説明

現像ローラ、電子写真プロセスカートリッジ及び電子写真装置

【課題】長期間の画像出力においても現像剤の搬送性を維持し、十分な濃度の画像を得ることができる現像ローラ、該現像ローラを用いた電子写真プロセスカートリッジ及び電子写真装置を提供する。
【解決手段】一成分負帯電性の現像剤とともに用いられる現像ローラ1であって、導電性の軸芯体102と、表面層103である導電性のウレタン樹脂層とを有する。該ウレタン樹脂層は、ウレタン樹脂と、該ウレタン樹脂に分散され、かつ、該ウレタン樹脂層の表面に非露出な状態で含有されてなる樹脂粒子104とを含む。現像ローラ1は、その表面に、該樹脂粒子に由来する複数個の凸部を有し、それによって粗面化されている。該現像ローラの表面は、該凸部と該凸部との間の谷部を除き、フッ素樹脂またはシリコーン樹脂105によって被覆されている。該凸部と該凸部との間の谷部においては該ウレタン樹脂層の表面が露出している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真画像形成装置(以下、「電子写真装置」と呼ぶ)に用いられる現像ローラ、電子写真プロセスカートリッジ及び電子写真装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、現像剤の搬送性が高く、かつ、表面の摩耗の少ない現像ローラとして、紫外線または電子線を照射して硬化させた樹脂層を備え、該樹脂層が微粒子を分散含有させられており、かつ、フッ素を含む現像ローラを開示している。
また、特許文献2には、現像剤の搬送性が高く、かつ、表面の摩耗の少ない現像ローラとして、紫外線または電子線を照射して硬化させた樹脂層を備え、該樹脂層が微粒子を分散含有させられており、かつ、ケイ素を含む現像ローラを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−352015号公報
【特許文献2】特開2005−352017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献に係る現像ローラは、表面に微粒子由来の凸部を有することにより優れた現像剤の搬送性を示し、また、樹脂層がフッ素またはケイ素を含有することにより、樹脂層表面の摩擦抵抗が低下することにより凸部の摩耗が抑えられるために現像剤の優れた搬送性能が長期に亘って維持されているものと考えられる。
ここで、電子写真装置に用いられる現像ローラの役割として、現像領域に現像剤を搬送するとともに、現像剤に十分な摩擦電荷を付与することがある。
本発明者らの検討によれば、上記特許文献に係る現像ローラの樹脂層はフッ素またはケイ素を含むことにより、その表面の帯電系列が一般的な負帯電性の現像剤の帯電系列に近づく。そのため、当該現像ローラの、負帯電性の現像剤に対する帯電付与能は相対的に低下する方向に行く。すなわち、上記特許文献に記載の帯電ローラは、現像剤の長期に亘る搬送性については優れているものの、現像剤に対する帯電付与能についてはむしろ低下させる構成であるといえる。
そこで、本発明の課題は、現像剤の搬送性能と、現像剤の帯電性能とを高いレベルで両立させることのできる現像ローラを提供することにある。
更に、本発明が解決しようとする課題は、該現像ローラを用いた電子写真プロセスカートリッジ及び電子写真装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る現像ローラは、負帯電性の現像剤とともに用いられる現像ローラであって、導電性の軸芯体、および導電性のウレタン樹脂層を有し、該ウレタン樹脂層は、ウレタン樹脂と、該ウレタン樹脂に分散され、かつ、該ウレタン樹脂層の表面に非露出な状態で含有されてなる樹脂粒子とを含み、該現像ローラは、その表面に、該樹脂粒子に由来する複数個の凸部を有し、該現像ローラの表面は、該凸部と該凸部との間の谷部を除いて、フッ素樹脂またはシリコーン樹脂によって被覆されており、かつ、該凸部と該凸部との間の谷部においては該ウレタン樹脂層の表面が露出していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る現像ローラは、凸部の表面がフッ素樹脂またはシリコーン樹脂で被覆されていることで凸部が摩耗しにくくなっている。そのため、現像剤の搬送性能が長期に亘って維持される。一方、凸部間の谷部においては負帯電性の現像剤に対する電荷付与性能の高いウレタン樹脂が露出しているため、優れた帯電付与能を有する。
