説明

環状オレフィン付加共重合体、光学用フィルム及び液晶またはEL表示素子用透明導電性フィルム

【課題】 耐熱性、透明性、低吸水性、成形性及び靭性に優れ、かつ線膨張係数の小さい成形体となりうる環状オレフィン/α−オレフィン付加共重合体、並びにこの環状オレフィン/α−オレフィン付加共重合体からなる成形体、光学フィルム及び、液晶またはEL表示素子用透明導電性フィルムを提供することにある。
【解決手段】 環状オレフィン(A)単量体単位と炭素数5以上のα−オレフィン(B)単量体単位との合計100モル%中、構造単位(A)の割合を80〜99モル%、構造単位(B)の割合を1〜20モル%にして共重合をすることによって、該共重合体は、耐熱性、透明性、低吸水性、成形性及び靭性に優れ、かつ低い線膨張係数を有し、光学材料として非常に有用な材料を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は環状オレフィン付加共重合体及び光学用フィルムに関する。さらに詳しくは、透明性、耐熱性、低吸水性、靭性、及び寸法安定性に優れた環状オレフィン/α−オレフィン付加共重合体を用いた成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
透明耐熱プラスチックの成形体、特にフィルムやシートは、エレクトロニクス用、特にディスプレイ用として有用である。
【0003】
近年、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなど、様々なディスプレイが上市あるいは開発されている。例えば、液晶ディスプレイは、薄型、軽量で、かつ消費電力が低いという特徴から、テレビ等の画像表示装置、モニター等のOA機器、さらに携帯情報端末機器等に広く用いられている。近年、液晶ディスプレイの大型化あるいは携帯情報端末機器への利用が広がるにつれて、液晶ディスプレイの更なる軽量化、薄型化、靭性の向上などが強く望まれるようになっている。そこで、従来使用されてきたガラス基板の代わりにプラスチックフィルムやシートを基板として用いた液晶表示パネルが提案されている。しかしながら、プラスチック基板を液晶表示パネルの基板に適用するためには、いくつかの課題がある。最も大きな課題として、プラスチック基板の耐熱性の低さ及び熱変形、すなわちTgが低いこと及び線膨張係数が大きいことが挙げられる。例えば一般的にTFT(薄膜トランジスタ)のような駆動素子の作製には200℃以上、特には230℃以上、さらには250℃以上の耐熱性が必要である。一方、線膨張係数が大きい場合、温度変化による寸法変動が大きくなるため、TFTのような駆動素子の作製においてガラス基板を用いる場合よりもより高精度のパターニングが必要になる。このためプラスチック基板においては、高い耐熱性、および熱変形が小さい、すなわち線膨張係数の小さい基板が求められている。加えて靭性も必要である。
【0004】
耐熱性、透明性、低吸水性、低複屈折性、成形性等に優れるためにエレクトロニクス用材料、特にディスプレイ用を含むプラスチック基板や光学レンズ、光メモリディスク、光ファイバー等の光学部品に適する材料として、ノルボルネンやテトラシクロドデセン等の環状オレフィンとエチレンやα−オレフィンとの付加共重合体が知られている(特許文献1〜3)。
【0005】
一般的に、ノルボルネン/エチレン付加共重合体においては、ノルボルネン含率が高いほどTgが高くなることが知られている。しかしながら、エチレンの反応性が高いため、環状オレフィンの含率を高めることは困難であった。そのようなことから、エチレンよりも反応性が低いα−オレフィンとの付加共重合体への着目があったが、高活性な触媒がほとんど存在しなかった。
【0006】
特許文献2、3では、フルオレニルアミド配位子を有するチタン化合物を触媒として用い、さらに、ノルボルネンとα−オレフィンの付加共重合が高活性で進行することが報告されている。しかしながら、特許文献3の実施例におけるノルボルネンとα−オレフィンとの付加共重合体のガラス転移温度(耐熱性の指標)は231℃以下と低く、線膨張係数は104×10-6/℃以上と大きく、さらに得られるフィルムが脆くプラスチック基板用の材料としては不十分であった。
【特許文献1】特開昭61−292601号公報
【特許文献2】特開2004−107442号公報
