説明

球状フェライトナノ粒子及びその製造方法

【課題】粒径が30−250nmの範囲にあって、球形を有し、粒径がよく揃ったフェライトナノ粒子を製造するための、新しい製造方法を提供する。
【解決手段】2価鉄イオンと二糖類を含有する水溶液にフェライト微粒子の種結晶を分散させ、この水溶液にNaOHなどのアルカリを添加し、さらにこの水溶液にNaNOなどの酸化剤を添加し、反応させることによって、フェライトナノ粒子を合成する。こうして合成されるフェライトナノ粒子は、粒径が30−250nmの球形を有し、粒径が非常によく揃っており、水中において凝集せず、分散性が良好であり、例えばバイオテクノロシーや医療の分野などの各種の用途の磁性ナノ粒子として適した性質を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、球状フェライトナノ粒子及びその製造方法に関し、特にナノメータサイズの球形を有し、その大きさのよく揃ったフェライト粒子および水溶液中におけるその粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水系の溶液に分散したフェライト微粒子は、さまざまな用途があり、さまざまな分野で広く用いられている。その中でも、バイオテクノロジーや医用の分野への応用が近年著しく発達し、これに伴ってフェライト微粒子に対し、さまざまな高度の要求がなされるようになった。
【0003】
このようなバイオテクノロジーや医用に用いられるフェライト微粒子として、球形を有し、粒径が数10 nmないし数100 nmのオーダーであって、その粒径の分布が狭いもの、即ち粒径のよく揃ったものが強く求められるようになった。
【0004】
粒径分布が数10 nmのオーダーであることにより、生体内のさまざまな部位を通過できるようになる。また粒子が多面体形状の結晶粒子の場合には、結晶面により面の性質が異なることから、生体分子や高分子で表面修飾した場合に、均質に修飾することは必ずしもできないが、球形にすることによって異なる結晶面の性質が平均化されるので、生体分子や高分子の表面修飾を均質に行うことが可能となる。また、フェライト粒子が結晶粒子の場合には、粒子の表面がいくつかの平面で構成されるため、結晶面やその境界の辺による面接着や辺接着が生じ、これによって凝集を生じ易いが、球形の粒子であればこうした凝集の原因がなくなり、粒子同士が解離し易くなるので、水溶液中での粒子の分散性が高められる。
【0005】
通常の生化学物質の操作は水溶液中で行われるので、水溶液中での分散に適したものであることが特に望まれる。このため、粒子形状が球状であることに加えて、粒子の表面の性質が、水溶液中での分散に適したものであることが望まれる。
【0006】
粒子が水溶液中てよく分散するナノ粒子であって、しかもよく揃った球状粒子であれば、その分散液を体内で用いた場合に、粒子の移動が円滑に行なえるという利点が期待できる。
【0007】
このような粒径が数10 nmないし100 nmのオーダーであり、粒子形状が球形であって、粒子径がよく揃っており、しかも水溶液中に容易に分散させることのできるフェライトナノ粒子は、各種のバイオ・医用への応用に適した磁性微粒子として望ましいものである。しかしながら、このような磁性微粒子を製造するための技術は、いまだ開発されるには至っていなかった。
【0008】
これまでに、フェライトナノ粒子を大量に作成しうるさまざまな合成法が開発されている。原材料粉末を調合し焼成した後に機械的に粉砕する粉砕法は、生産性に優れる反面、粒子形状やサイズ分布が不揃いとなる。不活性ガス中で金属を蒸発させ、ガスとの衝突により冷却・凝集させて得られた金属ナノ粒子を低酸素分圧下で酸化し酸化物を合成する金属蒸発酸化法では、球形の粒子が得られるが、粒径を揃えることは困難である。この方法で合成し市販されているナノ粒子として、シーアイ化成のNanoTekRを例示できる。また、原材料溶液をミストとして噴霧し、高温部を通過させることで乾燥・合成を行う噴霧法(特許文献1: 特開2002-25816)では、球形の粒子を合成することはできるが、粒径のばらつきが大きいという課題がある。
【0009】
これに対し、ポリオール法(非特許文献1: B.Y. Lee, et al.,Adv. Funct. Mater. 15 (2005) 503.)や逆ミセル法(非特許文献2: S. Sun and H. Zeng, J. Am. Chem. Soc. 124 (2002) 8204.)など有機溶媒中でフェライトナノ粒子を合成する方法では、球形で、粒径分布の非常に狭いマグネタイトが得られる。しかしながら、この方法では16nm以上の粒径の粒子が得られていないことや、得られた粒子の表面は界面活性剤で覆われているなどの課題がある。粒子表面を覆っている界面活性剤は粒子を有機溶媒中に分散させるものであって疎水性を示し、水溶液中での分散は困難である。また、粒子表面に界面活性剤が存在すると、生体分子やポリマーを粒子表面に固定化することが困難であるという問題もある。
【0010】
各種のバイオ・医用分野への応用を考慮すると、水溶液中に容易に分散させられるフェライト粒子が求められている。このことを勘案すると、フェライト粒子は水溶液中で合成されることが望ましい。
