説明

環状ケトンの製造方法

本発明は、7〜16個の炭素原子を有する環状ケトンの製造方法において、少なくとも
(a)7〜16個の炭素原子を有し、少なくとも1つのC−C二重結合を有する環状オレフィンを少なくとも含有する組成物(I)を一酸化二窒素によって酸化させて組成物(A)を得る工程、
(b)前記組成物(A)を少なくとも1つの塩基で処理して組成物(B)を得る工程
を含む方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、7〜16個の炭素原子を有する環状ケトンの製造方法において、7〜16個の炭素原子を有し、少なくとも1つのC−C二重結合を有する環状オレフィンを少なくとも含有する組成物(I)を一酸化二窒素によって酸化させて組成物(A)を得ることと、前記組成物(A)を少なくとも1つの塩基で処理して組成物(B)を得ることを少なくとも含む方法に関する。
【0002】
オレフィン化合物のアルデヒドもしくはケトンへの一酸化二窒素による酸化は、例えばGB649,680号もしくはその対応のUS2,636,898号に記載されている。両方の文献には、単に一般的に、酸化が原則的に好適な酸化触媒の存在下で実施できることが開示されている。
【0003】
新たな科学文献であるG.I.Panov他著の"オレフィンの亜酸化窒素による非触媒的液相酸化 1.シクロヘキセンのシクロヘキサノンへの酸化(Non−Catalytic Liquid Phase Oxidation of Olefines with Nitrous Oxide. 1.Oxidation of Cyclohexene to Cyclohexanone)",React.Kinet.Catal.Lett.Vol.76,No.2(2002)S.401−405及びK.A.Dubkov他著の"オレフィンの亜酸化窒素による非触媒的液相酸化 2.シクロペンテンのシクロペンタノンへの酸化(Non−Catalytic Liquid Phase Oxidation of Olefines with Nitrous Oxide. 2.Oxidation of Cyclopentene to Cyclopentanone)",React.Kinet.Catal.Lett.Vol.77,No.1(2002)S.197−205においては、同様に、オレフィン性化合物の一酸化二窒素による酸化が記載されている。また、Adv.Synth.Catal.2004,346,268−274におけるE.V.Starokon他著の科学文献"オレフィンの亜酸化窒素によるカルボニル化合物への液相酸化(Liquid Phase Oxidation of Olefines with Nitrous Oxide to Carbonyl Compounds)"は、液相中での一酸化二窒素によるオレフィンの酸化の機構論的研究を内容としている。
【0004】
オレフィンからの一酸化二窒素を用いたカルボニル化合物の合成は、また、種々の国際特許出願において記載されている。ここで、WO03/078370号は、脂肪族オレフィンから一酸化二窒素によりカルボニル化合物を製造するための方法を開示している。その反応は、20〜350℃の範囲の温度で、かつ0.01〜100atmの圧力で実施される。WO03/078374号は、シクロヘキサノンの製造のための相応の方法を開示している。WO03/078372号によれば、4〜5個の炭素原子を有する環状ケトンが製造される。WO03/078375号によれば、前記の方法条件下で、7〜20個の炭素原子を有する環状オレフィンから環状ケトンが製造される。WO03/078371号は、置換オレフィンから置換ケトンを製造する方法を開示している。WO04/000777号は、ジオレフィン及びポリオレフィンと一酸化二窒素と反応させて相応のカルボニル化合物を得る方法を開示している。
【0005】
WO2005/030690号及びWO2005/030689号においては、シクロドデカノンの製造方法が記載されており、その際、1つの方法工程において一酸化二窒素による酸化が行われる。WO2005/030690号においては、1,5,9−シクロドデカトリエン(CDT)をN2Oで酸化させてシクロドデカ−4,8−ジエノンを得て、引き続きシクロドデカ−4,8−ジエノンを水素化してシクロドデカノンを得ることによってシクロドデカノンを製造する方法が記載されている。
【0006】
全ての方法は、粗生成物の純度が更なる精製なくしては幾つかの用途には十分でないということに共通している。酸素含有基を有する特定の有機化合物は、しばしば、得られる生成物中になおも高すぎる量で含まれている。
【0007】
オレフィンの一酸化二窒素による酸化に際して、例えばアルデヒドが副生成物として形成されることがある。それは例えばPanov他著のAdv.Synth.Catal.(2004)346,268−274に記載されている。
【0008】
そのことは、環状ケトンが種々の用途のために高い純度で必要とされるという点で問題である。ここで例えば、シクロドデカノンは、例えばラウリンラクタム、ドデカンジカルボン酸及びそこから誘導されるナイロン12もしくはナイロン6.12などのポリアミドの製造のための重要な中間生成物である。その際、環状ケトンに含まれるアルデヒドなどの不純物は、蒸留、抽出もしくは再結晶化などの慣用の精製方法によって困難を伴ってのみ除去できるにすぎない。それというのも、官能基と炭素原子の数が類似しているからである。従って、前記の場合に、非常に費用のかかる精製、例えば多段階蒸留及び/又は結晶化による精製が必要である。それによって、前記の精製方法は、労力がかかり、かつ費用のかかるものである。
【0009】
従って、本発明の課題は、環状ケトンを簡単にかつ少ない費用をもって高い純度で得ることができる方法を提供することであった。
【0010】
本発明によれば、前記課題は、7〜16個の炭素原子を有する環状ケトンの製造方法において、少なくとも
(a)7〜16個の炭素原子を有し、少なくとも1つのC−C二重結合を有する環状オレフィンを少なくとも含有する組成物(I)を一酸化二窒素によって酸化させて組成物(A)を得る工程、
(b)前記組成物(A)を少なくとも1つの塩基で処理して組成物(B)を得る工程
を含む方法によって解決される。
【0011】
ここで驚くべきことに、環状アルデヒド及び開鎖アルデヒドなどの特定の副生成物が、一般に、同じ数の炭素原子もしくは類似の数の炭素原子を有する環状ケトンとの混合物から選択的に低減されうることが判明したが、その際、該混合物は、例えば高められた温度で塩基によって処理される。概念"低減"とは、本発明の範囲においては、アルデヒドの量が、環状ケトンに対して減少されること、特に環状ケトンが実質的に攻撃されないことを意味する。
【0012】
"処理"とは、本願の範囲においては、組成物と少なくとも1つの塩基との接触を表す。
【0013】
本発明による方法によって、例えば99.5%より高い純度を有する環状ケトンを得ることができる。その際、本発明による方法は、現存の設備と簡単に組み合わせることができるので、費用のかかる改造は必要とならない。更に、本発明による方法は、オレフィンの一酸化二窒素による酸化に際して、環状ケトンの収率を改善させる可能性を表す。それというのも、塩基による処理は一般に非常に選択的であるため、生成物の損失がより少なくなるからである。
【0014】
工程(a)による反応は、一般に、オレフィンと一酸化二窒素とを互いに反応させる全ての方法操作に従って行うことができる。
【0015】
本発明による方法の工程(a)によれば、環状オレフィンは、一酸化二窒素との反応によって酸化される。その際に、環状オレフィンと一酸化二窒素との反応のために、少なくとも1つの好適な溶剤もしくは希釈剤を使用できる。前記の溶剤もしくは希釈剤としては、とりわけ環状アルカン、例えばシクロドデカンもしくはシクロドデカノン又は飽和の脂肪族もしくは芳香族の、場合によりアルキル置換された炭化水素が挙げられ、その際、実質的にあらゆる通常の溶剤及び/又は希釈剤が適しているが、但し、それらはC−C二重結合も、C−C三重結合も、アルデヒド基も有さない。
【0016】
