説明

現像部材及びそれを用いた画像形成装置

【課題】簡単な工程で、端部削れが発生せず、トナーの漏れのない現像部材及びそれを用いた画像形成装置を提供する。
【解決手段】表面に担持したトナーを画像形成体に供給するために使用される現像部材1において、トナー漏れ防止のシール部材と接触する端部4aの表面粗さRz(RzAとする)とその他の部分4の表面粗さRz(RzBとする)との比を、RzA/RzB>1.2とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に担持したトナーを画像形成体に供給するために使用される現像部材及びそれを用いた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機、プリンター等の電子写真方式の画像形成装置として、静電潜像を保持した感光体等の画像形成体にトナーを供給し、トナーを潜像に付着させて可視化する画像形成装置が知られている。この画像形成装置では、トナーを担持した現像部材を、静電潜像を保持した画像形成体に接触させて、トナーを画像形成体の潜像に付着させることにより画像形成を行っている。そのため、現像部材を導電性と弾性を有する導電性弾性体で形成する必要がある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−357950号公報
【0003】
図2は画像形成装置の一例の構成を説明するための図である。図2に示す例において、トナー57を供給するためのトナー塗布用ローラ55と静電潜像を保持した画像形成体56との間に、トナー57を表面に担持して画像形成体56に供給するための現像部材としての現像ローラ51が配設されている。トナー塗布用ローラ55、現像ローラ51、画像形成体56をそれぞれ図中矢印方向に回転させることで、トナー57がトナー塗布用ローラ55、現像ローラ51を介して画像形成体56に供給される。なお、図中58は現像ローラ51の表面上のトナー57を均一な薄層に整えるための成層ブレードである。また、図中59は転写部であり、ここで紙などの記録媒体にトナー画像を転写する。転写後、画像形成体56の表面に残存するトナー57は、クリーニング部60に装置されたクリーニングブレード61により、除去される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した画像形成装置では、不要なトナー57が画像形成体56に供給されないように、通常、現像ローラ51、トナー塗布用ローラ55、トナー57を密封した容器内に配置してカートリッジ化して用いる。そして、現像ローラ51の両端部(画像表示領域の外側の部分)からトナー57が外部へ漏れないように、現像ローラ51の両端部をカートリッジ本体に設けたフェルト等の部材で回転自在にシールする必要がある。その際、シール部の構成によっては、フェルトとの接触で現像ローラ51の両端部が削れるいわゆる端部削れが発生し、削れた部分からトナー57がカートリッジ外部に漏れてしまう問題があった。そして、端部削れの発生した現像ローラ51を持つカートリッジをそのまま使用していると、画像形成体56の画像表示部分の両端部に不要なトナー57が付着してしまい、紙面の端部に汚れが発生していた。
【0005】
上述した端部削れをなくす目的で、現像ローラ51の両端部のシール部分の摩擦係数を下げる技術として、シール部材と接触する両端部に耐摩耗性材料層を設ける技術(例えば、特許文献2参照)や、シール部材と接触する両端部に画像部層の材料よりも高い伸び率の材料を設ける技術(例えば、特許文献3参照)も考えられている。しかしながら、上述した技術では、現像ローラ51の両端部表面にさらに被覆層を設けるか両端部そのものを他の材料で構成する必要があるため、工程が増加する問題が発生するとともに、離型性の良い被覆層を現像ローラ51の両端部表面に形成しようとするため、現像ローラ51の両端部表面を形成するベース材料との接着が難しく、長時間使用していると剥がれが生じやすい問題があった。
【特許文献2】特開平10−293453号公報
【特許文献3】特開2000−98731号公報
【0006】
本発明の目的は上述した問題点を解消して、簡単な工程で、端部削れが発生せず、トナーの漏れのない現像部材及びそれを用いた画像形成装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の現像部材は、表面に担持したトナーを画像形成体に供給するために使用される現像部材において、トナー漏れ防止のシール部材と接触する端部の表面粗さRz(RzAとする)とその他の部分の表面粗さRz(RzBとする)との比を、RzA/RzB>1.2とすることを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明の現像部材の好適例としては、RzBの範囲が1<RzB<15であること、シール部材と接触する端部が、現像部材の端面から20mm以内の部分であること、および、良導電性の軸体と、軸体の外側に形成された導電性弾性層と、導電性弾性層の表面に形成された樹脂層と、から構成され、樹脂層が熱硬化性樹脂からなること、がある。
