説明

現像ローラ

【課題】高速の連続出力時においても画像濃度の低下がなく、安定した画像を得ることができる現像ローラを提供する。
【解決手段】マグネットローラ6と、マグネットローラ6と固定された芯金13と、非磁性の現像スリーブ5と、一対のフランジ10,11とを備え、現像剤18を前記現像スリーブ5に保持して感光体ドラム2へ搬送し、前記感光体ドラム2上に形成された静電潜像を現像する現像ローラ4において、マグネットローラ6と現像スリーブ5との間の空間Cと、外部と、を連通する貫通孔14が、駆動側フランジ10の中心に設けられており、芯金13の端面から該芯金13の長手方向の中央に向かって延びた第1の孔15と、第1の孔15と空間Cとの双方と連通した第2の孔16と、を備えた第2の貫通孔17が、芯金13の両端それぞれに設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、ファクシミリ、プリンター等の画像形成装置に用いられる現像ローラに関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、ファクシミリ、プリンター等の電子写真装置には、種々の現像装置が用いられる。この種の現像装置は、現像剤を感光体ドラムと対向する現像領域に搬送し、感光体ドラム上に形成された静電潜像を現像剤により現像してトナー像を形成する現像ローラを備えている。
【0003】
上述した従来の電子写真装置に多く使用されている現像ローラは、図6に示すように、複数の固定磁極を有するマグネットローラ106が中心に設けられ、該マグネットローラ106の外周に、マグネットローラ106と同軸でありかつ非磁性体からなる円筒形状の現像スリーブ105が配置されている。この現像スリーブ105の一端には現像スリーブ105に回転を伝達する駆動側フランジ110が、他端には従動側フランジ111が、それぞれ現像スリーブ105と結合している。そして、駆動側フランジ110及び従動側フランジ111の内面中心に設けられたすべり軸受け112を介して、マグネットローラ106と一体化した芯金113が挿通されている。
【特許文献1】特開2000−87932号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した現像ローラ104を備えた画像形成装置は、連続出力を行った際に、画像濃度の低下がおこるという問題があった。
【0005】
この原因は、現像スリーブ105の温度上昇によるものである。詳しくは、高速の連続出力時、現像剤101との摩擦により現像スリーブ105の温度が上昇する。すると、現像剤101を構成するトナーが変質し、現像スリーブ105に固着をおこす。トナー固着が発生すると、トナーの搬送力が低下するため、画像濃度の低下がおこり、高品質な画像を得ることが出来なくなってしまう。
【0006】
そこで、本発明の目的は、上記の課題を解決するために、現像スリーブの温度上昇を抑制でき、高速の連続出力時においても画像濃度の低下がなく、安定した画像を得ることができる現像ローラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の現像ローラは、複数の固定磁極を有する筒状のマグネットローラと、前記マグネットローラ内に挿入されて該マグネットローラと固定された芯金と、前記マグネットローラの外周に回転自在に設けられた非磁性の現像スリーブと、前記マグネットローラの両端部それぞれに設けられ、かつ、前記現像スリーブと前記芯金とのうちの一方に固定されているとともに他方と相対的に回転可能に支持された一対のフランジとを備えた現像ローラにおいて、前記マグネットローラと前記現像スリーブとの間の空間と、外部と、を連通する貫通孔が、前記一対のフランジのうちの少なくとも一方のフランジの中心に設けられていることを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載の現像ローラは、前記芯金の端面から該芯金の長手方向の中央に向かって延びた第1の孔と、該第1の孔と前記空間との双方と連通した第2の孔と、を備えた第2の貫通孔が設けられていることを特徴としている。
【0009】
請求項3に記載の現像ローラは、前記第2の貫通孔が、前記芯金の両端それぞれに設けられていることを特徴としている。
【0010】
