説明

現像液の供給装置

【課題】液晶基板やプリント基板の現像プロセスから回収された現像液のアルカリ濃度および樹脂濃度を管理すると共に、一定濃度に再調製した現像液を現像プロセスに供給する現像液の供給装置を提供する。
【解決手段】現像液の供給装置は、現像液原液を供給する機構および新たな現像液または希釈水を供給する機構が付設された調整槽(1)、使用済現像液を調整槽(1)に送液する回収流路(22)、再調製された現像液を現像プロセス(8)に送液する供給流路(21)とを備え、回収流路(22)には、現像プロセス(8)から送液される使用済現像液を装置外に排出する排出流路(23)が設けられる。そして、調整槽(1)に回収された使用済現像液の量が再調整に必要な使用量を超えた場合に排出流路(23)から使用済現像液を排出する様に構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像液の供給装置に関するものであり、詳しくは、液晶基板やプリント基板の現像プロセスから回収された現像液のアルカリ濃度および樹脂濃度を管理すると共に、一定濃度に再調節した現像液を現像プロセスに供給する現像液の供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶基板やプリント基板を製造する際のフォトレジストの現像プロセスでは、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)等のアルカリ水溶液が現像液として使用される。斯かる現像液は、昨今、基板サイズの大型化やプロセスの進歩により多量に使用されるため、コスト低減の観点から現像プロセスに対してリサイクルするのが望ましいが、リサイクルを繰り返すうちに、樹脂中の酸との反応、空気中の炭酸ガスや酸素との反応によってアルカリ濃度が低下し、また、レジスト用樹脂の溶解によって樹脂濃度が上昇し、これにより、レジストパターンの寸法精度や未露光部の膜厚精度が低下するため、アルカリ濃度および溶解樹脂濃度を出来る限り一定に管理する必要がある。
【0003】
現像プロセスから排出される使用済現像液を再生してリサイクルする現像液の供給装置としては、供給すべき現像液を調製する供給貯槽(調製槽)と、使用済現像液を一旦回収液貯槽に収容して前記の供給貯槽に送液する回収液供給機構と、新たな現像液原液を供給貯槽に供給する原液供給機構と、希釈水を供給貯槽に供給する希釈水供給機構とを備え、供給貯槽の現像液のアルカリ濃度および樹脂濃度に基づき、原液供給機構による現像液原液の送液および希釈水供給機構による希釈水の送液を制御可能になされたものが知られている。
【0004】
上記の様な現像液の供給装置においては、現像プロセスから回収した使用済現像液のアルカリ濃度が目標濃度よりも低い場合には高濃度の現像液原液(例えば25質量%のTMAH)を追加供給し、使用済現像液の樹脂濃度が目標濃度よりも高い場合には前記の現像液原液および希釈用純水を追加供給することにより、適切な濃度の現像液を調製している。そして、現像液の超音波伝播速度と電磁導電率に基づいてアルカリ濃度および樹脂濃度を高精度に検出ことにより、正確に濃度調節された現像液をプロセス側へ供給できる。
【特許文献1】特開2003−248326号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前述の現像液の供給装置においては、現像プロセスから調製槽への使用済現像液の回収量が調製槽から現像プロセスへの供給量よりも多くなったり、現像液原液や新たな現像液の追加供給量が予定以上に多くなった場合、調製される現像液の全体量が供給貯槽(調製槽)の収容量を超えるため、余剰の現像液を調製槽から廃棄しなければならない。これにより、追加供給した現像液原液や新たな現像液の一部も廃棄されるため、コストな損失を惹起する。
【0006】
一方、現像処理においては、被処理物の変更によりプロセスの処理条件も変更され、また、一般的には複数のプロセスがそれぞれ異なる処理条件で稼働している。そして、昨今、現像液中の樹脂濃度に関しては、その好ましい濃度範囲が現像プロセスの処理条件によって異なることが確認されている。すなわち、現像液中の樹脂濃度が低いときに現像プロセスが安定する場合と、樹脂濃度が比較的高いときに現像プロセスが安定する場合とがある。
【0007】