一般に、環状オレフィンと一酸化二窒素との反応に際して、溶剤もしくは希釈剤の添加は必要ない。
【0017】
環状オレフィンと一酸化二窒素との反応における温度は、好ましくは140〜350℃の範囲であり、更に好ましくは180〜320℃の範囲であり、特に好ましくは200〜300℃の範囲である。
【0018】
環状オレフィンと一酸化二窒素とを、それぞれ上述の範囲内にある、2つ以上の温度で、もしくは2つ以上の温度範囲で反応させることができる。反応の経過における温度変化は、連続的にもしくは断続的にも実施できる。
【0019】
環状オレフィンと一酸化二窒素との反応における圧力は、好ましくは、選択された1つの反応温度もしくは選択された複数の反応温度で、出発物質混合物もしくは生成物混合物の固有圧力より高い。それらの圧力は、好ましくは1〜1000バールの範囲にあり、更に好ましくは40〜300バールの範囲にあり、特に好ましくは50〜200バールの範囲にある。
【0020】
反応容器中の圧力、好ましくは少なくとも1つの管形反応器中の圧力は、一般に、反応容器中の選択された1つの反応温度でもしくは選択された複数の反応温度で、出発混合物もしくは生成物混合物の固有圧力よりも高いか同じで値であり、好ましくはそれより高い値である。一般に、反応圧力は、1〜14000バールの範囲にあり、好ましくは固有圧力〜3000バールの範囲にあり、特に好ましくは固有圧力〜1000バールの範囲にあり、特に好ましくは固有圧力〜325バールの範囲にあり、例えば50〜200バールである。
【0021】
環状オレフィンと一酸化二窒素とを、それぞれ上述の範囲内にある、2つ以上の圧力で、もしくは2つ以上の圧力範囲で反応させることができる。反応の経過における圧力変化は、連続的にもしくは断続的にも実施できる。
【0022】
環状オレフィンと一酸化二窒素との反応のために使用できる反応器に関しては、特に制限は存在しない。特に、該反応は、回分式に又は連続式に行うことができる。従って、例えば反応器として、少なくとも1つの内部熱交換器及び/又は少なくとも1つの外部熱交換器を有する少なくとも1つのCSTR(連続式撹拌槽反応器)、少なくとも1つの管形反応器、少なくとも1つの管束反応器又は少なくとも1つのループ式反応器を使用することができる。同様に、前記の反応器の少なくとも1つが、少なくとも2つの異なる帯域を有するように構成することが可能である。係る帯域は、例えば反応条件の点で、例えば温度もしくは圧力などの点で、及び/又は帯域の形状の点で、例えば容量もしくは断面積の点で異なってよい。反応を2もしくは複数の反応器中で実施する場合に、2もしくは複数の同じ反応器型又は少なくとも2つの異なる反応器型を使用することができる。
【0023】
好ましくは、環状オレフィンと一酸化二窒素とは単独の反応器中で実施される。例えば好ましくは、該反応は連続式である。
【0024】
環状オレフィンと一酸化二窒素との反応に際しての少なくとも1つの反応器中での反応物の滞留時間は、一般に、20時間までの範囲にあり、好ましくは0.1〜20時間の範囲にあり、更に好ましくは0.2〜15時間の範囲にあり、特に好ましくは0.25〜10時間の範囲にある。
【0025】
一酸化窒素と環状オレフィンとの反応に供給される供給物において、一酸化二窒素と環状オレフィンとのモル比は、一般に、0.05〜4の範囲にあり、好ましくは0.06〜1の範囲にあり、更に好ましくは0.07〜0.5の範囲にあり、特に好ましくは0.1〜0.4の範囲にある。
【0026】
環状オレフィンと一酸化二窒素との反応は、環状ケトンに関する非常に高い選択性において、環状オレフィンの転化率が50%までの範囲で、好ましくは5〜30%の範囲で、特に好ましくは10〜20%の範囲で達成されるように実施できる。その際、環状ケトンに関する選択性は、一般に、少なくとも90%であり、好ましくは少なくとも92.5%であり、特に好ましくは少なくとも93%である。
【0027】
基本的に、本発明によれば、7〜16個の炭素原子を有する各環状オレフィン又は7〜16個の炭素原子を有する2つ以上の異なる環状オレフィンからなる各混合物を、一酸化二窒素と反応させることができる。好適なオレフィンは、例えば1もしくは複数のC−C二重結合を有する環状オレフィンである。更に、1もしくは複数のC−C二重結合を有する環状オレフィン、例えばシクロヘプテン、シクロオクテン、シクロデセン、シクロウンデセン、シクロドデセン、1,5−シクロオクタジエン、1,5−シクロドデカジエンもしくは1,5,9−シクロドデカトリエンなどの環状オレフィンが好ましい。
【0028】
特に好ましくは、オレフィンとして、シクロドデセン又は1,5,9−シクロドデカトリエンが使用される。とりわけ、その際に、例えば1,5,9−シクロドデカトリエン、例えばシス,トランス,トランス−1,5,9−シクロドデカトリエン又はシス,シス,トランス−1,5,9−シクロドデカトリエン又はオールトランス−1,5,9−シクロドデカトリエンが挙げられる。
【0029】
好ましくは、シクロドデカトリエンとして、シス,トランス,トランス−1,5,9−シクロドデカトリエンが使用される。
【0030】
従って、本発明は、好ましい一実施態様においては、前記のケトンの製造方法において、オレフィンが、シクロドデセン及びシクロドデカトリエン、特に1,5,9−シクロドデカトリエンからなる群から選択される方法に関する。
【0031】
環状オレフィンと一酸化二窒素との反応は、基本的に、触媒の存在下で行うことができるが、触媒を添加しなくても行うことができる。
【0032】
本発明の範囲において、一酸化二窒素は、純粋形で、又は一酸化二窒素を含有するガス混合物の形で使用することができる。
【0033】
基本的に、本発明による方法の工程(a)においては、一酸化二窒素を含有するあらゆるガス混合物が使用することができる。本発明によれば、また、一酸化二窒素を含有するガス混合物を、工程(a)による反応で使用する前に、精製もしくは濃縮させることもできる。好適な精製方法は、例えばガス混合物の有機溶剤もしくは水中で吸収させ、付加された有機溶剤もしくは付加された水からガス混合物を脱着させ、ガス混合物中の窒素酸化物NOxの含有率を、ガス混合物の全容量に対して高くても0.01〜0.001容量%に調整することを含む。係る方法は、例えばDE102004046167.8号に記載されており、それに関する内容は、参照をもって全範囲において本願の文脈に開示されたものとする。
【0034】
その際、使用される一酸化二窒素を含有するガス混合物は、基本的にあらゆる任意の起源から由来しうる。特に、DE102004046167.8号に記載されるように、一酸化二窒素源として、プロセス排ガスを使用することができる。
【0035】
本発明の範囲で使用されるような概念"ガス混合物"は、周囲圧力及び周囲温度で気体状態で存在する2もしくは複数の化合物からの混合物を指す。温度もしくは圧力が変化したときに、該ガス混合物は、他の集合状態で、例えば液状で存在することもでき、それを、今後、本発明の範囲においては、ガス混合物と呼称する。
【0036】
本発明によれば、異なる排ガスの混合物を使用することもできる。
【0037】
本発明の更に好ましい一実施態様によれば、一酸化二窒素を含有する少なくとも1つの排ガスは、アジピン酸設備、ドデカン2酸設備、ヒドロキシルアミン設備及び/又は硝酸設備に由来し、その際、最後のものは、再び好ましくはアジピン酸設備、ドデカン2酸設備又はヒドロキシルアミン設備の少なくとも1つの排ガスによって作業される。
【0038】
本発明によれば、ガス混合物は気体状で使用することができる。しかしながら、一酸化二窒素を含有するガス混合物をまず、該ガス混合物が液体形もしくは超臨界形で存在し、その際に使用されるように処理することも可能である。該ガス混合物もしくは一酸化二窒素は、圧力又は温度の好適な選択によって液化することができる。同様に、本発明の範囲において、ガス混合物は溶剤中に溶解させることができる。
【0039】
本発明によれば、組成物(I)は、環状オレフィンを、通常は、80質量%より多くの量で、好ましくは85〜99.999質量%の量で、特に90〜99.99質量%の量で、特に好ましくは92〜99.9質量%の量で、例えば95〜99.8質量%の量で含有する。組成物(I)は、環状オレフィンの他に、通常は、他の化合物、特に有機化合物を含有してよい。
