説明

環境配慮型熱可塑性樹脂組成物

【課題】 耐衝撃改良効果が高く、同時に優れた柔軟性、耐熱性を具備し、石油系製品への依存度の低い環境配慮型樹脂組成物および成形体を提供する。
【解決手段】 ポリ乳酸樹脂(A)と、ポリアミド樹脂(B)と、コアシェル型グラフト共重合体(C)とを含有し、ポリ乳酸樹脂(A)とポリアミド樹脂(B)との質量比(A/B)が10/90〜40/60であり、ポリ乳酸樹脂(A)とポリアミド樹脂(B)の合計100質量部に対し、コアシェル型グラフト共重合体(C)の含有量が1〜10質量部であり、ポリアミド樹脂(B)が、ポリアミド11樹脂(B1)および/またはポリアミド1010樹脂(B2)であることを特徴とする環境配慮型熱可塑性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた耐熱性、柔軟性、成形性を具備したうえで、耐衝撃性を改良した環境配慮型熱可塑性樹脂組成物、及びそれを用いた成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保全の見地から植物由来の熱可塑性樹脂としてポリ乳酸系樹脂が注目されている。ポリ乳酸樹脂は、大量生産可能なためコストも安く、有用性が高いうえに、原料となるトウモロコシやサツマイモ等の植物を原料として製造可能で、石油等の枯渇資源の節約に貢献できる。
しかし、ポリ乳酸樹脂は、結晶化速度が遅いだけでなく、得られる成形体の機械的強度、耐衝撃性、柔軟性に劣るという欠点もあった。この様な問題点を解決するために、例えば、特許文献1には、ポリ乳酸樹脂にポリ乳酸樹脂よりも性能が優れる他の石油系の生分解性樹脂を配合し、成形体の耐熱性、耐衝撃性を改良することが開示されている。しかしながら、この樹脂組成物においても、成形サイクルが長く、耐衝撃性、柔軟性、耐熱性すべての面で不十分であった。また、特許文献2には、石油由来の熱可塑性樹脂であるポリエステルとのポリマーアロイについても開示されているが、ポリ乳酸樹脂の含有量が少量であり、環境面での配慮は十分とは言えない。
また、樹脂の耐衝撃性を改良するために、ポリ乳酸樹脂にオレフィン共重合体などのゴム状ポリマーをブレンドすることも知られており、例えば、特許文献3には、変性オレフィン化合物を添加する方法が開示され、特許文献4には、多層構造重合体を添加する方法が開示されている。しかしながら、これらいずれの方法においても、実使用に耐えうるまでの耐衝撃性を改良するには至っていない。
【0003】
一方、ポリ乳酸樹脂以外の植物由来の熱可塑性樹脂として、ポリアミド11樹脂やポリアミド1010樹脂が注目されている。ポリアミド11樹脂は、ポリ乳酸樹脂と同様に植物由来原料から製造され、環境への配慮の点で好ましく、柔軟性や耐衝撃性などに優れている。しかしながら、価格が高いため、使用される用途は限られている。同様にバイオマス由来樹脂のポリアミド1010樹脂は、ポリアミド11樹脂よりも安価であり、その有意性は大きい。このポリアミド1010樹脂もポリアミド11樹脂と同様の物性を示し、優れた柔軟性と耐衝撃性を具備している。
しかしながら、例えば、特許文献5などにその特性を要する部材に使用されている例もあるが、ポリアミド11樹脂やポリアミド1010樹脂は、低剛性の面から、射出成形での金型離型時に変形してしまい、この樹脂を用いて射出成形品を製造することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−309074号公報
【特許文献2】特開2005−200593号公報
【特許文献3】特開平9−316310号公報
【特許文献4】特開2006−160925号公報
【特許文献5】特開2006−283781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、耐衝撃改良効果が高く、同時に優れた柔軟性、耐熱性を具備し、石油系製品への依存度の低い環境配慮型樹脂組成物および成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記の課題を解決すべく鋭意検討を進めた結果、ポリ乳酸樹脂、ポリアミド11樹脂および/またはポリアミド1010樹脂、コアシェル型グラフト共重合体を組み合わせることによって前記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
(1)ポリ乳酸樹脂(A)と、ポリアミド樹脂(B)と、コアシェル型グラフト共重合体(C)とを含有し、ポリ乳酸樹脂(A)とポリアミド樹脂(B)との質量比(A/B)が10/90〜40/60であり、ポリ乳酸樹脂(A)とポリアミド樹脂(B)の合計100質量部に対し、コアシェル型グラフト共重合体(C)の含有量が1〜10質量部であり、ポリアミド樹脂(B)が、ポリアミド11樹脂(B1)および/またはポリアミド1010樹脂(B2)であることを特徴とする環境配慮型熱可塑性樹脂組成物。
(2)さらに有機結晶核剤(D)を含有し、ポリ乳酸樹脂(A)とポリアミド樹脂(B)の合計100質量部に対し、有機結晶核剤(D)の含有量が0.1〜5質量部であることを特徴とする(1)記載の樹脂組成物。
(3)コアシェル型グラフト共重合体(C)を構成するコア成分が、シリコーンアクリル系ゴムであることを特徴とする(1)または(2)に記載の樹脂組成物。
(4)ポリ乳酸樹脂(A)が、架橋ポリ乳酸樹脂であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の樹脂組成物。
