説明

生ゴミ処理機

【課題】駆動手段のトルクを増大させることなく、確実に処理材と生ゴミとを攪拌可能とする。
【解決手段】処理材を収容する処理槽20を有する処理機本体10と、処理槽20の内部に収容した生ゴミと処理材とを攪拌する攪拌部材28および駆動手段(駆動モータ29)からなる攪拌手段とを備えた生ゴミ処理機において、攪拌部材28は、垂直方向に延びる回転軸30と、回転軸30から径方向外向きに突出して処理材を上向きに押し上げるように作用する攪拌翼と、攪拌翼から垂直方向に突出する垂直壁38A〜38C,43A〜43Cとを備えた構成としている。具体的には、攪拌翼は、複数の羽根部35,40A,40Bを回転軸30の上下方向に所定間隔をもって、かつ、周方向に所定間隔をもって放射状に配設したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオ方式の生ゴミ処理機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の生ゴミ処理機は、好気性の微生物(バイオ菌)を基材に担持させた処理材によって生ゴミを発酵させて分解するもので、処理機本体の処理槽内に、回動可能な攪拌手段が配設されるとともに、前記処理槽の外部に、内部を加熱するための加熱手段が配設されている。そして、前記加熱手段によって処理槽の内部を所定温度範囲内に維持しながら、投入した生ゴミを前記攪拌手段によって処理材と攪拌することによって処理を行うものである。
【0003】
本発明の生ゴミ処理機に関連する先行技術文献情報としては次のものがある。
【0004】
【特許文献1】特開2002−263620号公報
【0005】
この特許文献1には、小型化および攪拌効率の向上を図ることを目的として、前記処理槽の底から駆動モータの出力軸を突設し、該出力軸に着脱可能なボスから放射状に第1から第3のアームを突設するとともに、各アームに羽根部を設けた縦型の攪拌部材を搭載した生ゴミ処理機が記載されている。
【0006】
第1アームに設けた第1羽根部は、処理槽の底近傍の処理材を押し上げるようにして攪拌するもので、回転方向に向けて下向きに傾斜するように設けられている。第2アームに設けた第2羽根部は、処理槽の底において外周壁近傍の処理材を押し上げるようにして攪拌するもので、回転方向に向けて下向きに傾斜するように設けられ、第2アームの寸法により前記第1羽根部より径方向外側に位置するように構成されている。第3アームに設けた第3羽根部は、前記第1および第2羽根部で押し上げた処理材を処理槽の中央および外周部に押し分けるように攪拌するもので、回転方向に向けて山形をなす一対の翼片を備えている。
【0007】
しかしながら、このように回転軸を垂直方向に延びるように配設した縦型の攪拌部材は、処理材を上向きに押し上げるように作用する第1および第2羽根部の傾斜角度(水平方向に対するひねり角度)の設定が非常に困難である。
【0008】
具体的には、この攪拌部材によって処理材と生ゴミとの攪拌効率を向上するには、各羽根部の傾斜角度は、水平方向に対して鈍角をなすように設定し、攪拌作用に係る有効面積を多くすることが好ましい。しかし、このように傾斜角度を鈍角にした場合には、処理材および生ゴミによる羽根部に対する抵抗が増大するため、該攪拌部材を回転させるための駆動モータに要求されるトルクが増大し、コスト高になるという問題がある。また、これに伴い、攪拌部材自体も強い強度が必要になるうえ、駆動モータを固定する処理槽や処理機本体も強い剛性が必要になり、機器全体がコスト高になる。しかも、トルクが大きい駆動モータの使用に伴い、ユーザには運転時の騒音により煩わしさを感じさせるうえ、消費電力も増大するという問題がある。
【0009】
一方、攪拌部材の各羽根部の傾斜角度を水平方向に対して鋭角をなすように設定すれば、前記問題が生じることはない。しかし、処理材と生ゴミの攪拌効率が低下するうえ、処理材の湿度が乾燥状態に近くなるにつれて単に掻き切るように作用することになり、攪拌効率を低下させる問題がある。具体的には、第1および第2攪拌翼では、処理材の状況によっては該処理材に対して十分に上向きの押圧力を加えることができず、回転に従って処理材が外向きに流動するように作用する。その結果、羽根部による押圧力が外向きに逃げて損失することにより、単に掻き切るようにのみ作用する場合がある。