説明

球体用成形金型の成形装置

【課題】簡易な構造で、成形された球体用成形金型の成形面に形成されたアンダーカットと干渉することなく各中子を迅速に脱型する。
【解決手段】中央部中子3を支持する第1型部10と、側部中子を支持する第2型部20とが接近することにより、中央部中子3と側部中子とが型締めされ、離反することにより型開きするとともに、側部中子が成形されたアンダーカットから脱型される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、球体を成形する金型を製造する成形装置に関し、特に、アンダーカットを有する球体用成形金型を製造するのに好適な成形金型に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明に関連する先行技術文献情報として、例えば、下記の特許文献1が有る。
【特許文献1】特開2002−346003号公報(0030、0032、図10参照)
【0003】
例示した特許文献1に記載の発明は、センター領域を成形する中央の中子と、合わせ目(アンダーカット部分)の外側の外領域を成形する一対の外の中子と、合わせ目の間且つ前記中央の中子の両側領域を成形する一対の側部の中子からなり、これら各中子を適合状に型締めさせることにより、凸形半球状の成形金型を形成するものである。
又、脱型する場合には、前記中央の中子を後退させた後、前記一対の外の中子と一対の側部の中子を、その半径方向に対して内方且つ互いに接近する斜め方向に移動させることによって、成形された金型の成形面に形成されたアンダーカットと干渉することなく各中子を脱型できるようにしたものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例示した特許文献1の前記一対の外の中子と一対の側部の中子を脱型方向へ移動させる構造が、シリンダとピストンロッドからなる中子移動具を、一対の外の中子と一対の側部の中子の計4個の中子に夫々備えており、当該中子移動具を作動させて各中子を移動させ、更に、各中子と中子移動具を支持する第1の移動型と、成形された金型を支持する第2の移動型とを互いに逆方向へ移動させて脱型する構造である。
本発明者は、より簡易な構造で成形された金型の成形面に形成されたアンダーカットと干渉することなく各中子を脱型するという観点から、鋭意研究の結果、本発明にいたったものである。
【0005】
本発明は、簡易な構造で成形された金型の成形面に形成されたアンダーカットと干渉することなく各中子を迅速に脱型することを課題とし、この課題を解決した球体用成形金型の成形装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明が採用した技術的手段は、対面する一対の型部が互いに接触することで型締めされ、離反することで脱型されるものであり、且つ、一方の型部に、アンダーカットを有する球体用成形金型における中央部を成形する中央部中子と、当該中央部中子を囲むように型締めされるとともに、中央部中子方向へ移動してアンダーカットから脱型する少なくとも2個以上の側部中子とを配設した球体用成形金型において、
前記一方の型部は、前記中央部中子を支持する第1型部と、前記側部中子を支持する第2型部とからなり、両型部が接近することにより前記中央部中子と側部中子とが型締めされ、離反することにより型締め解除されるとともに、側部中子が成形されたアンダーカットから脱型されるようにしていることを特徴とする球体用成形金型の成形装置にしたことである。
【0007】
前記少なくとも2個以上の側部中子の形態は、例えば、側部中子を一方向で対面する一対とする形態や、一方向で対面する一対の側部中子と、当該側部中子と交差方向に対面する一対の側部中子の二対とする形態、更には側部中子を3個以上とした形態等が挙げられ、球体用成形金型におけるアンダーカットの形態に対応させて適宜選択すればよい。
【0008】
例えば、軟式の野球ボールを成形する球体用成形金型を成形する成形装置の場合には、前記野球ボールの縫い目に相当する部分にアンダーカットが形成されるため、前記側部中子は、一方向で対面して中央部中子を囲むように嵌合する嵌合凹部が形成された一対の第1の側部中子と、当該第1の側部中子と交差方向に対面して当該第1の側部中子の合わせ面と適合状する合わせ面が形成された一対の第2の側部中子とから構成し、これら各側部中子の合わせ面の縁に沿ってアンダーカット部を形成することが好適である。
この形態の球体用成形金型である場合、中央部中子と側部中子との型締め形態の好ましい形態として、前記中央部中子の側部を型締め位置から先端部まで先細り状に形成するとともに、前記第1の側部中子の嵌合凹部と対向する部位に嵌合突起を先細り状に形成する一方、前記嵌合凹部を前記嵌合突起と適合して嵌合する形状に形成することが好適である。
