説明

球状銀粉およびその製造方法

【課題】 良好な分散性を有するとともに、ペーストに使用して600℃以下の低温で焼成することにより導体を形成する場合にも良好な焼結性を得ることができる、球状銀粉およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 銀イオンを含有する水性反応系に還元剤含有水溶液を添加して銀粒子を還元析出させることにより、500℃における収縮率が5〜15%、600℃における収縮率が10〜20%、平均粒径が5μm以下、タップ密度が2g/cm以上、BET比表面積が5m/g以下の球状銀粉を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、球状銀粉およびその製造方法に関し、特に、電子部品の端子電極や回路基板パターンの形成に用いられる球状銀粉およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品などの電極や回路を形成するために、銀粉を有機成分中に分散させた導電性ペーストが使用されている。一般に、導電性ペーストは、熱処理温度により焼成型ペーストと樹脂型ペーストに分類され、それぞれ用途や構成要素などが異なっている。
【0003】
焼成型ペーストは、構成要素として、銀粉、エチルセルロースやアクリル樹脂を有機溶剤に溶解したビヒクル、ガラスフリット、無機酸化物、有機溶剤、分散剤などを含み、ディッピングや印刷などにより所定のパターンに形成された後、焼成されて導体を形成する。このような焼成型ペーストは、ハイブリッドIC、積層セラミックコンデンサ、チップ抵抗器などの電極に使用されている。
【0004】
焼成型ペーストの焼成温度は用途によって異なるが、ハイブリッドICに用いられるアルミナ基板やガラスセラミック基板のような耐熱性のセラミック基板上において焼成型ペーストを高温で焼成することにより導体を形成する場合と、耐熱性の低い基板上において焼成型ペーストを低温で焼成により導体を形成する場合がある。
【0005】
銀の融点は950℃であり、その融点以下の可能な限り高温で焼成すれば、銀の焼結体の抵抗値が下がるが、焼成温度に適した銀粉を使用しなければ、様々な不具合が生じる。例えば、セラミック基板上において高温で焼成する場合には、銀の焼結体とセラミック基板との収縮差によってクラックやデラミネーション(積層剥離)などの不具合が生じることがあり、このような不具合を解消するために、高結晶の銀粉が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0006】
一方、樹脂型ペーストはスルーホールやメンブレンなどの配線材や導電性接着剤などに使用されている。このような樹脂型ペーストは、構成要素として、銀粉、エポキシ樹脂やウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂、硬化剤、有機溶剤、分散剤などを含み、ディスペンスや印刷などにより所定の導体パターンに形成され、室温から250℃程度の温度で硬化し、残存する樹脂の硬化収縮による銀粒子同士の接触により導電性が得られる。したがって、銀粒子同士の接触面積を増大するために、通常、銀粉を機械的に鱗辺状に加工したフレーク銀粉が使用されている。なお、300℃以上の温度では、樹脂が劣化して導体の抵抗や接着強度が悪化する。
【0007】
【特許文献1】特開2000−1076号公報(段落番号0008−0009)
【特許文献2】特開2000−1077号公報(段落番号0012−0013)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、例えば、プラズマディスプレィパネル(PDP)基板の場合、基板材料であるガラスの耐熱性が低いため、セラミック基板の場合と異なり、750〜900℃程度の高温で焼成することができない。したがって、より低い温度で焼成することが必要になり、基板の耐熱性の関係で600℃以下の温度、実際には500〜600℃の低温で焼成することにより導体を形成する必要があるが、導体の抵抗値を低くするのが困難になる。
【0009】
低温で焼成する場合、焼成温度より低い軟化点のガラスフリットを添加して焼結を促進させることにより導体の抵抗値を下げることができる。しかし、繰り返し焼成を行うPDP基板の場合には、必要以上に低い軟化点のガラスフリットを使用することは、導体の抵抗値が変動する原因になるので好ましくない。
【0010】
また、銀粉を感光性ペーストに使用する場合には、銀粉の形状が不定形やフレーク状であると、紫外線の散乱や反射が起こり、パターニング不良の原因となる。
【0011】
さらに、その他の方法、例えば、印刷法や転写法により導体パターンを形成する場合にも、スクリーン版の抜け性や転写性の観点から、銀粉の形状が不定形やフレーク状であると、良好な導体パターンを形成することができない。
【0012】
