説明

生コンクリート搬送車ドラムの内容物量測定方法および測定器具

【課題】 生コンクリート搬送車のドラム内の内容物量について、簡便・迅速に且つ正確・安価に測定することのできる測定方法および測定器具を提供することを課題とする。
【解決手段】 生コンクリート搬送車1のホッパ4の後端部のA点とホッパ4に付加した測定補助具7のB点の2点にて検尺棒5の一方端部を摺動自在に当接支持し、検尺棒5の他方端部の先端C点をドラム2内の生コンクリート6の液面に接触し、ホッパ4に設定した測定点であるA点またはB点と検尺棒5の先端C点との距離を検尺棒5にて検尺することにより、生コンクリート6の量を測定する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートミキサー車、アジテータトラック、生コン車、などと称される生コンクリート搬送車のドラム内の内容物である生コンクリートあるいはモルタルなどの量を簡便・迅速に測定する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生コンクリート搬送車は、上記の他にもアジテータ、ミキサー車、移動式ミキサなどと称される場合もあり、厳密にはセメントや骨材などの材料をドラム内に積み込んで練り合合わせて生コンクリートやモルタルを製造・輸送するものをミキサー車などと称し、一方、予め工場などで製造された生コンクリートやモルタルを固まらないように攪拌しつつ輸送するものをアジテータなどと称するが、両方の機能を併せ持つものも多く使用されている。
【0003】
建設工事現場などにて内容物の納品を終えた生コンクリート搬送車は、工場や基地へ戻り洗浄するのであるが、現場にて使い切らずドラム内に残った内容物は、環境保護のため現場に廃棄したり放置せずに工場や基地に持ち帰り、廃棄処理または骨材としてリサイクルされることとなる。
この使い切らずドラム内に残った内容物は通称、残コン、戻りコン、あるいは余りコンなどと称され、その廃棄処理には相応の処理コストも発生するのであるが、これまで多くの場合は洗浄作業の一環あるいは無料サービスとして行われており、実際の処理コストは提供業者の負担になっている。
【0004】
そこで最近、未だ一部ではあるが、廃棄物の削減を目的として顧客にもこの処理コストについて応分の負担をして貰うこととする交渉や取り組みが行われつつある。
しかしながら、この処理コストは処理すべき内容物の量に応じて発生するものであり、現場にて提供業者と顧客とがドラム内に残った内容物の量を確認し了解し合う必要があるが、図5に示すように生コンクリート搬送車1のドラム2の内部を見るにはホッパ4から中を覗く以外に方法はなく、図6に示すようにドラム2の内部には螺旋状の攪拌羽根3があり更には暗いことから殆ど良く見えず、内容物の量を目視により正確に測定することは甚だ困難であるという問題があった。実際、提供業者とは立場の弱い運転手であり、顧客とは立場の強い現場監督であることが多いため、客観的な測定方法が求められている。
また、そもそも単に目視するだけでは正確な測定は凡そ不可能であり、十分正確な測定のためには機械的あるいは電気的または光学的な手法なども種々考えられるが、走行する車両に搭載した回転するドラムの、更には硬い骨材を含む高粘度の内容物が激しく流動し付着する内部について、確実に機能して測定できる耐久性の高い測定装置を装備するには、相応の費用が必要になるという問題もあった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような現状に鑑みて成されたものであり、生コンクリート搬送車のドラム内の内容物量について、簡便・迅速に且つ正確・安価に測定することのできる測定方法および測定器具を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記のような課題を解決するために、本発明の生コンクリート搬送車ドラムの内容物量測定方法は、生コンクリート搬送車のホッパから直線状検尺器具をドラム内に差し入れて内容物の量を測定することを基本とするものであり、そのために直線状検尺器具を固定する支持点および目盛を読み取り検尺する測定点をホッパに設定することとし、この測定点と内容物の液面に接触した直線状検尺器具の先端との距離を測定することにより、ドラム内の内容物量を測定するようにしたものである。