【0009】
前記両型部が接近することにより前記中央部中子と側部中子とが型締めされ、離反することにより型締め解除されるとともに、側部中子を成形されたアンダーカットから脱型する具体的な形態として、前記第1型部に、型締め状態において側部中子に嵌合する嵌合杆を前記中央部中子方向へ傾斜するように前記側部中子と同数設ける一方、側部中子に前記嵌合杆が嵌合される嵌合孔を嵌合杆の傾斜方向と同方向に傾斜するように設け、当該型締め状態から型締め解除状態に至る動作中に、嵌合杆が嵌合孔に対して、側部中子を中央部中子方向へ移動させる方向の力を加えながら前記嵌合孔から抜け出るようにした形態が挙げられる。
又、他の具体的な形態として、前記第1型部に、前記中央部中子に対して接触する方向及び離反する方向へ揺動可能として前記側部中子と同数設けた連結杆を側部中子に連結し、型締め状態から型締め解除状態に至る動作中に、前記連結杆が側部中子を中央部中子方向へ移動させる方向に揺動する形態が挙げられる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、簡易な構造で、成形された球体用成形金型の成形面に形成されたアンダーカットと干渉することなく各中子を迅速に脱型することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る球体用成形金型の成形装置を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
尚、本形態では、軟式の野球ボールを成形するための金型を成形する球体用成形金型を成形する形態の成形装置を例示し、図面は模式的に示す。
【0012】
本形態の成形装置Aは、凸側の可動型1と凹側の固定型2とからなり、前記可動型1が固定型2に対して接触することで型締めされ、離反することで型開きされるものである。
前記可動型1には、アンダーカットを有する球体用成形金型における中央部を成形する中央部中子3と、当該中央部中子3を囲むように型締めされるとともに、中央部中子3方向へ移動してアンダーカットから脱型する少なくとも4個の側部中子4A,4B,5A,5Bとからなる凸型1Aが内装されている。
又、前記可動型1は、前記中央部中子3を支持する第1型部10と、前記側部中子4A,4B,5A,5Bを支持する第2型部20とから構成されており、当該両型部が接近することにより前記中央部中子3と側部中子4A,4B,5A,5Bとが型締めされ、離反することにより側部中子4A,4B,5A,5Bが成形されたアンダーカットから脱型するようにしている。
【0013】
これら第1型部10と第2型部20とは、両型部間に配設されたスプリングSにより常に離反する方向に付勢されており、第1型部10を型締め方向に移動させると、スプリングSが付勢力に抗して収縮するとともに、第1型部10が第2型部20に接触することで、当該両型部が一体となって型締め方向に移動して固定型2に接触するようにしている。
又、第2型部20には、第1型部10に嵌合して当該第1型部10の脱型方向の移動を規制する移動規制ピン30が嵌合され、第1型部10を脱型する方向に移動させた際には、第1型部10と第2型部20がスプリングSによって離反するが、前記移動規制ピン30によって第1型部10の離反動作が規制された時点で、更に、第1型部10が脱型方向へ移動すると、その移動に伴って第2型部20が脱型方向へ移動するようにしている。
又、前記固定型2は、定位置が保持された不動とするものであり、前記凸型1Aと正対する面に当該凸型1Aに対応する凹型2Aが形成されている。
【0014】
以下、本形態の凸型1Aの構成を具体的に説明する。
尚、以下では、前記側部中子4A,4Bを第1側部中子4A,4Bとし、前記側部中子5A,5Bを第2側部中子5A,5Bとして説明する。
【0015】
前記中央部中子3は、凸型1Aの中心部を構成するものであり、側部を型締め位置から先端部まで先細り状に形成するとともに、後述する第1側部中子4A,4Bの嵌合凹部41と対向する部位に、当該嵌合凹部41と適合する形状とする先細り状の嵌合突起31が形成されている。
前記第1側部中子4A,4Bは、凸型1Aの内側を構成するものであり、前述した嵌合凹部41が前記嵌合突起31と適合して嵌合する形状に形成されている(図1及び図3参照)。
前記第2側部中子5A,5Bは、凸型1Aの外側を構成するものであり、前記第1側部中子4A,4Bの外側に適合して接触する形状に形成されている(図4乃至図6参照)。
前記中央部中子3と第1側部中子4A,4Bと第2側部中子5A,5Bにおける合わせ面Bの縁に沿って、アンダーカット部B1が形成されており、凸型1Aが型締めされた状態において、野球ボールの縫い目に相当する形状が形成される(図7参照)。