【0011】
水溶液中での球形のフェライト粒子の作製についての先駆的な研究として、非特許文献3及び非特許文献4に記載がある。非特許文献3には、水溶液からフェライトを析出させる方法を利用した水処理プロセスの研究の一環として、ほぼ球形のフェライト微粒子を得た玉浦らの先駆的な研究が記載されている。この非特許文献3では、脱酸素処理をした純水にFeSO4と少量のサッカロースとを加え、pHが9になるまでNaOHを加えて昇温させ、水酸化物を生成させ、これに二酸化炭素を除去した空気を通すことにより、36〜250 nmのサイズの球形を有するフェライト微粒子が生成することが示されている。しかしながら、この方法には、生成されるフェライト微粒子の粒径のばらつきが大きいという問題点があった。本発明者らの追試の結果も、これを裏付けるものであって、球形に近い形状は得られるものの、形の整った球形ではないことや、粒径分布が比較的大きいという結果を得ている。
【0012】
また、非特許文献4には、杉本らによるゲル状の水酸化物から鉄酸化物を生成させた場合の粒子形態についての研究が記載されている。この文献には、ゲル状の水酸化物から鉄酸化物を生成させることによって、30 nmから1.1 μmの径の球形フェライト粒子が得られることが記載されている。しかしながら、この文献に記載された方法では、この文献の図7に示されているように、粒子サイズがμmのオーダーまで成長した粒子では粒径がよく揃っているものの、例えば300 nm未満の粒子サイズの場合には、粒径分布はかなり広いものになっていることが示されている。
【0013】
このようなことから、フェライトナノ粒子を球状にし、水溶液中での分散をよくすることによって、バイオテクノロジーや医療の分野での使用により適した形のフェライトナノ粒子の製造技術がまだ確立されておらず、この技術の確立が強く望まれてきた。
【非特許文献1】B.Y. Lee, J. Lee, C.J. Bae, J.G. Park, H.J. Noh, J.H. Park and T. Hyeon, “Large-Scale Synthesis of Uniform and Crystalline Magnetite Nanoparticles Using Reverse Micelles as Nanoreactors under Reflux Conditions”, Adv. Funct. Mater. 15(3), pp. 503-509, (2005)
【非特許文献2】S. Sun and H. Zeng, “Size-Controlled Synthesis of Magnetite Nanoparticles”, J. Am. Chem. Soc. 124, 8204-8205, (2002)
【非特許文献3】Y.Tamaura, G.S. Chyo and T. Katsura, “The Fe3O4-formation by the "ferrite process" :Oxydation of the reactive Fe(OH)2 suspenssion induced by sucrose”, Water research 13 (1), pp. 21-31 (1979)
【非特許文献4】T. Sugimoto and E.Matuevic, "Formation of Uniform Spherical Magnetite Particles by Crystallization from Ferrous Hydroxide Gels", J. Colloidal and interface Science, 24 (1) pp.227-243 (1980)
【非特許文献5】嶋津、多田、阿部、半田、”種成長法によるフェライトナノ粒子の粒径制御”粉体粉末冶金協会講演概要集 平成18年春季大会 3-51A (2006)
【特許文献1】特開2002−025816号公報
【特許文献2】特開2006−219353号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、こうした技術背景のもとで、粒径が30−250 nmの範囲にあって球形を有し粒径がよく揃ったフェライトナノ粒子を製造するための、これまで未開発であった新しい製造方法を提供することを解決課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の球形フェライトナノ粒子の製造方法は、二糖類とアルカリと酸化剤と微粒子の種結晶と2価鉄イオンを含有した水溶液中でフェライトナノ粒子を成長させる工程を備えた球形フェライトナノ粒子の製造方法である。本発明の球形フェライトナノ粒子の製造方法は、二糖類とアルカリと酸化剤を含有した水溶液に微粒子の種結晶と2価鉄イオンを添加し、フェライト微粒子を成長させる方法であってもよい。
【0016】
また、本発明の球形フェライトナノ粒子の製造方法は、2価鉄イオンと二糖類を含有する水溶液にアルカリを添加し微粒子の種結晶を分散させるアルカリ添加及び種結晶分散工程と、この2価鉄イオンと二糖類を含有しナノ粒子形成のための種粒子を分散しアルカリの添加された水溶液に酸化剤を添加する酸化剤添加工程と、前記酸化剤の添加された水溶液を水の存在下で粒子を成長させる粒子成長工程とを具備したものであってもよい。
