説明

生体内成分測定用プローブ支持具及び生体内成分測定用ヘッド装置

【課題】生体及び測定用プローブの状態変動を抑えて、吸光度スペクトルの測定毎の安定性と経時的再現性とを得ることができる生体内成分測定用プローブ支持具及び生体内成分測定用ヘッド装置を提供することにある。
【解決手段】生体内成分測定用プローブ支持具の腕固定部30は被測定者の手首141の位置を定めるとともに前腕140に沿って装着される。位置決め体31は腕固定部30の前腕140の長手方向の所定位置に設けられ、前腕140の前面に測定用プローブ8を案内する孔部310を有し、加圧用ベルト32によって前腕140の前面に押し付けられて装着される。測定用プローブ8を被測定者の前腕140の前面方向に対して移動させる駆動部33は位置決め体31と連結するための連結体300を備え、またジョイント治具39と自在アーム38とを介して重量物たるスタンド42に保持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非侵襲で生体内成分を計測する生体内成分測定装置に用いられる生体内成分測定用プローブを支持する生体内成分測定用プローブ支持具及びそれを用いた生体内成分測定用ヘッド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生体の表面に測定用の近赤外光を照射し、生体から受ける測定光の反射光を受光し、この反射光成分から生体信号を測定することによって、生体内の種々の情報を得る生体内成分測定装置が提供されている(例えば特許文献1)。
【0003】
これら装置は近赤外光の吸収強度がグルコースの存在により大きな影響を受けることを利用したもので、受光された反射光の吸光度スペクトルを生体信号として測定することによって、光吸収強度を検知し、生体内のグルコース濃度を検出して血糖値を測定するようになっている。このような装置を用いれば被測定者から採血する必要が無くなるので、被測定者に大きな負担を強いることなく血糖値の測定を行うことができるという利点がある。
【0004】
ところで特許文献1に示される生体内成分測定装置に用いられるような測定用プローブは、図15に示すように皮膚に接触させ、近赤外スペクトルを測定する測定用プローブ8の受光部と発光部の間隔L、すなわち、測定用プローブ8に設けた発光側ファイバ6の先端と受光側ファイバ10の先端との間隔Lが2mm以下に設定されている。ここで人間を含む生物の皮膚組織は通常、図示するように角質層を含む表皮層22、真皮層23、皮下組織層24の3層から形成されている。尚、表皮層22の厚みは約0.2〜0.4mm、真皮層23の厚みは約0.5〜2mm、皮下組織層24の厚みは約1〜3mmである。真皮層23は毛細血管等が発達しており、血中の生体成分に応じた物質移動が速やかに起こる。
【0005】
特に血中グルコース濃度(血糖値)に対して真皮層23(真皮組織)中のグルコース濃度は追随して変化すると考えられている。皮下組織層24は脂肪組織が中心であり、グルコース等の水溶性の生体成分は、皮下組織層24(皮下組織)中に均一に存在しにくい。従って、血中グルコース濃度(血糖値)を精度良く測定するには、真皮層23の近赤外スペクトルを選択的に測定する必要がある。そこで上述のように真皮層23の近赤外スペクトルを選択的に測定する手法として、2mm以下に受光部と発光部の間隔Lを設定した測定用プローブ8を使用する方法が用いられる。
【0006】
図16は、X軸が波長で、Y軸が吸光度で、生体の波長1300nm〜1900nmの近赤外領域における吸光度スペクトルを示している。また、吸光度スペクトルの形状及び大きさの指標として、指標(1)、指標(2)、指標(3)を示してある。この波長領域は、生体内成分である水分やグルコース、脂肪、アルブミンといった生体成分のピークが混在する領域である。指標(1)は、1650nmの吸光度値であり、吸光度スペクトルのベースラインを表す指標である。指標(2)は、1450nmの吸光度値と指標(1)の1650nmの吸光度値の差で、水の吸光度スペクトルのベースラインからの高低差を示すものある。指標(3)は1720nmの吸光度値と指標(1)の1650nmの吸光度値の差で、脂肪の吸光度スペクトルのベースラインからの高低差を示すものである。指標(2)、指標(3)は、スペクトルの形状の変動を確認する指標としている。
【0007】
-指標(1)は、皮膚と測定用プローブ8の間に介在するスペクトル変動要因全般から影響を受け、スペクトル全体が上下にシフトする。
【0008】
指標(2)は主に水の吸光度スペクトルの形状を反映しており、生休表面の水分(汗、角質水分など)、及び表皮層22、真皮層23に存在する水分量の変化によって変動する。真皮層23の水分も層の上端部に多く存在することから、指標(2)は皮膚の表面に近い部分(表皮層−真皮層)の情報の生体成分変動を主に現していると考えられる。
【0009】
指標(3)は、主に脂質スペクトルの形状を反映している。この脂質スペクトルは血中に存在する中性脂肪の変動よりむしろ真皮層23の下の皮下組織層24に存在する皮下脂肪の情報がスペクトルとなって現れている。
【0010】
真皮層23の厚みが薄い人が、厚い人と比べてこの指標(3)の絶対値が大きい傾向があるのは、照射した光(図15でAと示す)が真皮層23を通り過ぎて皮下組織層24にまで到達しやすく、反射してきた光Aに多<の脂肪情報が含まれているからと考えられる。 また、同じ人でも真皮層23の脂肪境界面が凹凸形状をしており、真皮層23の厚みも厚いところと薄いところが存在し、測定用プローブ8の当たる場所によっては、指標(3)の大きさが異なる場合がある。このことから、指標(3)は、皮膚の深い部分(真皮層−皮下組織層)の情報の生体成分変動を主に現していると考えられる。
【0011】
一方周囲の環境温度の変動や光学部品の位置関係などによって、照射光が変動をきたし、測定される反射光のスペクトルに影響を与える(形の変化、大きさレベルの変化)恐れがあるので、この変動を補正する必要がある。このために特許文献3に示される装置ではセラミック板などからなる基準板で反射させたリファレンス光を測定し、これを基準光として補正を行うようにしている。つまりリファレンス光を測定することによって、これを基準光として、周囲の環境温度や光学部品の位置関係などによる変動を補正することができるようになっている。
