説明

球状半導体素子の製造方法および製造装置

【課題】多数の球状の半導体の表面に均一な拡散層を形成するための装置を提供することを目的とする。
【解決手段】処理ガスの導入口と排出口を有する円筒形の容器、前記容器内に挿入され、前記導入口側を開口している有底円筒形の反応容器、前記導入口から前記反応容器内にその開口から挿入されている処理ガス導入管、前記容器をその外側から加熱する加熱手段、および前記容器をその長手方向の軸心のまわりに回転させる駆動手段を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、球状の半導体素子、特に光電変換素子の製造方法および製造装置に関するもので、さらに詳しくは、球状の半導体の表面に拡散層を形成するための拡散方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
クリーンなエネルギー源として光電変換装置が注目されている。代表的な光電変換装置は、結晶シリコン半導体ウエハからなる素子を用いたもの、およびアモルファスシリコンからなる半導体層を用いたものである。前者は、単結晶インゴットの製造および単結晶インゴットから半導体ウエハを製造するまでの工程が繁雑であり、しかも結晶の切削屑などにより高価なシリコン原料の利用率が低いので、コスト高となる。後者は、シリコンの未結合手に水素が結合しているアモルファス構造が、光照射によって水素が放たれて構造変化を起こしやすいため、光電変換効率が光照射により徐々に低下するという問題がある。
【0003】
前記のような特性低下がなく、安価で、高出力が期待できる光電変換装置として、球状のp型半導体の表面にn型半導体層を形成した球状の光電変換素子を用いたものが検討されている。この光電変換装置は、直径1mm前後の小さな球状素子を用いることにより、光電変換部全体の平均厚みを薄くし、原料Siの使用量を軽減するものである。
この種の光電変換装置としては、多数の凹部を有する支持体の各凹部内に、直径1mm前後の球状の光電変換素子を取り付け、凹部内面を反射鏡として働かせるものが知られている(特許文献1および2など)。このような構成によれば、素子の材料、特に高価なシリコンの使用量を低減するとともに、反射鏡の作用により、素子に直接照射される光の4〜6倍の光を素子に照射できるので、光の有効利用ができるなどの利点を有する。
【0004】
上記の光電変換素子は、例えば、次のようにして作製される。
まず、極微量のホウ素を含むp型多結晶Si塊を坩堝内に供給して不活性ガス雰囲気中で溶融させる。その融液を坩堝底部の微小なノズル孔から滴下させ、その液滴を自然落下中に冷却して固化させる。これにより、多結晶または単結晶の球状のp型半導体を作製する。
次に、この球状のp型半導体の表面を研磨し、さらにエッチングなどにより表面層の約50μmを除去した後、例えば、オキシ塩化リンを拡散源として800〜950℃で10〜30分間熱処理する。これにより、p型半導体の表面にリンを拡散させた、厚さ約0.5μm程度のn型半導体層を第2半導体層として形成する。
【0005】
従来、上記のような球状の第1半導体の表面に、リンを拡散させて第2半導体層を形成するには、シリコンなどのウエハに拡散処理または製膜処理をするための処理装置が用いられていた。この種の半導体デバイスの製造に用いられる装置は、処理ガスの供給や温度制御が精度よく行われるように改良がされているが、基本的には、被処理物はボートに静置される(例えば特許文献3)。したがって、ボートを間欠的に動かすようにしても、多数の球状の素子の表面に均一な拡散層を形成するのは困難である。
【特許文献1】特開2002−164554号公報
【特許文献2】特開2004−63564号公報
【特許文献3】特開平6−246261号公報
【0006】
そこで、本発明者らは、以下のような提案をした(特願2005−264341)。その第1は、処理ガスを導入する導入口およびガスを排出する排出口を有する円筒状の反応容器内に、多数の球状の半導体を収容し、反応容器を、その軸心のまわりに回転させたり、その前後を上下方向に揺動させたりすることにより、球状の半導体を反応容器内において流動・回転させる方法である。また、反応容器内の半導体の攪拌をよくするために、反応容器内の半導体を前部から後部へおよび後部から前部へと入れ替える工程を加える方法も提案した。
【0007】
これらの方法によると、球状の半導体は、反応容器の揺動または回転により、流動・回転するから、単に静止状態において反応する場合に比べて、処理ガスとの接触度合いが良好となる。