なお、この問題は、処理槽が深く、下層部分では大きな圧力が加わる環境の場合に顕著に現れる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、従来の問題に鑑みてなされたもので、駆動手段のトルクを増大させることなく、確実に処理材と生ゴミとを攪拌可能な生ゴミ処理機を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、本発明の生ゴミ処理機は、処理材を収容する処理槽を有する処理機本体と、前記処理槽の内部に収容した生ゴミと処理材とを攪拌する攪拌部材および駆動手段からなる攪拌手段とを備えた生ゴミ処理機において、前記攪拌部材は、垂直方向に延びる回転軸と、該回転軸から径方向外向きに突出して前記処理材を上向きに押し上げるように作用する攪拌翼と、該攪拌翼から垂直方向に突出する垂直壁とを備えた構成としている。
具体的には、前記攪拌翼は、複数の羽根部を前記回転軸の上下方向に所定間隔をもって、かつ、周方向に所定間隔をもって放射状に配設したものである。
【0012】
このようにした生ゴミ処理機は、攪拌部材の回転軸を垂直方向に延びるように配置した縦型のものであるため、横方向の小型化を図ることができ、設置する床面の省スペースを図ることができる。また、この攪拌部材では、攪拌翼の傾斜角度によっては、従来と同様に、処理材に対して十分に上向きの押圧力を加えることができず、回転に従って処理材が外向きに流動するように作用する。しかし、前記攪拌部材では、処理材を上向きに押し上げるように作用する攪拌翼に、垂直方向に突出する垂直壁を設けているため、該垂直壁により処理材が外向きに流動する作用を抑制できる。その結果、攪拌翼によって処理材に対して上向きの押圧力を十分に加えることが可能になるため、処理槽が深いものであっても十分な攪拌作用を得ることができる。言い換えれば、本発明の生ゴミ処理機は、攪拌翼に垂直方向に延びる垂直壁を設けることにより、攪拌翼の傾斜角度を変更することなく、攪拌に係る有効面積を増大できるため、攪拌翼自体の傾斜角度の設計の自由度を向上できる。その結果、攪拌効率を向上させるために、駆動手段としてトルクが大きいものを適用する必要はない。そのため、トルクが大きい駆動手段を適用することに伴う従来の問題を確実に防止できる。
【0013】
前記生ゴミ処理機では、前記垂直壁の回転方向前側の縁に、鋭角な刃部を設けることが好ましい。このようにすれば、水分を含んだ処理材の大きな固まりや、繊維質の多い生ごみを裁断することができ、処理材による分解処理効率を大幅に向上できる。
【0014】
また、前記垂直壁の回転方向前側の縁を、上方から下方に向けて回転方向後側に傾斜する傾斜縁とすることが好ましい。このようにすれば、生ゴミを攪拌翼上に取り込むように作用するため、処理材と生ゴミの攪拌効率を更に向上できる。
【0015】
さらに、前記垂直壁を、前記回転軸を中心として径方向外向きに所定間隔をもって複数設けることが好ましい。
この場合、前記回転軸の近傍に位置する第1の垂直壁より、外側に位置する第2の垂直壁の全高を低くすることが好ましい。
このようにすれば、攪拌翼に対する負荷を径方向の内外で均一化できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の生ゴミ処理機では、処理材を上向きに押し上げるように作用する攪拌翼に、垂直方向に突出する垂直壁を設けているため、該垂直壁により処理材が外向きに流動する作用を抑制できる。その結果、攪拌翼によって処理材に対して上向きの押圧力を十分に加えることが可能になり、処理槽が深いものであっても十分な攪拌作用を得ることができる。そのため、攪拌翼自体の傾斜角度の設計の自由度を向上でき、攪拌効率を向上させるために、駆動手段としてトルクが大きいものを適用する必要はない。よって、トルクが大きい駆動手段を適用することに伴う従来の問題を確実に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施形態に係る生ゴミ処理機を示す。この生ゴミ処理機は、内部の処理槽20に、好気性の酵母菌からなる微生物(バイオ菌)をおがくずなどの基材に担持させた処理材を収容し、投入した生ゴミを処理材によって分解させるバイオ方式であり、大略、処理機本体10と、該処理機本体10の上部を開閉可能に閉塞する蓋体54とからなる。
【0019】
前記処理機本体10は、その外装体11の内部に処理槽20を配設することにより、該処理槽20内の処理部と処理槽20外の部品配設部とに区画したものである。