【0012】
また連続的にスペクトルを測定する場合、上記のような装置側変動要因に加えて、測定用プローブ8と皮膚の関係における変動要因もある。
【0013】
皮膚(表皮層22)の表面には図15のように角質層で構成される皮膚・皮丘22aが存在し凹凸形状を形成している。この表面に測定用プローブ8を接触させると、接触させた皮膚部位の立体形状により測定用プローブ8の先端表面と皮膚との間に空気層、皮脂、汗などが存在し、近赤外光の屈折率が変わるためスペクトル形状及び大きさが変動してしまう。先に示したスペクトル指標においては、空気層等の存在により光の屈折率が変化し、スペクトル全体の大きさ指標(1)が大きく変動したり、発汗などの影響で指標(2)が急に大きくなったりする。この現象をできるだけ軽減するため、所定の,圧力で測定用プローブ8を皮膚に接触させて、皮丘部分と測定用プローブ8の接触面積を増加させる。つまり密着性を増加させ、測定用プローブ8と皮膚表面に介在する空気層、皮脂、汗などの影響を極力低減し、スペクトル変動を抑えて測定することが必要である。
【0014】
しかしながら密着性を確保するとしてもプローブ位置が約200μmずれるとスペクトル指標が変化する。近赤外光が皮膚の中に進入し生体情報を多く拾ってくる真皮層23は、コラーゲンの繊維状物質の網目構造の間に、これらの間を埋めるISF(Interstitial Fluid<間質液>)など水分をたっぷり含む基質が存在し、加圧により非常に動きやすい状態になっている。この基質には毛細血管から透過してくるグルコースなど、生体情報関連物質が多く存在し、吸光度スペクトルの形状に大きい影響を与える。また、コラーゲンなど結合線維が密に網目状に並んでおり、皮膚の運動を司る重要な役割を果たしている網状層も光路に存在する物質であり、測定用プローブ8の皮膚への接触位置や測定用プローブ8の皮膚への接触角度によって光路の微妙な変化が生じ、それにより吸光度スペクトルの形状に大きい影響を与えることになる。
【0015】
その他に図17及び図18のように、測定部位たる腕部14の構成は複数の筋肉25、腱26及び骨27からなり、測定用プローブ8を所定の圧力で皮膚に接触させた際、筋肉25などに皮膚が支持される形として測定用プローブ8が皮膚を押さえつけ、吸光度スペクトルを測定することになる。
【0016】
その際手首をはじめとする測定部位周辺の生体の動きがあった場合、筋肉25や腱26などの皮膚を支持する部分の形状が大きく変化する。このように皮膚に測定用プローブ8を接触させことで測定を行う場合、測定毎のスペクトルの安定性及び経時的再現性に問題があった。
【0017】
つまり被測定者の生体(腕部)に測定用プローブ8を押し当てて吸光度スペクトルを測定する場合、測定される吸光度スペクトルが、生体内の成分濃度の変化とは無関係に、測定の過程でばらついたり、経時的に変動を起こしてしまうため、これら変動したスペクトルを用いて多変量解析にて成分濃度の定量をする,際に定量精度が低くなってしまうという問題があった。
【0018】
そこで、肘の位置を決めて、肘の位置から一定距離離れた場所に腕部(前腕)を傾けた状態で載せる支持部を設け、この支持部に測定用プローブを出没自在に装着し、腕部を安定した状態で測定ができるようにした装置も提供されている(特許文献2)
【特許文献1】特開2004−45096号公報(段落番号0011〜0024、図1)
【特許文献2】特開平11−244266号公報(図1、段落番号0021〜0022)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
ところで特許文献2に示された装置は、腕部を安定させる効果があるものの、ベッドに寝ている患者(被測定者)に対して連続的に測定を行う場合には、長時間の間そのままの状態でいることが苦痛で大きな負担を掛けるという問題がある。また無意識で腕部を動かしてしまい測定位置が変動してしまうという問題があった。
【0020】
つまり計測においても被測定者である患者に負担を掛けず且つ経時的な変動を抑えるため、極力測定部位を同じ状態で保ちつつ、皮膚に所定圧力で且つ一定時間間隔でプローブを皮膚に接触させなければならないという課題があった。
【0021】
本発明は、上記の点に鑑みて為されたものであって、その目的とするところは、生体及び測定用プローブの状態変動を抑えて、吸光度スペクトルの測定毎の安定性と経時的再現性とを得ることができる生体内成分測定用プローブ支持具及び生体内成分測定用ヘッド装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上述の目的を達成するために、請求項1の生体内成分測定用プローブ支持具の発明では、生体表面に近赤外光を出射するとともに、生体からの反射光を入射する生体内成分測定用プローブを支持するものであって、被測定者の手首位置を定めるとともに腕に沿って装着される腕固定部と、この腕固定部の腕方向の所定位置に設けられ、前記腕の表面に前記生体内成分測定用プローブを案内するガイド部を有する位置決め部と、該位置決め部を前記腕に押し付ける加圧部とを備えるとともに、重量物に連結するための接続部を有していることを特徴とする。
【0023】
請求項1の生体内成分測定用プローブ支持具の発明によれば、測定用プローブを生体表面に押し当て連続的に測定する際に、生体及び測定用プローブの状態変動を位置決め部により抑えることができ、吸光度スペクトルの測定毎の安定性や経時的再現性を得ることができ、その結果生体成分測定装置において測定する生体成分濃度の定量精度を高めることができ、特に支持具自体が重量物に連結されることで、測定部位となる腕の動きを抑止することができ、定量精度を高めるのに大きく寄与することができる。
【0024】
請求項2の生体内成分測定用プローブ支持具の発明では、請求項1の発明において、前記腕固定部が、腕方向の長さを調節する調節手段を有していることを特徴とする。
【0025】
