説明

環境構築システム、構築サーバ、端末、環境構築方法およびプログラム

【課題】 管理コストやシステムの構築コストを軽減することができる環境構築システム、構築サーバ、端末、環境構築方法およびプログラムを提供する。
【解決手段】 標準解釈エンジン101による標準記述言語で記述されたデータ120の解釈に基づく、ツールが登録されているツールリポジトリ103に対する検索結果から得られたツールおよび設定データのモジュール群を受け取り、該ツールは、ツールプラットフォーム110、111、112上に設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開発標準に基づいたクライアント開発環境等を自動的に整備することができる環境構築システム、構築サーバ、端末、環境構築方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在の情報システムは、業種によってさまざまな規模のシステムや、従来のクライアント/サーバシステムからWebサービスシステム等のさまざまな種別が存在している。また、オペレーティングシステム、実行環境、アプリケーションフレームワークやプログラミング言語などの複数の基盤技術の組み合わせよって実現されている。
【0003】
そのため、情報システムの多様化によって、それら開発プロジェクトも、多様な開発プロセスやその開発支援ツールを整備する必要がある。
【0004】
ここで、開発環境構築システムの一例が、特許文献1に記載されている。この従来の開発環境構築システムは、環境構築制御管理部と、インストール制御部と、環境構築データと、インストール情報管理データから構成されている。このような構成を有する従来の開発環境構築システムは、管理者の指示によって、複数のクライアントに共通の開発環境をインストールしたり、インストール情報を管理する仕組みに重点が置かれている。
【特許文献1】特開2004−78730号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来例においては次のような問題点があった。
【0006】
多くのプロジェクトの場合では、プロジェクトマネージャによって開発標準が策定され、SE(システムエンジニア)やプログラマはそれに基づき開発作業を行なう。開発標準には、スケジュール、開発プロセス、各工程の中間成果物(ソースコード、バイナリ、仕様書)などがきめ細かく定義され、各工程で利用する開発支援ツールやそれらの設定情報(ディレクトリ命名規則、ファイル命名規則、設計規約、コーディング規約、コメント規約、クラス名規約、メソッド名規約、変数名規約、スタブ、スケルトン、テストデータ、配布ファイル名、デプロイメントディレクトリなど)も選定されて、開発環境の導入が複雑になりつつある。また、クライアント計算機上の開発環境は、プロジェクトの規模やプログラマの人数に応じて1から数十台以上のインストールや設定を行なう必要があり、プロジェクトの準備段階でコストが発生する問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、プロジェクトマネージャ等の管理コストやシステムの構築コストを軽減することができる環境構築システム、構築サーバ、端末、環境構築方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、ネットワークを介して接続されている構築サーバと、ツールプラットフォームを備える端末と、を含む環境構築システムであって、構築サーバは、ツールが登録されているツールリポジトリと、標準記述言語で記述されたデータを解釈し、ツールリポジトリに対して検索実行を行なう標準解釈エンジンを備え、検索結果から得られたツールおよび設定データのモジュール群は、端末のツールプラットフォームに配布され、該配布されたツールは、ツールプラットフォーム上に設定されることを特徴とする環境構築システムである。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の環境構築システムにおいて、構築サーバは、ツールリポジトリに対する検索結果が複数個ある場合に検索を行なう検証情報データベースをさらに備えることを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の環境構築システムにおいて、構築サーバは、検証情報データベースに対する検索結果が複数個ある場合は、その結果の中から最新のバージョンのツールを選択することを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、ツールが登録されているツールリポジトリと、標準記述言語で記述されたデータを解釈し、ツールリポジトリに対して検索実行を行なう標準解釈エンジンを備え、検索結果から得られたツールおよび設定データのモジュール群は、ネットワークを介して接続されていると、ツールプラットフォームを備える端末に配布することを特徴とする構築サーバである。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の構築サーバにおいて、ツールリポジトリに対する検索結果が複数個ある場合に検索を行なう検証情報データベースをさらに備えることを特徴とする。
