説明

現像ローラ、該現像ローラを使用した電子写真プロセスカートリッジ及び電子写真画像形成装置

【課題】トナーへの帯電付与性を高めると同時に、他部材からの押圧による変形を抑制し、かつ長期にわたり高品質の画像を得ることが可能な現像ローラを提供する。
【解決手段】軸芯体と該軸芯体の周囲に少なくとも1層の弾性層及び該弾性層の外周面に樹脂層を設け、該樹脂層が、少なくとも、一般式(1)で表わされるユニットを有するエーテル化メラミン樹脂、樹脂粒子及びカーボンブラックを含む。(式中、Rは炭素数5乃至8のアルキル基を示す。R’は炭素数1乃至3のアルキル基を示す。また、*は繰り返しの結合を表す。)
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像ローラ、これを用いた電子写真プロセスカートリッジ及び電子写真画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真画像形成装置における現像方式として、一成分現像剤(トナー)を用いる一成分現像方式や二成分現像剤を用いる二成分現像方式が知られている。一成分現像方式は、小型化、軽量化に有利である。一成分現像方式は、現像剤中に磁性体を含有する磁性一成分現像方式と、磁性体を含有しない非磁性一成分現像方式に大別される。磁性体は通常有色であることから、フルカラープリンターには、非磁性一成分現像方法が用いられている。
【0003】
非磁性一成分現像方法を使用する現像装置においては、トナーを収納するトナー容器の開口を閉塞し、かつ、一部を容器外に露出するように現像ローラが設けられている。トナー容器内で現像ローラに当接して設けられる弾性ローラによって、現像ローラ表面上にトナーが供給される。ついでトナー量規制部材により余剰分が除去され、現像ローラ上にトナーが均一な薄膜状に形成されると同時に、摩擦によりトナーに正又は負の電荷が与えられる。さらに、現像ローラの回転により正又は負に帯電したトナーは、露出部の現像領域に搬送され、ここにおいて対向して設けられる感光ドラム表面の静電潜像に付着して現像を行う。この際にトナーへの電荷付与が適切に行われなければ、トナーが感光ドラム表面の静電潜像どおりに付着せず、所望の画像を得ることができない。また、電子写真画像形成装置が長期に亘って使用されずに放置された場合、現像ローラはトナー量規制部材や感光ドラムなどの他部材による押圧を一定箇所に継続して受けることにより現像ローラ表面近傍に変形を生じる。この変形は、トナー量規制部材によってトナーの薄膜形成が行われる際に、均一な薄膜形成を阻害する要因となる。その結果、感光ドラムへのトナーの供給量が変形部分で大きく変動するため、画像上に現像ローラ周期の画像不良が発生する。
【0004】
このように多様に求められる特性を満足するために、一般的に現像ローラは多層構成になっており、各層に機能を持たせ、機能分離を図り、現像ローラとして必要な各種特性の達成を試みられている。
【0005】
その特性の中で、帯電付与性の向上方法の一つとして、メラミン樹脂を最表層として現像ローラの外周に設ける方法が開示されている(特許文献1、2、3)。しかし、メラミン樹脂を最表層に用いると、ローラ表面の硬度が高くなり、耐久性が低下しやすい。また、接触現像に用いられる現像ローラでは他部材との接触によって常にローラの形状が変形するため、その変形に追従可能な柔軟性も求められるが、前記のようにメラミン樹脂ではローラ表面の硬度が高くなるので、現像ローラの柔軟性を確保することが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−132730号公報
【特許文献2】特開2004−184661号公報
【特許文献3】特開2007−025593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、トナーへの帯電付与性を高めると同時に、他部材からの押圧による変形を抑制し、かつ長期に亘り高品質の画像を得ることが可能な現像ローラを提供することにある。更に、これを用いることにより、長期に亘り高品質の画像を得ることができる電子写真プロセスカートリッジや、電子写真画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、現像ローラの最表面を形成する樹脂層の樹脂成分中にある特定のユニットを有するエーテル化メラミン樹脂を使用すれば、他部材からの押圧による変形が抑えられると同時に、高い帯電付与性を長期に亘って維持することが可能であることを見出した。かかる知見に基づき、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、軸芯体と該軸芯体の周囲に少なくとも1層の弾性層及び弾性層の外周面に樹脂層を設けてなる現像ローラにおいて、該樹脂層が、少なくとも、一般式(1)で表わされるユニットを有するエーテル化メラミン樹脂からなる樹脂成分と樹脂粒子とカーボンブラックを有することを特徴とする現像ローラである。
【0010】
【化1】

(式中、Rは炭素数5乃至8のアルキル基を示す。R’は炭素数1乃至3のアルキル基を示す。また、*は繰り返しの結合を表す。)
【0011】
また、本発明は、回転可能な感光ドラムと、該感光ドラムに接触し、該感光ドラムの表面を帯電する帯電部材と、該感光ドラムに接触して該感光ドラムの表面に現像ローラにより現像剤を供給して静電潜像を現像して現像剤像とする現像部材とを有する電子写真プロセスカートリッジにおいて、現像ローラが上記現像ローラであることを特徴とする電子写真プロセスカートリッジである。
【0012】
