説明

現像装置

【課題】現像装置の現像室と現像剤容器との間の隔壁に設けられた開口部の縁間の距離を長くすることなく、該開口部の縁部に現像剤撹拌搬送部材が衝突することによる衝突音を小さくすることが可能な現像装置を提供する。
【解決手段】トナー撹拌搬送部材149のシート部材148は、トナー供給用開口部146の上流側の縁部146aのトナー容器144の内部側の端部(上流側端部)146cを通過する直前まで撓まされており、自由端148aが上流側端部146cを通過して自然状態における形状に復元した直後に、トナー供給用開口部146の下流側の縁部146bのトナー容器144の内部側の端部(下流側端部)146dに接触し、トナー撹拌搬送部材149の回転半径方向において、上流側端部146cとトナー撹拌搬送部材149の回転軸線149aとの間の距離よりも、下流側端部146bと回転軸線149aとの間の距離の方が小さい構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式を用いた複写機、レーザービームプリンタなどの画像形成装置に用いられる現像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を用いた画像形成装置には、電子写真感光体(感光体)に形成された静電潜像を、トナーと呼ばれる粉体の現像剤を用いて現像する現像装置が設けられている。又、感光体と、感光体に作用する現像装置などのプロセス手段とを一体化して画像形成装置本体に着脱可能にしたプロセスカートリッジも広く知られている。
【0003】
図11は、従来のプロセスカートリッジの一例の断面を示す。図示のプロセスカートリッジ207には、ドラム型の感光体である感光ドラム201を挟んで、クリーニング装置206と現像装置204とが配設されている。又、クリーニング装置206と現像装置204との間には帯電装置202が配設されている。
【0004】
現像装置204は、現像剤担持体としての現像ローラ241及び現像剤規制部材としての現像ブレード242などが設けられた現像室243と、現像室243に供給するトナーが収納された現像剤容器としてのトナー容器244とを有する。現像室243とトナー容器244との間は隔壁245で仕切られており、この隔壁245にはトナー供給用開口部(開口部)246が形成されている。又、トナー容器244内には、トナー容器244内のトナーTを撹拌すると共に現像室243へと搬送する現像剤撹拌搬送部材としてのトナー撹拌搬送部材249が設けられている。トナー撹拌搬送部材249は、支持部材247と、支持部材247に固定された撹拌翼としての可撓性を有するシート部材248とを有する。開口部246は、トナー容器244内にトナーTが充填された後に、トナーシール部材(図示せず)で覆われる。これによって、トナーTがトナー容器244内に密封され、プロセスカートリッジ207の輸送時にトナー漏れが生じることが防止される。
【0005】
トナー撹拌搬送部材249は、支持部材247がトナー撹拌搬送部材249の回転中心(回転軸線)249aを中心にして回転することで図中時計回りに回転する。シート部材248の自由端248aは、トナー撹拌搬送部材249の回転方向における開口部246の上流側の縁部(以下「上流側縁部」という。)246aを通過するときに、一旦曲げ応力から解放される。又、シート部材248の自由端248aは、曲げ応力が解放されたことによって、トナー撹拌搬送部材249の回転方向における開口部246の下流側の縁部(以下「下流側縁部」という。)246bと衝突する。シート部材248は、上述のように曲げ応力が開放されたこと及び下流側縁部246bに衝突したことによる衝撃力によって、トナーTを現像室243内へと搬送する。シート部材を用いたトナーの搬送方法は、例えば、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平3−131881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述のようなトナーの搬送方法には、次のような課題がある。
【0008】
即ち、シート部材248の自由端248aが開口部246の上流側縁部246aを通過する際に、該自由端248aに加えられていた曲げ応力が解放される。これにより、シート部材248の自由端248aが開口部246の下流側縁部246bに衝突して衝突音が発生する。
【0009】
この衝突音は、トナー撹拌搬送部材249の回転周期毎に発生するため、耳につきやすい。又、トナー容器244内のトナーの残量が少なくなると、シート部材248の自由端248aの動きを妨げるものがなくなるため、この衝突音は大きくなる傾向がある。
【0010】