すなわち、本発明によれば、安定した現像剤の搬送性能と、現像剤の帯電付与性能とを高いレベルで両立し得る帯電ローラを得ることができる。
また、長期に亘って高品位な電子写真画像の形成に資する電子写真プロセスカートリッジ及び電子写真装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の現像ローラの一例を示す軸方向の断面図である。
【図2】本発明の現像ローラの表面近傍断面図の一部拡大図である。
【図3】本発明の現像ローラを用いた電子写真装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を説明するが、本発明の技術的範囲はこれによって限定されるものではない。
以下、本発明の一例を、概略図である図1および図2を用いて示す。
本発明は、負帯電性の現像剤とともに用いられる現像ローラ1であって、導電性の軸芯体102と、弾性層101と、表面層103である導電性のウレタン樹脂層とを有している。またウレタン樹脂層は、ウレタン樹脂と、ウレタン樹脂に分散された樹脂粒子104とを含有しており、樹脂粒子104はウレタン樹脂層の中に内包されている。つまり、樹脂粒子104は、ウレタン樹脂層の表面に非露出な状態で含有されている。
ウレタン樹脂層の表面(現像ローラの表面)は、樹脂粒子に由来する複数個の凸部を有し、それによって粗面化されており、さらに、ウレタン樹脂層の表面は、凸部と凸部との間の谷部106を除き、フッ素樹脂またはシリコーン樹脂105によって被覆されている。つまり、谷部106においてはウレタン樹脂層の表面が露出している。
ここで述べる凸部とは、たとえば走査型共焦点レーザー顕微鏡(商品名:OLS3100 オリンパス株式会社製)でウレタン樹脂層の表面を観察し、断面曲線を描いて極小値から2μm以上の部位を指す。
【0009】
本発明の現像ローラの表面層103を構成する樹脂としては、負帯電性現像剤への電荷付与性を考慮してウレタン樹脂を用いる。これは、ウレタン樹脂は正帯電性に富む性質を有しており、このような特性を有するウレタン樹脂を、表面層を構成する樹脂として用いることにより現像剤を帯電し十分な画像濃度を得ることができるためである。
【0010】
一方、現像剤の搬送を目的とした現像ローラ表面の凸部をフッ素樹脂またはシリコーン樹脂で被覆することの技術的意義を以下に説明する。
すなわち、表面層中に分散されてなり、表面層の表面に凸部を生じさせている樹脂粒子104は、使用中に表面層から脱落することを防ぐために、表面層103であるウレタン樹脂に完全に覆われている。しかしながら、長期間に亘る使用により、凸部が現像剤規制部材や、現像剤および外添剤との強い摺擦を受け続けると、樹脂粒子104を覆っていた表面層103が次第に摩耗してくる。そして、摩耗が進むと、樹脂粒子104が表面層103の表面に露出し、ついには樹脂粒子104が表面層103から脱落することがある。その結果、表面層の粗さが低下し、現像剤の搬送性に影響を与えることが考えられる。
本発明における表面層の凸部を被覆するフッ素樹脂またはシリコーン樹脂105は、凸部の、現像剤規制部材や現像剤との摩擦よる応力集中を緩和し、凸部の摩耗を抑制している。
このような用途に好適なフッ素樹脂としては、フルオロエチレン/ビニルエーテル交互共重合体や、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられ、シリコーン樹脂としては、カルビノール変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル等が挙げられる。一般にフッ素樹脂やシリコーン樹脂は離型性が高く、基材と密着しにくい。そのため、基材であるウレタン樹脂のイソシアネート基と反応する官能基を有していることが望ましい。
【0011】