また、本発明の測定器具である測定補助具は、ホッパに対して着脱自在に上記の支持点や測定点を設定する構成とし、一方、直線状検尺器具は、目盛を備えた棒状または板状の長尺部材にて構成することを基本とし、必要に応じて更に伸縮式あるいは折り畳み式として短尺化自在とするものである。
そして、上記の測定補助具や直線状検尺器具には、測定作業用の照明器具や生コンクリート搬送車の水平状態を確認するための水平器を更に備えるように構成したものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、このような構成としたことにより、生コンクリート搬送車のドラム内の内容物量について、簡便・迅速に且つ正確・安価に測定することができる。
即ち、ドラムの内部を見るにはホッパから中を覗く以外に方法はないが、螺旋状の攪拌羽根があり更には暗くて目視により正確に測定することは甚だ困難であったドラム内の内容物量について、ホッパから直線状検尺器具や測定補助具などの凡そ簡素な測定器具にて手軽に正確に測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
【実施例】
【0009】
図1は本発明の実施例を説明する概略断面図であり、ホッパ4から直線状検尺器具としての検尺棒5をドラム2の内部に差し入れて、内容物である生コンクリート6の量を測定する方法の基本を概略的に示すものである。即ち、ホッパ4の後端部のA点とホッパ4に付加した測定補助具7のB点の2点にて検尺棒5の一方端部を摺動自在に当接支持し、検尺棒5の他方端部の先端C点をドラム2内の生コンクリート6の液面に接触し、ホッパ4に設定した測定点であるA点あるいはB点と検尺棒5の先端C点との距離を検尺棒5にて検尺することにより、生コンクリート6の量を測定するものである。
【0010】
ここで、A点とB点はホッパ4において検尺棒5を摺動自在に当接支持すると共に常に所定の位置に固定する支持点および検尺棒5の目盛を読み取り検尺するための測定点としたものである。必要に応じてA点B点を含む直線上に更に幾つかの支持点や別途に測定点を設定することも可能であるほか、支持点における点接触支持に代えて線接触支持とすべく樋状や筒状などとして検尺棒5の摺動性や直線性を高めることも好ましいものである。
また、支持点や測定点の設定については、この例のようにホッパ4の後端部や測定補助具7を用いて設定する以外にも、ホッパ4の適宜な部位を単数あるいは複数利用したり、後述の各種測定補助具を単数あるいは複数用いて設定することも可能であり、あるいは、予めホッパ4に所定の支持点や測定点となる部位を構成しておくことも可能である。
【0011】
尚、測定時は、攪拌羽根3の位置によっては生コンクリート6の液面が一つの水平面にならない場合があるため、ドラム2を正回転させ、液面が一つの水平面を保つ所で回転を静止した上で内容物量を測定する。ここで、正回転とは運搬時回転(車両正面から見て時計回り)であり、逆回転とは荷下ろし回転(車両正面から見て時計と逆回り)である。
【0012】
ドラム2内の内容物量の増減と液面の高さの変位についての関係は、ドラム2の形状的な特性のためリニアな比例関係ではなく、比較的急激な不連続性を有するものであるが、本発明の測定方法にあっては検尺棒が液面に対して垂直ではなく大きな倒れ角θをなしていることから、高い精度で内容物量を測定することができる。
即ち、例えば内容物の量が増大した場合には液面の高さ位置が内容物量の増大に比して僅かに上昇するが、検尺棒5の先端Cと液面との接触点の位置は液面の上昇変位に比して大きく後退することになり、この大きな後退変位を読み取ることで僅かな液面の上昇変位を大きく拡大して測定することができ、従って高い精度で内容物量を測定することができるのである。
【0013】
図2は本発明の測定方法にて実際に測定を行なった実験の結果を示すものであり、(a)は数値表、(b)は数値をグラフにしたものである。実験は一般的なコンクリートミキサー車(公称11トン車/最大ドラム容量8.9m)において空のドラムに生コンクリートを0.5m刻みで投入し、図1に示すB点とC点との距離をmm目盛の検尺棒で検尺したものである。
実験の結果、各差分(mm)には十分に大きな値がみられ、更には、グラフの線が示すように凡そ不連続性はみられず略リニアな特性がみられた。
【0014】
