説明

現像剤規制部材及び現像装置

【課題】安定したトナーのコート層規制及び摩擦帯電が可能な現像剤規制部材及び現像装置を提供する。
【解決手段】現像剤規制部材4は、現像ローラ3に当接するシート状弾性部材4aと、シート状弾性部材4aを支持する支持部材4bと、を有し、シート状弾性部材4aに複数の開口4cを設けてシート状弾性部材4aの剛性を適度に保つようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式の現像装置に用いられる現像剤規制部材及び現像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、非磁性1成分現像剤を用いた現像方式としては、現像剤担持体として弾性体ローラを用いた接触現像方式が広く使用されている。
【0003】
現像剤担持体上に対しては、現像剤のコート規制、及び、摩擦による帯電付与を目的として、現像剤担持体に当接する現像剤規制部材が設けられている。現像剤規制部材としては、片持ちタイプの板形状の現像剤規制部材が広く用いられている。
【0004】
図10は、非磁性1成分現像剤を用いた接触現像方式を示したものであり、現像剤担持体としては、導電性ゴムを用いた現像ローラ103が用いられている。現像ローラ103への現像剤の供給は、現像ローラ103に接触しながら、図10中、矢印d方向に回転する供給ローラ105により行われる。供給ローラ105は、現像器D内から現像剤(図示せず)を搬送して現像ローラ103に付着させると共に、像担持体としての感光体101に移行させずに現像ローラ103に残った現像剤を一旦除去する機能も担っている。
【0005】
現像ローラ103に付着した現像剤は、片持ちタイプのブレード状の現像剤規制部材104により、コート層規制及び摩擦帯電による電荷付与が行われる。ここで、現像剤規制部材104は、現像ローラ103に接触するシート状弾性部材104aと、これを接着支持する支持部材104bとから構成される。
【0006】
現像ローラ103上において、コート規制及び電荷付与が行われた現像剤は、感光体101上に形成された静電潜像と、現像ローラ103に印加されたバイアスによる電位差により、感光体101上の潜像を現像する。
【0007】
ここで、前記ブレード状の現像剤規制部材104による、現像剤のコート規制、及び、摩擦による帯電付与を適正に行うためには、現像ローラ103に対する適切な圧力による当接が必要である。この際に、現像剤規制部材104aにて所定の圧力を得るには、現像剤規制部材104aを構成するシート状弾性部材104aにおいて、短手側の長さの選択、材質の選択、及び、厚さの選択等を行うことで可能である。
【0008】
上記の実例として、特許文献1では、ブレード状の現像材規制部材104の厚さを当接部側で薄くすることによって、所定の圧力を得る方法を提案している。
【特許文献1】特開昭60−159878号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、適正な圧力が比較的軽圧の場合、例えば、シート状弾性部材104aの短手側の長さを長くすると、現像装置に現像材規制部材104を設置するための空間を確保しなければならず、装置の大型化を招く。また、材質を軟らかいものを選択したくても、金属を用いた場合には限界がある。
【0010】
また、特許文献1では、単一部材内で厚さを変えているが、これでは、使用できる材質は、樹脂,ゴムに限定され、金属は適用できない。加えて、製造上のコスト増も避けられ
ない。
【0011】
本発明は上記したような事情に鑑みてなされたものであり、材質として金属も適用可能であり、安定した現像剤の層厚規制及び摩擦帯電が可能な現像剤規制部材及び現像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明は、回転可能な現像剤担持体の表面に当接するように設けられ、前記現像剤担持体上に担持された現像剤の層厚を規制する現像剤規制部材において、前記現像剤規制部材は、前記現像剤担持体に当接するシート状弾性部材と、これを支持する支持部材とで構成され、前記シート状弾性部材には複数の開口が設けられ、該開口の配列が、その領域内における前記現像剤担持体の回転軸に対する全ての平行線と前記開口との交点を含む一連の領域である少なくとも2箇所の開口領域と、前記開口領域に挟まれ、その領域内における、前記現像剤担持体の回転軸に対する