【0017】
こうした水溶液を用いたフェライトナノ粒子の製造方法により、30〜250nm程度の直径を有し、球形で粒子の大きさがよく揃い、水中でよく分散するフェライトナノ粒子を合成できるようになった。この製造方法で合成されたフェライトナノ粒子は、水中での粒子間の凝集力が非常に小さく、粒子がいったん沈降しても、撹拌によって容易に水中に再度分散するという際立った性質を有している。この際立った性質を示す理由として、粒子形状が球形であるため、面接着や辺接着による凝集がないことのほか、粒子表面に残留する二糖類の作用により、粒子間の凝集力が弱められていることが考えられる。
【0018】
上記水溶液中の2価鉄イオンは、FeCl2やFeSO4など、2価鉄イオンを有する金属塩を加えることにより供給させることができる。
【0019】
ここに二糖とは、2つの単糖がグリコシド結合した化合物であって、一般的な二糖として、サッカロース(α-D-グルコピラノシル -β-D-フルクトフラノシド)、セロビオース(4-O-(β-D-グルコピラノシル)-D-グルコピラノース)、トレハロース(α-D-グルコピラノシル-α-D-グルコピラノシド)、マルトース(4-O-(α-D-グルコピラノシル)-D-グルコピラノース)およびラクトース(4-O-(β-D-ガラクトピラノシル)-D-グルコピラノース)がある。
【0020】
この球状フェライトナノ粒子の製造方法において、水溶液に3価鉄イオンを含有させてもよい。
【0021】
上記水溶液の二糖類の濃度は、0.1 M以上1.0 M以下であり、この水溶液における2価鉄イオンの濃度と二糖類の濃度の比が0.002以上50以下であることが好ましい。二糖類の濃度がこの範囲にあり、二糖類の濃度がこの範囲より少ないと、粒子形状の丸みが少なくなり、表面に比較的大きな結晶面を有するようになる。このため、糖の濃度は0.2M以上であって、2価鉄イオンの濃度と二糖類の濃度の比が0.004以上であることがより好ましい。他方、二糖類の濃度がこの範囲を超える場合には、粒子形状として球形を示さなくなり、二糖類の濃度がさらに多くなると、フェライト相の形成が見られなくなる。このため、二糖類の濃度は3M以下であって、2価鉄イオンの濃度と二糖類の濃度の比が30以下であることがより好ましい。
【0022】
上記酸化剤として、硝酸、亜硝酸、硝酸塩、及び亜硝酸塩から選ばれる少なくとも1種を好ましく用いることができる。これらの酸化剤は、適度の酸化作用を有することにより、上記工程によるフェライトナノ粒子の合成に適するものである。硝酸塩としては、硝酸ナトリウム及び硝酸カリウムを挙げることができる。また、亜硝酸塩としては、亜硝酸ナトリウム及び亜硝酸カリウムを挙げることができる。
【0023】
本発明の球状フェライトナノ粒子は、上記の製造方法によって得ることができる。
【0024】
本発明の球状フェライトナノ粒子は、個数平均粒径が30nm以上250nm以下であり、該個数平均粒径の−40%以上+40%以下の粒子の比率が95%以上であって、表面が親水性を有するものであってもよい。
【0025】
なお本発明に係る球形フェライトナノ粒子は、真球に近い形状を有することにより、通常の結晶粒子とは異なる顕著な性質を示すナノメータサイズ(30nm〜250nm程度のサイズ)の粒径を有するフェライト粒子を意味するものである。具体的には、フェライトナノ粒子表面に存在する個々の結晶面の最大寸法dと、フェライトナノ粒子の直径Dとの比D/dが5以上であるとして定義することのできるものである。また、フェライトナノ粒子の形状観察は通常、透過型電子顕微鏡像によってなされるので、フェライトナノ粒子の透過型電子顕微鏡像の輪郭の幾何学的な円からのずれの大きさを示す真円度Δr(フェライトナノ粒子の透過型電子顕微鏡像の輪郭を、半径rおよびrの二つの同心円ではさんだとき、この二つの同心円の半径の差:Δr=r−r)の平均半径r=(r+r)/2との比Δr/rの値が0.3以下として、本発明の球形フェライトナノ粒子を定義することもできる。
【0026】
本発明に係る表面修飾フェライトナノ粒子は、上記球形フェライトナノ粒子の表面を、界面活性剤、ヒドロキシル酸、および糖アルコールから選ばれる少なくともいずれか一種で表面修飾したものである。表面修飾することによって水中での分散性を向上させることができる。このような表面修飾フェライトナノ粒子は、表面修飾により、水中での分散性を向上させることができる。
【0027】
本発明の球形フェライトナノ粒子および表面修飾フェライトナノ粒子は、表面をポリスチレン、ポリエチレン、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、およびポリGMAから選ばれる少なくともいずれかのポリマー、シリカ、並びにシランカップリング剤の少なくともいずれかで被覆したコンポジットナノ粒子にし、各種の用途に用いることができる。
【0028】
また、本発明に係る機能性フェライトナノ粒子は、上記フェライトナノ粒子、上記表面修飾フェライトナノ粒子または上記コンポジットフェライトナノ粒子と、このナノ粒子の表面と結合したリンカー分子と、このリンカー分子と結合しかつ被検物質と特異的に結合可能なプローブ分子とを備えたものである。