【0040】
組成物(I)は、有機化合物として、例えばビニルシクロヘキセン、シクロオクタジエン及び例えば1,5,9−シクロドデカトリエンの二環式異性体を含有してよい。更に、微量のC16−成分、C24−成分もしくはそれより高級のオリゴマーを含有してよい。
【0041】
本発明による方法の工程(a)による反応に際して、組成物(I)中に含まれる環状オレフィンは、一酸化二窒素によって酸化される。その際、少なくとも1つの環状ケトンを含有する組成物(A)が得られる。
【0042】
組成物(A)は、本発明の範囲において、7〜16個の炭素原子を有する少なくとも1つの環状ケトンを含有する。本発明によれば、組成物(A)は、環状ケトンを、5質量%より多くの量で、好ましくは10質量%より多くの量で、好ましくは10〜90質量%の量で、特に11〜50質量%の量で、特に好ましくは12〜40質量%の量で、特に好ましくは13〜30質量%の量で、例えば14〜20質量%又は15〜18質量%の量で含有する。組成物(A)は、環状オレフィンの他に、通常は、他の化合物、特に有機化合物、例えば未反応の出発物質もしくは酸素含有の基を有する有機化合物、例えばアルコール、アルデヒドもしくはエポキシドを含有する。その際、該有機化合物は、特に組成物(A)中に含まれる環状ケトンと同じ数の炭素原子を有してよい。
【0043】
組成物(A)は、本発明による方法の工程(b)で直接的に使用することができる。しかしながら、組成物(A)を工程(b)の前に中間処理に供することもできる。例えば、未反応の出発物質を組成物(A)から分離することができる。同様に、酸化の副生成物、例えばジケトンを分離することができる。本発明によれば、好ましくは未反応の生成物及びジケトンを分離することができる。前記の分離は、例えば蒸留により実施することができ、その際、該蒸留は、1もしくは複数の塔において、好ましくは少なくとも2つの塔において実施される。
【0044】
本発明によれば、組成物(A)は、工程(b)に従って少なくとも1つの塩基で処理される。その際に、前記の処理の方法条件は、少なくとも1つの好ましくない二次成分、特に少なくとも1つのアルデヒドの濃度が減少されることが保証される限り、広い範囲で変更可能である。
【0045】
その際、本発明によれば、アルデヒドの量は減少され、その際、環状ケトンは実質的に攻撃されない。その際に、本発明によれば、開鎖アルデヒドは、好ましくは90%より多くが、特に95%より多くが、特に好ましくは99.99%までが分解される。環外のアルデヒド基を有する環状アルデヒドは、好ましくは30%までが、特に35%までが、特に好ましくは40%までが分解される。本発明によれば、環状ケトンは、0.5〜2.0%までだけ、好ましくは0.75〜1.75%までが、特に1.0〜1.5%までが分解される。
【0046】
一般に、塩基による処理は、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の好ましくない二次成分、特に少なくとも1つのアルデヒド、好ましくは少なくとも1つの開鎖アルデヒドが反応されるまで継続される。
【0047】
本発明によれば、工程(b)による少なくとも1つの塩基による処理は、好ましくは1分〜10時間の時間にわたり、特に5分〜5時間の時間にわたり、特に好ましくは10〜60分の時間にわたり、更に好ましくは20〜50分の時間にわたり行われる。
【0048】
その際、前記の処理は、本発明の方法の範囲においては、特に100〜250℃の温度で、好ましくは110〜220℃の温度で、特に120〜200℃の温度で、更に好ましくは150〜190℃の温度で実施することができる。
【0049】
従って、本発明は、更なる一実施態様によれば、7〜16個の炭素原子を有する環状ケトンの製造のための前記方法において、工程(b)による処理を、100〜250℃の温度で、かつ1分〜10時間の時間にわたり行う方法に関する。
【0050】
塩基による処理のためには、あらゆる可能な反応器型が適している。連続的な反応操作のためには、好ましくは、管特徴を有する反応器、例えば管形反応器、撹拌槽カスケードもしくは匹敵する反応器が使用される。断続的な反応操作(回分法)のためには、簡単な撹拌槽が非常に適している。好ましくは、該反応は、実質的に液相中で均質に進行する。
【0051】
好ましくは、工程(b)による処理は、2つの部分段階(b1)及び(b2)を含み、その際、段階(b1)に従って組成物(A)は少なくとも1つの塩基で処理され、そして段階(b2)に従って塩基が分離される。
【0052】
従って、本発明は、更なる一実施態様によれば、7〜16個の炭素原子を有する環状ケトンの上述の製造方法において、工程(b)が部分段階(b1)及び(b2):
(b1)組成物(A)を少なくとも1つの塩基で処理すること、
(b2)塩基を分離すること
を含む方法にも関する。
【0053】
段階(b2)による塩基の分離は、あらゆる通常の方法に従って、例えば蒸留によって実施することができる。特に、塩基としてNaOHもしくはKOHが使用される場合に、前記の分離は、好ましくは蒸発によって、例えば流下薄膜型蒸発器の形で、ワイプドフィルム蒸発器(wiped film evaporator)又は螺旋管型蒸発器(Wendelrohrverdampfer)の形で、又は塩基の抽出によって、例えば水での抽出によって行われる。
【0054】
本発明の範囲において、原則的にあらゆる好適な塩基を使用することができる。好ましくは、有機塩基もしくは無機塩基であって、その共役酸が水に対するpKa>9を有するものが使用される。好ましくは、本発明の範囲において、例えばトリアルキルアミン、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属アルコレート及びテトラアルキルアンモニウム−、アルカリ金属−もしくはアルカリ土類金属水酸化物である。殊には、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムが好ましい。
【0055】
従って、本発明は、更なる一実施態様によれば、7〜16個の炭素原子を有する環状ケトンの上述の製造方法において、塩基が水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムから選択される方法にも関する。
【0056】
前記の塩基は、本発明によれば、純粋な物質としても、溶液としても使用することができる。液状の塩基は、好ましくは溶剤の添加をせずに使用される。固体の塩基は、好ましくは溶液として使用される。溶剤としては、好ましくは共役酸が使用される。特に好ましい塩基であるNaOH及びKOHは、好ましくは濃縮された水溶液として使用される。好ましくは、溶液として使用される塩基は、少なくとも25質量%の濃度、特に少なくとも40質量%の濃度、特に好ましくは約50質量%の濃度を有する。
【0057】
工程(b)により使用される塩基の量は、広い範囲で変更できる。0.01〜5モルの塩基を1モルのアルデヒドあたりに使用することができる。好ましくは、0.05〜2モルの塩基が、1モルのアルデヒドあたりに使用される。特に好ましくは、0.1〜1モルの塩基が、1モルのアルデヒドあたりに使用される。
【0058】
塩基による処理は、100〜250℃の温度範囲で実施される。好ましくは、該反応は110〜220℃で行われる。特に好ましくは、該反応は、150〜190℃で行われる。前記の処理の時間は、選択される温度、塩基の種類及び塩基の量並びにアルデヒドについての所望の低減度合いによって決定されるその際に、それらの条件は、好ましくは、処理の時間が1分〜10時間、例えば10分〜5時間、好ましくは20分〜2時間、特に30分〜1.5時間、特に好ましくは40分〜1時間であるように選択される。
【0059】
好ましい一実施態様によれば、塩基での処理は、160〜185℃の温度で、30〜40分の時間にわたり実施される。好ましくは、前記の処理は、全組成物に対して、0.1〜0.15質量%の水酸化ナトリウムで実施される。特に好ましい一実施態様によれば、塩基での処理は、160〜185℃の温度で、30〜40分の時間にわたり、全組成物に対して、0.1〜0.15質量%の水酸化ナトリウムで実施される。