これに対し、前述の現像液の供給装置では、1つの現像プロセスを対象に現像液を調製するため、回収された使用済現像液のうちの余剰分については、仮に他の現像プロセスで再利用可能であっても廃棄されている。従って、現像プロセスにおける処理コストの低減と言う観点からも、回収された使用済現像液のより有効な再利用が望まれる。
【0008】
本発明は上記の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、液晶基板やプリント基板の現像プロセスから回収された現像液のアルカリ濃度および樹脂濃度を管理すると共に、一定濃度に再調製した現像液を現像プロセスに供給する現像液の供給装置であって、再調製に使用される新たな現像液の消費量を低減できる現像液の供給装置を提供することにある。また、本発明の目的は、現像プロセスから回収された使用済現像液を更に有効利用できる現像液の供給装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、調整槽における現像液の過剰な再調製を防止し、現像液原液または新たな現像液のロスを防止するため、調整槽内の使用済現像液中のアルカリ濃度、樹脂濃度および調整槽の液面を検出し、再調製される現像液の全体量が調整槽の収容範囲内で例えば最大となる様に、再調製に必要な現像液原液または新たな現像液もしくは希釈水の追加供給量と共に使用済現像液の使用量を算出し、調整槽に回収された使用済現像液の量が前記の使用量を超えた場合、現像プロセスから返流される使用済現像液を調製槽に供給することなく装置外に排出する様にした。
【0010】
また、本発明では、現像プロセスから回収された使用済現像液を更に有効利用するため、他の現像プロセスから排出された使用済現像液を回収貯槽に一旦貯留すると共に、対象とする現像プロセスの現像液を再調製する際、必要とされる樹脂濃度に応じて回収貯槽の使用済現像液を利用する様にした。例えば、対象とする現像プロセス用に現像液を調製する際、他の現像プロセスから排出される樹脂濃度の低い使用済現像液を希釈用として利用する。また、対象とする現像プロセス用に現像液を調製する際、他の現像プロセスから排出される樹脂濃度の高い使用済現像液を樹脂濃度調節用として利用する。
【0011】
すなわち、本発明は3つの要旨から成り、その第1の要旨は、アルカリ水溶液から成る現像液を現像プロセスに供給する現像液の供給装置であって、現像液原液を供給する機構および新たな現像液または希釈水を供給する機構が付設された調整槽と、現像プロセスから回収された使用済現像液を前記調整槽に送液する回収流路と、前記調整槽で再調製された現像液を前記現像プロセスに送液する供給流路とを備え、前記調整槽には、アルカリ濃度および樹脂濃度を検出する濃度計ならびに液面計が設けられ、前記回収流路には、前記現像プロセスから送液される使用済現像液を装置外に排出する排出流路が設けられ、そして、前記調整槽の現像液のアルカリ濃度、樹脂濃度および液面を検出し、再調製される現像液の量が前記調整槽の収容範囲内の予め設定された上限量となる様に、使用済現像液の使用量を算出し、前記調整槽に回収された使用済現像液の量が前記使用量を超えた場合に前記排出流路から使用済現像液を排出する様に構成されていることを特徴とする現像液の供給装置に存する。
【0012】
また、本発明の第2の要旨は、上記の第1の要旨に係る装置であって、他の現像プロセスから回収された使用済現像液を貯留する回収貯槽と、当該回収貯槽から調整槽に使用済現像液を送液する混合流路とを備え、前記回収貯槽の使用済現像液の樹脂濃度が前記調整槽の現像液の樹脂濃度よりも低い場合、前記調整槽にて樹脂濃度を低くする操作の際、前記回収貯槽の使用済現像液を前記混合流路から前記調整槽に供給する様に構成されている請求項1に記載の現像液の供給装置に存する。
【0013】
更に、本発明の第3の要旨は、上記の第1の要旨に係る装置であって、他の現像プロセスから回収された使用済現像液を貯留する回収貯槽と、当該回収貯槽から調整槽に使用済現像液を送液する混合流路とを備え、前記回収貯槽の使用済現像液の樹脂濃度が前記調整槽の現像液の樹脂濃度よりも高い場合、前記調整槽にて樹脂濃度を高くする操作の際、前記回収貯槽の使用済現像液を前記混合流路から前記調整槽に供給する様に構成されている請求項1に記載の現像液の供給装置に存する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の第1の要旨に係る現像液の供給装置によれば、調整槽に回収される使用済現像液の量が再調製に必要な使用量を超える場合に調整槽の上流側の排出流路から使用済現像液を排出するため、調整槽における現像液の過剰な再調製を防止でき、廃棄される現像液原液または新たな現像液のロスを防止することが出来る。