説明

環状オレフィン系フィルムとの付着性に優れるコーティング組成物及びこれを用いて製造したコーティング層を含む環状オレフィン系フィルム

【課題】
【解決手段】本発明は、アクリレート系バインダー樹脂100重量部、オレフィン系樹脂5〜50重量部、光開始剤2〜20重量部、および溶媒80〜400重量部を含む環状オレフィン系フィルムのコーティング用組成物、および前記組成物に平均粒径0.5〜5μmの微粒子1〜20重量部をさらに含む環状オレフィン系フィルムのコーティング用組成物に関するものであり、これは、各々環状オレフィン系フィルムに対するハードコーティング組成物および眩しさ防止コーティング組成物として用いることができる。
本発明に係る環状オレフィン系フィルムのコーティング用組成物は、環状オレフィン系フィルム上にコロナ、プラズマなどの親水表面処理をしなくても、コーティング組成物としてオレフィン系樹脂を用いることにより、既存に具現されている眩しさ防止、反射防止などの光学特性、耐スクラッチ性、耐摩耗性などの機械的物性を維持しつつ、環状オレフィン系フィルムとの付着性に優れるコーティング層を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状オレフィン系フィルムとの付着性に優れるコーティング組成物に関する。より詳しくは、本発明は、環状オレフィン系重合体または共重合体樹脂で形成された光学フィルム(以下、「環状オレフィン系フィルム」という)にコロナ、プラズマなどの親水表面処理過程を行わなくても、既存に具現されている眩しさ防止、反射防止などの光学特性、耐スクラッチ性、耐摩耗性などの機械的物性を維持しつつ、環状オレフィン系フィルムとの付着性に優れるコーティング層を提供できる環状オレフィン系フィルムのコーティング用組成物に関する。本発明に係るコーティング組成物は、ハードコーティング組成物または眩しさ防止コーティング組成物として用いることができる。本出願は2007年1月4日に韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10−2007−0000965号の出願日の利益を主張し、その内容の全ては本明細書に含まれる。
【背景技術】
【0002】
情報化社会への移行に伴い、液晶表示装置(LCD)、プラズマ表示パネル(PDP)、電気泳動表示装置(ELD)などの多様で多くのディスプレイが開発中であるか、商品化されており、室内展示用ディスプレイはますます大型化及び薄型化され、室外携帯用ディスプレイは小型化及び軽量化される傾向にある。このような傾向に対応して、現在、ディスプレイの厚さを最小化させる技術は必須となってきており、このために早くから各種の光学フィルムが用いられている。
【0003】
前記光学フィルムに用いられる材料は、ディスプレイの種類によって差はあるが、一般的に高い投光度、光学的等方性、無欠点表面、高耐熱性及び高耐湿性、高柔軟性、高表面硬度、低収縮率、工程上の処理容易性などの物性を有さなければならない。
【0004】
一般的な光学フィルム材料としては、トリアセチルセルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネートなどがあり、ディスプレイの条件および光学フィルム材料の固有な物性により選択し、光学フィルムの製造に用いることができる。
【0005】
しかし、一般的に光学フィルムは単独で使用されなく、表面コーティング処理をすることにより、光学フィルム材料の固有特性から起因する足りない物性を補完し、付加的に必要なディスプレイ機能を具現する。特に、光学フィルムがディスプレイの最外郭に位置する場合には、外傷防止、眩しさ防止、反射防止、帯電防止、耐汚染性などの機能を付することが非常に重要になる。
【0006】
現在、LCD用偏光板には、ポリビニルアルコール材質の偏光膜を保護するための保護膜として、両面に高投光度、光学的等方性、無欠点表面などの特性を有するトリアセチルセルロースフィルムを通常的に用いている。しかし、トリアセチルセルロースフィルムは熱や湿度に弱いため、高温高湿の環境で長時間使用する場合、偏光度の低下および水分劣化によりふちの光が過多に漏れる光漏れ現象などの問題が発生し、耐久性が低下する。
【0007】
このような問題を解決するために、大韓民国公開特許2004−0071485(2004.08.12公開)(特許文献1)では、トリアセチルセルロースを代替して環状オレフィン系樹脂を用いる方案を開示している。環状オレフィン系樹脂はノルボルネン系樹脂ともいい、環状オレフィン系重合体だけではなく、環形および線状オレフィンが混在している環状オレフィン系共重合体を含む。
【0008】
前記環状オレフィン系樹脂は、炭化水素の含量が高いため誘電定数が低く、電気的には等方性に優れるため複屈折がなく、吸湿性が低く、無定形であり、π共役(π−conjugation)による可視光線領域での光吸収がないため優れる光透過度を示し、延伸処理を行うことにより位相差を付することができるため、位相差フィルムへの適用も可能である。
【0009】