請求項2の生体内成分測定用プローブ支持具の発明によれば、被測定者の腕の長さの相違に対応することができ、被測定者の腕の長さが違っても、測定部位の筋肉、腱、骨が比較的同じ状態で存在する部位を測定部位とすることが可能となり、被測定者の個体差を抑えることができる。
【0026】
請求項3の生体内成分測定用プローブ支持具の発明では、請求項1又は2の何れかの発明において、前記加圧部は、腕の周囲に巻回締結するベルトにより構成され、腕の周囲長に応じて定まる追加締め付け位置を表示する表示部を備えていることを特徴とする。
【0027】
請求項3の生体内成分測定用プローブ支持具の発明によれば、圧力調整で位置測定部を被測定者の腕表面に隙間無く押し付けることができ、その結果生体内成分測定用プローブの接触状態からの解放時にも位置決め部が動いてガイド部の位置ずれすることを無くすことができ、スペクトルの再現性を良好とし、また脈動による影響を受けることなく正確なスペクトル測定が可能となり、特に簡単な操作で被測定者の腕の周囲に合わせた適正な圧力に調整することができ、例え加圧部を装着しなおす場合にあっても再現良く適正な圧力を得ることができる。
【0028】
請求項4の生体内成分測定用ヘッド装置の発明では、請求項1乃至3の何れかの生体内成分測定用プローブ支持具と、生体内成分測定用プローブ支持具の接続部と重量物との中間部に設けられ、生体内成分測定用プローブ支持具のガイド部の案内方向に生体内成分測定用プローブを移動させる駆動部及び該駆動部を制御する制御部とを備え、該制御部は前記生体内成分測定用プローブを前記腕の表面に接触させた状態と前記腕の表面から離した状態とを所定の時間間隔で繰り返すように駆動部を制御することを特徴とする。
【0029】
請求項4の生体内成分測定用ヘッド装置の発明によれば、生体内成分測定用プローブ支持具による作用効果に加えて、生体内成分測定用プローブの腕表面への圧迫による血流の変化を抑えつつ、連続して生体内成分の計測が可能となる。
【0030】
請求項5の生体内成分測定用ヘッド装置では、請求項4の発明において、前記中間部には前記生体内成分測定用プローブの先端方向の、肘の屈伸方向に対応する角度又は腕の軸を中心とした回転方向に対応する角度若しくは両角度を調整する角度調整手段を有していることを特徴とする。
【0031】
請求項5の生体内成分測定用ヘッド装置の発明では、請求項4の発明において、前記接続部が、肘の屈伸方向角度又は腕の軸を中心とした回転角度若しくは両角度を調整する角度調整手段を有することを特徴とする。
【0032】
請求項5の生体内成分測定用ヘッド装置の発明によれば、被測定者の腕の状態に応じて生体内成分測定用プローブと位置決め部との位置関係を調整することができ、被測定者に負担がかからない状態での測定を可能とする。
【発明の効果】
【0033】
本発明の生体内成分測定用プローブ支持具は、測定用プローブを生体表面に押し当て連続的に測定する際に、生体及び測定用プローブの状態変動を位置決め部により抑えることができ、吸光度スペクトルの測定毎の安定性や経時的再現性を得ることができ、その結果生体成分測定装置において測定する生体成分濃度の定量精度を高めることができ、特に支持具自体が重量物に連結されることで、測定部位となる腕の動きを抑止することができ、定量精度を高めるのに大きく寄与することができるという効果がある。
【0034】
本発明の生体内成分測定用ヘッド装置は、生体内成分測定用プローブ支持具による作用効果に加えて、生体内成分測定用プローブの腕表面への圧迫による血流の変化を抑えつつ、連続して生体内成分の計測が可能となるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明を実施形態により説明する。
(実施形態1)
本実施形態に係る生体内成分測定用プローブ支持具は、図1乃至図4に示すように被測定者の手首141の位置を定めるとともに生体の測定部位となる前腕140を固定する腕固定部30と、前腕140の前面の所定位置に配置され、測定用プローブ8の位置決めを行う位置決め体(位置決め部)31と、該位置決め体31を前腕140の前面(表面)に押し付ける加圧部を構成する加圧用ベルト32と、後述する重量物に連結するために位置決め体31に設けた凸部311からなる接続部とで構成され、この生体内成分測定用プローブ支持具と、測定用プローブ8を被測定者の前腕140の前面方向に対して移動させて接触させたり、接触状態を解放したりするための機構部たる駆動部33とこの駆動部33を制御する制御部(図示せず)と、駆動部33及び制御部を加えることで、生体内成分測定用ヘッド装置を構成し、この生体内成分測定用プローブ支持具以外の駆動部33及び制御部を含めた機構部は自在アーム38を介して重量物たるスタンド42に保持されている。
【0036】
腕固定部30は、前腕140の後面を載せる形で専用クッション40を介してベッド41上に配置されるもので、前腕長手方向に伸縮自在となったホルダー300と、このホルダー300の先端部から前方へ延長させた支持体301に取り付けられた把持部302と、ホルダー300の上面に前腕140の後面(背面)を載せた被測定者が手142で把持部302を握ることで位置が定まった手首141をホルダー300に固定するための固定用テープ303とで構成され、ホルダー300の後部が加圧用ベルト32を装着する装着部となっている。
【0037】
ホルダー300は専用クッション40上に載置する基部300aと、この基部300aの前部において両端方向(前腕140の長手方向)にスライド自在に取り付けられ、ホルダー300の長さを伸縮自在とするスライド部300bと、基部300aの後部に設けられた腕載置部300cとからなり、把持部301の支持体301がスライド部300bの前部に、また固定用テープ303がスライド部300bの後部に装着されている。
【0038】
固定用テープ303は一端がスライド部300bの一側部に固定され、他端部に設けた面ファスナー(図示せず)をスライド部300bの他側部に設けられた面ファスナーの被接合部(図示せず)に着脱自在に接合するようになっている。
【0039】