また、本発明は、回転可能な感光ドラムと、該感光ドラムに接触し、該感光ドラムの表面を帯電する帯電部材と、該感光ドラム表面に静電潜像を形成する露光手段と、該感光ドラムに接触して該感光ドラムの表面に現像ローラにより現像剤を供給して静電潜像を現像して現像剤像とする現像部材と、該現像剤像を転写材に転写する転写部材と、該転写材上に転写した現像剤像を定着する定着部材と、該定着部材とニップ部を形成し、該ニップ部により該転写材を圧接して搬送する加圧部材とを具備する電子写真画像形成装置において、現像ローラが上記現像ローラであることを特徴とする電子写真画像形成装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の現像ローラは、他部材からの押圧による変形の抑制と、高い帯電付与性を長期に亘って維持することが両立している。その結果、長期に亘って高品質な画質を得ることができる。また、本発明の電子写真プロセスカートリッジや電子写真画像形成装置は、長期に亘り高品質の画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の現像ローラの一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の電子写真画像形成装置を示す概略構成図である。
【図3】本発明の電子写真プロセスカートリッジを示す断面構成図である。
【図4】樹脂層の厚みを測定するためのサンプルを説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の現像ローラの構成の一例を図1に示す。図1(A)は現像ローラの長手方向の断面図を示し、図1(B)は現像ローラの長手方向に垂直な断面図を示す。
【0016】
この現像ローラは、軸芯体11上に、少なくとも1層の導電性弾性層12と該弾性層12の外周面に樹脂層13を順次積層した構造を有する。
【0017】
本発明の現像ローラに用いる軸芯体11は、上層の導電性弾性層12及び樹脂層13を支持可能であって、導電性を有すればいずれであってもよい。その材質としては、炭素鋼、合金鋼、鋳鉄、カーボンブラックや炭素繊維をプラスチックで固めた導電性樹脂の中から適宜選択して用いることができる。合金鋼としては、例えば、ステンレス鋼、ニッケルクロム鋼、ニッケルクロムモリブテン鋼、クロム鋼、クロムモリブテン鋼、Al、Cr、Mo及びVを添加した窒化鋼などを挙げることができる。
【0018】
更に、軸芯体11として、上記した材質からなる棒或いはパイプの表面をめっき、酸化処理などの防錆処理を行ったものを使用することができる。めっきの種類としては、電気めっき、無電解めっきなどいずれも使用することができるが、寸法安定性の観点から無電解めっきが好ましい。ここで使用される無電解めっきの種類としては、ニッケルめっき(カニゼンめっき)、銅めっき、金めっき、その他各種合金めっきなどを挙げることができる。ニッケルめっきの種類としては、Ni−P、Ni−B、Ni−W−P、Ni−P−PTFE複合めっきなどがある。めっきの厚さは、例えば、0.05μm以上とすることができるが、作業効率と防錆能力のバランスを考慮すると、めっき厚さは0.1μm以上30μm以下であることが適当である。
【0019】
軸芯体の形状としては、棒状又はパイプ状を挙げることができる。必要に応じて、その表面にプライマー処理層を形成してもよい。この軸芯体の外径は、例えば、4mm乃至20mmの範囲が適当である。
【0020】
また、軸芯体11の外周に設けられる導電性弾性層12の材料としては、フッ素ゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、スチレンゴム、ブチルゴム、ブタジエンゴムなどが挙げられる。これらの材料は単独で使用しても構わないし、複数種を組み合わせて用いることもできる。さらに、これらの材料の発泡体を導電性弾性層に用いても良い。
【0021】
導電性弾性層12は、硬さ(AskerC硬度)が20度以上60度以下であることが好ましい。導電性弾性層12の硬さが20度以上であれば、トナー量規制部材の当接時にローラが極端に変形することを抑制でき、ローラ上にトナーを均一に薄層化することができる。また、導電性弾性層12の硬さが60度以下であれば、搬送するトナーにダメージを与えることが少なく、出力画像の画質の低下が抑えられる。
【0022】
導電性弾性層の硬さ(AskerC硬度)の測定方法を示す。AskerC硬度は、日本ゴム協会標準規格SRIS0101に準拠したASKER−C型スプリング式ゴム硬度計(商品名、高分子計器株式会社製)を用いて測定した硬度である。測定する現像ローラを23℃、55%RHの環境下に24時間以上放置した後、現像ローラの中央部、両端から50mmの位置それぞれに対して、上記硬度計を9.8Nの力で当接させてから30秒後の測定値を求める。この3点から得られた測定値の相加平均の値を現像ローラの硬さとする。
【0023】
上記導電性弾性層12は、導電性を有するものとするため、イオン導電機構、又は電子導電機構による導電付与剤を含有する。イオン導電機構による導電付与剤としては、以下のものを用いることができる。
・周期表第I族金属の塩(LiCF3SO3、NaClO4、LiClO4、LiAsF6、LiBF4、NaSCN、KSCN、NaCl等)。
・周期表第II族金属の塩(Ca(ClO42、Ba(ClO42等)。
・アンモニウム塩(NH4Cl、(NH42SO4、NH4NO3等)。
・上記塩と多価アルコール(1,4−ブタンジオール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等)との錯体
・上記塩とモノオール(エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノエチルエーテル等)との錯体
・陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、両性界面活性剤。
【0024】
また、電子導電機構による導電付与剤としては、以下のものを挙げることができる。
・炭素系物質(カーボンブラック、グラファイト等)。
・金属や合金(アルミニウム、銀、金、錫−鉛合金、銅−ニッケル合金等)。
・金属酸化物(酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化錫、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化銀等)。
・さらに上記の導電付与剤に銅、ニッケル、銀等の導電性金属めっきを施した物質。
【0025】