全ての平行線と前記開口との交点を含まない、一連の領域である少なくとも一箇所の非開口領域と、を有し、前記シート状弾性部材上の現像領域内における、前記回転軸に対する全ての垂直線が、前記開口前記少なくともいずれかの開口領域の少なくともいずれかの開口との交点を持つように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、安定した現像剤の層厚規制及び摩擦帯電が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための最良の形態を例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の形状それらの相対配置等は、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものであり、この発明の範囲を以下の実施の形態に限定する趣旨のものではない。
【0015】
[画像形成装置の構成]
まず、本発明の現像剤規制部材を用いた現像装置が適用される画像形成装置の構成例について説明する。図2は、画像形成装置の概略構成を示す断面図である。
【0016】
この画像形成装置は、電子写真プロセス利用のフルカラーレーザプリンタであり、画像形成装置本体A、及び、これに着脱自在なプロセスカートリッジBにより構成されている。プロセスカートリッジBは、帯電装置、現像装置D、クリーニング装置、及び、像担持体としての感光体ドラム1等が一体となって構成されている。
【0017】
プロセスカートリッジB(By,Bm,Bc,Bk)は、イエロー、マゼンダ、シアン、黒色の各色に対して設けられている。そして、これらが4連に並べられ、各色のプロセスカートリッジでそれぞれ感光体ドラム1上に形成された現像剤による像を、転写装置の中間転写ベルト20上に転写することでフルカラー画像が形成される。その後、記録材への転写工程、及び、定着工程を経て画像が形成される。
現像剤は、各色共に、平均粒径6.0μmの非磁性1成分トナーが使用されている。なお、プロセスカートリッジBの詳細については後述する。
【0018】
各色のプロセスカートリッジBにより、感光体ドラム1上に形成されたトナー像は、中間転写ベルト20上に転写される。この転写は、中間転写ベルト20を挟んで、各色の感光体ドラム1の対向位置に設けられた1次転写ローラ22y,22m,22c,22kにより行われる。そして、中間転写ベルト20上に転写されたトナー像は、中間転写ベルト20の移動方向下流側に設けられた2次転写ローラ23により、一括して記録材上に転写
される。なお、中間転写ベルト20上の未転写トナーは、中間転写ベルトクリーナ21によって回収される。
【0019】
記録材Pは画像形成装置本体Aの下部のカセット24内に積載されており、画像形成動作の要求とともに給送ローラ25により搬送され、2次転写ローラ23による転写位置において、中間転写ベルト20上に形成されたトナー像が転写される。
【0020】
その後、定着ユニット26により記録材上のトナー像は記録材に加熱定着され、排出部27を経て画像形成装置本体Aの外部に排出される。
【0021】
本実施形態の画像形成装置においては、各4色のプロセスカートリッジB等を収納する上部のユニットと、転写ユニットや記録材等を収納する下部のユニットとは分離可能になっている。これにより、記録材の詰まり等のジャム発生時や、プロセスカートリッジの交換時において、上下のユニットを分離することで、ジャム処理やカートリッジ交換作業を容易に行うことができる。
【0022】
次に、プロセスカートリッジBの構成について説明する。
図3は、一方向に並列に配置された4つのプロセスカートリッジBy,Bm,Bc,Bkのうち1つのプロセスカートリッジBについて、その概略構成を示す断面図である。なお、4つのプロセスカートリッジBy,Bm,Bc,Bkは、使用するトナーが異なることを除いて、本質的にすべて同じ構成である。
【0023】
画像形成プロセス(画像形成動作)の中心となる像担持体である感光体ドラム1には、アルミニウム製シリンダの外周面に機能性膜である下引き層、キャリア発生層、キャリア移送層が順にコーティングされた有機感光体ドラムが用いられている。画像形成プロセスにおいて、感光体ドラム1は所定の速度で図3において矢印a方向へ駆動される。
【0024】
