現場対応型の海中ネットクリーニング及び検査装置
【課題】
本発明は、改良された海中ネットのためのネットクリーナーを提供する。
【解決手段】
現場対応型の海中ネットクリーナーであって、ネット(2)の表面を自在に移動する滑走シャーシ(1)と、ネットクリーナーに浮力を与えるために滑走シャーシ(1)に設置された浮力手段(3)と、ネットクリーナーをネット(2)の表面と絡めて動作させる駆動手段(4)と、ネットクリーナーをネット(2)の表面に押し付けて接触状態を維持させる推進手段(5)と、ネット(2)の表面から海中汚濁物を剥ぎ取るクリーニング手段(6)とを含んで構成されており、海中のネット(2)をクリーニングするものである。
本発明は、改良された海中ネットのためのネットクリーナーを提供する。
【解決手段】
現場対応型の海中ネットクリーナーであって、ネット(2)の表面を自在に移動する滑走シャーシ(1)と、ネットクリーナーに浮力を与えるために滑走シャーシ(1)に設置された浮力手段(3)と、ネットクリーナーをネット(2)の表面と絡めて動作させる駆動手段(4)と、ネットクリーナーをネット(2)の表面に押し付けて接触状態を維持させる推進手段(5)と、ネット(2)の表面から海中汚濁物を剥ぎ取るクリーニング手段(6)とを含んで構成されており、海中のネット(2)をクリーニングするものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は海中ネットの設置場所におけるクリーニングに関し、特に、鮭養殖産業等で使用される水中ケージ(籠)を形成する水中ネットから藻類および汚濁物を遠隔操作でクリーニングして除去するように設計されているネットクリーニング装置に関する。
【0002】
本願は2008年10月10日出願のオーストラリア国仮特許願2008905261の優先権を主張する。
【背景技術】
【0003】
水中に沈められた水産物養殖ネットは海中で付着する藻類並びに他の汚濁物を成長させる。やがてそれらはネットを通過する水の流れを完全に阻止するようになる。汚濁物の堆積速度を遅らせるために汚濁物付着防止塗料をネットに塗布し、あるいは他の付着防止策がネットに対して施されている。しかしながら今日の汚濁物付着防止策はそのような水中ネットを汚濁させる水中成長物の堆積を完全には阻止できず、水中ネットのクリーニングは常に必要とされている。
【0004】
沈められた水中養殖(栽培)ネットをクリーニングするため、これまでにいくつかの方策が試行されてきた。その1つは設置場所の水域からネットを引き上げ、海岸に引き上げて物理的にクリーニングするものであった。あるいはネットを沈めた設置場所において、ネットに付着している海中成長物を吹き飛ばして除去するようにネットに高圧ジェット水流を吹き付ける作業をするダイバーを雇うことであった。
【0005】
ネットをクリーニングする前述の方法は不十分な点が大きいものであった。まず、ネットを水中から引き出し、引き出されたネット(重量が20トンにも及ぶ)を船上へ引き上げるには大掛かりな機械を必要とする。さらにネットを海岸へ移動させた後でネットを巻き戻し、物理的にクリーニングした後に再び巻き上げて元の場所に再設置するには大変な労力を要する。またダイバーを活用した設置場所におけるクリーニングでは関与する作業員への事故のリスクが高い。ダイバーは高圧ジェット水流を使用してネット表面から海中成長物を吹き飛ばすために海中作業を余儀なくされる。ダイバーの活用は、ネットを海中から物理的に引き出す作業を軽減するが、4人のダイバーが平均で1日当たり2500平方メートル(作業が相対的に楽なネット底部と側部のみ)のクリーニングを毎日実行することは人件費の観点で問題があり、作業の終了までに長時間を要するために効率的な対処法とは言えない。ネットから海中成長物を吹き飛ばすためにダイバーを活用する場合の別の問題は、吹き飛ばした藻類や他の海中有機物が魚の養殖ケージ内を漂い、水質を低下させ、ケージ内の魚類にストレスを与えることである。一方で、ダイバーを利用する場合にはバキューム(吸引)クリーニングヘッドを利用することもできる。これで塗布された付着防止剤の有効期間が延びる。なぜなら吹き飛ばしてクリーニングする場合ほど、ネットからコーティングは除去されず、海中成長物および汚濁物は養殖ケージ内に浮遊する量よりも多く吸引装置でケージから取り除かれるからである。さらにダイバーによる吸引作業は吹き飛ばし作業よりも作業効率が高く、4人のダイバーで1日に約3500平方メートルのクリーニングを達成することができる。
【0006】
いずれにしろ海中ネットのクリーニングにダイバーを利用することは人件費が高くつき、作業効率が悪く、しかも危険のリスクが高い。またダイバーは水中に長時間滞在し、ネットに対して吸引ホースと吸引ヘッドを頻繁に何度も動かたすめに腕や肩の反復的な動作を必要とする。潜水中の減圧症(潜水病)の可能性は疲労によって大きくなり、ネットクリーニングを高リスクの潜水活動としている。
【0007】
同時的に2人のダイバーが水中で作業し、別の2人が水面上で作業しなければならないため、潜水は本質的に非効率的な作業形態である。さらに潜水は高度な専門技術であるため必然的に高経費となり、他の作業員の賃金よりも高いのが普通である。さらに各養殖現場には沈められたネットのクリーニング以外の目的で潜水作業するための潜水員も必要である。したがって、汚濁物を常に堆積させないようにするには、1日2つのネットをクリーニングすることが必要だが、それに必要な時間を各潜水員は確保することができない。従って大抵の養殖現場では上述のように妥協的で不充分なクリーニング手法で対処しており、その結果としてネットは汚濁状態を脱することができないことになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
よって、本発明の1つの目的は、上記問題を解決する改良された海中ネットのためのネットクリーナーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の1実施態様によれば、水中ネットの表面をスムーズにスライドするように設計されている滑走シャーシと、ネットクリーナーに浮力を提供するために滑走シャーシに取り付けられた浮力手段と、ネットと協調し、ネットクリーナーをネット表面で操作するように設計されている駆動手段と、ネットクリーナーをネット面にまで推進して接触させ、その接触状態を保つように設計されている推進手段と、ネットの表面から海中付着物を含んだ汚濁物を除去するように設計されているクリーニング手段とを含んだ現場対応型の海中ネットクリーナーが提供される。
【0010】
好適にはこの滑走シャーシは管材で形成されている全体的に平坦な方形状であり、ネットへの引っ掛かりを防止するために底面はなめらかな形状になっている。
【0011】