(5)上記(1)〜(4)のいずれかに記載の樹脂組成物を成形してなる成形体。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、植物由来の熱可塑性樹脂組成物で、耐熱性および柔軟性に優れ、かつ、高い耐衝撃性を有する特性バランスに優れた環境配慮型熱可塑性樹脂組成物を提供することができる。植物由来の樹脂を成形体に使用をすることは、環境への負荷も小さく、産業上の利用価値はきわめて高い。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に使用されるポリ乳酸樹脂(A)は、ポリ乳酸を主成分とする。ポリ乳酸としては、ポリ(L−乳酸)、ポリ(D−乳酸)、および、これらの混合物または共重合体を用いることが望ましい。生分解性の観点からは、ポリ(L−乳酸)を主体とすることが好ましい。
その他、副成分としてポリグルコール酸、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンアジペートコテレフタレート、ポリブチレンサクシネートコテレフタレート等から選ばれる一種または二種以上の樹脂を、主成分であるポリ乳酸樹脂に混合し、ポリ乳酸樹脂(A)として使用してもよい。
【0009】
また、ポリ(L−乳酸)を主体とするポリ乳酸の融点は、光学純度によってその融点が異なるが、本発明においては、成形体の機械的特性や耐熱性を考慮すると、融点を160℃以上とすることが好ましい。ポリ(L−乳酸)を主体とするポリ乳酸において、融点を160℃以上とするためには、D−乳酸成分の割合を約3モル%未満とすればよい。
【0010】
ポリ乳酸樹脂(A)の190℃、荷重21.2Nにおけるメルトフローレートは通常0.1〜50g/10分、好ましくは0.2〜20g/10分、最適には0.5〜10g/10分である。メルトフローレートが50g/10分を超える場合は、溶融粘度が低すぎて成形物の機械的特性や耐熱性が劣る。メルトフローレートが0.1g/10分未満の場合は、成形加工時の負荷が高くなりすぎ操業性が低下する場合がある。
【0011】
ポリ乳酸樹脂(A)は公知の溶融重合法、あるいは、さらに固相重合法を追加して製造される。また、ポリ乳酸樹脂(A)のメルトフローレートを所定の範囲に調節する方法として、メルトフローレートが大きすぎる場合は、少量の鎖長延長剤、例えば、ジイソシアネート化合物、ビスオキサゾリン化合物、エポキシ化合物、酸無水物等を用いて樹脂の分子量を増大させる方法が挙げられる。逆に、メルトフローレートが小さすぎる場合はメルトフローレートの大きなポリ乳酸系樹脂や低分子量化合物と混合する方法が挙げられる。
【0012】
本発明において、ポリ乳酸樹脂(A)として、ポリ乳酸樹脂に架橋構造を導入した架橋ポリ乳酸樹脂を使用してもよい。架橋の形態としては、ポリ乳酸樹脂分子同士が直接架橋したものでも、架橋助剤を介して間接的に架橋したものでも、混在したものでもよく、特に限定されない。
【0013】
ポリ乳酸樹脂に架橋構造を導入する方法は、電子線照射や多価イソシアネート化合物等の多官能性化合物を使用するなど公知の方法を適用できるが、架橋効率の点で過酸化物の使用によるラジカル架橋が望ましい。
【0014】
本発明においては、ポリ乳酸樹脂(A)を、過酸化物と、(メタ)アクリル酸エステル化合物、および/または、アルコキシ基、アクリル基、メタクリル基、ビニル基から選ばれる官能基を2個以上有するシラン化合物とによって架橋する方法を採ることもできる。
【0015】
本発明において、過酸化物は、(メタ)アクリル酸エステル化合物、および/または、シラン化合物とポリ乳酸樹脂(A)との反応を促進することを目的として配合されるものである。
過酸化物の具体例としては、ベンゾイルパーオキサイド、ビス(ブチルパーオキシ)トリメチルシクロヘキサン、ビス(ブチルパーオキシ)シクロドデカン、ブチルビス(ブチルパーオキシ)バレレート、ジクミルパーオキサイド、ブチルパーオキシベンゾエート、ジブチルパーオキサイド、ビス(ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジメチルジ(ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジメチルジ(ブチルパーオキシ)ヘキシン、ブチルパーオキシクメンなどが挙げられる。
【0016】
過酸化物の添加量は、ポリ乳酸樹脂100質量部に対して、0.02〜20質量部であることが好ましく、0.1〜10質量部であることがより好ましい。添加量が0.02質量部未満では、目的とする効果が得られず、また、添加量が20質量部を超えると、混練時の操業性が低下する場合がある。
【0017】
本発明において、(メタ)アクリル酸エステル化合物、および/または、シラン化合物は、前述のように、樹脂組成物の結晶化を促進し、耐熱性を改善することを目的として配合されるものである。