帯電装置としての帯電ローラ2は、導電性ゴムのローラ部が感光体ドラム1に加圧接触されることにより、図3における矢印b方向に従動回転する。ここで、帯電ローラ2の芯金には、帯電工程として、感光体ドラム1に対して−1100Vの直流電圧が印加されている。これにより誘起された電荷によって、感光体ドラム1の表面電位は、−550Vとなる一様な暗部電位(Vd)が形成される。
【0025】
この一様な表面電荷分布面に対して、スキャナユニット10により、画像データに対応して発光されるレーザ光のスポットパターンは、図3において矢印Lで示されるように感光体ドラム1を露光する。感光体ドラム1において露光された部位は、キャリア発生層からのキャリアにより表面の電荷が消失し、電位が低下する。この結果、露光部位は明部電位Vl=−100V、未露光部位は暗部電位Vd=−550Vの静電潜像が、感光体ドラム1上に形成される。
【0026】
像担持体上である感光体ドラム1上に形成された静電潜像は、回転可能な現像剤担持体としての現像ローラ3上において、所定のコート量及び電荷量を持って形成されたトナーコート層により現像される。現像装置Dの構成については、後述する。
【0027】
現像ローラ3は、感光体ドラム1に接触しながら、感光体ドラム1の回転方向に対して順方向(図3において矢印c方向)に回転する。現像ローラ3には、画像形成工程時にDCバイアス=−350Vが印加されている。そして、現像ローラ3上の摩擦帯電によりマイナスに帯電したトナーが、感光体ドラム1に接触する現像部において、その電位差により、明部電位部にのみ飛翔する。これにより、感光体ドラム1上に形成された静電潜像が実像化される。
【0028】
各プロセスカートリッジBの感光体ドラム1に接触する中間転写ベルト20は、感光体ドラム1に対向した1次転写ローラ22y,22m,22c,22kにより感光体ドラム1に加圧当接されている。また、1次転写ローラ22y,22m,22c,22kには直流電圧が印加されており、感光体ドラム1との間で電界が形成されている。
【0029】
これにより、感光体ドラム1上で実像化されたトナー像は、前記の加圧接触する転写領域において、電界の力を受けて感光体ドラム1上から中間転写ベルト20上に転写される。
【0030】
一方、感光体ドラム1上で中間転写ベルト20に転写されずに残った未転写トナーは、クリーニング装置Cに設置されたウレタンゴム製のクリーニングブレード6により、ドラム表面から掻き落とされる。掻き落とされたトナーは、クリーニング装置C(クリーニング容器)内に収納される。
【0031】
図4は、現像装置Dの概略断面図である。
【0032】
現像装置Dは、現像剤担持体としての現像ローラ3、供給ローラ5、現像剤規制部材4、現像剤t、及び、これらを収納する現像容器6などから構成される。
【0033】
現像剤規制部材4は、本実施形態の特徴的な構成であって、シート状弾性部材4aが支持部材4bを介して現像容器6の枠体に支持され、現像ローラ3の表面に当接するように構成される。現像ローラ3上に担持された現像剤の層厚を規制するもので、現像剤層厚規制部材に相当する。
【0034】
現像ローラ3には、外径φ6mmの芯金に導電性の弾性層3mmが形成されたφ12mmの弾性ローラが用いられており、前記弾性層には体積抵抗値10Ωcmのシリコーンゴムが用いられている。なお、前記弾性ローラ表層には現像剤への電荷付与機能を持つコート層等を設けるようにしてもよい。本実施形態では、感光体ドラム1に安定して弾性接触させるために、弾性層の硬度をJIS−Aで19°のゴムを用い、また、所定のトナーコート量を得るために表面粗さRzを6μmとした現像ローラ3を用いた。
【0035】
供給ローラ5には、外径φ4mmの芯金上に体積抵抗値1014Ωcmの絶縁性ウレタンスポンジゴムの弾性層6mmが形成された、外径φ16mmの弾性スポンジローラが用いられている。
【0036】
現像ローラ3は、感光体ドラム1に接触しながら、感光体ドラム1の回転方向に対して順方向(図4に矢印cで示す方向)に回転している。また、供給ローラ5は、現像ローラ3に接触しながら、現像ローラ3の回転方向と逆方向(図4に矢印dで示す方向)に回転している。
【0037】
供給ローラ5は、現像容器6内の非磁性一成分トナーである現像剤tを付着して、現像ローラ3との接触部に搬送し、現像ローラ3に現像剤tを供給する機能を有する。また、供給ローラ5は、現像ローラ3上において、現像部で現像されずに残ったトナーを、現像ローラ3上から剥ぎ取り、現像容器内に回収する機能を有する。