これらイオン導電機構、電子導電機構による導電付与剤は粉末状や繊維状の形態で、単独又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。この中でも、カーボンブラックは導電性の制御が容易であり、また経済的であるなどの観点から好ましい。
【0026】
上記導電性弾性層12の体積抵抗率は1×104Ω・cm乃至1×1011Ω・cmの範囲にあることが、トナーを均一に帯電することができるので好ましい。導電性弾性層12の体積抵抗率のより好ましい範囲は1×104Ω・cm乃至1×109Ω・cmである。
【0027】
導電性弾性層12の体積抵抗率は、抵抗計として、デジタル超高抵抗/微少電流計「8340A」(商品名、エーディーシー株式会社製)を用い、以下の条件で測定できる。
測定モード:プログラムモード5
(チャージ及びメジャー30秒、ディスチャージ10秒)
印加電圧:100(V)
試料箱:レジスティビティ・チェンバ42(商品名、エーディーシー株式会社製)
主電極:直径22mm厚さ10mmの金属
ガードリング電極:内径41mm、外径49mm、厚さ10mmの金属
試験片:まず、導電性弾性層材料をシート状にして、成型条件と同条件で導電性弾性層材料を硬化して、厚み2.0mmのゴムシートを作製する。次に作製したゴムシートから直径56mmの試験片を切り出す。切り出した試験片の片面には、その全面にPt−Pd蒸着して蒸着膜電極(裏面電極)を設ける。もう一方の面には同じくPt−Pd蒸着膜により、直径25mmの主電極膜と、内径38mm、外径50mmのガードリング電極膜を同心状に設ける。なお、Pt−Pd蒸着膜は、マイルドスパッタE1030(商品名、株式会社日立製作所製)を用い、電流値15mAにて蒸着操作を2分間行って得る。蒸着操作を終了したものを測定サンプルとする。
【0028】
測定時には、直径22mmの主電極を、直径25mmの主電極膜からはみ出さないように置く。また、内径41mmのガードリング電極を、内径38mmで外径50mmのガードリング電極膜からはみ出さないように、該電極膜の上に置いて測定する。測定は、温度23℃、湿度55%RHの環境下で行う。測定前に測定サンプルを同環境に24時間以上放置しておく。以上の状態で、試験片の体積抵抗(Ω)を測定する。次に、測定した体積抵抗の値RM(Ω)、試験片の厚さt(cm)から、試験片の体積抵抗率RR(Ω・cm)を、以下の式によって求める。
RR(Ω・cm)=π×1.25×1.25×RM(Ω)÷t(cm)
【0029】
導電性弾性層12には、上記組成の機能を阻害しない範囲で、その他必要に応じて可塑剤、充填剤、増量剤、加硫剤、架橋剤、加硫助剤、架橋助剤、酸化防止剤、老化防止剤、加工助剤等の各種添加剤を含有させることができる。
【0030】
導電性弾性層12の厚さは、その材質やトナー量規制部材や感光ドラム等との関連において所望の弾性を有するように適宜選択することができ、例えば、1.0mm乃至5.0mmを挙げることができる。なお、該弾性層は、1層であっても、必要により、各機能を分担させるために2層以上としてもよい。
【0031】
本発明では、導電性弾性層12の外周面上に、抵抗、粗さ、硬度などの特性の調整を目的として、さらに、樹脂層13を設ける。
【0032】
本発明の現像ローラにおける樹脂層13は、少なくとも、一般式(1)で表されるユニットを有するエーテル化メラミン樹脂、樹脂粒子及びカーボンブラックを含む。
【0033】
【化2】

(式中、Rは炭素数5乃至8のアルキル基を示す。R’は炭素数1乃至3のアルキル基を示す。また、*は繰り返しの結合を表す。)
【0034】
また、少なくとも一般式(1)に示されるユニットを有するエーテル化メラミン樹脂からなる樹脂成分は、一般式(2)に示されるエーテル化メラミンを加熱し、反応させることによって得ることができる。
【0035】
【化3】

(式中、Rは炭素数5乃至8のアルキル基を示す。R’は炭素数1乃至3のアルキル基を示す。)
【0036】
上記一般式(2)で示されるエーテル化メラミンは、特開平9−208221号公報の比較製造例1のブチル化メラミン樹脂の調製例、特開平8−283364号公報や特開平8−92226号公報のメチル化メラミン樹脂の合成方法に準じて合成できる。また、本発明では、高帯電付与性と他部材からの長期的な押圧による変形の抑制を両立することを目的とし、一般式(1)に示されるエーテル化メラミン樹脂に着目し、樹脂層の改善を試みた。その検討の中で、一般式(1)においてRで示されるアルキル基の炭素数は5以上8以下であり、R’で表されるアルキル基が炭素数1以上3以下であることが非常に重要であることを見出した。
【0037】
各値がこの範囲にある場合に、一般式(1)で示されるユニットを有するエーテル化メラミン樹脂を現像ローラの樹脂層の樹脂成分として用いることで、適切なフレキシビリティーと高帯電付与性を両立することが可能である。ここでいう適切なフレキシビリティーとは、他部材からの長期的な押圧による変形を抑制可能な硬さと、現像プロセス中に他部材と接触しながら回転する際に生じる歪みに追従可能な柔軟性を同時に達成できることを指す。
【0038】
ここでRの炭素数が4以下、またR’の炭素数が0である場合には、一般式(1)で表されるエーテル化メラミン樹脂は樹脂層が硬くなることへの寄与が非常に高くなる。そのため、樹脂層を形成した際に樹脂層が脆くなり、画像形成プロセス中に他部材と接触しながら回転する現像ローラの樹脂層としては耐久性に問題が生じる。
【0039】
一方、Rの炭素数が9以上、またR’の炭素数が4以上である場合は、樹脂層が柔くなることへの寄与が大きくなり、他部材からの長期的な押圧による変形を抑制できないものと推測される。
【0040】
また、一般式(2)と反応可能な反応基(例えば水酸基)を有する別の樹脂材料と組み合わせて、樹脂層を形成することも可能である。その際、樹脂層の樹脂成分中に含有される一般式(1)のエーテル化メラミン樹脂の含有量が、20質量%以上50質量%以下である様にすることが好ましい。樹脂成分中で該エーテル化メラミン樹脂の含有量20質量%以上とすることにより、適切なフレキシビリティーと高帯電付与特性を十分に発現させることが可能である。また50質量%以下にすることで、組み合わせた別の樹脂材料の特性も十分に発現させることが可能である。
【0041】