【0013】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の構築サーバにおいて、検証情報データベースに対する検索結果が複数個ある場合は、その結果の中から最新のバージョンのツールを選択することを特徴とする。
【0014】
請求項7記載の発明は、ツールプラットフォームを備え、標準解釈エンジンによる標準記述言語で記述されたデータの解釈に基づく、ツールが登録されているツールリポジトリに対する検索結果から得られたツールおよび設定データのモジュール群を受け取り、該ツールは、ツールプラットフォーム上に設定することを特徴とする端末である。
【0015】
請求項8記載の発明は、ネットワークを介して接続されている構築サーバと、ツールプラットフォームを備える端末と、を利用した環境構築方法であって、構築サーバが、標準解釈エンジンで標準記述言語で記述されたデータを解釈するステップと、ツールが登録されているツールリポジトリに対して検索実行を行なうステップとを有し、検索結果から得られたツールおよび設定データのモジュール群を、端末のツールプラットフォームに配布するステップと、端末が、該配布されたツールをツールプラットフォーム上に設定することを特徴とする環境構築方法である。
【0016】
請求項9記載の発明は、請求項8記載の環境構築方法において、構築サーバが、ツールリポジトリに対する検索結果が複数個ある場合に検証情報データベースの検索を行なうステップをさらに有することを特徴とする。
【0017】
請求項10記載の発明は、請求項9記載の環境構築方法において、構築サーバが、検証情報データベースに対する検索結果が複数個ある場合は、その結果の中から最新のバージョンのツールを選択するステップをさらに有することを特徴とする。
【0018】
請求項11記載の発明は、請求項8から10に記載の処理を実行させることを特徴とするプログラムである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の環境構築システム、構築サーバ、端末、環境構築方法およびプログラムによれば、プロジェクトマネージャ等の管理コストやシステムの構築コストを軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、本発明の一実施の形態について図を参照して詳細に説明する。
【0021】
図1を参照すると、本実施の形態における環境構築システムは、自動構築サーバ100と、クライアント計算機上のツールプラットフォーム110、111、112から構成されている。また、自動構築サーバ100およびクライアント計算機上のツールプラットフォーム110、111、112は、ネットワーク500を介して相互に接続されている。ネットワーク500は、任意のネットワークであってよく、例えば、光ファイバ、インターネット、公衆回線、LAN(Local Area Network)、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)等であってもよい。なお、通信方法は、有線であっても、無線であってもよい。
【0022】
自動構築サーバ100は、プロジェクト管理、設計、エディタ、テスト、デプロイ、資産管理等のさまざまな開発支援ツールが登録・格納されているツールリポジトリ103と、開発標準記述言語で記述されたデータを解釈しツールリポジトリに対して検索実行等を行なう開発標準記述解釈エンジン101を含む情報処理装置であり、例えば、ワークステーション等である。
【0023】
ツールリポジトリ103に登録されている各開発ツールは、クライアント計算機上のツールプラットフォーム110、111、112のプラグ&プレイ可能なモジュール形式として提供される。
【0024】
自動構築サーバ100は、ツールプラットフォーム110、111、112に対してモジュールを自動配布する機能を有している。
【0025】
ツールリポジトリ103に登録されているツールは、複数の組み合わせや扱うデータの互換性検証を行ない、また、検証情報データベース102に互換性等の検証情報が登録されている。
【0026】
クライアント計算機上のツールプラットフォーム110、111、112は、その規格に沿った構成のモジュールをネットワーク500を経由してダウンロードし、プラットフォーム上に動的にプラグ&プレイすることが可能なソフトウェア等によって実現される。
【0027】
入力データとしての開発標準記述言語は、図3に言語仕様を示す通り、例えば、XML(Extensible Markup Language)形式に従ったプロジェクト開発標準を記述するマークアップ言語である。プロジェクトマネージャ名、プロジェクト名、プロジェクトの開発プロセス、プロジェクト期間、自動構築サーバ名、自動配布先のクライアント名、開発ツールを表す要素とその子要素として各開発工程の支援ツール名を記述する。