【0038】
供給ローラ5から現像ローラ3上に供給された現像剤tは、現像ローラ3と現像剤規制部材4との当接面を通過する際、摩擦帯電により帯電されると共に、コート層厚の規制を受ける。これにより、所定の帯電量、及び、コート層厚を持つトナーコート層が形成される。
【0039】
[現像剤規制部材の構成]
図1(a)は、本発明の現像剤規制部材の実施例1を示す概略図である。
【0040】
この現像剤規制部材4は、図1(a)に示すように、回転可能な現像ローラ3の表面に当接するように設けられ、現像ローラ3上に担持された現像剤の層厚を規制するものである。現像剤規制部材4は、現像ローラ3に当接するシート状弾性部材4aと、これを支持する支持部材4bとで構成される。
シート状弾性部材4aは現像ローラ3の長手方向の長尺で、一方の長端部を支持端として支持部材4bで支持し、もう一方の長端部を先端として現像ローラ3に当接させたものである。
支持部材4b、現像ローラ3は、図4に示したように、現像装置Dの現像容器6に支持されている。シート状弾性部材4aと支持部材4bとは、固定部4eで複数箇所溶接されている。なお、この固定は接着にしてもよい。シート状弾性部材4aは、厚さ0.1mm、先端から支持部材4bまでの自由長10mmのSUS材により構成されている。
【0041】
また、シート状弾性部材4aにはバイアス印加が可能となっている。本実施例においては、現像ローラ3へのバイアス印加時、シート状弾性部材4aには現像ローラ3に対して−200V印加されている。このバイアス印加により、トナーの帯電性を高め、高画質、高安定性を実現している。
【0042】
本実施例においては、開口4cが、シート状弾性部材4aに複数設けられている。開口4cを設けることで、シート状弾性部材4aの厚さ、短手側の幅、材質といった設計項目の変更に伴う不具合を回避する。同時に、シート状弾性部材4aの剛性を下げて、現像ローラ3との当接部9における当接圧が過度に高くなることを回避することが可能になる。なお、本実施例においては開口4cを円形状に形成したが、形状は、これに限ることなく、楕円形状、多角形状等に形成してもよい。
【0043】
以下に、本実施例における開口4cの配列に関する詳細な説明を述べる。
【0044】
開口4cは、現像ローラ3の回転軸と平行に配列された一連の複数の開口41cを有する開口領域A1と、42c、43cを有する開口領域A2が、回転軸に対して直交方向に2箇所設けられている。各々の開口領域A1、A2に設けられる開口41c、42c、43cの中心位置は現像ローラ3の回転軸方向に沿う同一線上にある。現像ローラ3側から数えて1箇所目の開口領域A1にある開口41cは半径0.8mmの円形状であり、2箇所目の開口領域A2の開口42cは半径1.0mm、開口43cは1.2mmの円形状である。 各開口領域A1、A2は、現像ローラ3の回転軸に対する全ての平行線と各開口41c、42c、43cとの交点を含む一連の領域である。
【0045】
ここで、本実施例においては、開口4cの存在しない非開口領域Bが、シート状弾性部材4aの一方の長手端部から他方の長手端部までの間に少なくとも一箇所に設けられている。この例では、1箇所目の開口領域A1と2箇所目の開口領域A2の間に設けられている(図1(b)参照)。
非開口領域Bは、開口領域に挟まれ、その領域内における、現像ローラ3の回転軸Nに対する全ての平行線と開口領域を構成する開口との交点を含まない一連の領域である。この例では、1箇所目の開口領域A1と2箇所目の開口領域A2に挟まれ、現像ローラ3の回転軸Nに対する全ての平行線と開口領域A1、A2を構成する開口41c、42c、43cとの交点を含まない領域となっている。
また、この例では、非開口領域Bよりも支持部材側に存在する開口領域A2は、非開口領域Bよりも現像剤担持体側である現像ローラ3側に存在する開口領域A1と比較して、
開口面積の総和および各開口の平均面積が大きい。この例では、現像ローラ3側から、1箇所目の開口領域A1の開口が最も小さく、2箇所目の開口領域A2の開口面積が大きくなっている。
すなわち、現像ローラ3に近い側からn番目の開口領域における、総開口面積をTn、開口領域内での各開口の平均面積をAnとすると、次式の関係であるようなxが存在する。
T1<Tx、且つ、A1<Ax (2≦x≦n)
図示例の場合、nは2、xも2である。nが3以上の場合、2番目以降の開口領域のうち、少なくとも一つの領域が上式を満足していればよい。一つの領域だけが上式を満足する場合も含むし、全ての領域が上式を満足する場合も含まれる。