したがって、本発明は、このような従来の問題点に鑑み、ペーストに使用して600℃以下の低温で焼成することにより導体を形成する場合にも良好な焼結性を得ることができる、球状銀粉およびその製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、良好な分散性を有する球状銀粉およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、500℃における収縮率が5〜15%または600℃における収縮率が10〜20%の球状の銀粉、あるいは500℃における収縮率が5〜15%且つ600℃における収縮率が10〜20%の球状の銀粉であり、好ましくは平均粒径が5μm以下の球状の銀粉をペーストに使用して焼成することにより導体を形成すれば、焼成温度が600℃以下の低温でも良好な焼結性を得ることができ、また、タップ密度が2g/cm以上であり、BET比表面積が5m/g以下の分散性が良好な球状銀粉を使用したペーストから、感光性ペースト法、印刷法または転写法により良好な導体パターンを得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明による球状銀粉は、500℃における収縮率が5〜15%または600℃における収縮率が10〜20%、あるいは500℃における収縮率が5〜15%であり且つ600℃における収縮率が10〜20%であることを特徴とする。この球状銀粉は、平均粒径が5μm以下、タップ密度が2g/cm以上、BET比表面積が5m/g以下であるのが好ましい。
【0015】
また、本発明による球状銀粉の製造方法は、銀イオンを含有する水性反応系に還元剤含有水溶液を添加して銀粒子を還元析出させることにより、上記の球状銀粉を製造することを特徴とする。この球状銀粉の製造方法において、銀粒子の還元析出前または還元析出後のスラリー状の反応系に分散剤を添加するのが好ましい。この分散剤は、脂肪酸、脂肪酸塩、界面活性剤、有機金属、キレート形成剤および保護コロイドからなる群から選ばれる1種以上の分散剤であるのが好ましい。還元剤含有水溶液に含まれる還元剤は、アスコルビン酸、アルカノールアミン、ヒドロキノン、ヒドラジンおよびホルマリンからなる群から選ばれる1種以上の還元剤であるのが好ましい。還元剤含有水溶液は、銀イオンを含有する水性反応系中の銀の含有量に対して1当量/分以上の速度で添加するのが好ましい。また、得られた球状銀粉に、粒子同士を機械的に衝突させる表面平滑化処理を施すのが好ましく、表面平滑化処理を施した後に、分級により銀の凝集体を除去するのが好ましい。
【0016】
さらに、本発明による導電ペーストは、上記の球状銀粉を導体として用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、良好な分散性を有するとともに、ペーストに使用して600℃以下の低温で焼成することにより導体を形成する場合にも良好な焼結性を得ることができる、球状銀粉を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明による球状銀粉の実施の形態では、500℃における収縮率が5〜15%または600℃における収縮率が10〜20%、あるいは500℃における収縮率が5〜15%且つ600℃における収縮率が10〜20%であり、好ましくは、平均粒径が5μm以下である。このような銀粉は、ペーストに使用して600℃以下の低温で焼成しても良好な焼結性を得ることができるため、形成された導体の抵抗値を低くすることができる。
【0019】
また、銀粉の形状を球形にすることにより、感光性ペースト法に使用するのに適した銀粉になる。銀粉の形状が不定形やフレーク状の場合には、紫外線の乱反射や散乱が起こるため感光特性が劣り、不具合が生じるが、銀粉の形状が球形であれば、印刷法や転写法に使用するのにも適している。
【0020】
また、本発明による球状銀粉の実施の形態では、タップ密度が2g/cm以上、BET比表面積が5m/g以下であるのが好ましい。タップ密度が2g/cmより小さいと、銀粒子同士の凝集が激しく、上記のいずれの方法に使用した場合も、ファインパターン化への対応が難しく、また、BET比表面積が5m/gより大きいと、ペーストの粘度が高すぎて作業性に劣るからである。
【0021】
本発明による球状銀粉の製造方法の実施の形態では、銀イオンを含有する水性反応系に還元剤含有水溶液を添加して銀粒子を還元析出させる。この銀粒子の還元析出前または還元析出後のスラリー状の反応系に分散剤を添加するのが好ましい。
【0022】
銀イオンを含有する水性反応系としては、硝酸銀、銀塩錯体または銀中間体を含有する水溶液またはスラリーを使用することができる。銀塩錯体は、アンモニア水、アンモニウム塩、キレート化合物などの添加により生成することができる。また、銀中間体は、水酸化ナトリウム、塩化ナトリウム、炭酸ナトリウムなどの添加により生成することができる。これらの中で、銀粉が適当な粒径と球状の形状を有するようにするためには、硝酸銀水溶液にアンモニア水を添加して得られるアンミン錯体を使用するのが好ましい。アンミン錯体の配位数は2であるため、銀1モル当たりアンモニアを2モル以上添加する。