(メタ)アクリル酸エステル化合物の具体的な化合物としては、ポリ乳酸樹脂との反応性が高く、モノマーが残りにくく、かつ、毒性が少なく、樹脂の着色も少ないことから、分子内に2個以上の(メタ)アクリル基を有するか、または、1個以上の(メタ)アクリル基と1個以上のグリシジル基もしくはビニル基を有する化合物が好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル化合物の具体例としては、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリセロールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、アリロキシポリエチレングリコールモノアクリレート、アリロキシ(ポリ)エチレングリコールモノメタクリレート、(ポリ)エチレングリコールジメタクリレート、(ポリ)エチレングリコールジアクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジメタクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジアクリレート、(ポリ)テトラメチレングリコールジメタクリレート、または、これらのアルキレングリコール部が様々な長さのアルキレンの共重合体、ブタンジオールメタクリレート、ブタンジオールアクリレート等が挙げられる。
【0018】
(メタ)アクリル酸エステル化合物の配合量は、ポリ乳酸樹脂100質量部に対して、0.01〜5質量部であることが好ましく、0.05〜1質量部であることがより好ましい。添加量が0.01質量部未満では、目的とする耐熱性が得られないが、操業性に支障が出ない範囲で、5質量部を超えて使用することもできる。
【0019】
本発明で使用するアルコキシ基、アクリル基、メタクリル基、ビニル基から選ばれる官能基を2個以上有するシラン化合物は式(1)で表される。
【化1】

式(1)中、R1〜R4の少なくとも2つ以上は、アルコキシ基、アクリル基、メタクリル基、ビニル基から選ばれる官能基、あるいはこれらの官能基を有する置換基を表す。残りは、アルコキシ基、アクリル基、メタクリル基、ビニル基以外を表し、例えば水素、アルキル基、エポキシ基が挙げられる。アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基が挙げられる。アクリル基を有する置換基としては、例えば3−アクリロキシプロピル基などが挙げられる。メタクリル基を有する置換基としては、例えば3−メタクリロキシプロピル基などが挙げられる。ビニル基を有する置換基としては、例えばビニル基、p−スチリル基が挙げられる。アルキル基としては例えばメチル基、エチル基が挙げられる。エポキシ基を有する置換基としては、例えば3−グリシドキシプロピル基、2−(3,4―エポキシシクロヘキシル)基などが挙げられる。
このようなシラン化合物の具体例および商品名の例としては、テトラメトキシシラン(GE東芝シリコーン社製TSL8114、信越化学工業社製KBM−04)、テトラエトキシシラン(GE東芝シリコーン社製TSL8124、信越化学工業社製KBE−04)、メチルトリメトキシシラン(GE東芝シリコーン社製TSL8113、信越化学工業社製KBM−13)、メチルトリエトキシシラン(GE東芝シリコーン社製TSL8123、信越化学工業社製KBE−13)、ジメチルジメトキシシラン(GE東芝シリコーン社製TSL8112)、ジメチルジエトキシシラン(GE東芝シリコーン社製TSL8122、信越化学工業社製KBE−22)、メチルジメトキシシラン(GE東芝シリコーン社製TSL8117)、メチルジエトキシシラン(GE東芝シリコーン社製TSL8127)、フェニルトリメトキシシラン(GE東芝シリコーン社製TSL8173)、フェニルトリエトキシシラン(GE東芝シリコーン社製TSL8178、信越化学工業社製KBE−103)、ジフェニルジメトキシシラン(GE東芝シリコーン社製TSL8172)、ジフェニルジエトキシシラン(GE東芝シリコーン社製TSL8177)、ヘキシルトリメトキシシラン(信越化学工業社製KBM−3063)、デシルトリメトキシシラン(信越化学工業社製KBM−3103C)、3−グリシドキシプロピルジメトキシメチルシラン(GE東芝シリコーン社製TSL−8355)、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GE東芝シリコーン社製TSL−8350、信越化学工業社製KBM−403)、ジメチルビニルメトキシシラン(GE東芝シリコーン社製TSL8317)、メチルビニルジメトキシシラン(GE東芝シリコーン社製TSL8315)、メチルビニルジエトキシシラン(GE東芝シリコーン社製TSL8316)、ジメチルビニルエトキシシラン(GE東芝シリコーン社製TSL8318)、ビニルトリメトキシシラン(信越化学工業社製KBM−1003)、ビニルトリエトキシシラン(GE東芝シリコーン社製TSL8311、信越化学工業社製KBE−1003)、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(信越化学工業社製KBM−303)、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン(信越化学工業社製KBE−402)、p−スチリルトリメトキシシラン(信越化学工業社製KBM−1403)、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン(GE東芝シリコーン社製TSL8375、信越化学工業社製KBM−502)、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(GE東芝シリコーン社製TSL8370、信越化学工業社製KBM−503)、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン(信越化学工業社製KBE−502)、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業社製KBE−503)、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製KBM−5103)、3−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン(信越化学工業社製KBM−5102)等が挙げられる。