また、樹脂層13には、樹脂粒子を含有することができる。樹脂粒子は、表面粗さをトナーの搬送に適したものとするために用いられる。樹脂層13の表面粗さは、表面粗さRa(JIS B0601:2001)で3.0μm以下であることが好ましい。Raが3.0μm以下であれば、トナーの搬送量が過大になるのを抑制し、感光ドラム上に残留するトナーにより画像が悪化するのを抑制することができる。樹脂粒子は無機粒子に比し、樹脂成分と馴染みが良いため、樹脂層中に均一に分散し、現像ローラ表面の粗さ分布を均一にすることが可能である。
【0042】
また、樹脂層13の役割として、導電性の付与がある。そのため、樹脂層13に用いる導電剤には、導電性の制御が行いやすいカーボンブラックを使用する。この際に樹脂成分中に含まれるカーボンブラックの量は樹脂層13に含まれる樹脂成分に対して、10質量%以上30質量%以下であることが好ましい。カーボンブラックの含有量が10質量%以上とすることで、現像ローラの樹脂層としての導電性を十分に確保することができる。また、30質量%以下とすることで、カーボンブラックによる樹脂層の補強効果によって、樹脂層が硬くなりすぎ、脆くなるのを防ぐことができる。
【0043】
樹脂層13の厚さは2μm以上8μm以下であることが好ましい。厚さが2μm以上であれば樹脂層13は十分な耐磨耗性を有し、8μm以下であれば樹脂層13が極端に硬くなることを抑制し、トナーへのダメージを抑制することができる。
【0044】
このような現像ローラの導電性弾性層12は、押出成形法、型成形法、射出成形法などの方法によって、軸芯体11上に成形することができるが、これらの方法のうち型成形法が好ましい。型成形法は、他の成形方法と比べ、形状精度の高い導電性弾性層を連続生産により効率よく低コストで得られるため有用である。なお、導電性弾性層12はその上に設ける樹脂層13との密着性を向上するために、その表面をコロナ処理、フレーム処理、エキシマ処理等の表面改質方法にて改質しておくことが好ましい。
【0045】
導電性弾性層上に樹脂層を成形する方法としては、塗工による方法を挙げることができる。塗工方法として、樹脂成分、樹脂粒子及びカーボンブラックを溶剤に溶解又は分散させて調製した塗工液を用いる、ディッピング法、ロール塗工法、リングコート法、スプレー塗工法等が適当である。これらの塗工法の中で、厚さを制御しやすく、製造が容易である等の理由から、ディッピング法を用いることが好ましい。ディッピング法では、塗工液の粘度が5mPa・s以上50mPa・s以下であることが好ましい。粘度を5mPa・s以上にすることで、塗工膜が硬化するまでに形状が崩れることがなく、安定した形状として製造することができる。また、塗工液の粘度を50mPa・s以下にすることで、塗工性に優れ、均一な膜厚に形成することが容易になる。このような粘度とするために、使用する溶剤及びその量を適宜選択することができる。
【0046】
溶剤としては、以下のものが挙げられる。
・アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール等)
・ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等)
・アミド類(N,N‐ジメチルホルムアミド、N,N‐ジメチルアセトアミド等)
・スルホキシド類(ジメチルスルホキシド等)
・エーテル類(テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル等)
・エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル等)
・芳香族化合物(キシレン等)
【0047】
次に、本発明の電子写真プロセスカートリッジ及び電子写真画像形成装置について説明する。
【0048】
一般的に電子写真画像形成装置は、回転可能な感光ドラム及び以下の部材を具備する。
・該感光ドラムに接触し、該感光ドラム表面を一様に帯電するための帯電部材
・該感光ドラム表面に画像情報を記録する(静電潜像を形成する)ための露光手段
・該感光ドラムに接触して該感光ドラム表面に現像剤を現像ローラにより供給して、静電潜像を現像して現像剤像とするための現像部材(以下、「現像装置」ということがある)
・該現像剤像を転写材に転写するための転写部材
・該転写材上に転写した現像剤像を定着するための定着部材
・該定着部材とニップ部を形成し、該ニップ部により該転写材を圧接して搬送する加圧部材
【0049】
一例として、図2に、本発明の現像ローラを具備した電子写真プロセスカートリッジを用いた電子写真画像形成装置の概略構成を示す。
【0050】
図2に示す電子写真画像形成装置は、黒、シアン、マゼンタ及びイエローの画像を形成するタンゼム型のカラー画像形成装置であり、それぞれの色に対応して電子写真プロセスカートリッジが設けられている。なお、電子写真プロセスカートリッジは、それぞれの色に対応して仕様等に違いがあるものの基本構成は同じである。以下においては、これら共通する構成について説明する。図3は、一つの電子写真プロセスカートリッジを取り出して概略断面図を示したものである。
【0051】
なお、上記したように、現像ローラ201を備えた現像装置205は、現像ローラ201、トナー供給ローラ202、トナー(現像剤)203及びトナー量規制部材204からなっている。そして、電子写真画像形成装置に脱着可能な電子写真プロセスカートリッジは、この現像装置205に加え、感光ドラム206、クリーニングブレード207、廃トナー収容容器208及び帯電部材209からなっている。電子写真プロセスカートリッジは、ある一定回数画像出力を行うことによって、寿命を迎える。その後、電子写真プロセスカートリッジは新しいものに交換され、電子写真画像形成装置は再び画像出力が可能になる。
【0052】
現像装置205は、トナー203を収容した現像容器と、現像容器内の長手方向に延在する開口部に位置し、感光ドラム206と対向設置された現像ローラ201とを備え、感光ドラム206上の静電潜像を現像して可視化するようになっている。
【0053】