【0029】
本発明に係る上記機能性フェライトナノ粒子は、薬剤、抗原、抗体、レセプター、ハプテン、酵素、蛋白質、ペプチド、核酸、ホルモン、糖類、病原体および毒素からなる群から選ばれる少なくといずれか一種の物質の認識、分析またはスクリーニングするための担体として用いることができる。
【0030】
また、本発明に係る上記機能性フェライトナノ粒子は、診断剤、細胞標識剤、酵素固定剤および蛋白質精製剤から選ばれる物質のいずれかに用いることができる。
【0031】
また、本発明に係る上記機能性フェライトナノ粒子は、磁気ハイパーサーミアの発熱体、MRIの造影剤または薬剤輸送の担体として用いることができる。
【0032】
また、本発明に係る上記機能性フェライトナノ粒子は、SQUID(超伝導量子干渉素子)、ホールセンサ、またはGMR(巨大磁気抵抗効果)センサなどの各種磁化検出器により磁化を検出する診断法に用いることができる。
【0033】
また、本発明に係る上記機能性フェライトナノ粒子は、クロマトグラフィーに用いることができる。
【0034】
また、本発明に係る上記機能性フェライトナノ粒子は、土壌改質、水質、および大気浄化から選ばれる少なくともいずれかに用いることができる。
【0035】
さらに、本発明に係る上記機能性フェライトナノ粒子は、吸着剤またはセンサーの少なくともいずれかに用いることができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明の球形フェライトナノ粒子の製造方法によれば、得られるフェライトナノ粒子の形状が球形であり、粒子の大きさがよく揃っているので、バイオ・医用への応用はじめ、各種の用途に適した性質が得られるようになった。例えば生体分子や高分子の表面修飾を均質に行うことができ、また、粒子間の面接着や辺接着がなく、粒子同士が解離し易いので、水溶液中での分散性が良好であることがわかった。また微細流路中をスムーズに通過できるため、MEMS、体内注入、磁性流体などの用途に非常に適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
次に図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明することにより、本発明についてのさらなる詳細を述べる。
【0038】
図1〜3は、本発明の一実施形態における球形フェライトナノ粒子の製造工程を示した流れ図である。図1において、まず、工程102にて、十分に酸素を除去した純水に二糖類を溶かす。ここで純水からの酸素の除去には、Nガスを用いたバブリングを用いることができる。次にこの工程104にて、合成するフェライトナノ粒子の原料物質として、この水溶液に例えば塩化第一鉄などを加え、2価の鉄イオンを含有させる。その後、工程106にて、この液に微細な種粒子を加える。種粒子としては、例えば共沈法で合成した8nm前後と、合成するフェライトナノ粒子よりも十分に小さい平均粒径を有する微細なマグネタイトなどの粒子を用いることができる。次に工程108にて、この液のpHを例えば7程度に高めるために、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリを加える。これらの工程102から110までは、室温にて撹拌下で行うことが好ましい。この液のpHは、例えば9程度まで高めてもよい。
【0039】
この後、工程110にて、この液に硝酸ナトリウムなどの酸化剤を加える。次に工程112にて、この液を容器に入れ、粒子成長を行う。温度が低くなると、フェライトナノ粒子の成長速度が遅くなるので、粒子成長温度は4 ℃以上であることが好ましく、室温以上であることがより好ましく、50℃以上であることがさらに好ましい。また、約180℃を超える温度では二糖類が分解することから、粒子成長温度は180℃以下であることが好ましく、150℃以下であることがさらに好ましい。加熱にはオートクレーブを用いることができる。なお、粒子成長温度を100℃以下にすれば、高い水蒸気圧を生じないので合成装置が簡便化できる。この粒子成長処理の後、工程114にて、洗浄と磁気分離を行なって、フェライトナノ粒子116を得る。
【0040】
なお、図2に示したように、図1における種結晶を加える工程106を、水酸化ナトリウムを加える工程110の後にすることもできる。なお、図2では、図1と共通の符号を用いている。
【0041】