【0020】
中でも、アクリル基、メタクリル基、ビニル基から選ばれる官能基を1つ有し、アルコキシ基を3つ有するシラン化合物が結晶化速度の向上の点で好ましい。このようなシラン化合物の具体例および商品名の例としては、ビニルトリメトキシシラン(信越化学工業社製KBM−1003)、ビニルトリエトキシシラン(GE東芝シリコーン社製TSL8311、信越化学工業社製KBE−1003)、p−スチリルトリメトキシシラン(信越化学工業社製KBM−1403)、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(GE東芝シリコーン社製TSL8370、信越化学工業社製KBM−503)、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業社製KBE−503)、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製KBM−5103)等が挙げられる。
【0021】
シラン化合物の配合量は、ポリ乳酸樹脂100質量部に対して、0.01〜5質量部であることが好ましく、0.02〜3質量部であることがより好ましく、0.05〜1質量部であることがさらに好ましい。操業性に特に支障が出ない範囲で、5質量部を超えて使用することもできる。
【0022】
架橋ポリ乳酸樹脂は、ポリ乳酸樹脂(A)と、過酸化物と、(メタ)アクリル酸エステル化合物および/またはシラン化合物などとを溶融混練することによって得られ、溶融混練の手段は、特に限定されないが、一軸あるいは二軸の押出機を用いて溶融混練する方法を挙げることができる。混練状態をよくする意味で二軸の押出機を使用することが好ましい。混練温度は(ポリ乳酸樹脂の融点+5℃)〜(ポリ乳酸樹脂の融点+100℃)の範囲が、また混練時間は20秒〜30分が好ましい。この範囲より低温や短時間であると、混練や反応が不充分となったり、逆に、高温や長時間であると樹脂の分解や着色が起きる場合があり、ともに好ましくない。
【0023】
本発明においてポリアミド樹脂(B)として、ポリアミド11樹脂(B1)および/またはポリアミド1010樹脂(B2)を使用する。
ポリアミド11樹脂(B1)としては、天然ひまし油中のリシノール酸を原料とし、11−アミノウンデカン酸を重縮合したものであり、その製造方法は、特に制限されたものではなく、公知の方法に従って行なうことが出来る。また、製造の際に各種の触媒、熱安定剤等の添加剤を使用してもよい。市販のポリアミド11樹脂(B1)として、例えば、アルケマ製『リルサン KNO』が挙げられる。
またポリアミド1010樹脂(B2)は、天然ひまし油中のセバシン酸とデカンジアミンとの重縮合体であり、その製造方法は特に制限された物ではなく、公知の方法に従って行なうことができる。その樹脂単体での機械的物性は、ポリアミド11樹脂と同等である。市販のポリアミド1010樹脂(B2)として、例えば、デュポン製 『Zytel FE110004 NC010』が挙げられる。
本発明の樹脂組成物において、ポリ乳酸樹脂(A)とポリアミド樹脂(B)との質量比(A/B)は、10/90〜40/60であることが必要である。ポリアミド樹脂(B)の配合量が、60質量%未満ではその優れた性質を十分に発揮することができない場合があり、90質量%を超えると、ポリアミド樹脂(B)の価格が高い場合はコスト面で不利となる。
【0024】
本発明においてコアシェル型グラフト共重合体(C)を構成するコア成分としては、特に制限されるものではないが、ブタジエン系ゴム、アクリル系ゴム、シリコーン系ゴム、シリコーンアクリル系ゴムが好ましく、シリコーンアクリル系ゴムがより好ましい。
【0025】
コア成分のブタジエン系ゴムとは、1,3−ブタジエン単量体単位のみからなる重合体、若しくは1,3−ブタジエン単量体単位と、これと共重合可能な1種以上のビニル系単量体単位からなる重合体である。なお、共重合可能な1種類以上のビニル系単量体単位の含有量は、ブタジエン系ゴム重合体中50質量%以下とするのが好ましい。
ここで、1,3−ブタジエンと共重合可能なビニル系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート等のメタクリル酸アルキルエステル、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート等のアクリル酸アルキルエステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリルやメチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル、塩化ビニル、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、エチレングリコールグリシジルエーテル等のグリシジル基を有するビニル系単量体等が挙げられる。