従って、このコンクリートミキサー車におけるドラムの内容物量を測定するにあたっては、上記(a)の数値表を用いて検尺結果から対照することにより内容物の量を特定することが可能となる。また、上述したように各差分には十分に大きな値があること、および略リニアな特性があることから、検尺結果が中間値を示した場合にも案分して内容物の量を特定することも可能となる。
【0015】
実際の使用にあたっては、各コンクリートミキサー車のドラム毎に固有の特性があり、厳密な運用としては各々に固有の数値表を作成して用いることが好ましいが、市販されているコンクリートミキサー車のタイプや種別およびドラムの形状や容量について、仕様が同じものには共通の数値表や共通の測定器具を用いることも好ましいと思われる。
【0016】
図3の(c)(d)(e)(f)(g)の各々は、本発明の測定器具である測定補助具の実施例を示す斜視図である。
(c)は全体が板状の測定補助具7であり、上部には自身をホッパ4の上端縁部に着脱自在に掛け下げる上フックとしての折り返し部位8を備え、下部には検尺棒5を貫通させて摺動自在に支持すると共に測定点Bとなる貫通孔9を備えている。(d)は全体がU字状の測定補助具10であり、上部には自身をホッパ4の上端縁部に着脱自在に掛け下げる上フックとしての折り返し部位11を備え、下部には検尺棒5を載置して摺動自在に支持すると共に測定点Bとなる下フックとしての湾曲状部位12を備えている。(e)は全体が直線状の測定補助具13であり、上部には自身をホッパ4の上端縁部に着脱自在に掛け下げる上フックとしての折り返し部位14を備え、下部には検尺棒5を載置して摺動自在に支持すると共に測定点Bとなる下フックとしての湾曲状部位15を備えている。
尚、ホッパ4の上端縁部に生コンクリート受入用の飛散防止ラバーフードなどがあり測定補助部材7、10、13などを掛け下げることができない場合は、ホッパ4の適宜位置に測定補助部材を掛け下げるための例えば略コの字形金具(g)などを予め取付けておくのも好ましいものである。更には、測定補助部材をホッパ4に掛け下げる構造も一般的な公知技術を用いて様々に変更可能なものである。
また、(f)は全体が三角柱状の測定補助具16であり、下部には自身をホッパ4の内部に着脱自在に定置する底面部位17を備え、上部には検尺棒5を載置して摺動自在に支持すると共に測定点Bとなろ湾曲状の窪み部位18を備えている。この三角柱状の測定補助具16は図1に点線で示すように、ホッパ4の奥部分の下端縁部に位置させて用いるものである。
このように、本発明の測定補助具はホッパ4に対して着脱自在に付加して検尺棒5などの直線状検尺器具の一方端部を摺動自在に当接支持し且つ測定点とし得るものであれば、これらの例に限らず様々な形状や構造が考えられるものであり、種々のホッパやドラムの形状あるいは様々な測定作業条件などに対応し、更には、安価な材料にて簡素に構成することも好ましいものである。
【0017】
図4の(h)(i)の各々は、本発明にて用いる測定器具である直線状検尺器具の実施例を示す斜視図である。
本発明において検尺のために用いる直線状検尺器具としては、基本的に検尺棒5のような検尺用の目盛を備えた棒状または板状の直線状長尺部材であるが、必要に応じて(h)に示す検尺棒19のように伸縮式としたり、あるいは(i)に示す検尺棒21のように折り畳み式とし、使用時以外は収納や持ち運びに便利なように短尺化自在とすることも好ましいものである。
検尺棒19は、いわゆるロッドアンテナ構造として伸縮自在としたもので、剛性が高く直線性が良く堅牢なことから好ましいものであり、検尺棒21は、蝶番にて折り畳み自在としたもので、板状の木材など軽く安価な材料にて比較的容易に直線性も良いものが製作可能なことから好ましいものである。また、検尺棒の先端に球状物20を備えて生コンクリートなどの液面との接触点を確認し易くしたり、切り欠き部22を備えて先端部を含む面を構成し検尺棒の先端が液面下に沈まないようにすることも好ましいものである。
【0018】
更に、本発明に用いる直線状検尺器具や測定補助具に図示せぬ照明器具や水平器などを備えることにより、測定における利便性を一層向上させることができる。
生コンクリート搬送車のドラムの内部は暗く、更に内容物量が少ない場合には検尺棒の先端を接触させる液面の位置は奥部となり一層暗い状態であるが、検尺棒や測定補助具に照明器具を備えた場合にはドラム内部や手元を明るく照らすことができ、測定作業において極めて有益である。