【0060】
本発明によれば、組成物(B)は、少なくとも1つの環状ケトンを含有する。その際、組成物(B)は、環状ケトンを、通常は、40質量%より多い量で、好ましくは50〜99.9質量%の量で、特に55〜99質量%の量で、特に好ましくは60〜95質量%の量で含有する。
【0061】
組成物(B)は、例えば更なる有機化合物、例えば1,5,9−シクロドデカトリエン、1,2−エポキシシクロドデカ−5,9−ジエン、シクロウンデカジエンカルバルデヒド、C12−ジケトン又は微量のオリゴマー化合物を含有してもよい。組成物(B)は、例えば1,5,9−シクロドデカトリエンを、0.2〜0.6質量%の量で、1,2−エポキシシクロドデカ−5,9−ジエンを、0.01〜0.1質量%の量で、シクロウンデカジエンカルバルデヒドを、0.5〜1.2質量%の量で、C12−ジケトンを、0.5〜3.0質量%の量で、又は微量のオリゴマー化合物を含有してよい。
【0062】
少なくとも一部の塩基を分離した後に、該組成物を、更なる中間処理に供することができる。
【0063】
好ましくは、環状オレフィンは、本発明の範囲において、少なくとも2つのC−C二重結合を、従って例えば2、3、4もしくは5個のC−C二重結合を有する。
【0064】
従って、本発明は、更なる一実施態様によれば、7〜16個の炭素原子を有する環状ケトンの上述の製造方法において、環状オレフィンが少なくとも2つのC−C二重結合を有する方法にも関する。
【0065】
環状オレフィンが1つより多くのC−C二重結合を有する場合には、本発明の工程(a)による酸化に際して、好ましくは1つだけのC−C二重結合が酸化される。
【0066】
その際、本発明によれば、工程(a)による酸化は、該反応でできる限り低い逆混合しか起きないように、特にできる限り逆混合が起きないように実施される。
【0067】
工程(a)により、組成物(I)中に含まれる環状オレフィンのC−C二重結合の1つだけしか酸化されない場合には、本発明の範囲において、組成物(A)もしくは組成物(B)中に含まれる環状ケトンの少なくとも1つの残留するC−C二重結合は、工程(b)の後に更なる反応工程で転化させることができる。好ましくは、少なくとも1つの残留するC−C二重結合は、本発明の範囲において水素化される。
【0068】
本発明によれば、工程(b)で得られた組成物(B)は工程(c)に従って水素化できる。
【0069】
工程(c)による水素化に際して、組成物(B)中に含まれる環状ケトンは水素化される。その際に、環状ケトンを含有する組成物(C)が得られ、その際、前記の環状ケトンは、好ましくはC−C二重結合をもはや有さない。
【0070】
従って、本発明は、更なる一実施態様によれば、7〜16個の炭素原子を有する環状ケトンの上述の製造方法において、該方法が付加的に工程(c):
(c)組成物(B)を少なくとも1つの触媒の存在下で水素化して組成物(C)を得る工程
を有する方法にも関する。
【0071】
その際、組成物(C)は、環状ケトンを、通常は、80質量%より多くの量で、好ましくは85〜99.9質量%の量で、特に88〜99.9質量%の量で、特に好ましくは90〜99.6質量%の量で、更に好ましくは92〜99.0質量%の量で含有する。組成物(C)は、環状ケトンの他に、通常は、更なる化合物、特に有機化合物、好ましくは酸素含有の基を有する化合物、例えばアルコール、アルデヒドもしくはエポキシドを含有する。その際、該有機化合物は、特に組成物(C)中に含まれる環状ケトンと同じ数の炭素原子を有してよい。
【0072】
前記の二次成分は、組成物(C)中に、特に20質量%未満で、特に15質量%未満で、特に好ましくは12質量%未満で含まれている。例えば、前記の二次成分は、0.001〜10質量%の量で、特に0.1〜9質量%の量で、好ましくは0.5〜5質量%の量で、特に1〜4質量%の量で含まれている。
【0073】
本発明によれば、組成物(B)は、直接的に工程(c)において使用することができる。しかしながら、本発明の方法において、同様に、組成物(B)をまず処理して、次いで工程(c)でそれを使用することが可能である。
【0074】
工程(c)による水素化のために、あらゆる好適な触媒を使用してよい。特に、少なくとも1つの均一系の又は少なくとも1つの不均一系の触媒が使用でき、少なくとも1つの均一系の触媒と少なくとも1つの不均一系の触媒のどちらも使用することができる。
【0075】
好ましくは、使用可能な触媒は、元素の周期律表の第7副族、第8副族、第9副族、第10副族もしくは第11副族からの少なくとも1つの金属を含有する。更に好ましくは、本発明により使用可能な触媒は、Re、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu及びAuからなる群から選択される、少なくとも1つの元素を含有する。特に好ましくは、本発明により使用可能な触媒は、Fe、Ni、Pd、Pt及びCuからなる群から選択される、少なくとも1つの元素を含有する。特に好ましくは、本発明により使用可能な触媒は、Pd、Pt、RuもしくはNiを含有する。
【0076】
例えば、第8副族、第9副族もしくは第10副族の少なくとも1つの元素を含有する均一系触媒が適している。更に、Ru、Rh、Ir及び/又はNiを含有する均一系触媒が好ましい。例えば、この場合に、例えばRhCl(TTP)3もしくはRu44(CO)12が挙げられる。特に、Ruを含有する係る均一系触媒が好ましい。例えば、US5,180,870号、US5,321,176号、US5,177,278号、US3,804,914号、US5,210,349号、US5,128,296号、US B316,917号並びにJ.Org.Chem.38(1973)第80〜87頁でD.R.Faheyに記載されるような均一系触媒が使用され、それらは参照をもってそれに関する開示が本願の文脈に全範囲で開示されたものとする。係る触媒は、例えば(TPP)2(CO)3Ru、[Ru(CO)43、(TPP)2Ru(CO)2Cl2、(TPP)3(CO)RuH2、(TPP)2(CO)2RuH2、(TPP)2(CO)2RuClHもしくは(TPP)3(CO)RuCl2である。
【0077】
特に、少なくとも1つの不均一系触媒が適しており、その際、上述の金属の少なくとも1つを、金属としてそのままで、ラネー触媒として及び/又は通常の担体に施与して使用できる。好ましい担体材料は、例えば活性炭もしくは酸化物、例えば酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタンもしくは酸化ジルコニウムである。同様に、とりわけ担体材料としては、ベントナイトが挙げられる。2もしくは複数の金属が使用される場合には、これらは、別々にもしくは合金として存在してよい。この場合に、少なくとも1つの金属をそのままで、かつ少なくとも1つの別の金属をラネー触媒として、又は少なくとも1つの金属をそのままで、かつ少なくとも1つの別の金属を少なくとも1つの担体に施与して、又は少なくとも1つの金属をラネー触媒として、かつ少なくとも1つの別の金属を少なくとも1つの担体に施与して、又は少なくとも1つの金属をそのままで、かつ少なくとも1つの他の金属をラネー触媒として、かつ少なくとも1つの他の金属を少なくとも1つの担体に施与して使用することができる。
【0078】
使用される触媒は、例えばまた、いわゆる沈降触媒であってよい。係る触媒は、その触媒活性成分を、その塩溶液から、特にその硝酸塩及び/又は酢酸塩の溶液から、例えばアルカリ金属−及び/又はアルカリ土類金属水酸化物溶液及び/又は炭酸塩溶液、例えば難溶性の水酸化物、酸化物水和物、塩基性の塩もしくは炭酸塩の添加によって沈降させ、引き続き得られた沈殿物を乾燥させ、次いでこれを一般に300〜700℃、特に400〜600℃での焼成によって変換させて酸化物、混合酸化物及び/又は混合価数型の酸化物を得て、それらを水素もしくは水素含有ガスで一般に50〜700℃、特に100〜400℃で還元することで、より低い酸化段階の該当する金属及び/又は酸化物化合物を得て、そして本来の触媒活性形に変換することによって製造することができる。その際に、一般に、水がもはや形成されなくなるまで還元させる。担体材料を含有する沈降触媒の製造に際して、触媒活性成分の沈降は、該当する担体材料の存在下で行うことができる。触媒活性成分は、好ましくは、担体材料と同時に、該当する塩溶液から沈降させることができる。