また、上記以外に、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン等の芳香族多官能ビニル化合物、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート等の多価アルコール、トリメタクリル酸エステル、トリアクリル酸エステル、アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル等のカルボン酸アリルエステル、ジアリルフタレート、ジアリルセバケート等のジアリル化合物、トリアリルトリアジン等のトリアリル化合物などの架橋性単量体(架橋剤)を用いることができる。これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0026】
コア成分のアクリル系ゴムとは、主構成単位のアクリル酸エステルを50〜100質量%、これと共重合可能なビニル系単量体は50〜0質量%含有するものである。このアクリル系ゴム重合体における主構成単位のアクリル酸エステルとしては、アルキル基の炭素数が2〜8であるアクリル酸アルキルエステルで、例えばエチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等が挙げられる。
また、アクリル系ゴム重合体の形成に使用される残り成分であるビニル系単量体としては、例えば、スチレン、αーメチルスチレン等の芳香族ビニル、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート等のメタクリル酸アルキルエステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル、メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル、塩化ビニル、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、エチレングリコールグリシジルエーテル等のグリシジル基を有するビニル系単量体などが挙げられる。
【0027】
コア成分のシリコーン系ゴムとは、オルガノシロキサン結合の単位が数千以上の線状重合体であるポリオルガノシロキサンを含有するゴムである。また、コア成分のシリコーンアクリル系ゴムとは、ポリオルガノシロキサンとアルキル(メタ)アクリレートゴムとを含有するゴムである。上記ゴムはどのような方法で製造されてもよいが、乳化重合法が最適である。またポリオルガノシロキサンには特に制限はないが、好ましくは、ビニル重合性官能基を含有するポリオルガノシロキサンである。ポリオルガノシロキサンの製造に用いられるジメチルシロキサンとしては、3員環以上のジメチルシロキサン系環状体が挙げられ、3〜7員環のものが好ましい。具体的にはヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等が挙げられ、これらは単独でまたは二種以上混合して用いられる。
【0028】
本発明においてコアシェル型グラフト共重合体(C)を構成するシェル成分は、特に限定されるものではなく、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単位、グリシジル基含有ビニル系単位、脂肪族ビニル系単位、芳香族ビニル系単位、シアン化ビニル系単位、マレイミド系単位、不飽和ジカルボン酸系単位、不飽和ジカルボン酸無水物系単位および/またはその他のビニル系単位などを含有する重合体が挙げられ、中でも、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単位、グリシジル基含有ビニル系単位および/または不飽和ジカルボン酸無水物系単位を含有する重合体が好ましく、さらに不飽和カルボン酸アルキルエステル系単位を含有する重合体がより好ましい。
【0029】
シェル成分の重合体を構成する不飽和カルボン酸アルキルエステル系単位としては、特に限定されるものではないが、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく使用される。具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチル、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸プロピルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸エチルアミノプロピル、メタクリル酸フェニルアミノエチルまたはメタクリル酸シクロヘキシルアミノエチルなどが挙げられ、樹脂への分散性を向上する効果が大きいという観点から、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸n−ブチルが好ましく使用される。これらの単位は単独ないし2種以上を用いることができる。
【0030】
シェル成分の重合体を構成するグリシジル基含有ビニル系単位としては、特に限定されるものではなく、(メタ)アクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、イタコン酸ジグリシジル、アリルグリシジルエーテル、スチレン−4−グリシジルエーテルまたは4−グリシジルスチレンなどが挙げられ、耐衝撃性を向上する効果が大きいという観点から、(メタ)アクリル酸グリシジルが好ましく使用される。これらの単位は単独ないし2種以上を用いることができる。