また、本発明の第2及び第3の要旨に係る現像液の供給装置によれば、回収貯槽に回収された他の現像プロセスの使用済現像液を有効に再利用できるため、現像プロセスにおける処理コストを一層低減することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明に係る現像液の供給装置の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の第1の態様に係る現像液の供給装置の主な構成要素を示すフロー図であり、第1の態様に係る現像液の供給装置は、現像液の過剰な再調製を防止し、現像液原液または新たな現像液のロスを防止する様にした装置である。また、図2は、本発明の第2の態様および第3の態様に係る現像液の供給装置の主な構成要素を示すフロー図であり、第2の態様および第3の態様に係る現像液の供給装置は、他の現像プロセスから排出される使用済現像液を有効利用する様にした装置である。以下、実施形態の説明においては、現像液の供給装置を「供給装置」と略記する。
【0016】
本発明の供給装置は、液晶基板やプリント基板を製造する際のフォトレジストの現像プロセス、例えばスピンデベロッパ装置などの現像装置を含む現像プロセス(図中に符号(8)で示す)に対し、アルカリ水溶液から成る現像液を供給する装置であり、現像プロセスから回収された使用済現像液を一定のアルカリ濃度および樹脂濃度の現像液に再調製し、再調製された現像液を現像プロセスに供給する機能を有する。
【0017】
本発明において、アルカリ系の現像液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウムなどの無機アルカリの単独又は混合物からなる無機アルカリ水溶液や、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)、トリメチルモノエタノールアンモニウムハイドロオキサイド(コリン)などの有機アルカリ水溶液などが挙げられる。
【0018】
先ず、本発明の第1の態様に係る供給装置について説明する。本発明の供給装置は、図1に示す様に、現像液原液を供給する機構、および、新たな現像液または希釈水を供給する機構が付設された調整槽(1)と、現像プロセス(8)から回収された使用済現像液を調整槽(1)に送液する回収流路(22)と、調整槽(1)で再調製された現像液を現像プロセス(8)に送液する供給流路(21)とを備えている。
【0019】
調整槽(1)は、回収した使用済現像液のアルカリ濃度を一定の目標値に調節し且つ樹脂濃度を一定範囲に調節して使用済現像液を再生すると共に、再生された現像液を必要に応じて現像プロセス(8)に供給する機能を備え、例えば、100〜2000リットル程度の内容積の耐腐食性を備えた容器によって構成される。
【0020】
調整槽(1)には、貯留する現像液を均一な濃度に調節し且つ維持するため、ポンプ及び循環流路から成る撹拌手段(図示省略)が設けられる。上記の様な循環による撹拌手段は、スクリュー等の撹拌装置に比べ、パーティクルの発生が少なく、現像液の汚染を低減することが出来る。更に、後述する濃度計(12)によって正確に現像液の濃度を測定するため、図示しないが、調整槽(1)には、当該調整槽内の現像液の温度を一定に保持する温度調節手段が付設される。斯かる温度調節手段は、例えば、上記の撹拌手段の循環流路または別途設けられた循環流路と、当該循環流路の途中に配置された恒温槽とから構成される。
【0021】
現像液原液を供給する機構は、原液貯槽(図示省略)から調整槽(1)に至る原液供給流路(32)と、当該新液供給流路の途中に介装された開閉弁(52)とから構成され、開閉弁(52)の制御により、必要時に現像液原液を調整槽(1)に供給する様になされている。なお、上記の原液貯槽に予め収容される現像液原液としては、高濃度の未使用の現像液、例えば、TMAH濃度が25質量%の現像液が挙げられる。
【0022】
新たな現像液を供給する機構は、現像液貯槽(図示省略)から調整槽(1)に至る新液供給流路(31)と、当該新液供給流路の途中に介装された開閉弁(51)とから構成され、開閉弁(51)の制御により、必要時に新たな現像液を調整槽(1)に供給する様になされている。なお、上記の現像液貯槽に予め収容される現像液としては、使用濃度に濃度調節された現像液、例えば、TMAH濃度が2.38質量%の現像液が挙げられる。