また、nが3以上の場合、各開口領域に挟まれる部分が非開口領域となり、nが3の場合には非開口領域は2箇所、nが4の場合には非開口領域は3箇所となる。
また、開口4cの短手方向の配列については、回転軸Nに対する全ての垂直線が、開口領域A1,A2のうち少なくともいずれか一つの開口領域の少なくともいずれかの一つの開口との交点を持つように構成されている。この配列は、シート状弾性部材上の現像領域内でなされる。
すなわち、現像領域内における現像ローラ3の回転軸に垂直な方向に沿って、開口4cが少なくとも1つは存在するように配置されている。本実施例では、開口領域A2の開口42cは、開口42cに最近接する開口43cから等距離になるように配置されている。また、開口41cは、開口41cに最近接する開口42cの中心を通り、現像ローラ3の回転軸に垂直な線と、開口41cに最近接する開口43cの中心を通り、回転軸に垂直な線から、等距離になるように配置されている。
【0046】
本実施例においては、非開口領域Bを開口領域A1,A2間に存在させることによって、非開口領域Bに梁の効果を持たせ、シート状弾性部材4aが撓んだ際の開口領域A1,A2間における局部的な歪を緩和することを可能にしている。これにより、現像ローラ3との当接部9における当接圧ムラを抑制することが可能になった。
【0047】
また、現像ローラ3側の開口領域よりも、支持部材4b側の開口領域の、開口面積の総和および各開口の平均面積を大きくすることで、効率よく、シート状弾性部材4aの剛性を下げることができる。それとともに、現像ローラ3との当接部9における当接圧ムラを抑制することが可能になった。また、開口4cの短手方向の配列を前記のように行うことにより、シート状弾性部材4aの先端に生じる歪は適度に分散され、局所的に歪が大きくなることを避けられる。そのため、現像ローラ3との当接部9における当接圧ムラの発生を抑えることが可能になった。
【0048】
なお、隣り合う開口4c間の間隔は、現像ローラ3の回転軸方向に沿って、周期性を持って配列することが好ましい。これは、シート状弾性部材4aが撓んだ際の、局所的な歪をより低減しやすいためである。これにより、現像ローラ3との当接部9における当接圧ムラをより緩和させることができる。
【0049】
本実施例における当接圧は、2.7kgf/mmであった。なお、この当接圧は、ニッタ株式会社製タクタイルセンサーを用いて測定した。タクタイルセンサーでは、当接圧値の測定、及び、長手方向に関しては、最小解像度4.5mmピッチ間隔での圧分布測定が可能である。このとき、タクタイルセンサーによる長手方向の当接圧ムラは測定されなかった。また、本実施例における画像形成装置を用いて出力した画像においても、当接圧ムラが原因となるような濃度ムラ等の問題は発生しなかった。
【0050】
ここで、比較例として、開口の無いシート状弾性部材(比較例1、図9(a))と、開口はあるものの、1列のみ開口群が設けられているシート状弾性部材(比較例2、図9(
b))について述べる。開口群は現像ローラ3の回転軸方向に沿って設けられている。なお、比較例1及び2における、シート状弾性部材の材質、厚さ、自由長は、全て本実施例で用いたシート状弾性部材と同一である。
【0051】
比較例1における当接圧は3.5kgf/mmであり、本実施例で開口部を設けたことで、当接圧を約30%低減できたことが分かる。本実施例と同等の当接圧を得るためには、金属板の厚さを薄くすることが考えられるが、この場合、ハンドリングが悪くなり、当接圧ムラも敏感になるため濃度ムラ等が発生しやすくなる。また、自由長を大きくすることも考えられるが、この場合、装置の大型化を伴うという問題がある。
【0052】
比較例2においては、本実施例と同等の当接圧が得られたが、タクタイルセンサーを用いた当接圧の圧分布測定では、開口の配列形状に起因すると思われる周期的な当接圧ムラが見られた。この当接圧ムラに対応して画像上で濃度ムラが発生した。
【0053】
更に、当接圧ムラの詳細を、有限要素法によるシミュレーションで説明する。ここではDassault Systemes Simulia Corp.製の汎用有限要素法
ソフト「ABAQUS」を用いた。結果を図5に示す。
【0054】