開口部246の上流側縁部246aと下流側縁部246bとの間の距離を長くすれば、上述のような衝突は回避できると考えられる。しかし、この方法は、次のような事態の発生が懸念されるため好ましくない。即ち、開口部246を塞ぐのに用いられるトナーシール部材の面積の増大によるコストの増加が懸念される。又、現像装置204の枠体(筐体)の強度の低下が懸念される。更には、一旦現像室243へ搬送したトナーTが再びトナー容器244へ逆流してくる割合が増えることが懸念される。
【0011】
従って、本発明の目的は、現像装置の現像室と現像剤容器との間の隔壁に設けられた開口部の縁間の距離を長くすることなく、該開口部の縁部に現像剤撹拌搬送部材が衝突することによる衝突音を小さくすることが可能な現像装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的は本発明に係る現像装置にて達成される。要約すれば、本発明は、現像剤を担持する現像剤担持体が配置された現像室と、前記現像室に供給する現像剤が収納された現像剤容器と、前記現像室と前記現像剤容器との間に配置され、前記現像室と前記現像剤容器とを連通させる開口部が形成された隔壁と、前記現像剤容器の内部に配置され、前記現像剤容器内の現像剤を撹拌すると共に前記開口部を通して前記現像剤容器内から前記現像室内へと現像剤を搬送する回転可能な現像剤撹拌搬送部材と、を有する現像装置において、前記現像剤撹拌搬送部材は、回転軸線の周りを回転可能な支持部材と、前記支持部材に固定されて前記支持部材よりも前記現像剤撹拌搬送部材の回転半径方向外側において前記回転軸線の周りを回転可能な可撓性を有するシート部材であって、前記回転軸線と平行な第1の方向と該第1の方向と直交する第2の方向とにそれぞれ所定の幅を有し、前記第2の方向の一方の端部が前記支持部材に固定され他方の端部が自由端とされたシート部材と、を有し、前記シート部材は、前記現像剤撹拌搬送部材の回転方向における前記開口部の上流側の縁部の前記現像剤容器の内部側の端部である上流側端部を通過する直前まで前記自由端が前記現像剤容器の内壁面に接触することによって撓まされており、前記自由端が前記上流側端部を通過して自然状態における形状に復元した直後に、前記回転方向における前記開口部の下流側の縁部の前記現像剤容器の内部側の端部である下流側端部に接触し、前記現像剤撹拌搬送部材の回転半径方向において、前記上流側端部と前記回転軸線との間の距離よりも、前記下流側端部と前記回転軸線との間の距離の方が小さいことを特徴とする現像装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、現像装置の現像室と現像剤容器との間の隔壁に設けられた開口部の縁間の距離を長くすることなく、該開口部の縁部に現像剤撹拌搬送部材が衝突することによる衝突音を小さくすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施例に係る画像形成装置の概略断面図である。
【図2】本発明の一実施例に係るプロセスカートリッジの概略断面図である。
【図3】本発明の一実施例に係る現像装置の概略断面図である。
【図4】本発明の一実施例に係る現像装置における開口部の近傍の概略斜視図である。
【図5】トナー撹拌搬送部材の回転過程におけるトナーの搬送状態を説明するための本実施例の一実施例に係る現像装置の概略断面図である。
【図6】本発明の一実施例に係る現像装置のトナー撹拌搬送部材のシート部材の撓み方を示す模式図である。
【図7】本発明の一実施例に係る現像装置が備える開口部の形態の他の例を示す模式図である。
【図8】本発明の他の実施例に係る現像装置における開口部の近傍の概略斜視図である。
【図9】本発明の他の実施例に係る現像装置における開口部の近傍の概略断面図である。
【図10】トナー撹拌搬送部材の支持部材の他の形態を示す概略断面図である。
【図11】従来のプロセスカートリッジの一例の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る現像装置を図面に則して更に詳しく説明する。
【0016】
実施例1
本実施例では、本発明は、電子写真方式を用いたプロセスカートリッジ方式のレーザービームプリンタの現像装置に適用される。
【0017】
1.画像形成装置
先ず、本実施例に係る画像形成装置の全体構成及び動作について説明する。図1は、本実施例の画像形成装置100の概略断面を示す。
【0018】
画像形成装置100は、像担持体としてのドラム型の感光体である感光ドラム101を有する。感光ドラム101の周囲には、次の各手段が配置されている。先ず、帯電手段としての帯電ローラ102である。次に、露光手段としてのレーザースキャナー(露光装置)103である。次に、現像手段としての現像装置104である。次に、転写手段としての転写ローラ105である。次に、クリーニング手段としてのクリーニング装置106である。又、画像形成装置100は、転写材搬送手段としての転写材搬送機構108、定着手段としての加熱及び加圧定着器(定着器)109などを有する。