また、脂肪族ビニル系単位としては、エチレン、プロピレンまたはブタジエンなどが挙げられる。
芳香族ビニル系単位としては、スチレン、α−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン、4−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレンまたはハロゲン化スチレンなどが挙げられる。
シアン化ビニル系単位としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルまたはエタクリロニトリルなどが挙げられる。
マレイミド系単位としては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(p−ブロモフェニル)マレイミドまたはN−(クロロフェニル)マレイミドなどが挙げられる。
不飽和ジカルボン酸系単位として、マレイン酸、マレイン酸モノエチルエステル、イタコン酸、フタル酸などが挙げられる。
その他のビニル系単位としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ブトキシメチルアクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、N−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルアミン、アリルアミン、メタアリルアミン、N−メチルアリルアミン、p−アミノスチレン、2−イソプロペニル−オキサゾリン、2−ビニル−オキサゾリン、2−アクロイル−オキサゾリンまたは2−スチリル−オキサゾリンなどを挙げることができる。これらの単位は単独ないし2種以上を用いることができる。
【0031】
本発明の樹脂組成物においてコアシェル型グラフト共重合体(C)の配合量は、ポリ乳酸樹脂(A)とポリアミド樹脂(B)の合計100質量部に対し、1〜10質量部であることが必要であり、5〜10質量部であることが好ましい。コアシェル型グラフト共重合体(C)の配合量が1質量部未満の場合には本発明の効果が発揮されず、10質量部を超える場合には耐熱性が低下する傾向があり、耐衝撃性については飽和状態となり大幅な向上はみられない。
【0032】
本発明の樹脂組成物は有機結晶核剤(D)を含有することが好ましい。有機結晶核剤(D)を含有させることにより、ポリ乳酸樹脂(A)の結晶化速度を促進させ、樹脂組成物の耐熱性を向上させることができる。
有機結晶核剤(D)の具体例としては、ソルビトール化合物、安息香酸およびその化合物の金属塩、燐酸エステル金属塩、ロジン化合物の他に、アミド化合物としてエチレンビスオレイン酸アミド、メチレンビスアクリル酸アミド、エチレンビスアクリル酸アミド、ヘキサメチレンビス−9、10−ジヒドロキシステアリン酸ビスアミド、p−キシリレンビス−9、10ジヒドロキシステアリン酸アミド、デカンジカルボン酸ジベンゾイルヒドラジド、ヘキサンジカルボン酸ジベンゾイルヒドラジド、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジシクロヘキシルアミド、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジアニリド、N,N′,N″−トリシクロヘキシルトリメシン酸アミド、トリメシン酸トリス(t−ブチルアミド)、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジアニリド、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジシクロヘキシルアミド、N,N′−ジベンゾイル−1,4−ジアミノシクロヘキサン、N,N′−ジシクロヘキサンカルボニル−1,5−ジアミノナフタレン、エチレンビス(12−ヒドロキシステアリン酸)アミド、オクタンジカルボン酸ジベンゾイルヒドラジド、スルホイソフタル酸カリウムジメチル、および/または、スルホイソフタル酸ナトリウムジメチル等が挙げられる。なかでも、ポリ乳酸樹脂の結晶化を著しく促進させるには、結晶核剤としてスルホイソフタル酸カリウムジメチル、および/または、スルホイソフタル酸ナトリウムジメチル、エチレンビス(12−ヒドロキシステアリン酸)アミド、オクタンジカルボン酸ジベンゾイルヒドラジド、トリシクロヘキシルトリメシン酸アミドが好ましい。
なお、本発明の樹脂組成物に有機結晶核剤(D)を混合する方法は特に限定されない。
有機結晶核剤(D)の配合量は、ポリ乳酸樹脂(A)とポリアミド樹脂(B)の合計100質量部に対し、0.1〜5質量部であることが好ましく、0.1〜3質量部であることがさらに好ましい。有機結晶核剤(D)の配合量が0.1質量部未満であると、配合効果が乏しく、10質量部を超えると結晶核剤としての効果が飽和し、経済的に不利であるだけでなく、生分解後の残渣分が増大するため、環境面でも好ましくない。
【0033】