しかし、多くの環状オレフィン系樹脂は、極性基がないか、非常に弱い極性を有するノルボルネンを単量体としているため、極性が非常に高いポリビニルアルコール偏光膜との層間付着性が既存の他の光学フィルム使用時より低下するという問題があり、また、追加的な機能を付するための表面コーティング処理時にコーティング膜との付着性が大きく低下するという問題があった。
【0010】
このような問題を解決するために、環状オレフィン系樹脂に他の特定成分の添加、ポリマー自体の変形、または分子量の調節などのような、多様な環状オレフィン系光学フィルムの製造方法が開示されているが、光学特性、成分間の親和性、光学フィルム強度などが低下するという問題があった。
【0011】
また、他の方法として、環状オレフィン系フィルムにコロナ、プラズマなどの親水表面処理を行った後、コーティングをすることにより、付着性を改善する方法が開示されているが、表面処理工程の追加によるコストおよび生産性負担、および表面処理過程で発生する各種副産物および汚染源が製品に残留して、製品収率を低下させるという問題があった。
【0012】
したがって、光学フィルムの製造過程でポリマーを変性させたり、コーティング前の光学フィルムに表面処理をする過程なしで、コーティング組成物自体の開発を通して、環状オレフィン系フィルムと表面コーティング膜との付着性を顕著に向上させることができる方法に関する研究が強く要求されている実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
韓国公開特許第2004−0071485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
前記した従来技術の問題点を解決するために、本発明は、環状オレフィン系フィルム上にコロナ、プラズマなどの親水表面処理をしなくても、コーティング組成物としてオレフィン系樹脂を用いることにより、既存に具現されている眩しさ防止、反射防止などの光学特性、耐スクラッチ性、耐摩耗性などの機械的物性を維持しつつ、環状オレフィン系フィルムとの付着性に優れる環状オレフィン系フィルムのコーティング用組成物を提供することを目的とする。本発明に係るコーティング組成物は、ハードコーティング組成物または眩しさ防止コーティング組成物として用いることができる。また、本発明は、前記コーティング組成物を用いて形成したコーティング層を備えた環状オレフィン系フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記した目的を達成するために、本発明は、アクリレート系バインダー樹脂100重量部、オレフィン系樹脂5〜50重量部、光開始剤2〜20重量部、および溶媒80〜400重量部を含む環状オレフィン系フィルムのコーティング用組成物を提供する。この組成物は、耐スクラッチ性、耐摩耗性などの機械的物性に優れながらも、環状オレフィン系フィルムとの付着性に優れるコーティング層を提供することができるため、環状オレフィン系フィルムに対するハードコーティング組成物として用いることができる。
【0016】
前記した本発明に係る環状オレフィン系フィルムのコーティング用組成物は、平均粒径0.5〜5μmの微粒子1〜20重量部をさらに含むことができる。この場合、耐スクラッチ性、耐摩耗性などの機械的物性だけではなく、眩しさ防止、反射防止などの光学特性に優れ、環状オレフィン系フィルムとの付着性に優れるコーティング層を提供することができるため、環状オレフィン系フィルムに対する眩しさ防止コーティング組成物として用いることができる。
【0017】
前記した本発明に係る環状オレフィン系フィルムのコーティング用組成物は、前記アクリレート系バインダー樹脂100重量部に対して界面活性剤を0より大きく10以下の重量部でさらに含むことができる。
【0018】
また、本発明は、前記コーティング組成物を用いて形成したコーティング層を備えた環状オレフィン系フィルムを提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る環状オレフィン系フィルムのコーティング用組成物によれば、環状オレフィン系フィルム上にコロナ、プラズマなどの親水表面処理をしなくても、既存に具現されている優れる眩しさ防止、反射防止などの光学特性、耐スクラッチ性、耐摩耗性などの機械的物性を維持しつつ、環状オレフィン系フィルムとの付着性に顕著に優れる効果を有するコーティング層を提供することができる。したがって、本発明に係る前記環状オレフィン系フィルムのコーティング用組成物を用いて形成したコーティング層を備えた環状オレフィン系フィルムは、既存のコーティング処理により具現されている優れた光学特性および機械的物性を維持しつつ、コーティング層との付着性に顕著にも優れるという効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0021】
本発明者等は、環状オレフィン系フィルムとの付着性を向上することができるUV硬化型アクリル系ハードコーティング組成物および眩しさ防止コーティング組成物に対して研究しているところ、アクリレート系バインダー樹脂中にオレフィン系樹脂を添加した結果、既存のハードコーティング膜および眩しさ防止コーティング膜の光学および機械的物性は大きく低下されなく、環状オレフィン系フィルムとの付着性が向上されることを確認し、これを基として本発明を完成するに至った。