そして、上記フッ素樹脂またシリコーン樹脂は、凸部と凸部との間の谷部には設けないようにすることが肝要である。フッ素樹脂またはシリコーン樹脂の被膜は、現像剤に摩擦電荷を付与する能力が低い。そこで、凸部と凸部との間の谷部においては、ウレタン樹脂層の表面を露出せしめ、当該露出部分においてトナーに十分な摩擦電荷を付与できるようにすることが重要である。
このようにフッ素樹脂またはシリコーン樹脂の被膜を、表面層103の凸部に選択的に設ける方法としては、アプリケーターのような塗工装置を用いる方法が挙げられる。
具体的には、ガラス基板のような平滑な板上に、アプリケーターを用いフッ素樹脂またはシリコーン樹脂を塗布し、その後に表面層を設けた現像ローラを転がすことで現像ローラの上に上記樹脂成分を転写する。このとき、アプリケーターによるウェット膜厚は樹脂粒子によって設けられた凸部高さよりも薄くする必要がある。ここでいう「凸部高さ」とは次の方法で算出する。1)まず、走査型共焦点レーザー顕微鏡(商品名:OLS3100、オリンパス株式会社製)を用いて得られた凸部と凸部の間の谷部から該凸部までの高さを走査エリアの面平均で求める。2)次に、この高さを現像ローラの長手方向両端から20mm内側部分および中央部の三ヶ所において、60°ごと6位相の計18点で求めて、それら18点における値の相加平均を前記の「凸部高さ」とする。
【0012】
現像剤は、現像ローラの谷部において現像ローラと摩擦されることで帯電する。そのため、ウェット膜厚が表面層の凸部高さよりも大きい場合、現像ローラ表面の谷部にも上記樹脂成分が塗布されてしまい、一成分負帯電性現像剤への電荷付与性を低下させてしまう可能性がある。
また、前述の通りフッ素樹脂やシリコーン樹脂は離型性が高いため、基材であるウレタン樹脂のイソシアネート基と反応させることで密着性を高めることが好ましい。そのため、以下の工程を経ることが好ましい。浸漬塗工等によって塗工した塗膜の、有機溶媒成分だけを揮発させる、いわゆる指触乾燥工程、フッ素樹脂またはシリコーン樹脂を塗膜の凸部に被覆させる工程、塗膜の焼成工程、である。これらの工程を順に経ることで、フッ素樹脂またはシリコーン樹脂が塗膜中のイソシアネート基と反応し、両者が化学結合する。例えば、トリフルオロプロピルトリメトキシシランなどは加水分解してシラノール基を生成し、反応性の高いイソシアネート基と化学結合し、表面にフッ素樹脂が被覆されたウレタン樹脂が得られる。
【0013】
本発明にかかる現像ローラの軸芯体102の材料は、導電性であれば何でも良く、炭素鋼、合金鋼及び鋳鉄及び、導電性樹脂の中から、適宜選択して用いることが出来る。
【0014】
弾性層101は、原料主成分としてゴム又は樹脂を用いた成型体である。
なお、原料主成分のゴムとして、種々のゴムを用いることができ、具体的には、次のものを挙げることができる。エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(EPDM)、アクリルニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、シリコーンゴム、エピクロロヒドリンゴム、ブタジエンゴム(BR)、NBRの水素化物、多硫化ゴム、ウレタンゴム。
【0015】
また、原料主成分の樹脂としては主に熱可塑性樹脂を使用する。具体的には、次のものを挙げることができる。低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)の如きポリエチレン系樹脂;ポリプロピレン系樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリスチレン系樹脂;ABS樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートの如きポリエステル樹脂;フッ素樹脂;ポリアミド6、ポリアミド66、MXD6の如きポリアミド樹脂。
【0016】
そして、これらのゴムや樹脂は、単独であるいは2種以上を混合して用いられる。
中でも、弾性層101には適度に低硬度であり十分な変形回復力を持たせることが重要であるため、弾性層に用いられる材料としては液状シリコーンゴム、液状ウレタンゴムを用いることが好ましい。特には加工性が良好で寸法精度の安定性が高く、硬化反応時に反応副生成物が発生しないなどの生産性に優れる理由から、付加反応架橋型液状シリコーンゴムを用いることがより好ましい。