トナー供給ローラ202としては、発泡骨格状スポンジ構造や軸芯体上にレーヨン、ポリアミド等の繊維を植毛したファーブラシ構造のものが、現像ローラ201へのトナー供給及び未現像トナーの剥ぎ取りの点から好ましい。例えば、軸芯体上にポリウレタンフォームを設けた弾性ローラを用いることができる。
【0054】
ここで、画像出力までの画像形成プロセスを詳細に説明する。感光ドラム206は矢印方向に回転し、感光ドラム206を帯電処理するための帯電部材209によって一様に帯電される。次に感光ドラム206に静電潜像を書き込む露光手段210(例えばレーザー光)により、静電潜像が形成される。静電潜像は、感光ドラム206に対して接触配置される現像装置205によってトナーが付与されることにより現像され、トナー像として可視化される。
【0055】
可視化された感光ドラム206上のトナー像は、転写部材211によって感光ドラム206の回転に同期して送られてくる記録紙212に転写される。トナー像が転写された記録紙212は、定着部材213により定着処理され、装置外に排紙され一連の画像形成プロセスは終了する。なお、記録紙212は搬送ベルト上に担持され、トナー像の形成に同期して搬送されている。そして、該記録紙212には、各色のトナー像が順次積層されてカラーのトナー像が形成される。最後の画像形成装置でトナー像が重畳転写された後、搬送ベルトから剥離され、定着部材213へ送られ、一括定着処理がされ、カラー画像が形成される。
【0056】
一方、記録紙に転写されずに感光ドラム206表面に残存したトナーは、クリーニングブレード207により掻き取られ、掻き取られたトナーは廃トナー容器208に収納される。一方、クリーニングされた感光ドラム206は次の画像形成に備える。
【実施例】
【0057】
以下に、本発明の現像ローラ、電子写真プロセスカートリッジ及び電子写真画像形成装置を、実施例により具体的に詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらに限定されるものではない。また、以下において、特に明記しない限り、部は質量部を表し、試薬等は市販の高純度品を用いた。
【0058】
まず、本実施例で使用したエーテル化メラミンの合成方法を示す。
【0059】
製造例1[エーテル化メラミンX−1の合成]
冷却管、撹拌装置及び温度計を備えた4つ口フラスコに、メラミン126部と、アセトアルデヒド308.4部及びペンチルアルコール705.6部を仕込み、pHを6.0に調整した。その後、撹拌しながら温度を70℃まで加熱し、エチロール化反応を行った。温度70℃に到達して20分後に、pHを3.0に調整した。その後、温度を70℃に維持し、5時間エーテル化反応を行った。その後、pHを7.0に調整し、未反応のアセトアルデヒド、ペンチルアルコール及び水を減圧下において、不揮発分が98%となるまで溜去した。なお、pHの調整には、適宜の濃度の塩酸及び苛性ソーダの水溶液を用いた。
【0060】
その後、エチレングリコールモノブチルエーテルで希釈し、析出した塩類を濾別した。さらにイオン交換水で希釈し、エーテル化メラミンX−1(一般式(2)中、R=C5の アルキル基、R’=C1のアルキル基)の水溶液を得た。
【0061】
製造例2[エーテル化メラミンX−2の合成]
冷却管、撹拌装置及び温度計を備えた4つ口フラスコに、メラミン126部と、プロピオンアルデヒド385.6部及びヘキシルアルコール817.5部を仕込み、pHを6.0に調整した。その後、撹拌しながら温度を70℃まで加熱し、プロピロール化反応を行った。温度70℃に到達して20分後に、pHを3.0に調整した。その後、温度を70℃に維持し、5時間エーテル化反応を行った。その後、pHを7.0に調整し、未反応のプロピオンアルデヒド、ヘキシルアルコール及び水を減圧下において、不揮発分が98%となるまで溜去した。なお、pHの調整には、適宜の濃度の塩酸及び苛性ソーダの水溶液を用いた。
【0062】
その後、エチレングリコールモノブチルエーテルで希釈し、析出した塩類を濾別した。さらにイオン交換水で希釈し、エーテル化メラミンX−2(一般式(2)中、R=C6のアルキル基、R’=C2のアルキル基)の水溶液を得た。
【0063】
製造例3[エーテル化メラミンX−3の合成]
冷却管、撹拌装置及び温度計を備えた4つ口フラスコに、メラミン126部と、アセトアルデヒド228.3部及びオクチルアルコール1041.9部を仕込み、pHを6.0に調整した。その後、撹拌しながら温度を70℃まで加熱し、エチロール化反応を行った。温度70℃に到達して20分後に、pHを3.0に調整した。その後、温度を70℃に維持し、5時間エーテル化反応を行った。その後、pHを7.0に調整し、未反応のアセトアルデヒド、オクチルアルコール及び水を減圧下において、不揮発分が98%となるまで溜去した。なお、pHの調整には、適宜の濃度の塩酸及び苛性ソーダの水溶液を用いた。
【0064】
その後、エチレングリコールモノブチルエーテルで希釈し、析出した塩類を濾別した。さらにイオン交換水で希釈し、エーテル化メラミンX−3(一般式(2)中、R=C8のアルキル基中、R’=C1のアルキル基)の水溶液を得た。
【0065】
製造例4[エーテル化メラミンX−4の合成]
冷却管、撹拌装置及び温度計を備えた4つ口フラスコに、メラミン126部と、ブチルアルデヒド504.8部及びペンチルアルコール705.6部を仕込み、pHを6.0に調整した。その後、撹拌しながら温度を70℃まで加熱し、ブチロール化反応を行った。温度70℃に到達して20分後に、pHを3.0に調整した。その後、温度を70℃に維持し、5時間エーテル化反応を行った。その後、pHを7.0に調整し、未反応のブチルアルデヒド、ペンチルアルコール及び水を減圧下において、不揮発分が98%となるまで溜去した。なお、pHの調整には、適宜の濃度の塩酸及び苛性ソーダの水溶液を用いた。
【0066】
その後、エチレングリコールモノブチルエーテルで希釈し、析出した塩類を濾別した。さらにイオン交換水で希釈し、エーテル化メラミンX−4(一般式(2)中、R=C5のアルキル基、R’=C3のアルキル基)の水溶液を得た。
【0067】
製造例5[エーテル化メラミンX−5の合成]