【0023】
還元剤としては、アスコルビン酸、亜硫酸塩、アルカノールアミン、過酸化水素水、ギ酸、ギ酸アンモニウム、ギ酸ナトリウム、グリオキサール、酒石酸、次亜りん酸ナトリウム、水素化ほう素ナトリウム、ヒドラジン、ヒドラジン化合物、ヒドロキノン、ピロガロール、ぶどう糖、没食子酸、ホルマリン、無水亜硫酸ナトリウム、ロンガリットなどを使用することができる。これらの中で、アスコルビン酸、アルカノールアミン、ヒドロキノン、ヒドラジン、ホルマリンからなる群から選ばれる1種以上を使用するのが好ましい。これらの還元剤を使用すれば、適当な収縮率と適当な粒径の銀粒子を得ることができる。
【0024】
また、還元剤の添加方法については、銀粉の凝集を防ぐために、1当量/分以上の速さで添加するのが好ましい。この操作の理由は明確ではないが、還元剤を短時間で投入することで、銀粒子への還元析出が一挙に生じて、短時間で還元反応が終了し、発生した核同士の凝集が生じ難いため、分散性が向上すると考えられる。また、還元の際には、より短時間で反応が終了するように反応液を攪拌するのが好ましい。
【0025】
分散剤としては、脂肪酸、脂肪酸塩、界面活性剤、有機金属、キレート形成剤および保護コロイドからなる群から選ばれる1種以上を使用するのが好ましい。脂肪酸の例として、プロピオン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、アクリル酸、オレイン酸、リノール酸、アラキドン酸などを挙げることができる。脂肪酸塩の例として、リチウム、ナトリウム、カリウム、バリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、鉄、コバルト、マンガン、鉛、亜鉛、スズ、ストロンチウム、ジルコニウム、銀、銅などの金属と脂肪酸が塩を形成したものを挙げることができる。界面活性剤の例としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩のような陰イオン界面活性剤、脂肪族4級アンモニウム塩のような陽イオン界面活性剤、イミダゾリニウムベタインのような両性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルのような非イオン界面活性剤などを挙げることができる。有機金属の例として、アセチルアセトントリブトキシジルコニウム、クエン酸マグネシウム、ジエチル亜鉛、ジブチルスズオキサイド、ジメチル亜鉛、テトラ−n−ブトキシジルコニウム、トリエチルインジウム、トリエチルガリウム、トリメチルインジイウム、トリメチルガリウム、モノブチルスズオキサイド、テトライソシアネートシラン、テトラメチルシラン、テトラメトキシシラン、ポリメトキシシロキサン、モノメチルトリイソシアネートシラン、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤などを挙げることができる。キレート形成剤の例として、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、セレナゾール、ピラゾール、イソオキサゾール、イソチアゾール、1H−1,2,3−トリアゾール、2H−1,2,3−トリアゾール、1H−1,2,4−トリアゾール、4H−1,2,4−トリアゾール、1,2,3−オキサジアゾール、1,2,4−オキサジアゾール、1,2,5−オキサジアゾール、1,3,4−オキサジアゾール、1,2,3−チアジアゾール、1,2,4−チアジアゾール、1,2,5−チアジアゾール、1,3,4−チアジアゾール、1H−1,2,3,4−テトラゾール、1,2,3,4−オキサトリアゾール、1,2,3,4−チアトリアゾール、2H−1,2,3,4−テトラゾール、1,2,3,5−オキサトリアゾール、1,2,3,5−チアトリアゾール、インダゾール、ベンゾイミダゾールおよびベンゾトリアゾールとこれらの塩、あるいは、シュウ酸、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、グリコール酸、乳酸、オキシ酪酸、グリセリン酸、酒石酸、リンゴ酸、タルトロン酸、ヒドロアクリル酸、マンデル酸、クエン酸、アスコルビン酸などを挙げることができる。保護コロイドの例として、ゼラチン、アルブミン、アラビアゴム、プロタルビン酸、リサルビン酸などを挙げることができる。
【0026】