【0022】
本発明に係る環状オレフィン系フィルムのコーティング用組成物は、アクリレート系バインダー樹脂100重量部、オレフィン系樹脂5〜50重量部、光開始剤2〜20重量部、および溶媒80〜400重量部を含むことを特徴とする。本発明に係る環状オレフィン系フィルムのコーティング用組成物は、前記アクリレート系バインダー樹脂100重量部に対して界面活性剤を0より大きく10以下の重量部でさらに含むことができる。
【0023】
前記した環状オレフィン系フィルムのコーティング用組成物は、環状オレフィン系フィルムなどに塗布する場合、環状オレフィン系フィルムとの付着性に優れるだけではなく、耐スクラッチ性、耐摩耗性などの機械的物性に優れ、環状オレフィン系フィルムを外部の化学的・物理的な力から保護し、耐久性などを高める役割をすることができる。したがって、前記環状オレフィン系フィルムのコーティング用組成物は、環状オレフィン系フィルムに対してハードコーティング組成物として用いることができる。
【0024】
前記アクリレート系バインダー樹脂は、アクリレート単量体およびオリゴマーを含むことができる。
【0025】
前記アクリレート単量体には、1〜6個のアクリレート官能基を有する化合物を用いることが好ましく、その例としては、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチレンプロピルトリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、エチルアクリレート、エチルヘキシルアクリレート、ブチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、オクタデシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、βカルボキシエチルアクリレートなどがある。
【0026】
前記アクリレートオリゴマーとしては、通常、2〜6個のアクリレート官能基を有するウレタン変性アクリレートオリゴマー、エポキシアクリレートオリゴマー、またはエーテルアクリレートオリゴマーなどを用いることができ、特に、重量平均分子量が500〜10,000であることが好ましい。
【0027】
前記オレフィン系樹脂は、線状または環状オレフィン系構造を含むオレフィン系化合物が含まれているすべての重合体および共重合体樹脂を含む。前記オレフィン系樹脂は、重量平均分子量が500〜10,000,000であることが好ましい。前記オレフィン系樹脂の例としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン−n−ブチルアクリレート共重合体(EnBA)などのオレフィン系エラストマー、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)などのオレフィン系ブロック共重合体、塩化ポリプロピレン−アクリレート変性共重合体などの変性オレフィン系樹脂などがある。
【0028】
前記オレフィン系樹脂は、アクリレート系バインダー樹脂100重量部に対して5〜50重量部で含まれることが好ましい。その含量が5重量部未満である場合、基材との付着力が低下するという問題があり、50重量部を超過する場合、コーティング膜の耐スクラッチ性、耐摩耗性が低下するという問題がある。
【0029】
前記光開始剤としては、紫外線に分解される化合物を用いることが好ましく、その例としては、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンジルジメチルケタール、ヒドロキシジメチルアセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、またはベンゾインエチルエーテルなどがある。
【0030】
前記光開始剤は、アクリレート系バインダー樹脂100重量部に対して2〜20重量部で含まれることが好ましい。その含量が2重量部未満である場合、コーティング膜の未硬化が発生するという問題があり、20重量部を超過する場合、コーティング膜の耐スクラッチ性、耐摩耗性が低下するという問題がある。
【0031】
前記界面活性剤としては、レベリング剤または湿潤剤などを用いることができ、特に、フッ素系またはポリシロキサン系化合物を用いることが好ましい。
【0032】
前記界面活性剤は、アクリレート系バインダー樹脂100重量部に対して最大10重量部で含まれることが好ましい。その含量が10重量部を超過する場合には、基材との付着性、およびコーティング膜の耐スクラッチ性、耐摩耗性が低下するという問題がある。
【0033】
前記溶媒としては、アルコール類、アセテート類、ケトン類、または芳香族溶媒などを用いることができ、その例としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、2−イソプロポキシエタノール、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、トルエン、キシレン、またはベンゼンなどがある。