【0079】
好ましくは、水素化を触媒する金属もしくは金属化合物を担体材料上に析出されて含有する水素化触媒が使用される。
【0080】
触媒活性成分の他になおも更なる担体材料を含有する上述の沈降触媒の他に、本発明による方法のためには、一般に、触媒的な水素化作用を有する成分が、例えば含浸によって担体材料に施与されている係る担体材料が適している。
【0081】
触媒活性金属を担体上に施与する様式は、一般に重要ではなく、種々の様式及びやり方で行ってよい。触媒活性金属は、前記の担体材料上に、例えば該当する元素の塩もしくは酸化物の溶液もしくは懸濁液で浸漬させ、乾燥させ、そして該金属化合物を還元剤、好ましくは水素もしくは錯体水素化物によって還元してより低い酸化状態の該当する金属もしくは化合物を得ることによって施与することができる。前記の担体上に触媒活性金属を施与するための他の方法は、担体を、容易に熱分解可能な塩、例えば触媒活性金属の硝酸塩もしくは容易に熱分解可能な錯体化合物、例えば触媒活性金属のカルボニル錯体もしくはヒドリド錯体で含浸させ、そしてこうして浸漬された担体を300〜600℃の範囲の温度に加熱して、吸着された金属化合物の熱分解をもたらすことにある。前記の熱分解は、好ましくは保護ガス雰囲気下で行われる。好適な保護ガスは、例えば窒素、二酸化炭素、水素もしくは希ガスである。更に、触媒活性金属は、触媒担体上に蒸着もしくは火炎溶射によって堆積させることができる。前記の担体触媒中の触媒活性金属の含有率は、原則的に本発明による方法の成功には重要ではない。一般に、前記の担体触媒の触媒活性金属のより高い含有率は、より低い含有率よりも高い空時転化率をもたらす。一般に、担体触媒であって、その触媒活性金属の含有率が触媒の全質量に対して0.1〜90質量%の範囲であり、好ましくは0.5〜40質量%の範囲であるものが使用される。前記の含有率の表示は、担体材料を含む全触媒に対するものであるが、種々の担体材料は非常に様々な比重及び比表面積を有するので、前記の表示は、本発明による方法の結果に悪影響を及ぼすことなく、上回ってよく又は下回ってよいと考えることもできる。当然のように、複数の触媒活性金属をそれぞれの担体材料に施与することもできる。更に、触媒活性金属は、例えばDE−OS2519817号、EP1477219号A1もしくはEP0285420号A1の方法の後に、担体上に施与することができる。上述の文献による触媒において、触媒活性金属は、熱処理及び/又は還元によって、例えば担体材料の上述の金属の塩もしくは錯体による浸漬によって作製される合金として存在する。
【0082】
沈降触媒の活性化も担体触媒の活性化も、反応の開始時にその場で使用される水素によって行うこともできる。好ましくは、前記の触媒はその使用前に別個に活性化される。
【0083】
担体材料としては、一般に、アルミニウムの酸化物及びチタンの酸化物、二酸化ジルコニウム、二酸化ケイ素、粘土鉱物、例えばモンモリロナイト、ケイ酸塩、例えばケイ酸マグネシウムもしくはケイ酸アルミニウム、ゼオライト、例えば構造型ZSM−5もしくはZSM−10のゼオライト、又は活性炭を使用することができる。好ましい担体材料は、酸化アルミニウム、二酸化チタン、二酸化ケイ素、二酸化ジルコニウム及び活性炭である。当然のように、種々の担体材料の混合物も、本発明による方法で使用可能な触媒のための担体として用いることもできる。
【0084】
殊に好ましい触媒は、本発明によれば、Ni、Pt及び/又はPdを含有し、担体上に施与されているものである。殊に好ましい担体は、活性炭、酸化アルミニウム、二酸化チタン及び/又は二酸化ケイ素であるか又はそれを含有している。
【0085】
少なくとも1つの不均一系触媒は、例えば懸濁触媒として及び/又は固床触媒として使用することができる。
【0086】
例えば本発明による方法の範囲において、工程(c)による水素化を、少なくとも1つの懸濁触媒で実施される場合には、好ましくは少なくとも1つの撹拌型反応器もしくは少なくとも1つの気泡塔もしくは少なくとも1つの充填された気泡塔又は同じもしくは異なる2つ以上の反応器からの組み合わせにおいて実施される。
【0087】
概念"異なる反応器"は、本願では、異なる反応型も、同じ種類の反応器であって、例えばその形状の点で、例えば容量及び/又は断面積の点で及び/又は反応器中の水素化条件の点で異なる反応器も指す。
【0088】
例えば本発明による方法の範囲において、工程(c)による水素化を、少なくとも1つの固定配置された触媒で実施する場合に、好ましくは少なくとも1つの管形反応器、例えば少なくとも1つのシャフト反応器(Schachtreaktor)及び/又は少なくとも1つの管束反応器が使用され、その際、個々の反応器はアップフロー方式(Sumpffahrweise)もしくはダウンフロー方式(Rieselfahrweise)で作業することができる。2つ以上の反応器を使用する場合に、少なくとも1つをアップフロー方式で、かつ少なくとも1つをダウンフロー方式で作業することができる。
【0089】
水素化で触媒として、例えば不均一系触媒を懸濁触媒として使用する場合に、該触媒は、本発明の範囲においては、好ましくは少なくとも1つの濾過段階によって分離される。そのように分離された触媒は、水素化に返送するか、又は少なくとも1つの任意の別の方法に供給することができる。同様に、例えば触媒に含まれる金属を回収するために、触媒を分離することができる。
【0090】
工程(c)による水素化で触媒として、例えば均一系触媒を使用する場合に、該触媒は、本発明の範囲においては、好ましくは少なくとも1つの蒸留段階によって分離される。前記の蒸留の範囲において、1もしくは2つの又は複数の蒸留塔を使用することができる。そのように分離された触媒は、水素化に返送するか、又は少なくとも1つの任意の別の方法に供給することができる。同様に、例えば触媒に含まれる金属を回収するために、触媒を分離することができる。
【0091】
任意の方法で使用する前に、例えば本発明による方法に返送する前に、少なくとも1つの均一系触媒も、少なくとも1つの不均一系触媒も、それが必要であれば、少なくとも1つの好適な方法によって再生することができる。
【0092】
その熱は、本発明により使用される反応器において、内部的に例えば冷却コイルを介して、及び/又は外部的に例えば少なくとも1つの熱交換器を介して排出することができる。例えば好ましくは、少なくとも1つの管形反応器を水素化のために使用する場合には、好ましくは放熱が組み込まれている外部流路を介して反応が行われる。
【0093】
本発明による方法の好ましい一実施態様に従って水素化を連続的に実施する場合には、更に好ましくは少なくとも2つの反応器が、更に好ましくは少なくとも2つの管形反応器が、更に好ましくは少なくとも2つの直列接続された管形反応器が、特に好ましくは厳密に2つの直列接続された管形反応器が使用される。使用される反応器における水素化条件は、それぞれ同一もしくは異なってよく、それぞれ前記の範囲にある。
【0094】
工程(c)による水素化を少なくとも1つの懸濁された触媒中で実施する場合に、滞留時間は、一般に0.05〜50時間の範囲であり、例えば0.5〜50時間の範囲であり、好ましくは1〜30時間の範囲であり、特に好ましくは1.5〜25時間の範囲であり、殊に好ましくは1.5〜10時間の範囲である。その際に、本発明によれば主反応器及び後続反応器又は付加的に更なる反応器が使用されるかどうかは重要ではない。前記の実施態様の全てについて、全滞留時間は、上述の範囲にある。
【0095】
本発明による方法の範囲において水素化を連続式に少なくとも1つの固定配置された触媒上で実施する場合に、触媒負荷量(kg(供給物)/リットル(触媒)×h)は、一般に0.03〜20の範囲であり、好ましくは0.05〜5の範囲であり、特に好ましくは0.1〜2の範囲である。その際に、本発明によれば主反応器及び後続反応器又は付加的に更なる反応器が使用されるかどうかは重要ではない。前記の実施態様の全てについて、全負荷量は、上述の範囲にある。