【0023】
また、本発明の供給装置では、上記の様な現像液原液を供給する機構が設けられることにより、新たな現像液を供給する機構に代え、希釈水を供給する機構が設けられてもよい。図示しないが、例えば、希釈水を供給する機構は、純水製造装置から調整槽(1)至る純水供給流路および当該純水供給流路に介装された開閉弁から構成され、上記の現像液原液を供給する機構と共に稼働させて調整槽(1)に純水を供給することにより、調整槽(1)において新たな現像液を調製する様になされている。
【0024】
更に、上記の調整槽(1)には、アルカリ濃度および樹脂濃度を検出する濃度計(12)並びに液面計(11)が設けられる。濃度計(12)は、調整槽(1)内の現像液の濃度を検出するため、例えば、調整槽(1)に付設されたサンプリング用の循環流路(図示省略)の途中に配置される。本発明の供給装置においては、樹脂濃度の変動に影響を受けることなく高精度に樹脂濃度およびアルカリ濃度を検出するために特定の濃度計が使用される。具体的には、濃度計(12)としては、現像液における超音波伝播速度および現像液の電磁導電率を計測し、予め作成された所定温度および所定濃度における超音波伝播速度と電磁導電率との関係(マトリックス)に基づき、アルカリ濃度および樹脂濃度を検出する多成分濃度計が使用される。
【0025】
上記の多成分濃度計は、一定温度の溶液中の超音波伝播速度および電磁導電率を測定することにより、3成分系溶液の2成分の濃度を同時にリアルタイムで測定可能な濃度計である。すなわち、多成分濃度計は、溶液の温度が一定ならば、各成分の濃度に応じて液中の超音波の伝播速度および電磁導電率が一義的に特定されると言う原理に基づくものであり、主に、超音波変換器、超音波発信器、電磁導電率変換器、電磁導電率発信器および所定の演算を行うマイクロプロセッサーから成る。
【0026】
上記の多成分濃度計においては、現像液の濃度測定に適用する場合、アルカリ濃度および樹脂濃度の各種組み合わせ毎に一定温度条件下で予め計測された超音波伝播速度と電磁導電率の関係をマトリックスとして予め準備されることにより、当該マトリックスに基づき、測定値からアルカリ濃度および樹脂濃度を正確に推定演算できる。上記の様な多成分濃度計としては、富士工業社製の商品名「FUD−1 Model−51」として知られる液体用超音波多成分濃度計が好適に使用できる。なお、本発明において、濃度計は、アルカリ濃度検出用濃度計と樹脂濃度検出用濃度計とを別個に設置してもよい。
【0027】
液面計(11)としては、差圧型、フロート型、光電センサー型、超音波型などの信号出力可能な各種の液面計測機器を使用できる。液面計(11)は、調整槽(1)内の現像液の液面を検出し、前述の開閉弁(51)及び(52)並びに後述する切替弁(4)を制御するために使用される。すなわち、液面計(11)は、調整槽の収容範囲内の予め設定された上限量(H)(例えば最大収容量)と、現像プロセス(8)へ安全に供給操作し得る予め設定された下限量(L)とを検出し、それぞれ所定の信号を出力すると共に、調整槽(1)の液量の基準となる液面レベルを常時検出して信号出力する様に設定される。
【0028】
本発明の供給装置は、現像プロセス(8)から調整槽(1)に至り且つポンプ(図示省略)が介装された回収流路(22)を備えており、現像プロセス(8)から排出された使用済現像液を回収流路(22)によって調整槽(1)に回収する様になされている。また、調整槽(1)から現像プロセス(8)に至り且つポンプ(71)が介装された供給流路(21)を備えており、調整槽(1)で再調製された現像液を供給流路(21)によって現像プロセス(8)に供給する様になされている。
【0029】
本発明の供給装置においては、必要量よりも多くの量の使用済現像液が調整槽(1)に回収されるのを規制するため、回収流路(22)には、現像プロセス(8)から送液される使用済現像液を装置外に排出する排出流路(23)が設けられる。排出流路(23)は、回収流路(22)の途中に配置された切替弁(4)を介して回収流路(22)から分岐して設けられる。なお、上記の様な調整槽(1)、現像液原液を供給する機構、新たな現像液または希釈水を供給する機構、供給流路(21)及び回収流路(22)を含む系内は、現像液の空気との接触を防止するため、窒素などの不活性ガスによってシールする様になされている。
【0030】
