説明

現像装置

【課題】現像装置の大きさを変えることなく、又、特別な消磁制御時間を設けることなく、着磁したキャリアを短時間で確実に消磁できる現像装置を提供すること。
【解決手段】トナーとキャリアから成る2成分現像剤を収容し、現像剤を剤担持体に搬送する現像室と、補給トナーと現像剤を攪拌する攪拌室を有し、前記2成分現像剤により像担持体上の静電潜像の現像を行う現像装置において、磁石を中に有する現像剤担持体に接触することで着磁し、残留磁化が50emu/cm3 以上450emu/cm3 以下のキャリアを消磁する交流磁場発生コイルを現像容器内に備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式でトナーとキャリアから成る2成分現像方式で画像形成する現像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電子写真方式や静電記録方式の画像形成装置が具備する現像装置では、磁性トナーを主成分とした磁性一成分現像剤、非磁性トナーを主成分とした非磁性一成分現像剤若しくは非磁性トナーと磁性キャリアを主成分とした二成分現像剤が用いられている。特に、電子写真方式によりフルカラーやマルチカラー画像を形成するカラー画像形成装置において、高速化及び耐久性、画像の色味等の観点から、殆どの現像装置が二成分現像剤を使用している。
【0003】
二成分系現像剤に用いられるキャリア粒子は、トナー粒子に良好な帯電性を付与し、現像極において静電潜像上にトナーを現像し、キャリア粒子自身は現像容器内に戻され新たにトナーと混合し良好な帯電を付与するというサイクルで長時間繰り返し使用される。従って、キャリア粒子に要求される性能として、トナーに良好な帯電を付与すること、繰り返しの使用でも帯電付与性能が劣化しないこと等が挙げられる。従来、キャリア粒子としては鉄粉キャリア、フェライトキャリア、磁性微粒子をバインダー中に分散した磁性体分散樹脂キャリア等が磁気ブラシ現像用の二成分系現像剤用として用いられている。
【0004】
一方、高画質化の要求により現像システムの検討も種々行われており、中でも現像プロセスに交番電界を印加する方法が用いられる場合には、これに鉄粉キャリアを使用すると低抵抗であるためリークが起こり、現像不良が生じてしまう。又、フェライトキャリアを用いても、キャリア粒子の比抵抗が105 〜107 Ω・cm程度であり、ハーフトーンの潜像が現像バイアスのリークによって乱される等の理由により十分良好な画像が得られない。そこで、磁性微粒子をバインダー中に分散させて比抵抗を高めたものを用いると良好な画像が得られるようになる。
【0005】
しかし、上記の磁性体分散樹脂キャリアはに含まれている磁性体は軟磁性体であるが、数Oe〜数十Oeの保磁力を有しているため、当該キャリアは現像スリーブの磁場によって磁化される。磁化したキャリアはお互いが鎖状に繋がってしまうことで流動性が低下し、キャリアとトナーの接触頻度が低下することでトナーの帯電不良やトナー飛散及びかぶり濃度の増加等を引き起こす原因となる。
【0006】
又、前記理由によりキャリア同士が接触する頻度が高くなることで、キャリア表面のコートが剥がれ、キャリアの比抵抗低下及びトナーに対する帯電能力の低下を引き起こす原因となる。
【0007】
上記問題を解決するために特許文献1には、現像装置外に磁化したキャリアを消磁するコイルを設けて数百枚複写するごとに消磁する時間を設けている。
【特許文献1】特開平5−341657号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上述の特許文献1によれば、外部に消磁する手段を設けているのでコイルとキャリアの距離が離れているため、コイル近傍を通過するキャリアを一度に消磁しようとすると大きな磁場を印加しなくてはならず、現像剤担持体の磁場に影響を及ぼしてしまう恐れがあり、一度に消磁できるキャリア量が少ない。更には、現像装置の小型化に不利であり、又、数百枚複写するごとに着磁したキャリアを消磁する時間を設けることで生産性が低下することと、上記で述べたキャリアのコート剥がれは解決できないという問題がある。
【0009】