請求項4に記載の現像ローラは、前記第2の貫通孔のうちの一方を通して前記空間に気体を送り込み、かつ、前記第2の貫通孔のうちの他方を通して前記空間内の気体を排出する気体流発生手段が設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の現像ローラは、現像スリーブ両端に設けられたフランジの中心に貫通孔が設けられているため、現像ローラの外部から内部に気体を取り入れることが出来、この気体流により現像スリーブを空冷し、温度上昇の抑制をすることができる。このため、高速の連続出力時においてもトナー固着発生の少なく、画像濃度の低下がない、安定した画像を得ることができる現像ローラを提供することができる。また、前記貫通孔をフランジの中心に設けたので、フランジなどの成形が容易であり、組付け性が良いという利点がある。
【0012】
請求項2に記載の現像ローラは、芯金の端面から該芯金の長手方向の中央に向かって延びた第1の孔と、該第1の孔と前記空間との双方と連通した第2の孔と、を備えた第2の貫通孔が設けられているため、外部より気体を取り入れることが出来、この気体流により現像スリーブを空冷し、温度上昇の抑制をすることができる。また、第2の孔は、第1の孔と連結しており、かつ他方向へ気体を流す形状であるため、孔を一つのみ設けた場合に比べて、より現像ローラ内の対流機能を高めることが可能となる。また、前記第1の孔を芯金の中心に設けると、芯金の設計・製造においても容易に実施が可能となる。
【0013】
請求項3に記載の現像ローラは、前記第2の貫通孔が、前記芯金の両端それぞれに設けられているため、第2の貫通孔を一つのみ設けた場合に比べて、より現像ローラ内の対流機能を高めることが可能となる。
【0014】
請求項4に記載の現像ローラは、前記第2の貫通孔のうちの一方を通して前記マグネットローラと前記現像スリーブとの間の空間に気体を送り込み、かつ、前記第2の貫通孔のうちの他方を通して前記空間内の気体を排出する、例えば送風機や真空ポンプなどの気体流発生手段を備えている。よって、請求項1から請求項3の効果に加え、より効果的な現像スリーブの温度上昇の抑制を実現することが可能となる。また、前記貫通孔が前記フランジの中心に、前記第1の孔が前記芯金の中心に設けられていると、前記気体流発生手段の現像ローラへの取り付けにおいても容易かつ低コストで実現する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の一実施の形態を図1ないし図5に基づいて説明する。図1は本発明の一実施の形態にかかる現像ローラの要部を示す断面図である。図2(a)は、図1に示された現像ローラにおける従動側フランジ及び芯金の要部断面図であり、図2(b)は、図2(a)の矢印X方向から見た従動側フランジ及び芯金の要部側面図である。図3(a)は、図1に示された現像ローラにおける駆動側フランジの断面図であり、図3(b)は、図3(a)の矢印Y方向から見た駆動側フランジの側面図である。図4は本発明の現像装置を示す断面図である。図5は本発明の現像ローラにおける気体の流れを説明する図である。
【0016】
図4は、本発明の現像装置を示す断面図である。この図に示すように、現像装置1内には、矢印方向に回転する円筒状現像剤担持体としての現像ローラ4が、現像ローラ4の回転方向と逆周りの矢印方向に回転する円筒状感光体としての感光体ドラム2に近接対向するように配置されており、双方の対向部分には、現像ローラ4と感光体ドラム2とが対向する現像領域3が形成されている。現像ローラ4は中空円筒状に形成された現像スリーブ5と、該現像ローラ4内に収容されかつ、現像スリーブ5の表面に現像剤18の穂立ちを生じさせるように磁界を形成するマグネットローラ6を備えている。
【0017】
また、この現像装置1は、前記現像剤18を収容する収容槽7と、この収容槽7内の現像剤18を攪拌するスクリュー形状の攪拌スクリュー8と、現像スリーブ5に汲み上げられた現像剤18の量を均一化する規制ブレード9と、を備えている。
【0018】
現像剤18は、現像ローラ4の磁力により現像スリーブ5の表面に汲み上げられる(現像スリーブ5の表面に付着する)。その後、現像剤18は、規制ブレード9にて量が均一化された後に、感光体ドラム2と現像ローラ4とが間隔をあけて対向する現像領域3へと搬送される。現像剤18は、感光体ドラム2上に形成された静電潜像を現像して、トナー像を形成する。
【0019】
現像ローラ4は、図1に示すように、マグネットローラ6と、円柱状の芯金13と、現像スリーブ5と、駆動側フランジ10と、従動側フランジ11と、気体流発生手段としての送風機20と、を少なくとも備えている。
【0020】
マグネットローラ6は円筒状に形成されている。また、マグネットローラ6は現像スリーブ5の表面に現像剤18の穂立ちを生じさせるように磁界を形成する複数の固定磁極を有しており、それぞれの磁極を形成する磁石が棒状などに形成されている。また、マグネットローラ6は、現像ローラ4内に収容されている(内包されている)。さらに、マグネットローラ6は、芯金13の周りに回転することなく芯金13に固定されている。