【0009】
本発明の画像形成装置は、少なくとも表面に担持したトナーを画像形成体に供給するための現像部材を用いる画像形成装置において、現像部材として上述した構成の現像部材を用いることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の現像部材によれば、トナー漏れ防止のシール部材と接触する端部の表面粗さRz(RzAとする)とその他の部分の表面粗さRz(RzBとする)との比を、RzA/RzB>1.2とすることで、簡単な工程で、端部削れが発生せず、トナーの漏れのない現像部材及びそれを用いた画像形成装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1(a)、(b)はそれぞれ本発明の現像部材の一例の構成を示す図であり、図1(a)はその正面図を示し、図1(b)は図1(a)におけるA−A線に沿った断面図を示している。図1(a)、(b)に示す例において、現像部材としての現像ローラ1は、中心の良導電性シャフト2と、良導電性シャフト2の外側に設けられた導電性弾性層3と、導電性弾性層3の表面に設けられた被覆層4と、から構成されている。この現像ローラ1において、両端部の被覆層4aの部分がカートリッジ本体(図示せず)に設けたフェルトと接触してシール部を構成する部分となる。
【0012】
本発明の特徴は、現像ローラ1の被覆層4のうち、カートリッジ本体に形成されたトナー漏れ防止のシール部材と接触する端部の被覆層4aの表面粗さRz(RzAとする)とその他の被覆層4の表面粗さRz(RzBとする)との比を、RzA/RzB>1.2とする点にある。また、この際RzBの範囲を1<RzB<15とすることが好ましい。ここでいうその他の被覆層4の部分は画像形成用のトナーがのる部分であり、この範囲にすることで、トナーの付着性を向上させることができるとともに、長期使用時での現像ローラ1の摩耗による画像劣化を防止できるためである。さらに、両端部の被覆層4aの寸法については特に限定しないが、A4サイズの用紙のコピーを例にとると、両端部の被覆層4aを、現像ローラ1の端面から20mm以内の部分とすることが好ましい。なお、本発明における表面粗さRzは、JISB0601−1994で定義されている十点平均粗さを示している。
【0013】
本発明において、現像ローラ1の被覆層4のうち、両端部の被覆層4aの表面粗さをその他の部分の表面粗さよりも所定値以上に粗す方法については特に限定しないが、以下に示す製造方法をとることが、工程を簡単にすることができる点において好ましい。
【0014】
まず、第1の方法として、被覆層4を研削する際に、砥石幅を現像ローラ1の幅と同じか小さくしたものと左右に振り、一時的に砥石があたらない部分を作ることにより、両端部の被覆層4aの表面粗さを荒らすことができる。また、第2に方法として、同様に被覆層4aを研削するにあたり、砥石表面をドレッシングして調整する際に、わざと両端部のみ表面を滑らかにすることにより、両端部の被覆層4aの表面粗さを粗くすることができる。さらに、ディッピングにて塗装する際に、両端部塗布時のみディッピング速度を落とし、塗装厚みを薄くすることにより、両端部の被覆層4aの表面粗さを粗くすることができる。すなわち、本来、研削による表面粗さを塗膜で平滑にしているところを、薄くつけることにより粗いまま残すことができる。
【0015】
本発明の現像部材としての現像ローラ1を構成する良導電性シャフト2、導電性弾性層3、被覆層4としては、従来から知られている材料を用いることができる。その一例を以下に示す。
【0016】
良導電性シャフト2としては、良好な導電性を有するものであれば、いずれのものも使用しうるが、通常は金属製の中実体からなる芯金や内部を中空にくりぬいた金属製円筒体等の金属シャフトが用いられる。
【0017】
導電性弾性層3としては、適宜なゴム材料に導電剤を添加して導電性を付与した弾性体が用いられる。ここで使用し得るゴム材料には、特に制限はなく、ニトリルゴム、エチレン−プロピレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、天然ゴム、EPDMゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、エピクロルヒドリンゴム等が例示され、これらを単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0018】