【0019】
画像形成時には、感光ドラム101は図中時計回りに回転駆動され、その表面が帯電ローラ102によって一様に帯電させられる。帯電した感光ドラム101の表面は、露光装置103によって画像情報に応じたレーザー光により露光される。これにより、感光ドラム101上に静電潜像(静電像)が形成される。感光ドラム101上に形成された静電潜像は、現像装置104によって現像剤としてのトナーが付着させられて、トナー像として現像される。感光ドラム101上に形成されたトナー像は、感光ドラム101と転写ローラ105とが接触する接触領域(転写ニップ)Nにおいて、転写材Pに静電的に転写される。転写材Pは、転写材搬送機構108において、転写材収納カセット181から転写材供給ローラ182によって1枚ずつ送り出された後、レジストローラ183によって感光ドラム101上のトナー像と同期をとられて転写ニップNに搬送される。転写ニップNにおいてトナー像が転写された転写材Pは、感光ドラム101の表面から分離されて定着器109まで搬送される。定着器109は、未定着のトナー像を担持した転写材Pを加熱及び加圧することによって、その未定着のトナー像を転写材Pに定着させる。トナー像が定着された転写材Pは、画像形成装置100の外部に排出される。又、トナー像を転写材Pに転写した後に感光ドラム101の表面に残留したトナー(転写残トナー)は、クリーニング装置106によって感光ドラム101から除去されて回収される。
【0020】
本実施例では、帯電ローラ102、露光装置103によって、感光ドラム101に静電像を形成する静電像形成手段が構成される。
【0021】
2.プロセスカートリッジ
本実施例では、感光ドラム101と、感光ドラム101に作用するプロセス手段としての帯電ローラ102、現像装置104及びクリーニング装置106とは、画像形成装置100の本体に着脱可能なプロセスカートリッジ107として一体的に構成されている。図2は、本実施例に係るプロセスカートリッジ107の概略断面を示す。
【0022】
プロセスカートリッジ107は、感光ドラム101、帯電ローラ102及びクリーニング装置106が枠体によって一体的に構成された感光体ユニット107aと、現像装置104とを連結することで構成されている。
【0023】
クリーニング装置106は、感光ドラム101の表面に当接して配置されたクリーニング部材としてのクリーニングブレード161と、感光ドラム101から除去されたトナーを収容する廃トナー容器162とを有する。クリーニング装置106は、クリーニングブレード161によって、回転する感光ドラム101の表面から転写残トナーを掻き取り、廃トナー容器162内に回収する。
【0024】
現像装置104は、現像剤担持体としての現像ローラ141及び現像剤規制部材としての現像ブレード142などが設けられた現像室143と、現像室143に供給するトナーが収納された現像剤容器としてのトナー容器144とを有する。現像室143とトナー容器144との間は隔壁145で仕切られており、この隔壁145には、現像室143とトナー容器144とを連通させるトナー供給用開口部(開口部)146が形成されている。本実施例では、開口部146は、現像室143側から見て、現像装置104の長手方向と平行な長辺と、該長辺と直交する短辺とを有する長方形の貫通口である。又、トナー容器144内には、トナー容器144内のトナーTを撹拌すると共に現像室143へと搬送する現像剤撹拌搬送部材としての回転可能なトナー撹拌搬送部材149が設けられている。トナー撹拌搬送部材149は、支持部材147と、支持部材147に固定された撹拌翼としての可撓性を有するシート部材148とを有する。開口部146は、トナー容器144内にトナーTが充填された後に、トナーシール部材(図示せず)で覆われる。これによって、トナーTがトナー容器144内に密封され、プロセスカートリッジ107の輸送時にトナー漏れが生じることが防止される。
【0025】
尚、現像ローラ141は、現像室143内のトナーを担持して感光ドラム101と対向する現像部にトナーを搬送する。現像ブレード142は、現像ローラ141上に担持するトナーの量(層厚)を規制する。
【0026】
3.トナー撹拌搬送部材
図3は、本実施例に係る現像装置104の概略断面を示す。トナー撹拌搬送部材149は、支持部材147がトナー撹拌搬送部材149の回転中心(回転軸線)149aを中心として回転することで図中時計回りに回転する。トナー撹拌搬送部材149は、図5(a)〜(d)に示すように、その回転過程において、現像動作に必要なトナーTを、トナー容器144から現像室143へと搬送する役割を担う。
【0027】
