説明

現像用組成物

【課題】アルミニウムを腐食させることなく、レジスト等の感光性樹脂を現像できる組成物を提供する。
【解決手段】苛性ソーダなどの塩基性物質、塩化カルシウムなどのアルカリ土類金属塩、およびポリアクリル酸を含んでなる成分の組合せによる現像用組成物では、アルミニウムを腐食させることなく、さらにアルミニウムの腐食を防止するアルカリ土類金属塩の水酸化物が沈殿として析出することなく用いることができる。塩基性物質が0.01〜20重量%、アルカリ土類金属塩が0.001〜5重量%、ポリアクリル酸が0.001〜5重量%、水が70〜99.99重量%であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は感光性樹脂の現像用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
感光性樹脂は、多種多様な分野で使用されている。代表例としては、半導体やフラットパネルディスプレー等の電子デバイスの製造時に使用されるフォトレジストが挙げられる。一般的にフォトレジストは、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドや苛性ソーダ、苛性カリウムなどの水溶液のような、強アルカリ水溶液で現像する。
【0003】
しかし、これらの強アルカリ水溶液はアルミニウムに対する腐食性が非常に強く、アルミニウムが露出している基体上のフォトレジストを現像するのには適さない。そのため、アルミニウムの腐食を抑制する様々な提案がなされている。
【0004】
例えば、アルカリビルダー、カルシウム含有化合物およびキレート剤を含むレジスト現像液であって、該キレート剤が、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、アミノトリメチレンホスホン酸、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸、ヘキサメチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸、およびジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)からなる群から選択される、フォトレジスト用現像液(特許文献1)や、アルカリビルダー、ホスホン酸またはホスフェートであるフッ素非含有界面活性剤、およびフッ素含有界面活性剤を含む、フォトレジスト用現像液(特許文献2)などが提案されている。これらの現像液は、いずれもリンを含むものであるが、環境に対する負荷の観点からは、大量にリンを含む現像液には問題があった。
【0005】
一方、レジストの現像欠陥を防止する組成物として、有機酸、塩基、ポリアクリル酸を用いる現像欠陥防止用組成物が開示されている(特許文献3)。しかし、カルシウム含有化合物のようなアルカリ土類金属塩を含まない組成物ではアルミの腐食を抑制することはできなかった。さらにアルカリ、アミン、界面活性剤及び緩衝剤からなる現像剤が開示されており、緩衝剤としてアルカリ土類金属塩が開示されている(特許文献4)。しかし、従来、アルカリ土類金属塩とアルカリの組み合わせでは、水に難溶のアルカリ土類金属の水酸化物が析出してしまい、現像液として使用するには問題があった。
【0006】
以上のように、アルミニウムにダメージの無い現像液として、塩基とアルカリ土類金属塩を含み、なおかつ水に難溶のアルカリ土類金属の水酸化物の析出が抑制できるような組成物は知られていなかった。
【0007】
【特許文献1】特開2003−195517号
【特許文献2】特開2003−195518号
【特許文献3】特開2004−29088号
【特許文献4】特表2002−505766号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上記の課題に鑑み、アルミニウムを腐食させることなく、感光性樹脂を現像できる組成物、特にリンを含まない現像用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、現像液について鋭意検討した結果、苛性ソーダなどの塩基性物質、塩化カルシウムなどのアルカリ土類金属塩、およびポリアクリル酸を含んでなる組成物が、アルミニウムを腐食することなく、感光性樹脂を現像できることを見出し、本発明を完成させるに至ったものである。
【0010】
以下に本発明をさらに詳細に説明する。
【0011】
本発明の組成物の必須成分は、塩基性物質、アルカリ土類金属塩、ポリアクリル酸である。
【0012】
本発明の組成物における、塩基性物質に特に制限はなく、一般に現像液として流通しているものを使用することができる。しかし、敢えて例示すると、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムを挙げることができる。これらの塩基性物質を使用すると、感光性樹脂を現像することができる。これらの塩基性物質は1種類を使用しても、2種類以上を併用しても良い。
【0013】
本発明の組成物におけるアルカリ土類金属塩は、アルミニウムの腐食を抑制するために添加される。これらのアルカリ土類金属塩は、アルミニウムの腐食を抑制できれば特に制限はなく、一般に流通しているものを使用することができる。しかし、敢えて例示すると、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化バリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化バリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、硝酸カルシウム、硝酸マグネシウム、硝酸バリウム、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸バリウムを挙げることができる。これらのアルカリ土類金属塩は1種類を使用しても、2種類以上を併用しても良い。
【0014】
本発明の組成物におけるポリアクリル酸にも特に制限は無く、一般にスケール防止剤として流通しているものが使用できる。スケール防止剤として流通しているポリアクリル酸を例示すると、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、アクリル酸/マレイン酸共重合体、アクリル酸/スルホン酸系モノマー共重合体などが挙げられる。これらのアクリル酸は1種類を使用しても、2種類以上を併用しても良い。
【0015】
本発明の組成物は水存在下、使用することができる。一般にアルミニウムは水溶液の方が腐食されやすいが、本発明の組成物を使用すれば、水が存在してもアルミニウムの腐食は抑制される。