さらに図3に示した工程を用いることもできる。図3において、工程302で純水中に糖を溶かし、工程304でアルカリを加え、さらに工程306で酸化剤を加えて得た二糖類とアルカリと酸化剤を含有した水溶液を、工程308で窒素ガスなどの不活性ガスでバブリングすることで脱酸素させる。その後工程310で加熱し、工程312で微粒子の種結晶を添加し、また工程314で2価鉄イオンを添加することにより、工程316で粒子成長を行なって、フェライトナノ粒子を球状に成長させることができる。このとき、窒素ガスを送入し続けることで酸素の混入を防ぎ、密閉容器に溶液を移すことなくフェライトナノ粒子を球状に成長させることができる。こうして粒成長した球状フェライトナノ粒子を、工程318で磁気分離と洗浄を行なって球状フェライトナノ粒子320を得る。このようにして、オートクレーブなどの密閉容器に溶液を移すことなく、フェライトナノ粒子を球状に成長させることができることは、フェライトナノ粒子の製造工程として大きな利点である。本発明に係るフェライトナノ粒子の製造方法に基づき、小規模にフェライトナノ粒子を製作する場合には、例えば三角フラスコに上記水溶液を入れ、フラスコの栓に脱酸素のための不活性ガスを注入する管と、酸化剤の溶液を添加する管と、ガス抜きの孔とを設け、この三角フラスコをホットプレートで加熱するという簡便な方法を用いることができる。本発明に係るフェライトナノ粒子の製造方法は、フェライトナノ粒子を製作する規模が大きくなっても、こうした基本的に簡便な製造方法が応用できるという大きな利点を有している。
【0042】
本発明に係る表面修飾球状フェライトナノ粒子は、球形のフェライトナノ粒子を、界面活性剤、ヒドロキシル酸、糖アルコールなどの分子が溶解した水溶液に入れて攪拌した後、洗浄と磁気回収とを行なうことによって得ることができる。その際に用いる界面活性剤には、脂肪酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルリン酸などが挙げられる。またヒドロキシル酸には、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸などが挙げられる。さらに糖アルコールには、ソルビトール、キシリトールなどが挙げられる。フェライトナノ粒子に表面修飾することで、水中での分散性が向上するため、表面修飾フェライトナノ粒子を水中に分散させると、沈澱が起こりにくいフェライトナノ粒子分散液が得られる。
【0043】
(実施例1)サッカロース添加
二糖類の存在下で種粒子を用い、フェライトナノ粒子を作製した。まず、窒素ガスを用いたバブリングにより、純水から酸素を十分に除去し、二糖類に属する糖としてサッカロースを溶解し、その後塩化第一鉄を溶解した。次に水酸化ナトリウム水溶液、種粒子の順に加え、最後に酸化剤である硝酸ナトリウムを加えた。こうして得られた溶液を耐熱耐圧密閉容器に入れ、水熱法で粒子を成長させた。次に室温に冷却した液に対し、磁石を用い、生成したナノ粒子を磁気分離して回収し、液を除去した後、純水中に分散し、磁気分離によって回収し、再び純水中に分散し、磁気分離によって回収するという操作を繰返してナノ粒子を純水洗浄し、フェライトナノ粒子を得た。
【0044】
ここに、仕込時の純水中の各成分の濃度は以下の通りにし、液量の合計を40 mLにして、水熱処理を90℃で3時間行った。
【0045】
塩化第一鉄(FeCl・4HO:和光純薬) 0.075 M、
水酸化ナトリウム(NaOH:和光純薬) 0.1 M、
硝酸ナトリウム(NaNO:和光純薬) 0.2 M、
種粒子(共沈法で作製のマグネタイト、平均粒径8 nm) 2.7 mg/40 mL
二糖類の糖:サッカロース:(和光純薬) 0.5 M
【0046】
こうして得たフェライトナノ粒子の透過型電子顕微鏡写真を、他の実施例で得られた粒子の透過型電子顕微鏡写真とともに図4に示す。図4のa)がこの実施例のサッカロース添加で得られた粒子の透過型電子顕微鏡写真である。得られた粒子は粒径のよく揃った球形であった。
【0047】
また、得られた粒子のX線回折スペクトルを調べた結果、スピネル相単相の回折線を得た。Feで構成されるスピネル相としては、マグネタイトとマグへマイトおよびそれらの中間体が考えられる。得られた粒子についてメスバウアースペクトルを調べ、さらにサッカロースを加えないで合成したフェライトナノ粒子のメスバウアースペクトルと比較し、本実施例で得られたフェライトナノ粒子は、マグネタイトとマグへマイトからなっており、サッカロースを加えないで合成したフェライトナノ粒子に比べるとFe2+が少なく、マグヘマイトの比率が多くなっていることがわかった。
【0048】
(実施例2)セロビオース添加
セロビオースは、還元二糖であるので、酸化剤の濃度を1.0 Mと多くし、実施例1の組成における二糖類をサッカロースからセロビオースに変え、その添加量を0.25 Mとし、それ以外は実施例1と同じ方法でフェライトナノ粒子の合成を行なった。
【0049】
その結果、種結晶の量が実施例1と同じ場合に得られたフェライトナノ粒子は図4の(b)に示されているように、よく整った球形であり、その粒径は約150 nm±13nmであった。
【0050】
(実施例3)マルトース添加
実施例2の組成における二糖類をセロビオースからマルトースに変え、それ以外は実施例2と同じ方法でフェライトナノ粒子の合成を行なった。
【0051】
実施例1のサッカロース添加の場合と同様に、種粒子の量が2.7 mg/40mL の場合に、マルトース添加の場合は、図4のc)に示すように、実施例1のサッカロース添加の場合よりも粒径が少し小さい約70 nm±7nmの球状のフェライトナノ粒子が得られた。
【0052】
(実施例4)ラクトース添加
実施例2の組成における二糖類をセロビオースからラクトースに変え、それ以外は実施例2と同じ方法でフェライトナノ粒子の合成を行なった。
【0053】