支持部材147は、本実施例では正方形とされる略同一断面形状で現像装置104の長手方向(現像ローラ141の回転軸線と平行)に延在する軸部分147aを有する。回転軸線149aは、この軸部分147aの断面略中央に位置する。又、支持部材147は、軸部分147aの長手方向に延在する一側面を、回転軸線149aと直交する面に沿ってトナー撹拌搬送部材149の回転半径方向外側に延長した支持部分147bを有する。本実施例では、支持部材147の軸部分147aと支持部分147bとは一体的に形成されている。
【0028】
尚、本実施例では、支持部材147は、回転軸線149aにより近い軸部分147aと、シート部材148を取り付けるための支持部分147bとが一体となった構成であるが、本発明は斯かる構成に限定されるものではない。例えば、図10に示すように、支持部材147に、本実施例における支持部分147bが設けられておらず、本実施例における軸部分147aに対応する支持部材147にシート部材148が取り付けられた構成であってもよい。又、軸部分147aの断面形状は、四角形に限定されるものではなく、シート部材148を適切に取り付けられればよい。
【0029】
シート部材148は、自然状態(撓ませる力がかかっていない状態)でトナー撹拌搬送部材149の回転軸線149aと平行な第1の方向、該第1の方向と直交する第2の方向のそれぞれに所定の幅を有する平坦な薄板状部材である。特に、本実施例では、シート部材148は、現像装置104の長手方向の略全域にわたる上記第1の方向(長手方向)、該第1の方向と直交する上記第2の方向(短手方向)のそれぞれに所定の長さを有する平坦な長方形の薄板状部材である。つまり、このシート部材148の上記第2の方向(短手方向)は、トナー撹拌搬送部材149の回転軸線149aと直交する平面と平行である。シート部材148は、その短手方向の一方の端部が、支持部材147の支持部分147bに固定されている。シート部材148の短手方向の他方の端部(以下、単に「自由端」ともいう。)は、トナー撹拌搬送部材149の回転軸線149aと平行である。本実施例では、シート部材148は、その短手方向において、支持部材147への固定部の自由端148a側の端部(以下「固定端」ともいう。)148b(図6参照)から自由端148aまでの部分が可撓性を有し弾性的に変形可能となっている。この固定端148bは、本実施例では、支持部材147の支持部分147bの端部147cに対応する位置にある。シート部材148は、トナー撹拌搬送部材149の回転半径方向において、支持部材147よりも外側においてトナー撹拌搬送部材149の回転軸線149aの周りを回動(周回)し、対応する位置のトナーを撹拌及び搬送する。
【0030】
更に説明すると、粉体であるトナーTは、重力によってトナー容器144の下側に堆積する。そのため、トナー容器144内のトナーTを、開口部146を通じて現像室143へ搬送するためには、トナー撹拌搬送部材149は、次のような構成とする必要がある。即ち、少なくとも自由端148aがトナー容器144の最下点を通過した後、開口部146の上流側縁部146aに至るまでは、自由端148aは当該範囲のトナー容器144の内壁面(搬送面)144aに対して侵入量を有して接触し続けていることが必要である。これにより、シート部材148は、内壁面(搬送面)144aと協働して、トナー容器144の底部に堆積したトナーをすくい上げることができる。
【0031】
又、トナー容器110の下側に堆積したトナーTを効率よく搬送するためには、トナー撹拌搬送部材149は、次のような構成とする必要がある。即ち、少なくとも自由端148aは、開口部146の上流側縁部146aを通過した後に、内壁面(搬送面)144aによって撓まされた形状から、その自然状態における形状(平坦な薄板状)に弾性的に復元し得る可撓性を有することが必要である。シート部材148は、内壁面(搬送面)144aによって撓まされた形状のとき、回転方向下流側に凸となるように湾曲した形状とされる。
【0032】
一方、トナー撹拌搬送部材149をトナーT中で回転させるためには、トナー撹拌搬送部材149は、次のような構成とする必要がある。即ち、少なくとも回転軸線149aの近傍の支持部材147は、トナーTの抵抗力に負けないだけの強度を保持していることが必要である。
【0033】
本実施例では、トナー撹拌搬送部材149は、このような条件を満たすように、支持部材147とシート部材148とを有して構成されている。より詳しくは、本実施例では、トナー撹拌搬送部材149の支持部材147は、軸部分147a及び支持部分147bの両方ともPS(ポリスチレン)樹脂で作製した。本実施例では、支持部材147の軸部分147aと支持部分147bとは一体成型されている。又、本実施例では、自由端148aを含むシート部材148の全体は、厚さ75μmのPC(ポリカーボネート)樹脂のシートで作製した。但し、支持部材147、シート部材148の材料は、本実施例のものに限定されるものではなく、例えば、本実施例にて用いた材料と強度が近い材質などから適宜選択して使用することができる。本実施例では、トナー撹拌搬送部材149は、1回転/1秒の回転速度で回転する。