位置決め体31は腕載置部300cに載置した前腕140の部位に配置されるもので、上面が矩形で下面が前腕140の前面の湾曲形状に沿うように湾曲面に形成され、また後述する測定用プローブ8の先部に設けた変更治具36を前腕140の前面に向けて直線的にガイドするガイド部たる上下貫通の孔部310を中央に設け、更に上面には後述する駆動部33に設けられた連結体330の下面に形成した複数の凹部330aに下方から凹凸嵌合して連結体330と接続されることで位置決め体31を自在アーム39を含む中間部材を介して重量物であるスタンド42と接続する複数の凸部311を設けている。
【0040】
加圧用ベルト32は例えば弾性材料から構成され、位置決め体31を被測定者の前腕140の前面に押し付けるための加圧部を構成し、図3(b)に示すように両端を位置決め体31の両側部の下端に固定して位置決め体31を含めて環状部を構成し、前腕140に装着しない状態では加圧用ベルト32の弾性により環状部の孔径が前腕140の径より小さく縮径した状態にある。従って加圧用ベルト32の縮径方向の付勢に抗して環状部内に上記ホルダー300の腕載置部300cとともに前腕140を挿入して前腕140の前面に位置決めた体15を装着した状態では加圧用ベルト32の縮径方向の力により位置決め体31が前腕140の前面に押し付けられることになる。
【0041】
駆動部33は自在アーム38の先端部にジョイント治具39を介して取り付けられ、ステッピングモータ(図示せず)により上下方向(Z軸方向)にステージ部331を移動させるZ軸ステージ装置332から構成され、前記ステージ部331にはL字状の支持体333を前面に取り付け、更に支持体333の前端面にはロードセル334とロードセル334の受圧部に設けられたプローブ保持体335とを備え、またZ軸ステージ装置332の下部には一端部をプローブ保持体335の下方に配置した前記連結体330の他端部を固定してある。またZ軸ステージ装置332は内部にステッピングモータを制御する制御部(図示せず)を内蔵している。
【0042】
ジョイント治具39はZ軸ステージ装置332を取り付けている正面側からみて垂直方向に回転自在になっており、この回転により駆動部33及び連結体330を肘の屈伸方向の角度に合わせることができるようになっている。
【0043】
測定用プローブ8はフレキシブルチューブ35内に入った発光側及び受光側の各光ファイバ(図示せず)の先端が一端に接続されているもので、実施形態では例えばφ4のものを用い、その先部はプローブ保持体335に上下に貫通する形で保持され、更に先端にはプローブ径を例えばφ18に変更する変更治具36が接続されている。
【0044】
一方連結体330には変更治具36の軸心と同心で且つ変更治具36の外径(φ18)と略同じ内径の孔部330bを上下面に貫通させ、この孔部330b内を変更治具36が上下移動できるようにしている。そして位置決め体31の孔部310の内径も孔部330bと同じ径とし、連結体330の下面と位置決め体31の上面とが凹凸嵌合により位置決めされた状態で重なったときに孔部330bと孔部310とが連通するようになっている。
【0045】
自在アーム38は、被測定者の測定部位たる前腕部41に測定用プローブ8を含む駆動部35の重量がかからないように重量を支えるためと、測定用プローブ8及び制御部を含む駆動部35を被測定部位に対して最適な向きに設定するためのものであり、図1(a),(b)に示すようにベッド41の傍らに配置された重量物たるスタンド42により支持される。
【0046】
ここで本実施形態に用いている自在アーム38は図示するように2つのアーム部38a、38bの一端同士を互いに垂直方向に回転自在に連結したもので、重量物であるスタンド42に対してアーム部38aの他端を水平方向に回動自在に支持され、またアーム部38bの他端に、駆動部33と接続する接続部たるジョイント治具39を垂直方向に回動自在に取り付け、また回動状態を保持するために各回動部位(関節部位)には固定レバー38cを備えている。
【0047】
而して本実施形態の生体内成分測定用プローブ支持具は、自在アーム38に取り付けられ、測定用プローブ8をプローブ保持体335により保持した駆動部35と、腕固定部30と、位置決め体31とで構成される。この生体内成分測定用プローブ支持具を用いる生体内成分測定装置は駆動部33を構成するZ軸ステージ装置332に電源供給を行うための電源や測定用プローブ8に発光側光ファイバを介して近赤外光を送るための光源、更に反射光を、受光側光ファイバー、シャッタ、光学レンズを通して回折格子に入射し、回折格子で分光した後、検出手段である受光素子で受光されて電気信号に変換され、更にAD変換された後、パーソナルコンピュータ等の演算装置に入力され、検出された光信号中の生体信号であるスペクトルを解析することによって、血糖値等を算出するようになっており、図1(a),(b)中43は生体内成分測定装置のキャスター付きの装置本体であり、44はパーソナルコンピュータからなる演算装置を兼ねた操作部である。そして測定用プローブ8と一端が接続され、フレキシブルチューブ35により被覆され、下に垂れ下がらないように一部が自在アーム38に固定されている発光側及び受光側光ファイバを装置本体43内に導入し、またZ軸ステージ装置332への電源線等も下に垂れ下がらないように一部を自在アーム38に固定して装置本体43内に導入している。
【0048】
次に本実施形態の生体内成分測定用プローブ支持具の使用方法について説明する。
【0049】
まず図1(b)に示すようにベッド41上に仰臥している被測定者の例えば左腕の前腕140に対応するようにベッド41上に専用クッション40を介して腕固定部30を載置する。専用クッション40は腕固定部30の底部部分とほぼ同じ形状の凹部を載置面側に形成したもの或いは腕固定部30に固定される前腕140や腕固定部30の重さに合わせて載置面が凹形に変形して形を固定するものであり、被測定者の体動に対して、前腕140の動きを抑えてスペクトルの再現性を確保する役割を持つ。
【0050】