得られた フェライトナノ粒子は、図4の(d)の透過型電子顕微鏡写真に示されているように、粒径が約90 nm±9nmで、整った球形を有し、粒径のばらつきの小さいサイズのよく揃った粒子が得られた。
【0054】
この実施例4で合成したフェライトナノ粒子の透過型電子顕微鏡写真における150個の粒子像を測定し、粒度分布を求めた。結果を表1に示す。この粒子の個数平均粒径55 nmを中心とし、この値に対し±20 nmの範囲に分布が収まっていることがわかる。本発明によれば、このように粒度分布を狭くすることができ、個数平均粒径の-40 %以上+40 %以下の粒子の比率を95 %以上にすることができる。
【表1】

【0055】
この分布は正規分布によく従っていることがわかった。なお、通常の製法で合成した粒子は、正規分布には従わず、対数正規分布に従うことが知られている。
【0056】
(実施例5)トレハロース添加
トレハロースはサッカロースと同じく、非還元二糖であるので、酸化剤の濃度を0.2 Mとし、実施例1の組成における二糖類をサッカロースからトレハロースに変え、それ以外は実施例1と同じ方法でフェライトナノ粒子の合成を行なった。
【0057】
その結果、得られたフェライトナノ粒子は図4の(e)に示されているように、その平均粒径は約50 nm±6nmであった。
【0058】
(実施例6)種粒子量依存性
実施例2における種粒子を2.7mg/40mLから13.5mg/40mLに増し、それ以外は実施例2と同じ方法でフェライトナノ粒子の合成を行なった。その結果、合成されたフェライトナノ粒子の数を多くすることができ、他方で粒径を約50 nm±6nmにまで小さくすることができた。得られた粒子の透過型電子顕微鏡写真を図6に示す。図6において、(a)は種粒子の投入量が2.7mg/40mLの場合、(b)は種粒子の投入量を13.5mg/40mLに増した場合を示す。種粒子の投入量を13.5mg/40mLに増した場合にも種粒子の投入量が2.7mg/40mLの場合と同様に、合成されたフェライトナノ粒子は粒子形状はよく整った球形であり、しかもその大きさがよく揃った状態が維持されている。
【0059】
次に、実施例3に比べ種粒子を2.7mg/40mLから13.5mg/40mLに増し、それ以外は実施例3と同じ方法でフェライトナノ粒子の合成を行なった。その結果、この場合にも合成されたフェライトナノ粒子の数を多くすることができ、他方で粒径を約30 nm±4nmにまで小さくすることができた。得られた粒子の透過型電子顕微鏡写真を図6に示す。この場合にも、得られたフェライトナノ粒子は粒子形状がよく整った球形であり、しかもその大きさのよく揃った状態が維持されていることがわかった。
【0060】
これらの結果から、種粒子の投入量を調整することによって、粒子形状はよく整った球形であり、しかもその大きさがよく揃った状態が生成するフェライトナノ粒子の粒径を制御することができることが示された。
【0061】
(実施例7)二糖類の濃度依存性
実施例1の組成に対し、サッカロースの濃度を0.5 Mから0.75 M、1.0 Mへと高濃度側に変化させた場合に、合成される粒子に及ぼす影響を調べた。
【0062】
その結果、サッカロースの濃度を0.75 Mまで高濃度にした場合には、粒子サイズの増す傾向がみられ、さらにサッカロースの濃度を1.0 Mまで高濃度にした場合には、粒子表面が粗くなる傾向がみられることがわかった。
【0063】
(実施例8)加熱温度および加熱時間依存性
実施例1の組成にて、加熱温度を50 ℃から150 ℃まで、また加熱時間を1時間から24時間まで変化させ、粒子合成に及ぼす影響を調べた。
【0064】
その結果、加熱時間については、いずれの温度の場合も1時間でも24時間の場合でも、粒径や粒子形状にほとんど違いがないことがわかった。従って1時間で反応はすでにほぼ飽和しているものと判断された。
【0065】
また、反応温度については、50 ℃から150 ℃まで、いずれの場合も平均粒径が80 nm〜100 nm程度に成長し、整った球形の粒子が得られることがわかった。
【0066】
(実施例9)3価鉄イオンの添加
実施例1の組成において、この組成に少量の塩化第二鉄を加えて3価の鉄イオンを含有させることによるフェライトナノ粒子合成に及ぼす影響を調べた。
【0067】
その結果、Fe3+/Fe2+=0.1の場合に球形のフェライトナノ粒子が生成できた。なお、Fe3+/Fe2+=0.5 およびFe3+/Fe2+=0.25と3価鉄イオンが多い場合には、生成される粒子の粒径が著しく小さくなった。これは3価鉄イオンの存在によって、核生成が非常に多くなるためと考えられる。
【0068】
(実施例10)
サッカロースと水酸化ナトリウムと硝酸ナトリウムを含有した水溶液を窒素で脱酸素した後、90 ℃に加熱した。水溶液が90 ℃に上昇した後に、種粒子と塩化第一鉄を溶解した水溶液を加えた。90 ℃に保ちながら窒素を送入しつつ攪拌し、粒子を成長させた。3時間後冷却し、磁気回収と純水洗浄を行なった。ここに各成分の濃度は実施例1の場合と同じにした。その結果、粒径が146 nm±11 nmのフェライトナノ粒子を得た。
【0069】
(実施例11)
