説明

現像装置及び画像形成装置

【課題】高濃度領域の前に現像されるハーフトーン領域の白抜けを抑えられるとともに、画像の後端部が過剰に濃くなる現象を抑制できる現像装置及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】感光体ドラム31Aは、現像領域において静電潜像を搬送方向91へ搬送する。現像スリーブ19Aは、現像領域において搬送方向91の反対方向である搬送方向92へ現像剤を搬送する。マグネットローラ18Aは、現像領域の近傍に配置された主極を含む複数の磁極を有する。層厚規制ブレード12Aは、搬送方向91における現像領域の上流側において現像剤の層厚を規制する。穂規制ブレード20Aは、搬送方向92において感光体ドラム31Aと現像スリーブ19Aとの最近接位置82より上流側であって層厚規制ブレード12Aより下流側の所定位置に配置され、周面上に主極による磁界下で穂状に立った現像剤の高さを規制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、現像剤としてトナー及びキャリアからなる2成分現像剤を用いる電子写真方式の画像形成装置に搭載される現像装置及び画像形成装置に関し、特に、現像剤担持体による現像領域における現像剤の搬送方向と静電潜像担持体による現像領域における静電潜像の搬送方向とが互いに反対方向であるカウンター現像方式の現像装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置は、現像剤担持体を有する現像装置、及び静電潜像担持体を備え、静電潜像担持体と現像剤担持体とが対向する現像領域において、静電潜像担持体の周面に担持された静電潜像に、現像剤担持体からトナーを供給することで、静電潜像を可視化する。
【0003】
このような画像形成装置に搭載される現像装置の中には、現像剤担持体による現像領域における現像剤の搬送方向が、静電潜像担持体による現像領域における静電潜像の搬送方向と同じ方向である順方向現像方式を採用したもの(例えば、特許文献1参照。)と、現像剤担持体による現像領域における現像剤の搬送方向が、静電潜像担持体による現像領域における静電潜像の搬送方向と反対方向であるカウンター現像方式を採用したものとがある。
【0004】
順方向現像方式には、ハーフトーン領域を現像した後に連続して高濃度領域を現像する場合、ハーフトーン領域に、現像されずに白く抜けたような状態になる白抜けが生じやすいという短所がある。図1は、白抜け201の一例を示す。図2は、静電潜像担持体202に対向する現像剤担持体203を備えた従来の現像装置の一部を示す。白抜け201は、図2に示すように、ハーフトーン領域204のうち高濃度領域205との境界領域206の電気力線207が高濃度領域205側へ寄り、境界領域206での電界が弱まることが原因で生じると考えられる。順方向現像方式では、高濃度領域205の通過後には、穂状に立った現像剤中のトナー量が低下しており、かつ、穂の先端にカウンターチャージと呼ばれる電荷が現れているため、現像剤の現像能力が落ちている。このため、電界が弱まった境界領域206ではいっそう静電潜像が現像されにくくなり、白抜けが生じやすい。
【0005】
一方、カウンター現像方式の場合、静電潜像の搬送方向において静電潜像担持体202の下流域に、現像領域を通っていない新しい穂状に立った現像剤が当たるため、現像剤中のトナー量が多く、穂の先端にカウンターチャージが現れていない。したがって、境界領域206での現像剤の現像能力が高くなり、高濃度領域205の前に現像されるハーフトーン領域204に白抜け201が生じにくいという長所がある。
【特許文献1】特開平5−289522号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、カウンター現像方式の従来の現像装置では、画像の後端部(静電潜像の搬送方向において静電潜像の上流側端部)が過剰に濃くなる、所謂掃き寄せと呼ばれる現象が起こりやすい。
【0007】
この理由は次の通りである。現像剤担持体の回転方向において静電潜像担持体と現像剤担持体との最近接位置より上流側では、穂状に立った現像剤は未だ最近接位置を通過していないので、穂の高さが高い。このため、静電潜像担持体の周面に現像剤が衝突し、トナーが浮遊する。画像の後端部が非画像部と隣接しており、画像の後端部では現像剤担持体の周面から静電潜像担持体の周面へ向かう電気力線の密度が高くなりやすいので、画像の後端部に、浮遊したトナーが集まりやすい。さらに、現像剤の搬送方向において最近接位置より上流側は、静電潜像の搬送方向では最近接位置より下流側に相当し、画質は静電潜像の搬送方向において最近接位置より下流側で決定されやすい。カウンター現像方式の従来の画像形成装置では、画質が決定されやすい領域で、画像の後端部に、浮遊したトナーが集まりやすい。
【0008】
この発明の目的は、高濃度領域の前に現像されるハーフトーン領域の白抜けを抑えられるとともに、画像の後端部が過剰に濃くなる現象を抑制できる現像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の現像装置は、現像領域において静電潜像を所定の第1方向へ搬送する方向に回転する静電潜像担持体に担持された静電潜像を現像する現像装置であって、現像剤担持体、磁界発生部材、層厚規制部材、及び穂規制部材を備える。現像剤担持体は、周面に現像剤を担持しながら回転することで静電潜像担持体と対向する現像領域へ現像剤を搬送する現像剤担持体であって現像領域において第1方向の反対方向である第2方向へ現像剤を搬送する方向に回転する。磁界発生部材は、現像剤担持体の内部に固定的に配置され、現像領域の近傍に配置された主極を含む複数の磁極を有する。層厚規制部材は、第2方向における現像領域の上流側において周面に担持された現像剤の層厚を規制する。穂規制部材は、第2方向において静電潜像担持体と現像剤担持体との最近接位置より上流側であって層厚規制部材より下流側の所定位置に配置され、周面上に主極による磁界下で穂状に立った現像剤の高さを規制する。
【0010】