【特許文献3】特開2007−119660号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の課題は、耐熱性、透明性、低吸水性、成形性及び靭性に優れ、かつ線膨張係数の小さい成形体となりうる環状オレフィン/α−オレフィン付加共重合体、並びにこの環状オレフィン/α−オレフィン付加共重合体からなる成形体、及び光学フィルムを提供することである。また、本発明の他の課題は、前述の光学フィルム上にガスバリア膜、及び/または透明導電性薄膜が積層され、水蒸気バリア性、酸素バリア性などのガスバリア性、導電性及び透明性が良好な液晶またはEL表示素子用透明導電性フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、環状オレフィン(A)単量体単位と炭素数5以上のα−オレフィン(B)単量体単位との合計100モル%中、構造単位(A)の割合を80〜99モル%、構造単位(B)の割合を1〜20モル%にして共重合をすることによって、該共重合体は、耐熱性、透明性、低吸水性、成形性及び靭性に優れ、かつ低い線膨張係数を有することを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0009】
かくして本発明によれば、環状オレフィン(A)単量体単位と炭素数5以上のα−オレフィン(B)単量体単位とからなり、耐熱性、靭性に優れかつ線膨張係数が80×10-6/℃未満である環状オレフィン付加共重合体が提供される。
【0010】
また、上記環状オレフィン付加共重合体を用いたフィルムにガスバリア膜、及び/または透明導電膜を積層することにより、水蒸気バリア性、酸素バリア性などのガスバリア性、導電性及び透明性が良好な液晶またはEL表示素子用透明導電性フィルムを提供される。
【0011】
すなわち、本発明は、環状オレフィン(A)単量体単位と炭素数5以上のα−オレフィン(B)単量体単位から得られる環状オレフィン付加共重合体のフィルムであって、構造単位(A)と構造単位(B)との合計100モル%中、構造単位(A)の割合が80〜99モル%、構造単位(B)の割合が1〜20モル%であることを特徴とする光学用フィルムに関する(請求項1)。
【0012】
さらに、本発明は、構造単位(A)と構造単位(B)との合計100モル%中、構造単位(A)の割合が85〜95モル%、構造単位(B)の割合が5〜15モル%であることを特徴とする請求項1記載の光学用フィルムに関する(請求項2)。
【0013】
さらに、本発明は、線膨張係数が80×10-6/℃未満である請求項1または2記載の光学用フィルムに関する(請求項3)。
【0014】
さらに、本発明は、環状オレフィン(A)単量体単位と炭素数5以上のα−オレフィン(B)単量体単位から得られる環状オレフィン付加共重合体であって、構造単位(A)と構造単位(B)との合計100モル%中、構造単位(A)の割合が80〜99モル%、構造単位(B)の割合が1〜20モル%であることを特徴とする環状オレフィン付加共重合体に関する(請求項4)。
【0015】
さらに、本発明は、請求項4に記載の環状オレフィン付加共重合体からなる成形体に関する(請求項5)。
【0016】
さらに、本発明は、請求項1〜3のいずれかに記載のフィルムを含有することを特徴とする液晶またはEL表示素子用透明導電性フィルムに関する(請求項6)。
【0017】
さらに、本発明は、請求項1〜3のいずれかに記載のフィルムとガスバリア膜の積層体を含有することを特徴とする液晶またはEL表示素子用透明導電性フィルムに関する(請求項7)。
【0018】
さらに、本発明は、請求項1〜3のいずれかに記載のフィルムと金属酸化物膜の積層体を含有することを特徴とする液晶またはEL表示素子用透明導電性フィルムに関する(請求項8)。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、耐熱性、透明性、低吸水性、成形性及び靭性に優れ、かつ線膨張係数が小さい環状オレフィン/α−オレフィン付加共重合体を提供できる。この環状オレフィン/α−オレフィン付加共重合体から得られる光学用フィルムは、ディスプレイ用光学基板などの用途に好適である。特に、前述の光学用フィルムにガスバリア膜及び/または透明導電膜を積層した透明導電膜性フィルムは、液晶またはEL表示素子として好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の光学用フィルムを構成する環状オレフィン付加共重合体は、環状オレフィン(A)単量体単位と炭素数5以上のα−オレフィン(B)単量体単位とからなる付加共重合体である。
【0021】
環状オレフィン(A)単量体としては特に制限されないが、例えば特開2007−119660記載の一般式(2)で表されるノルボルネン化合物単量体などを上げることができる。本発明においては、重合活性、入手性を鑑み、ノルボルネンが好ましい。
【0022】
環状オレフィンとの付加共重合体の合成に用いるα−オレフィンとしては、その取り扱い性、重合容器への圧力負荷の低さから、室温で液体である炭素数5以上のα−オレフィン単量体が選択される。炭素数5以上のα−オレフィン単量体としては直鎖状でも分岐状でもよく、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、1−ドコセンなどの直鎖状α−オレフィン;3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン等の分岐状αオレフィンを挙げることができる。
【0023】