しかし、円筒状の反応容器内に多数の球状の半導体を収容した場合、層状に堆積された半導体は、上層部と下層部とで十分に入れ替わることができず、多数の半導体に均一に不純物の拡散処理をすることは困難であった。
【0008】
また、半導体の上層部と下層部との入れ替わりを十分に行わせるために、内壁にリブを設けた反応容器をその軸心のまわりに回転させる方法を提案した。この方法は、前記のリブによって半導体を反応容器の回転方向に押し上げ、回転途上でリブから半導体を落下させるものである。これにより、個々の半導体はその落下過程で一時的にも分離されるから、半導体の全表面で満遍なく処理ガスと接触させることができる。
しかしながら、そのように半導体を落下させると、落下した半導体が反応容器に衝突する。その際、半導体は機械的な衝撃を受けて損傷し、特性が損なわれるという不都合が生じることが分かった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明は、球状の半導体を損傷させることなく、反応容器内において流動・回転させながら、その表面に均一な拡散層を形成することができる方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の球状半導体素子の製造装置は、
一方に処理ガスを導入する導入口を有し、他方に処理ガスを排出する排出口を有する円筒形の容器、
前記容器内に挿入され、前記容器の内径より小さい外径を有し、前記導入口側を開口している有底円筒形の反応容器、
前記導入口から前記反応容器内にその開口から挿入されている処理ガス導入管、
前記容器をその外側から加熱する加熱手段、および
前記容器をその長手方向の軸心のまわりに回転させる駆動手段を具備し、
前記容器を回転させることにより、球状の半導体を収容する前記反応容器を回転させて前記球状半導体を流動させ、その流動状態の球状半導体を前記ガス導入管から供給される処理ガスと反応させることを特徴とする。
前記反応容器は、その外底面に取手を有し、その取手を利用して前記容器のガス排出口側から出し入れできるように構成するのが好ましい。
【0011】
また、本発明は、処理ガスを導入するガス導入管を挿入するとともにガス排出口を兼ねる開口を一端に有する円筒形の反応容器内において、球状の半導体の表面に処理ガス中の不純物を拡散させて拡散層を形成する球状半導体素子の製造方法であって、
前記反応容器は、該反応容器の外径より大きい内径を有する円筒形の容器内に挿入されており、前記容器をその長手方向の軸心のまわりに回転させることにより、前記容器との摩擦により回転して、前記反応容器内に収容された球状の半導体を流動させ、その流動状態の球状半導体を前記ガス導入管から供給される処理ガスと反応させることを特徴とする球状半導体素子の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、ガス導入管は一端が開口している有底円筒形の反応容器内に挿入されており、ガス導入管の先端または側面に設けられたガス噴射口より噴射される処理ガスは反応容器内に十分に充満する。一方、反応容器は、これを挿入した容器の回転により回転して、その内部に収容している球状の半導体が流動・回転する。したがって、球状半導体が複数層に堆積した状態で反応部に収容されていても、反応容器内において上層部の半導体と下層部の半導体とが相互に混合されるように攪拌されるので、各半導体は処理ガスとの接触状態はほぼ均等となる。このため、多量の半導体にほぼ均一な拡散層を形成することができる。また、反応容器の外底面に取手を設け、その取手を利用して前記容器のガス排出口側から出し入れできるように構成すると、球状半導体の反応のための反応容器の容器内への挿入および反応後の反応容器の出し入れが容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、球状の第1半導体の表面に不純物を拡散して第2半導体層を形成するために、第1半導体が球形であることを利用して、絶えず流動状態において反応させることにより、高品質の半導体素子を得るものである。本発明は、反応容器を回転させることにより、反応容器内に収容した多数の球状の半導体を流動・回転させて、処理ガスとの接触度合いを良好にしてほぼ均一な拡散層を形成しようとするものである。
【0014】