この構成では、現像剤担持体による現像領域における現像剤の搬送方向と静電潜像担持体による現像領域における静電潜像の搬送方向とが互いに反対方向であるカウンター現像方式を採用しており、カウンター現像方式では単位面積当たりの静電潜像がより多くのトナーとの接触機会を有するので、現像効率が高く、高濃度領域の前に現像されるハーフトーン領域に白抜けが生じにくい。また、第2方向において最近接位置より上流側で、主極による磁界下で穂状に立つ現像剤の高さが所定高さに均一に規制されるので、穂の先端から静電潜像担持体の周面までの距離が大きくなり、静電潜像担持体の周面へのトナーの飛翔量が抑制される。このため、画像の後端部が過剰に濃くなる現象が抑制される。
【0011】
上述の構成において、穂規制部材は、樹脂製であってもよい。穂規制部材が僅かでも弾性を有すれば、穂規制部材を先端が現像剤担持体の周面に接触した状態で配置しても穂規制部材の先端と現像剤担持体の周面との間を現像剤がすり抜けられる。このため、穂規制部材を現像剤担持体の周面に接触させた状態で配置することができる。したがって、穂規制部材の位置を安定させることができる。
【0012】
また、磁界発生部材の主極は、第2方向において最近接位置より上流側にあってもよい。主極が第2方向において最近接位置より上流側にあると、穂規制部材を最近接位置から離すことができるので、穂規制部材の配置の余裕度が大きくなる。
【0013】
さらに、現像剤担持体の周面は、サンドブラスト処理されていてもよい。現像剤担持体の周面がサンドブラスト処理されることで、周面上に穂が満遍なく高密度に形成される。これによって、高画質な画像が形成される。また、周面が平滑である場合に比べて、現像剤担持体の周面で搬送される単位面積当たりの現像剤の量が少なくなるので、穂規制部材が穂状に立った現像剤の高さを規制する能力の低下が抑制される。
【0014】
また、現像剤担持体には、直流成分と交流成分とを重畳した現像バイアス電圧が印加される構成であってもよい。直流成分に交流成分が重畳されていることで、静電潜像にトナーが満遍なくかつ十分に供給されやすくなる。このため、高濃度領域の前に現像されるハーフトーン領域の白抜けが抑えられるとともに、画像の後端部が過剰に濃くなる現象がより抑制される。
【0015】
さらに、穂規制部材の現像剤担持体の周面に対向する先端は、現像剤担持体の周面における、現像剤担持体の半径方向の磁界発生部材の主極による磁界の強さが最大値となる現像剤担持体の周方向の位置より第2方向の上流側において磁界の強さが最大値の半分となる周方向の位置と、最近接位置との間の領域内に配置される構成であってもよい。この構成では、主極による磁界によって穂状に立った現像剤の高さが、穂規制部材の先端によって所定高さに均一に規制される。このため、画像の後端部が過剰に濃くなる現象が抑制される。
【0016】
また、現像剤担持体の周面の線速度を静電潜像担持体の周面の線速度で除算して得られる周速比は、1.3以上1.8以下であることが好ましい。周速比が1.8を超える状態で画像形成装置を所定の長時間連続稼働すると、層厚規制部材等によるストレスで現像剤が凝集して搬送不良を起こす。また、周速比が1.3未満では、現像剤担持体の周面に穂状に立った現像剤の高さのムラが十分に抑えられず、現像剤の高さのムラが画質に影響しやすい。周速比が1.3以上1.8以下のとき、搬送状態が良好となるとともに、穂状に立った現像剤の高さのムラが生じにくく、画質の低下が抑えられる。
【0017】
この発明の画像形成装置は、現像領域において静電潜像を所定の第1方向へ搬送する方向に回転する静電潜像担持体と、上述のいずれかの現像装置と、を備える。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、カウンター現像方式を採用し、最近接位置より第2方向の上流側において主極による磁界下で穂状に立った現像剤の高さを規制することで、高濃度領域の前に現像されるハーフトーン領域の白抜けを抑えられるとともに、画像の後端部が過剰に濃くなる現象を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、この発明を実施するための最良の形態について、図面に基づいて説明する。図3は、この発明の実施形態に係る現像装置を搭載した画像形成装置100の概略の正面断面図である。
【0020】
画像形成装置100は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色の現像剤を用いて画像を形成するタンデム方式のカラー画像形成装置である。画像形成装置100では、現像剤として、トナー及びキャリアからなる2成分現像剤が用いられる。画像形成装置100は、スキャナ等の原稿読取装置によって読み取られた画像データ、又は、図示しないネットワークを介して通信自在に接続されたPC(Personal Computer)等の端末装置から送信される画像データに基づいて、記録媒体である用紙に、カラー画像又はモノクロ画像を形成する。
【0021】
画像形成装置100は、給紙トレイ110、中間転写ユニット120、画像形成ユニット130、二次転写ローラ140、及び、定着装置150を備えている。
【0022】
給紙トレイ110は、画像を形成すべき多数の用紙を収容する。
【0023】
中間転写ユニット120は、中間転写ベルト121、駆動ローラ122、及び、従動ローラ123を備えている。中間転写ベルト121は、無端ベルトであって、駆動ローラ122と従動ローラ123とに張架されており、図3において時計方向に回転する。
【0024】
画像形成ユニット130は、感光体ドラム31A〜31D、帯電装置32A〜32D、露光ユニット33A〜33D、現像装置10A〜10D、一次転写ローラ35A〜35D、及びクリーニングユニット36A〜36Dを備えている。感光体ドラム31A〜31Dは、この発明の静電潜像担持体に相当する。現像装置10A〜10Dは、現像ローラ11A〜11Dを有している。
【0025】
画像形成ユニット130は、ブラック、並びに、カラー画像を色分解して得られる減法混色の3原色であるシアン、マゼンタ、及びイエローの4色の各色相に対応した画像データを用いて画像を形成する4個の画像形成部30A,30B,30C,30Dから構成されている。
【0026】
ブラック用の画像形成部30A、シアン用の画像形成部30B、マゼンタ用の画像形成部30C、及びイエロー用の画像形成部30Dは、中間転写ベルト121に沿ってこの順に、一列に並設されている。