【0034】
ここで、プロセスカートリッジ107が未使用の状態では、開口部146の現像室143側の端面には、トナーシール部材が貼付されている。このトナーシール部材は、トナー容器144内にトナーTを密封することによって、プロセスカートリッジ107の輸送時のトナー漏れを防ぐ。しかし、開口部146の短辺方向の幅(即ち、開口部146の上流側縁部146aと下流側縁部146bとの間の距離)が広すぎると、トナーシール部材の面積が大きくなり過ぎて、コストの増加の要因になる。又、開口部146の短辺方向の幅が広すぎると、現像装置104の枠体(筐体)の強度の低下につながる。更に、開口部146の短辺方向の幅が広すぎると、現像室143からトナー容器144へのトナーTの逆流の割合が増えることがある。
【0035】
しかし、開口部146の短辺方向の幅が狭い場合には、シート部材148の自由端148aが開口部146の下流側縁部146bに衝突して衝突音が発生する。より具体的には、シート部材148の自由端148aが開口部146の上流側縁部146aを通過する際に、該自由端148aに加えられていた曲げ応力が開放される。これにより、それまで撓んでいた該自由端148aは、自然状態における形状へと弾性的に復元する。このとき、開口部146の短辺方向の幅が狭い場合には、シート部材148が自然状態における形状へと弾性的に復元する動きだけで、該自由端148aが開口部146の下流側縁部146bに衝突する。この衝突により衝突音が発生する。
【0036】
シート部材148の自由端148aが開口部146の下流側縁部146bと衝突することによって、次のような効果が得られる。即ち、自由端148aを含むシート部材148上に付着したトナーTを、該自由端148aと開口部146の下流側縁部146bとの衝突時の衝撃により引き剥がす効果がある。従って、上述のような衝突は、トナー撹拌搬送部材149がトナーの搬送機能を担う上で必要である。
【0037】
4.衝突音の抑制
本実施例の目的の1つは、開口部146の縁部にトナー撹拌搬送部材149が衝突することによる衝突音を小さくすることである。より詳細には、自由端148aが開口部146の上流側縁部146aを通過する際に、該自由端148aに加えられていた曲げ応力が解放されることによる、該自由端148aと開口部146の下流側縁部146bとの衝突による衝突音を小さくすることである。
【0038】
そこで、本実施例では、現像装置104は、概略、次のような構成とされる。即ち、開口部146の下流側縁部146bがトナー撹拌搬送部材149のシート部材148と衝突する位置を、できるだけトナー撹拌搬送部材149の回転軸線149a側にする。これにより、トナー撹拌搬送部材149のシート部材148と開口部146の下流側縁部146bが衝突する際の衝突音を小さくすることができる。シート部材148が、移動速度がより遅い位置で、開口部146の下流側縁部146bに衝突できるからである。但し、開口部146の下流側縁部146bを通過する際にシート部材148がより大きく撓むようになることから、シート部材148が永久変形しない(へたらない)範囲で、できるだけトナー撹拌搬送部材149の回転軸線149a側にすることが好ましい。
【0039】
即ち、本実施例では、トナー撹拌搬送部材149は、支持部材147と、該支持部材147に一端が固定されて他端が自由端である可撓性を有するシート部材148とを有する。シート部材148の自由端148aは、開口部146を通過する前及び通過した後には、それぞれトナー容器144の内壁(現像室143とトナー容器144との間の隔壁145)に接触する。より詳細には、開口部146の上流側縁部146aのトナー容器144の内部側の端部(上流側端部)146c、下流側縁部146bのトナー容器144の内部側の端部(下流側端部)146dにそれぞれ接触する。シート部材148は、上流側縁部146aの端部146cによって、そこを自由端148aが通過する直前まで、トナー撹拌搬送部材149の回転方向下流側に凸となるように湾曲した形状とされる(図5(b)及び図6参照)。又、シート部材148は、下流側縁部146bの端部146dによっても、そこを自由端148aが通過する際には、トナー撹拌搬送部材149の回転方向下流側に凸となるように湾曲した形状とされる(図5(d)参照)。一方、シート部材148の自由端148aは、開口部146を通過する際には、トナー容器144の内壁(現像室143とトナー容器144との間の隔壁145)には接触しない(図4及び図5(c)参照)。又、シート部材148は、その自由端148aが上流側縁部146aの端部146cを通過して、ほぼその自然状態における形状となった直後に、下流側縁部146bの端部146dに接触(衝突)するようにする。そして、トナー撹拌搬送部材149の回転半径方向における上流側端部146cとトナー撹拌搬送部材149の回転軸線149aとの間の距離d1よりも、下流側端部146dとトナー撹拌搬送部材149の回転軸線149aとの間の距離d2の方が小さくされる。