図5では、横軸に現像ローラの回転軸方向における当接部9の位置を示し、縦軸に圧力を示している。この図からわかるように、本実施例では当接圧を低い値に抑えつつ、当接圧ムラは非常に小さい。これに対して、比較例1では、当接圧ムラはほとんど発生していないものの、当接圧が高い値を示している。
【0055】
また、比較例2では、当接圧を本実施例と同様に低く抑えることはできているが、当接圧ムラが発生しており、トナーコート層厚が不均一になる原因となる。これに対して、本実施例は開口4cの適切に配置することで、シート状弾性部材4aの薄板化や自由長を必要としない。つまりは、製造時のシート状弾性部材端部の歪や装置の大型化を伴うことなく、適正で均一な当接圧を得ることができる。
【0056】
次に、非開口領域の効果について、比較例として、非開口領域の存在しないシート状弾性部材(比較例3、図9(c))を用いて説明する。
【0057】
比較例3では、タクタイルセンサーを用いた当接圧の圧分布測定では、明確な周期的な当接圧ムラが確認できなかった。画像上でも、初期状態ではほとんど濃度ムラが発生しなかった。しかしながら、耐久試験後の画像においては、本実施例では濃度ムラが発生しなかったのに対して、比較例3では周期的な濃度ムラが発生した。
【0058】
これに関して、先のシミュレーションを用いて当接圧分布を計算した結果を図6に示す。この図からわかるように、本実施例と比較例3との当接圧ムラは、差が小さいものの、本実施例のほうが周期的な当接圧ムラが小さい。周期的な当接ムラの位置が、画像上の濃度ムラに一致していたことにより、この差が、耐久試験後の画像の差となって現れたと考えられる。従って、このことより、本実施例では、開口領域に非開口領域を設けることで、長期間の使用にも耐えうるだけの均一性を持った圧分布が得られたことが分かる。
【0059】
次に、開口の配列の効果についての比較例として、画像領域内で、現像ローラ3の回転軸に垂直な方向に沿って、開口4cが存在しないところがあるシート状弾性部材(比較例4、図9(d))を用いて説明する。
【0060】
比較例4では、タクタイルセンサーを用いた当接圧の圧分布測定で、周期的な当接圧ムラが測定された。また画像上でも濃度ムラが発生した。比較例4について、シミュレーシ
ョンを用いて当接圧分布を計算した結果を図7に示す。
【0061】
この図からわかるように、本実施例と比較して、比較例4では当接圧ムラが悪化している。このことより、本実施例は画像領域内で、現像材担持体3の回転軸に垂直な方向に沿って、開口4cが少なくとも1つは存在するように配置したことで、当接圧ムラの発生を抑えることを可能にした。
【0062】
以上の本実施例と比較例についての比較を、表1としてまとめた。
各項目の評価レベルは、〇が良好なレベル、×が許容できないレベル、である。
【0063】
【表1】

【0064】
以上のように、本実施例では、規制部材4の当接圧の軽圧化において、シート状弾性部材の薄板化や現像装置の大型化を伴うことなく、当接部9における当接圧ムラの発生を抑えることができる。これにより、長期に渡って安定したトナーのコート層規制及び摩擦帯電が可能な現像剤規制部材を提供することが可能となる。
【0065】
[実施例2]
図8は、実施例2の現像剤規制部材4を示す概略図である。
本実施例2においては、シート状弾性部材4aは金属薄板により形成され、少なくともその一部に樹脂薄膜である樹脂の薄膜シート4dを有する構成となっている。その他、開口4cの配置等は実施例1と同様の構成であり、薄膜シート4dにより少なくとも一部を覆う構成となっている。
【0066】
薄膜シート4dは、厚さ20μm、体積抵抗値10Ω・cmのナイロン製の樹脂である。本実施例では、現像ローラ3との当接面に薄膜シート4dを設けており、これにより、樹脂の表面特性を生かしてトナーの離型性を高め、トナーの融着を防止する。また、当接部9に一時的にトナー塊が介在した場合においても、金属板のみよりも傷つきにくいという効果を持つ。なお、薄膜シート4dは中抵抗であるため、実施例1のようにバイアス印加も可能である。また、薄膜シート4dは十分薄いため、シート状弾性部材としての硬度には影響なく、当接圧分布等も実施例1と同様である。
【0067】
また、本実施例においては、薄膜シート4dは、金属板に貼り付けられており、開口4cを塞いでいる。開口4cが大きく、また、現像容器内のトナー量が多く、トナー撹拌による現像容器内のトナー飛散が大きい場合では、開口4cを通して、現像容器内から外部へ、トナーが漏れる恐れがある。これに対して、本実施例では、開口4cは塞がれているため、そのような問題を防ぐことが出来る。