冷却管、撹拌装置及び温度計を備えた4つ口フラスコに、メラミン126部と、ブチルアルデヒド504.8部及びオクチルアルコール1041.9部を仕込み、pHを6.0に調整した。その後、撹拌しながら温度を70℃まで加熱し、ブチロール化反応を行った。温度70℃に到達して20分後に、pHを3.0に調整した。その後、温度を70℃に維持し、5時間エーテル化反応を行った。その後、pHを7.0に調整し、未反応のブチルアルデヒド、オクチルアルコール及び水を減圧下において、不揮発分が98%となるまで溜去した。なお、pHの調整には、適宜の濃度の塩酸及び苛性ソーダの水溶液を用いた。
【0068】
その後、エチレングリコールモノブチルエーテルで希釈し、析出した塩類を濾別した。さらにイオン交換水で希釈し、エーテル化メラミンX−5(一般式(2)中、R=C8のアルキル基、R’=C3のアルキル基)の水溶液を得た。
【0069】
製造例6[エーテル化メラミンX−6の合成]
冷却管、撹拌装置及び温度計を備えた4つ口フラスコに、メラミン126部と、ホルムアルデヒド210.1部及びペンチルアルコール705.6部を仕込み、pHを6.0に調整した。その後、撹拌しながら温度を70℃まで加熱し、メチロール化反応を行った。温度70℃に到達して20分後に、pHを3.0に調整した。その後、温度を70℃に維持し、5時間エーテル化反応を行った。その後、pHを7.0に調整し、未反応のホルムアルデヒド、ペンチルアルコール及び水を減圧下において、不揮発分が98%となるまで溜去した。なお、pHの調整には、適宜の濃度の塩酸及び苛性ソーダの水溶液を用いた。
【0070】
その後、エチレングリコールモノブチルエーテルで希釈し、析出した塩類を濾別した。さらにイオン交換水で希釈し、エーテル化メラミンX−6(一般式(2)中、R=C5のアルキル基、R’=C0のアルキル基=H)の水溶液を得た。
【0071】
製造例7[エーテル化メラミンX−7の合成]
冷却管、撹拌装置及び温度計を備えた4つ口フラスコに、メラミン126部と、アセトアルデヒド308.4部及びn−ブチルアルコール593.0部を仕込み、pHを6.0に調整した。その後、撹拌しながら温度を70℃まで加熱し、エチロール化反応を行った。温度70℃に到達して20分後に、pHを3.0に調整した。その後、温度を70℃に維持し、5時間エーテル化反応を行った。その後、pHを7.0に調整し、未反応のアセトアルデヒド、n−ブチルアルコール及び水を減圧下において、不揮発分が98%となるまで溜去した。なお、pHの調整には、適宜の濃度の塩酸及び苛性ソーダの水溶液を用いた。
【0072】
その後、エチレングリコールモノブチルエーテルで希釈し、析出した塩類を濾別した。さらにイオン交換水で希釈し、エーテル化メラミンX−7(一般式(2)中、R=C4のアルキル基、R’=C1のアルキル基)の水溶液を得た。
【0073】
製造例8[エーテル化メラミンX−8の合成]
冷却管、撹拌装置及び温度計を備えた4つ口フラスコに、メラミン126部と、ホルムアルデヒド210.1部及びオクチルアルコール1041.9部を仕込み、pHを6.0に調整した。その後、撹拌しながら温度を70℃まで加熱し、メチロール化反応を行った。温度70℃に到達して20分後に、pHを3.0に調整した。その後、温度を70℃に維持し、5時間エーテル化反応を行った。その後、pHを7.0に調整し、未反応のホルムアルデヒド、オクチルアルコール及び水を減圧下において、不揮発分が98%となるまで溜去した。なお、pHの調整には、適宜の濃度の塩酸及び苛性ソーダの水溶液を用いた。
【0074】
その後、エチレングリコールモノブチルエーテルで希釈し、析出した塩類を濾別した。さらにイオン交換水で希釈し、エーテル化メラミンX−8(一般式(2)中、R=C8のアルキル基、R’=C0のアルキル基=H)の水溶液を得た。
【0075】
製造例9[エーテル化メラミンX−9の合成]
冷却管、撹拌装置及び温度計を備えた4つ口フラスコに、メラミン126部と、ブチルアルデヒド504.8部及びn−ブチルアルコール593部を仕込み、pHを6.0に調整した。その後、撹拌しながら温度を70℃まで加熱し、ブチロール化反応を行った。温度70℃に到達して20分後に、pHを3.0に調整した。その後、温度を70℃に維持し、5時間エーテル化反応を行った。その後、pHを7.0に調整し、未反応のブチルアルデヒド、n−ブチルアルコール及び水を減圧下において、不揮発分が98%となるまで溜去した。なお、pHの調整には、適宜の濃度の塩酸及び苛性ソーダの水溶液を用いた。
【0076】
その後、エチレングリコールモノブチルエーテルで希釈し、析出した塩類を濾別した。さらにイオン交換水で希釈し、エーテル化メラミンX−9(一般式(2)中、R=C4のアルキル基、R’=C3のアルキル基)の水溶液を得た。
【0077】
製造例10[導電性弾性層を有する原料ローラの作製]
軸芯体としてSUS304製の直径8mmの棒にニッケルメッキを施し、さらに厚み約1μmのプライマーDY39−051(商品名、東レダウコーニング社製)を塗布し、温度150 ℃で30分間焼き付けしたものを用いた。ついで、軸芯体を金型に配置し、液状シリコーンゴム材料SE6274A(商品名、東レダウコーニングシリコーン社製)及びSE6274B(商品名、東レダウコーニング社製)を重量比1:1の割合でスタティックミキサーを用いて混合した。その後、混合した液状シリコーンゴムを金型内に形成されたキャビティに注入した。続いて、金型を加熱して液状シリコーンゴムを温度150 ℃、15分間加硫硬化し、冷却後脱型した。その後にさらに、温度180 ℃で2時間加熱し硬化反応を完結させ、導電性弾性層を軸芯体周囲に設けた原料ローラを得た。なお、原料ローラの直径は16mmであった。
【0078】
[実施例1][現像ローラ1の作製]
[樹脂層用塗工液の調製]
樹脂成分として、アクリルポリオール(商品名:H3368、日立化成株式会社製)100部及びエーテル化メラミンX−1(製造例1で作製)42.9部(固形分)を用意した。この樹脂成分100部に対し、カーボンブラック(商品名:MA−100、三菱化学株式会社製)23部及び樹脂粒子(商品名:C400透明、根上工業株式会社製)30部を、メチルエチルケトン(MEK)を加えながら混合して、混合溶液を得た。
【0079】