【0040】
図4は、現像装置104の開口部146の近傍を示す斜視図である。図4において、トナー撹拌搬送部材149のシート部材148は、開口部146内にある。本実施例では、開口部146の下流側縁部146b側の略平面状の隔壁145のトナー容器144の内部側に、該下流側縁部146bを延長するように張り出した断面略L字形状の張り出し部145aが形成されている。これにより、下流側縁部146bの端部146dは、トナー容器144の内壁面(搬送面)144aよりも、トナー撹拌搬送部材149の回転軸線149a側に突出する。本実施例では、開口部146の下流側縁部146bの形状は、現像装置104の長手方向の略全域にわたって同一である。
【0041】
次に、本実施例の効果を最大限得るための設定について更に詳しく説明する。
【0042】
前述したように、シート部材148の自由端148aは、トナー容器144の内壁面(搬送面)144aに対して侵入量を有することが必要である。この侵入量が大きいほど、トナーの搬送力は大きくなるが、シート部材148の自由端側の撓み量も大きくなる。その結果、シート部材148と開口部146の下流側縁部146bとの衝突による衝突音も大きくなる。
【0043】
図6は、トナー撹拌搬送部材149のシート部材148の撓み方を示す。シート部材148の自由端148aが上流側縁部146aの端部146cから離れる直前のシート部材148の状態を実線Xで表す。又、シート部材148の自由端148aが上流側縁部146aの端部146cから離れた直後のシート部材148の状態を破線Yで表す。
【0044】
ここで、シート部材148が自然状態の形状のままでトナー撹拌搬送部材149が回転するものと仮定した場合の、トナー撹拌搬送部材149の回転過程における各部の長さを次のように定義する。シート部材148の短手方向における、固定端148bから自由端148aまでの長さ(以下「自由長」ともいう。)をBとする。又、シート部材148の短手方向に沿う、固定端148bから上流側縁部146aの端部146cまでの長さをCとする。又、シート部材148の短手方向に沿う、固定端148bから下流側縁部146bの端部146dまでの長さ(以下「衝突位置距離」ともいう。)をDとする。又、開口部146の上流側縁部146aから下流側縁部146bまでの長さをhとする。このとき、上述のように、シート部材148の自由端148aがトナー容器144の内壁面(搬送面)144aに対して侵入量を有して接触するためには、C<Bの関係を満たす。そして、hの値が下記式(1)を満たす場合に、シート部材148は、その自由端148aが上流側縁部146aの端部146cを通過して、ほぼその自然状態における形状(破線Yの状態)となった直後に、下流側縁部146bの端部146dに接触(衝突)する。
【0045】
【数1】

【0046】
上記式(1)は、幾何学的条件から導かれる。尚、トナーTをトナー容器144から現像室143に良好に搬送するためには、hの値は、1.5mm以上、より好ましくは2.0mm以上である。
【0047】
上記式(1)を満たす条件の下で、衝突音、シート部材148の永久変形(へたり)の発生状況を検討した。B−Cの値、即ち、シート部材148の自由端148aのトナー容器144の内壁面(搬送面)144aに対する侵入量は2mmに固定した。そして、Bの値、即ち、シート部材148の自由長を20mm、30mm、40mmと変更すると共に、それぞれの場合について、Dの値、即ち、シート部材148の衝突位置距離を下記表1に示すように変更した。尚、各場合においてhの値は、ほぼ上記式(1)で算出される最大値に設定した。評価項目は、シート部材148と開口部146の下流側縁部146bとが衝突するときの衝突音と、シート部材148の永久変形である。表1に結果を示す。
【0048】
【表1】

【0049】
尚、「衝突音」は、○(良)、△(実用上問題無し)、×(不良)の3段階で評価した。又、「永久変形」は、次のようにして評価した。即ち、図5(d)に示すようにシート部材148が開口部146の下流側縁部146bの端部146dに接触して撓まされた位置でトナー撹拌搬送部材149を固定し、1週間放置した。その後、上記固定位置からトナー撹拌搬送部材149を回転させて、シート部材148の自由端148aに永久変形(ヘタリ)が生じているか否かを観察した。そして、シート部材148の変形によってトナー容器144の内壁面(搬送面)144aに対して接触状態を維持できなくなったものを×(不良)、若干変形が見られたが接触状態を維持できたものを△(実用上問題無し)、変形が生じなかったものを○(良)とした。