【0028】
なお、支援ツール名は、完全な文字列を記述する必要はなくその一部でもよい。また、支援ツールのバージョンや設定情報も要素の属性として指定することが可能である。
【0029】
自動構築サーバ100は、入力として与えられた開発標準記述データ120を解析し、ツールリポジトリ103に登録されている該当の開発ツールを検索する。
【0030】
ツールリポジトリ103に格納されているツールが複数件マッチする場合は、異なるバージョンのツールのモジュールが格納されている場合である。その際は、検証情報データベース102を参照し、開発標準記述データ120に記述された他のツールとの互換情報からツールのバージョンの自動選択を行なう。互換情報から1つに選択されない場合は、最新のバージョンのツールモジュールが選択される。
【0031】
検索結果から得られた開発支援ツールの1つまたは複数のモジュールは、クライアント計算機上のツールプラットフォーム110、111、112に自動配布される。
【0032】
自動配布されたツールのモジュール群は、クライアント計算機上のツールプラットフォーム110、111、112に自動的にインストールされる。
【0033】
開発標準記述データ120に、各工程の開発支援ツールの指定だけではなく、設定情報の指定が含まれている場合は、それらの設定情報ファイルを更新する。
【0034】
次に、図2を参照して、本実施の形態における開発環境を構築する処理動作のフローについて説明する。
【0035】
まず、開発標準に基づき、開発標準記述言語を用いて、例えば、図4に示すような開発標準データを作成する(S201)。
【0036】
次に、自動構築サーバ100の開発標準記述解析エンジン101に、作成した開発標準データ102を入力し、要素開発標準として指定されているツール名(例えば、図3のpm、cm、bd、dd、cd、ut、it、si)、バージョン(例えば、図3のVERSION属性)、設定情報(例えば、図3のconf属性)の指定を抽出する(S202)。
【0037】
ステップS202の抽出データを検索キーに設定し、ツールリポジトリに対し検索実行を行なう(S204)。
【0038】
ツールリポジトリに対する検索結果が複数個ある場合は、検証情報データベースに対して、ステップ3で抽出したデータを検索キーに設定し検索を行なう(S205)。
【0039】
検証情報データベースに対する検索結果が複数個あるか否かを判断し(S206)、複数個ある場合は、その結果の中から最新のバージョンのツールを選択する(S207)。これらを開発標準データで指定されたツールごとに行なう。
【0040】
そして、開発標準データから開発環境を構築するクライアント計算機を抽出する(S208)。
【0041】
これらの検索結果より、ツールリポジトリから指定されたツールを指定されたクライアント計算機に自動的に配布を行なう(S209)。
【0042】
各クライアントサーバ上のツールプラットフォームは、自動構築サーバから自動配布されたツールのインストールを行なう(S210)。
【0043】
最後に、インストールしたツールの設定情報の指定が存在する場合は自動的に設定を行なう(S211)。
【0044】
上記の実施の形態によれば、プロジェクトの開発標準に合わせたクライアント開発環境構築のコストを大幅に省略できる。その理由は、プロジェクトの開発標準を解釈する自動構築サーバと、モジュールのプラグ&プレイが可能なツールプラットフォームによって、各クライアント計算機に開発標準で指定されたツールや設定を自動配布し、インストールできるからである。
【0045】
また、開発標準が変更になった際、インストーラを作り直したり、クライアント開発環境をアンインストールすることなく、クライアント開発環境を再構成できる。その理由は、開発標準記述言語で記述された開発標準データを修正するコストのみで、再度自動構築サーバが検索処理と自動配布処理を実行することで、クライアント計算機上の開発環境構成を動的に変更できるからである。
【0046】
また、自動構築サーバ100は、開発標準記述データ120に基づき、開発環境構成を検証し、プロジェクトマネージャが規定の作業環境かどうかを遠隔管理することが可能である。
【0047】
なお、上述する各実施の形態は、本発明の好適な実施の形態であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更実施が可能である。例えば、上記の実施の形態における自動構築サーバ100およびツールプラットフォーム110、111、112の機能を実現するためのプログラムを各装置等に読込ませて実行することにより本システムの機能を実現する処理を行なってもよい。さらに、そのプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であるCD−ROMまたは光磁気ディスク等を介して、または伝送媒体であるインターネット、電話回線等を介して伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。
