対し片側500g(計1kg)の荷重をかけて、Φ30mm相当の曲面に圧接した時のニップ巾を反対側からマイクロスコープにてそのニップ状態を観察し、評価とした。
◎:現像ローラ中央部でも0.8mm以上のニップ巾
〇:現像ローラ中央部で0.7mm以上0.8mm未満のニップ巾
△:現像ローラ中央部で0.5mm以上、0.7mm未満のニップ巾
×:現像ローラ中央部で0.5mm未満のニップ巾。
【0129】
<電気抵抗>
現像ローラの軸芯体に対し片側500gずつの荷重をかけてφ30mmのSUSの円筒に接触させ、円筒をローラが1秒間に1回転するような回転数で回転させる。この装置全体にDC100Vを印加し、そのときの基準抵抗10kΩにかかる電圧からローラ抵抗を算出、評価とした。
◎:1×106以下のローラ抵抗
〇:1×106超〜1×108以下のローラ抵抗
△:1×108超〜1×1010以下のローラ抵抗
×:1×1010超のローラ抵抗。
【0130】
<ブリード>
カートリッジに現像ローラを組み込み、室温35℃、相対湿度85%RHの環境試験機内に14日間放置した後に、室温25℃、相対湿度50%RHの環境下にてカートリッジを分解し、感光体表面上への付着の有無、現像ローラ表面のブリード有無を目視で観察した。
◎:感光体表面上への付着がなく、現像ローラ表面にもブリードが無い。
○:感光体表面上への付着がないが、現像ローラ表面に僅かにブリードがみられる。
△:感光体表面上への付着がないが、現像ローラ表面にブリードがみられる。
×:感光体表面上への付着がみられる。
【0131】
画像形成装置として、レーザービームを用いた有機感光体デジタルプリンター「LBP5500」(商品名、キヤノン社製)を用意した。この「LBP5500」(商品名)は4つのトナーカラーカートリッジを備え、それぞれのカラーカートリッジに対し、画像書き込み手段(レーザービーム)が設けられ、転写ベルトを備えたタンデム型のカラープリンターである。なお、標準の画像作成能力はA4サイズで17枚/分である。
【0132】
カートリッジは、感光ドラムがあり、帯電手段としての帯電ローラ(帯電ローラ清掃のためにカプトン(商標)シートが感光ドラム当接して設けられている)、現像手段としての現像ローラが設けられている。また、現像ローラ上にトナーを供給するとともに現像ローラ上に残るトナー像形成に使用されなかった戻りトナーを掻き取り、トナーを摩擦帯電する供給ローラが設けられ、さらに、現像ローラに担持されるとナナー量を一定にするとともに摩擦帯電を付与する現像剤規制ブレードが現像ローラに当接して設けられている(一成分接触現像方式対応)。なお、現像ローラは感光ドラムに当接している。
【0133】
さらに、カートリッジは、感光ドラムに当接して、感光ドラム上に転写残りのトナーや転写材屑等を拭うクリーニングブレードが設けられ、帯電ローラによる帯電前に感光ドラム上に残る帯電を除去するための前露光手段を備えている。
【0134】
LBP5500(商品名)の出力スピードをA4用紙22枚/分に増すように装置を加工し、シアンカラーカートリッジの現像ローラとして、本実施例および比較例で作製した現像ローラ1〜36をそれぞれ組み込んだ。また、マゼンタ、イエローおよびブラックの各カートリッジは、トナーを抜き取り、さらにトナー残量検知機構を無効として、それぞれのステーションに配置した。
【0135】
〔画像評価〕
上記により改造した画像形成装置を用いて、標準チャート(図4)を連続出力(1日当たり500枚ずつ)し、下記の評価項目に応じて、所定の枚数目に出力した。転写材にLETTERサイズの普通紙「XEROX 4024用紙」(商品名)を10枚目と6010枚目は全面ベタ画像を、また、11枚目は全面ハーフトーン画像の出力とした。
6010枚目の画像は、13日目の10枚目に出力したものである。
【0136】
<初期濃度>
画像領域全体が一様であるベタ画像(10枚目)を、反射濃度計RD918(マクベス製)を使用し、ベタ印字した際のベタ黒部の濃度を5点測定し、その平均値を画像濃度とした。
◎:平均値が1.20以上
〇:平均値が1.15以上1.20未満
△:平均値が1.10以上1.20未満
×:平均値が1.10未満。
【0137】
<耐久時濃度>
画像領域全体が一様であるベタ画像(6010枚目)を、反射濃度計RD918(マクベス製)を使用し、ベタ印字した際のベタ黒部の濃度を5点測定し、その平均値を画像濃度とした。
◎:平均値が1.20以上
〇:平均値が1.15以上1.20未満
△:平均値が1.10以上1.20未満
×:平均値が1.10未満。
【0138】
<初期濃度ムラ>
画像領域全体が一様であるベタ画像(10枚目)、ハーフトーン画像(11枚目)で得られた画像に表れる濃淡ムラを検査員5人に目視により観察し、下記基準の評価をしてもらった。そして、検査員5人の評価結果をランク付けし、その中央値(3番目の評価)を当該試料での評価とした。
◎:濃淡ムラが、ベタ画像、ハーフトーン画像共に、目立たず、良好。
〇:濃淡ムラが、ベタ画像ではやや目立つが問題ないレベルで、ハーフトーン画像では目立たず、良好。
△:濃淡ムラが、ベタ画像、ハーフトーン画像共にやや見られるが、問題ないレベル。
×:濃淡ムラが、ベタ画像、ハーフトーン画像共に観察され、ベタ画像では中央部のニップ巾不足による白抜け目立ち、印象が悪い。
【0139】
<総合評価>
上記評価(硬度、電気抵抗、ブリード、初期濃度、耐久時濃度、初期濃度ムラ)の結果を総合し、以下の基準で総合評価した。
◎:6項目が◎のもの
○:電気抵抗、初期濃度が○以上、硬度、ブリードが△以上、耐久時濃度、初期濃度ムラが△以上かつ一方が○以上のもの
△:耐久時濃度以外の5項目が△以上のもの
×:耐久時濃度以外の5項目のいずれかに×があるもの
上記の基準に基づき評価した結果を、表6に示した。
表6に示すとおり、実施例1〜21は良好な結果が得られ、その中でも実施例3、4は特に良好な結果がでた。
【0140】
【表1】