また、ドラム内の内容物量を正確に測定するためには、生コンクリート搬送車を水平に保つべきであるが、建設工事現場などは整地されていない場合が殆どであり、検尺棒や測定補助具に水平器を備えた場合には生コンクリート搬送車の水平状態を手軽に確認することができ、測定作業において極めて有益である。
尚、照明器具や水平器などは一般市販のものが使用でき、その取り付け方法も一般的な手法にて十分可能である。
【産業上の利用可能性】
【0019】
以上、説明してきた如く、本発明の生コンクリート搬送車ドラムの内容物量測定方法および測定器具は、極めて簡便・迅速に且つ正確・安価に測定することができるものである。
また、実際に測定を行なった実験結果においても実に良好な数値と特性がみられ、十分に実用に耐えるものである。
環境の保護が声高に叫ばれる今日、使い切らずに残った生コンクリート搬送車ドラム内の内容物については、コストを見据えた適切・適正な処理への対応が漸く緒に付いたところであるが、その量の簡便・迅速で正確・安価な測定手法を確立することにより、一層の進展を期待できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】 本発明の実施例を示す概略断面図
【図2】 本発明の実験結果を示す数値表(a)およびグラフ(b)
【図3】 本発明の測定補助具の実施例(c)(d)(e)(f)(g)を示す斜視図
【図4】 本発明にて用いる直線状検尺器具の実施例(h)(i)を示す斜視図
【図5】 一般的な生コンクリート搬送車を示す側面図
【図6】 図5に示す生コンクリート搬送車のドラム内部を示す概略斜視図
【符号の説明】
1 生コンクリート搬送東
2 ドラム
4 ホッパ
6 生コンクリート
5 検尺棒
7、10、13、16 測定補助具
19、21 直線状検尺器具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生コンクリート搬送車のドラム内の内容物量を測定する方法であって、ホッパに設定した少なくとも2つの点にて直線状検尺器具の一方端部を摺動自在に当接支持し、直線状検尺器具の他方端部の先端を内容物液面に接触し、ホッパに設定した測定点と直線状検尺器具の他方端部の先端との距離を直線状検尺器具にて検尺することにより、ドラム内の内容物量を測定するものである生コンクリート搬送車ドラムの内容物量測定方法。
【請求項2】
ホッパに設定した少なくとも2つの点は、ホッパ後端部の1点およびホッパに付加する測定補助具に設けた1点を含み、この2点の何れかを測定点とするものである請求項1に記載の生コンクリート搬送車ドラムの内容物量測定方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2の何れかに記載の生コンクリート搬送車ドラムの内容物量測定方法に用いる測定器具であって、直線状検尺器具の一方端部を摺動自在に当接支持する1点を備え、ホッパに対して着脱自在に付加するものである測定補助具。
【請求項4】
測定補助具は、自身をホッパに掛け下げる上フック、および、直線状検尺器具を当接支持する下フックまたは貫通孔を有するものである請求項3に記載の測定補助具。
【請求項5】
請求項1または請求項2の何れかに記載の生コンクリート搬送車ドラムの内容物量測定方法に用いる測定器具であって、検尺用の目盛を備えた棒状または板状の長尺部材にて構成し、必要に応じて更に伸縮式あるいは折り畳み式として短尺化自在としたものである直線状検尺器具。
【請求項6】
請求項3乃至請求項5の何れかに記載の測定器具であって、更に、測定作業用の照明器具および/または生コンクリート搬送車の水平状態確認用の水平器を備えたものである測定器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−96409(P2008−96409A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−302109(P2006−302109)
【出願日】平成18年10月10日(2006.10.10)
【出願人】(597062937)大翔興業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】