本発明の目的は、現像装置の大きさを変えることなく、又、特別な制御時間を設けることなく、常に着磁したキャリアを短時間で確実に消磁できる現像装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1記載の説明は、トナーとキャリアから成る2成分現像剤を収容し、現像剤を剤担持体に搬送する現像室と、補給トナーと現像剤を攪拌する攪拌室を有し、前記2成分現像剤により像担持体上の静電潜像の現像を行う現像装置において、磁石を中に有する現像剤担持体に接触することで着磁し、残留磁化が50emu/cm3 以上450emu/cm3 以下のキャリアを消磁する交流磁場発生コイルを現像容器内に備えることを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記交流磁場発生コイルは現像剤が現像室から攪拌室に受け渡しされる位置に設けられることを特徴とする。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記交流磁場発生コイルが発生する磁場はコイルの中心でキャリアの保磁力の3倍以上、現像剤担持体が発生する磁場に影響を及ぼさない磁場以下で、印加磁場の周波数は30Hz以上1kHz以下でキャリアを消磁することを特徴とする。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3の何れかに記載の発明において、前記現像容器内のキャリアは、前記交流磁場発生コイル内を通過することを特徴とする。
【0014】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4の何れかに記載の発明において、前記現像容器内には、現像剤担持体が前記交流磁場発生コイルから発生する磁場の影響をできるだけ受けないように、現像剤担持体近傍に磁気遮蔽板を設けていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、現像装置の大きさを変えることなく、且つ、特別な消磁制御時間を設けずに、常に着磁したキャリアを短時間で確実に消磁できることから、生産性を低下させることなく、トナーの帯電不良やキャリアの劣化を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0017】
<実施の形態1>
図1は本発明に係る現像装置の一実施例を説明する概略構成図、図2は同現像装置を用いた画像形成装置の概略構成図である。
【0018】
先ず、画像形成装置全体の構成及び動作について説明する。
【0019】
本実施の形態において、図2に示すように、画像形成装置は、4つの画像形成ステーションY,M,C,Kを有している。各画像形成ステーションY,M,C,Kは、それぞれ、像担持体としての感光ドラム10(10Y,10M,10C,10K)を備えている。
【0020】
感光ドラム10(10Y,10M,10C,10K)の周りには、それぞれ一次帯電装置11(11Y,11M,11C,11K)、露光装置12(12Y,12M,12C,12K)、現像装置1(1Y,1M,1C,1K)が配置されている。又、感光ドラム10(10Y,10M,10C,10K)の下方には、中間転写装置20が配置されている。中間転写装置20は、中間転写体としての中間転写ベルト21が、ローラ22,23,24に張設されて、矢印方向に走行するように構成されている。
【0021】
本実施の形態では、コロナ帯電装置とされる一次帯電装置11(11Y,11M,11C,11K)によって帯電された感光ドラム10(10Y,10M,10C,10K)の表面をそれぞれ露光装置12(12Y,12M,12C,12K)によって露光することで感光ドラム10(10Y,10M,10C,10K)上に静電潜像が形成される。この潜像は、現像装置1(1Y,1M,1C,1K)によって現像することで感光ドラム10(10Y,10M,10C,10K)上にトナー像を形成する。
【0022】
各画像形成ステーションY,M,C,Kで形成されたトナー像は、一次転写手段としての帯電ブレード13(13Y,13M,13C,13K)による転写バイアスによって、被転写材としての中間転写ベルト21上に転写され重ね合わせられる。
【0023】
中間転写ベルト21上に形成された4色のトナー像は、ローラ24と対向して配置された二次転写手段としての二次転写ローラ25によって記録紙Pに転写される。トナー像が転写された記録紙Pは、定着ローラ31,32を備えた定着装置3によって加圧/加熱され、永久画像を得る。
【0024】
又、転写後に感光ドラム1上に残った転写残トナーは、クリーナー14(14Y,14M,14C,14K)により除去され、次の画像形成に備える。
【0025】
次に、図1を参照して現像装置1について詳しく説明する。
【0026】
現像装置1は、現像容器2を備え、現像容器2には非磁性トナーと磁性キャリアを含む2成分現像剤が収容されている。