【0034】
前記溶媒は、アクリレート系バインダー樹脂100重量部に対して80〜400重量部で含まれることが好ましい。前記溶媒の含量が80重量部未満である場合、コーティング組成物の粘度が高くなって、コーティング膜の平坦化度が悪化するなど、コーティング性が低下するという問題があり、400重量部を超過する場合、コーティング膜の耐スクラッチ性、耐摩耗性が低下し、コーティング組成物の粘度がコーティング機械および基材に転写できない程度に非常に低くなるという問題がある。
【0035】
本発明に係る環状オレフィン系フィルムのコーティング用組成物は、平均粒径0.5〜5μmの微粒子1〜20重量部をさらに含むことができる。この場合、耐スクラッチ性、耐摩耗性などの機械的物性だけではなく、眩しさ防止、反射防止などの光学特性に優れ、環状オレフィン系フィルムとの付着性に優れるコーティング層を提供することができるため、環状オレフィン系フィルムに対する眩しさ防止コーティング組成物として用いることができる。
【0036】
前記微粒子は、平均粒径0.5〜5μmの有機物および無機物の定形あるいは無定形粒子である。前記微粒子は、アクリレート系バインダー樹脂100重量部に対して1〜20重量部で含まれることが好ましい。その含量が1重量部未満である場合、微粒子がアクリレート系バインダー樹脂に埋没されるため眩しさ防止効果が少なく、20重量部を超過する場合、ディスプレイ用途としての光学特性が顕著に低下するという問題がある。
【0037】
また、本発明は、前述した本発明に係る環状オレフィン系フィルムのコーティング用組成物を用いて製造したコーティング層を備えた環状オレフィン系フィルムを提供する。前記コーティング層は、ハードコーティング層または眩しさ防止層の役割をすることができる。前記コーティング層の厚さは、特に限定されていないが、0.01〜1,000μmであることが好ましい。
【0038】
前記コーティング層は、前述した本発明に係る環状オレフィン系フィルムのコーティング用組成物を環状オレフィン系フィルムにコーティングし、必要な場合、乾燥および硬化を行うことにより形成することができる。コーティング層の形成方法としては、当技術分野の公知技術を制限されずに用いることができる。
【0039】
前記環状オレフィン系フィルムとは、環状オレフィン系構造を含む重合体または共重合体樹脂を含むフィルムを意味する。前記環状オレフィン系構造を含む重合体または共重合体樹脂は、当技術分野の公知のものであれば、その種類は特に制限されない。
【0040】
当技術分野において、フィルムは狭義では薄い膜状を意味し、シートは前記狭義のフィルムより相対的に厚いものを意味し、前記シートは布状であることを意味する場合もあるが、それは客観的な基準がない観念的なことであって、本明細書において、「フィルム」という用語は、前記狭義のフィルムだけではなく、前記シートと称される厚さを有するすべてのものを含み、その形態も特定形態に限定されないことを意図する。例えば、前記環状オレフィン系フィルムは、0.5μm〜0.5mmの厚さを有するフィルムだけではなく、0.5mm以上1,000mm以下の厚さを有するシートの形態も含む。前記環状オレフィン系フィルムの厚さは、1μm以上100mm以下であることが好ましい。
【0041】
以下、本発明の理解のための好ましい実施例を提示するが、下記実施例はただ本発明の例示のためのものに過ぎず、本発明の範囲が下記実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0042】
<ハードコーティング液組成物の製造>
<実施例1>
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート22重量部、ヘキサンジオールジアクリレート13重量部、およびウレタン変性アクリレートオリゴマー(重量平均分子量800、6個のアクリレート官能基、SK Cytec社製)65重量部で形成されたアクリレート系バインダー樹脂100重量部に、オレフィン系樹脂としてエチレン−酢酸ビニル共重合体(重量平均分子量500,000)17重量部、光開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン13重量部、界面活性剤として湿潤剤(Tego 270、Tego社製)0.9重量部、および溶媒としてシクロヘキサン217重量部とメチルエチルケトン87重量部とを常温で混合して、ハードコーティング液組成物を製造した。
【0043】
<比較例1>
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート22重量部、ヘキサンジオールジアクリレート13重量部、およびウレタン変性アクリレートオリゴマー(重量平均分子量800、6個のアクリレート官能基、SK Cytec社製)65重量部で形成されたアクリレート系バインダー樹脂100重量部に、光開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン13重量部、界面活性剤として湿潤剤(Tego 270、Tego社製)0.9重量部、および溶媒としてシクロヘキサン217重量部とメチルエチルケトン87重量部とを常温で混合して、ハードコーティング液組成物を製造した。