本発明の供給装置においては、装置全体の稼働制御の他、上記の様な濃度計(12)及び液面計(11)の測定に基づいて開閉弁(51)、(52)及び切替弁(4)を制御するための演算機能を有する制御装置(図示省略)が設けられる。斯かる制御装置は、各計測機器の信号をデジタル変換する入力装置と、プログラムコントローラやコンピュータ等の演算処理装置と、演算処理装置からの制御信号をアナログ変換する出力装置とを含む。そして、本発明の供給装置は、上記の制御装置の機能により、調整槽(1)の現像液のアルカリ濃度、樹脂濃度および液面を検出し、再調製される現像液の量が調整槽(1)の収容範囲内の予め設定された上限量(H)となる様に、使用済現像液の使用量を算出し、調整槽(1)に回収された使用済現像液の量が前記の使用量を超えた場合に切替弁(4)を制御し、排出流路(23)から使用済現像液を装置外へ排出する様に構成される。
【0031】
本発明の供給装置の機能は以下の通りである。すなわち、本発明の供給装置では、現像プロセス(8)で排出された使用済現像液が回収流路(22)を通じて調整槽(1)に回収される。調整槽(1)においては、撹拌手段により使用済現像液を撹拌し且つ温度調節手段により使用済現像液を一定温度に保持する。そして、濃度計(12)により使用済現像液のアルカリ濃度および樹脂濃度を測定する。
【0032】
一方、制御装置は、上記の濃度計(12)からの信号に基づき、一定のアルカリ濃度(例えばTMAH濃度2.38質量%)及び一定範囲の樹脂濃度の現像液を調整槽(1)の収容範囲内の上限量(H)だけ再調製するのに必要な使用済現像液の使用量(回収量)、および、現像液原液または新たな現像液(若しくは希釈水)の追加供給量を演算する。
【0033】
次いで、制御装置は、液面計(11)からの信号を参照しながら、必要に応じて開閉弁(52)を制御して調整槽(1)に所要量の現像液原液を供給し、また、必要に応じて開閉弁(51)を制御して調整槽(1)に所要量の新たな現像液(又は希釈水)を供給する。そして、液面計(11)の信号に基づき、調整槽(1)に回収された使用済現像液の量が上記の使用量(再調製に必要な量)を超えた場合には、切替弁(4)を切換え操作し、現像プロセス(8)から回収流路(22)を通じて送液される使用済現像液を排出流路(23)から排出する。
【0034】
なお、アルカリ濃度や樹脂濃度の調節のための現像液原液や希釈水あるいは新たな現像液(新液)の供給制御は、濃度計(12)による検出濃度に基づき、現像液原液の供給量、希釈水、新液の供給量をカスケード制御して行うことが出来、斯かる制御においては、例えば、特開平10−180076号公報に記載の「アルカリ現像原液の希釈方法および希釈装置」にて開示されたいわゆる漸近法が利用できる。
【0035】
本発明の供給装置においては、上記の様に、再調製される現像液の全体量が調整槽(1)の収容範囲内の例えば上限量(H)となる様に、現像液原液または新たな現像液もしくは希釈水の追加供給量と共に、再調製に必要な使用済現像液の使用量を算出し、当該使用量を超える量の使用済現像液については、調整槽(1)に回収することなく、調整槽(1)の上流側の排出流路(23)から排出するため、調整槽(1)における現像液の過剰な再調製を防止できる。その結果、廃棄されることによる現像液原液または新たな現像液もしくは希釈水のロスを防止することが出来る。
【0036】
因に、上記の第1の態様に係る供給装置を稼働させ、使用済現像液として回収されたTMAHの水溶液を調整槽(1)で再調製し、TMAH濃度を2.380質量%、樹脂濃度を1000±150ppmに調節して現像プロセス(8)に供給したところ、使用済現像液の全量を回収して再生していた従来の供給装置に比べ、現像原液および新たな現像液(新液)の消費量が新液換算で約30%低減できた。
【0037】
次に、本発明の第2の態様に係る供給装置について説明する。第2の態様の供給装置は、他の現像プロセス(8b)から排出される樹脂濃度の低い使用済現像液を対象の現像プロセス(8)に有効利用するための装置である。第2の態様において、他の現像プロセス(8b)は、対象の現像プロセス(8)とは異なる現像処理(異なる被処理物の処理や異なる条件による処理)を行うプロセスであり、第2の態様は、他の現像プロセス(8b)から排出される使用済現像液の樹脂濃度が対象の現像プロセス(8)から排出される使用済現像液の樹脂濃度よりも低い場合に適用される。
【0038】