本発明の第1の特徴は、反応容器を回転させるのに、これを挿入した円筒形の容器を回転させるように構成したことである。本発明の第2の特徴は、前記容器が、一方に処理ガスを導入する導入口を有し、他方に処理ガスを排出する排出口を有すること、および前記反応容器が、前記容器の導入口側を開口している有底円筒形を有し、前記開口から処理ガスの導入管が反応容器の内部に挿入されていることである。
【0015】
上記の特徴により、反応容器は、その内部に処理ガスを十分に充満させることができる。したがって、反応容器内に収容した半導体に処理ガスを十分に接触させることができる。
【0016】
反応容器を回転させるのに、反応容器自体に回転駆動機構を設ける構成にすると、半導体の出し入れ、および処理ガスの導入・排出のために余分なスペースを要することとなる。それによって、収容する半導体の量に比較して反応ガスの充満するスペースが大きくなるから、大量の処理ガスを供給せねばならない。
本発明によれば、反応容器は、余分なスペースを要しないから、供給する処理ガスの量を適切にして効率的に反応に供することができる。
【0017】
反応容器内に挿入される処理ガスの導入管は、その先端部および/または側壁部にガス噴射口を設けることができる。
また、反応容器とこれを回転させる容器とは、両者の接触部が粗面化され、容器は、摩擦により反応容器を回転させるようにするのが好ましい。
【0018】
本発明の反応容器は、その内壁面に反応容器の長手方向に伸びる1条または複数状のリブを設けることができる。これにより、半導体の攪拌をより効率的に行うことができる。さらに、反応容器の内壁面は粗面化され、多数の微細な凹凸が形成されていることが好ましい。これにより、反応容器の回転時に半導体が該内壁面を滑ることを防止する摩擦力が作用し、半導体の攪拌をより円滑に行うことができる。
【0019】
本発明によれば、反応容器内に球状半導体を複数層にして収容し、各半導体の処理ガスとの接触度合いをほぼ均等にできるから、品質の一定した半導体素子の大量生産に適している。
【0020】
以下、本発明による、光電変換素子に適用できる半導体素子の製造装置を図面を参照して説明する。
【0021】
実施の形態1
図1は本発明の一実施の形態における半導体素子の製造装置の一部を切り欠いた側面図、図2は炉心管(容器)の縦断面図、図3は図2のIII−III線断面図である。図4は処理ガスの流れの系統を示す略図である。
基台10は、内部に棚を有する筐体で構成され、その上部に枠体11を固定している。この枠体11は両端に一対の軸受け12を設けている。
【0022】
後述する加熱ブロックなどを支持する支持板15は、その下部中央に軸取付部材16により軸17を取り付け、この軸17は軸受け12に軸支されている。基台10の端部に設けられた軸受け部13には、支持板15の端部に取り付けた部片18を螺合した操作棒14の下端部を螺合している。操作棒14をその上端のハンドルを操作することにより、支持板15は、基台10上において、部片18側が上下し、支持板の基台10に対する傾斜角度を調節することができる。
【0023】
支持板15の上には、中央に加熱ブロック20が固定されている。加熱ブロック20は、上下に分割できるようになっており、内部には、石英製の炉心管40を収容する空間部21、および炉心管を加熱する加熱手段としてのヒータ22を有する。
【0024】
炉心管40は、図2に示すように、ガスの入口側となる細径部41、後述の円筒形の反応容器50を収容する円筒部42、およびガスの出口側であり、半導体の出し入れをする径大の開口端部43を有する。炉心管40の開口端部43には、石英製の蓋44(図4参照)が嵌合される。蓋44の外周には、軸方向に伸びた凹部45が複数設けられている。この凹部45により、炉心管が蓋44で閉塞された状態において、炉心管40内部のガスは外部へ放出される。炉心管40は、加熱ブロック20を上下に分割した状態でその内部にセットされる。炉心管40の細径部41および開口端部43は、加熱ブロック20の前後に設けられた開口部23および24から加熱ブロックの外部に伸びている。
【0025】
反応容器50は、両端部は径が小さくなるように絞ってあり、一端には開口51を設け、他端は閉塞している。この閉塞した端部には、取手52が設けてある。この取手に適当な治具を引っかけて反応容器を炉心管に出し入れする。反応容器50は、炉心管40の内径より若干小さい外径を有し、炉心管の内壁と接する外壁面はブラスト加工により粗面化し、炉心管との摩擦により、炉心管の回転力が伝わるようになっている。これによって、炉心管の回転により炉心管内において炉心管と反対方向に回転する。炉心管40は、その細径部41側が下位となるように水平面に対して1°ほど傾斜するように、支持板15の傾きが調整されている。そのため、反応容器50は、炉心管40内において細径部41側に位置している。炉心管40の円筒部42内に設けた突部49は、反応容器50を位置決めするストッパの役割をする。
