説明

生コンクリートの単位水量測定装置

【課題】迅速かつ容易に生コンクリートの単位水量の測定ができ、測定精度の向上を可能とする生コンクリートの単位水量測定装置を提供する。
【解決手段】中央部に貫通孔5および挿入ガイド筒3を有する円盤状の上蓋2によって、空気量試験(JIS A1128)用の生コンクリートPを収容する試料容器1の上部を覆い、棒状のセンサー8を、この貫通孔5に挿通させて試料容器1の中心部に配置し、この試料容器1を、支持体13下端から天板12までの高さHを40cm以上とした天板12上に載せて測定することで、地面19の水分等の水素原子の影響を受けずに精度良く、迅速かつ容易に測定をすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生コンクリートの単位水量測定装置に関し、さらに詳しくは、精度よく迅速、容易に生コンクリートの単位水量測定を可能とする中性子水分計法による生コンクリートの単位水量測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、生コンクリートの品質管理のため、コンクリートの打設現場において、フレッシュコンクリートの空気量の圧力による試験(JIS A 1128―1999)に基づいて空気量を測定していた。そして、更なる品質管理の徹底のために、空気量だけでなく生コンクリートの単位水量測定も必要とされてきた。
【0003】
生コンクリートの単位水量測定としては、測定試料を電子レンジ等で加熱乾燥させて、蒸発した水分量を測定する方法(高周波加熱乾燥法)や物質固有の静電容量が水分量によって変化することを利用して静電容量から単位水量を推定する方法(静電容量法)などが用いられていたが、これらの方法は測定に時間がかかり、測定作業も面倒であった。
【0004】
そこで、本発明者は迅速に測定ができ、測定作業も容易な生コンクリートの単位水量測定方法と測定装置を提案している(特許文献1参照)。この提案は、生コンクリート中の水分(厳密には水素原子)に運動エネルギーの大きい速中性子を衝突させて、衝突によってエネルギーを失った中性子(熱中性子)の数を検知して単位水量を測定するものである。物質中に水分(水素原子)が多い程、熱中性子の生成量が多くなるという原理に基づく、いわゆる中性子水分計法を利用した測定方法である。
【0005】
この提案では、空気量測定(JIS A 1128―1999)後に、この測定に用いた試料容器をそのまま使用して、試料容器の中心位置に中性子線源を取り付けた棒状の熱中性子検出器を配置して、熱中性子数を検知することによって、事前に把握した熱中性子数と試料容器中の水量との関係から単位水量を迅速に精度よく、容易に算出するようにしている。
【0006】
本発明者は、中性子水分計法による水量測定の研究を進めた結果、中性子線源から放出された速中性子は試料容器を通過できるため、測定対象の生コンクリートの水分だけでなく、測定場所の地面や床面の水分等の水素原子にも衝突して熱中性子となり、これにより生成した熱中性子の量まで検知するため、正確な水量の測定ができない場合があることを見出した。この知見よって、さらに測定精度の良い測定装置を完成するに至った。
【特許文献1】特開2004−330898号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、迅速かつ容易に生コンクリートの単位水量の測定ができ、測定精度の向上を可能とする生コンクリートの単位水量測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため本発明の生コンクリートの単位水量測定装置は、支持体上に配置された天板上に、生コンクリートを収容した空気量試験(JIS A 1128)に用いられる試料容器を載置して、該試料容器内の生コンクリート中に、速中性子を放出する中性子線源と該速中性子が変化して生成する熱中性子の量を検出する熱中性子検知部とを内設する棒状のセンサーを没入して該試料容器の中心部に設置して、生コンクリートの単位水量を測定する測定装置において、前記支持体の下端から前記天板までの高さを40cm以上としたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の生コンクリートの単位水量測定装置によれば、空気量試験(JIS A 1128)に用いられる生コンクリートを収容する試料容器をそのまま使用するので、測定準備を容易にすることができる。