【0017】
さらに、本発明の現像ローラでは、弾性層自体に要求される機能に必要な、導電剤や非導電性充填剤、また、ゴム及び樹脂成型体とする際に利用される各種添加剤成分、例えば、架橋剤、触媒、分散促進剤の如きを主成分のゴム材料に適宜配合できる。
導電剤としては、イオン導電機構によるイオン導電性物質と、電子導電機構による導電付与剤があり、どちらか一方でもよいが、併用することも可能である。
【0018】
電子導電機構による導電剤としては、次のものが挙げられる。カーボンブラック、グラファイトの如き炭素系物質;アルミニウム、銀、金、錫−鉛合金、銅―ニッケル合金の如き金属或いは合金;酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化錫、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化銀の如き導電性金属酸化物;各種フィラーに銅、ニッケル又は銀で導電性表面処理を施した物質。
【0019】
また、イオン導電機構による導電付与剤としては、次のものが挙げられる。LiCFSO、NaClO、LaClO、LiAsF、LiBF、NaSCN、KSCN、NaClの如き周期律表第1族金属の塩;NHCl、(NHSO、NHNOの如きアンモニウム塩;Ca(ClO、Ba(ClOの如き周期律表第2族金属の塩;これらの塩と1,4−ブタンジオール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコールの如き多価アルコールやそれらの誘導体との錯体;これらの塩とエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノエチルエーテルの如きモノオールとの錯体;第4級アンモニウム塩の如き陽イオン性界面活性剤;脂肪族スルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩の如き陰イオン性界面活性剤;ベタインの如き両性界面活性剤。
【0020】
これら導電剤は、単独で又は2種類以上を混合して使用することができる。
これらの中で、カーボンブラック系の導電剤は、比較的安価かつ容易に入手でき、また、原料主成分のゴム材料の種類に依らず、良好な導電性を付与できるため、好ましい。原料主成分のゴム材料中に、微粉末状の導電剤を分散させる手段としては、公知の手段、例えば、ロールニーダー、バンバリーミキサー、又は2軸押し出し機等を、ゴム材料に応じて適宜利用すればよい。
【0021】
充填剤及び増量剤としては、次のものが挙げられる。シリカ、石英微粉末、ケイソウ土、酸化亜鉛、塩基性炭酸マグネシウム、活性炭酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、二酸化チタン、タルク、雲母粉末、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ガラス繊維、有機補強剤、有機充填剤。これらの充填剤は表面を有機珪素化合物で処理して疎水化してもよい。
【0022】
なお、感光ドラムと圧接し、ニップ部を形成して、ニップ幅を確保し、加えて圧縮永久歪を小さくするためには、弾性層の厚さは、0.5mm以上が好ましく、1.0mm以上がより好ましい。しかしながら、弾性層の厚さを過度に厚くすると、現像ローラと感光ドラムや現像剤量規制ブレードとを長時間圧接させたまま放置した際に、圧接箇所の変形が大きくなり、圧縮永久歪が発生しやすくなるので好ましくない。したがって、実用上、弾性層の厚さは6.0mm以下とするのが適当であり、5.0mm以下がより好ましい。なお、弾性層の厚さは、目的とするニップ幅を達成するため、その硬さに応じて、適宜決定することが望ましい。
なお、本発明では、この弾性層の成形は、押出成形、射出成形などの公知の成形法を用いることができる。層構成としては本発明に記載された特徴を有すれば、限定されず、2層以上の構成とすることもできる。
【0023】
前記弾性層の外周に形成される表面層103としては、前述の通り現像剤の帯電性からポリウレタン樹脂とする必要があり、特に被膜の硬度を小さくでき、現像剤の帯電性が高いポリエーテルポリウレタン樹脂が好ましい。