【0141】
【表2】

【0142】
【表3】

【0143】
【表4】

【0144】
【表5】

【0145】
【表6】

【図面の簡単な説明】
【0146】
【図1】本発明の現像ローラの全体構成の一例を模式的に示す図である。
【図2】本発明の現像ローラにおける、ローラ層の二層構造を模式的に示す断面図である。図1の断面図である。
【図3】本発明の現像装置を用いた画像形成装置の説明図である。
【図4】本発明の評価に用いた標準チャートである。
【符号の説明】
【0147】
1…現像ローラ
2…現像装置
3…画像形成装置
11…軸芯体
12…弾性体層(基層)
13…被覆層(表層)
21…感光ドラム
22…帯電ローラ
23…レーザー光
24…プロセスカートリッジ(図示せず)
25…現像ローラ
26…補助ローラ
27…弾性ブレード
28…トナー
29…転写ローラ
30…クリーニングブレード
31…廃トナー容器
32…定着装置
33…紙
34…現像容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸芯体と、該軸芯体の外周面に順次、弾性層、被覆層が形成された現像ローラにおいて、該弾性層が少なくとも原料ゴム、カーボンブラック、ポリエステル系可塑剤を含有し、該原料ゴムのうちアクリロニトリル量31質量%以上、60質量%以下のアクリロニトリルブタジエンゴムを原料ゴムに対して80質量%以上、100質量%以下含有し、該カーボンブラックを原料ゴム100質量部に対し10質量部以上、80質量部以下含有し、カーボンブラックのDBP吸油量が80ml/100g以上、140ml/100g以下であり、該弾性層にポリエステル系可塑剤を原料ゴム100質量部に対し20質量部以上、90質量部以下含有し、ポリエステル系可塑剤の質量平均分子量が2000以上、12000以下の範囲にあり、かつ下記の数式(1)を満たすことを特徴とする現像ローラ。
0.010 ≦ Fp / (Fc × D) ≦ 0.025 ・・・数式(1)
D:該弾性層中のカーボンブラックのDBP吸油量(ml/100g)
Fc:該弾性層中の原料ゴムに対する、カーボンブラックの添加部数(質量部)
Fp:該弾性層中の原料ゴムに対する、ポリエステル系可塑剤の添加部数(質量部)
ただし、DBPはジブチルフタレートである(以下同様)
【請求項2】
前記弾性層の該アクリロニトリルブタジエンゴムのアクリロニトリル量が原料ゴムに対して36質量%以上、55質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の現像ローラ。
【請求項3】
前記弾性層の該ポリエステル系可塑剤が、下記の化学式(1)、化学式(2)、化学式(3)の一つ以上の構造単位を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の現像ローラ。
−CO−(CH24−CO− 化学式(1)
−CO−(CH27−CO− 化学式(2)
−CO−(CH28−CO− 化学式(3)
【請求項4】
前記弾性層の該ポリエステル系可塑剤の質量平均分子量が3500以上、10000以下の範囲にある請求項1から3の何れかに記載の現像ローラ。
【請求項5】
前記該弾性層のゴムが、硫黄により架橋されていることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の現像ローラ。
【請求項6】
前記該弾性層のゴムに含まれるカーボンブラックが、下記の数式(2)を満たすことを特徴とする請求項1から5の何れかに記載の現像ローラ。
0.005 ≦ D/N ≦ 0.014 ・・・数式(2)
D:該弾性層中のカーボンブラックのDBP吸油量(ml/100g)
N:該弾性層中のカーボンブラックの窒素比表面積(m2/g)
ただし、D/Nの単位はml/m2である
【請求項7】
前記該被覆層が、架橋系ウレタンゴムであり、かつ該架橋系ウレタンゴムの25℃トルエン膨潤度が150質量%以上、300質量%以下である請求項1から6の何れかに記載の現像ローラ。
【請求項8】
静電潜像が形成される潜像担持体に対向した状態で現像剤を担持する現像ローラを備え、該現像ローラが上記潜像担持体に現像剤を付与することにより該潜像を現像剤像として可視化する現像装置において請求項1から7に記載された現像ローラのいずれか1つであることを特徴とする現像装置。
【請求項9】
電子写真方式により静電潜像が形成される潜像担持体、静電潜像形成に必要な帯電量を潜像担持体に帯電するための帯電装置、潜像担持体の帯電領域に静電潜像を形成するための静電潜像形成装置、静電潜像に現像剤を付着させて可視化するための現像装置及び現像剤からなる画像を転写紙に転写するための転写装置を有する画像形成装置であって、
現像装置が、静電潜像が形成された潜像担持体の表面に現像剤を薄膜状に担持しつつ対向して当接もしくは圧接した状態で担持した現像剤を潜像担持体上の静電潜像に供給して静電潜像を顕像化するための現像ローラを有するものであり、該現像ローラが請求項1から7のいずれかに記載の現像ローラであることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−333857(P2007−333857A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−163381(P2006−163381)
【出願日】平成18年6月13日(2006.6.13)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】