【0044】
<眩しさ防止コーティング液組成物の製造>
<実施例2>
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート22重量部、βカルボキシエチルアクリレート13重量部、およびウレタン変性アクリレートオリゴマー(重量平均分子量1000、6個のアクリレート官能基、SK Cytec社製)65重量部で形成されたアクリレート系バインダー樹脂100重量部に、オレフィン系樹脂としてスチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(LG化学、LG604)22重量部、微粒子として平均粒径2μmのシリカ(OK607、デグ社製)2.2重量部、光開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン13重量部、界面活性剤として湿潤剤(Tego 270、Tego社製)0.9重量部、および溶媒としてトルエン217重量部とメチルイソブチルケトン87重量部とを常温で混合して、眩しさ防止コーティング液組成物を製造した。
【0045】
<比較例2>
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート22重量部、βカルボキシエチルアクリレート13重量部、およびウレタン変性アクリレートオリゴマー(重量平均分子量1000、6個のアクリレート官能基、SK Cytec社製)65重量部で形成されたアクリレート系バインダー樹脂100重量部に、微粒子として平均粒径2μmのシリカ(OK607、デグ社製)2.2重量部、光開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン13重量部、界面活性剤として湿潤剤(Tego 270、Tego社製造)0.9重量部、および溶媒としてトルエン217重量部とメチルイソブチルケトン87重量部とを常温で混合して、眩しさ防止コーティング液組成物を製造した。
【0046】
<試験例>
前記実施例1乃至2および比較例1〜2で製造したコーティング液組成物を用いて60μm厚さの環状オレフィン系フィルム(Zeonor、ZEON社製)をワイヤーバー(10号)でコーティング処理した後、これを60℃のオーブンで2分間乾燥し、1J/cm2のUV(紫外線)で硬化することにより、コーティング処理された環状オレフィン系フィルムを製造した。
【0047】
コーティング処理された環状オレフィン系フィルムの透過率、ヘイズ、付着性、耐スクラッチ性などの物性を下記の方法で測定し、その結果を下記表1に示した。
【0048】
ア)透過率およびヘイズ−HR100(日本村上社製)を用いて測定した。
【0049】
イ)付着性−クロスカット(10×10)テープ法で、クロスカットの部分にテープを貼り剥がした後、膜が残っている比率を観察して測定した。
【0050】
ウ)耐スクラッチ性−スチールウール(grade #0000)を装着した摩耗試料を用いて1kgの荷重でコーティングフィルムを擦った後、スクラッチの有無を肉眼で観察して、上、中、下で評価した。
【0051】
【表1】

【0052】
前記表1に示すように、本発明のオレフィン系樹脂を含むハードコーティング液(実施例1)で処理された環状オレフィン系フィルムは、オレフィン系樹脂を含んでいないハードコーティング液(比較例1)で処理された環状オレフィン系フィルムに比べて、優れる透過率、透明度、および耐スクラッチ性はそのまま維持しながらも、付着性は顕著に優れることを確認することができた。
【0053】
また、本発明のオレフィン系樹脂を含む眩しさ防止コーティング液組成物(実施例2)で処理された環状オレフィン系フィルムは、オレフィン系樹脂を含んでいない眩しさ防止コーティング液組成物(比較例2)で処理された環状オレフィン系フィルムに比べて、優れる透過率、透明度、および耐スクラッチ性はそのまま維持しながらも、付着性は顕著に優れることを確認することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリレート系バインダー樹脂100重量部、オレフィン系樹脂5〜50重量部、光開始剤2〜20重量部、および溶媒80〜400重量部を含むことを特徴とする環状オレフィン系フィルムのコーティング用組成物。
【請求項2】
前記アクリレート系バインダー樹脂は、アクリレート単量体およびアクリレートオリゴマーからなる群より選択される1種以上を含むことを特徴とする、請求項1に記載の環状オレフィン系フィルムのコーティング用組成物。
【請求項3】
前記アクリレート単量体は、1〜6個のアクリレート官能基を有する化合物であることを特徴とする、請求項2に記載の環状オレフィン系フィルムのコーティング用組成物。
【請求項4】