【0010】
また、支持体上に天板を配置して、支持体の下端から天板までの高さを40cm以上に設定し、この天板上に試料容器を置いてセンサーによって測定するので、測定場所の地面や床面の水分等の水素原子の影響を小さくして精度の良い測定を迅速かつ容易にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の生コンクリートの単位水量測定装置を図1の実施形態に基づいて説明する。生コンクリートの空気量試験(JIS A 1128―1999)に使用される生コンクリートPを収容する試料容器1の上部を、中央部に貫通孔5を有する円盤状の上蓋2が覆っている。貫通孔5には、棒状のセンサー8が挿通して試料容器1の中心部に配置されている。この試料容器1は、箱状の支持体13の上面に設置された天板12上に置かれている。天板12の脚部は、ねじ式の伸縮調整可能な構造となっていて、天板12上面を水平に設定することができる。
【0012】
この支持体脚部17から天板12までの高さHは40cm以上に設定されている。即ち、測定装置を直接、地面に置いた場合は、地面19から天板12の上面までの高さは40cm以上となる。この実施形態では、支持体13の上面に独立した天板12を配置する構造となっているが、支持体13と天板12を一体化してもよい。
【0013】
支持体13正面には、測定情報処理装置を構成する操作・表示パネル14が配置され、測定情報処理装置の他の構成要素である演算装置および記憶装置(ともに図示せず)は支持体13に内設されている。測定結果を出力するプリンタ15および上蓋2を収納する上蓋収納部16も支持体13正面に配置されている。電源装置となる充電池(図示せず)が支持体13に内設されているが、例えば外部から直流電源の供給を受ける直流電源装置を設けるようにしてもよい。測定をしない時に、センサー8を保持できるセンサーホルダ18を支持体13側面に設けている。なお、測定情報処理装置等と支持体13とは別個に設けるようにしてもよい。
【0014】
図2に示すように、有底円筒状の試料容器1上部を覆う上蓋2は、外ツバ部4を有する円盤状で、上方に円柱状にくぼませて形成した予備収容部6が設けられている。平面方向中央部には貫通孔5を有し、貫通孔5から上方に向かって、円筒状の挿入ガイド筒3が立設されている。貫通孔5の直径および挿入ガイド筒3の内径は、センサー8の外径よりも若干大きくなっており、センサー8を垂直に挿通可能としている。また、上蓋2の外ツバ部4下面には、下方に突出して、試料容器1の内周面に沿って当接するセンタ位置合わせ突起7が3ヶ所設けられている。
【0015】
図3に示すように、センサー8は先端部を円錐形状とした筒状体となっていて、中性子線源10と熱中性子検知部9とが密閉状態で中心位置に内設される。センサー8の先端角度Tは垂線をはさんで両側にそれぞれ30〜60度即ち、先端角度Tが60〜120度に設定されている。
【0016】
中性子線源10としては、放射線量3.7MBq以下の放射性同位元素カルフォルニウム(Cf−252)が使用され、熱中性子検知部9には、ヘリウム3(He−3)比例計数管が用いられている。
【0017】
センサー8の後端からは、中性子線源10および熱中性子検知部9と支持体13に設けられた各装置とを接続し、ヘリウム3(He−3)比例計数管に必要な電圧を印加するセンサー接続ケーブル11が延出している。
【0018】
生コンクリートPの単位水量測定の手順を図1〜3に基づいて以下、説明する。尚、中性子水分計法による水量測定精度を向上させるには、中性子線源10を試料容器1の平面方向および垂直方向において中央に位置させ、熱中性子検知部9を試料容器1の平面方向中央で垂直方向に延設させることが必要である。
【0019】
空気量の圧力による試験(JIS A 1118−1999)が済んだ後、生コンクリートPが収容された試料容器1の上蓋部(図示せず)を取り外し、本発明に係る上蓋2を装着する。この上蓋2は、例えばステンレス鋼製で重量は2〜3kg程度であり、自重で試料容器1に固定される。装着時に上蓋2のセンタ位置合わせ突起7が試料容器1の内周面に沿うように当接するので、上蓋2の中央部に設けた貫通孔5を試料容器1の水平方向中心部に位置させることができる。
【0020】
支持体13は通常、コンクリート打設現場の地面上に直接、置かれて使用される。測定準備として、生コンクリートPの材料データ等の入力をしておく。
【0021】