【0027】
以下では、主としてブラック用の画像形成部30Aについて説明する。他の色相用の画像形成部30B〜30Dは、画像形成部30Aと同様に構成されている。
【0028】
画像形成部30Aは、図3において反時計方向に回転する感光体ドラム31Aを備えている。感光体ドラム31Aの周囲には、感光体ドラム31Aの回転方向に沿って、帯電装置32A、露光ユニット33A、現像装置10A、一次転写ローラ35A、及びクリーニングユニット36Aが、この順に配置されている。一次転写ローラ35Aは、中間転写ベルト121を挟んで感光体ドラム31Aに対向する位置に配置されている。
【0029】
帯電装置32Aは、感光体ドラム31Aの周面を、所定の電位に均一に帯電させる。この実施形態では、接触型のローラ方式の帯電装置が用いられているが、チャージャ方式やブラシ方式の帯電装置を用いてもよい。
【0030】
露光ユニット33Aは、図示しない半導体レーザ、ポリゴンミラー、第1fθレンズ、及び第2fθレンズを備えている。露光ユニット33Aは、ブラックの色相の画像データによって変調されたレーザビームを感光体ドラム31Aに照射する。これによって、感光体ドラム31Aの周面のうちレーザビームが照射された部分は、感光層における光導電作用によって電位を失い、ブラックの色相の画像データに対応した静電潜像となる。感光体ドラム31B〜31Dのそれぞれには、シアン、マゼンタ及びイエローの各色相の画像データによる静電潜像が形成される。露光ユニット33Aとして、レーザスキャニングユニット(LSU)、又は、ELやLED等の発光素子をアレイ状に並べた書込み装置を用いることができる。
【0031】
現像装置10Aは、ブラックのトナーを収容しており、現像ローラ11Aを有している。現像ローラ11Aは、感光体ドラム31Aの周面と現像ローラ11Aの周面とが対向している領域であってトナーが感光体ドラム31Aの周面へ移動し得る現像領域へ、現像剤を搬送する。現像装置10Aは、感光体ドラム31Aの周面に形成された静電潜像にトナーを供給することで、静電潜像をトナー像に可視像化する。
【0032】
現像装置10B〜10Dのそれぞれは、シアン、マゼンタ及びイエローの各色相のトナーを収容しており、感光体ドラム31B〜31Dのそれぞれに形成された各色相の静電潜像をシアン、マゼンタ及びイエローの各色相のトナー像に可視像化する。
【0033】
この実施形態では、トナーは、感光体ドラム31Aの表面電位と同極性に帯電している。感光体ドラム31Aの表面電位の極性及びトナーの帯電極性は、ともにマイナスである。
【0034】
一次転写ローラ35Aには、感光体ドラム31Aの周面に担持されたトナー像を中間転写ベルト121に転写するために、トナーの帯電極性と逆極性(この実施形態では、プラス)の一次転写バイアス電圧が印加される。これによって、感光体ドラム31Aに形成されたブラックの色相のトナー像は、中間転写ベルト121上で他の色相のトナー像と重なるように、中間転写ベルト121に転写される。各画像形成部30A〜30Dで、各色相のトナー像が中間転写ベルト121に重ねて転写されることで、中間転写ベルト121にフルカラーのトナー像が形成される。
【0035】
但し、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの色相の一部のみの画像データが入力された場合は、4個の感光体ドラム30A〜30Dのうち、入力された画像データの色相に対応する一部のみにおいて静電潜像及びトナー像の形成が行われる。例えば、モノクロ印刷モード時には、ブラックの色相に対応した感光体ドラム31Aのみにおいて静電潜像の形成及びトナー像の形成が行われ、中間転写ベルト121にはブラックのトナー像のみが転写される。
【0036】
クリーニングユニット36Aは、現像及び一次転写後において感光体ドラム31Aの周面に残留したトナーを回収する。
【0037】
二次転写ローラ140は、中間転写ベルト121を挟んで従動ローラ123に対向するように配置されている。給紙トレイ110から給紙された用紙は、二次転写ローラ140と中間転写ベルト121との間を経由するように搬送される。二次転写ローラ140には、トナーの帯電極性とは逆極性(この実施形態では、プラス)の二次転写バイアス電圧が印加される。これによって、中間転写ベルト121上に形成されたフルカラーのトナー像は、中間転写ベルト121と二次転写ベルト140との間を通過する用紙に転写される。
【0038】
定着装置150は、加熱ローラ151及び加圧ローラ152を有している。トナー像が転写された用紙は、定着装置150へ導かれ、加熱ローラ151と加圧ローラ152との間を通過して加熱及び加圧される。これによって、トナー像が、用紙の表面に堅牢に定着する。トナー像が定着した用紙は、図示しない排紙トレイ上へ排出される。
【0039】
図4は、現像装置10Aの正面断面図である。現像装置10B〜10Dは、現像装置10Aと同様に構成されている。
【0040】
現像装置10Aは、現像ローラ11Aの他に、層厚規制ブレード12A、2個の撹拌搬送スクリュ13A,14A、現像槽15A、及び穂規制ブレード20Aを有している。層厚規制ブレード12Aは、この発明の層厚規制部材に相当する。穂規制ブレード20Aは、この発明の穂規制部材に相当する。
【0041】
現像槽15A内に、現像剤としてトナー及びキャリアからなる2成分現像剤が収容されている。撹拌搬送スクリュ13A,14Aは、現像槽15A内に配置されている。撹拌搬送スクリュ13Aと撹拌搬送スクリュ14Aとの間には、隔壁16Aが配置されている。隔壁16Aは、撹拌搬送スクリュ13A,14Aの回転軸方向における両端部を除いて、撹拌搬送スクリュ13A近傍の領域と、撹拌搬送スクリュ14A近傍の領域と、を仕切っている。
【0042】
現像槽15A内に収容された現像剤中のトナーは、撹拌搬送スクリュ13A,14Aの撹拌動作によってキャリアと共に撹拌されることで、摩擦帯電される。
【0043】
現像槽15Aは、感光体ドラム31Aと対向する部分に、開口部17Aを有している。現像ローラ11Aは、現像槽15Aの開口部17Aから一部を露出させた状態であって、感光体ドラム31Aの周面との間に所定間隔の現像ギャップが設けられるように、現像槽15A内に配置されている。現像ギャップは、例えば0.3mm〜1.0mm程度の範囲内の任意の間隔に設定されるが、一般的になるべく小さい方が好ましく、0.3mm〜0.5mmに設定されることが好ましい。