【0096】
一般に、主反応器における水素化温度は、0〜350℃の範囲であり、好ましくは20〜300℃の範囲であり、更に好ましくは50〜250℃の範囲であり、特に好ましくは80〜220℃の範囲である。
【0097】
水素圧は、本発明による水素化においては、主反応器では、一般に1〜325バールの範囲であり、好ましくは5〜300バールの範囲であり、更に好ましくは10〜250バールの範囲にあり、特に好ましくは15〜150バールの範囲にある。
【0098】
本発明による工程(c)による水素化の範囲においては、少なくとも1つの好適な溶剤もしくは希釈剤を使用することができる。係る溶剤もしくは希釈剤としては、基本的に水素化条件下で水素化されないか又は他の反応がなされないすべての溶剤及び希釈剤、例えばアルコール、エーテル、炭化水素、水、芳香族化合物もしくはケトン、特にトルエンもしくはシクロドデカンを挙げることができる。
【0099】
本発明による方法の好ましい一実施態様によれば、工程(c)による水素化は、溶剤もしくは希釈剤を添加せずに行われる。
【0100】
本発明の範囲において、工程(a)及び(b)の間で又は工程(b)及び(c)の間で又は工程(a)及び(b)の間で及び工程(b)及び(c)の間で、少なくとも1つの中間処理を行うことが可能である。その際、例えば、中間処理の範囲において、未反応の出発物質もしくは副生成物を完全にもしくは部分的に除去することが可能である。工程(a)に引き続き組成物(A)の中間処理を行う場合には、本発明によれば組成物(A′)が得られ、それは次いで工程(b)で使用される。同様に、本発明によれば、工程(b)に引き続き組成物(B)の中間処理を行うことが可能であり、その際、次いで本発明によれば組成物(B′)が得られ、それは次いで工程(c)で使用される。
【0101】
従って、本発明は、更なる一実施態様によれば、7〜16個の炭素原子を有する環状ケトンの製造のための前記の方法において、工程(a)の後で、かつ工程(b)の前で、未反応の出発物質もしくは副生成物を、組成物(A)から分離して、組成物(A′)を得る方法にも関する。
【0102】
同様に、本発明の範囲において、中間処理は、同一もしくは異なってよい複数の異なる段階を含むことが可能である。
【0103】
更なる考えられる中間処理としては、例えば以下のものが挙げられる:
− 被反応物を加熱すること;
− 被反応物が存在する圧力を変更すること。この関連において、例えば圧力の増大は、例えば少なくとも1つのポンプ及び/又は少なくとも1つの圧縮器を介することが好ましい;
− 少なくとも1つの出発物質を計量供給すること。特に溶剤を計量供給してよい;
− 形成された生成物を少なくとも1つの好適な措置によって、例えば好ましくは少なくとも1つの蒸留段階によって分離すること;
− 未反応の出発物質を、少なくとも1つの好適な措置によって、例えば好ましくは少なくとも1つの蒸留段階によって分離すること。
【0104】
本発明の範囲において、本発明による方法は、工程(c)の後に、更なる工程、例えば精製工程又は不所望の副生成物の分離のための工程を含む。
【0105】
その際、工程(c)の後で、組成物(C)を、少なくとも1つの酸と共に、又は少なくとも1つの遷移金属を含有する少なくとも1つの触媒と共に熱処理してよく、又は蒸留、抽出及び結晶化からなる群から選択される方法により更に精製を実施してよい。
【0106】
しかしながら、本発明によれば、工程(c)による水素化の後では、得られた組成物(C)に、以下の段階
(i)組成物(C)を、少なくとも1つの酸と共に又は少なくとも1つの遷移金属を含有する少なくとも1つの触媒と共に熱処理する段階、及び
(ii)蒸留、抽出及び結晶化からなる群から選択される方法により更に精製する段階
を含む処理を実施しない。
【0107】
本発明の好ましい一実施態様によれば、工程(c)の後で、組成物(C)の蒸留による精製が行われる。
【0108】
従って、本発明は、更なる一実施態様によれば、7〜16個の炭素原子を有する環状ケトンの上述の製造方法において、該方法が工程(c)の後に、蒸留による精製をさらに含む方法にも関する。
【0109】
本発明の好ましい一実施態様の範囲においては、組成物(I)中に含まれる環状オレフィンとしては、シクロドデカトリエン、好ましくは1,5,9−シクロドデカトリエンが使用される。
【0110】
従って、本発明は、更なる一実施態様によれば、7〜16個の炭素原子を有する環状ケトンの上述の製造方法において、環状アルケンがシクロドデカトリエンである方法にも関する。
【0111】
シクロドデカトリエンが使用される場合に、本発明の範囲では、本発明による方法が工程(c)をも含むことが好ましい。
【0112】
好ましくは、シクロドデカトリエンは、ブタジエンの三量体化によって得られる。
【0113】
従って、本発明は、更なる一実施態様によれば、7〜16個の炭素原子を有する環状ケトンの上述の製造方法において、環状オレフィンが、ブタジエンの三量体化によって得られたシクロドデカトリエンである方法にも関する。
【0114】
1,5,9−シクロドデカトリエンは、例えば純粋な1,3−ブタジエンの三量体化によって製造できる。それは、例えばT.Schiffer,G.Oenbrink著の"シクロドデカトリエン、シクロオクタジエン及び4−ビニルシクロヘキセン(Cyclododecatriene, Cyclooctadiene, and 4−Vinylcyclohexene)",Ullmannの工業化学百科事典,第6版(2000年),電子リリース,Wiley VCHに記載されている。この方法の範囲において、例えばツィーグラー触媒の存在下での三量体化に際して、シス,トランス,トランス−1,5,9−シクロドデカトリエン、シス,シス,トランス−1,5,9−シクロドデカトリエン及びオールトランス−1,5,9−シクロドデカトリエンが生ずる。それは、例えばLiebigs Ann.Chem.681(1965)第10〜20頁におけるH.Weber他著の"チタン含有触媒によるシス,トランス,トランス−シクロドデカトリエン(1.5.9)の形成様式について(Zur Bildungsweise von cis,trans,trans−Cyclododecatrien−(1.5.9) mittels titanhaltiger Katalysatoren)"に記載されている。シクロドデカトリエンは、チタン触媒を使用して1,3−ブタジエンの三量体化によって製造することができる。
【0115】
基本的にあらゆる好適なチタン触媒が三量体化のために使用できる一方で、Weber他の文献に記載される四塩化チタン/エチルアルミニウムセスキクロリド触媒が特に適している。
【0116】
三量体化のために使用されるブタジエンは、特に好ましくは、ガスクロマトグラフィーにより測定された少なくとも99.6%の純度を、更に好ましくは少なくとも99.65%の純度を有する。特に好ましくは、使用される1,3−ブタジエンは、検出精度の範囲において、1,2−ブタジエンと2−ブチンを含有しない。
【0117】
前記の三量体化から、一般に、少なくとも95質量%、好ましくは少なくとも96質量%、更に好ましくは少なくとも97質量%のシス,トランス,トランス−1,5,9−シクロドデカトリエンを含有する混合物が得られる。例えば特に好ましくは、前記混合物は、約98質量%でシス,トランス,トランス−1,5,9−シクロドデカトリエンを含有する。
【0118】
前記のシス,トランス,トランス−1,5,9−シクロドデカトリエンを含む混合物は、そのままで工程(a)による反応のために使用することができる。同様に、少なくとも1つの好適な方法を介して、例えば少なくとも1つの蒸留を介して、シス,トランス,トランス−1,5,9−シクロドデカトリエンを混合物から分離し、そして工程(a)による反応において使用することが可能である。
【0119】