【0020】
前記外装体11は、略四角筒状をなす枠体12の底に底板13が配設されるとともに、上部に蓋枠14が配設されたものである。前記枠体12の後面(図1中右側)には、後述する処理槽20の排出口21から突出した筒部22を露出させる開口部12aが設けられている。そして、この枠体12の前面(図1中左側)と前記開口部12aが設けられた後面には、前カバー15と後カバー16とが着脱可能に配設されている。前記蓋枠14には、その前部に生ゴミの投入口14aが設けられている。また、枠体12の内部には、処理槽20の上端に位置するように仕切板17が配設されている。この仕切板17は、処理槽20の上端前部に位置するように開口部17aが設けられ、該開口部17aと前記蓋枠14の投入口14aとの間には筒状をなすダクト部材18が配設されている。このダクト部材18の後面側には吸気口19が設けられ、この吸気口19に後述する排気手段を構成する排気ダクト48が接続されている。
【0021】
前記処理槽20はPP(ポリプロピレン)製であり、横断面矩形状をなし、かつ、その横断面積が上側の開口に向けて徐々に広がる有底筒状のものである。この処理槽20の前側壁20aは、その上部が前方に位置するダクト部材18の前面を覆うように前方に膨出した形状をなす。また、この処理槽20の後側壁下部には、外部に連通する排出口21が設けられ、その開口縁には先端が前記枠体12の開口部12a内に配置される筒部22が突設されている。この筒部22には、ネジ締めにより蓋23が着脱可能に取り付けられている。さらに、処理槽20の底には、有底筒状をなす軸受部24が一体に設けられている。この軸受部24には、別体の台座部材25と球状部材27とが配設されている。台座部材25はステンレス材からなる円柱形状のもので、その上面には略半球状に窪む第1球状凹部26が設けられている。前記球状部材27は、後述する攪拌部材28の回転軸30と前記軸受部24との間の抵抗を抑制するためのもので、ステンレス材からなる球体により構成されている。なお、前記軸受部24は、前記台座部材25と球状部材27とを内部に配置した状態で、その上端面が前記球状部材27の頂部より十分に上方に位置する深さで形成されている。
【0022】
前記処理機本体10には、前記処理槽20内に回転可能に支持される攪拌部材28と、前記仕切板17上に配設した前記攪拌部材28の駆動手段である駆動モータ29とからなり、処理槽内に収容した生ゴミと処理材とを攪拌する攪拌手段が設けられている。
【0023】
前記攪拌部材28は金属製であり、図2および図3に示すように、垂直方向に延びる回転軸30に、攪拌翼を構成する3個の羽根部35,40A,40Bを放射状をなすように固着した縦型のものである。ここで、この攪拌部材28は、前記処理機本体10内において後面側に位置し、生ゴミを投入するための投入口14aおよびダクト部材18からは上面視で殆ど見えないように構成されている。
【0024】
前記回転軸30は、その下端が前記軸受部24に回転可能に支持される一方、上端に継手部材33が配設されている。そして、この継手部材33が前記仕切板17を貫通され、該仕切板17上に配設した前記駆動モータ29に接続されている。具体的には、回転軸30の下端には、前記球状部材27上に載置される略半球状の第2球状凹部31が設けられている。また、回転軸30の上端には、断面略D字形状をなすように非円形凸部32が設けられている。
【0025】
前記継手部材33は円柱形状をなし、その上下端面に略D字形状に窪んだ非円形凹部34が設けられている。そして、これら非円形凹部34に、前記回転軸30の非円形凸部32と、駆動モータ29の出力軸29aに形成した非円形凸部29bとを差し込むだけで、周方向に回転不可能に接続できるように構成している。
【0026】