さて次に被測定者の前腕140を加圧用ベルト32と位置決め体31からなる環状部に加圧用ベルト32の弾性を利用して挿入して肘部近傍の前腕140の前面上に位置決め体31を載せる。この状態では加圧用ベルト32の弾性により環状部の内径が縮径されるため位置決め体31の下面は前腕140の前面に押し付けられることになる。
【0051】
この状態で腕固定部30のホルダー300上に被測定者の前腕140を載せるとともに、腕固定部30の先方の把持部302を手142で握らせて手首141の角度及び位置を固定し、この固定した状態で手首141をスライド部300b上に固定用テープ303で固定する。尚把持部302の位置はスライド部300bをスライドさせることで調整することができる。これによって、前腕140の長さが違っても手首141から測定位置までの長さを例えば前腕140の長さの割合で規定することによって、筋肉、腱、骨が比較的同じ状態で存在する場所を測定部位とすることができ、結果被測定者の個体差を抑えることができる。
【0052】
ところで生体内成分測定位置としては、測定用プローブ8の先部(変更治具36の先部)を前腕140の前面に押し当てた際に体毛の影響を受けにくく、更に皮膚厚さ及び皮膚の表面状態の安定性が良い点、また測定のし易さなどから、前腕140の前面の中心部領域に定めるのがより良い。このことから上述のように把持部302を手142で握らせることで、手首141の角度及び手首141の位置を定めるようにしている。そして手首141の角度を定めることにより、前腕140の前面部位の筋肉の状態が安定して測定毎に再現でき、それによって測定用プローブ8と皮膚の接触状態(接触角度、接触圧力等)が再現され、スペクトル再現性が向上する。
【0053】
また手首141を固定用テープ303で固定することで、手首141の微小な動きさえも押さえ込むことができ、その結果吸光度スペクトルの再現性が向上する。更にまた、手首141の位置を定めることにより、位置決め体31は腕固定部30の所定位置に配置されることになり、前腕140の前面の定められた位置に測定用プローブ8を当てることができる。
【0054】
更にまた吸光度スペクトルの再現性阻害の影響は、測定用プローブ8の接触状態の変化、測定位置のずれの要因が非常に大きいが、本実施形態の生体内成分測定用プローブ支持具を用いることにより、生体内成分を精度良連続的に計測することができることになる。
【0055】
さて、腕固定部30への前腕140の固定が終了した状態で、測定を開始させるのであるが、この際自在アーム38を動かし、またジョイント治具39を動かして駆動部30の連結体330の下面を図5(a)に示すように位置決め体31の上面に対向する位置に移動させ、この位置で駆動部30の位置を下げて連結体330の下面の凹部330aに位置決め体31の上面の凸部311を嵌合させる。これにより連結体330の孔部330bと位置決め体31の孔部310とが連通することになる。この状態を保持するために自在アーム38の各回動部位に設けた固定レバー38cによって回動状態を固定する。この固定によって自在アーム38から前腕140までの動きをほぼ固定できることになる。
【0056】
次に生体内成分測定装置を動作させ、測定を開始すると、装置本体43内の電源部から駆動部30を構成するZ軸ステージ装置332に電源が供給され、Z軸ステージ装置332に内蔵している制御部によってステッピングモータが駆動制御されてステージ部331が上下方向に移動することになる。これによって測定用プローブ8の先部も上下移動し、図5(b)に示すように変更治具36が連結体330の孔部330bより抜けて上に移動している解放状態と、図5(c)に示すように変更治具36が孔部330b及び位置決め体31の孔部310にガイドされながら下方に移動してその先端を前腕140の前面に所定の接触圧で接触させている状態とを所定時間間隔で繰り返し、接触している状態でスペクトル測定を行う。
【0057】
ところで測定用プローブ8を前腕140の前面に接触させている状態では、連結体300と位置決め体31の結合と、測定用プローブ8が位置決め体31の孔部310に挿入されていることで、腕固定部30,位置決め体31は測定用プローブ8及び連結体33と駆動部30(及び制御部)と自在アーム38とを通じて重力物であるスタンド42に接続されることなって、測定中に被測定者が腕を動かそうとしても抑止されることになり、測定用プローブ8と前腕140の接触状態に変動をきたすことはない。
【0058】
尚測定用プローブ8を測定するときだけ、その先部を前腕140の前面に所定の接触圧で接触させ、測定時以外は、前腕140の前面から離れた状態にしておく理由は次の通りである。
【0059】
つまり生体信号のS/N比を高く保って測定するためには、測定用プローブ8を生体表面に所定範囲の圧力で皮膚に接触させる必要があるが、一方常に測定用プローブ8を所定の圧力で接触させると、皮膚の測定部分の血液と組織液(体液)との間の成分交換が阻害されるため、全身の生体成分の量と測定部の量とで差が生じる。そこで上述のように、測定の数秒間のみ接触させ、それ以外のときは解放させることで、測定用プローブ8の前腕140への圧迫による血流などの変化を抑えながら連続して生体内成分の計測を行うことを可能としている。また、所定の圧力で測定部位を加圧すること、それを解放することとを繰り返すことによって、皮膚組織内の血液交換が促進され、血液中と組織液中の成分濃度の追随性が向上する効果もある。
【0060】
ところで上記のステージ部331の下方移動により測定用プローブ8の先部が前腕140の前面に押し付けられたときの圧力はロードセル334で検知しており、この検知した圧力は検知信号線(図示せず)を介してZ軸ステージ装置332内の制御部へ送られ、制御部はこの検知圧力が一定圧力となるようにステッピングモータをフィードバック制御して測定用プローブ8が前腕140の前面に対して所定の圧力で接触するようにステージ部331の移動量を調整する。
【0061】
以上のように本実施形態の生体内成分測定用プローブ支持具を用いることで、吸光度スペクトルの再現性が良く、生体内成分を精度良連続的に計測することができることになる。
特に測定用プローブ8による測定部位の接触を一定時間間隔で行うことで、血流などの変化を抑えて連続して生体内成分の計測を可能としている。