本発明の範囲においては、工程(a)によれば、基本的に、各シクロドデカトリエンを、又は2つ以上の異なるシクロドデカトリエンからなる各混合物を、一酸化二窒素と反応させることができる。とりわけ、その際に、例えば1,5,9−シクロドデカトリエン、例えばシス,トランス,トランス−1,5,9−シクロドデカトリエン又はシス,シス,トランス−1,5,9−シクロドデカトリエン又はオールトランス−1,5,9−シクロドデカトリエンが挙げられる。
【0120】
本発明による方法の殊に好ましい一実施態様によれば、シクロドデカトリエンとして、シス,トランス,トランス−1,5,9−シクロドデカトリエンが使用される。
【0121】
本発明による方法の殊に好ましい一実施態様によれば、シクロドデカトリエンとしては、主にシス,トランス,トランス−1,5,9−シクロドデカトリエン、トランス,トランス,トランス−1,5,9−シクロドデカトリエン又はシス,シス,トランス−1,5,9−シクロドデカトリエンを含有する異性体混合物が使用される。異性体混合物に対して、60質量%より多く、更に好ましくは70質量%より多く、特に80質量%より多く、特に好ましくは90質量%より多く、例えば91質量%より多く、92質量%より多く、93質量%より多く、94質量%より多く、95質量%より多く、96質量%より多く、97質量%より多く、もしくは98質量%より多く、シス,トランス,トランス−1,5,9−シクロドデカトリエンを含有する異性体混合物を使用することが好ましい。
【0122】
一般に、シス,トランス,トランス−1,5,9−シクロドデカトリエンと一酸化二窒素との工程(a)による本発明による方法からは、異性体のシス,トランス−シクロドデカ−4,8−ジエノン、トランス,シス−シクロドデカ−4,8−ジエノン及びトランス,トランス−シクロドデカ−4,8−ジエノンの少なくとも2つを含有するシクロドデカ−4,8−ジエノン−異性体混合物が得られる。好ましくは、本発明によれば、異性体混合物が得られ、その際に、トランス,シス−異性体及びシス,トランス−異性体がほぼ同量で形成され、かつトランス,トランス−異性体が、両方の別の異性体と比較して少量でのみ形成される。例えば典型的な異性体混合物は、従って、約1:1:0.08のモル比で異性体を有する。
【0123】
シクロドデカトリエンを含有する組成物(I)と一酸化二窒素との工程(a)による本発明による反応から、一般に、組成物(A)として、シクロドデカジエノン、好ましくはシクロドデカ−4,8−ジエノンと、場合により未反応の出発物質及び/又は場合により少なくとも1つの副生成物を含有する混合物が得られる。更なる活用及び/又は後処理に応じて、前記混合物からシクロドデカジエノン、好ましくはシクロドデカ−4,8−ジエノンを分離することができる。
【0124】
前記混合物から、シクロドデカ−4,8−ジエノンを、少なくとも1つの好適な方法によって分離することができる。この場合に、蒸留による分離が好ましい。この場合に、蒸留は、一般に0.001〜2バールの範囲で、好ましくは0.01〜1バールの範囲で、特に好ましくは0.02〜0.5バールの範囲で行われる。
【0125】
本発明による方法の特に好ましい一実施態様によれば、工程(c)に従って、シクロドデカ−4,8−ジエノンを含有する組成物(B)を水素化して、シクロドデカノンを含有する組成物(C)が得られる。
【0126】
本発明の更なる好ましい一実施態様によれば、工程(a)により、シクロドデセンを含有する組成物(I)が使用される。この場合に、本発明による方法は、好ましくは工程(c)を含まない。
【0127】
工程(a)によるシクロドデセンの本発明による酸化から、一般に、生成物混合物が得られる。好ましくは、前記の生成物混合物は、20℃に冷却し、かつ常圧に減圧した後に、それぞれ生成物混合物の全質量に対して、5〜95質量%の範囲で、特に好ましくは7〜80質量%の範囲で、特に好ましくは10〜75質量%の範囲で、シクロドデカノンを含有する。
【0128】
出発物質として使用されるシクロドデセンは、シス異性体として、もしくはトランス異性体として、又はシス異性体とトランス異性体とからなる混合物として使用でき、それは基本的にあらゆる任意の起源に由来するものであってよい。
【0129】
殊に好ましくは、本発明の範囲においては、シクロドデセンは、少なくとも1つのシクロドデカトリエンの部分水素化によって、好ましくは少なくとも1つの1,5,9−シクロドデカトリエン、例えばシス,トランス,トランス−1,5,9−シクロドデカトリエンもしくはシス,シス,トランス−1,5,9−シクロドデカトリエン又はオールトランス−1,5,9−シクロドデカトリエンなどの1,5,9−シクロドデカトリエンの部分水素化によって、特にシス,トランス,トランス−1,5,9−シクロドデカトリエンから製造される。
【0130】
本発明の特に好ましい一実施態様によれば、本発明による方法の工程(a)及び(b)及び場合により(c)は、複数の中間処理工程と組み合わされる。
【0131】
本発明の好ましい実施態様を以下に例として示すが、本発明による方法は、それらの示される実施態様に制限されるものではない。
【0132】
本発明による方法の好ましい一実施態様によれば、従って工程(a)により、1,5,9−シクロドデカトリエンを含有する組成物(a)を一酸化二窒素によって酸化させ、その際、組成物(A)として、未反応のシクロドデカトリエンの他に、なおもシクロドデカ−4,8−ジエノンを主生成物として含有し、かつドデカ−4,8,11−トリエナール、シクロウンデカ−3,7−ジエンカルバルデヒド及びシクロドデセンジオンを副生成物として含有する混合物が得られる。
【0133】
前記の混合物から、シクロドデカトリエンは、好ましくは蒸留によって分離され、その際、実質的にシクロドデカ−4,8−ジエノンからなり、二次成分としてドデカ−4,8,11−トリエナールと、シクロウンデカ−3,7−ジエンカルバルデヒドと、シクロドデセンジオンを含有する混合物が得られる。好ましくは、ドデカ−4,8,11−トリエナールは、蒸留によって低減される。好ましくは、引き続き、シクロドデセンジオンを、好ましくは蒸留によって分離することで、組成物(A′)として、実質的にシクロドデカ−4,8−ジエノン及びシクロウンデカ−3,7−ジエンカルバルデヒドと少量の混加物でドデカ−4,8,11−トリエナールを含有する混合物が得られる。
【0134】
次いで、本発明による方法の工程(b)により、好ましくは、こうして得られた組成物(A′)を塩基と混合し、そしてアルデヒドの所望の低減度が達成されるまで処理する。前記処理の後に、塩基を、好ましくは蒸留によって分離する。前記の蒸留は、例えば分割壁塔(Trennwandkolonne)を介して行うことができる。
【0135】
その際に得られる組成物(B)を、次いで好ましくは、工程(c)により水素化させ、実質的にシクロドデカノンからなる組成物(C)を得ることができる。工程(c)に引き続き、更なる精巧な精製、例えば蒸留を行うことができる。
【0136】
好ましくは、前記の好ましい実施態様に従って、組成物(A)から蒸留により副生成物を分離することに至る。その際に、該方法の特に好ましい一実施態様によれば、第一の塔でシクロドデカトリエンが塔頂を介して留去され、そして塔底において、シクロドデカ−4,8−ジエノンと、ドデカ−4,8,11−トリエナールと、シクロウンデカ−3,7−ジエンカルバルデヒドと、シクロドデセンジオンを含有する混合物が得られる。第二の塔において、その塔底生成物は、好ましくは、実質的にドデカ−4,8,11−トリエナールを含有する塔頂留分と、他の複数の成分を含有する塔底留分とに分離される。この塔底排出物は、次いで好ましくは第三の塔において更に分離され、その際、塔頂生成物として、実質的にシクロドデカ−4,8−ジエノンとシクロウンデカ−3,7−ジエンカルバルデヒドとからなる混合物が得られ、かつ塔底物として実質的にシクロドデセンジオンが得られる。最後の塔の塔頂生成物は、次いで本発明によれば、組成物(A′)として工程(b)により塩基で処理される。
【0137】