【0044】
現像ローラ11Aは、マグネットローラ18A及び非磁性の現像スリーブ19Aを有している。マグネットローラ18Aは、この発明の磁界発生部材に相当する。現像スリーブ19Aは、この発明の現像剤担持体に相当する。マグネットローラ18Aは、現像領域の近傍に配置された主極を含む複数の磁極を有している。複数の磁極は、マグネットローラ18Aの周方向に沿って配置されている。マグネットローラ18Aは、現像槽15Aに固定配置されている。現像スリーブ19Aは、略円筒形のアルミニウム合金又は黄銅等で形成され、マグネットローラ18Aに対して所定方向に回転自在に外嵌している。現像スリーブ19Aは、図示しない駆動源によって、現像領域において現像剤を所定の搬送方向92へ搬送する方向に回転する。搬送方向92は、この発明の第2方向に相当する。
【0045】
また、感光体ドラム31Aは、現像領域において静電潜像を所定の搬送方向91へ搬送する方向に回転する。搬送方向91は、この発明の第1方向に相当する。画像形成装置100は、現像スリーブ19Aによる現像領域における現像剤の搬送方向92と、感光体ドラム31Aによる現像領域における静電潜像の搬送方向91とが、互いに反対方向であるカウンター現像方式を採用している。
【0046】
現像剤に含まれるキャリアは、磁性体で構成されている。トナーは、摩擦帯電によるクーロン力によってキャリアの表面に付着している。現像剤は、マグネットローラ18Aの磁極による磁界によって現像スリーブ19Aの周面に吸着して磁気ブラシを形成する。現像剤は、現像スリーブ19Aが回転することで、現像領域へ搬送される。
【0047】
層厚規制ブレード12Aは、現像槽15Aのうち現像剤の搬送方向92における開口部17Aの上流側の所定位置に、先端部が現像スリーブ19Aの周面に対向するように取り付けられている。層厚規制ブレード12Aは、現像スリーブ19Aの周面に付着した現像剤の層厚を規制する。
【0048】
穂規制ブレード20Aは、現像剤の搬送方向92において、感光体ドラム31Aの周面と現像スリーブ19Aの周面との最近接位置より上流側であって、層厚規制ブレード12Aより下流側の所定位置で、先端が現像スリーブ19Aの周面に対向するように、現像槽15Aに支持されている。穂規制ブレード20Aは、マグネットローラ18Aの主極による磁界下で現像スリーブ19Aの周面上に穂状に立った現像剤の高さを規制する。穂状に立った現像剤の高さは、穂規制ブレード20Aによって規制される前は、例えば1.2mm程度であり、穂規制ブレード20Aによって規制された後は、例えば0.6mmに揃えられる。穂規制ブレード20Aの詳細については後述する。
【0049】
画像形成装置100は、現像バイアス電圧印加部161をさらに備えている。現像バイアス電圧印加部161は、現像スリーブ19Aと感光体ドラム31Aとの間の電位差が連続的かつ周期的に変化するように、現像スリーブ19Aに現像バイアス電圧を印加する。
【0050】
現像バイアス電圧は、直流成分と交流成分とが重畳した電圧であって、現像側電位と逆現像側電位とが交互に切り替わる振動バイアス電圧である。現像側電位は、帯電したトナーに対して現像ローラ11Aから感光体ドラム31Aへ向かう方向の力を及ぼす。逆現像側電位は、帯電したトナーに対して感光体ドラム31Aから現像ローラ11Aへ向かう方向の力を及ぼす。現像バイアス電圧によって、現像領域中に供給されたトナーは、現像スリーブ19Aと感光体ドラム31Aとの間を飛翔する。例えば、現像バイアス電圧印加部161は現像スリーブ19Aに、周波数9kHzで振幅0.8kVの矩形波である振動バイアス電圧を印加している。
【0051】
現像装置10Aは、現像領域へ単位時間当たりに所定量の現像剤を供給する。現像領域へ供給された現像剤に含まれるトナーは、感光体ドラム31Aの周面に担持された静電潜像へ、静電気力によって吸引される。これによって、静電潜像は現像されてトナー像となる。
【0052】
現像装置10Aは、現像領域へ供給された現像剤のうち、キャリア、及び現像に用いられなかったトナーを、現像スリーブ19Aの回転によって、再び現像槽15A内に戻す。
【0053】
次に、穂規制ブレード20Aの詳細について説明する。穂規制ブレード20Aは、ウレタン又はPET(ポリエチレンテレフタレート)等の弾性を有する非磁性樹脂で形成されている。
【0054】
穂規制ブレード20Aが非磁性部材で形成されているので、磁性部材で形成されている場合とは異なり、穂規制ブレード20Aが現像領域の磁界を乱すことが抑制される。
【0055】
また、穂規制ブレード20Aが弾性を有する樹脂で形成されているので、穂規制ブレード20Aを先端が現像スリーブ19Aの周面に当接した状態に配置することができる。このため、穂規制ブレード20Aの取り付けが容易であるとともに、位置が安定する。穂規制ブレード20Aが弾性を有するので、現像剤が搬送されてくる穂規制ブレード20Aが撓んで現像スリーブ19Aの周面から浮き上がり、現像剤は現像スリーブ19Aの周面と穂規制ブレード20Aとの間をすり抜けるようにして搬送される。
【0056】
なお、穂規制ブレード20Aは、金属製であってもよいが、金属等の硬い素材で形成された場合は、現像スリーブ19Aの周面及び感光体ドラム31Aの周面の両周面の近傍で、両周面に当接しないように穂規制ブレード20Aをしっかりと固定する必要がある。金属製の穂規制ブレード20Aが現像スリーブ19Aの周面に当接した場合は現像剤が現像領域へ搬送されなくなるからであり、感光体ドラム31Aの周面に当接した場合は静電潜像が乱される虞があるからである。この実施形態では、穂規制ブレード20Aは、厚さ0.1mmのPETフィルムで形成され、先端が現像スリーブ19Aの周面に当接されている。
【0057】
図5は、現像装置10Aに備えられた穂規制ブレード20Aの位置を示す。現像スリーブ19Aの周面に穂状に立った現像剤の高さは、穂規制ブレード20Aの先端の位置によって調整することができる。
【0058】