本発明の供給装置は、図2に示す様に、現像液原液を供給する機構、および、新たな現像液または希釈水を供給する機構が付設された調整槽(1)と、現像プロセス(8)から回収された使用済現像液を調整槽(1)に送液する回収流路(22)と、調整槽(1)で再調製された現像液を現像プロセス(8)に送液する供給流路(21)とを備えている。調整槽(1)、供給流路(21)、回収流路(22)の構成は、前述の第1の態様におけるのと同様である。また、調整槽(1)には、第1の態様におけるのと同様の濃度計(12)並びに液面計(11)が設けられ、回収流路(22)には、第1の態様におけるのと同様の排出流路(23)が設けられる。
【0039】
第2の態様に係る供給装置は、回収貯槽(6)及び混合流路(25)を備えている点が前述の態様と異なる。すなわち、図2に示す供給装置は、上記の構成に加え、他の現像プロセス(8b)から回収された使用済現像液を貯留する回収貯槽(6)と、当該回収貯槽から調整槽(1)に使用済現像液を送液する混合流路(25)とを備えている。
【0040】
他の現像プロセス(8b)は、従来型の他の現像液供給装置から現像液をされ、前記の他の現像液供給装置は、調整槽(1b)、他の現像プロセス(8b)への現像液の供給流路(21b)、他の現像プロセス(8b)から排出される使用済現像液の回収流路(22b)とを備えており、使用済現像液の一部は、回収流路(22b)に切替弁(4b)を設け、これを切換え操作することにより、回収流路(22b)から分岐した排出流路(24)を通じて上記の回収貯槽(6)に回収することが出来る。
【0041】
回収貯槽(6)は、例えば、500〜3000リットル程度の内容積の耐腐食性を備えた容器によって構成される。図示しないが、回収貯槽(6)には、後述する様に調整槽(1)に供給した際に当該調整槽内の現像液の温度変化を防止して濃度測定を正確に行うため、当該回収貯槽内の現像液の温度を一定に保持する温度調節手段が付設される。斯かる温度調節手段は、調整槽(1)におけるのと同様に、例えば、循環流路とその途中に配置された恒温槽とから構成される。
【0042】
混合流路(25)は、回収貯槽(6)から調整槽(1)に亙って設けられ、混合流路(25)には、送液用のポンプ(72)及び開閉弁(53)が付設される。これにより、回収貯槽(6)に一旦回収された使用済現像液は、ポンプ(72)を稼働させ、開閉弁(53)を開放することにより、混合流路(25)を通じて調整槽(1)に供給することが出来る。
【0043】
また、第2の態様においても、第1の態様と同様の制御装置(図示省略)が設けられ、斯かる制御装置により、第1の態様と同様に、開閉弁(51)、(52)及び切替弁(4)の作動を制御し、使用済現像液の回収および排出を制御する様になされている。また、第2の態様に係る供給装置においては、切替弁(4b)の作動、ならびに、ポンプ(72)及び開閉弁(53)の作動も上記の制御装置によって制御する様になされている。
【0044】
更に、第2の態様に係る供給装置は、上記の制御装置の機能により、前述の様に回収貯槽(6)の使用済現像液の樹脂濃度が調整槽(1)の現像液の樹脂濃度よりも低い場合、調整槽(1)にて樹脂濃度を低くする操作、すなわち、希釈操作の際、回収貯槽(6)の使用済現像液を混合流路(25)から調整槽(1)に供給する様に構成される。なお、第2の態様において、調整槽(1)に対する使用済現像液の回収量の制御では、現像プロセス(8)から排出された使用済現像液の使用量と他の現像プロセス(8b)から排出された使用済現像液の使用量との合計量を再調整に利用する使用済現像液の使用量として取り扱われる。
【0045】
本発明の第2の態様に係る供給装置の機能は以下の通りである。すなわち、第2の態様に係る供給装置においては、切替弁(4b)の操作により、前述の他の現像液供給装置(調整槽(1b)を含む装置)の運転状況に応じて、予め、他の現像プロセス(8b)から排出された使用済現像液を回収貯槽(6)に貯留しておく。
【0046】
一方、第2の態様に係る供給装置において、現像プロセス(8)の現像液を再調整する場合は、第1の態様におけるのと同様に、現像プロセス(8)から排出された使用済現像液を調整槽(1)に回収すると共に、濃度計(12)により使用済現像液のアルカリ濃度および樹脂濃度を測定する。そして、必要に応じて現像液原液または新たな現像液(若しくは希釈水)を追加供給する。
【0047】
その際、濃度計(12)の測定により、調整槽(1)内の現像液の樹脂濃度が目標濃度を越えていると判別された場合には、混合流路(25)のポンプ(72)を作動させ且つ開閉弁(53)を開放する。これにより、他の現像プロセス(8b)から回収された回収貯槽(6)の樹脂濃度の低い使用済現像液を調整槽(1)に供給する。その結果、現像液原液および希釈水、あるいは、新たな現像液を多量に使用することなく、調整槽(1)内の現像液の樹脂濃度を目標濃度まで下げることが出来る。