次に、試料容器1を天板12の中央部に載せて、センサー8を上蓋2の挿入ガイド筒3から貫通孔5に挿通させ、先端が試料容器1の底面に当接するまで挿入する。センサー8は、挿入ガイド筒3によって垂直にガイドされるので、中性子線源10および熱中性子検知部9を容易に試料容器1の平面方向中央部に配置することができる。
【0022】
また、センサー8の先端部が円錐形をしているので、先端と試料容器1の底面との間に生コンクリートPの粗骨材などが介在することなく、確実に先端を底面に当接させることができる。先端角度Tは60〜120度が好ましく、60度未満であると先端の耐久性が劣り、120度を超えると粗骨材を排除性能が低下する。中性子線源10はセンサー8の先端が試料容器1の底面に当接した時に、試料容器1の垂直方向中心に位置するようにセンサー8に取り付けられているので、この構造によって中性子線源10を試料容器1の垂直方向中央部に位置させることができ、測定精度を向上させることができる。
【0023】
センサー8の先端が試料容器1の底面に当接した時に、上蓋2の挿入ガイド筒3の上端に位置するセンサー8の表面に、挿入位置確認印を付しておくと、目視によって先端が試料容器1の底面に当接していることを確認することができる。
【0024】
試料容器1は生コンクリートPで満たされているので、センサー8を挿入すると、その挿入体積に相当する生コンクリートPが上方に移動するが、上蓋2に設けられた予備収容部6は、この体積に相当する収容容量を有しているので、移動した生コンクリートPは予備収容部6に収容される。したがって、挿入ガイド筒3から生コンクリートPが漏れ出して、測定する生コンクリートの容積が減じることがなく、また、外部を汚すことがない。
【0025】
この状態で測定を開始すると、中性子線源10から放出された運動エネルギーの大きい速中性子は、試料容器1内の生コンクリートP中の水素原子に衝突して、エネルギーを失った熱中性子となり、この熱中性子の量を熱中性子検知部9によって検知することで間接的に物質中の水分量が測定可能となる。
【0026】
中性子水分計法による水量測定の研究によって、後述する実施例に示すように地面19から試料容器1の下面までの高さが40cm以上であれば、地面19の水分等の水素原子の影響をほとんど受けずに測定できることが判明したので、支持体脚部17から天板12までの高さHを40cm以上としている本測定装置では、精度の良い測定をすることができる。
【0027】
この高さHは、40cm以上あれば測定精度の観点からは十分であるので、この条件下で、試料容器1を天板12に載せる作業性を考慮して決定する。生コンクリートPを収容した試料容器1の重量は約20kgとなるので、なるべく低くするのが好ましく、例えば40〜100cm、更に好ましくは40〜60cm程度とする。
【0028】
ここで検知される熱中性子の量は、生コンクリートPと骨材とに含まれる水分の影響を受けたものなので、事前の校正によって入力済みの骨材の含水量を差し引く補正をして、生コンクリートPの単位水量を求めることができる。例えば、10秒間の測定を7回繰り返し行ない、最上値および最下値を省いた5回のデータの平均値を生コンクリートPの単位水量とする。
【0029】
以上のように本発明の測定装置では、測定開始から約70秒で測定が完了し、測定結果は操作・表示パネル14に表示され、プリンタ15によって出力されるので、迅速で容易に測定することができる。また、測定準備にも面倒な作業が必要とされない。
【0030】
この測定装置は直接、地面19に設置されても地面19から天板12までの高さが40cm以上となるので、地面19の水分等の水素原子の影響を受けずに精度の良い単位水量測定が可能となる。実施形態では、測定装置を設置する場所を地面19としているが、屋内等で測定をした場合は、測定場所の床面等の水分(水素原子)の影響を受けずに、精度の良い測定をすることができる。
【0031】
また、この支持体13に測定情報処理装置、プリンタ15、充電池を一体化して組み込むことで、スペースを無駄なく使用してコンパクトな測定装置とすることができる。
中性子線源10となるカルフォルニウムは半減期が2.65年であり、経時的に線量が減少するが、カルフォルニウムの使用経過日数が記憶装置に記憶され、経時的線量変化を把握することができるので、校正を行なうことで正確な測定が可能となる。
【実施例】
【0032】