滑走シャーシは、ネットクリーナーの構成要素全体を略立方形態内に搭載できるように下方の滑走シャーシから延び上がっているシャーシケージ(籠体)を含む。最も好適には滑走シャーシはステンレス鋼管で製造されている。
【0012】
好適には駆動手段は、滑走シャーシの両側に配置され、実質的にシャーシケージ内である引込位置と、滑走シャーシの底面から下方に延伸した延出位置との間で旋回運動するトレーラアームに取り付けられた1対の歯付きスプロケットを含む。
【0013】
好適にはこれら歯付きスプロケットは油圧手段によって回転駆動され、それぞれ独立した速度で前後いずれの方向にも回転できる。好適にはスプロケットは独立して駆動され、前方回転、後方回転および回動が自在である。
【0014】
好適にはトレーラアームは滑走シャーシの前方で旋回し、それらトレーラアームを自動的に降下させる。すなわち下方のネットの網目内にスプロケットの歯を進入させ、ネットの網面と係合させて常に牽引力を維持させる。
【0015】
好適には浮力手段はシャーシケージ内の両側に配置された2体の浮力タンクを含む。
【0016】
好適にはクリーニング手段はネットの表面から水と汚濁物を共に吸引する吸引手段である。このクリーニング手段はネットに高圧水流を吹き付けるように設計された複数の高圧ジェット水流噴出口を含むことができる。
【0017】
好適には浮力はネットクリーナーの浮遊性と操作性を容易にする浮力を提供する。最も好適には浮力はネットクリーニング装置の水中での重量よりも約10kg軽い浮力を提供するように設定されている。
【0018】
このネットクリーナーは前方方向のビデオカメラおよび後方方向のビデオカメラを含むことができる。
【0019】
好適にはこれらビデオカメラはレンズの自動クリーニング手段を含む。この自動クリーニング手段は除去された汚濁物の再沈着を防止するためにレンズおよびその周辺に向けられた水流発生口を含む。
【0020】
好適にはこの水流発生口は推進手段と一体化されている。
【0021】
好適には推進手段は滑走シャーシを通過するように水流を方向付ける油圧式横断駆動プロペラを含む。
【0022】
以下では、図1から図11にかけて図示する本発明の好適実施例を利用して本発明が詳細に説明されている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明のネットクリーナーの上方斜視図である。
【図2】本発明のネットクリーナーの下方斜視図である。
【図3】本発明のネットクリーナーの平面図である。
【図4】本発明のネットクリーナーの底面図である。
【図5】本発明のネットクリーナーの側面図である。
【図5a】吸引スロットを示す詳細図である。
【図6】本発明のネットクリーナーの正面図である。
【図7】本発明のネットクリーナーのトレーラアームおよび駆動手段を示す斜視図である。
【図8】トレーラアームおよび駆動手段の分解図である。
【図9】高圧ジェット水流噴出口を採用した本発明のネットクリーナーの下方斜視図である。
【図10a】高圧ジェット水流噴出口を示す詳細図である。
【図10b】高圧ジェット水流噴出口を示す詳細図である。
【図11】高圧ジェット水流噴出口を示す詳細図である。
【符号の説明】
【0024】
1.滑走シャーシ
2.水中養殖ネット
3.浮力手段
4.駆動手段(スプロケット)
5.推進手段
6.クリーニング手段
7.吸引導管
9.シャーシケージ
10.スプロケットの歯
11.トレーラアーム
12.旋回部
13.ビデオカメラ
14.照明装置
15.長形管体
16.シャーシ湾曲部
17.下面滑走部
18.後方吸引スロット
19.前方吸引スロット
20.横断導管
21.中央搭載体
22.真空提供部
23.サーボモーター
24.ガスストラット
25.高圧ジェット水流噴出口
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は水中に沈められた養殖ネット等のネットに毎日堆積する汚濁物並びに漂積物を除去すべく、水中ネットをクリーニングして保守するために水中で使用するように設計された水中で作動する吸引式のネットクリーニング装置の形態で提供される。添付図面で図示するごとく、本発明のネットクリーナーは、略正方形で平坦なシャーシを提供するように、シャーシ湾曲部16で結合されている長形管体15で形成された方形(長方形を含む)あるいは正方形の滑走シャーシ1を含む。
【0026】
この滑走シャーシ1は、ネットクリーナーの構成要素が搭載される基礎部を形成し、さらにネットクリーナーの構成要素を内部に搭載して保護する略立方構造体を提供するシャーシケージ9が取り付けられている。
【0027】
滑走シャーシ1は、ステンレス鋼管で作成されており、クリーニング作業中に作業対象のネット2に絡むことなくネット表面上を自由に滑走してスライドできるように滑走シャーシの下部に丸みを帯びた滑らかな下方滑走部17を含んでいる。
【0028】
ネットクリーナーにはシャーシケージ9の内部で滑走シャーシ1の両側にそれぞれ備え付けられた2体の浮力タンク3が提供されている。これら浮力タンク3は、ネットクリーナーの水中での垂直移動に最小限のエネルギーで最大限の制御ができるように、最適な浮力を提供する。
【0029】
ネットクリーナーには滑走シャーシの内部に取り付けられた2つの歯付きスプロケット4の形態である駆動手段4が提供されている。この駆動手段4はシャーシの前部の旋回部12で旋回するトレーラアーム11によって滑走シャーシ1に対して自在に移動し、ネットクリーナーを操作する。このように、歯付きスプロケット4と、スプロケット4に提供されている歯10の位置を調節させることができるので、ネットクリーナーをネットとの係合作用によってネットの不規則な形状を滑らかに乗り越えて移動させる。トレーラアーム11の旋回部12は滑走シャーシ1の前側に位置しており、ネットクリーナーがネット上を移動する際にネットの網目がスプロケット4の歯10と係合することでネットに係合し、ネットクリーナーを前方移動させる。
【0030】
好適にはトレーラアームは旋回して、スプロケットの歯が約75ミリだけシャーシケージから飛び出すようにスプロケットをシャーシケージ内に引き入れ、ネットとの継続的な係合を提供する。
【0031】
本発明のネットクリーナーには中央に取り付けられたプロペラ5の形態である推進手段5がさらに提供されている。この推進手段5は作業中にネットクリーナーが水中ネット2に対して緩やかに保持されるようにネットクリーナーに対して適当な推力を提供している。
【0032】
好適にはこれら駆動手段と推進手段は油圧駆動式であり、遠隔操作を容易にし、そして余りメンテナンスする必要がない動力源を提供している。
【0033】