【0027】
現像容器2は、感光ドラム10に対向した現像領域が開口しており、この開口部に一部露出するようにして現像剤担持体としての現像スリーブ3が回転可能に配置されている。
【0028】
磁場発生手段である固定のマグネット4を内包する現像スリーブ3は、非磁性材料で構成され、現像動作時には図1の矢印方向に回転し、現像容器2内の2成分現像剤を層状に保持して現像領域に担持搬送し、感光ドラム1と対向する現像領域に2成分現像剤を供給して、感光ドラム10に形成されている静電潜像を現像する。静電潜像を現像した後の現像剤は、現像スリーブ3の回転に従って搬送され、現像容器2内に回収される。
【0029】
現像スリーブ3には直流電圧に交流電圧を重畳した現像バイアスが不図示の現像バイアス発生手段から印加される。交流成分の波形は矩形波であり、この現像バイアスによって現像スリーブ3と感光ドラム1間に交番電界を形成し、トナーをキャリアから電気的に剥離してトナーミストを形成することで、現像効率が向上する。
【0030】
2成分現像剤について詳しく説明すると、トナーは、ポリエステルを主体とした樹脂バインダーに顔料を混錬したものを粉砕分級して得られる、体積平均粒径が7μm程度のものを用いる。キャリアは、磁性微粒子をバインダー中に分散した磁性体分散樹脂キャリアを用い、50%粒径(D50)は35μm、残留磁化170emu/cm3 、保磁力15Oeのものを用いる。このようなトナーとキャリアを重量比で約8:92の割合で混合し、トナー濃度(現像剤に対するトナーの重量%)8%の2成分現像剤として用いる。画像形成によってトナーが消費されると、その分のトナーは、現像剤補給機構としての現像剤補給槽5から補給される。補給されたトナーは現像器内のキャリアと接触することで帯電し、上述したように現像される。
【0031】
その際、現像器内のキャリアが現像剤担持体内の磁石によって磁化してしまうと、キャリア同士が鎖状に繋がることで流動性が低下し、補給トナーが十分に帯電されず画像不良を引き起こしたり、キャリア同士が摺擦することでキャリアのコートが剥がれてキャリアの比抵抗が低下する恐れがある。そこで、このような着磁したキャリアを消磁する手段を設けた現像装置について図3を用いて説明する。
【0032】
現像装置1内において、スクリューAからスクリューBに現像剤が受け渡される箇所に、幅5mm内径が20mmφのコイル6をスクリューA,Bの進行方法に対して平行に配置する。上記コイル6は、着磁したキャリアに交流磁場を印加して消磁するものであり、上記交流磁場を発生させるための交流電源8を備えている。又、コイルが発生する磁場が現像剤担持体の磁場に影響を及ぼさないように、現像剤担持体近傍に磁気遮蔽板を設ける。
【0033】
ここで、コイル6から発生させる交流磁場について詳述する。
【0034】
図4にキャリアを消磁するために、印加する磁場の強さとキャリアの保磁力について調べた結果を示す。コイル中心の印加磁場がキャリアの保磁力の3倍以上でないと着磁したキャリアを消磁できないことから、着磁したキャリアを消磁するためにはキャリアの保磁力の3倍以上で且つ現像剤担持体の磁場に影響を与えない程度の交流磁場を印加しなくてはならない。尚、キャリアの保磁力の測定は試料振動型磁力計で行った。
【0035】
次に、印加する交流磁場の周波数とキャリアの消磁度合いについて図5に示す。
【0036】
印加する磁場の強さをキャリアの保磁力の3倍としたとき、周波数が20Hz以上でないと十分にキャリアが消磁されないことから、印加する交流磁場の周波数は20Hz以上であり、コイルの発熱によるトナー融着を防ぐために1kHz以下とする。
【0037】
以上のことを踏まえて、印加磁場をキャリアの保磁力の3倍である45Oe、周波数を2Hzとして消磁処理を行ったキャリア及び消磁処理をしていないキャリアを含むトナー濃度8%の現像剤にトナー2gを補給し、4秒間攪拌した際の補給トナーの帯電量を測定して、互いの帯電量を比較した結果を図6に示す。消磁されているキャリアに補給した場合、消磁されていないキャリアに比べてトリボの値が高くなっている。これは、着磁したキャリアを消磁することによって、鎖状になっていたキャリアが離れ、トナーとキャリアの接触頻度が増加したためである。
【0038】
<実施の形態2>
次に、本発明の実施の形態2について説明する。
【0039】
本実施の形態に係る現像装置は、装置全体の構成が実施の形態1に示したものとほぼ同様であるので、再度の説明は省略し、本実施の形態の特徴ある構成部分を図7を参照して説明する。