導電性弾性層3に添加される導電剤としては、イオン導電剤及び電子導電剤がある。イオン導電剤としては、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、ラウリルトリメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウム、オクタドデシルトリメチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム、変性脂肪酸ジメチルエチルアンモニウム等の過塩素酸塩、塩素酸塩、塩酸塩、臭素酸塩、ヨウ素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、硫酸塩、エチル硫酸塩、カルボン酸塩、スルフォン酸塩等のアンモニウム塩;リチウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属の過塩素酸塩、塩素酸塩、塩酸塩、臭素酸塩、ヨウ素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、トリフルオロメチル硫酸塩、スルフォン酸塩等が例示される。
【0019】
また、電子導電剤としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等の導電性カーボン;SAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、SRF、FT、MT等のゴム用カーボン;酸化処理を施したインク用カーボン;熱分解カーボン、グラファイト;酸化錫、酸化チタン、酸化亜鉛等の導電性金属酸化物;ニッケル、銅等の金属等を例示することができる。これらの導電剤は、単独でもまた2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0020】
上述した構成の本発明の現像ローラ1を図2に示す画像形成装置の現像ローラとして用いることで、端部削れが発生せず、トナーの漏れのない画像形成装置を得ることができる。
【実施例】
【0021】
以下、実際の例について説明する。
まず、以下のようにして実施例1〜4及び比較例1〜4の現像ローラを作製した。
(1)導電性ローラの作製
ポリエーテルポリオール(旭硝子エクセノール828)100重量部、ジブチルチンジラウリレート0.01重量部、アセチレンブラック3重量部、硬化剤(住化バイエル、スミジュールPF)17.5重量部を混合し、樹脂混合物を得る。2min撹拌した後、10mmφの金属ローラを用意し、金型内で金属ローラを中心に樹脂混合物を注入して、90℃で8hrの条件で樹脂混合物を硬化させ導電性ローラ基材を得た(研削前)。
【0022】
(2)塗料の処方
以下の表1の記載に従って、大日精化製SO4748または日ポリ製N3113の塗料用樹脂に日本シリカ製シリカSS20を入れ分散させた後、溶媒としてMEK(メチルエチルケトン)を入れ、溶液粘度1.5〜5mPa・sに調整した。比較例3の場合は上記溶液にDIC製ウレタンビーズCFB101を入れて分散し、同じく溶液粘度1.5〜5mPa・sに調整した。実施例4及び比較例4用の端部塗料については、表1に示す組成をディスパーミルにて撹拌後、溶液粘度1.5〜5mPa・sに調整した。
【0023】
(3)実施例1、2及び比較例1、2について
表1に従って、得られた導電性ローラに対し塗料を塗布した後、表面の研削を行い、現像ローラを得た。研削は、水口製プランジ式研削機F600を用い、砥石の大きさはローラゴム部の長さと同じものと50mm以上長いものの2種準備し、砥石粗さに関しては#80と#120の2種を準備した。そして、所定の大きさで所定の粗さの砥石を使用して表面全体の研削を行うとともに、実施例1ではローラを左右に振らすことにより、また、実施例2では砥石のドレッシングの際両端部と中央部で方法を変えることにより、表面の中央部と両端部の粗さを調整した。なお、ドレッシングに関してはダイヤモンドドレッサーにて砥石表面を仕上げるが、深さ方向に500μm削り落とすことにより表面を調整した。ドレッシングの速度で表面状態が変わり、速い速度でドレッシングすると砥石表面のエッジが鋭くなり、研削製が向上するためローラ粗さは小さくなる。
【0024】
(4)実施例3及び比較例3について
表1に従って、塗装時のディッピング(Dip)速度を端部塗装時のみ遅くした以外、上述した実施例1及び比較例1と同様にして現像ローラを得た。
(5)実施例4及び比較例4について
表1に従って、両端部にさらに端部塗膜を設けた(実施例4と比較例4の両者とも)以外、上述した実施例1及び比較例1と同様にして現像ローラを得た。
【0025】
準備した実施例1〜4及び比較例1〜4の現像ローラに対して、表面粗さの測定、表面摩擦係数の測定、耐久削れの有無(○が無し、×が有り)、トナー消費量(○が所定頁の印字OK、×が所定頁の印字不可)、総合評価(○が良いもの、×が悪いもの)を、以下のようにして求めた。結果を以下の表1に示す。
【0026】
(6)表面粗さの測定