【0048】
上記の様に、本発明の第2の態様に係る供給装置においては、調整槽(1)にて現像プロセス(8)から排出された使用済現像液を再調整する際、他の現像プロセス(8b)から排出された樹脂濃度の低い使用済現像液を希釈用として有効に再利用するため、現像液原液および希釈水、あるいは、新たな現像液の追加供給量を低減でき、その結果、現像プロセス(8)における処理コストを一層低減することが出来る。
【0049】
因に、上記の第2の態様に係る供給装置を稼働させ、現像プロセス(8)から使用済現像液として回収されたTMAHの水溶液を再調製するに際し、他の現像プロセス(8b)から回収された使用済現像液(樹脂濃度500ppm)を希釈用に使用し、調整槽(1)でTMAH濃度を2.380質量%、樹脂濃度を1000±150ppmに調節して現像プロセス(8)に供給したところ、1つの現像プロセス(8)から使用済現像液の全量を回収して再生していた従来の供給装置に比べ、現像原液および新たな現像液(新液)の消費量が新液換算で約45%低減できた。
【0050】
次に、本発明の第3の態様に係る供給装置について説明する。第3の態様の供給装置は、他の現像プロセス(8b)から排出される樹脂濃度の高い使用済現像液を対象の現像プロセス(8)に有効利用するための装置である。第3の態様において、他の現像プロセス(8b)は、対象の現像プロセス(8)とは異なる現像処理(異なる被処理物の処理や異なる条件による処理)を行うプロセスであり、第3の態様は、他の現像プロセス(8b)から排出される使用済現像液の樹脂濃度が対象の現像プロセス(8)から排出される使用済現像液の樹脂濃度よりも高い場合に適用される。
【0051】
本発明の供給装置は、機械構成的には前述の第2の態様に係る供給装置と同様である。すなわち、図2に示す様な装置構成を備えている。そして、第3の態様においても、第1の態様と同様の制御装置(図示省略)が設けられ、斯かる制御装置により、第1の態様と同様に、開閉弁(51)、(52)及び切替弁(4)の作動を制御し、使用済現像液の回収および排出を制御する様になされている。また、第2の態様に係る供給装置においては、切替弁(4b)の作動、ならびに、ポンプ(72)及び開閉弁(53)の作動も上記の制御装置によって制御する様になされている。
【0052】
第3の態様に係る供給装置は、上記の制御装置の機能により、回収貯槽(6)の使用済現像液の樹脂濃度が調整槽(1)の使用済現像液の樹脂濃度よりも高い場合、調整槽(1)にて樹脂濃度を高くする操作、すなわち、樹脂濃度の調節操作の際、回収貯槽(6)の使用済現像液を混合流路(25)から調整槽(1)に供給する様に構成されいる点が前述の第2の態様と異なる。なお、調整槽(1)に対する使用済現像液の回収量の制御において、現像プロセス(8)から排出された使用済現像液の使用量と他の現像プロセス(8b)から排出された使用済現像液の使用量との合計量を再調整に利用する使用済現像液の使用量として取り扱われる点は第2の態様と同様である。
【0053】
本発明の第3の態様に係る供給装置の機能は以下の通りである。すなわち、第3の態様に係る供給装置においては、予め、第2の態様の場合と同様に、切替弁(4b)の操作により、他の現像プロセス(8b)から排出された使用済現像液を回収貯槽(6)に貯留しておく。そして、現像プロセス(8)の現像液を再調整する場合は、第1の態様におけるのと同様に、現像プロセス(8)から排出された使用済現像液を調整槽(1)に回収すると共に、濃度計(12)により使用済現像液のアルカリ濃度および樹脂濃度を測定し、必要に応じて現像液原液または新たな現像液(若しくは希釈水)を追加供給する。
【0054】
その際、濃度計(12)の測定により、調整槽(1)内の現像液の樹脂濃度が目標濃度をよりも低いと判別された場合には、混合流路(25)のポンプ(72)を作動させ且つ開閉弁(53)を開放することにより、他の現像プロセス(8b)から回収された回収貯槽(6)の樹脂濃度の高い使用済現像液を調整槽(1)に供給する。これにより、従来は廃棄されていた他の現像プロセス(8b)の使用済現像液を有効利用することが出来る。しかも、対象の現像プロセス(8)に対し、常に所定の樹脂濃度に保たれた現像液を供給できるため、現像プロセス(8)をより安定させることが出来る。