続いて、上記混合溶液を横型分散機NVM−03(商品名、アイメックス株式会社製)で周速7m/s、流量1.7cm3/s、分散液温度15 ℃の条件下で2時間均一分散した後、380メッシュの網でろ過して、樹脂層用塗工液を得た。
【0080】
[樹脂層の形成]
次に直径32mmのシリンダーの内部を上記塗工液で満たし、該シリンダー内の塗工液を流速4.0cm3/s、液温23℃で循環させた。この際、塗工液にMEKを加え、塗工液の粘度を調整した。その後、該シリンダー内に導電性弾性層を有する原料ローラ(製造例10で作製)を侵入速度100mm/sで浸漬させた。弾性層全体を浸漬させた状態で、10 秒間停止させた後に、初速300mm/s、終速200mm/sの条件で引き上げて、10分間、自然乾燥させた。次いで、温度160℃で2時間加熱処理して、塗膜層の硬化を行い、樹脂層を形成して現像ローラ1を得た。
【0081】
なお、現像ローラの樹脂層の膜厚測定は以下の手順で行った。現像ローラの長手方向の中心部及び両端から50mmの部分から、剃刀を用いて図4に示すような弾性層41と樹脂層42からなる半月型のサンプルをそれぞれ切り出した。各サンプルについて、光学顕微鏡を用いて、場所を変えながら樹脂層42の厚みを10点測定した。この際、樹脂粒子が存在しない部分を選択し、測定を行った。現像ローラ1本について、3サンプル(現像ローラ中央部、両端から50mmの部分)×10点=計30点の樹脂層厚みの相加平均値を求め、その値を当該現像ローラの樹脂層厚みとした。
【0082】
また、得られた現像ローラ1を使用して、形成した画像の初期濃度、現像ローラ1の耐久性、表面汚れ、変形量について、以下のようにして測定し、評価を行った。結果を表1に示す。
【0083】
[画像の初期濃度]
現像ローラを電子写真プロセスカートリッジに組み込み、初期濃度評価を行った。この評価を行う際には、電子写真画像形成装置「LBP5500」(商品名、キヤノン株式会社製)を用い、電子写真プロセスカートリッジとして、この装置専用のEP−85トナーカートリッジ(ブラック)を用いた。
【0084】
現像ローラを組み込んだ電子写真プロセスカートリッジを25℃、45%RHの環境に24時間放置した後、同環境において電子写真画像形成装置本体に搭載し、ベタ黒画像を出力した。出力した画像の上部、中央部及び下部の各領域で左、中央及び右の3点、計9点において、分光濃度計「504JP」(商品名、X-Rite社製)を使用して画像濃度を測定し、その相加平均値を画像の初期濃度とした。その測定結果に基づいて、下記聞き準で評価した。
A:画像の初期濃度の値が1.4以上。
B:画像の初期濃度の値が1.2以上1.4未満。
C:画像の初期濃度の値が1.2未満。
【0085】
[耐久性]
上記画像の初期濃度の測定に続いて、印字率が1%の画像を8000枚出力した後、電子写真プロセスカートリッジから現像ローラを取り出し、取り出した現像ローラを目視にて観察した。現像ローラ端部の樹脂層13にひび割れや、導電性弾性層12からの剥がれなどが無い場合は、再び電子写真プロセスカートリッジに組み込み、該8000枚出力を行い、現像ローラを目視観察した。そして、以下の基準で耐久性を評価した。
C:最初の8000枚出力後の観察でひび割れや剥がれがあった。
B:2回目の8000枚出力後の観察でひび割れや剥がれがあった。
A:2回目の8000枚出力後の観察ではひび割れや剥れがなかった。
【0086】
[表面汚れ]
上記耐久性試験において、最初の8000枚出力後、ベタ白画像を出力して、かぶり値を測定し、現像ローラの表面汚れの指標とした。かぶり値は、反射濃度計(有限会社東京電色技術センター製)にて、画像形成前の転写紙と出力ベタ白画像の反射濃度を測定し、その差分をかぶり値とした。測定領域は転写紙の画像印刷領域を左上から順に1cm×1cmの領域に分割し、各領域におけるかぶり値を測定し、その値の最大値を、当該ベタ白画像のかぶり値とした。なお、かぶりは現像ローラの表面にトナーが固着して、トナーの帯電量が減少し、該トナーが転写紙に転写されることによって生じる現象であるので、かぶり値を現像ローラの表面汚れの指標とし、下記基準で評価した。
A:かぶり値が1.0未満。
B:1.0以上3.0未満。
C:3.0以上5.0未満。
D:5.0以上。
【0087】
[現像ローラの変形量の評価]
現像ローラを前記の電子写真プロセスカートリッジに組み込み、40℃、95%RHの環境に15日間放置した後、電子写真プロセスカートリッジを25℃45%RHの環境に24時間放置した。その後、25℃、45%RHの環境にて、電子写真プロセスカートリッジを電子写真画像形成装置本体に搭載し、ベタ黒画像を出力した。得られたベタ黒画像に、放置中のトナー規制部材との当接による現像ローラの凹みが原因で現れたと考えられる画像不良を目視で観察し、下記基準で評価して、現像ローラの変形量の評価とした。
A:目視では画像不良が確認できない。
B:目視でわずかに画像不良が確認できるが、実用上問題ない。
C:目視で画像不良が確認できる。
D:目視で画像不良がはっきりと確認できる。
【0088】
[実施例2][現像ローラ2の作製]
エーテル化メラミンとして製造例2で得たX−2を使用した以外は実施例1と同様にして、現像ローラ2を得た。以下、実施例1と同様に、得られた現像ローラ2を評価した。結果を表1に示す。
【0089】
[実施例3] [現像ローラ3の作製]
エーテル化メラミンとして製造例3で得たX−3を使用した以外は実施例1と同様にして、現像ローラ3を得た。以下、実施例1と同様に、得られた現像ローラ3を評価した。結果を表1に示す。
【0090】
[実施例4] [現像ローラ4の作製]
エーテル化メラミンとして製造例4で得たX−4を使用した以外は実施例1と同様にして、現像ローラ4を得た。以下、実施例1と同様に、得られた現像ローラ4を評価した。結果を表1に示す。
【0091】
[実施例5] [現像ローラ5の作製]
エーテル化メラミンとして製造例5で得たX−5を使用した以外は実施例1と同様にして、現像ローラ5を得た。以下、実施例1と同様に、得られた現像ローラ5を評価した。結果を表1に示す。
【0092】
[実施例6乃至9] [現像ローラ6乃至9の作製]