あらかじめ単位水量が判明している同一の生コンクリートを、空気量試験(JIS A 1128)に用いられる試料容器に突き固めて重量約16kg収容して、中性子線源として放射線量3.4MBqの放射性同位元素カルフォルニウム(Cf−252)を使用し、熱中性子検知部としてヘリウム3(He−3)比例計数管を使用した棒状のセンサーを、試料容器の生コンクリートに没入して試料容器の中心部に設置することを共通条件として、事前に空気量の測定を行なった後、生コンクリートの単位水量測定を行なった。
【0033】
表1に示すように、高さを変えた6種類の支持体を用意し、これらの支持体の天板に試料容器を載せた状態での測定(6通りの高さ条件)と、支持体を使用しないで直接、地面に試料を置いた状態での測定のあわせて、7通りの高さ条件で測定をした。支持体はステンレス鋼製の直方体状の枠体で、天板はステンレス鋼製の厚さ0.4cm程度の平板を用いた。
【0034】
この各高さ条件において、測定装置を設置する床面を3通り(床面A、床面B、床面C)として測定高さによる床面の水分等の水素原子の影響を確認した。各条件で10秒間の測定を7回繰り返し行ない、最上値および最下値を省いた5回の測定結果の平均値をその条件での測定値とした。測定結果は表1に示すとおりである。
【0035】
【表1】

【0036】
表中の支持体高さhとは、支持体の下端から天板の上面までの高さである。表1には各支持体高さhにおける床面の水分等の水素原子の影響を示す指標として測定値のばらつきを表す分散Vを示した。
【0037】
図4に示す分散Vから、支持体高さhが40cm以上即ち、地面から試料容器下面までの高さを40cm以上にすることによって、床面の水分等の水素原子の影響を少なくして精度良く測定できることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の生コンクリートの単位水量測定装置の一例を示す一部断面正面図である。
【図2】本発明に係る上蓋の形状を示す縦断面図である。
【図3】本発明において試料容器にセンサーを設置した状態を示す縦断面図である。
【図4】高さ条件を変えて測定した単位水量の測定値の分散を示すグラフ図である。
【符号の説明】
【0039】
1 (生コンクリートの空気量測定用)試料容器
2 上蓋
3 挿入用ガイド
4 外ツバ部
5 貫通孔
6 予備収容部
7 センタ位置合わせ突起
8 センサー
9 熱中性子量検知部
10 中性子線源
11 センサー接続コード
12 天板
13 支持体
14 操作・表示パネル
15 プリンタ
16 上蓋収納部
17 支持体脚部
18 センサーホルダ
19 地面
























【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に配置された天板上に、生コンクリートを収容した空気量試験(JIS A 1128)に用いられる試料容器を載置して、該試料容器内の生コンクリート中に、速中性子を放出する中性子線源と該速中性子が変化して生成する熱中性子の量を検出する熱中性子検知部とを内設する棒状のセンサーを没入して該試料容器の中心部に設置して、生コンクリートの単位水量を測定する測定装置において、前記支持体の下端から前記天板までの高さを40cm以上とした生コンクリートの単位水量測定装置。
【請求項2】
前記支持体は箱状であり、該支持体内に測定情報処理装置、出力装置および電源装置を一体化して設けた請求項1に記載の生コンクリートの単位水量測定装置。
【請求項3】
前記試料容器の上部に装着される円盤上の上蓋を設け、該上蓋は上方にくぼませて形成した予備収容部を有し、かつ中央部に貫通孔と該貫通孔から上方に向かって立設した挿入ガイド筒とを有して、前記センサーを挿通可能とした請求項1または2に記載の生コンクリートの単位水量測定装置。
【請求項4】
前記センサーの先端部を先端角度が60〜120度の円錐形状にした請求項1〜3のいずれかに記載の生コンクリートの単位水量測定装置。










【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−17479(P2006−17479A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−193051(P2004−193051)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000219406)東亜建設工業株式会社 (177)
【Fターム(参考)】