次に実施例10におけるアルカリの水酸化ナトリウムを水酸化テトラメチルアンモニウムに変えた他は同じ条件にてフェライトナノ粒子を合成した。その結果、粒径が100 nm±15 nmのフェライトナノ粒子を得た。
【0070】
(実施例12)
100 mMのクエン酸ナトリウム水溶液に粒径が約100 nmの球形のフェライトナノ粒子を入れ1時間攪拌し、洗浄と磁気回収を行ない、クエン酸で表面修飾したフェライトナノ粒子を得た。このクエン酸で表面修飾したフェライトナノ粒子を純水に分散し、分散液にすると、この分散液は、3日間沈澱がみられなかった。
【0071】
(比較例1)種粒子を用いない場合
実施例1の組成において、種粒子の添加を0とし、種粒子の添加をせずに、同じプロセスでフェライトナノ粒子の合成を試みた。また、二糖のサッカロースの濃度を0.5 Mから変化させ、フェライトナノ粒子の合成に及ぼす影響を調べた。
【0072】
その結果、種粒子なしの場合には、サッカロースの添加量を0.15 M、0.25 M、0.5Mと増すに従って、得られるフェライトナノ粒子の中に、形状が球状を帯びたものが多く見られるようになることが観察された。しかし、得られた粒子は、形状がさまざまであり、粒径の分布としても大きかった。また、サッカロースの添加量が0.5 Mを超えると、フェライトナノ粒子が生成されなくなることがわかった。
【0073】
(比較例2)単糖類を添加した場合
実施例1の組成において、二糖類のサッカロースの代わりに単糖類のグルコースを用いその濃度を0.25 Mとし、同じ方法でフェライトナノ粒子の合成を行なった。但しグルコースは還元性を持つ糖であることを考慮し、酸化剤の量を1.0 Mと多くした。
【0074】
その結果、グルコースの添加によって得られるフェライトナノ粒子の形状が球状になることがわかった。また、種粒子の量を2.7 mg/40mLから13.5 mg/40mLに増すと、粒子はほとんど成長せず、種粒子のままであった。また、グルコースの濃度を0.25 Mから0.5 Mに増すと粒子の表面が荒れてしまい、整った球形とはならなかった。グルコースが0.5 Mを超えると、グリーンラストが生成され、フェライト粒子は生成されなかった。このように、単糖類のグルコースを共存させた場合には、種粒子を用いて成長させても、粒径のばらつきが大きいとの結果となった。
【0075】
この他の単糖類として、フルクトース、ガラクトース、およびマンノースを添加した場合のフェライトナノ粒子の合成を試みたが、いずれの場合もグリーンラストが生成され、フェライト粒子は生成されなかった。
【0076】
(比較例3)三糖類以上の多糖類を添加した場合
実施例1の組成で、二糖のサッカロースの代わりに分子量が6万〜9万のデキストランを添加したものと、分子量が9万〜21万のデキストランを添加したものの二種類について、フェライトナノ粒子の合成を試みた。
【0077】
その結果、デキストランの共存下でも、球形のフェライトナノ粒子が得られることがわかった。しかしながら、粒径のばらつき度合いが大きかった。また、デキストランの分子量の相違による粒径や粒子形状、粒径のばらつきに大きな相違はみられなかった。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の製造方法によって製造されるフェライトナノ粒子は、粒子形状が球形であり、粒子の大きさがよく揃っているので、粒子表面が平面ではないので、粒子同士が解離し易く、水溶液中での分散性が良好であって、微細流路中もスムーズに通過するため、各種のバイオ・医用への応用のほか、MEMSなどの用途にも適する。従って本発明の球形フェライトナノ粒子製造方法、および本発明の製造方法によって製造される球形フェライトナノ粒子の利用可能性は大きいものと期待される。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の一実施形態における球形フェライトナノ粒子の製造工程を示した流れ図である。
【図2】本発明の他の一実施形態における球形フェライトナノ粒子の製造工程を示した流れ図である。
【図3】本発明のさらに他の一実施形態における球形フェライトナノ粒子の製造工程を示した流れ図である。
【図4】本発明の各実施例における球形フェライトナノ粒子の透過型電子顕微鏡写真である。
【図5】本発明の一実施形態における球形フェライトナノ粒子の磁化測定の結果を示す図である。
【図6】種粒子の投入量が(a)2.7mg/40mLの場合と(b)13.5mg/40mLに増した場合に得られたフェライトナノ粒子の透過型電子顕微鏡写真である。
【符号の説明】
【0080】
102…Nガスを用いたバブリングを行なって十分に酸素を除去した純水に二糖類を溶かす工程、104…球形フェライトナノ粒子の原料物質として2価鉄イオンを液に加える工程、106…微細な種粒子を加える工程、108…アルカリを加える工程、110…酸化剤を加える工程、112…容器に入れ反応させる工程、114…洗浄と磁気分離を行なう工程、116…フェライトナノ粒子、302…純水中に糖を溶かす工程、304…アルカリを加える工程、306…酸化剤を加える工程、308…脱酸素処理工程、310…加熱工程、312…種結晶を加える工程、314…2価鉄イオンを加える工程、316…粒子成長行なう工程、318…磁気分離と洗浄を行なう工程、320…球状フェライトナノ粒子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二糖類とアルカリと酸化剤と微粒子の種結晶と2価鉄イオンを含有した水溶液中でフェライトナノ粒子を成長させる工程を備えた球形フェライトナノ粒子の製造方法。