本発明の環状オレフィン付加共重合体を光学用成形材料として用いる場合には、なかでも、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、1−ドコセン等の炭素数5〜30のα−オレフィンが好ましい。C30以上では一般的に活性が低下する。
【0024】
本発明の環状オレフィン付加共重合体の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算分子量で、通常、10,000〜1,000,000、好ましくは20,000〜800,000、より好ましくは40,000〜600,000である。重量平均分子量(Mw)がこの範囲内にあるときに、環状オレフィン付加共重合体は、適度な機械的強度及び粘度を有し、成形性に優れたものとなる。
【0025】
分子量分布(Mw/Mn)は一般的に1.9〜3、特には1.95〜2.5である。
【0026】
本発明の環状オレフィン付加共重合体中の環状オレフィン(A)単量体単位と炭素数5以上のα−オレフィン(B)単量体単位との組成比は、構造単位(A)と構造単位(B)との合計100モル%中、構造単位(A)の割合が80〜99モル%、構造単位(B)の割合が1〜20モル%であることが好ましく、構造単位(A)の割合が85〜98モル%、構造単位(B)の割合が2〜15モル%であることがより好ましく、構造単位(A)の割合が90〜97モル%、構造単位(B)の割合が3〜10モル%であることがさらに好ましく、構造単位(A)の割合が91〜96モル%、構造単位(B)の割合が4〜9モル%であることが特に好ましい。言い換えるとモル比で好ましくは(A)/(B)=99/1〜80/20、より好ましくは98/2〜85/15、さらに好ましくは97/3〜90/10、とくに好ましくは96/4〜91/9である。環状オレフィン(A)単量体単位の比率が低すぎると耐熱性の低下、線膨張係数の向上、及び靭性が低下し、光学用フィルムとして使用できない恐れがあり、高すぎると溶剤溶解性が低下して後述の溶剤キャスト成形が困難になる恐れがある。
【0027】
本発明の環状オレフィン付加共重合体は、所望により、環状オレフィン(A)単量体単位と炭素数5以上のα−オレフィン(B)単量体単位のほかに、これらと共重合可能な単量体(C)単位を有していてもよい。このような単量体の具体例としては、アセチレン、プロピン、1−ブチン等のアルキン単量体;スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン、インデン等のスチレン単量体;1,3−ブタジエン、イソプレン、1,4−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン等の鎖状共役ジエン単量体;さらにアクリル酸やメタクリル酸などのエチレン性不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、イタコン酸などのエチレン性不飽和ジカルボン酸及びその酸無水物;アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸2−エチルヘキシルなどのエチレン性不飽和カルボン酸エステル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル;アクリルアミド、メタクリロニトリル;等を挙げることができる。これらの単量体単位(C)の量は、特に限定されず、本発明の効果が損なわれない範囲であればよい。環状オレフィン(A)単位と炭素数5以上のα−オレフィン(B)単位との合計量に対して、50%以下、特に25%以下であることが好ましい。一般的にこれらの単量体は重合阻害効果を示すためである。
【0028】
本発明に係わる環状オレフィン付加共重合体のガラス転移温度は、200〜400℃、好ましくは230〜350℃、さらに好ましくは245〜300℃である。
【0029】
本発明に係わる環状オレフィン付加共重合体のガラス転移温度が200℃未満では、耐熱性が不足し、例えばITO(インジウム・スズオキサイド)電極付けなどフィルムまたはシートへの二次加工時に高温での処理が困難となり、ITO電極としての導電性効果が低下する。また、本発明に係る環状オレフィン付加共重合体のガラス転移温度が400℃を超えると靭性のあるフィルムまたはシートが得られないことが多い。
【0030】
更に、本発明に係わる環状オレフィン付加共重合体の線膨張係数は80×10-6/℃未満、好ましくは75×10-6/℃未満、更に好ましくは70×10-6/℃未満である。これらの値が低いほどディスプレイ基板として有用であることは前述の通りである。本発明で用いられる環状オレフィン付加共重合体の23℃における飽和吸水率は、通常は0.001〜1重量%、好ましくは0.005〜0.6重量%、さらに好ましくは0.008〜0.1重量%である。飽和吸水率がこの範囲内であると、各種光学特性、例えば透明性、位相差や位相差の均一性あるいは寸法精度が、高温多湿のような条件下でも維持される。1重量%を超えると、吸水により光学特性の変化や寸法変化を起こしやすくなる。なお、上記の飽和吸水率はISO62に準じて、23℃の水中にフィルムを24時間浸漬し、浸漬前後の重量変化により求められた値である。