該方法の更なる好ましい一実施態様においては、中間処理は、第一の塔でシクロドデカトリエンを塔頂を介して留去し、そして塔底において、シクロドデカ−4,8−ジエノンと、ドデカ−4,8,11−トリエナールと、シクロウンデカ−3,7−ジエンカルバルデヒドと、シクロドデセンジオンを含有する混合物を得るように実施される。第二の塔において、塔底生成物は、実質的にドデカ−4,8,11−トリエナールを含有する塔頂留分と、実質的にシクロドデセンジオンを含有する塔底留分と、実質的にシクロドデカ−4,8−ジエノン及びシクロウンデカ−3,7−ジエンカルバルデヒドを含有する側方取出留分(Seitenabzugfraktion)とに分離される。第二の塔の側方取出留分は、次いで本発明によれば、組成物(A′)として工程(b)により塩基で処理される。
【0138】
しかしながら、本発明によれば、中間処理の個々の段階を異なる順序で実施してもよく、あるいは上述のあらゆる分離段階を実施しなくてもよい。
【0139】
特に、工程(a)により得られる生成物を、直接的に工程(b)により塩基で処理することができる。
【0140】
以下に、本発明を実施例をもとに詳細に説明する。
【0141】
実施例
実施例1
1,5,9−シクロドデカトリエンを、WO2005/030690号の実施例7に従ってN2Oによって酸化させ、後処理した。第二の蒸留塔の塔頂生成物が以下の組成:シクロドデカ−4,8−ジエノン(98質量%)と、ドデカ−4,8,11−トリエナール(0.2質量%)と、シクロウンデカ−3,7−ジエンカルバルデヒド(0.7質量%)とを有するように蒸留した。
【0142】
500gの前記の塔頂生成物を、撹拌フラスコ中で、かつ保護ガス雰囲気下(N2)で160℃に加熱した。引き続き、注入器によって5.0gの25%のNaOH水溶液を添加した。該反応混合物は澄明かつ均質に留まった。規則的な間隔で、サンプルを取り出し、そしてGCで分析した。35分後に、該溶液は、20質量ppm未満のドデカ−4,8,11−トリエナール及びもはや約0.2質量%のシクロウンデカ−3,7−ジエンカルバルデヒドしか含有していなかった。95分後に、該溶液は、10質量ppm未満のドデカ−4,8,11−トリエナール及び400質量ppmのシクロウンデカ−3,7−ジエンカルバルデヒドを含有していた。それに対して、シクロドデカ−4,8−ジエノンの含有率は、殆ど変化しなかった(97質量%)。
【0143】
実施例2
1,5,9−シクロドデカトリエンは、WO2005/030690号の実施例7に従ってN2Oを用いて酸化させ、そして記載されるようにして、第一の塔で未反応の1,5,9−シクロドデカトリエンを分離した。第一の塔からの塔底排出物は、以下の組成:シクロドデカ−4,8−ジエノン(90質量%)と、ドデカ−4,8,11−トリエナール(2.2質量%)と、シクロウンデカ−3,7−ジエンカルバルデヒド(0.9質量%)と、シクロドデセンジオン(2.1質量%)とを有していた。550gの前記の混合物を、撹拌フラスコ中に装入し、そして保護ガス下(N2)で160℃に加熱した。引き続き、注入器によって2.75gの25%のNaOH水溶液を添加した。その際、該反応混合物は澄明かつ均質に留まった。規則的な間隔で、サンプルを取り出し、そしてGCで分析した。35分後に、該溶液は、もはや約150質量ppmのドデカ−4,8,11−トリエナール及び0.4質量%のシクロウンデカ−3,7−ジエンカルバルデヒドしか含有していなかった。95分後に、該溶液は、もはや30質量ppm未満のドデカ−4,8,11−トリエナール及び760質量ppmのシクロウンデカ−3,7−ジエンカルバルデヒドしか含有していなかった。そのシクロドデカ−4,8−ジエノンの含有率は、殆ど変化しなかった(95分後に88質量%)。
【0144】
ガスクロマトグラムにおいて、シクロドデセンジオンに対応するシグナルが、ほぼ完全に消失した。幾らか短い保持時間の場合に、176g/モルのモル質量に割り当てられる新たなシグナルが現れた。
【0145】
実施例3
実施例2に従って得られた混合物から、短経路型蒸発器において、高沸点成分を除去した。約500gの蒸留物が得られた。500gの蒸留物を、1リットルのオートクレーブ中で50mlの5%Pd/活性炭触媒上で約120℃及び30バールの水素圧で5時間以内で水素化させた。引き続き触媒を濾過によって約65℃で水素化生成物から分離し、それを引き続き、充填体として5mmの金網リング(Metallgewebsring)を有する1mの充填体塔を介して10ミリバール(絶対圧)で分別蒸留した。使用される蒸留出発物質の85%が、純度99.8%を有するシクロドデカノンとして得られた。二次成分として、0.03%のシクロウンデカンカルバルデヒドと、0.01%のドデカノールが含まれていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
7〜16個の炭素原子を有する環状ケトンの製造方法において、少なくとも
(a)7〜16個の炭素原子を有し、少なくとも1つのC−C二重結合を有する環状オレフィンを少なくとも含有する組成物(I)を一酸化二窒素によって酸化させて組成物(A)を得る工程、
(b)前記組成物(A)を少なくとも1つの塩基で処理して組成物(B)を得る工程
を含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、工程(b)が部分段階(b1)及び(b2):
(b1)組成物(A)を少なくとも1つの塩基で処理する段階、
(b2)塩基を分離する段階
を含む方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法において、塩基が水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムから選択される方法。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法において、工程(b)による処理を、温度100〜250℃で、かつ1分〜10時間の時間にわたり行う方法。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法において、環状オレフィンが、少なくとも2つのC−C二重結合を有する方法。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法において、該方法が、付加的に工程(c):
(c)組成物(B)を少なくとも1つの触媒の存在下で水素化させて組成物(C)を得る工程
を有する方法。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法において、工程(a)の後で、かつ工程(b)の前で、未反応の出発物質もしくは副生成物を、組成物(A)から分離して、組成物(A′)を得る方法。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の方法において、該方法が工程(c)の後に、なおも蒸留による精製を含む方法。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法において、環状オレフィンがシクロドデカトリエンである方法。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法において、環状オレフィンが、ブタジエンから三量体化によって製造されたシクロドデカトリエンである方法。
【請求項11】
請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法において、環状オレフィンがシクロドデセンである方法。

【公表番号】特表2009−541442(P2009−541442A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−517185(P2009−517185)
【出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【国際出願番号】PCT/EP2007/056396
【国際公開番号】WO2008/000757
【国際公開日】平成20年1月3日(2008.1.3)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】