前記アクリレート単量体は、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチレンプロピルトリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、エチルアクリレート、エチルヘキシルアクリレート、ブチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、オクタデシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、およびヒドロキシエチルアクリレートからなる群より選択される1種以上を含むことを特徴とする、請求項3に記載の環状オレフィン系フィルムのコーティング用組成物。
【請求項5】
前記アクリレートオリゴマーは、平均分子量が500〜10,000であり、2〜6個のアクリレート官能基を有するアクリレートオリゴマーであることを特徴とする、請求項2に記載の環状オレフィン系フィルムのコーティング用組成物。
【請求項6】
前記オレフィン系樹脂は、オレフィン系エラストマー、オレフィン系ブロック共重合体、および変性オレフィン系樹脂からなる群より選択される1種以上を含むことを特徴とする、請求項1に記載の環状オレフィン系フィルムのコーティング用組成物。
【請求項7】
前記オレフィン系エラストマーは、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、およびエチレン−n−ブチルアクリレート共重合体からなる群から選択される1種以上を含み、前記オレフィン系ブロック共重合体は、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、およびスチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体からなる群より選択される1種以上を含み、前記変性オレフィン系樹脂は、塩化ポリプロピレン−アクリレート変性共重合体であることを特徴とする、請求項6に記載の環状オレフィン系フィルムのコーティング用組成物。
【請求項8】
前記光開始剤は、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンジルジメチルケタール、ヒドロキシジメチルアセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、およびベンゾインエチルエーテルからなる群より選択される1種以上を含むこと特徴とする、請求項1に記載の環状オレフィン系フィルムのコーティング用組成物。
【請求項9】
前記溶媒は、アルコール類、アセテート類、ケトン類、および芳香族化合物からなる群から選択される1種以上を含むことを特徴とする、請求項1に記載の環状オレフィン系フィルムのコーティング用組成物。
【請求項10】
前記溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、2−イソプロポキシエタノール、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、トルエン、キシレン、およびベンゼンからなる群より選択される1種以上を含むことを特徴とする、請求項9に記載の環状オレフィン系フィルムのコーティング用組成物。
【請求項11】
界面活性剤をアクリレート系バインダー樹脂100重量部に対して0より大きく10以下の重量部でさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の環状オレフィン系フィルムのコーティング用組成物。
【請求項12】
前記界面活性剤は、レベリング剤または湿潤剤であることを特徴とする、請求項11に記載の環状オレフィン系フィルムのコーティング用組成物。
【請求項13】
前記アクリレート系バインダー樹脂100重量部に対して平均粒径0.5〜5μmの微粒子1〜20重量部をさらに含むことを特徴とする、請求項1乃至12のいずれか一項に記載の環状オレフィン系フィルムのコーティング用組成物。
【請求項14】
請求項1乃至12のいずれか一項による環状オレフィン系フィルムのコーティング用組成物を用いて形成したコーティング層を備えることを特徴とする環状オレフィン系フィルム。
【請求項15】
前記環状オレフィン系フィルムの厚さが、0.5μm〜1000mmであることを特徴とする、請求項14に記載の環状オレフィン系フィルム。
【請求項16】
請求項13による環状オレフィン系フィルムのコーティング用組成物を用いて形成したコーティング層を備えることを特徴とする環状オレフィン系フィルム。
【請求項17】
前記環状オレフィン系フィルムの厚さが、0.5μm〜1000mmであることを特徴とする、請求項16に記載の環状オレフィン系フィルム。

【公表番号】特表2010−514894(P2010−514894A)
【公表日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−543962(P2009−543962)
【出願日】平成20年1月3日(2008.1.3)
【国際出願番号】PCT/KR2008/000034
【国際公開番号】WO2008/082257
【国際公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】