ポリエーテルポリウレタン樹脂は公知のポリエーテルポリオールとイソシアネート化合物との反応により得ることができる。ポリエーテルポリオールとしては、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。また、これらのポリオール成分は必要に応じて予め2,4−トリレンジイソシアネート(TDI)、1,4ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)等のイソシアネートにより鎖延長したプレポリマーとしてもよい。これらのポリオール成分と反応させるイソシアネート化合物としては特に限定されるものではないが、エチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)等の脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、シクロヘキサン1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン1,4−ジイソシアネート等の脂環族ポリイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)等の芳香族ポリイソシアネート、及びこれらの変性物や共重合物、そのブロック体を用いることができる。
【0024】
また、現像剤の搬送性を向上させるための凸部を現像ローラ表面に設ける方法として、表面層であるウレタン樹脂中に、所定の体積平均粒子径を有する樹脂粒子104を分散させる方法がある。このような樹脂粒子104としては、ポリメタクリル酸メチル粒子、シリコーン樹脂粒子、ポリウレタン粒子、ポリスチレン粒子、アミノ樹脂粒子、またはフェノール樹脂粒子が挙げられる。
ウレタン樹脂中における樹脂粒子の含有量の目安としては、ウレタン樹脂成分に対し5質量%〜50質量%とすることが好ましい。
【0025】
本発明において表面層103には弾性層101と同様に電気抵抗調整剤等の各種添加剤を添加する事ができる。また、表面層103を形成する塗料中への前記抵抗調整剤等の添加剤の分散方法としては特に制限されるものではない。ウレタン樹脂材料を適当な有機溶剤に溶解させた樹脂溶液中に各種添加剤を添加し、サンドグラインダー、サンドミル、ボールミル等の公知の装置を用いて分散することができる。
【0026】
本発明の電子写真装置に用いることのできる一成分負帯電性現像剤は特に限定されるものではないが、懸濁重合法、乳化重合法、界面重合法、会合重合法、粉砕法といった方法で製造することができる。なかでも、懸濁重合法、会合重合法、乳化分散法による現像剤粒子の製造が好ましく、より好ましくは小粒径の現像剤粒子が容易に得られる懸濁重合方法である。
【0027】
本発明の現像ローラを使用する際、現像ローラは、潜像を担持する潜像担持体としての感光ドラムに対向して、当接または圧接した状態で現像剤を担持する。そして、現像ローラは、感光ドラムに現像剤を付与することにより、潜像を現像剤像として可視化する機能を持つ。
本発明の現像ローラを搭載した一般的な電子写真プロセスカートリッジ及び画像形成装置の一例を図3に示す。
【0028】
本画像形成装置には、それぞれイエロー、シアン、マゼンタ及びブラックの画像を形成する画像形成ユニット6a〜6dがあり、タンデム方式で設けられている。また、感光ドラム7、帯電ローラ8、現像装置10及びクリーニング装置11が一体となり、電子写真プロセスカートリッジを形成している。本発明の電子写真プロセスカートリッジとしては、現像装置10を備える現像カートリッジタイプなどがある。電子写真プロセスカートリッジは、電子写真装置に着脱可能である。電子写真プロセスカートリッジには、負帯電性の現像剤が収容されている。
【0029】
現像装置10には、一成分負帯電性現像剤2を収容した現像容器3と、現像容器3の内部の長手方向に延在する開口部に位置し、感光ドラム7と対向設置された現像ローラ1とを備え、感光ドラム7の上の静電潜像を現像して可視化するようになっている。さらに、現像ローラ1に一成分負帯電性現像剤2を供給する機能と、現像に使用されずに現像ローラ1に担持されている現像剤を掻き取る機能を併せ持つ現像剤塗布部材4が設けられている。また、現像ローラ1の上の一成分負帯電性現像剤2の担持量を規制し、摩擦帯電させる現像剤規制部材5が設けられている。