本発明のネットクリーニング装置のクリーニング機能は、前方横断吸引スロット18および後方横断吸引スロット19を利用した真空吸引作用によって提供される。これら前方吸引スロットと後方吸引スロットは滑走シャーシ1の前方長形管体15と後方長形管体15とにそれぞれ形成されている。滑走シャーシ1の管体システムは吸引手段のための吸引導管として機能する。中央の均等の真空提供部22を提供するように、滑走シャーシを架橋し、中央搭載体21を含んだ横断導管20によって、真空が滑走シャーシから導かれる。真空ホースが真空提供部22に接続され、滑走シャーシ全体に真空吸引を作用させ、前方吸引スロットおよび後方吸引スロットに吸引作用を伝達し、本発明のネットクリーナーがネット表面を移動する際にネットクリーナーをネット2へ吸着させる。
【0034】
本発明のネットクリーナーは水上の船から遠隔操作されるものであり、駆動手段および推進手段に動力を提供して制御する真空ホースと油圧ホースが結合されて船上から接続される。ネットクリーナーの方向と移動をモニターするためにネットクリーナーにはビデオカメラ13が設置されている。ビデオカメラ13は滑走シャーシの前方と後方に取り付けられており、船上操作員にネットクリーナーとネットとの関係を視覚的にモニターさせる。これらビデオカメラ13には推進手段5を介して水流が提供されており、汚濁物がレンズ環境に沈積してビデオカメラが操作不能にならないように、水流が両カメラのレンズおよびその周辺に向けて放出され、ネットから放出された汚濁物を除去している。さらにネットクリーナーには前方と後方に照明装置14が提供されており、ネットとネットクリーナーの現状確認のために十分な照明が提供され、ネットクリーナーの操作と駆動を補助している。
【0035】
使用に際して、本発明のネットクリーニング装置は滑走シャーシの実効幅である1000ミリ程度の幅にて水中のネットをクリーニングする高効率的で経済的な遠隔クリーニングを提供する。このネットクリーナーの特定の大きさ及び寸法は必要に応じて変更できる。本発明のネットクリーナーはバージ船または他の浮遊手段によって作業現場へ運搬でき、クリーニングが必要なネットの設置場所に到達すると、本発明のネットクリーナーはバージ船から慎重に持ち上げられ、プロペラが始動されるまで吊り下げられた状態に保たれ、その後にネットクリーニング装置とネットとが係合される。浮力タンクを利用することでネットクリーニング装置は十分に制御された状態で、最適な深度にまでネットクリーナーを水中に沈める。ネットクリーナーが適した水中位置に配置され、ネット2の表面上に設置された滑走シャーシが最適な方向へ向けられると、推進手段5の始動によりネットクリーナーはネット表面に密着して保持され、真空吸引作用を開始させることでネット越しに水を前方吸引スロット内及び/又は後方吸引スロット内に吸引する。ネット越しでの水の吸引プロセスはネットに付着した藻類および他の汚濁物をネットから引き剥がし、横断導管20を横断する滑走シャーシの内部配管システムを通じた真空吸引システムにより吸引し、真空ホース内に引き込む。真空ホースの排出口は船上の操作員によって操作されており、藻類汚濁物を水から分離させ、残った水はバージ船の近辺で排水される。
【0036】
さらに、及び/又はネットクリーニング装置の吸引機能とは別に、クリーニング作業を助けるように、及び/又は漂積物を剥がして除去するのを助ける汚濁物付着防止剤がコーティングされていないネットのために使用できるよう、本発明のネットクリーニング装置には一連の高圧ジェット水流噴射口25が提供される。それら高圧ジェット水流噴射口25を有する高圧ジェット水流噴射装置は、下方のクリーニング対象のネットに向けて高圧ジェット水流が噴射されるよう、好適には滑走シャーシに提供される。図9、図10a、図10bおよび図11で図示するように、最も好適には高圧ジェット水流噴出口25は滑走シャーシの前方部と後方部に提供される。それら噴出口25は滑走シャーシの前方部および後方部と平行な位置関係で、外側滑走シャーシのフレーム及び/又は吸引スロットの全幅にわたって提供されている。前方の高圧ジェット水流噴出口および後方の高圧ジェット水流噴出口は、好ましくはクリーニング装置の吸引機能の後にジェット水流機能が実行されるように、それぞれ独立して操作が可能である。すなわちネットクリーニング装置が前方に移動しているとき、高圧ジェット水流が後方の噴射バー部で噴射され、90%程の漂積物をネットから除去し、さらにネットクリーニング装置の真空吸引作用によってネット全体から完全に除去し、ネット上に残留する漂積物を全て高圧ジェット水流により除去する。同様に、ネットクリーニング装置が逆方向に移動している場合には、高圧ジェット水流は前方の噴射バー部で噴射され、漂積物の大部分はネットクリーニング装置の真空吸引機能によって除去され、残留する漂積物は高圧ジェット水流によって除去される。好適には噴射バー部はネットの網目の上方で高さが調節可能であり、その噴射角度もネットに対して調節が可能である。所望の噴射形状となるように様々なタイプのノズルが使用できる。
【0037】
本発明のネットクリーナーは駆動手段によって操作され、移動される。ここでは2つの側部に配置されたスプロケットが別々のサーボモーターによって独立的に駆動され、両方のスプロケットの前方移動によりトレーラアームは自動的に下降し、あるいは滑走シャーシの平面を通過移動してネットとスプロケットとを係合させる。スプロケットの歯10はネットの網目と係合するような大きさ及び形状にされている。すなわちスプロケットの作用により滑走シャーシとネットクリーナー全体をネット2の表面上で移動させ、真空吸引をネット全体に徐々に着実に適用する。歯付きスプロケットの個別の制御によってネットクリーナーを前方、後方あるいは左右に自在に移動させ、操作員にネットクリーナーの完全な操作を可能にさせる。ネットへの損傷を最小限に留めるため、および設置時並びに使用時に歯が損傷したときにネットの網目部分への損傷を最小限に留めるべく、好適には歯付きスプロケット4はUHDポリエチレンプラスチック製とする。歯付きスプロケットは旋回するトレーラアーム11に取り付けられている。トレーラアーム11は滑走シャーシの基部面の下方に約500ミリ降下するように設計されている。この係合範囲により、駆動手段がネットクリーナーに作用して基部に対するネットの角度を確実に変動させる。ネットクリーナーの前方に旋回部を取り付け、さらにスプロケット底部の歯よりも高い位置に旋回部を取り付けることで、トレーラアームがネットの網目内に引き入れられた状態でスプロケットが前方回転し、継続的な牽引力を確実に提供する。トレーラアームにはガスストラット24が提供され、継続的な圧力をネット方向に加える。
【0038】
本発明の特に好適な実施態様は特定の形態であり、15ミリから25ミリのマルチフィラメントナイロンの網目で使用できるような大きさにされているが、なめらかなPVCタイプのプラスチックで仕上げられた約50ミリまでの網目のネットを含む幅広いサイズのネットに対して利用できるように駆動スプロケットの大きさを決めて設計することができる。
【0039】