【0040】
図7に示すように、本実施の形態では、着磁キャリアを消磁するための幅5mm、内径が20mmφのコイル6をスクリューAからスクリューBに現像剤が受け渡される箇所に、スクリューA,Bの進行方向に対して垂直に配置し、前記現像剤受け渡し部を通過する現像剤の全てが前記交流磁界発生コイル内を通過させることを特徴とする。
【0041】
上記の構成で補給トナーの帯電特性を測定した結果を図8に示す。
【0042】
実施の形態1に比べて、補給トナーがよりよく帯電していることが分かる。これは、スクリューAからスクリューB側へ移動する現像剤をコイルの内部を通過させることによって、実施の形態1よりも均一に磁化したキャリアに交流磁場を印加することができるようになったために着磁したキャリアをより確実に消磁し、キャリアを分散させることができるようになったためと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施の形態1に係る現像装置を説明する概略構成図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る現像装置を用いた画像形成装置の概略構成図である
【図3】本発明のキャリアを消磁する手段を設けた実施の形態1に係る現像装置の概略構成図である。
【図4】着磁したキャリアを消磁するために必要な印加磁場と保磁力の関係を示す図である。
【図5】着磁したキャリアを消磁するために必要な印加磁場の周波数を示す図である。
【図6】キャリアを消磁する手段を設けた実施の形態1に係る現像装置の効果を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態2に係る現像装置の概略構成図である。
【図8】本発明の実施の形態2に係る現像装置の効果を説明する図である。
【符号の説明】
【0044】
1 現像装置
1a 現像室内の現像剤の流れ
1b 攪拌室内の現像剤の流れ
2 現像容器
3 現像スリーブ(現像剤担持体)
5 現像剤補給槽(現像剤補給機構)
6 交流磁界発生コイル
7 現像剤補給位置
8 交流電源
9 磁場遮蔽板
10 感光ドラム(像担持体)
11 一次帯電装置
12 露光装置
13 帯電ブレード(一次転写手段)
14 クリーナー
20 中間転写装置
21 中間転写ベルト
25 二次転写ローラ(二次転写手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナーとキャリアから成る2成分現像剤を収容し、現像剤を剤担持体に搬送する現像室と、補給トナーと現像剤を攪拌する攪拌室を有し、前記2成分現像剤により像担持体上の静電潜像の現像を行う現像装置において、
磁石を中に有する現像剤担持体に接触することで着磁し、残留磁化が50emu/cm3 以上450emu/cm3 以下のキャリアを消磁する交流磁場発生コイルを現像容器内に備えることを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記交流磁場発生コイルは現像剤が現像室から攪拌室に受け渡しされる位置に設けられることを特徴とする請求項1記載の現像装置。
【請求項3】
前記交流磁場発生コイルが発生する磁場はコイルの中心でキャリアの保磁力の3倍以上、現像剤担持体が発生する磁場に影響を及ぼさない磁場以下で、印加磁場の周波数は30Hz以上1kHz以下でキャリアを消磁することを特徴とする請求項1又は2記載の現像装置。
【請求項4】
前記現像容器内のキャリアは、前記交流磁場発生コイル内を通過することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の現像装置。
【請求項5】
前記現像容器内には、現像剤担持体が前記交流磁場発生コイルから発生する磁場の影響をできるだけ受けないように、現像剤担持体近傍に磁気遮蔽板を設けていることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の現像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−86623(P2007−86623A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−277788(P2005−277788)
【出願日】平成17年9月26日(2005.9.26)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】