【0050】
上記表1の結果から、衝突音を可及的に小さくし、且つ、シート部材148の永久変形(ヘタリ)の発生を可及的に防止するためには、次式(2)を満たすことが好ましいことが分かる。
【0051】
【数2】

【0052】
尚、開口部146の形状は、本実施例のものに限定されるものではない。例えば、図7(a)〜(c)に示すような形状としても本実施例と同等の効果がある。即ち、図7(a)に示す例では、開口部146の下流側縁部146bの上方の略平面状の隔壁145に、トナー容器144の内部側に伸長した後に略直角下方に伸長する張り出し部145bが設けられている。これにより、開口部146の下流側縁部146bの端部146dは、回転軸線149a側に突出させられる。又、図7(b)に示す例では、開口部146の下流側縁部146b側の隔壁145は、トナー容器144の内部側に傾斜させられている。これにより、開口部146の下流側縁部146bの端部146dは、回転軸線149側に突出させられる。又、図7(c)に示す例では、開口部146の上流側縁部146aの下方の隔壁145よりもトナー容器144の内部側に張り出した、開口部146の下流側縁部146bの上方の略平面状の隔壁145に、現像室143の内部側に伸長する伸長部145dを設ける。これにより、開口部146の下流側縁部146bの端部146dは、回転軸線149a側に突出させられる。
【0053】
以上説明したように、本実施例によれば、トナー撹拌搬送部材149のシート部材148と開口部146の下流側縁部146bとが衝突する際に、トナーを良好に現像室143内に搬送できる。しかも、本実施例によれば、トナー撹拌搬送部材149のシート部材148が開口部146の下流側縁部146bに衝突することによる衝突音を小さくすることができる。
【0054】
実施例2
次に、本実施例の他の実施例について説明する。本実施例における画像形成装置、現像装置、プロセスカートリッジなどの基本的な構成は実施例1のものと同じである。従って、実施例1のものと同一又はそれに相当する機能、構成を有する要素には同一符号を付して、詳しい説明は省略する。
【0055】
実施例1では、図4に示すように、開口部146の下流側縁部146の形状は現像装置104の長手方向の略全域にわたって同一であるものとした。しかし、開口部146の下流側縁部146bにおいて、トナー撹拌搬送部材149のシート部材148と接触する部分は、現像装置104の長手方向の一部分であってもよい。
【0056】
図8は、本実施例に係る現像装置104の開口部146の近傍を示す斜視図である。図8において、トナー撹拌搬送部材149のシート部材148は、開口部146内にある。本実施例では、開口部146の下流側縁部146bの形状は、トナー撹拌搬送部材149のシート部材148が衝突する部分と、衝突しない部分とを有する。当該衝突する部分を含む概略断面を図9(a)に、当該衝突しない部分を含む概略断面を図9(b)にそれぞれ示す。
【0057】
更に説明すると、本実施例では、実施例1における張り出し部145aと同様に断面が略L字形状の張り出し部145eが、現像装置104の長手方向に間隔を開けて複数形成されている。これにより、開口部146の下流側縁部146bの端部146dを回転軸線149a側に突出させる。この張り出し部145eにおける下流側縁部146bのトナー容器144の内部側の端部146dが、シート部材148に接触する。一方、現像装置104の長手方向において張り出し部145eと張り出し部145eとの間における下流側縁部146bのトナー容器144の内部側の端部146fは、シート部材148には接触しない。
【0058】
本実施例では、トナー撹拌搬送部材149のシート部材148が衝突する部分である張り出し部145eを現像装置104の長手方向の3箇所(同方向両端部と中央)に設けた。しかし、このシート部材148が衝突する部分は、少なくとも1箇所あればよい。但し、トナー撹拌搬送部材149のシート部材148が開口部146の下流側縁部146bに衝突することにより、トナー撹拌搬送部材149のシート部材上に付着したトナーがシート部材148上から引き剥がされて現像室143に送り込まれる。この機能を考慮すると、シート部材148が衝突する部分は、現像装置104の長手方向において左右対称に配置されることが好ましい。
【0059】
以上、本実施例によれば、実施例1と同様の効果が得られる。加えて、本実施例では、開口部146の下流側縁部146bのシート部材148と接触する部分を現像装置104の長手方向の一部分としたことで、使用材料の低減やトナー容器144の成形時の成形精度の向上などが期待できる。