【0026】
炉心管40の細径部41の開口部は、バイトンの名で販売されている耐熱性の樹脂からなる栓45で封じられている。この栓45には、ステンレス鋼製のパイプ48が取り付けられている。パイプ48の内部に挿入されたガス導入管46は、炉心管の円筒部42に挿入されている反応容器50の底部近くまで伸びている。ガス導入管46は、その先端の開口からガスを噴出する。ガス導入管46は、先端を閉鎖して側面に設けた多数の開口からガスを噴出するようにしてもよい。
【0027】
支持板15上には、モータ30、並びに支持部材35および36に支持されたシャフト32が設けられ、シャフト32は、ギアーやチェーンなどの動力伝達機構31によりモータ30の回転軸に連結されて回転する。
支持部材35の頂部には、ロータリジョイント37が固定されている。このロータリジョイント37には、ガス導入管46の端部が固定されている。炉心管40の栓45に取り付けられたパイプ48は、ガス導入管46に対して回転できるように支持されており、パイプ48の駆動部はベルト33によりシャフト32に連結されている。また、支持部材36に設けられて、炉心管の細径部41を下方から支えている一対のローラ34は、シャフト32により駆動され、炉心管の細径部41に回転力を与える。
【0028】
一方、炉心管40の開口端部43側は、支持部材38に回転自在に軸支された一対のローラ39に支持されている。炉心管40の開口端は、排気用キャップ25で覆われている。排気用キャップ25は、炉心管40から蓋44の凹部45をとおして放出されるガスを、排出パイプ27へ導くように構成されている。排気用キャップ25と炉心管40の開口端部との間には隙間があるが、後述のように、パイプ27には吸引力が働くので、この隙間からガスが外部へ漏れることはない。パイプ27は、パイプ72との連結部に長さ方向に伸縮する部分を有し、これによって、支持板15の傾斜角度の変更に対応できるようになっている。
【0029】
以上の構成により、炉心管40は、開口端部43側がローラ39に回転自在に支持され、細径部41を支えるローラ34およびパイプ48に架けられたベルト33により回転される。こうして、炉心管40は、モータ30により、加熱ブロック20内で炉心管40の軸心のまわりに回転することができる。
【0030】
次に、図4により、炉心管40に処理ガスを供給し、排出するガスの供給・排出系統について説明する。
窒素ガスボンベ61に連なる窒素ガスの供給路は61Aと61Bに分岐し、酸素ガスボンベ60に連なる酸素ガスの供給路は、窒素ガスの供給路61Aと合流して、炉心管40のガス導入管46と接続されるロータリジョイント37に連なる接続部66につながっている。酸素ガスおよび窒素ガスの各々の供給路の途中には、流量調整機能を有するバルブを備えた流量計F1、F2およびF3が設けられている。
【0031】
窒素ガスの供給路61Bは、容器62内の63で表すPOCl3中に漬かっている。容器62を通過してPOCl3を含んだ窒素ガスの供給路は、63Aと63Bに分岐し、63Aは接続部66につながっている。63Bは別途設けられた捕集装置につながるパージ路67となっている。V1〜V4は、開閉バルブを表している。
【0032】
接続部66に供給されたガスは、ロータリジョイント37においてガス導入管46に導入され、そのガス導入管先端の開口から炉心管40内の反応容器50内へ供給される。ガス導入管46を挿入させているパイプ48の端部には、ガス導入管との間にOリングを填めてある。したがって、回転している炉心管40内の反応容器50には、ロータリジョイント37からガス導入管46を経由して、処理ガスを供給することができるとともに、ガスを外部へ漏洩することはない。
【0033】
炉心管内の反応容器50に導入されたガスは、回転する反応容器の下位で流動する半導体に接してその表面に第2半導体層を形成する。反応容器内のガスは、開口51から炉心管40内に入り、開口端部43側から排気用キャップ25および排出パイプ27を経由してパイプ72に移動する。パイプ72にはパイプ74が連結され、このパイプ74は、捕集容器70に収容された水71に漬かっている。捕集容器70の気相部は、パイプ75によりブロア76に連らなっている。
【0034】