前記第1羽根部35は、図2および図4(A)に示すように、前記回転軸30の下端近傍に接合され、処理材および生ゴミを上向きに押し上げるように作用するものである。この第1羽根部35は、挿通孔36aを有する第1取付部36を備え、該第1取付部36が前記回転軸30に対して水平方向に延びるように接合される。そして、前記第1羽根部35は、回転方向前側の縁35aが前記第1取付部36の回転方向前側から水平方向に延び、回転方向後側の縁35bが第1取付部36の回転方向後側から上向きに屈曲され、これらの間に流曲線状の面を形成したものである。これら第1羽根部35および第1取付部36には、その連続部分を除く外周縁に、それぞれ下向きに突出する第1リブ部37a,37bが屈曲により連設されている。第1羽根部35の第1リブ部37aは、該第1羽根部材の補強の役割をなす。第1取付部36の第1リブ部37bは、該第1取付部36の補強、および、前記軸受部24の上端を覆うカバー部の役割をなす。言い換えれば、本実施形態では、この第1羽根部35は、回転軸30を軸受部24に支持させた状態で、前記第1リブ部37bが軸受部24に対してオーバーラップするように、回転軸30の下端近傍に固着されている。
【0027】
前記第1羽根部35には、回転軸30の軸芯と平行な垂直方向に延びる3つの第1垂直壁38A〜38Cが設けられている。これら第1垂直壁38A〜38Cは、回転軸30を中心としてそれぞれ同心円形状をなすように、径方向外向きに所定間隔をもって溶接により固着されている。また、これら第1垂直壁38A〜38Cは、回転軸30の近傍に位置する第1の第1垂直壁38Aより、外側に位置する第2の第1垂直壁38Bの全高が低く、更に、該第2の第1垂直壁38Bより外側の第3の第1垂直壁38Cの全高が低くなるように構成されている。さらに、各第1垂直壁38A〜38Cには、その回転方向前側の縁がエッジ処理され、鋭角に突出する第1刃部39がそれぞれ設けられている。
【0028】
前記第2羽根部40A,40Bは、図2および図4(B),(C)に示すように、前記処理槽20内に収容された処理材および生ゴミに埋没されるように回転軸30の中間部分に接合され、処理材および生ゴミを上向きに押し上げるように作用するものである。この第2羽根部40A,40Bは、挿通孔41aを有する第2取付部41を備え、該第2取付部41が前記回転軸30に対して水平方向に延びるように接合される。そして、第2羽根部40A,40Bは、回転方向前側の縁40aが第2取付部41の回転方向前側から下向きに屈曲され、回転方向後側の縁40bが第2取付部41の回転方向後側から上向きに屈曲され、これらの間に流曲線状の面を形成したものである。これら第2羽根部40A,40Bおよび第2取付部41には、その連続部分を除く外周縁に、補強の役割をなす第2リブ部42a,42bが屈曲によりそれぞれ下向きに突設されている。なお、下側に位置する第2羽根部40Aと上側に位置する第2羽根部40Bとは、その外径が異なるのみである。
【0029】
前記第2羽根部40A,40Bには、第1羽根部35と同様に、回転軸30の軸芯と平行な垂直方向に延びる3つの第2垂直壁43A〜43Cが設けられている。これら第2垂直壁43A〜43Cは、回転軸30を中心としてそれぞれ同心円形状をなすように、径方向外向きに所定間隔をもって溶接により固着されている。また、これら第2垂直壁43A〜43Cは、径方向外側に向けて順番にその全高が低くなるように形成されている。さらに、各第2垂直壁43A〜43Cには、その回転方向前側の縁がエッジ処理され、鋭角に突出する第2刃部44がそれぞれ設けられている。
【0030】
前記羽根部35,40A,40Bからなる攪拌翼は、回転軸30の一番下側である一段目に、前記第1羽根部35が配設される。この際、回転軸30を軸受部24に支持させた状態で該軸受部24の上部を第1リブ部37bで覆う位置とする。また、二段目に配設される第2羽根部40Aは、第1羽根部35に対して、攪拌部材28の回転方向後側に120度回転した位置に固着される。また、三段目に配設される第2羽根部40Bは、二段目の第2羽根部40Aに対して、同様に攪拌部材28の回転方向後側に120度回転した位置に固着される。これにより、本実施形態の攪拌部材28は、回転軸30から各羽根部35,40A,40Bが放射状に突出する。また、各羽根部35,40A,40Bからは、平面視で円弧状をなす3つの垂直壁38A〜38C,43A〜43Cが同心円をなすように垂直に突設される。
【0031】
図1に示すように、前記処理槽20の下部外周面には、処理槽20内の処理材を所定温度範囲内に維持するための加熱手段としてヒータ45が配設されている。また、外装体11を構成する枠体12の前面と処理槽20との間には、蓋体54を自動開放するために人体の足の進入を検出する測距センサ46と、該測距センサ46を床面から所定高さに配置するためのケース47とが配設されている。前記測距センサ46は、ケーシングの内部に発光素子と、該発光素子から投射した光の反射光を受光する受光素子とを配設したものである。