【0030】
感光ドラム7の表面が帯電ローラ8により所定の極性・電位に一様に帯電され、画像情報に対応する露光光9が像露光手段(不図示)から感光ドラム7の表面に照射され、静電潜像が形成される。次いで、形成された静電潜像に、本発明の現像ローラ1から一成分負帯電性現像剤2が供給され、潜像が可視化される。この現像剤像は、転写ローラ12と対向する場所に来たときに記録材21に転写される。
【0031】
なお、本画像形成装置では4つの画像形成ユニット6a〜6dが連動して所定の色画像を記録材21の上に重ねて形成されている。転写搬送ベルト13は駆動ローラ14、テンションローラ15及び従動ローラ16に架けまわされている。記録材21は転写搬送ベルト13に吸着ローラ17の働きにより静電的に吸着された形で搬送されている。なお、18は記録材21を供給するための供給ローラであり、22,23はそれぞれ転写ローラ12、吸着ローラ17へのバイアス電源を示す。
【0032】
画像が形成された記録材21は、転写搬送ベルト13から剥離装置19の働きにより剥がされ、定着部材と加圧部材とを具備する定着装置20に送られ、現像剤像は記録材21に定着されて、印画が完了する。加圧部材は、定着部材とニップ部を形成しニップ部により記録材21(被転写材)を圧接して搬送する。一方、現像剤像の記録材21への転写が終わった感光ドラム7はさらに回転して、クリーニング装置11により表面がクリーニングされ、必要により除電装置(不図示)によって除電される。その後、感光ドラム7は次の画像形成に供される。
【0033】
なお、ここでは記録材の上へ直接各色の現像剤像を転写する画像形成装置で説明したが、本発明の現像ローラを使用する画像形成装置であればいずれでもよい。例えば、白黒の単色画像形成装置、中間転写ローラや中間転写ベルトなどの転写部材を介して被転写材へ転写する画像形成装置。また、各色の現像ユニットがロータの上に配置されたり、感光ドラムに並列して配置されたりした画像形成装置等が挙げられる。また、電子写真プロセスカートリッジではなく、感光ドラム、帯電ローラ、現像装置等が直接画像形成装置に組み込まれていても構わない。
【実施例】
【0034】
[弾性ローラの形成]
軸芯体102として外径6mm、長さ264mmの芯金(材質:SUS304)にニッケルメッキを施し、さらにプライマ−(商品名:DY39-051、東レダウコーニングシリコーン社製)を塗布、焼付けしたものを用いた。ついで、軸芯体102を内径11.5mmの円筒状金型に同心となるように配置し、表1に示す配合の付加型シリコーンゴム組成物を金型内に形成されたキャビティに注入した。
【0035】
【表1】

【0036】
続いて、金型を加熱してシリコーンゴムを温度150℃、15分間加硫硬化し、脱型した後、さらに温度200℃、2時間加熱し硬化反応を完結させ、厚み2.73mm、長さ240mmの弾性層101を軸芯体102の外周に設けた。これを弾性ローラとする。
【0037】
〔実施例1〕
[弾性ローラへの表面層の形成]
表面層材料として、表2に示す材料を、撹拌モーターで700rpm、1時間混合攪拌した。
【0038】
【表2】

【0039】
次に攪拌液を横型分散機(商品名:NVM−03、アイメックス社製)で周速7m/秒、流量1cc/分、分散液温度15℃の条件下で1時間分散した。
分散後さらにMEKを加え固形分25質量%の塗料を得た。
次にこの塗料を直径32mmのシリンダ内に液流速250cc/分、液温23℃で循環させた。前記弾性ローラをシリンダ中に浸入速度100mm/秒で浸漬させ、10秒間停止させた。その後に、初速400mm/秒、終速200mm/秒の条件で引上げて、10分間自然乾燥させ、未硬化の表面層を設けた弾性ローラを得た。
上記未硬化の表面層を設けた弾性ローラをもう1本製造し、温度140℃にて120分間加熱処理することで表面層の原料の硬化を行った。このローラを用いて測定した凸部高さは7.2μmであった。
【0040】
[表面層凸部への樹脂の被覆]