表面粗さ計サーフコム1400D(東京精密)を用い、軸方向に対して直交向きに長さ4mm、測定速度0.3mm/s、カットオフ波長0.8mmの条件で、測定点はセンターに関してローラ中央部のところを、端部に関しては端部より10mmのところを各10箇所測定し平均化した。
【0027】
(7)表面摩擦係数(μ)の測定
HEIDOMポータブル摩擦計(トライギア ミューズtype94i)を用い、表面測定端子部分にアンビック社製フッ素繊維フェルトGF0471を貼り付け、固定したローラ上におき軸方向に測定した。
【0028】
(8)トナー消費量
市販のカートリッジにトナーを調整して100g入れ、NN環境にて5%濃度(黒べたを100%としたときの印字濃度)にて6000枚以上印字できればOKとした。
【0029】
【表1】

【0030】
表1の結果から、実施例1では、左右長がローラと同じ砥石を左右に20mm振りながら研削することにより、左右に研削回数が少ない部分が発生し、端部粗さが粗くなり、耐久削れ、トナー消費量ともOKであることがわかる。実施例2では、ドレッシングの際に砥石左右部分のみドレッシング速度を遅くし、砥石表面エッジを滑らかにすることにより、研削性を落とし端部粗さを粗くでき、耐久削れ、トナー消費量ともOKであることがわかる。比較例1では、砥石の番手を大きくするとローラ粗さを小さくできるのでトナー消費量はOKだが、シール部分の摩擦係数(μ)は大きくなり耐久削れがNGとなることがわかる。比較例2では、砥石の番手を小さくすることでローラ粗さが大きくなりシール部分はOKだが、トナー消費量はNGとなることがわかる。
【0031】
また、実施例3では、塗装時のDip速度を端部塗装時のみ遅くすることにより、端部膜厚を薄くし、端部表面粗さを粗くでき、耐久削れ、トナー消費量ともOKであることがわかる。比較例3では、被覆層全体にウレタンビーズを施したが、トナー消費量がNGであった。さらに、実施例4では、端部にウレタンビーズ入りの塗装膜をさらに形成することで、端部の表面粗さを粗くでき、耐久削れ、トナー消費量ともOKであることがわかる。比較例4では、端部にフッ素塗装膜を塗布して摩擦係数を制御したが、耐久削れがNGであった。これから、耐久削れには表面の摩擦係数ではなく表面粗さが重要な因子であることがわかる。
【0032】
さらに、表1の結果から、実施例1〜4と比較例1〜4とのRzAとRzBとの比の値が、RzA/RzB>1.2の範囲であると、耐久削れ及びトナー消費量の両者とも○であり、その結果、総合評価が○となることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
両端部のシール部からのトナー漏れをなくすことができる本発明の現像部材及びそれを用いた画像形成装置は、複写機、プリンター、FAX等に使用される、例えば現像ローラとして好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】(a)、(b)はそれぞれ本発明の現像部材の一例の構成を示す図である。
【図2】画像形成装置の一例を説明するための図である。
【符号の説明】
【0035】
1 現像ローラ
2 良導電性シャフト
3 導電性弾性層
4 被覆層
4a 被覆層の両端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に担持したトナーを画像形成体に供給するために使用される現像部材において、トナー漏れ防止のシール部材と接触する端部の表面粗さRz(RzAとする)とその他の部分の表面粗さRz(RzBとする)との比を、RzA/RzB>1.2とすることを特徴とする現像部材。
【請求項2】
RzBの範囲が1<RzB<15であることを特徴とする請求項1に記載の現像部材。
【請求項3】
シール部材と接触する端部が、現像部材の端面から20mm以内の部分であることを特徴とする請求項1または2に記載の現像部材。
【請求項4】
良導電性の軸体と、軸体の外側に形成された導電性弾性層と、導電性弾性層の表面に形成された樹脂層と、から構成され、樹脂層が熱硬化性樹脂からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の現像部材。
【請求項5】
少なくとも表面に担持したトナーを画像形成体に供給するための現像部材を用いる画像形成装置において、現像部材として請求項1〜4のいずれか1項に記載の現像部材を用いることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−259246(P2006−259246A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−76728(P2005−76728)
【出願日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】