【0031】
[添加物]
本発明の環状オレフィン付加共重合体には、必要に応じて、配合剤を添加することができる。配合剤としては、樹脂工業界一般に用いられているものであれば格別な制限はなく、例えば、硬化剤、硬化促進剤、硬化助剤、耐熱安定剤、難燃剤、レベリング剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、天然油、合成油、ワックス、着色剤、無機粒子、有機粒子等が挙げられ、その配合割合は、本発明の目的を損ねない範囲で適宜選択される。また、本発明においては、必要に応じて、他の硬質樹脂、あるいは軟質重合体を添加することができる。
【0032】
また、環状オレフィン付加共重合体には、酸化防止剤及び紫外線吸収剤等の添加剤などを添加しても良く、かかる酸化防止剤及び紫外線吸収剤等の添加剤としては、たとえば次の化合物が挙げられる。
【0033】
酸化防止剤:2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,2'−ジオキシ−3,3'−ジ−t−ブチル−5,5'−ジメチルジフェニルメタン、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2'−ジオキシ−3,3'−ジ−t−ブチル−5,5'−ジエチルフェニルメタン、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−(β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)エチル]、2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイトが挙げられる。
【0034】
紫外線吸収剤:2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール、2−(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ジ-tert-ペンチルフェノール、2-ベンゾトリアゾール-2-イル4,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2,2'-メチレンビス〔4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-[(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]〕などが挙げられるこれらの添加剤の添加量は、環状オレフィン付加共重合体100重量部に対して、通常、0.01〜5重量部、好ましくは0.05〜4重量部である。さらに、加工性を向上させる目的で滑剤などの添加剤を添加することもできる。
【0035】
[環状オレフィン付加共重合体の製造方法]
本発明の環状オレフィン付加共重合体の製造方法は、特に制限されないが、例えば、特開2007−119660に従って製造することができる。
【0036】
[光学用フィルム及びその製造方法]
本発明の光学用フィルム、すなわち、前述の環状オレフィン付加共重合体から得られる環状オレフィン付加共重合体フィルムは、上述の環状オレフィン付加共重合体を溶融成形法(プレス成形法、押出成形法、射出成形法)あるいは溶液流延法(溶剤キャスト法)などによりフィルムまたはシートに成形することにより成形できる。
【0037】
成形のし易さから、溶剤キャスト法が好ましく、たとえば、上述した本発明に係る環状オレフィン付加共重合体を溶媒に溶解又は分散させて適度の濃度の液にし、適当なキャリヤー上に注ぐか又は塗布し、これを乾燥した後、キャリヤーから剥離させる方法が挙げられる。
【0038】
本発明に係る環状オレフィン付加共重合体を溶媒に溶解又は分散させる際には、該付加重合体の濃度を、通常は0.1〜90重量%、好ましくは1〜50重量%、さらに好ましくは5〜35重量%にする。該付加重合体の濃度を上記未満にすると、フィルムの厚みを確保することが困難になる、また、溶媒蒸発にともなう発泡等によりフィルムの表面平滑性が得にくくなる等の問題が生じる。一方、上記を超えた濃度にすると溶液粘度が高くなりすぎて得られる光学用フィルムの厚みや表面が均一になりにくくなるために好ましくない。
【0039】
フィルムの厚みは通常10μm〜1mm、基板として好ましい厚みは40μm〜200μmである。
【0040】