【0068】
なお、本実施例においては、開口4cの全てが薄膜シート4dにより塞がれているが、
その一部が塞がれているだけでも、トナー漏れ防止の効果は得られる。また、本実施例においては、前記薄膜シート4dは、現像ローラ3との当接面側に貼り付けられているが、上記のトナー漏れ防止のみを達成させるためには、当接面の裏面に貼り付けられていても良い。
本実施例においても、実施例1と同様の効果は得られた。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の実施例1に係る現像剤規制部材を示す概略図。
【図2】実施形態1の画像形成装置を示す概略断面図。
【図3】実施形態1のプロセスカートリッジを示す概略断面図。
【図4】実施形態1の現像装置を示す概略断面図。
【図5】実施例1と比較例1、2との当接圧分布を比較するための図。
【図6】実施例1と比較例3との当接圧分布を比較するための図。
【図7】実施例1と比較例4との当接圧分布を比較するための図。
【図8】実施例2の規制部材を示す概略図。
【図9】比較例1〜4の規制部材を示す概略図。
【図10】従来の片持ちブレード形状の現像剤規制部材を、非磁性トナーを用いた接触現像装置に適用した場合を示す概略断面図。
【符号の説明】
【0070】
D 現像装置
3 現像ローラ(現像剤担持体)
4 現像剤規制部材
4a シート状弾性部材
4b 支持部材
4c 開口
4d 薄膜シート
4e 固定部
9 当接部
A1,A2 開口領域
B 非開口領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な現像剤担持体の表面に当接するように設けられ、前記現像剤担持体上に担持された現像剤の層厚を規制する現像剤規制部材において、
前記現像剤規制部材は、前記現像剤担持体に当接するシート状弾性部材と、これを支持する支持部材とで構成され、
前記シート状弾性部材には複数の開口が設けられ、
該開口の配列が、その領域内における前記現像剤担持体の回転軸に対する全ての平行線と前記開口との交点を含む一連の領域である少なくとも2箇所の開口領域と、前記開口領域に挟まれ、その領域内における、前記現像剤担持体の回転軸に対する全ての平行線と前記開口との交点を含まない、一連の領域である少なくとも一箇所の非開口領域と、を有し、
前記シート状弾性部材上の現像領域内における、前記回転軸に対する全ての垂直線が、前記少なくともいずれか一つの開口領域の少なくともいずれかの一つの開口と交点を持つように構成されていることを特徴とする現像材規制部材。
【請求項2】
前記現像剤担持体に近い側からn番目の前記開口領域における、総開口面積をTn、開口領域内での各開口の平均面積をAnとすると、
T1<Tx、且つ、A1<Ax (2≦x≦n)
であるようなxが存在することを特徴とする請求項1に記載の現像材規制部材。
【請求項3】
前記開口領域の複数の開口は、前記現像剤担持体の回転軸方向に沿って、周期性を持って配列されることを特徴とする請求項1又は2に記載の現像剤規制部材。
【請求項4】
前記シート状弾性部材は金属薄板により形成され、少なくともその一部に樹脂薄膜を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかの項に記載の現像剤規制部材。
【請求項5】
前記樹脂薄膜は、前記シート状弾性部材上の開口の、少なくとも一部を覆うことを特徴とする請求項4に記載の現像剤規制部材。
【請求項6】
回転可能な現像剤担持体と、該現像剤担持体の表面に当接するように設けられ前記現像剤担持体上に担持された現像剤の層厚を規制する現像剤規制部材と、を備え、前記現像剤担持体に担持された現像剤によって像担持体上に形成された静電潜像を現像する現像装置であって、
前記現像剤規制部材を、請求項1乃至5のいずれかの項に記載の現像剤規制部材としたことを特徴とする現像装置。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−8567(P2010−8567A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−165919(P2008−165919)
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】