最も好適には浮力タンクはネットクリーナーの重心の真上に取り付けられており、ネットクリーナーが自然に直立するようにしている。好適には浮力タンクはネットクリーナー自体の水中において重量よりも約10kg少なくなるように設計されており、ネットクリーナーが水中のネットの側壁を上昇する際のネットに対する負荷や圧力の大部分を軽減している。
【0040】
好適にはビデオカメラはネットクリーナーの前方と後方に110°までの広角視野を提供することで作業員に十分な視覚情報を提供し、ネットクリーナーの視覚的な制御を可能にしている。ネットクリーニング装置のビデオカメラ機能は明確で信頼できる検査機能を提供することでネットクリーニング装置の完全な水中ネット検査の補助を行う。
【0041】
本発明は特に、柔軟(非金属)材料製の変形自在なネットに対して使用でき、ダイバーを利用することなく水面から1人の作業員で操作できる新規な現場対応型の海中ネットクリーナーを提供する。本発明のネットクリーナーは1日に6000平方メートル以上の範囲を作業することができ、大幅に改善されたネットクリーニングの速度を提供することができる。
【0042】
本発明のネットクリーナーは、本来的にはさらに積極的なクリーニングを必要とする汚濁物付着防止が図られていないネットのクリーニングおよびメンテナンスを可能にする。また本発明のネットクリーナーには、剥ぎ取られた廃物および漂積物の吸引のための真空を利用した活発なクリーニング活動を可能にする補助ブラシ並びにジェット水流または加圧水をネットに対して供給する水ホース等々が提供される。
【0043】
専門家であれば理解しようが、以上で解説した本発明の数々の実施態様によるネットクリーニング装置には、本発明の範囲を逸脱せずに多数のバリエーション及び/又は改良が可能である。従って、それら実施態様は本発明を説明する目的でのみ提供されており、本発明の限定は意図されていない。
【技術分野】
【0001】
本発明は海中ネットの設置場所におけるクリーニングに関し、特に、鮭養殖産業等で使用される水中ケージ(籠)を形成する水中ネットから藻類および汚濁物を遠隔操作でクリーニングして除去するように設計されているネットクリーニング装置に関する。
【0002】
本願は2008年10月10日出願のオーストラリア国仮特許願2008905261の優先権を主張する。
【背景技術】
【0003】
水中に沈められた水産物養殖ネットは海中で付着する藻類並びに他の汚濁物を成長させる。やがてそれらはネットを通過する水の流れを完全に阻止するようになる。汚濁物の堆積速度を遅らせるために汚濁物付着防止塗料をネットに塗布し、あるいは他の付着防止策がネットに対して施されている。しかしながら今日の汚濁物付着防止策はそのような水中ネットを汚濁させる水中成長物の堆積を完全には阻止できず、水中ネットのクリーニングは常に必要とされている。
【0004】
沈められた水中養殖(栽培)ネットをクリーニングするため、これまでにいくつかの方策が試行されてきた。その1つは設置場所の水域からネットを引き上げ、海岸に引き上げて物理的にクリーニングするものであった。あるいはネットを沈めた設置場所において、ネットに付着している海中成長物を吹き飛ばして除去するようにネットに高圧ジェット水流を吹き付ける作業をするダイバーを雇うことであった。
【0005】
ネットをクリーニングする前述の方法は不十分な点が大きいものであった。まず、ネットを水中から引き出し、引き出されたネット(重量が20トンにも及ぶ)を船上へ引き上げるには大掛かりな機械を必要とする。さらにネットを海岸へ移動させた後でネットを巻き戻し、物理的にクリーニングした後に再び巻き上げて元の場所に再設置するには大変な労力を要する。またダイバーを活用した設置場所におけるクリーニングでは関与する作業員への事故のリスクが高い。ダイバーは高圧ジェット水流を使用してネット表面から海中成長物を吹き飛ばすために海中作業を余儀なくされる。ダイバーの活用は、ネットを海中から物理的に引き出す作業を軽減するが、4人のダイバーが平均で1日当たり2500平方メートル(作業が相対的に楽なネット底部と側部のみ)のクリーニングを毎日実行することは人件費の観点で問題があり、作業の終了までに長時間を要するために効率的な対処法とは言えない。ネットから海中成長物を吹き飛ばすためにダイバーを活用する場合の別の問題は、吹き飛ばした藻類や他の海中有機物が魚の養殖ケージ内を漂い、水質を低下させ、ケージ内の魚類にストレスを与えることである。一方で、ダイバーを利用する場合にはバキューム(吸引)クリーニングヘッドを利用することもできる。これで塗布された付着防止剤の有効期間が延びる。なぜなら吹き飛ばしてクリーニングする場合ほど、ネットからコーティングは除去されず、海中成長物および汚濁物は養殖ケージ内に浮遊する量よりも多く吸引装置でケージから取り除かれるからである。さらにダイバーによる吸引作業は吹き飛ばし作業よりも作業効率が高く、4人のダイバーで1日に約3500平方メートルのクリーニングを達成することができる。
【0006】
いずれにしろ海中ネットのクリーニングにダイバーを利用することは人件費が高くつき、作業効率が悪く、しかも危険のリスクが高い。またダイバーは水中に長時間滞在し、ネットに対して吸引ホースと吸引ヘッドを頻繁に何度も動かたすめに腕や肩の反復的な動作を必要とする。潜水中の減圧症(潜水病)の可能性は疲労によって大きくなり、ネットクリーニングを高リスクの潜水活動としている。
【0007】
同時的に2人のダイバーが水中で作業し、別の2人が水面上で作業しなければならないため、潜水は本質的に非効率的な作業形態である。さらに潜水は高度な専門技術であるため必然的に高経費となり、他の作業員の賃金よりも高いのが普通である。さらに各養殖現場には沈められたネットのクリーニング以外の目的で潜水作業するための潜水員も必要である。したがって、汚濁物を常に堆積させないようにするには、1日2つのネットをクリーニングすることが必要だが、それに必要な時間を各潜水員は確保することができない。従って大抵の養殖現場では上述のように妥協的で不充分なクリーニング手法で対処しており、その結果としてネットは汚濁状態を脱することができないことになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
よって、本発明の1つの目的は、上記問題を解決する改良された海中ネットのためのネットクリーナーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の1実施態様によれば、水中ネットの表面をスムーズにスライドするように設計されている滑走シャーシと、ネットクリーナーに浮力を提供するために滑走シャーシに取り付けられた浮力手段と、ネットと協調し、ネットクリーナーをネット表面で操作するように設計されている駆動手段と、ネットクリーナーをネット面にまで推進して接触させ、その接触状態を保つように設計されている推進手段と、ネットの表面から海中付着物を含んだ汚濁物を除去するように設計されているクリーニング手段とを含んだ現場対応型の海中ネットクリーナーが提供される。