ここで、図5に示す基準線93は、現像スリーブ19Aの回転中心Q1と感光体ドラム31Aの回転中心Q2とを結ぶ線である。第1線94は、回転中心Q1と穂規制ブレード20Aの先端とを結ぶ線である。基準線93に対して第1線94がなす現像スリーブ19Aの周面191Aの周方向における角度をAとする。
【0059】
第2線95は、回転中心Q1と、周面191Aにおける現像スリーブ19Aの半径方向の主極による磁界の強さ81が最大値となる周面191Aの周方向の位置とを結ぶ線である。基準線93に対して第2線95がなす周面191Aの周方向における角度をBとする。
【0060】
第3線96は、回転中心Q1と、第2線95より現像剤の搬送方向92の上流側であって周面191Aにおける現像スリーブ19Aの半径方向の主極による磁界の強さ81が最大値の半分になる周面191Aの周方向の位置とを結ぶ線である。第2線95に対して第3線96がなす周面191Aの周方向における角度をCとする。このとき、次の式が成立する。
【0061】
A≦B+C
要するに、穂規制ブレード20Aの先端は、周面191Aの周方向において、周面191Aにおける現像スリーブ19Aの半径方向の主極による磁界の強さ81が最大値となる周面191Aの周方向の位置より現像剤の搬送方向92の上流側において、主極による磁界の強さ81が最大値の半分となる周面191Aの周方向の位置と、感光体ドラム31Aと現像スリーブ19Aとの最近接位置82との間の領域内に配置されている。
【0062】
現像剤が穂状に立つのは、現像剤の搬送方向92において第3線96より下流側の位置がほとんどである。このため、A>B+Cが成立する領域では、現像剤が穂状に立っていないので、A>B+Cが成立する領域に穂規制ブレード20Aの先端が配置されていても、穂状に立った現像剤の高さはほとんど変わらない。
【0063】
A≦B+Cが成立する領域に穂規制ブレード20Aの先端を配置することで、穂状に立った現像剤の高さが、所定の高さに調整される。
【0064】
図6(A)は、穂規制ブレード20Aを備えた現像装置10Aの現像スリーブ19Aの周面191Aに立った穂状の現像剤を、現像スリーブ19Aの半径方向から撮影した写真である。図6(B)は、穂規制ブレード20Aを備えた現像装置10Aの現像スリーブ19Aの周面191Aに立った穂状の現像剤を、現像スリーブ19Aの回転軸方向から撮影した写真である。図6(A)及び図6(B)では、角度A=7度、角度B=0度に設定されている。
【0065】
図6(C)及び図6(D)は比較例であって、図6(C)は、穂規制ブレードを備えていない現像装置の現像スリーブの周面に立った穂状の現像剤を、現像スリーブの半径方向から撮影した写真である。図6(D)は、穂規制ブレードを備えていない現像装置の現像スリーブの周面に立った穂状の現像剤を、現像スリーブの回転軸方向から撮影した写真である。
【0066】
図6(A)及び図6(B)は、現像剤の搬送方向92において穂規制ブレード20Aの先端より下流側の所定位置で撮影した写真であり、図6(C)及び図6(D)は、図6(A)及び図6(B)の撮影位置と同等の位置を撮影した写真である。
【0067】
この実施形態では、フェライトコアから形成された平均粒径が40μmのキャリアを用いている。また、マグネットローラ18Aとして、直径が18mmで、現像スリーブ19Aの半径方向における主極による磁界の最大値が1100mTのものを用い、角度Cが14度となるように設定されている。
【0068】
図6(A)と図6(C)とを比較観察すると、図6(C)より図6(A)の方が、穂状に立った現像剤の密度が高いことが分かる。このことから、穂状に立った現像剤の高さを穂規制ブレード20Aで規制したことで、穂状に立った現像剤の密度が高くなったことが分かる。また、図6(B)と図6(D)とを比較観察すると、図6(D)より図6(B)の方が、穂状に立った現像剤の高さが低く、かつ略均一に揃えられていることが分かる。このことから、穂規制ブレード20Aを備えることで、穂状に立った現像剤の高さが低く、かつ略均一に揃えられたことが分かる。
【0069】
図7は、角度Aを変えたときのA/(B+C)の値と穂状に立った現像剤の平均高さとの関係を示している。図7で縦軸に示した穂状に立った現像剤の平均高さは、図6(B)のように現像スリーブ19Aの回転軸方向から撮影した写真から任意に選択した100個の穂の高さを測定して平均した値である。
【0070】
図7から、穂規制ブレード20Aがなく、穂規制ブレード20Aで規制されていない場合の穂状に立った現像剤の高さに比べて、A/(B+C)=1のときの穂状に立った現像剤の高さは、若干低い程度であることが分かる。また、A/(B+C)=1.2のときの穂状に立った現像剤の高さは、A/(B+C)=1のときの穂状に立った現像剤の高さと、略同じであることが分かる。これらのことから、A/(B+C)>1のとき、穂状に立った現像剤の高さは、穂規制ブレード20Aを備えていても、ほとんど変わらないことが分かる。一方、A/(B+C)≦1のとき、即ちA≦B+Cのとき、穂状に立った現像剤の高さが穂規制ブレード20Aによって低くされていることが分かる。したがって、上述のように、A≦B+Cが成立する領域に穂規制ブレード20Aの先端を配置することで、穂状に立った現像剤の高さが所定の高さに規制されることが分かる。
【0071】
現像スリーブ19Aの回転中心Q1と感光体ドラム31Aの回転中心Q2とを結ぶ基準線93に対して、回転中心Q1と穂規制ブレード20Aの先端とを結ぶ第1線94がなす現像スリーブ19Aの周面191Aの周方向における角度Aを大きくすることができれば、穂規制ブレード20Aを感光体ドラム31Aと現像スリーブ19Aとの最近接位置82(図5参照)から離すことができる。これによって、穂規制ブレード20Aを配置可能なスペースが大きくなり、穂規制ブレード20Aを配置しやすくなる。
【0072】
角度Aを大きくする手段として、例えば角度B>0とすることが挙げられる。即ち、マグネットローラ18Aの主極の位置を、感光体ドラム31Aと現像スリーブ19Aとの最近接位置82より、現像剤の搬送方向92の上流側に配置する。なお、穂規制ブレード20Aとして硬質素材を用いた場合は、弾性を有する樹脂素材を用いた場合より穂規制ブレード20Aを配置可能なスペースが狭いが、角度B>0とすることで穂規制ブレード20Aを配置可能なスペースが大きくなるので、角度B>0とすることは特に有効である。
【0073】