【0062】
尚本実施形態では自在アーム38の一端を上述したように重量物たるスタンド42に支持させているが、この場合装置本体43とベッド41上の被測定者との間の距離がある場合に有効である。しかしスタンド42を用いずにベッドや机等の重量物に自在アーム38の一端を支持させるようにしても良い。また装置本体43が大きく重量がある場合には図6に示すように装置本体43の側面に支持台42’を設け、この支持台42’に自在アーム38の一端を支持させても良い。この場合装置本体43のキャスター43aを利用して装置本体43を動かすことで駆動部33の位置を調整することも可能となる。また測定時以外には、測定用プローブ8と駆動部33を装置本体43内に収納することもできる。
(実施形態2)
実施形態1ではZ軸ステージ装置332のステージ部331の移動量を調整するために接触圧を検知する手段としてロードセル334を用いているが、本実施形態は図7(a)(b)に示すようにロードセルの代わりに測定用プローブ8の先部の変更治具36に圧力検知センサ45を設けたもので、図7(b)に示すように変更治具36が前腕140の前面に所定圧力で接触しているときに圧力検知センサ45の圧力検知信号は信号線46を通して、Z軸ステージ装置332内の制御部に送られ、制御部は検知圧力に基づいてステッピングモータをフィードバック制御してステージ部331の移動量を調整し、前腕140の前面への接触圧を調整するようにしている。尚本実施形態ではプローブ保持体335をステージ部331の前面に固定してある。また測定用プローブ8に接続している発光側光ファイバと受光側光ファイバは別個のフレキシブルチューブ35a、35bにより被覆されている。
【0063】
尚腕固定部30などその他の構成は実施形態1と同じであるので、図示及び説明は省略し、また図7において同じ構成要素には同じ符号を付す。
(実施形態3)
本実施形態は図8(a),(b)に示すように駆動部33を構成するZ軸ステージ装置332のステージ部331に錘支持台50を取り付け、この錘支持第50上にプローブ保持体335付きの鐘51aをまず鍾支持棒52を通して載置し、更に測定用プローブ8が前腕140の前面に接触するのに必要な鐘51b,51cを、錘支持体52を通して上乗せし、Z軸ステージ装置332のステージ部331が所定の量以上下降した段階(図8(b))で測定用プローブ8も含めて錘51a…による荷重の全てが前腕140の前面への接触圧として加わるようにした点に特徴がある。
【0064】
このようにして本実施形態では上述のようなフィードバック制御によらずに錘51a…の数によって接触圧を調整することができるのである。
【0065】
尚腕固定部30などその他の構成は実施形態1と同じであるので、図示及び説明は省略し、また図8において上記各実施形態の構成要素と同じ構成要素には同じ符号を付す。
(実施形態4)
本実施形態は図9(a),(b)に示すように有底の筐体60と、この筐体60内に上下移動自在に配置され、筐体60の天井部に上端を貫通させたアクチュエータ62と、アクチュエータ62を中止透孔に挿通させて筐体60の天井部とアクチュエータ62の下端部のフランジ61の上面との間に配置したコイルばね63とからなるアクチュエータ装置64を、保持具336によりZ軸ステージ装置332のステージ部331に取り付け、アクチュエータ62の中心透孔に測定用プローブ8を挿通して固定させるとともに筐体60の底部に設けた孔60aから下方に測定用プローブ8の先部を突出させ、その突出先部に変更治具36を設けた点に特徴があり、駆動部33を構成するZ軸ステージ装置332のステージ部331が下降して、図9(b)に示すように測定用プローブ8の先部(変更治具36)が前腕140の前面に接触すると、測定用プローブ8を固定したアクチュエータ62のフランジ61と筐体6の天井部との間でコイルばね63が圧縮され、更にステージ部331が下降すると、測定用プローブ8の所定位置(変更治具36)に取り付けられた接触感知センサ65が筐体60の底部との接触を検知してその出力をZ軸ステージ装置332内の制御部へ信号線(図示せず)を介して送り、ステッピングモータを停止させてステージ部331の移動を止める点に特徴があり、コイルばね64が所定量圧縮されて所定のばね力となる位置でアクチュエータ62の移動を停止させることで、測定用プローブ8の先部と前腕140の上面との接触圧を必要量に制御することができるのである。
【0066】
尚接触感知センサ65の位置は実施形態の位置に限定されるものではなく、筐体60側に設けても良い。
【0067】
尚腕固定部30などその他の構成は実施形態1と同じであるので、図示及び説明は省略し、また図9において上記各実施形態の構成要素と同じ構成要素には同じ符号を付す。
(実施形態5)
本実施形態は図10(a),(b)に示すように、駆動部33を構成するZ軸ステージ装置332のステージ部331に取り付けられた保持具336に電磁ソレノイド装置71を取り付け、電磁ソレノイド装置71の外郭ヨーク72内に配置した励磁コイル部73の透孔内のプランジャー74に測定用プローブ8を上下方向に貫挿固定するとともに測定用プローブ8の先端を電磁ソレノイド装置71の底部より下方に突出させ、その突出先端に変更治具36を設けた点に特徴があり、Z軸ステージ装置332のステージ部331を図10(a)の位置から図10(b)に示す所定位置まで下降させた後に電磁ソレノイド装置71を装置本体43による制御によって励磁駆動させてプランジャー74を下方に移動させ、これにより測定用プローブ8の先部を前腕140の前面に接触させるようになっている。そしてこのプランジャー73の移動距離と加える励磁電流値との関係から前腕140の前面への接触圧を制御することができることになる。
【0068】
尚腕固定部30などその他の構成は実施形態1と同じであるので、図示及び説明は省略し、また図10において上記各実施形態の構成要素と同じ構成要素には同じ符号を付す。
(実施形態6)