次に、この装置の動作を説明する。
炉心管40に、多数の球状のp型半導体を入れ、加熱ブロック20内にセットする。装置の制御部がリセットの状態において、バルブV1は開、V2、V3およびV4は閉じられている。まず、流量計F3の制御により、ボンベ61から窒素ガスを供給路61Aを経て炉心管40へ2L/分の流量で供給する。このとき、炉心管は800℃に加熱されている。第1ステップにおいては、バルブV1は開いたまま、ヒータを制御して炉心管を例えば、5℃/分の昇温速度で温度を上昇させる。炉心管が900℃に達してから、酸素ガス供給路の流量計F1を制御してボンベ60から酸素ガスを0.4L/分の流量で供給する。
【0035】
炉心管の温度が900℃に保持されるようヒータを制御し、第2ステップにおいて、バルブV2およびV3を開き、流量計F2を制御して、1L当たり120mgのオキシ塩化リン(POCl3)を含む窒素ガスを0.77L/分の流量で炉心管に供給する。こうして炉心管内でPOCl3と酸素ガスとの反応でリンガラスが生成し、さらにこのリンガラスとSiとの反応で生成したリンが球状の半導体の表面層に拡散する。この拡散工程を30分間継続した直後、第3ステップにおいて、酸素ボンベに連なる流量計F1を手動で操作して酸素ガスの供給を遮断し、さらに、バルブV2およびV3を閉じる。これにより供給路61Aを通じて窒素ガスのみを炉心管に供給する。
【0036】
この窒素ガスの供給を続けながら炉心管の温度を2℃/分の降温速度で下げる。炉心管の温度が800℃に達したなら、第4ステップにおいて、同温度を60分間維持して半導体素子のアニール処理を行う。その後、300℃まで放冷して処理済みの半導体素子を回収する。窒素ガスは、300℃まで放冷した時点で止める。
【0037】
炉心管40から排出されるガスは、ブロア76の吸引力により、パイプ27からパイプ72、およびパイプ75を経由し、捕集容器70内の水をとおしてブロア76から、図示しない固体吸着剤を経由して外部へ排出される。排ガス中のPOCl3およびその分解生成物は、大半が捕集容器70内の水に捕集され、残余は、固体吸着剤で除去される。
【0038】
以上に説明した処理ガスの供給部分は、基台10内に納められている。そして、炉心管40へのガス供給口となる接続部66と連なるパイプの部分は可撓性を有し、接続部66が揺動板15とともに揺動できるようになっている。
炉心管40は、例えば全長約1300mmであり、その円筒部の長さは約750mm、直径は約650mmである。反応容器50は、全長約400mm、直径約130mmである。この反応容器50に約1.0mmの球状の第1半導体を約80万個収容して、図1のように、水平方向に対して約1°傾斜させた炉心管内において、拡散層(第2半導体層)を形成することができる。
【0039】
上記のように、炉心管40の温度および炉心管への供給ガスの制御とともに、炉心管の回転を制御する。すなわち、モータ30を駆動して炉心管40を、例えば100〜150秒に1回転させる。こうして炉心管内の反応容器に収容された球状の第1半導体は、反応容器の径方向に流動・回転することにより、下層の半導体と上層の半導体とが入れ替わるように攪拌される。一方、処理ガスは、ガス導入管46により反応容器50の奥深くまで供給され、そのガスの排出口は一端に設けられた開口51であるから、反応容器内には十分な量の処理ガスを存在させることができる。したがって、反応容器内の各半導体は、ほぼ均等に、かつ十分な濃度の処理ガスと接触し、均一な第2半導体層を形成することができる。
【0040】
本実施の形態においては、炉心管は、モータ30により一方向に回転させるようにした。この方式によると、駆動機構も複雑とならず、かつ効率的に拡散層を形成することができる。しかし、間欠的に回転方向を変えたり、交互に半回転させるようにすることもできる。
【0041】
実施の形態2
図5および図6は本発明の好ましい他の実施の形態における反応容器構成を示す。ここに示す反応容器50Aは、内壁面に、容器の長手方向に伸びる3条のリブ53を設けたものである。これらのリブにより、反応容器内の半導体は、良好に攪拌され、第2半導体層が各半導体においてより均一に形成される。
また、前記のリブは、反応容器の軸方向に平行に設けたが、開口51側が下位になるように傾斜したリブと、開口51側が上位となるように傾斜したリブとを適宜設けることにより、開口51側の半導体を閉塞面側に、また閉塞面側の半導体を開口51側へそれぞれ移動させるように攪拌することができる。
【0042】