【0060】
以上、本発明を具体的な実施例に則して説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではない。例えば、上述の実施例では、プロセスカートリッジは、感光体と、感光体に作用するプロセス手段としての帯電手段、現像手段及びクリーニング手段とが一体的にカートリッジ化されたものであるとしたが、これに限定されるものではない。画像形成装置の本体に着脱可能なプロセスカートリッジは、感光体に作用するプロセス手段として帯電手段、現像手段及びクリーニングのうち現像手段を含む少なくとも1つと、感光体とを一体的にカートリッジ化したものであればよい。又、現像装置は、単独で画像形成装置の本体に対して着脱可能な現像カートリッジとすることもできるし、画像形成装置の本体に対して着脱可能とされていなくてもよい。
【符号の説明】
【0061】
101 感光ドラム
104 現像装置
146 トナー供給用開口部(開口部)
143 現像室
144 トナー容器
147 支持部材
148 シート部材
149 トナー撹拌搬送部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像剤を担持する現像剤担持体が配置された現像室と、前記現像室に供給する現像剤が収納された現像剤容器と、前記現像室と前記現像剤容器との間に配置され、前記現像室と前記現像剤容器とを連通させる開口部が形成された隔壁と、前記現像剤容器の内部に配置され、前記現像剤容器の内部の現像剤を撹拌すると共に前記開口部を通して前記現像剤容器から前記現像室へと現像剤を搬送する回転可能な現像剤撹拌搬送部材と、を有する現像装置において、
前記現像剤撹拌搬送部材は、回転軸線の周りを回転可能な支持部材と、前記支持部材に固定されて前記支持部材よりも前記現像剤撹拌搬送部材の回転半径方向外側において前記回転軸線の周りを回転可能な可撓性を有するシート部材であって、前記回転軸線と平行な第1の方向と該第1の方向と直交する第2の方向とにそれぞれ所定の幅を有し、前記第2の方向の一方の端部が前記支持部材に固定され他方の端部が自由端とされたシート部材と、を有し、
前記シート部材は、前記現像剤撹拌搬送部材の回転方向における前記開口部の上流側の縁部の前記現像剤容器の内部側の端部である上流側端部を通過する直前まで前記自由端が前記現像剤容器の内壁面に接触することによって撓まされており、前記自由端が前記上流側端部を通過して自然状態における形状に復元した直後に、前記回転方向における前記開口部の下流側の縁部の前記現像剤容器の内部側の端部である下流側端部に接触し、
前記現像剤撹拌搬送部材の回転半径方向において、前記上流側端部と前記回転軸線との間の距離よりも、前記下流側端部と前記回転軸線との間の距離の方が小さいことを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記シート部材が自然状態の形状のままで前記現像剤撹拌搬送部材が回転するものと仮定した場合に、前記第2の方向における前記シート部材の前記支持部材への固定部の前記自由端側の端部である固定端から前記自由端までの長さをBとし、前記第2の方向に沿う前記固定端から前記上流側端部までの長さをCとし、前記第2の方向に沿う前記固定端から前記下流側端部までの長さをDとし、前記開口部における前記上流側の縁部から前記下流側の縁部までの長さをhとしたとき、C<Bの関係を満たし、且つ、下記式(1)及び(2)、
【数1】

【数2】

を満たすことを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
当該現像装置により現像剤が供給されて現像される静電像が形成される像担持体と、前記像担持体に静電像を形成する静電像形成手段と、を有する画像形成装置の本体に着脱可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の現像装置。
【請求項4】
当該現像装置により現像剤が供給されて現像される静電像が形成される像担持体と一体的にカートリッジ化されて、前記像担持体に静電像を形成する静電像形成手段を有する画像形成装置の本体に着脱可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の現像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−32662(P2012−32662A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−173080(P2010−173080)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】