【0010】
好適にはこの滑走シャーシは管材で形成されている全体的に平坦な方形状であり、ネットへの引っ掛かりを防止するために底面はなめらかな形状になっている。
【0011】
滑走シャーシは、ネットクリーナーの構成要素全体を略立方形態内に搭載できるように下方の滑走シャーシから延び上がっているシャーシケージ(籠体)を含む。最も好適には滑走シャーシはステンレス鋼管で製造されている。
【0012】
好適には駆動手段は、滑走シャーシの両側に配置され、実質的にシャーシケージ内である引込位置と、滑走シャーシの底面から下方に延伸した延出位置との間で旋回運動するトレーラアームに取り付けられた1対の歯付きスプロケットを含む。
【0013】
好適にはこれら歯付きスプロケットは油圧手段によって回転駆動され、それぞれ独立した速度で前後いずれの方向にも回転できる。好適にはスプロケットは独立して駆動され、前方回転、後方回転および回動が自在である。
【0014】
好適にはトレーラアームは滑走シャーシの前方で旋回し、それらトレーラアームを自動的に降下させる。すなわち下方のネットの網目内にスプロケットの歯を進入させ、ネットの網面と係合させて常に牽引力を維持させる。
【0015】
好適には浮力手段はシャーシケージ内の両側に配置された2体の浮力タンクを含む。
【0016】
好適にはクリーニング手段はネットの表面から水と汚濁物を共に吸引する吸引手段である。このクリーニング手段はネットに高圧水流を吹き付けるように設計された複数の高圧ジェット水流噴出口を含むことができる。
【0017】
好適には浮力はネットクリーナーの浮遊性と操作性を容易にする浮力を提供する。最も好適には浮力はネットクリーニング装置の水中での重量よりも約10kg軽い浮力を提供するように設定されている。
【0018】
このネットクリーナーは前方方向のビデオカメラおよび後方方向のビデオカメラを含むことができる。
【0019】
好適にはこれらビデオカメラはレンズの自動クリーニング手段を含む。この自動クリーニング手段は除去された汚濁物の再沈着を防止するためにレンズおよびその周辺に向けられた水流発生口を含む。
【0020】
好適にはこの水流発生口は推進手段と一体化されている。
【0021】
好適には推進手段は滑走シャーシを通過するように水流を方向付ける油圧式横断駆動プロペラを含む。
【0022】
以下では、図1から図11にかけて図示する本発明の好適実施例を利用して本発明が詳細に説明されている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明のネットクリーナーの上方斜視図である。
【図2】本発明のネットクリーナーの下方斜視図である。
【図3】本発明のネットクリーナーの平面図である。
【図4】本発明のネットクリーナーの底面図である。
【図5】本発明のネットクリーナーの側面図である。
【図5a】吸引スロットを示す詳細図である。
【図6】本発明のネットクリーナーの正面図である。
【図7】本発明のネットクリーナーのトレーラアームおよび駆動手段を示す斜視図である。
【図8】トレーラアームおよび駆動手段の分解図である。
【図9】高圧ジェット水流噴出口を採用した本発明のネットクリーナーの下方斜視図である。
【図10a】高圧ジェット水流噴出口を示す詳細図である。
【図10b】高圧ジェット水流噴出口を示す詳細図である。
【図11】高圧ジェット水流噴出口を示す詳細図である。
【符号の説明】
【0024】
1.滑走シャーシ
2.水中養殖ネット
3.浮力手段
4.駆動手段(スプロケット)
5.推進手段
6.クリーニング手段
7.吸引導管
9.シャーシケージ
10.スプロケットの歯
11.トレーラアーム
12.旋回部
13.ビデオカメラ
14.照明装置
15.長形管体
16.シャーシ湾曲部
17.下面滑走部
18.後方吸引スロット
19.前方吸引スロット
20.横断導管
21.中央搭載体
22.真空提供部
23.サーボモーター
24.ガスストラット
25.高圧ジェット水流噴出口
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は水中に沈められた養殖ネット等のネットに毎日堆積する汚濁物並びに漂積物を除去すべく、水中ネットをクリーニングして保守するために水中で使用するように設計された水中で作動する吸引式のネットクリーニング装置の形態で提供される。添付図面で図示するごとく、本発明のネットクリーナーは、略正方形で平坦なシャーシを提供するように、シャーシ湾曲部16で結合されている長形管体15で形成された方形(長方形を含む)あるいは正方形の滑走シャーシ1を含む。
【0026】
この滑走シャーシ1は、ネットクリーナーの構成要素が搭載される基礎部を形成し、さらにネットクリーナーの構成要素を内部に搭載して保護する略立方構造体を提供するシャーシケージ9が取り付けられている。
【0027】
滑走シャーシ1は、ステンレス鋼管で作成されており、クリーニング作業中に作業対象のネット2に絡むことなくネット表面上を自由に滑走してスライドできるように滑走シャーシの下部に丸みを帯びた滑らかな下方滑走部17を含んでいる。
【0028】
ネットクリーナーにはシャーシケージ9の内部で滑走シャーシ1の両側にそれぞれ備え付けられた2体の浮力タンク3が提供されている。これら浮力タンク3は、ネットクリーナーの水中での垂直移動に最小限のエネルギーで最大限の制御ができるように、最適な浮力を提供する。
【0029】
ネットクリーナーには滑走シャーシの内部に取り付けられた2つの歯付きスプロケット4の形態である駆動手段4が提供されている。この駆動手段4はシャーシの前部の旋回部12で旋回するトレーラアーム11によって滑走シャーシ1に対して自在に移動し、ネットクリーナーを操作する。このように、歯付きスプロケット4と、スプロケット4に提供されている歯10の位置を調節させることができるので、ネットクリーナーをネットとの係合作用によってネットの不規則な形状を滑らかに乗り越えて移動させる。トレーラアーム11の旋回部12は滑走シャーシ1の前側に位置しており、ネットクリーナーがネット上を移動する際にネットの網目がスプロケット4の歯10と係合することでネットに係合し、ネットクリーナーを前方移動させる。
【0030】
好適にはトレーラアームは旋回して、スプロケットの歯が約75ミリだけシャーシケージから飛び出すようにスプロケットをシャーシケージ内に引き入れ、ネットとの継続的な係合を提供する。
【0031】
本発明のネットクリーナーには中央に取り付けられたプロペラ5の形態である推進手段5がさらに提供されている。この推進手段5は作業中にネットクリーナーが水中ネット2に対して緩やかに保持されるようにネットクリーナーに対して適当な推力を提供している。
【0032】
好適にはこれら駆動手段と推進手段は油圧駆動式であり、遠隔操作を容易にし、そして余りメンテナンスする必要がない動力源を提供している。