本発明の樹脂組成物にはその特性を大きく損なわない限りにおいて、顔料、熱安定剤、酸化防止剤、耐候剤、可塑剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、充填材、結晶核剤等を添加することができる。熱安定剤や酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール類、ヒンダードアミン、イオウ化合物、銅化合物、アルカリ金属のハロゲン化物などが例示される。無機充填材としては、タルク、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、ワラストナイト、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、ケイ酸カルシウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カルシウム、アルミノ珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、ガラスバルーン、カーボンブラック、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、ゼオライト、ハイドロタルサイト、金属繊維、金属ウイスカー、セラミックウイスカー、チタン酸カリウム、窒化ホウ素、グラファイト、炭素繊維等が挙げられる。有機充填材としては、澱粉、セルロース微粒子、木粉、おから、モミ殻、フスマ等の天然に存在するポリマーやこれらの変性品が挙げられる。無機結晶核材としては、タルク、カオリン等が挙げられる。
なお、本発明の熱可塑性樹脂組成物にこれらを混合する方法は特に限定されない。
【0034】
本発明の樹脂組成物は、射出成形、ブロー成形、押出成形、インフレーション成形、および、シート加工後の真空成形、圧空成形、真空圧空成形等の成形方法により、各種成形体とすることができる。とりわけ、射出成形法とすることが好ましく、一般的な射出成形法のほか、ガス射出成形、射出プレス成形等も採用できる。本発明の樹脂組成物に適した射出成形条件の一例を挙げれば、シリンダ温度をポリ乳酸の融点または流動開始温度以上、好ましくは180〜250℃、最適には190〜240℃の範囲とし、また、金型温度は樹脂組成物の(融点−20℃)以下とするのが適当である。成形温度が低すぎると成形品に充填不良が発生するなど操業性が不安定になったり、過負荷に陥りやすく、逆に成形温度が高すぎると樹脂組成物が分解し、得られる成形体の強度が低下したり、着色する等の問題が発生しやすい。
【0035】
本発明の樹脂組成物は、結晶化を促進させることにより、その耐熱性を高めることができる。このための方法としては、例えば、射出成形時の金型内での冷却条件を工夫することによって結晶化を促進させることができ、その場合には、金型温度をポリ乳酸の(ガラス転移温度+20℃)以上、(融点−20℃)以下で所定時間保った後、ガラス転移温度以下に冷却することが好ましい。また、成形後に結晶化を促進させる方法としては、直接ガラス転移温度以下に冷却した後、再度Tg以上、(融点−20℃)以下で熱処理することが好ましい。
【0036】
成形体の具体例としては、各種筐体等の電化製品用樹脂部品、コンテナや栽培容器等の農業資材や農業機械用樹脂部品、浮きや水産加工品容器等の水産業務用樹脂部品、皿、コップ、スプーン等の食器や食品容器、注射器や点滴容器等の医療用樹脂部品、ドレーン材、フェンス、収納箱、工事用配電盤等の住宅・土木・建築材用樹脂部品、クーラーボックス、団扇、玩具等のレジャー、雑貨用樹脂部品、バンパー、インスツルメントパネル、ドアトリム等の自動車用樹脂部品等が挙げられる。また、フィルム、シート、パイプ等の押出成形品、中空成形品等とすることもできる。
【実施例】
【0037】
次に、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例ならびに比較例での使用材料および評価方法料は次の通りである。
(A)使用材料
(1)ポリ乳酸樹脂(A)
・カーギルダウ社製 NatureWorks 6201D、MFR=10g/10分、融点168℃
(2)架橋ポリ乳酸樹脂(A′)
二軸押出機(東芝機械社製 TEM−37BS)を使用して、トップフィーダからポリ乳酸樹脂(A)100質量部を供給し、混練機途中からポンプを用いて、過酸化物のジ−t−ブチルパーオキサイド(日本油脂社製パーブチルD)0.2質量部と(メタ)アクリル酸エステル化合物のエチレングリコールジメタクリレート(日本油脂社製ブレンマーPDE−50)0.1質量部とを可塑剤のグリセリンジアセトモノカプレート(理研ビタミン社製PL−019)1質量部に溶解した溶液を注入し、加工温度190℃で溶融混練押出しをおこなった。そして、吐出された樹脂をペレット状にカッティングして架橋ポリ乳酸樹脂(A′)を得た。MFR=1g/10分。
(3)架橋ポリ乳酸樹脂(A″)
(メタ)アクリル酸エステル化合物のエチレングリコールジメタクリレートに代えて、シラン化合物のビニルトリメトキシシラン(信越化学工業社製KBM−1003)を使用した以外は上記(2)と同様にして、架橋ポリ乳酸樹脂(A″)を得た。MFR=0.5g/10分。
【0038】
(4)ポリアミド11樹脂(B1)
・アルケマ社製 リルサンKNO
(5)ポリアミド1010樹脂(B2)
・デュポン社製 Zytel FE110004 NC010
【0039】
(6)コアシェル型グラフト共重合体(C)
・三菱レイヨン社製 メタブレンC−233A(コア成分:ブタジエン系ゴム、シェル成分:メチルメタクリレート)(以下、C−233Aと称す。)
・三菱レイヨン社製 メタブレンS−2001(コア成分:シリコーン・アクリル系ゴム、シェル成分:メチルメタクリレート)(以下、S−2001と称す。)
【0040】
(7)グラフト共重合体