【0048】
上述する各実施の形態は、自動構築サーバ100およびツールプラットフォーム110、111、112が別個に接続されているシステム構成について説明したが、各機能が1つのコンピュータシステムとして実現されている構成や機能毎に複数のサーバ装置等が追加された構成にも適用可能であることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施形態における環境構築システムの概略構成図である。
【図2】本発明の実施形態における開発環境を構築する処理動作を示すフローチャートである。
【図3】開発標準記述言語の使用の一例を示す図である。
【図4】開発標準記述言語による入力データの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0050】
100 自動構築サーバ
101 開発標準記述解釈エンジン
102 検証情報データベース
103 ツールリポジトリ
110、111、112 ツールプラットフォーム
120 開発標準記述データ
500 ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークを介して接続されている構築サーバと、ツールプラットフォームを備える端末と、を含む環境構築システムであって、
前記構築サーバは、ツールが登録されているツールリポジトリと、
標準記述言語で記述されたデータを解釈し、ツールリポジトリに対して検索実行を行なう標準解釈エンジンを備え、
検索結果から得られたツールおよび設定データのモジュール群は、前記端末のツールプラットフォームに配布され、該配布されたツールは、ツールプラットフォーム上に設定されることを特徴とする環境構築システム。
【請求項2】
前記構築サーバは、ツールリポジトリに対する検索結果が複数個ある場合に検索を行なう検証情報データベースをさらに備えることを特徴とする請求項1記載の環境構築システム。
【請求項3】
前記構築サーバは、前記検証情報データベースに対する検索結果が複数個ある場合は、その結果の中から最新のバージョンのツールを選択することを特徴とする請求項2記載の環境構築システム。
【請求項4】
ツールが登録されているツールリポジトリと、
標準記述言語で記述されたデータを解釈し、ツールリポジトリに対して検索実行を行なう標準解釈エンジンを備え、
検索結果から得られたツールおよび設定データのモジュール群は、ネットワークを介して接続されていると、ツールプラットフォームを備える端末に配布することを特徴とする構築サーバ。
【請求項5】
ツールリポジトリに対する検索結果が複数個ある場合に検索を行なう検証情報データベースをさらに備えることを特徴とする請求項4記載の構築サーバ。
【請求項6】
前記検証情報データベースに対する検索結果が複数個ある場合は、その結果の中から最新のバージョンのツールを選択することを特徴とする請求項5記載の構築サーバ。
【請求項7】
ツールプラットフォームを備え、
標準解釈エンジンによる標準記述言語で記述されたデータの解釈に基づく、ツールが登録されているツールリポジトリに対する検索結果から得られたツールおよび設定データのモジュール群を受け取り、該ツールは、前記ツールプラットフォーム上に設定することを特徴とする端末。
【請求項8】
ネットワークを介して接続されている構築サーバと、ツールプラットフォームを備える端末と、を利用した環境構築方法であって、
前記構築サーバが、標準解釈エンジンで標準記述言語で記述されたデータを解釈するステップと、ツールが登録されているツールリポジトリに対して検索実行を行なうステップと、を有し、
検索結果から得られたツールおよび設定データのモジュール群を、前記端末のツールプラットフォームに配布するステップと、
前記端末が、該配布されたツールをツールプラットフォーム上に設定することを特徴とする環境構築方法。
【請求項9】
前記構築サーバが、ツールリポジトリに対する検索結果が複数個ある場合に検証情報データベースの検索を行なうステップをさらに有することを特徴とする請求項8記載の環境構築方法。
【請求項10】
前記構築サーバが、前記検証情報データベースに対する検索結果が複数個ある場合は、その結果の中から最新のバージョンのツールを選択するステップをさらに有することを特徴とする請求項9記載の環境構築方法。
【請求項11】
請求項8から10に記載の処理を実行させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−338395(P2006−338395A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−163082(P2005−163082)
【出願日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】