ここで使用する溶媒としては、具体的には、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、ビシクロヘプタン、トリシクロデカン、ヘキサヒドロインデン、シクロオクタン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;ニトロメタン、ニトロベンゼン、アセトニトリル等の含窒素溶媒;ジエチルエ−テル、テトラヒドロフラン等のエ−テル類;ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン溶媒;等の溶媒を使用することができる。
【0041】
これらの溶媒の中でも、芳香族炭化水素や脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、エーテル類、ハロゲン溶媒が好ましい。
【0042】
本発明の環状オレフィン付加共重合体フィルムは、350ないし850nmで光線透過率が80%以上であって、好ましくは85%以上である。光線透過率が前記範囲より低い場合、透明性が充分でなくディスプレイ用基板として使用できない場合がある。
【0043】
本発明の環状オレフィン付加共重合体フィルムの弾性率は、1000MPa以上が好ましく、さらに1500MPa以上が好ましい、特に好ましくは1800MPa以上である。弾性率が前記範囲より低い場合、強度が充分でなくディスプレイ用基板として使用できない場合がある。また、環状オレフィン付加共重合体フィルムの引張強度は、25MPa以上が好ましく、さらに28MPa以上が好ましい、特に好ましくは31MPa以上である。引張強度が前記範囲より低い場合、強度が充分でなくディスプレイ用基板として使用できない場合がある。本発明の環状オレフィン付加共重合体フィルムの破断伸びは、1.5%以上が好ましく、さらに1.9%以上が好ましく、特に2.3%以上が好ましい。破断伸びが前記範囲より低い場合、靭性が充分でなくディスプレイ用基板として使用できない場合がある。
【0044】
本発明の光学用フィルムにおける好ましいガラス転移温度、線膨張係数、飽和吸水率は本発明の環状オレフィン付加共重合体の好ましい範囲と同等である。
[光学用フィルムの用途]
本発明の光学用フィルムは、各種用途に利用できる。その具体例としては、導光板、光拡散板、カラーフィルタ、液晶またはEL表示素子用透明導電性フィルム(液晶セル基板、透明電極基板、EL素子基板)等のディスプレイ用基板、等の表示部材;位相差フィルム、偏光フィルム等の光学フィルム;半導体封止、光学素子封止等の電子部品保護材;レンズ、プリズム、リフレクター、ルーバー等の光学部材;ハードディスク基板、光ディスク基板、磁気ディスク基板、光磁気ディスク基板のごときディスク基板、ピックアップレンズや磁気ヘッドのキャリッジ、ターンテーブル、クランクバー等の情報記録部材;ラップフィルム、シュリンクフィルム、カップ、PTP、ボトル等の容器包装部材、プリント配線板、コネクター、離型フィルム等の電気絶縁部材等、その他用途として太陽電池用基板、電子ペーパー用基板、タッチパネル用フィルム、ELバックライト用フィルム、透明電磁波シールド用フィルム、等が挙げられる。
【0045】
エレクトロニクス用基板、特に、カラーフィルタ、液晶セル基板、透明電極基板、EL素子基板等のディスプレイ用基板に好適である。
【0046】
[ガスバリア膜積層体]
本発明の環状オレフィン付加共重合体フィルムは、水分、酸素、窒素の透過の防止、耐溶剤性の改良のため、少なくとも一方の面にガスバリア膜を形成し、積層体とすることができる。環状オレフィン付加共重合体フィルムとガスバリア膜の積層体を含有するフィルムは、液晶またはEL表示素子用透明導電性フィルムとして用いることができる。ガスバリア膜を形成する材料としては、例えば、ポリビニルアルコール、エチレン―ビニルアルコール共重合体、アクリロニトリル、アクリロニトリル―アクリル酸メチル共重合体、酸化ビニリデンなどが挙げられ、環状オレフィン付加共重合体フィルムにこれらの有機高分子化合物フィルムをラミネートする方法、あるいはこれらの樹脂溶液をコーティングする方法、SiO2、SiC、SiAlON、SiNなどの無機材料を蒸着し、CVDなどの物理的堆積法で積層する方法などがあげられる。また、通常の市販されているシリコン系、アクリル系ハードコートなどを塗布してもよい。ガスバリア膜の厚さは特に制限されないが、有機バリア膜の場合0.5〜50μm、好ましくは1〜30μm、無機バリア膜の場合、10〜150nm、好ましくは20〜100nmである。
さらに、ガスバリア膜とフィルムとの間にアンダーコート層を設けてもよい。アンダーコート層は、例えばシランカップリング剤、シリコーンハードコート、エポキシ樹脂、エポキシアクリレート、イソシアネート化合物等を塗布することにより形成することができる。アンダーコート層の厚さは通常0.01〜10μm、好ましくは0.02〜5μmである。
【0047】
[透明電極膜積層体]