【0016】
本発明の組成物において、アルミニウムに対するダメージの低減、微細な現像の促進のため、界面活性剤を添加しても良く、アルカリ土類金属塩のさらなる安定化のため、キレート剤を添加しても良い。界面活性剤、キレート剤に特に制限はなく、一般に流通しているものを使用することができる。
【0017】
本発明の組成物を、塩基性物質、アルカリ土類金属塩、ポリアクリル酸の組合せで用いる場合、おおよそ組成物全体に対し、塩基性物質が0.01〜20重量%、アルカリ土金属塩が0.001〜5重量%、ポリアクリル酸が0.001〜5重量%、水が70〜99.99重量%であることが好ましい。
【0018】
塩基性物質が0.01重量%未満であると、感光性樹脂を現像する効果が小さく、20重量%を超えると、アルミニウムが腐食されてしまう。また、アルカリ土類金属が0.001重量%未満であると、アルミニウムを防食する効果が小さく、5重量%を超えると、アルカリ土類金属塩は固体として析出してしまい、取扱が困難になる。ポリアクリル酸が、0.001重量%未満であると、アルカリ土類金属塩を安定化することができず、5重量%を超えると、組成物の粘度が高くなり、取扱が困難になる。水の量は70重量%未満であると、粘度が高くなり、取り扱いが難しくなる。また99.99重量%を超えると感光性樹脂の現像が困難になる。
【0019】
本発明の組成物で現像できる感光性樹脂としては、フォトレジストなどアルカリで現像できるものなら特に制限は無いが、芳香族水酸基を構造中に含有する樹脂が特に適している。例えば、ノボラック樹脂、フェノール樹脂などが挙げられる。
【0020】
本発明の組成物は、電子デバイスの製造工程において、フォトレジストなどの感光性樹脂の現像液として使用できるが、電子デバイスとは、例えばLCDモジュール、PDPモジュール、有機ELモジュールなどのフラットパネルディスプレーや半導体が例示できるが、それらに限定されるものではない。
【0021】
本発明の組成物を使用すれば、アルミニウムにダメージを与えることなく、これらの感光性樹脂の現像において特に優れた性能を発揮する。
【0022】
本発明の組成物の使用温度としては0〜100℃の範囲が好ましい。0℃未満では、洗浄速度が現実的でないほど遅く、100℃を越える温度では、水の蒸散、蒸発が激しく、実用的ではない。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、アルミニウムを腐食せず、感光性樹脂を現像できる。
【実施例】
【0024】
本発明を以下の実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、表記を簡潔にするため、以下の略記号を使用した。
NaOH:水酸化ナトリウム
KOH:水酸化カリウム
TMAH:水酸化テトラメチルアンモニウム
CC:塩化カルシウム
MN:硝酸マグネシウム
PAA:ポリアクリル酸(分子量2千)
SPA:ポリアクリル酸ナトリウム(分子量1万)
実施例1〜7、比較例1〜3
(感光性樹脂の現像)
ノボラック樹脂を含有するフォトレジストを基板に塗布し、120℃でベークした後、g線でパターンを露光した。これを表1記載の現像液に、室温で2分浸漬した。これを水洗し、現像の有無を確認した。表1に、現像できたものについては○、現像できなかったものは×と記した。なお、表1の組成物の残部は水である。
(アルミニウムの腐食)
あらかじめ重量を精秤しておいた金属アルミのテストピースを、表1の組成物に50℃で1時間、浸漬した。浸漬後、水洗、乾燥し、その重量減少から金属アルミの腐食速度を求めた。その腐食速度が50nm/分以上のものは×、50nm/分未満のものは○とし、その結果を表1に示した。
(外観)
表1記載の組成物を室温で1日静置し、観察した。沈殿が生じたものを×、無色透明のままのものを○とし、その結果を表1に記した。
【0025】
【表1】

本発明の組成物では、レジストの現像特性に優れ、Alの腐食がなく、さらに水酸化物の沈殿の発生がなく用いることができた。一方、本発明の必須成分のいずれかがない場合には、現像特性、Al腐食、沈殿発生のいずれかの特性に問題があった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩基性物質、アルカリ土類金属塩、ポリアクリル酸を含んでなる感光性樹脂の現像用組成物。
【請求項2】
塩基性物質が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムから成る群より選ばれる少なくとも一種である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
アルカリ土類金属塩が、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化バリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化バリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、硝酸カルシウム、硝酸マグネシウム、硝酸バリウム、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸バリウムから成る群より選ばれる少なくとも1種である請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
ポリアクリル酸が、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、アクリル酸/マレイン酸共重合体、アクリル酸/スルホン酸系モノマー共重合体から成る群より選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
水を含んでなる請求項1〜4のいずれかにに記載の組成物。
【請求項6】
感光性樹脂が芳香族水酸基を構造中に有するものである請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
アルミニウムを有する基体上の感光性樹脂を現像することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の組成物。

【公開番号】特開2006−163255(P2006−163255A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−358170(P2004−358170)
【出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】