【0033】
本発明のネットクリーニング装置のクリーニング機能は、前方横断吸引スロット18および後方横断吸引スロット19を利用した真空吸引作用によって提供される。これら前方吸引スロットと後方吸引スロットは滑走シャーシ1の前方長形管体15と後方長形管体15とにそれぞれ形成されている。滑走シャーシ1の管体システムは吸引手段のための吸引導管として機能する。中央の均等の真空提供部22を提供するように、滑走シャーシを架橋し、中央搭載体21を含んだ横断導管20によって、真空が滑走シャーシから導かれる。真空ホースが真空提供部22に接続され、滑走シャーシ全体に真空吸引を作用させ、前方吸引スロットおよび後方吸引スロットに吸引作用を伝達し、本発明のネットクリーナーがネット表面を移動する際にネットクリーナーをネット2へ吸着させる。
【0034】
本発明のネットクリーナーは水上の船から遠隔操作されるものであり、駆動手段および推進手段に動力を提供して制御する真空ホースと油圧ホースが結合されて船上から接続される。ネットクリーナーの方向と移動をモニターするためにネットクリーナーにはビデオカメラ13が設置されている。ビデオカメラ13は滑走シャーシの前方と後方に取り付けられており、船上操作員にネットクリーナーとネットとの関係を視覚的にモニターさせる。これらビデオカメラ13には推進手段5を介して水流が提供されており、汚濁物がレンズ環境に沈積してビデオカメラが操作不能にならないように、水流が両カメラのレンズおよびその周辺に向けて放出され、ネットから放出された汚濁物を除去している。さらにネットクリーナーには前方と後方に照明装置14が提供されており、ネットとネットクリーナーの現状確認のために十分な照明が提供され、ネットクリーナーの操作と駆動を補助している。
【0035】
使用に際して、本発明のネットクリーニング装置は滑走シャーシの実効幅である1000ミリ程度の幅にて水中のネットをクリーニングする高効率的で経済的な遠隔クリーニングを提供する。このネットクリーナーの特定の大きさ及び寸法は必要に応じて変更できる。本発明のネットクリーナーはバージ船または他の浮遊手段によって作業現場へ運搬でき、クリーニングが必要なネットの設置場所に到達すると、本発明のネットクリーナーはバージ船から慎重に持ち上げられ、プロペラが始動されるまで吊り下げられた状態に保たれ、その後にネットクリーニング装置とネットとが係合される。浮力タンクを利用することでネットクリーニング装置は十分に制御された状態で、最適な深度にまでネットクリーナーを水中に沈める。ネットクリーナーが適した水中位置に配置され、ネット2の表面上に設置された滑走シャーシが最適な方向へ向けられると、推進手段5の始動によりネットクリーナーはネット表面に密着して保持され、真空吸引作用を開始させることでネット越しに水を前方吸引スロット内及び/又は後方吸引スロット内に吸引する。ネット越しでの水の吸引プロセスはネットに付着した藻類および他の汚濁物をネットから引き剥がし、横断導管20を横断する滑走シャーシの内部配管システムを通じた真空吸引システムにより吸引し、真空ホース内に引き込む。真空ホースの排出口は船上の操作員によって操作されており、藻類汚濁物を水から分離させ、残った水はバージ船の近辺で排水される。
【0036】
さらに、及び/又はネットクリーニング装置の吸引機能とは別に、クリーニング作業を助けるように、及び/又は漂積物を剥がして除去するのを助ける汚濁物付着防止剤がコーティングされていないネットのために使用できるよう、本発明のネットクリーニング装置には一連の高圧ジェット水流噴射口25が提供される。それら高圧ジェット水流噴射口25を有する高圧ジェット水流噴射装置は、下方のクリーニング対象のネットに向けて高圧ジェット水流が噴射されるよう、好適には滑走シャーシに提供される。図9、図10a、図10bおよび図11で図示するように、最も好適には高圧ジェット水流噴出口25は滑走シャーシの前方部と後方部に提供される。それら噴出口25は滑走シャーシの前方部および後方部と平行な位置関係で、外側滑走シャーシのフレーム及び/又は吸引スロットの全幅にわたって提供されている。前方の高圧ジェット水流噴出口および後方の高圧ジェット水流噴出口は、好ましくはクリーニング装置の吸引機能の後にジェット水流機能が実行されるように、それぞれ独立して操作が可能である。すなわちネットクリーニング装置が前方に移動しているとき、高圧ジェット水流が後方の噴射バー部で噴射され、90%程の漂積物をネットから除去し、さらにネットクリーニング装置の真空吸引作用によってネット全体から完全に除去し、ネット上に残留する漂積物を全て高圧ジェット水流により除去する。同様に、ネットクリーニング装置が逆方向に移動している場合には、高圧ジェット水流は前方の噴射バー部で噴射され、漂積物の大部分はネットクリーニング装置の真空吸引機能によって除去され、残留する漂積物は高圧ジェット水流によって除去される。好適には噴射バー部はネットの網目の上方で高さが調節可能であり、その噴射角度もネットに対して調節が可能である。所望の噴射形状となるように様々なタイプのノズルが使用できる。
【0037】
本発明のネットクリーナーは駆動手段によって操作され、移動される。ここでは2つの側部に配置されたスプロケットが別々のサーボモーターによって独立的に駆動され、両方のスプロケットの前方移動によりトレーラアームは自動的に下降し、あるいは滑走シャーシの平面を通過移動してネットとスプロケットとを係合させる。スプロケットの歯10はネットの網目と係合するような大きさ及び形状にされている。すなわちスプロケットの作用により滑走シャーシとネットクリーナー全体をネット2の表面上で移動させ、真空吸引をネット全体に徐々に着実に適用する。歯付きスプロケットの個別の制御によってネットクリーナーを前方、後方あるいは左右に自在に移動させ、操作員にネットクリーナーの完全な操作を可能にさせる。ネットへの損傷を最小限に留めるため、および設置時並びに使用時に歯が損傷したときにネットの網目部分への損傷を最小限に留めるべく、好適には歯付きスプロケット4はUHDポリエチレンプラスチック製とする。歯付きスプロケットは旋回するトレーラアーム11に取り付けられている。トレーラアーム11は滑走シャーシの基部面の下方に約500ミリ降下するように設計されている。この係合範囲により、駆動手段がネットクリーナーに作用して基部に対するネットの角度を確実に変動させる。ネットクリーナーの前方に旋回部を取り付け、さらにスプロケット底部の歯よりも高い位置に旋回部を取り付けることで、トレーラアームがネットの網目内に引き入れられた状態でスプロケットが前方回転し、継続的な牽引力を確実に提供する。トレーラアームにはガスストラット24が提供され、継続的な圧力をネット方向に加える。
【0038】