250mm×250mm、厚さ5mm、表面粗さRaが0.1mmの角型ガラス基板の上に、膜厚ギャップを2μmに調節した下記のドクターブレード型アプリケーターを用いて、下記のトリフルオロプロピルトリメトキシシランを塗布した。
・ドクターブレード型アプリケーター(商品名:ドクターブレード型アプリケーター、タクミ技研社製)
・トリフルオロプロピルトリメトキシシラン(商品名:KBM−7103、信越シリコーン社製)
そのガラス基板の上に未硬化の表面層を設けた弾性ローラを転がし、表面層凸部上にトリフルオロプロピルトリメトキシシランを転写した。
次いで、温度140℃にて120分間加熱処理することで表面層を硬化させると共に、表面層の凸部の表面に塗布したフッ素樹脂を硬化させた。
[現像ローラ表面の分析]
現像ローラ表面において、凸部頂点を中心とする10μm四方の領域をA、谷部の最深点を中心とする10μm四方の領域をBとし、現像ローラ1本あたりそれぞれ20箇所ずつエネルギー分散型蛍光X線分析(EDX)を行った。
上記領域Aに関してエネルギー分散型蛍光X線分析(EDX)により測定されるフッ素元素及びケイ素元素の合計割合を測定し、20箇所の相加平均値を出したところ、73.2(wt%)であった。また、上記領域Bに関してエネルギー分散型蛍光X線分析(EDX)により測定されるフッ素元素及びケイ素元素の合計割合を測定し、その相加平均値を出したところ、5.8(wt%)であり、領域Bは、領域Aよりも十分にフッ素元素及びケイ素元素が少ないことが確認された。
本実施例においては、以下の測定条件で領域Aおよび領域Bを測定した。
[測定装置]
走査電子顕微鏡(商品名:S−4800、日立ハイテクノロジー社製)およびエネルギー分散型蛍光X線分析(EDX)(商品名:Genesis400、EDAX社製)
[測定条件]
加速電圧10kV
このようにして、凸部と凸部との間の谷部を除いて表面がフッ素樹脂で被覆され、当該谷部ではウレタン樹脂層の表面が露出している現像ローラを得た。
【0041】
[画像評価方法]
次に、本実施例で行った画像評価方法について説明する。
まず、画像出力試験用の下記の電子写真プロセスカートリッジを用意した。電子写真プロセスカートリッジから現像剤を抜き取り、特開2006−106198の実施例49に記載された重合方法により製造した重量平均粒径6.59μmのマゼンタ現像剤を充填した。同様の方法で現像剤を入れ替えたカートリッジを5本用意した。
・電子写真プロセスカートリッジ(公称寿命1500枚、A4サイズ、印字率5%、商品名:トナーカートリッジ316マゼンタ、キヤノン株式会社製)
【0042】
次にこの5本の電子写真プロセスカートリッジのうち1本に、作成した現像ローラを組み込み、このカートリッジを電子写真方式の画像形成装置(商品名:LBP5050、キヤノン株式会社製、印刷解像度600dpi)に組み込んだ。そして、この画像形成装置を用いて、室温30℃、湿度80%RHの環境下で間欠耐久試験を行った。通紙時は、印字率2%の文字画像を純正A4紙(商品名:セレクトペーパー SC−250 A4、キヤノン株式会社製)にて20秒毎に1枚出力する間欠モードでプリント操作を行い、3000枚の画像出力を行った。その後、3000枚耐久済みカートリッジから現像ローラを取り出し、もう1本の画像出力試験用カートリッジに組替え、同様に3000枚の画像出力を行った。この画像出力を用意したカートリッジ全てで行った。すなわち、現像ローラとしては最終的に15000枚相当の画像出力を行い、最後にベタ画像を記録材21(カラーレーザーA4紙、商品名:セレクトペーパー SC−250 A4、キヤノン株式会社製)に出力した。
出力された画像および画像出力試験後の現像ローラに関し、以下の評価および観察を行った。
【0043】
[画像濃度変化の評価]
初期及び最後に出力した全面ベタ画像の紙面上9ヶ所でカラー反射濃度計(商品名:X−RITE 404A、X−Rite Co.製)により濃度を測定した。一枚につき9ヶ所の測定値の相加平均値をその画像における濃度とし、濃度変化の割合を、最後に出力した画像の濃度/初期画像濃度で算出し、以下の基準で評価した。
A:画像濃度変化割合が0.9を超え、1.0以下である。
B:画像濃度変化割合が0.7を超え、0.9以下である。