エーテル化メラミンX−1の配合量(固形分)をそれぞれ11.1部、25.0部、100.0部、150.0部に変更した以外は実施例1と同様にして、現像ローラ6乃至9を得た。以下、実施例1と同様に、得られた現像ローラ6乃至9を評価した。結果を表1に示す。
【0093】
[実施例10乃至13] [現像ローラ10乃至13の作製]
樹脂層の膜厚がそれぞれ1.0μm、2.0μm、8.0μm、10.0μmとなるように固形分濃度を調整した以外は実施例1と同様にして、現像ローラ10乃至13を得た。以下、実施例1と同様に、得られた現像ローラ10乃至13を評価した。結果を表1に示す。
【0094】
[実施例14乃至17] [現像ローラ14乃至17の作製]
カーボンブラックの配合量をそれぞれ8部、10部、30部、33部に変更した以外は、実施例1と同様にして、現像ローラ14乃至17を得た。以下、実施例1と同様に、得られた現像ローラ14乃至17を評価した。結果を表1に示す。
【0095】
[比較例1乃至4][比較現像ローラ1乃至4の作製]
エーテル化メラミンとして、それぞれエーテル化メラミンX−6、エーテル化メラミンX−7、エーテル化メラミンX−8、エーテル化メラミンX−9を使用した以外は実施例1と同様にして、比較現像ローラ1乃至4を得た。以下、実施例1と同様に、得られた比較現像ローラ1乃至4を評価した。結果を表1に示す。
【0096】
【表1】

【0097】
表1より、以下のことが分かる。
【0098】
実施例1乃至5の結果より、一般式(1)で表されるユニットを有するエーテル化メラミン樹脂として、R及びR’で示されるアルキル基の炭素数を増やすことによって、樹脂層の適度な柔軟化と高帯電性が達成でき、良好な画像を得ることができた。但し、R及びR’で示されるアルキル基の炭素数を大きくしすぎると樹脂層の柔軟化が大きくなりすぎ、変形量の抑制効果が小さくなることも示唆されている。なお、Rで示されるアルキル基の炭素数が小さすぎたり、R’が水素原子であったりすると、比較例1乃至4に見られるように、耐久性、表面汚れ、特に表面汚れに問題がある。
【0099】
実施例6乃至9の結果より、樹脂成分中の一般式(1)で表わされるユニットを有するエーテル化メラミン樹脂の含有量を適切な範囲に制御することで、良好な画像を得ることができた。エーテル化メラミン樹脂の含有量が少なすぎると、帯電性が低下するために初期濃度が若干低下する。また、エーテル化メラミン樹脂の含有量が多すぎると、樹脂層の高硬度化への寄与が大きくなることにより、耐久性が若干低下するとともに、現像ローラの表面汚れ(トナー付着)が発生しやすくなる。
【0100】
実施例10乃至13の結果より、樹脂層の厚みを適切な範囲に制御することで、良好な画像を得ることができた。樹脂層の厚みが薄すぎると磨耗による耐久性の低下が見ら、樹脂層が厚すぎると表面硬度が増加することによって、現像ローラの表面汚れ(トナー付着)が発生しやすくなる。
【0101】
実施例14乃至17の結果より、樹脂層中のカーボンブラックの含有量を適切な範囲に制御することで、良好な画像を得ることができた。カーボンブラックの含有量が少なすぎると、導電性の低下による初期濃度の低下が見られ、カーボンブラックの含有量が多すぎると、カーボンブラックの補強効果によって、樹脂層が高硬度化し、耐久性が低下する。
【符号の説明】
【0102】
11 軸芯体
12 導電性弾性層
13 樹脂層
201 現像ローラ
202 トナー供給ローラ
203 トナー
204 トナー量規制部材
205 現像装置
206 感光ドラム
207 クリーニングブレード
208 廃トナー収容容器
209 帯電部材
210 露光手段
211 転写部材
212 記録紙
213 定着部材
41 導電性弾性層
42 樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸芯体と該軸芯体の周囲に少なくとも1層の弾性層及び該弾性層の外周面に樹脂層を設けてなる現像ローラであって、
該樹脂層が、少なくとも、一般式(1)で表わされるユニットを有するエーテル化メラミン樹脂、樹脂粒子及びカーボンブラックを有することを特徴とする現像ローラ。
【化1】

(式中、Rは炭素数5乃至8のアルキル基を示す。R’は炭素数1乃至3のアルキル基を示す。また、*は繰り返しの結合を表す。)
【請求項2】
前記エーテル化メラミン樹脂が、前記樹脂層の樹脂成分中の20質量%以上50質量%以下である請求項1に記載の現像ローラ。
【請求項3】
前記樹脂層の厚みが、2μm以上8μm以下である請求項1又は2に記載の現像ローラ。
【請求項4】
前記カーボンブラックの含有量が、樹脂成分に対して、10質量%以上30質量%以下である請求項1乃至3のいずれかに記載の現像ローラ。
【請求項5】
回転可能な感光ドラムと、該感光ドラムに接触し、該感光ドラムの表面を帯電する帯電部材と、該感光ドラムに接触して該感光ドラム表面に現像ローラにより現像剤を供給して静電潜像を現像して現像剤像とする現像部材とを有する電子写真プロセスカートリッジにおいて、
該現像ローラが、請求項1乃至4のいずれかに記載の現像ローラであることを特徴とする電子写真プロセスカートリッジ。
【請求項6】
回転可能な感光ドラムと、該感光ドラムに接触し、該感光ドラムの表面を帯電する帯電部材と、該感光ドラム表面に画像情報を記録する露光手段と、該感光ドラムに接触して該感光ドラムの表面に現像剤を現像ローラにより供給して静電潜像を現像して現像剤像とする現像部材と、該現像剤像を転写材に転写する転写部材と、該転写材に転写した現像剤像を定着する定着部材と、該定着部材とニップ部を形成し、該ニップ部により該転写材を圧接して搬送する加圧部材とを具備する電子写真画像形成装置において、
該現像ローラが、請求項1乃至4のいずれかに記載の現像ローラであることを特徴とする電子写真画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−204134(P2010−204134A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−46164(P2009−46164)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】