・日本油脂社製 モディパーA4200(主鎖:ポリオレフィン、側鎖:ビニル系ポリマー)(以下、A4200と称す。)
・三井化学社製 タフマーMA8510(変性エチレン・α−オレフィン共重合体)(以下、MA8510と称す。)
【0041】
(8)有機結晶核剤(D)
・トリシクロヘキシルトリメシン酸アミド:新日本理化社製 TF−1
(9)石油由来樹脂
・ポリプロピレン樹脂:日本ポリプロ製 ノバテックBC03C
・ABS樹脂:テクノポリマー社製 テクノABS170
【0042】
(B)評価方法
(1)曲げ特性
ASTM D790に準拠して、127mm×12.7mm×3.2mmの試験片を作製し、測定した。
(2)アイゾット衝撃強度
ASTM−D−256に準じて64mm×12.7mm×3.2mmの試験片を作製し、ノッチをつけてアイゾット衝撃強度を測定した。
(3)荷重たわみ温度
ASTM D648に準拠し、荷重0.45MPaで熱変形温度を測定した。
(4)成形サイクル
射出成形機(東芝IS−80G)でASTMダンベル型試験片の成形試験を実施した。成形温度190℃で溶融し、溶融樹脂を100℃の金型に充填した。成形サイクルは、樹脂組成物が金型内に射出(充填、保圧)、冷却された後、成形体が金型に固着、または、抵抗なく取り出すことができ、突き出しピンによる変形がなく、良好に離型できるまでの時間(秒)とした。成形サイクルは80秒以下であること好ましく、60秒以下であることがより好ましく、成形サイクルが60秒以下のものを◎、60秒を超え80秒以下のものを○、80秒を超えるものを×として、3段階の基準で評価した。
(5)表面外観
上記ダンベル型試験片の表面を目視観察し、剥離が無いものを○、剥離が顕著にみられるものを×として、2段階の基準で評価した。
(6)植物由来比率
樹脂組成物中に占める植物由来原料の割合を算出した。植物由来原料の割合が90%以上のものを○、50%以上、90%未満のものを△、50%未満のものを×として、3段階の基準で評価した。
【0043】
実施例1〜10、比較例1〜8
二軸押出機(東芝機械社製TEM‐37BS)を使用して表1に示す配合でトップフィーダからポリ乳酸樹脂や他の原料を供給し、加工温度190℃で溶融混練押出しをおこなった。吐出された樹脂をペレット状にカッティングして樹脂組成物を得た。次いで真空乾燥機で70℃×24h乾燥処理した。
【0044】
【表1】

【0045】
表1から明らかなように、実施例1〜10においては、耐熱性、柔軟性、耐衝撃性、成形性に優れ、植物由来比率が高く環境に配慮した樹脂組成物が得られた。
比較例1においては、コアシェル型グラフト共重合体の配合量が規定量に達していないため、耐衝撃性に劣る結果となった。比較例2では、コアシェル型グラフト共重合体の配合量が規定量を超えたため、耐熱性や植物由来比率が低下し、大幅な耐衝撃性の向上はみられなかった。比較例3および4では、コアシェル型グラフト共重合体の代わりにコアシェル構造を有しないグラフト共重合体を使用したため、耐衝撃性が劣る結果となった。
比較例5では、ポリ乳酸樹脂の配合量が規定量に達していないため、価格面で経済的に不利である。比較例6では、ポリ乳酸樹脂の配合量が規定量を超えたため、耐衝撃性が低下し、成形サイクルや表面外観に劣る結果となった。
比較例7では、植物由来のポリアミド樹脂の代わりに石油由来のポリプロピレン樹脂を使用したため、樹脂組成物の植物由来比率が低下し、耐衝撃性も低下した。比較例8では、植物由来のポリアミド樹脂の代わりに石油由来のABS樹脂を使用したため、植物由来比率が低下し、耐熱性も低下した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸樹脂(A)と、ポリアミド樹脂(B)と、コアシェル型グラフト共重合体(C)とを含有し、ポリ乳酸樹脂(A)とポリアミド樹脂(B)との質量比(A/B)が10/90〜40/60であり、ポリ乳酸樹脂(A)とポリアミド樹脂(B)の合計100質量部に対し、コアシェル型グラフト共重合体(C)の含有量が1〜10質量部であり、ポリアミド樹脂(B)が、ポリアミド11樹脂(B1)および/またはポリアミド1010樹脂(B2)であることを特徴とする環境配慮型熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
さらに有機結晶核剤(D)を含有し、ポリ乳酸樹脂(A)とポリアミド樹脂(B)の合計100質量部に対し、有機結晶核剤(D)の含有量が0.1〜5質量部であることを特徴とする請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項3】
コアシェル型グラフト共重合体(C)を構成するコア成分が、シリコーンアクリル系ゴムであることを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
ポリ乳酸樹脂(A)が、架橋ポリ乳酸樹脂であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物を成形してなる成形体。

【公開番号】特開2010−189472(P2010−189472A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−32651(P2009−32651)
【出願日】平成21年2月16日(2009.2.16)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】