C:画像濃度変化割合が0.7以下である。
【0044】
[現像ローラ表面の観察]
15000枚相当の画像出力試験後の現像ローラをカートリッジから取り出し、表面に付着している現像剤をエアーブローにより除去し、現像ローラの表面を観察し、表面層凸部の摩耗および樹脂粒子の脱落の有無を確認した。観察には走査型共焦点レーザー顕微鏡(商品名:OLS3100、オリンパス株式会社製)を用いた。現像ローラのゴム部の両端部から6mm内側の部分、および中央部の三ヶ所において、60°ごと6位相の計18点を、対物レンズ倍率50倍 (総合倍率1200倍)で観察した。
測定結果および評価結果を表3、表4に示す。
【0045】
〔実施例2〕
表面層凸部に被覆する樹脂をフルオロエチレンビニルエーテル交互共重合体(商品名:ルミフロンLF100、旭硝子社製)とした以外は実施例1と同様の方法で現像ローラを得た。得られた現像ローラを用い、実施例1と同様の測定および評価を行った。結果を表3、表4に示す。
【0046】
〔実施例3〜実施例13〕
表面層凸部に被覆する樹脂の種類と、表面層材料に添加する樹脂粒子の平均粒径及び添加量を、表3に示したものとした以外は実施例1と同様の方法で現像ローラを得た。
得られた現像ローラを用い、実施例1と同様の測定および評価を行った。結果を表3、表4に示す。
【0047】
〔比較例1〕
表面層凸部への樹脂の被覆を行わなかったこと以外は実施例1と同様の方法で現像ローラを得た。得られた現像ローラを用い、実施例1と同様の測定および評価を行った。結果を表3、表4に示す。
【0048】
〔比較例2〕
実施例1において、ドクターブレード型アプリケーターの膜厚ギャップを20μmとして現像ローラを作製した。膜厚ギャップが樹脂粒子の平均粒径より十分に大きいため、表面層の凸部だけでなく谷部にもフッ素樹脂が被覆された現像ローラを得た。得られた現像ローラを用い、実施例1と同様の測定および評価を行った。結果を表3、表4に示す。
【0049】
〔比較例3〕
実施例3において、ドクターブレード型アプリケーターの膜厚ギャップを20μmとして現像ローラを作製した。膜厚ギャップが樹脂粒子の平均粒径より十分に大きいため、表面層の凸部だけでなく谷部にもシリコーン樹脂が被覆された現像ローラを得た。得られた現像ローラを用い、実施例1と同様の測定および評価を行った。結果を表3、表4に示す。
【0050】
【表3】

【0051】
【表4】

【符号の説明】
【0052】
1 現像ローラ
101 弾性層
102 軸芯体
103 表面層
104 樹脂粒子
105 フッ素樹脂またはシリコーン樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
負帯電性の現像剤とともに用いられる現像ローラであって、導電性の軸芯体、および導電性のウレタン樹脂層を有し、
該ウレタン樹脂層は、
ウレタン樹脂と、
該ウレタン樹脂に分散され、かつ、該ウレタン樹脂層の表面に非露出な状態で含有されてなる樹脂粒子とを含み、
該現像ローラは、その表面に、該樹脂粒子に由来する複数個の凸部を有し、
該現像ローラの表面は、該凸部と該凸部との間の谷部を除いて、フッ素樹脂またはシリコーン樹脂によって被覆されており、かつ、該凸部と該凸部との間の谷部においては該ウレタン樹脂層の表面が露出していることを特徴とする現像ローラ。
【請求項2】
電子写真装置に着脱可能に構成されている電子写真プロセスカートリッジであって、
請求項1に記載の現像ローラと電子写真感光体とを有し、かつ、負帯電性の現像剤が収容されていることを特徴とする電子写真プロセスカートリッジ。
【請求項3】
請求項1に記載の現像ローラと電子写真感光体とを有し、かつ、負帯電性の現像剤が収容されていることを特徴とする電子写真装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−198409(P2012−198409A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62703(P2011−62703)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】