このようにして得られた球状銀粉に、粒子同士を機械的に衝突させる表面平滑化処理を施した後に、分級により銀の凝集体を除去して感光性ペーストに使用すると、感度が良好になり、得られるパターンの直線性も極めて良好であり、ファインパターン化への対応が可能になる。また、このようにして得られた銀粉は、印刷法に用いた場合に版抜け性に優れ、転写法に用いた場合に転写性に優れ、各種の方法への使用に適している。
【実施例】
【0027】
以下、本発明による球状銀粉およびその製造方法の実施例について詳細に説明する。
【0028】
[実施例1]
銀イオンとして12g/Lの硝酸銀溶液3600mLに、工業用のアンモニア水300mLを加えて、銀のアンミン錯体溶液を生成した。この銀のアンミン錯体溶液に水酸化ナトリウム60gを加えてpHを調整した後、還元剤として工業用のホルマリン90mLを10秒で加えた。その直後に、ステアリン酸エマルジョン0.5gを加えて銀のスラリーを得た。この銀のスラリーをろ過、水洗した後、乾燥して銀粉を得た。この銀粉に高速攪拌機で表面平滑化処理を施した後、分級により8μmより大きい銀の凝集体を除去した。
【0029】
このようにして得られた銀粉について、収縮率、BET比表面積、タップ密度および平均粒径D50(マイクロトラック)を測定し、導電性を評価した。なお、本実施例および以下の実施例、比較例において得られた銀粉が球状銀粉であることを走査型電子顕微鏡(SEM)により確認した。
【0030】
また、銀粉の収縮率は、金型に入れた銀粉に加重をかけて作製した直径5mmのペレット状の銀粉試料を50℃から600℃まで昇温速度10℃/分で加熱した場合の試料の長さを測定し、次式により求めた。
500℃における収縮率(%)=(L50−L500)/L50×100
600℃における収縮率(%)=(L50−L600)/L50×100
ここで、L50、L500、L600はそれぞれ、試料温度が50℃、500℃、600℃におけるペレット状の銀粉試料の長さ(mm)である。
【0031】
また、導電性の評価は、65重量部の銀粉と、14重量部のアクリル樹脂(三菱レイヨン(株)製のBR−105)と、21重量部の有機溶剤(ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(試薬))と、1重量部のガラスフリット(日本電気硝子(株)製のGA−8)とを計量し、3本ロールで混練してペーストを作製した後、このペーストを市販のソーダガラス基板上に印刷し、550℃で10分間焼成し、得られた焼結体の導電性を評価することにより行った。この抵抗値が3×10−6Ω・cm以下で安定している場合を良好とし、3×10−6Ω・cm以上または安定しない場合を良好でないとして評価した。
【0032】
その結果、500℃における収縮率は8.6%、600℃における収縮率は12.4%、BET比表面積は0.75m/g、タップ密度は5.0g/cm、平均粒径D50は1.4μmであり、導電性は良好であった。
[実施例2]
【0033】
銀イオンとして12g/Lの硝酸銀溶液3600mLに、工業用のアンモニア水180mLを加えて、銀のアンミン錯体溶液を生成した。この銀のアンミン錯体溶液に水酸化ナトリウム7gを加えてpHを調整した後、還元剤として工業用のホルマリン192mLを10秒で加えた。その直後に、オレイン酸0.1gを加えて銀のスラリーを得た。この銀のスラリーをろ過、水洗した後、乾燥して銀粉を得た。この銀粉をフードミキサーで解砕処理した。
【0034】
このようにして得られた銀粉について、実施例1と同様の方法により、500℃と600℃における収縮率、BET比表面積、タップ密度および平均粒径D50を測定し、導電性を評価した。その結果、500℃における収縮率は7.8%、600℃における収縮率は13.1%、BET比表面積は0.46m/g、タップ密度は4.7g/cm、平均粒径D50は2.1μmであり、導電性は良好であった。
【0035】
[実施例3]
銀イオンとして12g/Lの硝酸銀溶液3600mLに、工業用のアンモニア水180mLを加えて、銀のアンミン錯体溶液を生成した。この銀のアンミン錯体溶液に水酸化ナトリウム1gを加えてpH調整した後、還元剤として工業用のホルマリン192mLを15秒で加えた。その直後に、ステアリン酸0.1gを加えて銀のスラリーを得た。この銀のスラリーをろ過、水洗した後、乾燥して銀粉を得た。この銀粉に高速攪拌機で表面平滑化処理を施した後、分級により11μmより大きい銀の凝集体を除去した。
【0036】
このようにして得られた銀粉について、実施例1と同様の方法により、500℃と600℃における収縮率、BET比表面積、タップ密度および平均粒径D50を測定し、導電性を評価した。その結果、500℃における収縮率は8.0%、600℃における収縮率は14.3%、BET比表面積は0.28m/g、タップ密度は5.4g/cm、平均粒径D50は3.1μmであり、導電性は良好であった。
【0037】
[実施例4]