尚、凸型1Aの内側及び凸型1Aの外側とは、図7において、第1側部中子4A,4Bと第2側部中子5A,5Bとの合わせ面Bを境にして中央部中子3の左右に位置する第1側部中子4A,4Bが内側、当該内側の上下に位置する第2側部中子5A,5Bが外側である。
【0016】
前記第1側部中子4A,4Bには、第2型部20に形成された移動空間21内にスライド可能に挿入されるスライド板42が一体に設けられている。
前記スライド板42は、前記移動空間21の方向、すなわち、図1乃至図3に示すように、第2型部20の外側から中央部中子3に向けて第1型部10方向へ近づく方向へ傾斜するように形成された移動空間21に沿って中央部中子3方向にスライドすることによって、第1側部中子4A,4Bが成形されたアンダーカットから脱型されるようにしている。
又、前記スライド板42をスライドさせる構造は、前記中央部中子3を境にしてその両側に位置するように第1型部10に支持される2本の嵌合杆43と、前記スライド板42に開孔された嵌合孔44とでなり、型締め状態において前記嵌合杆43が嵌合孔44に嵌合することによって、凸型1Aの型締め状態を保持し、第1型部10が第2型部から離反することによって嵌合杆43が嵌合孔44から抜け出るようにされている。
又、嵌合杆43が嵌合孔44から抜け出る際に、嵌合杆43が嵌合孔44に対して中央部中子3方向へ移動させる力が作用するようにしており、この力によって前記スライド板42が中央部中子3方向へスライドするようにされている。
【0017】
前記のように動作する嵌合杆43と嵌合孔44の具体的な形態を図1乃至図3に基づいて説明すると、嵌合杆43は、前記中央部中子3方向へ傾斜するように設けられ、嵌合孔44は嵌合杆43の傾斜方向と同方向に傾斜するように開孔されている。
【0018】
この構成によれば、型締め状態において嵌合杆43が嵌合孔44に嵌合した際には、スライド板42を中央部中子3方向へスライドさせる力を加えることにより、当該中央部中子3に対する第1側部中子4A,4Bの嵌合状態が保持される。
又、第1型部10のみが脱型方向に移動することで嵌合杆43が嵌合孔44から抜け出るときに、嵌合杆43の先端近くの内側(中央部中子3側)が嵌合孔44の内側(中央部中子3側)の周面を中央部中子3方向へ押すようにしてスライド板42を中央部中子3方向にスライドさせる。
このとき、前記中央部中子3も脱型方向へ移動するため、当該中央部中子3における嵌合突起31と、第1側部中子4A,4Bにおける嵌合凹部41とに隙間22が生じることにより、第1側部中子4A,4Bが前記スライド板42のスライドに伴って移動して、成形されたアンダーカットから脱型される。
すなわち、嵌合杆43と嵌合孔44が傾斜しているため、嵌合杆43の前記先端近くの内側が嵌合孔44の内側の縁部よりも中央部中子3側へ位置するようなずれが生じ、このずれにより、嵌合杆43が嵌合孔4に対して嵌脱する際に、嵌合杆43が嵌合孔44を押すという動作となり、この動作により、型締め状態が保持されるとともに、成形されたアンダーカットからの脱型ができる(図2参照)。
【0019】
符号61は、第2側部中子5A,5Bを支持する押出し部材である(図4乃至図6参照)。
押出し部材61は、第1型部10と対面する押出し板62と、当該押出し板62と固定型2とに亘って架設され、前記押出し板62を型締め方向に移動させる引っ張り部材63とから構成され、この引っ張り部材63の引っ張り力を作用させることにより、第1型部10に対して接近させて前記第2側部中子5A,5Bを型締め方向に動作させるものである。
引っ張り部材61の構造としては、例えば、シリンダ構造やチェーン構造等が例示できる。
【0020】
又、図4乃至図6に示すように、前記第2側部中子5A,5Bには、前記押出し板62に中央部中子3に対して接触する方向及び離反する方向へ揺動可能に設けられた2本の連結杆51が連結されている。
前記連結杆51は、前記中央部中子3を境にしてその両側に位置し、第1型部10に開孔された揺動空間52と、当該揺動空間52と連通するように第2型部20に開孔された揺動空間53に挿通されるとともに、当該揺動空間と連通するように第2型部20に開孔されたスライド空間54にスライド可能に挿入され、その先端部に前記第2側部中子5A,5Bが連結されている。
又、前記スライド空間54は、前記中央部中子3の先細り形状に沿う方向に開孔されている。
【0021】
この第2側部中子5A,5Bにおける型締めに至る動作は、前記スライド空間54に案内されて前記連結杆51が中央部中子3方向へ揺動し、この揺動に伴って第2側部中子5A,5Bを中央部中子3方向へ移動させて、その第2側部中子5A,5Bの合わせ面Bを前記第1側部中子4A,4Bの合わせ面Bに押し付けるように動作し、この押し付け力が型締め状態を保持する。
前記型締め状態から第1型部10を脱型方向に移動させると、中央部中子3が脱型方向に移動する。