上記の実施の形態においては、反応容器をその軸心のまわりに一方向に回転させる例を示したが、反応容器を例えば半回転または1/3回転毎に回転方向を変えるように揺動させる方法をとることもできる。
【0043】
上記の実施の形態においては、ガス導入管は反応容器とは無関係に固定されており、その先端の開口から処理ガスを、反応容器の閉塞面に向けて供給される。反応容器内の球状半導体は、その底部に拡がっているから、ガス導入管の下側に、その拡がっている半導体に向けてガスが噴射されるように、多数の開口を設けることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明によれば、品質の一定した球状の半導体素子を製造することができる。本発明による半導体素子のなかで、光電変換素子は、特に、太陽電池装置に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一実施の形態における装置の要部を切り欠いた側面図である。
【図2】同装置の反応容器の縦断面図である。
【図3】図2のIII−III線断面図である。
【図4】反応容器への処理ガスの供給・排出系統を示す図である。
【図5】本発明の他の実施の形態における反応容器の縦断面図である。
【図6】図2のVI−VI線断面図である。
【符号の説明】
【0046】
1 球状半導体
10 基台
15 支持板
20 加熱ブロック
22 ヒータ
40 炉心管
41 細径部
42 円筒部
46 ガス導入管
50 反応容器
51 開口
52 取手
53 リブ
60 酸素ガスボンベ
61 窒素ガスボンベ
63 オキシ塩化リン
66 管継ぎ手を有する接続部
71 水
76 ブロア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方に処理ガスを導入する導入口を有し、他方に処理ガスを排出する排出口を有する円筒形の容器、
前記容器内に挿入され、前記容器の内径より小さい外径を有し、前記導入口側を開口している有底円筒形の反応容器、
前記導入口から前記反応容器内にその開口から挿入されている処理ガス導入管、
前記容器をその外側から加熱する加熱手段、および
前記容器をその長手方向の軸心のまわりに回転させる駆動手段を具備し、
前記容器を回転させることにより、球状の半導体を収容する前記反応容器を回転させて前記球状半導体を流動させ、その流動状態の球状半導体を前記ガス導入管から供給される処理ガスと反応させることを特徴とする球状半導体素子の製造装置。
【請求項2】
前記反応容器は、その外底面に取手を有し、その取手を利用して前記容器のガス排出口側から出し入れできるように構成された請求項1記載の球状半導体素子の製造装置。
【請求項3】
前記反応容器が、その内壁面に、その長手方向に伸びる1つまたは複数のリブを有する請求項1または2に記載の球状半導体素子の製造装置。
【請求項4】
前記反応容器が、その内壁面が粗面化されている請求項1または2に記載の球状半導体素子の製造装置。
【請求項5】
処理ガスを導入するガス導入管を挿入するとともにガス排出口を兼ねる開口を一端に有する円筒形の反応容器内において、球状の半導体の表面に処理ガス中の不純物を拡散させて拡散層を形成する球状半導体素子の製造方法であって、
前記反応容器は、該反応容器の外径より大きい内径を有する円筒形の容器内に挿入されており、前記容器をその長手方向の軸心のまわりに回転させることにより、前記容器との摩擦により回転して、前記反応容器内に収容された球状の半導体を流動させ、その流動状態の球状半導体を前記ガス導入管から供給される処理ガスと反応させることを特徴とする球状半導体素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−306059(P2008−306059A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−152993(P2007−152993)
【出願日】平成19年6月8日(2007.6.8)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成19年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「太陽光発電システム実用化加速技術開発」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(502139910)株式会社クリーンベンチャー21 (33)
【Fターム(参考)】