【0032】
前記ダクト部材18に接続する排気手段は、図5(A),(B)に示すように、前記攪拌部材28の駆動モータ29を迂回するように配設した排気ダクト48と、該排気ダクト48の内部に配設した第1送風手段である第1送風ファン49と、前記処理槽20内に配設した第2送風手段である第2送風ファン50とを設けたものである。また、この排気ダクト48の内部には、排気する空気に含まれた臭分は勿論、処理槽20内の空気に含まれた臭分を分解除去する脱臭手段が更に配設されている。この脱臭手段は、機内側から機外側に向けて順次配設した加熱ヒータ51と、加熱温度の検出手段であるサーミスタ52と、臭分を化学的に反応させてCOやHOに変化させる触媒53とを備え、サーミスタ52の検出値に基づいてマイコン64がオン、オフ制御するものである。
【0033】
前記蓋体54は、前記処理機本体10を構成する蓋枠14の上面に回動可能に取り付けられるとともに、付勢手段であるヒンジスプリング55により開放方向に付勢されたものである。なお、このヒンジ接続部分の近傍には、下向きに円弧状に突出する押圧部材56が設けられ、該押圧部材56によりスイッチ57のオン、オフにより、蓋体54の開放および閉塞状態を検出できるように構成している。また、この蓋体54の前部には、図1に示すように、下向きに突出した係止受部58が設けられ、この係止受部58がロック手段59によってロックおよびアンロックされる。
【0034】
このように構成された生ゴミ処理機には、図6に示すように、前記処理槽20内に収容された処理材によって生ゴミを分解する処理機能の状態を検出するための検出手段として、処理槽20内の温度、処理材の温度、および、外気の温度を検出する3個の温度センサ60〜62が配設されている。処理槽用温度センサ60は、処理槽20内における処理材の上部に配設されている。基材用温度センサ61は、処理槽20内における底に配設されている。外気用温度センサ62は、処理機本体10の外装体11に配設されている。
【0035】
そして、図1に示すように、前記外装体11と処理槽20との間の前方下部には、制御基板63が配設され、この制御基板63に実装された制御手段であるマイコン64は、予め設定されたプログラムに従って動作される。具体的には、このマイコン64は、商用電源からの電力が電源回路部65により直流電圧に変換され、この直流電圧が印加されることにより動作する。そして、蓋体開放手段の役割をなし、前記測距センサ46により人体を含む物体が検出可能な範囲内に近づいたことを検出すると、前記ロック手段59を動作させて係止受部58の係止を解除することにより、ヒンジスプリング55の付勢力によって蓋体54を自動開放させる。また、スイッチ57により蓋体54が閉塞されたことを検出すると、その閉塞時を制御の開始点として、内蔵した時間計時タイマ66により時間の計測を開始し、前記ヒータ45のオン、オフ、および、攪拌部材28の回転の制御を開始する。さらに、所定時間毎に温度センサ60〜62による検出値に基づいて処理材の処理機能の状態を判断する処理材状態判断手段の役割をなし、その判断結果に基づいて前記ヒータ45のオン、オフ、および、攪拌部材28の回転数を制御するとともに、操作パネル67の表示部に処理材の処理機能の状態を表示する。
【0036】
このように構成した本実施形態の生ゴミ処理機は、攪拌部材28の回転軸30を垂直方向に延びるように配置した縦型のものであるため、横方向の小型化を図ることができ、設置する床面の省スペースを図ることができる。また、攪拌部材28の駆動モータ29は、処理槽20の上部である区画用の仕切板17上に配設しているため、生ゴミに含まれる水が付着することにより短絡する可能性がなく、動作不良や故障が生じることを抑制できる。
【0037】
さらに、攪拌部材28の回転軸30は、上端を前記駆動モータ29により支持し、下端を処理槽20の底に設けた筒状の軸受部24に支持しているため、その取付構造は特別な部品を必要とせず、簡素化を図ることができる。しかも、処理槽20の底には、前記軸受部24を設けているが、何ら孔は設けていないため、処理槽20内の水が外部(外装体11と処理槽20の間)に漏水することを防止できる。その結果、処理機本体10の下部に配設した制御基板63に、漏水した水が付着することを防止でき、その漏水による動作不良や故障が生じることを防止できる。
【0038】