本発明の環状オレフィン付加共重合体フィルムは少なくとも一方の面に透明電極を形成することができる。環状オレフィン付加共重合体フィルムと透明電極を含有する積層体は、液晶またはEL表示素子用透明導電性フィルムとして用いることができる。透明電極には、白金、金、銀、銅、ニッケルなどの金属や酸化すず、酸化インジウム、酸化カドミウムなどの単一酸化物や酸化すず/アンチモン、酸化インジウム/すず、酸化亜鉛/アルミニウムなどの複合相からなる金属酸化物などが用いられる。形成方法としては、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法などの物理的堆積法、CVD法、ゾルゲル法などの化学的堆積法が利用できる。
【0048】
本発明における環状オレフィン付加共重合体フィルムと透明電極の積層体は、透明電極上に、前述のガスバリア膜を、さらに積層してもよい。
【実施例】
【0049】
以下に、実施例に基づき本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら制限を受けるものではない。実施例中の部及び%は、特に断りのない限りは重量基準である。
【0050】
[重量平均分子量、数平均分子量]
ウォーターズ(Waters Alliance)社製GPCV2000システム型ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)装置でShodexUTタイプカラムを用い、オルト−ジクロロベンゼンを溶媒として、140℃で測定した。得られた分子量は標準ポリスチレン換算値である。
【0051】
[NMR測定]
共重合体の13C−NMRは、Bruker製AvanceIIIを用い、溶媒はC22Cl4、温度80℃にて測定を行った。化学シフトはC22Cl4の中心の共鳴線を74.1ppmとして求めた。
【0052】
[DSC測定]
島津製作所製DSC−50(島津熱流束示差走査熱量計)により、昇温速度20℃/minで測定してポリマーのTg(ガラス転位温度)を求めた。
【0053】
[線膨張係数]
エスエスアイ・ナノテクノロジー(株)製TMA(ThermalMechanicalAnalysis)/SS120CUにより測定した。試験形状として縦10mm、横4mm、膜厚約60μmのフィルム片を用い、3gfの荷重をかけ、昇温速度5℃/minで30℃からガラス転移温度より10℃低い温度まで昇温して、フィルム片の伸びの傾きから線膨張係数を求めた。
【0054】
[光線透過率測定]
日本分光(株)製 紫外可視分光光度計UV560を用いて、膜厚約60μmのキャストフィルムの光線透過率を測定した。
【0055】
[吸水率]
ISO62に準じて、23℃の水中にフィルムを24時間浸漬し、浸漬前後の重量変化により求めた。
【0056】
[引張特性:弾性率、強度、破断伸び]
ISO527に準じて、試験片(タイプ2)を引張速度20mm/min.で測定した。
【0057】
(合成例)
メタロセン化合物として、[(t−BuNSiMe2Flu)TiMe2]を、「Journal of Organometallic Chemistry、第691巻、193頁、2006年」の記載に基づき調整した。−20℃にて再結晶して精製して以下の重合に用いた。
【0058】
(実施例1)
(2−ノルボルネン/1−ヘキセン共重合体)
ガラス反応器に、トルエン2133部、2−ノルボルネン100部、1−ヘキセン10部、及び1Mトリオクチルアルミニウムのトルエン溶液48部を加えた。次に、トルエン87部に溶解させた[(t−BuNSiMe2Flu)TiMe2]0.75部、及びトルエン173部に溶解させたトリチルテトラキスペンタフルオロフェニルボレート1.83部を別のガラス容器で撹拌してから、前記反応器に添加した。反応温度を25℃に設定し重合を開始した。30分間撹拌して重合を行った後、メタノールを加えて重合を停止した。重合反応液を多量の塩酸酸性メタノール中に注いで重合体を析出させ、濾別洗浄後、80℃で12時間減圧乾燥して2−ノルボルネン/1−ヘキセン共重合体(1)103部を得た。得られた共重合体(1)の重量平均分子量は(Mw)は、130,000、数平均分子量(Mn)は66,000、ガラス転移温度は256℃、共重合体(1)中の2−ノルボルネン/1−ヘキセン組成比は、93/7(モル/モル)であった。この共重合体(1)100部をガラス容器に入れ、シクロヘキサン500部に溶解させた。これをPETフィルム上にバーコーター(Print Coat InstruMents Ltd.製 K303 MULTI COATER、掃引速度:1m/min)を用いて塗布した。室温で3時間、90℃で12時間減圧乾燥して約60μmのフィルムを得た。
【0059】
このフィルムの350nmでの光線透過率は90%で、線膨張係数は64×10-6/℃、吸水率は0.03%であった。また、共重合体(1)の引張弾性率は3300MPa、強度は56MPa、伸びは3.0%であった。
【0060】
(実施例2)
(2−ノルボルネン/1−デセン共重合体)