本発明の特に好適な実施態様は特定の形態であり、15ミリから25ミリのマルチフィラメントナイロンの網目で使用できるような大きさにされているが、なめらかなPVCタイプのプラスチックで仕上げられた約50ミリまでの網目のネットを含む幅広いサイズのネットに対して利用できるように駆動スプロケットの大きさを決めて設計することができる。
【0039】
最も好適には浮力タンクはネットクリーナーの重心の真上に取り付けられており、ネットクリーナーが自然に直立するようにしている。好適には浮力タンクはネットクリーナー自体の水中において重量よりも約10kg少なくなるように設計されており、ネットクリーナーが水中のネットの側壁を上昇する際のネットに対する負荷や圧力の大部分を軽減している。
【0040】
好適にはビデオカメラはネットクリーナーの前方と後方に110°までの広角視野を提供することで作業員に十分な視覚情報を提供し、ネットクリーナーの視覚的な制御を可能にしている。ネットクリーニング装置のビデオカメラ機能は明確で信頼できる検査機能を提供することでネットクリーニング装置の完全な水中ネット検査の補助を行う。
【0041】
本発明は特に、柔軟(非金属)材料製の変形自在なネットに対して使用でき、ダイバーを利用することなく水面から1人の作業員で操作できる新規な現場対応型の海中ネットクリーナーを提供する。本発明のネットクリーナーは1日に6000平方メートル以上の範囲を作業することができ、大幅に改善されたネットクリーニングの速度を提供することができる。
【0042】
本発明のネットクリーナーは、本来的にはさらに積極的なクリーニングを必要とする汚濁物付着防止が図られていないネットのクリーニングおよびメンテナンスを可能にする。また本発明のネットクリーナーには、剥ぎ取られた廃物および漂積物の吸引のための真空を利用した活発なクリーニング活動を可能にする補助ブラシ並びにジェット水流または加圧水をネットに対して供給する水ホース等々が提供される。
【0043】
専門家であれば理解しようが、以上で解説した本発明の数々の実施態様によるネットクリーニング装置には、本発明の範囲を逸脱せずに多数のバリエーション及び/又は改良が可能である。従って、それら実施態様は本発明を説明する目的でのみ提供されており、本発明の限定は意図されていない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
現場対応型の海中ネットクリーナーであって、
ネット表面を自在に移動する滑走シャーシと、
該ネットクリーナーに浮力を与えるために、前記滑走シャーシに設置された浮力手段と、
前記ネットクリーナーをネット表面と絡めて動作させる駆動手段と、
前記ネットクリーナーをネット表面に押し付けて接触状態を維持させる推進手段と、
ネット表面から海中の汚濁物を除去するクリーニング手段とを
含んで構成されていることを特徴とする海中ネットクリーナー。
【請求項2】
滑走シャーシは、全体的に平坦で、ネットに引っ掛からないように湾曲面を有した管材で構成された方形状の下方滑走部を含んでいることを特徴とする請求項1記載の海中ネットクリーナー。
【請求項3】
滑走シャーシは、下方滑走部に取り付けられたシャーシケージを備えていることを特徴とする請求項1又は2記載の海中ネットクリーナー。
【請求項4】
滑走シャーシは、ステンレス鋼管で形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の海中ネットクリーナー。
【請求項5】
駆動手段は、滑走シャーシの両側にそれぞれ配置された1対の歯付きスプロケットを含んでいることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の海中ネットクリーナー。
【請求項6】
歯付きスプロケットは、シャーシケージ内である引込位置と、下方滑走部の平面を越えて延出する延出位置との間で旋回運動するトレーラアームに、それぞれ取り付けられていることを特徴とする請求項5記載の海中ネットクリーナー。
【請求項7】
トレーラアームは、滑走シャーシの前方部で旋回し、該トレーラアームは下方に移動する際に接触したネットのくぼみに延び入り、ネット面に対して牽引力を維持させることを特徴とする請求項5または6記載の海中ネットクリーナー。
【請求項8】
歯付きスプロケットは、自身の歯をネットの網目と係合させるように間隔を開けて提供された複数の歯を有していることを特徴とする請求項5から7のいずれかに記載の海中ネットクリーナー。
【請求項9】
歯付きスプロケットは、油圧手段によって回転駆動され、それぞれ独立した速度でいずれの方向へも回転できることを特徴とする請求項5から8のいずれかに記載の海中ネットクリーナー。
【請求項10】
歯付きスプロケットは、それぞれ独立的に駆動され、前方運動、後方運動あるいは左右の運動を自在に行うことを特徴とする請求項5から9のいずれかに記載の海中ネットクリーナー。
【請求項11】
クリーニング手段は、ネット越しに水と汚濁物の混合物を吸引する真空吸引作用を提供することを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の海中ネットクリーナー。
【請求項12】
クリーニング手段は、滑走シャーシを通過して導かれ、下方滑走部の底部に形成された吸引スロットを介して発揮される真空吸引作用を提供することを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載の海中ネットクリーナー。
【請求項13】
浮力手段は、滑走シャーシの両側にそれぞれ設置された1対の浮力タンクを含んでいることを特徴とする請求項1から12のいずれかに記載の海中ネットクリーナー。
【請求項14】
浮力手段は、ネットクリーナーの浮遊性及び操作性が容易となるように、調節されていることを特徴とする請求項1から13のいずれかに記載の海中ネットクリーナー。
【請求項15】
浮力手段は、ネットクリーナーの水中での重量より10kg程度少ない浮力を提供することを特徴とする請求項14記載の海中ネットクリーナー。
【請求項16】
前方と後方に設置されたビデオカメラをさらに含んでいることを特徴とする請求項1から15のいずれかに記載の海中ネットクリーナー。
【請求項17】
ポンプを利用したカメラのレンズの自動クリーニング手段をさらに含んでおり、該レンズに対して水流を発生させ、該レンズへの漂積物および汚濁物の付着を防止していることを特徴とする請求項16記載の海中ネットクリーナー。
【請求項18】
水流は推進手段に一体となって提供されることを特徴とする請求項17記載の海中ネットクリーナー。
【請求項19】
推進手段は、滑走シャーシ内に水流を送る油圧式横断駆動プロペラを含んでいることを特徴とする請求項1から18のいずれかに記載の海中ネットクリーナー。
【請求項20】
滑走シャーシの外部あるいは該滑走シャーシの前方及び/又は後方に設置された高圧ジェット水流噴射装置を含んでおり、該高圧ジェット水流噴射装置は前記真空吸引作用とは独立した機能を提供するように設計されていることを特徴とする請求項11から18のいずれかに記載の海中ネットクリーナー。