次に、現像スリーブ19Aの詳細について説明する。上述のように、現像スリーブ19Aには、直流成分と交流成分とが重畳した現像バイアス電圧が印加されている。現像バイアス電圧が、交流成分を含まず直流成分のみからなるとすると、穂規制ブレード20Aによって規制されて穂状に立った現像剤の高さが低くなった分だけ、感光体ドラム31Aと現像剤との接触が少なくなるので、画像濃度が低くなる。さらに、穂状に立った現像剤の高さが低くなって現像スリーブ19Aの周面の単位面積当たりの現像剤の搬送量が少ないので、現像バイアス電圧が直流成分のみからなる場合、現像剤の搬送ムラが生じる場合もある。しかし、本発明の画像形成装置100では、現像スリーブ19Aに直流成分と交流成分とが重畳した現像バイアス電圧が印加されているので、静電潜像にトナーが満遍なくかつ十分に供給されやすくなる。したがって、適切な画像濃度が得られるとともに、現像剤の搬送ムラによる画質の低下が抑制される。
【0074】
現像スリーブ19Aの周面は、サンドブラスト処理されている。現像スリーブ19Aの周面がサンドブラスト処理されることで、周面上に穂が満遍なく高密度に形成される。これによって、高画質な画像が形成される。また、現像スリーブ19Aの周面がサンドブラスト処理されていると周面が平滑である場合に比べて、周面で搬送される単位面積当たりの現像剤の量が少なくなるので、穂規制ブレード20Aが穂状の現像剤の高さを規制する能力の低下が、抑制される。
【0075】
現像スリーブ19Aの周面による現像剤の搬送量は、この実施形態では40mg/cmである。上述のように、穂規制ブレード20Aは弾性を有する樹脂素材で形成されており、先端が現像スリーブ19Aの周面に当接しているが、現像剤が搬送されてくると穂規制ブレード20Aが撓んで先端が現像スリーブ19Aの周面から浮き上がる。現像スリーブ19Aの周面の単位面積当たりの現像剤の搬送量が60mg/cm以下であれば、現像スリーブ19Aの周面からの穂規制ブレード20Aの先端の浮き上がり量が大きくなり過ぎず、穂規制ブレード20Aが穂状の現像剤の高さを規制する能力の低下が抑制される。このため、現像スリーブ19Aの周面の単位面積当たりの現像剤の搬送量は、60mg/cm以下であることが望ましく、40mg/cm以下であることがより望ましい。
【0076】
図8は、現像スリーブ19Aの周面の線速度を感光体ドラム31Aの周面の線速度で除算して得られる周速比と、現像剤の搬送状態との関係を示す。図8において、×は不良を示し、○は良好を示し、◎は特に良好を示している。
【0077】
カウンター現像方式では、現像スリーブ19Aによる現像領域における現像剤の搬送方向92と感光体ドラム31Aによる現像領域における静電潜像の搬送方向91とが互いに同じ方向である順方向現像方式に比べて、現像領域で静電潜像が接触し得る現像剤量が大幅に多い等の理由から、高い画像濃度が得られやすい。このため、現像スリーブ19Aの回転数を低くすることで周速比を小さくした場合でも、画像濃度の不足が起きにくい。したがって、現像スリーブ19Aの回転数を低くすることで、層厚規制ブレード12Aや穂規制ブレード20Aが現像剤に与えるストレスが低減され、現像剤の劣化が抑制される。
【0078】
図8に示すように、実験では、周速比1.9で画像形成装置100を所定の長時間連続稼働すると、層厚規制ブレード12A等によるストレスで現像剤が凝集して搬送不良を起こした。これに対して、周速比1.8のときは、搬送状態が良好で、周速比1.7では特に良好であった。
【0079】
また、周速比が1.0未満では、現像スリーブ19Aの周面の方が感光体ドラム31Aの周面より線速度が遅くなり、現像スリーブ19Aの周面に穂状に立った現像剤の高さにムラが生じやすくなり、現像剤の高さのムラが画質に大きく影響するようになる。したがって、周速比は、1.0以上であることが望ましい。周速比が1.3以上の場合は穂状に立った現像剤の高さにムラが生じにくくなるので、周速比は1.3以上であることが、より望ましい。
【0080】
これらのことから、周速比は、1.0以上1.8以下であることが望ましく、1.3以上1.8以下であることがより望ましく、1.3以上1.7以下であることがより望ましい。
【0081】
次に、図9及び図10を参照しながら、穂規制ブレード20Aを順方向現像方式で用いた場合とカウンター現像方式で用いた場合との差異について説明する。
【0082】
図9は、比較例である順方向現像方式の現像装置を備えた画像形成装置の現像領域の正面図である。図9では、説明の便宜上、画像形成装置100と同じ部材には同じ符号を用いている。上述のように、順方向現像方式では、現像スリーブ19Aによる現像領域における現像剤の搬送方向97と、感光体ドラム31Aによる現像領域における静電潜像の搬送方向91とが、互いに同じ方向である。
【0083】
順方向現像方式において、一般的に、現像スリーブ19Aの周面の線速度は、感光体ドラム31Aの周面の線速度より高いので、感光体ドラム31A上の静電潜像を現像スリーブ19A上の穂状の現像剤83が追い越していく。
【0084】
現像剤83が感光体ドラム31Aの周面に接触する前の領域Eでは、穂状に立った現像剤83の高さは、穂規制ブレード20Aで規制されることで、最近接位置82での感光体ドラム31Aの周面と現像スリーブ19Aの周面との間隔より若干大きい程度にされている。このため、領域Eでは、現像剤83は、感光体ドラム31Aの周面に接触しないので、感光体ドラム31Aの周面の電位の影響を受けにくく、電位の均一性が高い。
【0085】
現像剤83が感光体ドラム31Aの周面に接触した後の領域Fでは、穂状に立った現像剤83の高さは、最近接位置82での感光体ドラム31Aの周面と現像スリーブ19Aの周面との間隔と同等になる。また、領域Fでは、現像剤83の穂の先端は、感光体ドラム31Aの周面に接触又は近傍を通過してきているので、現像剤83の穂の先端の電位は、感光体ドラム31Aの周面の電位の影響を受けて乱されている。
【0086】
例えば、現像剤83の穂の先端が、感光体ドラム31Aの周面のうち静電潜像がない非画像の箇所に接触した場合は、トナーが穂の先端のキャリアから離間して穂の基端側へ後退し、穂の先端がトナーの正規の極性と逆極性のカウンターチャージと呼ばれる電荷を持つようになる。カウンターチャージを持つ現像剤83が領域Fに搬送されると、領域Fのトナー像が乱される。