ガラス反応器に、トルエン2286部、2−ノルボルネン100部、1―デセン21部、及び1Mトリオクチルアルミニウムのトルエン溶液49部を加えた。次に、トルエン89部に溶解させた[(t−BuNSiMe2Flu)TiMe2]0.76部、及びトルエン88部に溶解させたトリチルテトラキスペンタフルオロフェニルボレート1.88部を別のガラス容器で撹拌してから、前記反応器に添加した。反応温度を25℃に設定し重合を開始した。30分間撹拌して重合を行った後、メタノールを加えて重合を停止した。重合反応液を多量の塩酸酸性メタノール中に注いで重合体を析出させ、濾別洗浄後、80℃で12時減圧乾燥して2−ノルボルネン/1−デセン共重合体(2)69部を得た。得られた共重合体(2)の重量平均分子量は(Mw)は、91,000、数平均分子量(Mn)は43,000、ガラス転移温度は252℃、共重合体(2)中の2−ノルボルネン/1−デセン組成比は、92/8(モル/モル)であった。実施例1と同様に共重合体(2)のフィルムを作成した。このフィルムの350nmでの光線透過率は89%で、線膨張係数は66×10-6/℃、吸水率は0.02%であった。また、共重合体(2)の引張弾性率は2000MPa、強度は50MPa、伸びは4.3%であった。
【0061】
(実施例3)
(2−ノルボルネン/1−ドコセン共重合体)
ガラス反応器に、トルエン2152部、2−ノルボルネン100部、1―ドコセン46部、及び1Mトリオクチルアルミニウムのトルエン溶液48部を加えた。次に、トルエン87部に溶解させた[(t−BuNSiMe2Flu)TiMe2]0.75部、及びトルエン174部に溶解させたトリチルテトラキスペンタフルオロフェニルボレート1.83部を別のガラス容器で撹拌してから、前記反応器に添加した。反応温度を25℃に設定し重合を開始した。30分間撹拌して重合を行った後、メタノールを加えて重合を停止した。重合反応液を多量の塩酸酸性メタノール中に注いで重合体を析出させ、濾別洗浄後、80℃で12時間減圧乾燥して2−ノルボルネン/1−ドコセン共重合体(3)123部を得た。得られた共重合体(3)の重量平均分子量は(Mw)は、150,000、数平均分子量(Mn)は73,000、ガラス転移温度は245℃、共重合体(3)中の2−ノルボルネン/1−ドコセン組成比は、88/12(モル/モル)であった。実施例1と同様に共重合体(3)のフィルムを作成した。このフィルムの350nmでの光線透過率は89%で、線膨張係数は79×10-6/℃、吸水率は0.04%であった。また、共重合体(3)の引張弾性率は2300MPa、強度は35MPa、伸びは2.4%であった。
【0062】
(実施例4)
(2−ノルボルネン/1−ヘキセン共重合体)
ガラス反応器に、トルエン2300部、2−ノルボルネン100部、1−ヘキセン10.7部、及び1Mトリオクチルアルミニウムのトルエン溶液48部を加えた。次に、トルエン44部に溶解させた[(t−BuNSiMe2Flu)TiMe2]0.75部、及びトルエン117部に溶解させたトリチルテトラキスペンタフルオロフェニルボレート1.98部を別のガラス容器で撹拌してから、前記反応器に添加した。反応温度を25℃に設定し重合を開始した。30分間撹拌して重合を行った後、メタノールを加えて重合を停止した。重合反応液を多量の塩酸酸性メタノール中に注いで重合体を析出させ、濾別洗浄後、80℃で12時間減圧乾燥して2−ノルボルネン/1−ヘキセン共重合体(4)107部を得た。得られた共重合体(1)の重量平均分子量は(Mw)は、150,000、数平均分子量(Mn)は96,000、ガラス転移温度は258℃、共重合体(4)中の2−ノルボルネン/1−ヘキセン組成比は、87/13(モル/モル)であった。この共重合体(3)100部をガラス容器に入れ、シクロヘキサン500部に溶解させた。これをPETフィルム上にバーコーター(Print Coat InstruMents Ltd.製 K303 MULTI COATER、掃引速度:1m/min)を用いて塗布した。室温で3時間、90℃で12時間減圧乾燥して約60μmのフィルムを得た。
【0063】
このフィルムの350nmでの光線透過率は90%で、線膨張係数は66×10-6/℃、吸水率は0.02%であった。また、共重合体(3)の引張弾性率は3900MPa、強度は57MPa、伸びは2.7%であった。
【0064】
(実施例5)
(2−ノルボルネン/1−ヘキセン共重合体)
ガラス反応器に、トルエン2300部、2−ノルボルネン100部、1−ヘキセン11.2部、及び1Mトリオクチルアルミニウムのトルエン溶液48部を加えた。次に、トルエン44部に溶解させた[(t−BuNSiMe2Flu)TiMe2]0.75部、及びトルエン175部に溶解させたトリチルテトラキスペンタフルオロフェニルボレート1.84部を別のガラス容器で撹拌してから、前記反応器に添加した。反応温度を25℃に設定し重合を開始した。30分間撹拌して重合を行った後、メタノールを加えて重合を停止した。重合反応液を多量の塩酸酸性メタノール中に注いで重合体を析出させ、濾別洗浄後、80℃で12時間減圧乾燥して2−ノルボルネン/1−ヘキセン共重合体(5)102部を得た。得られた共重合体(5)の重量平均分子量は(Mw)は、175,000、数平均分子量(Mn)は84,000、ガラス転移温度は262℃、共重合体(5)中の2−ノルボルネン/1−ヘキセン組成比は、90/10(モル/モル)であった。この共重合体(5)100部をガラス容器に入れ、シクロヘキサン500部に溶解させた。これをPETフィルム上にバーコーター(Print Coat InstruMents Ltd.製 K303 MULTI COATER、掃引速度:1m/min)を用いて塗布した。室温で3時間、90℃で12時間減圧乾燥して約60μmのフィルムを得た。