【請求項21】
添付図面に関して本明細書で解説している請求項1から20のいずれかに記載の海中ネットクリーナー。
【請求項1】
現場対応型の海中ネットクリーナーであって、
ネット表面を自在に移動する滑走シャーシと、
該ネットクリーナーに浮力を与えるために、前記滑走シャーシに設置された浮力手段と、
前記ネットクリーナーをネット表面と絡めて動作させる駆動手段と、
前記ネットクリーナーをネット表面に押し付けて接触状態を維持させる推進手段と、
ネット表面から海中の汚濁物を除去するクリーニング手段とを
含んで構成されていることを特徴とする海中ネットクリーナー。
【請求項2】
滑走シャーシは、全体的に平坦で、ネットに引っ掛からないように湾曲面を有した管材で構成された方形状の下方滑走部を含んでいることを特徴とする請求項1記載の海中ネットクリーナー。
【請求項3】
滑走シャーシは、下方滑走部に取り付けられたシャーシケージを備えていることを特徴とする請求項1又は2記載の海中ネットクリーナー。
【請求項4】
滑走シャーシは、ステンレス鋼管で形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の海中ネットクリーナー。
【請求項5】
駆動手段は、滑走シャーシの両側にそれぞれ配置された1対の歯付きスプロケットを含んでいることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の海中ネットクリーナー。
【請求項6】
歯付きスプロケットは、シャーシケージ内である引込位置と、下方滑走部の平面を越えて延出する延出位置との間で旋回運動するトレーラアームに、それぞれ取り付けられていることを特徴とする請求項5記載の海中ネットクリーナー。
【請求項7】
トレーラアームは、滑走シャーシの前方部で旋回し、該トレーラアームは下方に移動する際に接触したネットのくぼみに延び入り、ネット面に対して牽引力を維持させることを特徴とする請求項5または6記載の海中ネットクリーナー。
【請求項8】
歯付きスプロケットは、自身の歯をネットの網目と係合させるように間隔を開けて提供された複数の歯を有していることを特徴とする請求項5から7のいずれかに記載の海中ネットクリーナー。
【請求項9】
歯付きスプロケットは、油圧手段によって回転駆動され、それぞれ独立した速度でいずれの方向へも回転できることを特徴とする請求項5から8のいずれかに記載の海中ネットクリーナー。
【請求項10】
歯付きスプロケットは、それぞれ独立的に駆動され、前方運動、後方運動あるいは左右の運動を自在に行うことを特徴とする請求項5から9のいずれかに記載の海中ネットクリーナー。
【請求項11】
クリーニング手段は、ネット越しに水と汚濁物の混合物を吸引する真空吸引作用を提供することを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の海中ネットクリーナー。
【請求項12】
クリーニング手段は、滑走シャーシを通過して導かれ、下方滑走部の底部に形成された吸引スロットを介して発揮される真空吸引作用を提供することを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載の海中ネットクリーナー。
【請求項13】
浮力手段は、滑走シャーシの両側にそれぞれ設置された1対の浮力タンクを含んでいることを特徴とする請求項1から12のいずれかに記載の海中ネットクリーナー。
【請求項14】
浮力手段は、ネットクリーナーの浮遊性及び操作性が容易となるように、調節されていることを特徴とする請求項1から13のいずれかに記載の海中ネットクリーナー。
【請求項15】
浮力手段は、ネットクリーナーの水中での重量より10kg程度少ない浮力を提供することを特徴とする請求項14記載の海中ネットクリーナー。
【請求項16】
前方と後方に設置されたビデオカメラをさらに含んでいることを特徴とする請求項1から15のいずれかに記載の海中ネットクリーナー。
【請求項17】
ポンプを利用したカメラのレンズの自動クリーニング手段をさらに含んでおり、該レンズに対して水流を発生させ、該レンズへの漂積物および汚濁物の付着を防止していることを特徴とする請求項16記載の海中ネットクリーナー。
【請求項18】
水流は推進手段に一体となって提供されることを特徴とする請求項17記載の海中ネットクリーナー。
【請求項19】
推進手段は、滑走シャーシ内に水流を送る油圧式横断駆動プロペラを含んでいることを特徴とする請求項1から18のいずれかに記載の海中ネットクリーナー。
【請求項20】
滑走シャーシの外部あるいは該滑走シャーシの前方及び/又は後方に設置された高圧ジェット水流噴射装置を含んでおり、該高圧ジェット水流噴射装置は前記真空吸引作用とは独立した機能を提供するように設計されていることを特徴とする請求項11から18のいずれかに記載の海中ネットクリーナー。
【請求項21】
添付図面に関して本明細書で解説している請求項1から20のいずれかに記載の海中ネットクリーナー。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図5a】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10a】
【図10b】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図5a】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10a】
【図10b】
【図11】
【公表番号】特表2012−504940(P2012−504940A)
【公表日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−530327(P2011−530327)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【国際出願番号】PCT/AU2009/001309
【国際公開番号】WO2010/040171
【国際公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(511089804)ミック ピーティワイ エルティディ (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【国際出願番号】PCT/AU2009/001309
【国際公開番号】WO2010/040171
【国際公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(511089804)ミック ピーティワイ エルティディ (1)
【Fターム(参考)】
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