この状態から第1型部10を移動させると、移動規制手段30によって第2型部20が田1型部10の移動に伴って脱型方向に移動し、第2側部中子5A,5Bがスライド空間54に案内されて、前記中央部中子3方向に揺動して成形されたアンダーカットから脱型される。
そして、この第2側部中子5A,5Bのアンダーカットからの脱型動作においては、可動型1全体が固定型2から離反する動作であるので、この脱型動作により製品取り出し可能状態になる。
【0022】
以上のように本形態の成形装置Aによれば、可動型1の固定型2から離反させる通常の脱型動作により、第1側部中子4A、4B及び第2側部中子5A,5Bを成形されたアンダーカットから脱型させることができる。
したがって、簡易な構造で、成形された球体用成形金型の成形面に形成されたアンダーカットと干渉することなく各中子を迅速に脱型できる成形装置とすることができる。
【0023】
尚、第1型部10及び第2型部20並びに押出し板62の型締め方向及び型開き方向への移動には、通常ガイド杆等を使用し、これら第1型部10及び第2型部20並びに押出し板62に当該ガイド杆を貫通させてこのガイド杆に案内されて動作させるようにしているが、前記の実施の形態では、ガイド杆については図示及び説明を省略した。
又、本発明は、例示した実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された内容から逸脱することなく、他の構成による実施も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る成形装置の一形態を模式的に示す断面図で第1側部中子側の型締め状態を示す。
【図2】同、要部拡大断面図で脱型状態の中途を示す。
【図3】同、拡大断面図で脱型状態を示す。
【図4】本発明に係る成形装置の一形態を模式的に示す断面図で第2側部中子側の型締め状態を示す。
【図5】同、断面図で脱型状態の中途を示す。
【図6】同、断面図で脱型状態を示す。
【図7】凸型を模式的に示す平面図で、(a)は型締め状態を示し、(b)は分解状態を示す。
【符号の説明】
【0025】
A:成形装置
B:合わせ面
B1:アンダーカット部
S:スプリング
1:可動型
2:固定型
3:中央部中子
10:第1型部
20:第2型部
21:移動空間
30:移動規制ピン
31:嵌合突起
4A,4B:第1側部中子
5A,5B:第2側部中子
41:嵌合凹部
42:スライド板
43:嵌合杆
44:嵌合孔
6:押出し部材
62:押出し板
63:引っ張り部材
51:連結杆
52:揺動空間
53:揺動空間
54:スライド空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対面する一対の型部が互いに接触することで型締めされ、離反することで型開きされるものであり、且つ、一方の型部に、アンダーカットを有する球体用成形金型における中央部を成形する中央部中子と、当該中央部中子を囲むように型締めされるとともに、中央部中子方向へ移動してアンダーカットから脱型する少なくとも2個以上の側部中子とを配設した球体用成形金型において、
前記一方の型部は、前記中央部中子を支持する第1型部と、前記側部中子を支持する第2型部とからなり、両型部が接近することにより前記中央部中子と側部中子とが型締めされ、離反することにより型開きするとともに、側部中子が成形されたアンダーカットから脱型されるようにしていることを特徴とする球体用成形金型の成形装置。
【請求項2】
前記第1型部に、型締め状態において側部中子に嵌合する嵌合杆を前記中央部中子方向へ傾斜するように前記側部中子と同数設ける一方、側部中子に前記嵌合杆が嵌合される嵌合孔を嵌合杆の傾斜方向と同方向に傾斜するように設け、当該型締め状態から型締め解除状態に至る動作中に、嵌合杆が嵌合孔に対して、側部中子を中央部中子方向へ移動させる方向の力を加えながら前記嵌合孔から抜け出るようにしていることを特徴とする請求項1に記載の球体用成形金型の成形装置。
【請求項3】
前記第1型部に、前記中央部中子に対して接触する方向及び離反する方向へ揺動可能として前記側部中子と同数設けた連結杆を側部中子に連結し、型締め状態から型締め解除状態に至る動作中に、前記連結杆が側部中子を中央部中子方向へ移動させる方向に揺動するようにしていることを特徴とする請求項1に記載の球体用成形金型の成形装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2008−30360(P2008−30360A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−207838(P2006−207838)
【出願日】平成18年7月31日(2006.7.31)
【出願人】(506262195)有限会社鈴木軽合金 (1)
【Fターム(参考)】