【0087】
ところで、穂規制ブレード20Aを備えていない場合でも、穂状の現像剤83は先端が感光体ドラム31Aの周面に接触しながら最近接位置82を通過するので、領域Fでは現像剤83はカウンターチャージを持っていることが多い。
【0088】
トナー像の質は、領域F、特に最近接位置82より静電潜像の搬送方向91の下流側で決定されやすい。しかし、順方向現像方式では、穂規制ブレード20Aを備えていても穂規制ブレード20Aを備えていない場合と同様に、領域Fの現像剤83はカウンターチャージを持っており、領域Fでトナー像が乱されやすい。したがって、順方向現像方式では、穂規制ブレード20Aを備えている場合と穂規制ブレード20Aを備えていない場合とで、トナー像の質の差が表れにくい。
【0089】
図10は、カウンター現像方式の現像装置10Aを備えた画像形成装置100の現像領域の正面図である。上述のように、カウンター現像方式では、現像スリーブ19Aによる現像領域における現像剤の搬送方向92と、感光体ドラム31Aによる現像領域における静電潜像の搬送方向91とが、互いに反対方向である。
【0090】
カウンター現像方式において穂規制ブレード20Aを備えている場合、現像剤83がカウンターチャージを持っていることが多い領域Fは、最近接位置82より静電潜像の搬送方向91の上流側に相当し、トナー像の質が決定されやすい最近接位置82より静電潜像の搬送方向91の下流側の領域Eでは、現像剤83はカウンターチャージを持っていない。また、領域Eでは、穂状に立った現像剤83の高さが穂規制ブレード20Aによって適度な高さに規制されているので、静電潜像へのトナーの過剰な供給が抑制される。このため、領域Eでは、トナー像は乱されることはなく、むしろ修復される。したがって、トナー像の画質が高くなる。
【0091】
カウンター現像方式において穂規制ブレード20Aを備えていない場合、領域Eで穂状に立った現像剤83の高さが高く、現像剤83が感光体ドラム31Aの周面に接触することもあるので、感光体ドラム31Aの周面上のトナー像が乱されやすい。このため、トナー像の画質が低くなる。
【0092】
したがって、穂規制ブレード20Aは、順方向現像方式で用いてもほとんど効果を奏することがなく、カウンター現像方式で用いてこそ、画質を向上させる効果を奏することができる。
【0093】
次に、図11及び図12を参照しながら、カウンター現像方式において穂規制ブレード20Aを備えている場合と備えていない場合との差異について説明する。
【0094】
図11は、比較例であって穂規制ブレード20Aを備えていないカウンター現像方式の現像装置を備えた画像形成装置の現像領域の正面図である。図12は、穂規制ブレード20Aを備えているカウンター現像方式の現像装置10Aを備えた画像形成装置100の現像領域の正面図である。図11及び図12において、現像スリーブ19Aの周面から感光体ドラム31Aの周面へ延びる矢印は、電気力線を示している。
【0095】
図11に示すように、現像装置が穂規制ブレード20Aを備えていない場合、現像剤の搬送方向92において最近接位置82より上流側では、穂状に立った現像剤83は高さを規制されていないので、最近接位置82での感光体ドラム31Aの周面と現像スリーブ19Aとの間隔より、穂状に立った現像剤83の高さの方が高くなるのが一般的である。このため、現像剤の搬送方向92において最近接位置82より上流側では、穂状に立った現像剤83の先端が感光体ドラム31Aの周面に衝突し、キャリアに付着していたトナーが感光体ドラム31Aの周面の近傍の領域Gに浮遊する。
【0096】
感光体ドラム31Aの周面に衝突した現像剤83はさらに搬送されて、最近接位置82を通過することで高さを規制されて低くなり、さらに搬送方向92の下流側へ搬送されていく。
【0097】
上述のように、トナー像の画質は静電潜像の搬送方向91において最近接位置82より下流側で決定されやすい。カウンター現像方式では、静電潜像の搬送方向91において最近接位置82より下流側は、現像剤の搬送方向92においては最近接位置82より上流側に相当し、穂状に立った現像剤83の先端が感光体ドラム31Aの周面に衝突する領域である。
【0098】
静電潜像84の後端部84Aが非画像部85と隣接しており、静電潜像84の搬送方向91において静電潜像84の後端部84Aでは、現像スリーブ19Aの周面から感光体ドラム31Aの周面へ向かう電気力線の密度が高くなりやすいので、静電潜像84の後端部84Aに、浮遊しているトナーが集まりやすい。このため、現像装置が穂規制ブレード20Aを備えていない場合、静電潜像84の搬送方向91において静電潜像84の後端部84Aが過剰に濃くなる、所謂掃き寄せと呼ばれる現象が起こりやすい。
【0099】
図13(A)は、穂規制ブレード20Aを備えていないカウンター現像方式の比較例の現像装置を備えた画像形成装置で形成された、複数のラインからなる画像を表した図である。画像の後端部においてラインが過剰に濃くなり、隣のラインと接触するほどにライン幅が広くなっている。
【0100】
図12に示すように、穂規制ブレード20Aを備えているカウンター現像方式の現像装置を備えた画像形成装置100では、現像剤の搬送方向92において最近接位置82より上流側で、穂状に立った現像剤83の高さが規制され、最近接位置82での感光体ドラム31Aの周面と現像スリーブ19Aの周面との間隔より、若干高い程度に抑えられる。このため、現像剤の搬送方向92において最近接位置82より上流側で、穂状に立った現像剤83が感光体ドラム31Aの周面に衝突することがほとんどなく、トナーの浮遊もほとんど起こらない。
【0101】
このため、穂規制ブレード20Aを備えているカウンター現像方式の現像装置10Aを備えた画像形成装置100では、現像剤の搬送方向92において最近接位置82より上流側、即ち、静電潜像の搬送方向92において最近接位置82より下流側で、静電潜像84の後端部84Aが過剰に濃くなる現象が抑制される。
【0102】
図13(B)は、穂規制ブレード20Aを備えているカウンター現像方式の現像装置10Aを備えた画像形成装置で形成された、複数のラインからなる画像を表した図である。画像の後端部において、ラインの濃度が高くならず、ライン幅が太くならず、ライン間隔が狭くもなっていない。また、特に白抜けが生じている箇所も見当たらない。