上記実施形態1では加圧用ベルト32の弾性を利用して位置決め体31を測定部位である前腕140の前面に測定位置に適した圧力で押し付けるように固定しているが、前記圧力が適正範囲を下回った場合、測定用プローブ8を前腕140の前面に押し付けた際に、位置決め体31と前腕140の前面との間に隙間が生じてしまい、測定用プローブ8の接触が解放されたときに位置決め体31の孔部310が前回の測定位置に比べて、位置ずれを起こす可能性があり、吸光度スペクトルの再現性を損なう場合もあり得る。
【0069】
また、逆に圧力が適正範囲を超えると脈動がスペクトル測定時にかかってくるため、正確なスペクトル測定が困難となる。測定位置とその圧力は、被測定者によって異なるため、圧力の調整を可能とした加圧用ベルト32を用いたのが本実施形態である。
【0070】
本実施形態の加圧用ベルト32は図11(a)〜(c)に示すように一端を位置決め体31の一側部側に固定し、自由端である他端に締め付け具320を取り付けた短尺のベルト部321aと、一端を位置決め体31の他側部に固定した長尺のベルト部321bとで構成され、位置決め体31を前腕140の前面に装着するに際しては、図11(b)に示すようにベルト部321bの他端部側をホルダー300の腕載置部300cの下面側を通してベルト部321a側にもってきて、ベルト部321aの締め付け具320に通して締め付けを行うことで、位置決め体31を前腕140の前面の測定部位に押し付けて固定することができるようになっているもので、図11(c)に示すように締め付けの腕周囲の基本長を測定する外側メジャーbと、測定した長さに対する追加締め付け位置を示す内側メジャーaとをベルト部321bに設けてある。尚αは外側メジャーaに対応する基準線である。尚追加締め付けは約20%増が望ましい。
【0071】
而して本実施形態では、測定した腕周囲の基本長に合わせた締め付け位置でベルト部321bを固定することによって簡単な操作で計測に適正な圧力で位置決め体15を前腕140の前面の測定部位に押し付けることができる。これにより例え測定日が変わり、位置決め体31を装着し直したとしても再現良前腕140の測定部位に与えることが可能となる。尚締め付け具320の代わりに面ファスナーを用いて固定位置を簡単に調整できるようにすれば使用勝手が向上する。
【0072】
尚その他の構成は上述した何れの実施形態の構成でも良いので、図示及び説明は省略し、また図11において上記各実施形態の構成要素と同じ構成要素には同じ符号を付す。
(実施形態7)
上記実施形態6では締め付け具320を用いて加圧用ベルト32の締め付け具合を調整することができるようになっているが、本実施形態では図12(a),(b)に加圧用ベルト32としてカフ帯を用いて、加圧空気を空気送出部80からカフ322内に送ってカフ322を膨張させ、巻き付けている前腕140を図12(b)に示すように適正圧力で矢印方向に加圧することができる点に特徴がある。
【0073】
これによって、本実施形態では加圧バンド32の締め付けが加減でも、カフ320を膨らまして位置決め体31を押し付ける圧力を適正な圧力に調整することで、位置決め体31のずれや脈動の心配が無<なる。
【0074】
また圧力は空気送出部80からの空気送り量を調節し、調節後は栓81を締めることにより連続測定の間一定に保つことができる。図12中82は圧力計である。
【0075】
尚その他の構成は上述した何れの実施形態の構成でも良いので、図示及び説明は省略し、また図12において上記各実施形態の構成要素と同じ構成要素には同じ符号を付す。
(実施形態8)
実施形態1で説明したように測定に当たっては被測定者が仰臥している状態で行うのであるが、前腕140の前面中央付近に位置決め体31を装着し、その前面を水平にするためには、図13(a)に示すように腕を開き気味にして且つ上腕143及び肘144付近にクッションを詰めることによって水平にできる、しかしながら、この体勢は関節の腱が伸ばされた状態であり、連続測定において長時間被測定者に身体的負担を強いるものであり、腱が血管を圧迫して脈動が乗りやすく、スペクトルの再現性に影響を与える。更に腕を開き気味にしているのも自然に体が内側を向く傾向を持つことから、長時間の計測において経時的に体の微動且つスペクトルの変動につながる。
【0076】
そこで、図13(b)のようにできるだけ被測定者たる患者の負担を減らし、且つ体の自然な状態で腕を固定するために手首141の付近にクッション47を介在させて上腕143に対して前腕1402を斜めとした場合においても測定ができるように、本実施形態で肘144の屈伸方向の角度や腕の軸を中心とした回転角度によって傾いた位置決め体31に合わせて駆動部33側に取り付けられた連結体330の角度を調整できる角度調整手段を自在アーム38とZ軸ステージ装置332とを結合するジョイント治具39に設けた点に特徴がある。つまり図14に示すようにジョイント治具39を前後二つ2分けて、互いに連結し、その連結部を腕の軸を中心とした回転角度の動きに回動自在な軸部390により行い、更に正面から見て垂直方向の回転ステージ部391によって肘144の屈伸方向の角度に対して調整することができるようになっている。尚391aは回転ステージ部391を動かして回転角度を調整するレバーである。
【0077】
従って本実施形態では図13に示すように位置決め体31と連結体330の互いの角度を合わせて凸部311と凹部330aとを嵌合させることができることになる。
【0078】
この角度の合わせ方は位置決め体31と連結体330に取り付けられた角度探知機48(或いは基準角度計)等によって角度を合わせた後に嵌合することで容易に行えことになる。
【0079】
ところで、本実施形態のように肘屈伸角度、腕軸回転角度に対応した駆動部33と自在アーム38を重量物であるスタンド742に支持させた構成において、実施形態6のように加圧用ベルト32の締め付け具合を調整することができる加圧部を用い、腕固定部30の有無と、加圧部の締め付け強度、肘屈伸角度、腕軸回転角度の違いによるベクトルの安定性比較及び水準に対して生体成分濃度推定精度比較を行った。
【0080】