さらにまた、攪拌部材28の攪拌翼は、複数の羽根部35,40A,40Bを放射状に配設したもので、その下端の第1羽根部35は、第1リブ部37bで構成したカバー部により、前記軸受部24の上端を覆うように構成しているため、該軸受部24と回転軸30との間に生ごみの粉砕物や処理材が侵入することを防止できる。その結果、回転軸30と軸受部24との間に異物が侵入することに伴う異音の発生を防止できる。また、侵入した異物が研磨材として作用する粉末状になった卵の殻であった場合、回転軸30の下端または軸受部24が磨耗し、これらの間の隙間が広がることにより、攪拌部材28を回転させると、機器全体が振動する問題が生じる。しかし、本実施形態では、このように問題が生じることも確実に防止でき、寿命劣化を防止できる。
【0039】
また、軸受部24の底を構成する台座部材25および回転軸30に、略半球状に窪む球状凹部26,31を設けるとともに、これらの間に球状部材27を配設し、回転軸30と軸受部24との間の抵抗を抑制できるようにしているため、回転軸30を円滑に回転可能に支持することができる。さらに、攪拌部材28の回転軸30と駆動モータ29の出力軸29aとを継手部材33により連結しており、前記回転軸30および出力軸29aに、断面D字形状をなす非円形凸部29b,32を設けるとともに、継手部材33に非円形凹部34を設けている。即ち、本実施形態の攪拌部材28は、回転軸30の両端を支持する構成であるため、組付状態での剛性を高めることができる。しかも、その両端の連結部分は、それぞれ抜き差しにより行うため、組付作業性および取外作業性を向上できる。
【0040】
次に、前記攪拌部材28を回転させた場合の攪拌作用について具体的に説明する。なお、この攪拌部材28の動作は、温度センサ60〜62によって検出した温度に基づいてマイコン64が処理材の状態(含水量)を判断し、その判断結果に基づいて1周期7分のうち動作させる時間が変更されるものである。
【0041】
前記駆動モータ29により攪拌部材28が回転されると、各羽根部35,40A,40Bでは、その回転方向前側に向けて下向きに傾斜されることによる攪拌有効面により、生ゴミを含む処理材が押し上げられる。ここで、これら羽根部35,40A,40Bによる上向きの押圧力は、従来と同様に回転に従って処理材が外向きに流動して外向きに逃げて損失するように作用することがある。しかし、本実施形態では、各羽根部35,40A,40Bに設けた垂直壁38A〜38C,43A〜43Cにより処理材が外向きに流動することを抑制できる。その結果、羽根部35,40A,40Bによって処理材に対して上向きの押圧力を十分に加えることができる。
【0042】
このように、本発明の攪拌部材28では、各羽根部35,40A,40Bの傾斜角度に拘わらず処理材に対して確実に上向きの押圧力を加えることができるため、処理槽20が深いものであっても十分な攪拌作用を得ることができる。言い換えれば、本発明の生ゴミ処理機は、各羽根部35,40A,40Bに垂直壁38A〜38C,43A〜43Cを設けることにより、各羽根部35,40A,40Bの傾斜角度が鋭角(緩やか)であっても、その傾斜角度を変更することなく、攪拌に係る有効面積を増大できる。そのため、攪拌翼を構成する羽根部の傾斜角度の設計の自由度を向上できる。また、攪拌効率を向上させるために、駆動手段としてトルクが大きい駆動モータ29を適用する必要はない。そのため、トルクが大きい駆動モータ29を適用することに伴う従来の問題を確実に防止できる。
【0043】
また、本実施形態では、前記垂直壁38A〜38C,43A〜43Cの回転方向前側の縁に、鋭角な刃部39,44を設けているため、水分を含んだ処理材の大きな固まりや、繊維質の多い生ごみを裁断することができる。その結果、処理材による分解処理効率を大幅に向上できる。
【0044】
ここで、本実施形態のように、各羽根部35,40A,40Bに複数の垂直壁38A〜38C,43A〜43Cを設ける場合には、回転軸30から離れた場所に設けられた垂直壁38C,43Cは、回転軸30に近い垂直壁38A,43Aと比較すると、その回転時に加わる負荷は大きくなる。また、処理槽20内に投入された生ゴミは、攪拌部材28を回転させると、回転軸30の周囲に集まる傾向にあることが実験により確認されている。
【0045】