【0065】
このフィルムの350nmでの光線透過率は90%で、線膨張係数は63×10-6/℃、吸水率は0.02%であった。また、共重合体(5)の引張弾性率は6200MPa、強度は62MPa、伸びは3.7%であった。
【0066】
(比較例1)
(2−ノルボルネン/1−デセン共重合体)
ガラス反応器に、トルエン2262部、2−ノルボルネン100部、1―デセン100部、及び1Mトリオクチルアルミニウムのトルエン溶液48部を加えた。次に、トルエン89部に溶解させた[(t−BuNSiMe2Flu)TiMe2]0.76部、及びトルエン174部に溶解させたトリチルテトラキスペンタフルオロフェニルボレート1.83部を別のガラス容器で撹拌してから、前記反応器に添加した。反応温度を25℃に設定し重合を開始した。30分間撹拌して重合を行った後、メタノールを加えて重合を停止した。重合反応液を多量の塩酸酸性メタノール中に注いで重合体を析出させ、濾別洗浄後、80℃で12時間減圧乾燥してノルボルネン/1−デセン共重合体(4)90部を得た。得られた共重合体(4)の重量平均分子量は(Mw)は、100,000、数平均分子量(Mn)は51,000、ガラス転移温度は199℃、共重合体(4)中の2−ノルボルネン/1−デセン組成比は、67/33(モル/モル)であった。実施例1と同様に共重合体(4)のフィルムを作成した。このフィルムの350nmでの光線透過率は90%で、線膨張係数は95×10-6/℃、吸水率は0.03%であった。共重合体(4)のフィルムは脆く、引張物性は測定できなかった。
【0067】
これらの結果をまとめて表1に示す。
【0068】
【表1】

表1の結果から、環状オレフィン/α−オレフィンの割合が67/33モル%である環状オレフィン付加共重合体(比較例1)では、線膨張係数が95×10-6/℃と大きくかつフィルムが脆いのに対して、本発明の環状オレフィン/α−オレフィンの割合が80〜99/1〜12モル%の環状オレフィン付加共重合体(実施例1〜3)では、80×10-6/℃未満の線膨張係数および2%以上の引張伸びを有することが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状オレフィン(A)単量体単位と炭素数5以上のα−オレフィン(B)単量体単位から得られる環状オレフィン付加共重合体のフィルムであって、構造単位(A)と構造単位(B)との合計100モル%中、構造単位(A)の割合が80〜99モル%、構造単位(B)の割合が1〜20モル%であることを特徴とする光学用フィルム。
【請求項2】
構造単位(A)と構造単位(B)との合計100モル%中、構造単位(A)の割合が85〜95モル%、構造単位(B)の割合が5〜15モル%であることを特徴とする請求項1記載の光学用フィルム。
【請求項3】
線膨張係数が80×10-6/℃未満である請求項1または2記載の光学用フィルム。
【請求項4】
環状オレフィン(A)単量体単位と炭素数5以上のα−オレフィン(B)単量体単位から得られる環状オレフィン付加共重合体であって、構造単位(A)と構造単位(B)との合計100モル%中、構造単位(A)の割合が80〜99モル%、構造単位(B)の割合が1〜20モル%であることを特徴とする環状オレフィン付加共重合体。
【請求項5】
請求項4に記載の環状オレフィン付加共重合体からなる成形体。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれかに記載のフィルムを含有することを特徴とする液晶またはEL表示素子用透明導電性フィルム。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれかに記載のフィルムとガスバリア膜の積層体を含有することを特徴とする液晶またはEL表示素子用透明導電性フィルム。
【請求項8】
請求項1〜3のいずれかに記載のフィルムと金属酸化物膜の積層体を含有することを特徴とする液晶またはEL表示素子用透明導電性フィルム。

【公開番号】特開2009−298999(P2009−298999A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−174568(P2008−174568)
【出願日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】