ここでベクトルは無グルコース負荷の状態で5分毎に測定し、2時間で24ポイントのデータを得た後、グルコースを負荷して血糖を変動させ、同様に5分毎に測定し、血糖値が下がりきるまで計測を実施した。尚プローブ径はφ18を使用し、1.2kgfで生体へ押し付けた。また測定用プローブ8は35℃に温度調整した。尚腕固定部30が無い場合は、位置決め体31を加圧用ベルト32で固定しただけの簡単な構造とした。加圧用ベルト32による締め付け強度の調整は、長さで調整して、締め込み割合別に比較した。
【0081】
比較する指標として、上述した指標(1)〜(3)及び指標(1)のSD値を比較した。また、血糖値の推定精度に関しては糖負荷、無糖負荷のデータを全て含めて、1400nm〜1800nmの吸光度値をX変量とし、採血値をY変数にして、PLS解析を行い、推定精度を算出した。これら各例のプローブの構成条件及びスペクトル指標安定性の結果及び血糖値推定精度を表1に示す。
【0082】
【表1】

【0083】
表1の結果から、腕固定部30が無いと指標が大きく変化することがわかる。また、腕固定部30があれば、指標が安定して、それによって、推定精度が高い精度で確保できることがわかる。一方、加圧用ベルト32の締め付けが30%を越えると、脈動のため、SD値が大きくなりそれによって推定精度が大きくダウンしたことがわかる。また肘や腕の角度を10°レベルで調整することによって、指標の変化が少なく精度が高く確保できることがわかる。これは、被験者の体勢が楽に保たれるため、常に同じ体勢が確保できるからである。
【0084】
これら結果から例1〜4のように腕固定部30があって、加圧用ベルト32による加圧が過小、過大にならないように使用すれば、良好な測定結果が得られることがわかり、本発明の生体内成分測定用プローブ支持具の有効性が実証された。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】(a)は実施形態1を用いた生体内成分測定装置全体の使用状態での一部省略せる斜視図、(b)は実施形態1を用いた生体内成分測定装置の使用状態の説明図である。
【図2】実施形態1の使用状態での要部の正面図である。
【図3】実施形態1の腕固定部の使用状態を示す図であって、(a)は一部破断せる斜視図、(b)は要部の側断面図である。
【図4】実施形態1の使用状態での一部破断省略せる側断面図である。
【図5】実施形態1の使用説明図である。
【図6】実施形態1で使用する自在アームの別の取り付け例を示す斜視図である。
【図7】実施形態2の使用説明図である。
【図8】実施形態3の使用説明図である。
【図9】実施形態4の使用説明図である。
【図10】実施形態5の使用説明図である。
【図11】実施形態6の加圧用ベルトと位置決め体との使用状態を示す図であって、(a)は一部破断せる斜視図、(b)は側断面図、(c)は加圧用ベルトの締め付け状態を示す一部省略せる下面図である。
【図12】実施形態7の加圧用ベルトの使用説明図である。
【図13】実施形態8の説明図である。
【図14】実施形態8の使用状態での一部破断省略せる側断面図である。
【図15】生体(皮膚組織)における近赤外光の入射と反射の説明図である。
【図16】生体内成分測定での吸光度スペクトルと近赤外光の波長との関係説明図である。
【図17】腕部の構造説明図である。
【図18】腕部の断面図である。
【符号の説明】
【0086】
8 測定用プローブ
30 腕固定部
300 ホルダー
301 支持体
302 把持部
303 固定用テープ
31 位置決め体
32 加圧用ベルト
33 駆動部
330 連結体
35 フレキシブルチューブ
140 前腕
141 手首
142 手
38 自在アーム
39 ジョイント治具
41 ベッド
42 スタンド
43 制御盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体表面に近赤外光を出射するとともに、生体からの反射光を入射する生体内成分測定用プローブを支持するものであって、被測定者の手首位置を定めるとともに腕に沿って装着される腕固定部と、この腕固定部の腕方向の所定位置に設けられ、前記腕の表面に前記生体内成分測定用プローブを案内するガイド部を有する位置決め部と、該位置決め部を前記腕に押し付ける加圧部とを備えるとともに、重量物に連結するための接続部を有していることを特徴とする生体内成分測定用プローブ支持具。
【請求項2】
前記腕固定部は、腕方向の長さを調節する調節手段を有していることを特徴とする請求項1記載の生体内成分測定用プローブ支持具。
【請求項3】
前記加圧部は、腕の周囲に巻回締結するベルトにより構成され、腕の周囲長に応じて定まる追加締め付け位置を表示する表示部を備えていることを特徴とする請求項1又は2記載の生体内成分測定用プローブ支持具。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかの生体内成分測定用プローブ支持具と、生体内成分測定用プローブ支持具の接続部と重量物との中間部に設けられ、生体内成分測定用プローブ支持具のガイド部の案内方向に生体内成分測定用プローブを移動させる駆動部及び該駆動部を制御する制御部とを備え、該制御部は前記生体内成分測定用プローブを前記腕の表面に接触させた状態と前記腕の表面から離した状態とを所定の時間間隔で繰り返すように駆動部を制御することを特徴とする生体内成分測定用ヘッド装置。
【請求項5】
前記中間部には前記生体内成分測定用プローブの先端方向の、肘の屈伸方向に対応する角度又は腕の軸を中心とした回転方向に対応する角度若しくは両角度を調整する角度調整手段を有していることを特徴とする請求項4記載の生体内成分測定用ヘッド装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図18】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2006−55528(P2006−55528A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−242811(P2004−242811)
【出願日】平成16年8月23日(2004.8.23)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】