【0021】
現像スリーブ5は、アルミニウム、ステンレス鋼(SUS)などの非磁性体からなる中空円筒体である。現像スリーブ5の内径は、マグネットローラ6の外径より大きく形成されている。現像スリーブ5の両端には、後述する駆動側フランジ10及び従動側フランジ11が圧入固定されて、該フランジ10,11と結合している。駆動側フランジ10が芯金13の中心を軸に回転駆動することで、現像スリーブ5は回転し、前述した現像剤18を感光体ドラム2へと搬送する。
【0022】
駆動側フランジ10は、中央に凹み21を有した厚手の円環状部分22と円柱状部分23を一体に備えている。円環状部分22の外径は、現像スリーブ5の内径と等しく形成されている。円柱状部分23は、円環状部分22の凹み21から見て裏側に位置する表面から立設している。円環状部分22と円柱状部分23とは同軸である。また、凹み21は平面形状が円形に形成されており、凹み21の内径は芯金13の外径より大きく形成されている。駆動側フランジ10は凹み21内部に設置されたすべり軸受け12により、芯金13に軸支されている。また、駆動側フランジ10の円柱状部分23は図示しない回転駆動装置と連結されており、現像スリーブ5に回転を伝達する。
【0023】
一方、従動側フランジ11はドーナツ型の円筒状に形成されており、内部にすべり軸受け12を介して芯金13が挿通されている。フランジ10,11は、すべり軸受け12により芯金13と相対的に回転自在に設けられている。また、前述したマグネットローラ6と、芯金13と、現像スリーブ5とフランジ10,11とは、互いに同軸に設けられている。
【0024】
駆動側フランジ10の中心には、図1及び図3に示すように、現像ローラ4の内部と外部を連通する貫通孔14が、駆動側フランジ10の長手方向に沿って設けられている。
【0025】
芯金13の両端には、図1及び図2に示すように、該芯金13の端面から該芯金13の長手方向の中央に向かって延びた第1の孔15と、該第1の孔15と前記空間との双方と連通した第2の孔16と、を備えた第2の貫通孔17が設けられている。第2の孔16は第2の貫通孔17一つあたり複数設けられている。また、本実施形態では、第1の孔15は、芯金13の中心に設けられている。
【0026】
一対の第2の貫通孔17のうちの従動側フランジ11寄りの第2の貫通孔17は、現像ローラ4の外部と、現像スリーブ5とマグネットローラ6との間の空間Cと、を連通している。一対の第2の貫通孔17のうちの駆動側フランジ10寄りの第2の貫通孔17及び前記貫通孔14は、前記空間Cと、現像ローラ4の外部と、を連通している。
【0027】
送風機20は、従動側フランジ11に挿通された芯金13の端部に連結されている。この送風機20は、従動側フランジ11寄りの第2の貫通孔17を通して、現像ローラ4の外部から空間Cに空気などの気体を送り込み、かつ、駆動側フランジ10寄りの第2の貫通孔17と駆動側フランジ10に設けられた貫通孔14を通して、空間C内の空気などの気体を現像ローラ4の外部に排出させる。
【0028】
次に、本発明における現像ローラ4の作用を図5を用いて説明する。図中の矢印は、気体の流れる方向を表している。図5に示すように、従動側フランジ11寄りに設けられた第2の貫通孔17から空間C内に取り込まれた外気は、現像ローラ4内部即ち空間Cを流れ、駆動側フランジ10寄りに設けられた芯金13の第2の貫通孔17を通され、さらに駆動側フランジ10に設けられた貫通孔14を通されて現像ローラ4外に排出される。
【0029】
このように芯金13の両端及び駆動側フランジ10の中心に、現像ローラ4の内部と外部を連通する貫通孔14,17を設けることにより、図5の矢印で示すような気体の流れがおこり、前記貫通孔14,17から、空間C内の気体が排出可能になり現像スリーブ5を冷却することが可能となる。よって現像スリーブ5の温度上昇を抑制することができる。
【0030】
以上説明したように、本発明の現像ローラ4によると、現像ローラ4の内部と外部を連通させる貫通孔14を駆動側フランジ10の中心に設け、芯金13の両端に第2の貫通孔17を設けることで空間C内に気体を送り込み、空間C内の気体を排出する構成にしているので、現像スリーブ5表面の温度上昇を抑制する効果がある。また、芯金13に設けられた第2の孔16は、第1の孔15と連結しており、かつ他方向(図示例では二方向)へ気体を流す形状であるため、孔を一つのみ設けた場合に比べて、より現像ローラ4内の対流機能を高めることが可能となる。
【0031】
さらに、貫通孔14を駆動側フランジ10の中心に設け、第1の孔15を芯金13の中心に設けると、フランジ10,11や芯金13などの設計・製造が容易になり、送風機20などの気体流発生手段20と芯金13との組付け性も良くなる。