そして、本実施形態では、各垂直壁38A〜38C,43A〜43Cは、径方向外側に向けて順番にその全高が低くなるように形成されているため、各垂直壁38A〜38C,43A〜43Cに加わる負荷を均一化することができる。しかも、回転軸30の近傍に集まった生ゴミは、その全高が高い垂直壁38A,43Aにより確実に裁断できるため、生ゴミの分解処理効率を確実に向上できる。
【0046】
なお、本発明の生ゴミ処理機は、前記実施形態の構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0047】
例えば、図7(A),(B),(C)に示すように、各羽根部35,40A,40Bの垂直壁38A〜38C,43A〜43Cは、その回転方向前側の縁を、上方から下方に向けて回転方向後側に傾斜する傾斜縁38a,43aとし、その傾斜縁38a,43aに前記刃部39,44を設けた構成としてもよい。このようにすれば、攪拌部材28を回転させると、処理材の固まりや生ゴミを羽根部35,40A,40Bの上面に取り込むように作用するため、処理材と生ゴミの攪拌効率を更に向上できる。
【0048】
また、各羽根部に形成する垂直壁は3つに限られず、1つであってもよいうえ、4以上設けてもよく、その数や全高は希望に応じて変更が可能である。勿論、垂直壁に傾斜縁を形成して刃部を設けない構成としてもよいうえ、傾斜縁と刃部の両方を設けない構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施形態に係る生ゴミ処理機の断面図である。
【図2】撹拌部材を示す斜視図である。
【図3】攪拌部材の平面図である。
【図4】(A),(B),(C)は各羽根部の側面図である。
【図5】排気手段の構成を示し、(A)平面図、(B)は要部断面図である。
【図6】生ゴミ処理機の構成を示すブロック図である。
【図7】(A),(B),(C)は各羽根部の変形例を示す側面図である。
【符号の説明】
【0050】
10…処理機本体
14a…投入口
20…処理槽
24…軸受部
28…攪拌部材
29…駆動モータ
30…回転軸
35…第1羽根部
38A〜38C…第1垂直壁
38a…傾斜縁
39…第1刃部
40A,40B…第2羽根部
43A〜43C…第2垂直壁
43a…傾斜縁
44…第2刃部
45…ヒータ
54…蓋体
59…ロック手段
64…マイコン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理材を収容する処理槽を有する処理機本体と、前記処理槽の内部に収容した生ゴミと処理材とを攪拌する攪拌部材および駆動手段からなる攪拌手段とを備えた生ゴミ処理機において、
前記攪拌部材は、垂直方向に延びる回転軸と、該回転軸から径方向外向きに突出して前記処理材を上向きに押し上げるように作用する攪拌翼と、該攪拌翼から垂直方向に突出する垂直壁とを備えたことを特徴とする生ゴミ処理機。
【請求項2】
前記攪拌翼は、複数の羽根部を前記回転軸の上下方向に所定間隔をもって、かつ、周方向に所定間隔をもって放射状に配設したものであることを特徴とする請求項1に記載の生ゴミ処理機。
【請求項3】
前記垂直壁の回転方向前側の縁に、鋭角な刃部を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の生ゴミ処理機。
【請求項4】
前記垂直壁の回転方向前側の縁を、上方から下方に向けて回転方向後側に傾斜する傾斜縁としたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の生ゴミ処理機。
【請求項5】
前記垂直壁を、前記回転軸を中心として径方向外向きに所定間隔をもって複数設けたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の生ゴミ処理機。
【請求項6】
前記回転軸の近傍に位置する第1の垂直壁より、外側に位置する第2の垂直壁の全高を低くしたことを特徴とする請求項5に記載の生ゴミ処理機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−247447(P2006−247447A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−63502(P2005−63502)
【出願日】平成17年3月8日(2005.3.8)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】