【0103】
したがって、カウンター現像方式の現像装置を備えた画像形成装置において、最近接位置82より現像剤の搬送方向92の上流側で主極による磁界下で穂状に立った現像剤83の高さを穂規制ブレード20Aで規制することで、高濃度領域の前に現像されるハーフトーン領域の白抜けを抑えられるとともに、画像の後端部が過剰に濃くなる現象を抑制することができる。
【0104】
最後に、上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】白抜けの一例を示す図である。
【図2】静電潜像担持体に対向する現像剤担持体を備えた従来の現像装置の一部を示す図である。
【図3】この発明の実施形態に係る現像装置を備えた画像形成装置の概略の正面断面図である。
【図4】現像装置の正面断面図である。
【図5】現像装置に備えられた穂規制ブレードの位置を示す図である。
【図6】(A)は、穂規制ブレードを備えた本発明の現像装置の現像スリーブの周面に立った穂状の現像剤を、現像スリーブの半径方向から撮影した写真である。(B)は、穂規制ブレードを備えた本発明の現像装置の現像スリーブの周面に立った穂状の現像剤を、現像スリーブの回転軸方向から撮影した写真である。(C)及び(D)は比較例であって、(C)は、穂規制ブレードを備えていない現像装置の現像スリーブの周面に立った穂状の現像剤を、現像スリーブの半径方向から撮影した写真である。(D)は、穂規制ブレードを備えていない現像装置の現像スリーブの周面に立った穂状の現像剤を、現像スリーブの回転軸方向から撮影した写真である。
【図7】角度Aを変えたときのA/(B+C)の値と穂状に立った現像剤の平均高さとの関係を示す図である。
【図8】現像スリーブの周面の線速度を感光体ドラムの周面の線速度で除算して得られる周速比と、現像剤の搬送状態との関係を示す図である。
【図9】比較例である順方向現像方式の現像装置を備えた画像形成装置の現像領域の正面図である。
【図10】カウンター現像方式の現像装置を備えた画像形成装置の現像領域の正面図である。
【図11】比較例であって穂規制ブレードを備えていないカウンター現像方式の現像装置を備えた画像形成装置の現像領域の正面図である。
【図12】穂規制ブレードを備えているカウンター現像方式の現像装置を備えた画像形成装置の現像領域の正面図である。
【図13】(A)は、穂規制ブレードを備えていないカウンター現像方式の比較例の現像装置を備えた画像形成装置で形成された、複数のラインからなる画像を表した図であり、(B)は、穂規制ブレードを備えているカウンター現像方式の現像装置を備えた画像形成装置で形成された、複数のラインからなる画像を表した図である。
【符号の説明】
【0106】
10A〜10D 現像装置
11A 現像ローラ
12A 層厚規制ブレード(層厚規制部材)
18A マグネットローラ(磁界発生部材)
19A 現像スリーブ(現像剤担持体)
20A 穂規制ブレード(穂規制部材)
31A〜31D 感光体ドラム(静電潜像担持体)
82 最近接位置
83 現像剤
84 静電潜像
84A 静電潜像の後端部
85 非画像部
91 静電潜像の搬送方向(第1方向)
92 現像剤の搬送方向(第2方向)
93 基準線
94 第1線
95 第2線
96 第3線
100 画像形成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像領域において静電潜像を所定の第1方向へ搬送する方向に回転する静電潜像担持体に担持された静電潜像を現像する現像装置であって、
周面に現像剤を担持しながら回転することで前記静電潜像担持体と対向する前記現像領域へ現像剤を搬送する現像剤担持体であって前記現像領域において前記第1方向の反対方向である第2方向へ現像剤を搬送する方向に回転する現像剤担持体と、
前記現像剤担持体の内部に固定的に配置され、前記現像領域の近傍に配置された主極を含む複数の磁極を有する磁界発生部材と、
前記第2方向における前記現像領域の上流側において前記周面に担持された現像剤の層厚を規制する層厚規制部材と、
前記第2方向において前記静電潜像担持体と前記現像剤担持体との最近接位置より上流側であって前記層厚規制部材より下流側の所定位置に配置され、前記周面上に前記主極による磁界下で穂状に立った現像剤の高さを規制する穂規制部材と、を備える現像装置。
【請求項2】
前記穂規制部材は、樹脂製である請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記磁界発生部材の前記主極は、前記第2方向において前記最近接位置より上流側にある請求項1又は2に記載の現像装置。
【請求項4】
前記現像剤担持体の前記周面は、サンドブラスト処理されている請求項1から3のいずれかに記載の現像装置。
【請求項5】
前記現像剤担持体には、直流成分と交流成分とを重畳した現像バイアス電圧が印加される請求項1から4のいずれかに記載の現像装置。
【請求項6】
前記穂規制部材の前記現像剤担持体の前記周面に対向する先端は、
前記現像剤担持体の前記周面における、前記現像剤担持体の半径方向の前記磁界発生部材の前記主極による磁界の強さが最大値となる前記現像剤担持体の周方向の位置より前記第2方向の上流側において前記磁界の強さが前記最大値の半分となる前記周方向の位置と、前記最近接位置との間の領域内に配置される請求項1から6のいずれかに記載の現像装置。
【請求項7】
前記現像剤担持体の前記周面の線速度を前記静電潜像担持体の周面の線速度で除算して得られる周速比は、1.3以上1.8以下である請求項1から6のいずれかに記載の現像装置。
【請求項8】
現像領域において静電潜像を所定の第1方向へ搬送する方向に回転する静電潜像担持体と、
請求項1から7のいずれかに記載の現像装置と、を備える画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−163010(P2009−163010A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−637(P2008−637)
【出願日】平成20年1月7日(2008.1.7)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】