銀イオンとして12g/Lの硝酸銀溶液3600mLに、工業用のアンモニア水150mLを加えて、銀のアンミン錯体溶液を生成した。この銀のアンミン錯体溶液に還元剤として工業用のヒドラジン13mLを2秒で加えた。その直後に、オレイン酸0.2gを加えて銀のスラリーを得た。この銀のスラリーをろ過、水洗した後、乾燥して銀粉を得た。この銀粉に高速攪拌機で平面平滑化処理を施した。
【0038】
このようにして得られた銀粉について、実施例1と同様の方法により、500℃と600℃における収縮率、BET比表面積、タップ密度および平均粒径D50を測定し、導電性を評価した。その結果、500℃における収縮率は14.5%、600℃における収縮率は16.1%、BET比表面積は0.86m/g、タップ密度は4.0g/cm、平均粒径D50は1.7μmであり、導電性は良好であった。
【0039】
[比較例1]
銀イオンとして6g/Lの硝酸銀溶液3600mLに、工業用のアンモニア水50mLを加えて、銀のアンミン錯体溶液を生成した。この銀のアンミン錯体溶液に還元剤として工業用の過酸化水素水60mLを15秒で加えた。その直後に、ステアリン酸ソーダ0.1gを加えて銀のスラリーを得た。この銀のスラリーをろ過、水洗した後、乾燥して銀粉を得た。
【0040】
このようにして得られた銀粉について、実施例1と同様の方法により、500℃と600℃における収縮率、BET比表面積、タップ密度および平均粒径D50を測定し、導電性を評価した。その結果、500℃における収縮率は2.2%、600℃における収縮率は8.4%、BET比表面積は0.15m/g、タップ密度は5.0g/cm、平均粒径D50は6.5μmであり、導電性は良好ではなかった。
【0041】
[比較例2]
市販のアトマイズ銀粉(5μm)について、実施例1と同様の方法により、500℃と600℃における収縮率、BET比表面積、タップ密度および平均粒径D50を測定し、導電性を評価した。その結果、500℃における収縮率は−0.7%、600℃における収縮率は−0.3%、BET比表面積は0.21m/g、タップ密度は5.2g/cm、平均粒径D50は5.3μmであり、導電性は良好ではなかった。
【0042】
これらの結果を表1に示す。なお、表1では、導電性の評価が良好な場合を○、良好でない場合を×で示している。
【0043】
【表1】



【特許請求の範囲】
【請求項1】
500℃における収縮率が5〜15%または600℃における収縮率が10〜20%であることを特徴とする、球状銀粉。
【請求項2】
500℃における収縮率が5〜15%であり且つ600℃における収縮率が10〜20%であることを特徴とする、球状銀粉。
【請求項3】
平均粒径が5μm以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載の球状銀粉。
【請求項4】
タップ密度が2g/cm以上であり、BET比表面積が5m/g以下であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載の球状銀粉。
【請求項5】
銀イオンを含有する水性反応系に還元剤含有水溶液を添加して銀粒子を還元析出させることにより、請求項1乃至4のいずれかに記載の球状銀粉を製造することを特徴とする、球状銀粉の製造方法。
【請求項6】
前記銀粒子の還元析出前または還元析出後のスラリー状の反応系に分散剤を添加することを特徴とする、請求項5に記載の球状銀粉の製造方法。
【請求項7】
前記分散剤が、脂肪酸、脂肪酸塩、界面活性剤、有機金属、キレート形成剤および保護コロイドからなる群から選ばれる1種以上の分散剤であることを特徴とする、請求項6に記載の銀粉の製造方法。
【請求項8】
前記還元剤含有水溶液に含まれる還元剤が、アスコルビン酸、アルカノールアミン、ヒドロキノン、ヒドラジンおよびホルマリンからなる群から選ばれる1種以上の還元剤であることを特徴とする、請求項5乃至7のいずれかに記載の球状銀粉の製造方法。
【請求項9】
前記還元剤含有水溶液を、前記銀イオンを含有する水性反応系中の銀の含有量に対して1当量/分以上の速度で添加することを特徴とする、請求項5乃至8のいずれかに記載の球状銀粉の製造方法。
【請求項10】
前記球状銀粉に、粒子同士を機械的に衝突させる表面平滑化処理を施すことを特徴とする、請求項5乃至9のいずれかに記載の球状銀粉の製造方法。
【請求項11】
前記表面平滑化処理を施した後、分級により銀の凝集体を除去することを特徴とする、請求項10に記載の球状銀粉の製造方法。
【請求項12】
請求項1乃至4のいずれかに記載の球状銀粉を導体として用いたことを特徴とする、導電ペースト。

【公開番号】特開2006−2228(P2006−2228A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−181479(P2004−181479)
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【出願人】(000224798)同和鉱業株式会社 (550)
【Fターム(参考)】