【0055】
上記の様に、本発明の第3の態様に係る供給装置においては、調整槽(1)にて現像プロセス(8)から排出された使用済現像液を再調整する際、他の現像プロセス(8b)から排出された樹脂濃度の高い使用済現像液を樹脂濃度調節用として有効に再利用できるため、現像プロセス(8)及び他の現像プロセス(8b)を含むプロセス全体として処理コストを低減することが出来、しかも、比較的高い樹脂濃度の現像液を必要とする現像プロセス(8)をより安定させることが出来る。
【0056】
因に、上記の第3の態様に係る供給装置を稼働させ、現像プロセス(8)から使用済現像液として回収されたTMAHの水溶液を再調製するに際し、他の現像プロセス(8b)から回収された樹脂濃度の高い使用済現像液(樹脂濃度2000ppm)を樹脂濃度調節用に使用し、調整槽(1)でTMAH濃度を2.380質量%、樹脂濃度を1500±150ppmに調節して現像プロセス(8)に供給した。その結果、現像プロセス(8)が安定し、現像処理における歩留まりが約5%向上した。更に、1つの現像プロセス(8)から使用済現像液の全量を回収して再生していた従来の供給装置に比べ、プロセス全体として、現像原液および新たな現像液(新液)の消費量が新液換算で約36%低減できた。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の第1の態様に係る現像液の供給装置の主な構成要素を示すフロー図である。
【図2】本発明の第2の態様および第3の態様に係る現像液の供給装置の主な構成要素を示すフロー図である。
【符号の説明】
【0058】
1 :調整槽
11:液面計
12:濃度計
21:供給流路
22:回収流路
23:排出流路
24:排出流路
25:混合流路
31:新液供給流路(新たな現像液を供給する機構)
32:原液供給流路(現像液原液を供給する機構)
4 :切替弁
51:開閉弁
52:開閉弁
53:開閉弁
6 :回収貯槽
71:ポンプ
72:ポンプ
8 :現像プロセス
8b:他の現像プロセス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ水溶液から成る現像液を現像プロセスに供給する現像液の供給装置であって、現像液原液を供給する機構および新たな現像液または希釈水を供給する機構が付設された調整槽と、現像プロセスから回収された使用済現像液を前記調整槽に送液する回収流路と、前記調整槽で再調製された現像液を前記現像プロセスに送液する供給流路とを備え、前記調整槽には、アルカリ濃度および樹脂濃度を検出する濃度計ならびに液面計が設けられ、前記回収流路には、前記現像プロセスから送液される使用済現像液を装置外に排出する排出流路が設けられ、そして、前記調整槽の現像液のアルカリ濃度、樹脂濃度および液面を検出し、再調製される現像液の量が前記調整槽の収容範囲内の予め設定された上限量となる様に、使用済現像液の使用量を算出し、前記調整槽に回収された使用済現像液の量が前記使用量を超えた場合に前記排出流路から使用済現像液を排出する様に構成されていることを特徴とする現像液の供給装置。
【請求項2】
他の現像プロセスから回収された使用済現像液を貯留する回収貯槽と、当該回収貯槽から調整槽に使用済現像液を送液する混合流路とを備え、前記回収貯槽の使用済現像液の樹脂濃度が前記調整槽の現像液の樹脂濃度よりも低い場合、前記調整槽にて樹脂濃度を低くする操作の際、前記回収貯槽の使用済現像液を前記混合流路から前記調整槽に供給する様に構成されている請求項1に記載の現像液の供給装置。
【請求項3】
他の現像プロセスから回収された使用済現像液を貯留する回収貯槽と、当該回収貯槽から調整槽に使用済現像液を送液する混合流路とを備え、前記回収貯槽の使用済現像液の樹脂濃度が前記調整槽の現像液の樹脂濃度よりも高い場合、前記調整槽にて樹脂濃度を高くする操作の際、前記回収貯槽の使用済現像液を前記混合流路から前記調整槽に供給する様に構成されている請求項1に記載の現像液の供給装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2007−171232(P2007−171232A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−364396(P2005−364396)
【出願日】平成17年12月19日(2005.12.19)
【出願人】(000176763)三菱化学エンジニアリング株式会社 (85)
【Fターム(参考)】