【請求項2】
二糖類とアルカリと酸化剤を含有した水溶液に微粒子の種結晶と2価鉄イオンを添加し、フェライトナノ粒子を成長させる工程を備えた請求項1に記載の球状フェライトナノ粒子の製造方法。
【請求項3】
2価鉄イオンと二糖類を含有する水溶液にアルカリを添加し微粒子の種結晶を分散させるアルカリ添加及び種結晶分散工程と、
前記2価鉄イオンと二糖類を含有し、ナノ粒子形成のための種粒子を分散しアルカリの添加された水溶液に酸化剤を添加する酸化剤添加工程と、
前記酸化剤の添加された水溶液を水の存在下で成長させる粒子成長工程と
を具備した請求項1に記載の球状フェライトナノ粒子の製造方法。
【請求項4】
前記水溶液に3価鉄イオンを含有させる請求項1に記載の球状フェライトナノ粒子の製造方法。
【請求項5】
前記水溶液における二糖類の濃度が0.1 M以上5 M以下であり、前記水溶液における2価鉄イオンの濃度と二糖類の濃度の比が0.002以上50以下である請求項1に記載の球状フェライトナノ粒子の製造方法。
【請求項6】
前記酸化剤が、硝酸、亜硝酸、硝酸塩、及び亜硝酸塩から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の球状フェライトナノ粒子の製造方法。
【請求項7】
二糖類とアルカリと酸化剤と微粒子の種結晶と2価鉄イオンを含有した水溶液中で成長させることによって製造しうる球形フェライトナノ粒子。
【請求項8】
二糖類とアルカリと酸化剤を含有した水溶液に、微粒子の種結晶と2価鉄イオンを添加することによって製造しうる請求項7の球形フェライトナノ粒子。
【請求項9】
2価鉄イオンと二糖類を含有する水溶液にアルカリを添加し、微粒子の種結晶を分散させ、酸化剤を添加することによって製造しうる請求項7に記載の球状フェライトナノ粒子。
【請求項10】
個数平均粒径が30 nm以上250 nm以下であり、該個数平均粒径の−40%以上、+40%以下の粒子の比率が95%以上であって、表面が親水性を有する請求項7に記載の球状フェライトナノ粒子。
【請求項11】
請求項7に記載の球形フェライトナノ粒子の表面を、界面活性剤、ヒドロキシル酸および糖アルコールから選ばれる少なくともいずれか一種で表面修飾した表面修飾フェライトナノ粒子。
【請求項12】
請求項7に記載の球形フェライトナノ粒子または請求項11に記載の表面修飾フェライトナノ粒子いずれかの表面を、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリエチレングリコール(PEG)およびポリグリシジルメタクリレート(GMA)から選ばれる少なくともいずれかのポリマー、シリカ、並びにシランカップリング剤の少なくともいずれかで被覆したコンポジットフェライトナノ粒子。
【請求項13】
請求項7に記載の球形フェライトナノ粒子、請求項11に記載の表面修飾フェライトナノ粒子または請求項12に記載のコンポジットフェライトナノ粒子いずれかと、前記ナノ粒子の表面と結合したリンカー分子と、前記リンカー分子と結合しかつ被検物質と特異的に結合可能なプローブ分子とを備えた機能性フェライトナノ粒子。
【請求項14】
薬剤、抗原、抗体、レセプター、ハプテン、酵素、蛋白質、ペプチド、核酸、ホルモン、糖類、病原体および毒素からなる群から選ばれる少なくとも一種の物質の認識、分析またはスクリーニングに用いる試薬である請求項13に記載の機能性フェライトナノ粒子。
【請求項15】
診断剤、細胞標識剤、酵素固定剤および蛋白質精製剤から選ばれる物質の少なくともいずれかの検出に用いる請求項13に記載の機能性フェライトナノ粒子。
【請求項16】
磁気ハイパーサーミアの発熱体、MRIの造影剤および薬剤輸送の担体から選ばれるいずれかに用いる請求項13に記載の機能性フェライトナノ粒子。
【請求項17】
磁化検出器により磁化を検出する診断法に用いられる請求項13に記載の機能性フェライトナノ粒子。
【請求項18】
クロマトグラフィーに用いられる請求項13に記載の機能性フェライトナノ粒子。
【請求項19】
土壌改質、水質、および大気浄化から選ばれる少なくともいずれかの用途に用いられる請求項13に記載の機能性フェライトナノ粒子。
【請求項20】
吸着剤またはセンサーの少なくともいずれかに用いられる請求項13に記載の機能性フェライトナノ粒子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図4】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−201666(P2008−201666A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−340903(P2007−340903)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】