【0032】
又、送風機20が従動側フランジ11寄りの第2の貫通孔17を通して、現像ローラ4の外部から空間Cに気体を送り込み、駆動側フランジ10寄りの第2の貫通孔17と駆動側フランジ10に設けられた貫通孔14を通して、空間C内の気体を現像ローラ4の外部に排出させるので、より効果的に現像スリーブ5の温度上昇の抑制を実現することが可能となる。
【0033】
なお、前述した実施形態では、現像スリーブ5の一端に駆動側フランジ10、他端に従動側フランジ11を備えた現像ローラ4を説明したが、本発明の現像ローラでは、駆動側フランジ10と同形状のフランジを現像スリーブ5の両端に備えていても良い。その場合、両方のフランジの中心に貫通孔14を設けていても良い。
【0034】
また、前述した実施形態では、従動側フランジ11から延びる芯金13に気体流発生手段としての送風機20を連結させた現像ローラ4を説明したが、本発明では、気体流発生手段として必ずしも送風機20を備えていなくても良い。つまり、本発明では、現像ローラ4内に気体流を発生させ、該現像スリーブ5の温度上昇を抑えるものであれば良く、送風機20の代わりに真空ポンプを取り付けても良いし、一方のフランジ側に送風機20を取り付け、他方のフランジ側に真空ポンプを取り付けても良い。
【0035】
また、前述した実施形態では、第2の貫通孔17一つあたりに第2の孔16が複数設けられているが、本発明では第2の孔16が第2の貫通孔17一つあたり一つでも良い。
【0036】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施の形態にかかる現像ローラの要部を示す断面図である。
【図2】図2(a)は、図1に示された現像ローラにおける従動側フランジ及び芯金の要部断面図であり、図2(b)は、図2(a)の矢印X方向から見た従動側フランジ及び芯金の要部側面図である。
【図3】図3(a)は、図1に示された現像ローラにおける駆動側フランジの断面図であり、図3(b)は、図3(a)の矢印Y方向から見た駆動側フランジの側面図である。
【図4】図1に示された現像ローラを備えた現像装置を示す断面図である。
【図5】図1に示された現像ローラの気体の流れを説明する図である。
【図6】従来の現像ローラを示す断面図である。
【符号の説明】
【0038】
2 感光体ドラム(感光体)
4 現像ローラ
5 現像スリーブ
6 マグネットローラ
10 駆動側フランジ
11 従動側フランジ
13 芯金
14 貫通孔
15 第1の孔
16 第2の孔
17 第2の貫通孔
18 現像剤
20 送風機(気体流発生手段)
C 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の固定磁極を有する筒状のマグネットローラと、
前記マグネットローラ内に挿入されて該マグネットローラと固定された芯金と、
前記マグネットローラの外周に回転自在に設けられた非磁性の現像スリーブと、
前記マグネットローラの両端部それぞれに設けられ、かつ、前記現像スリーブと前記芯金とのうちの一方に固定されているとともに他方と相対的に回転可能に支持された一対のフランジとを備えた現像ローラにおいて、
前記マグネットローラと前記現像スリーブとの間の空間と、外部と、を連通する貫通孔が、前記一対のフランジのうちの少なくとも一方のフランジの中心に設けられていることを特徴とする現像ローラ。
【請求項2】
前記芯金の端面から該芯金の長手方向の中央に向かって延びた第1の孔と、該第1の孔と前記空間との双方と連通した第2の孔と、を備えた第2の貫通孔が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の現像ローラ。
【請求項3】
前記第2の貫通孔が、前記芯金の両端それぞれに設けられていることを特徴とする請求項2に記載の現像ローラ。
【請求項4】
前記第2の貫通孔のうちの一方を通して前記空間に気体を送り込み、かつ、前記第2の貫通孔のうちの他方を通して前記空間内の気体を排出する気体流発生手段が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の現像ローラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−84505(P2006−84505A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−266369(P2004−266369)
【出願日】平成16年9月14日(2004.9.14)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】